JP2006141711A - 内視鏡観察光学系 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生体粘膜観察能を向上する内視鏡観察光学系を提供する。
【解決手段】 可視光通常観察、及び、480nm以下の波長帯に存在するヘモグロビンの吸収ピークを表示画像の主成分とする血管強調観察、の両方に対応する内視鏡の観察光学系1であり、波長が415nmの光における観察光学系1の軸上色収差を補正不足傾向に残存させ、血管強調観察時の合焦物体位置を可視光通常観察時の合焦物体位置よりも近点側に設定することを特徴とする。
【選択図】 図6

Description

本発明は面順次式もしくは同時式の内視鏡であって、血管強調観察機能、もしくは、粘膜スライス像観察機能を有する内視鏡の観察光学系に関する。
面順次式もしくは同時式の内視鏡であって、管強調観察機能もしくは粘膜スライス像観察機能を有する内視鏡では、例えば可視光通常観察、特定波長帯強調観察、血管強調観察、粘膜深部スライス像観察等が行えるものが知られている。
ここで、可視光通常観察とは可視域全般の光を用いて撮像する標準的な観察状態をいう。特定波長帯強調観察とは光学フィルタなどによる特定波長帯強調、及び、複数の撮像色バンド画像のバンド間演算などにより特定波長帯を強調表示した状態をいう。血管強調観察とは血液の吸光特性に最適な波長帯を強調した「特定波長帯強調観察」の一種をいう。粘膜深部スライス像観察とは深さの異なる複数の粘膜スライス像を選択して観察する状態をいう。
特公平3−24848号公報 特開2000−262459号公報 特開2001−170009号公報 特開2003−215469号公報
特定波長帯強調観察により生体粘膜観察能を向上する内視鏡の先行技術としては、上述の特許文献1から3などがある。これら先行技術において、照明光の帯域を血液の主成分であるヘモグロビンに最適化した血管強調観察では、血管走行を強調表示することが可能となる。しかし、これら先行技術では、照明系や撮像後の画像演算方法が主要な論点であり、撮像素子に物体の像を結像する観察光学系に対する考慮が十分でなかった。
また、上述の特許文献4ではビデオスコープ対物光学系の瞳付近での分光透過率に関する工夫が記述されているが、対物光学系の収差やピント設定の波長依存性に関する考察が十分ではなかった。
従来の可視光通常観察のみを考慮した観察光学系では、収差をできる限り小さく設計すれば観察能の向上が見込めたが、上述の先行技術文献に記載されたような特定波長帯強調観察を行う内視鏡ではそれが最適とは限らないという問題があった。
特に近年ニーズの高い拡大観察に関し、収差削減を追求した従来の観察光学系の適用が望ましくない事例を2つ以下に記す。
(1)血管強調観察は主に粘膜表面の毛細血管走行形態などから病変の診断を行うため、微細パターンを解像するために高い観察倍率が必要である。よって、血管強調観察は可視光通常観察よりも拡大率が高い方が望ましい。しかし、完全に収差補正した観察光学系では血管強調観察と可視光通常観察が同じ光学仕様となるため、拡大率を上げることができないという問題があった。
(2)In Vivoで粘膜の画像解析を行う研究が進んでいる。この用途では非常に深度の狭い超拡大観察光学系が用いられ、画像のぶれ防止ため、生体粘膜に内視鏡先端を接触させる、もしくは、先端アタッチメントを取り付けて位置固定する等の手法が用いられる。このような超拡大観察光学系で完全に収差補正すると、合焦物体位置が波長依存しないため、表面もしくは特定深部の1スライス面の画像情報しか得られず、先に示した粘膜深部スライス像観察が不可能である。この状態では粘膜層別の画像解析や病変の浸潤度診断は行えない。また、フォーカス機構を搭載すれば原理的には深さ変更可能だが、細径内視鏡への実装が困難であり、また、ユーザー操作によるフォーカスは操作の難易度が高いため実用性が低いという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、生体粘膜観察能を向上する内視鏡観察光学系を提供することを目的とする。
さらに詳しくは、血管強調観察の倍率を可視光通常観察より大きくできる構成を提供することを第1の目的とし、粘膜深部スライス像観察をフォーカス機構なしで実現する構成を提供することを第2の目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の内視鏡観察光学系は、可視光通常観察、及び、480nm以下の波長帯に存在するヘモグロビンの吸収ピークを表示画像の主成分とする血管強調観察、の両方に対応する内視鏡の観察光学系であり、波長が415nmの光における前記観察光学系の軸上色収差を補正不足傾向に残存させ、前記血管強調観察時の合焦物体位置を前記可視光通常観察時の合焦物体位置よりも近点側に設定することを特徴とする。
本発明によれば、波長が415nmの光における観察光学系の軸上色収差を補正不足傾向に残存させ、血管強調観察時の合焦物体位置を可視光通常観察時の合焦物体位置よりも近点側に設定することにより、可視光通常観察時に比較して、415nmの光に代表される光を用いる血管強調観察でピントを合わせられる倍率範囲が拡大側にシフトできる。
本発明の内視鏡観察光学系は、可視光通常観察、及び、480nm以下の波長帯に存在するヘモグロビンの吸収ピークを表示画像の主成分とする血管強調観察、の両方に対応する内視鏡の観察光学系であり、前記可視光通常観察時の合焦物体位置に対して式(1)を満足することを特徴とする。
本発明によれば、観察光学系の特性をΔ[415]/f<−0.02に設定することにより、血管強調観察時に十分な拡大観察を行うことができ、−0.25<Δ[415]/fに設定することにより、軸上色収差が大きくなりすぎることを防止し、可視光通常観察でのコントラスト低下を防止することができる。
上記発明においては、前記観察光学系が、式(2)を満足することが望ましい。
本発明によれば、観察光学系の特性をΔ[415]/f<−0.05に設定することにより拡大率が改善され、−0.15<Δ[415]/fに設定することにより、例えば、高解像撮像素子を用いた高画質内視鏡用の観察光学系として使用した場合において、軸上色収差が大きすぎて可視光通常観察での画質が許容しにくくなることを防止できる。
本発明の内視鏡観察光学系においては、近軸横倍率絶対値が0.5倍以上の拡大観察が可能な内視鏡の観察光学系であり、前記拡大観察状態で式(3)を満足するように、前記観察光学系の軸上色収差を設定することを特徴とする。
本発明によれば、観察光学系の特性を0.05mm<WD[546]−WD[415]に設定することにより、波長毎の合焦物体位置移動を確保して粘膜層の識別をすることができ、WD[546]−WD[415]<0.75mmに設定することにより、深さ方向の分解能が粗くなりすぎることを防止できる。
本発明の内視鏡観察光学系によれば、波長が415nmの光における観察光学系の軸上色収差を補正不足傾向に残存させ、血管強調観察時の合焦物体位置を可視光通常観察時の合焦物体位置よりも近点側に設定することにより、血管強調観察の倍率を可視光通常観察より大きくできるという効果を奏する。
また、本発明の内視鏡観察光学系によれば、拡大観察状態で式(3)を満足するように観察光学系の軸上色収差を設定することにより、粘膜深部スライス像観察をフォーカス機構なしで実現できるという効果を奏する。
初めに、本発明が想定する血管強調観察全般について説明し、その後に本発明の各実施形態について説明する。
まず、被撮像体となる生体粘膜特性から血管強調観察に利用すべき波長帯について説明する。
図1にヘモグロビンの吸光特性を示す。ヘモグロビンは酸化の有無により2状態で存在するが、どちらの状態でも可視域でおおまかには短波長側の光を強く吸収し、長波長側は吸収が弱まる。特に最大の吸収ピークが480nm以下に存在する。
図2に生体粘膜断層模式図と光の進達度を示す。図2(a)は血管を多く含む生体粘膜の断面模式図であり、表面側から順に、凹凸構造と毛細血管、それより少し深いところにある毛細血管より太めの血管、さらに深層にある太い血管からなる。図2(b)は上記生体粘膜層内の光の進達度を示すものであり、可視域では短波長光ほど生体への深達度は浅くなり、波長が長くなるほど生体への深達度は深くなる。
このことはヘモグロビン吸光特性(図1参照)で短波長側が高いこと、及び、細胞構造による散乱が短波長側ほど大きいことに起因する。
よって、短波長光を用いることにより、粘膜表層付近の凹凸構造や毛細血管像が観察可能となる。また、短波長光はヘモグロビン吸光度が高い波長帯であるため、背景が明部かつ血管が濃い暗部として画像化され高コントラストに観察できる。ただし、進達度が浅いため深層の血管はほとんど画像に反映されない。
長波長光を用いると、進達度が深いため深部の太い血管像が観察可能となる。但し、長波長光はヘモグロビン吸光度が低い波長帯であるため、血管像のコントラストは短波長時に比べて低くなる。
よって、単純に表面付近の毛細血管を強調観察したい場合は、短波長帯を強調した撮像が最も有効である。さらに波動光学の原理から短波長側の光ほど観察光学系のMTF(Modulated Transfer Function)を高められ、高解像・高コントラストが得られるメリットもある。
続いて、短波長帯で撮像した血管像のモニター上での視認性改善について説明する。
眼視での比視感度及び解像力は緑色(Gバンド)が最も高く、続いて赤色(Rバンド)が高く、青色(Bバンド)が最も低い。また、血管情報はBバンドに豊富に含まれており、可視光通常観察では豊富な血管情報を含む撮像Bバンド画像がモニターBバンドとして表示されている。そのため、可視光通常観察では人間の検知能力が低いBバンドで血管情報が表示されるため、血管情報の視認性改善を実感できない。
そこで、分光特性以外での血管視認性改善手法に以下に述べる。
ここでは、面順次式での血管強調観察例を説明する。
図3は面順次式光源装置のRGB時分割方式での照明光分光強度特性を示す。図3(a)は可視光通常観察用として一般的な照明光分光強度特性であり、R1,G1,B1の各撮像バンドを比較的広帯域に設定し、かつ、各バンド境界に隙間が生じないように構成している。
可視光通常観察用としては、正確な色再現性確保のため、モニター表示バンドと撮像バンドとが以下の関係となるように接続されている。具体的には、ビデオプロセッサ側で回路処理がなされた映像信号が出力され、モニターに接続される。
モニター表示バンド R(赤) G(緑) B(青)
撮像バンド R1 G1 B1
この可視光通常観察では血管の視認性があまり高くない。理由は血管情報を最も含むB1バンドの画像情報をモニターのBバンドとして表示している点にある。よって、撮像B1バンドの画像情報が人間にとって感度の高いモニターGバンドにも含まれるようバンド間演算処理を行うと、血管情報の視認性が向上する。
最も単純な例として、以下に示す単純なバンドシフト及びコピー演算(もしくはRGB出力信号の配線分配と切替)により血管強調観察が可能である。
モニター表示バンド R(赤) G(緑) B(青)
撮像バンド G1 B1 B1
この例では、最も血管像のコントラストが高い撮像B1バンド画像がモニターのGバンド、及び、Bバンドの2つに表示されている。そのため、モニターのBバンドのみで撮像B1バンド画像を表示する方法よりも、モニターに表示される血管像コントラストが大幅に改善される。
また、血管像コントラストの低い撮像R1バンド画像を表示していたモニターRバンドに、2番目に血管像コントラストの高い撮像G1バンド画像を表示することで、モニターの全表示バンドで血管像コントラストの高い撮像画像を表示することとなり、血管を強調することができる。この場合、色再現性は失われるが、シアン(G+B)と赤(R)の配合色による擬似カラー表示が可能である。
以上のように分光特性の操作なしでも血管構造の視認性改善が可能であるが、上記バンド間演算と合わせて分光特性を操作することにより血管の視認性をさらに向上できる。
図3(b)はその1例であり、R2,G2,B2の各バンドを狭帯域に設定している。図3(a)の分光特性では吸光度の低い波長が低コントラスト成分として同一撮像バンドに残っている。このため、図3(b)では低コントラスト成分となる吸光度の低い波長帯をカットし、吸光度の高い波長帯に限定することで血管像のコントラストを向上できる。
B2バンドはヘモグロビンの最大吸収ピークに合わせて中心波長を415nm程度に設定している。G2バンドは ヘモグロビンの2番目に強い吸収ピークに近い550nm前後、もしくはR2バンドとの差を考慮して少し短波長側の500〜540nm程度に中心波長を設定している。
このように設定されたG2バンドは粘膜表層からわずかに奥まった血管を特異的に描出できる。これらB2バンド・G2バンドの設定と、上述したバンド間演算とを行うことにより、粘膜表層付近の比較的狭い層を対象とした理想的な血管像コントラスト強調が可能となる。
R2バンドはヘモグロビンの吸光度が低い領域にあり表層付近の血管像コントラスト強調にはあまり寄与しない。しかし、表示色空間を広げる場合、もしくは、さらに深部の血管像を取得する場合には重要となる。その場合はR2バンドを600nm程度に設定してバンド間演算に使用する。このようにして撮像することにより、図2に示す粘膜構造を図4に示すような高コントラストで識別性の高い粘膜画像として撮像できる。
なお、先のヘモグロビンの吸収特性から粘膜画像は一般に赤や黄色みを帯びることになり、上記狭帯域の分光特性ではフィルタの設定時に各撮像バンドのダイナミックレンジに注意を要する場合がある。図3(b)ではB2バンド・G2バンド・R2バンドの分光強度積分値をほぼ同じ値としているが、上記粘膜画像の強度特性を鑑み、B2バンドに対し、G2バンド・R2バンドの分光強度積分値を下げることで、B2バンドより先に飽和しやすいG2・R2バンドの過飽和を回避できる。
以上の如く、面順次式での血管強調観察について述べたが、同じ原理がカラー撮像素子を使用する同時式にも適用できる。同時式の場合は撮像素子内のオン・チップ・カラーフィルタが図3(a)のB1バンド・G1バンド・R1バンドの特性を代行することとなるので、照明光はキセノンランプ光のような通常の白色光とすればよい。また、同時式で血管強調用の狭帯域化を行う場合、図3(b)のB2・G2、・R2バンドを時分割でなく同時に照明光として供給すればよく、白色光源と各バンドの透過帯を有する光学フィルタを組み合わせるなどすればよい。
なお、カラー撮像素子は原色方式だけでなく補色方式もあるが、その場合にもビデオプロセッサ内でRGBに変換されるため本原理を適用するに際し大きな問題とはならず、RGB変換後にバンド間演算をかけてB1バンド・B2バンド画像を表示で強調できるようにすればよい。
以上の如く、可視光通常観察に対し、撮像Bバンド画像を強調表示するバンド間演算、さらに、分光特性の狭帯域化により、血管強調観察が可能となる。
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施形態について図5および図6、実施例のデータを参照して説明する。
本発明の観察光学系とは、撮像素子に物体の像を結像する光学全系を意味している。よって、挿入部先端に撮像素子を配した、いわゆるビデオスコープの場合は対物光学系が観察光学系となる。また、挿入部内に対物光学系とリレー光学系を有する硬性鏡と撮像素子を有するテレビカメラの組合せにおいては、硬性鏡先端からテレビカメラ内の撮像素子までの全光学系を観察光学系と見なす。
本実施形態においては説明簡略化のため、ビデオスコープの対物光学系の例にて説明する。
まず、従来の観察光学系について説明し、その後に本実施形態の観察光学系について従来の観察光学系と比較しながら説明する。
図5は、従来の軸上色収差が十分に補正された観察光学系の概念を示す図である。図5に示す例ではビデオスコープ用の固定焦点対物光学系を観察光学系としている。なお、図5に示す観察光学系の基本構成は本発明の第1の実施形態に係る観察光学系を同一の構成を有している。第1の実施形態に係る観察光学系とは軸上色収差の補正に違いがある。
複数のレンズ群および絞りからなる対物光学系1Aは、図5に示すように、物体像を撮像素子2に結像するように構成されている。可視光通常観察の場合には、可視域のほぼ中心波長となる546nm(e線)の光において、合焦物体位置が撮像素子2の撮像面3に位置するように設定されている。このときの合焦物体距離をWD[546]とする。
ヘモグロビンの最大吸収ピーク中心波長は415nmと想定され(図1参照)、波長が415nmの光における合焦物体距離WD[415]とWD[546]の関係は軸上色収差がまったくない場合には、WD[415]=WD[546]となり、図5に示す状態となる。この状態では、415nmの光に代表される光を用いる血管強調観察においてピントが合わせられる倍率範囲は可視光通常観察と比較して差が生じない。
次に本実施形態に係る観察光学系について説明する。
図6は、本実施形態に係る観察光学系における軸上色収差残存状態を示す図である。より具体的には、本実施形態に係る実施例1〜12の軸上色収差残存状態を示すであり、血管強調観察用を想定して軸上色収差を補正不足傾向に残存させた観察光学系の概念を示す図である。
複数のレンズ群および絞りからなる対物光学系(観察光学系)1は、図6に示すように、物体像を撮像素子2に結像するように構成されている。可視光通常観察の場合には、可視域のほぼ中心波長となる546nm(e線)の光において、合焦物体位置が撮像素子2の撮像面3に位置するように設定されている。波長が415nmの光においては、撮像面3よりも物体側に結像するように構成されている。
図6に示す太実線矢印は波長が546nmの光における物体位置および像位置であり、太点線矢印は415nmの光における物体位置および像位置である。図中の細線矢印は近軸追跡時の始点と終点の対応を示し、光軸上側の矢印は546nmの光における合焦物体位置から追跡したものであり、下側の矢印は撮像面3から物体側に追跡したものである。
546nmの光の合焦物体位置から415nmの光を対物光学系1に入射させると、補正不足傾向の軸上色収差により415nmの光における像は撮像面よりも物体側に結像する。この場合の軸上色収差をΔ[415]と表示する。
符号の定義は、基準波長(ここでは546nm)の近軸像面(ここでは撮像面3)を基準として物体側に近軸光線が結像する場合を負とするものであり、図6の場合はΔ[415]<0である。このように、WD[546]位置に存在する物体を415nmの光で撮像するとボケることになるが、撮像面3から逆方向に近軸光線追跡することでWD[415]が算出できる。
図6から明らかなように、Δ[415]<0の場合はWD[415]<WD[546]となり、415nmの光における合焦物体位置は近点側に寄る。このため、可視光通常観察時に比較して、415nmの光に代表される光を用いる血管強調観察でピントを合わせられる倍率範囲が拡大側にシフトできる。
以下に、従来思想による設計例データを表1に、本発明の実施例1〜12のデータを表2に示す。
Figure 2006141711
Figure 2006141711
表1および表2中のΔ[415]/fは、Δ[415]を光学系の焦点距離fで規格化したものである。この値とWD[546]、WD[415]、及び、WD[546]/WD[415]を対比しながら説明する。
光学系の倍率は観察距離に反比例するため、WD[546]/WD[415]は可視光通常観察に対する血管強調観察の拡大率改善比率を表すパラメータと見なせ、WD[546]/WD[415]が1より大であれば拡大率が改善されていることを示す。
表1における従来例1〜3ではΔ[415]/f>0であり、WD[546]<WD[415]となっている。つまり、血管強調観察時におけるピントが可視光通常観察時よりも遠点側にシフトしていることを示している。
また、従来例4〜5ではΔ[415]/f<0であるが、絶対値が小さいため、WD[546]とWD[415]に大差がない。これらの従来例1〜5ではWD[546]/WD[415]が1未満もしくは1前後であり、血管強調観察時に拡大観察が行えないことを示している。
次に表2に示す実施例1〜12は、全て(1)式の−0.25<Δ[415]/f<−0.02を満足し、WD[546]>WD[415]である。Δ[415]/fの絶対値が最も小さい実施例1でもWD[546]/WD[415]=1.35であり、35%の拡大率改善が見込める。さらに実施例5以降では2倍以上の拡大率改善が可能である。
式(1)の範囲外となる−0.02<Δ[415]/fの場合は、上述の従来例と同様に血管強調観察時に十分な拡大観察が行えない。同じく式(1)の範囲外となるΔ[415]/f<−0.25の場合は軸上色収差が大きすぎて可視光通常観察でのコントラストが低下しすぎるため望ましくない。
Δ[415]/fの最も望ましい範囲は式(2)で示す−0.15<Δ[415]/f<−0.05であり、この範囲には実施例3〜9が該当する。
式(2)の範囲外となる−0.05<Δ[415]/fの場合は、拡大率の改善が多少不足気味となる。同じく式(2)の範囲外となるΔ[415]/f<−0.15の場合は、高解像撮像素子を用いた高画質内視鏡用としては軸上色収差が大きすぎて可視光通常観察での画質が許容し難くなる。
実施例1〜12の対物光学系を用いれば、可視光通常観察に対し血管強調観察時の拡大率を有意に改善でき、固定焦点であるにもかかわらず従来のフォーカス・ズーム機能付対物光学系の機能を置換できる。よって、前記実施例構成はレンズ可動部実装の困難な細径内視鏡、及び、オートクレーブ滅菌に対応した高耐性内視鏡に擬似的な拡大観察機能を付与することにもなり有用である。
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施形態の構成であり粘膜深部スライス像観察を想定した実施例13〜18を説明する。
上述した第1の実施形態に係る実施例1〜12は内視鏡で一般的な広角の観察光学系であり、その広角な対物光学系(観察光学系)1は被写界深度が広いため、光軸方向の情報分離性に劣り、粘膜深部スライス像観察に不向きである。
これに対して、第2の実施形態に係る実施例13〜18に示すような高倍率かつ狭深度の拡大専用光学系(顕微鏡光学系)を用いることにより粘膜深部スライス像観察が行える。
図7は、本実施形態の観察光学系の軸上色収差残存状態を示す図である。より具体的には、拡大観察に特化した本実施形態に係る実施例13〜18の軸上色収差残存状態を示す図である。
複数のレンズ群および絞りからなる対物光学系11は、図7に示すように、物体像を撮像素子2に結像するように構成されている。可視光通常観察の場合には、可視域のほぼ中心波長となる546nm(e線)の光において、合焦物体位置が撮像素子2の撮像面3に位置するように設定されている。波長が415nmの光においては、撮像面3よりも物体側に結像するように構成されている。つまり、第1の実施形態と同様に軸上色収差を補正不足傾向に残存させている。
図7に示す太実線矢印は546nmの光における物体位置および像位置を示し、太点線矢印は415nmの光における物体位置および像位置を示す。図7に示す実施形態では生体粘膜に接触させることを想定し、カバーガラス4の物体側面に415nmの光の合焦面(撮像面の共役面)を設定した。
このため、実施例でのWD[415]は全て0となる。軸上色収差が補正不足傾向であるため、415nmより長波長の光の合焦位置は物体側に離れる。よって、546nmの光の合焦物体位置はWD[546]だけ離れた位置になる。
なお、先端アタッチメントを用いて粘膜とカバーガラス4との距離を確保する場合は、WD[415]を0以外の値に設定できる。
以下、表3に実施例13〜18の数値データを示す。
Figure 2006141711
β:546nmの光における近軸横倍率
WD[436]:436nm(g線)の光における合焦物体距離
WD[486]:486nm(F線)の光における合焦物体距離
なお、表3中のWD[波長]は全て空気中の値として表示しており、生体中における値に換算するには、表中の値を1.333倍(水の屈折率)する。実施例13〜18は式(3)の条件、0.05mm<WD[546]−WD[415]<0.75mmを満足する。表3から明らかなように、実施例13〜18は波長と合焦物体距離が単調増加の関係にあり、WD[546]−WD[415]は識別可能な深さ方向の範囲を表す1つのパラメータとなる。
狭深度の観察光学系でこの状態を実現できれば撮像に用いる波長帯を狭帯域に選択することで、所定深さのスライス像を取得できる。生体粘膜は体内の部位により様々であるが、大腸癌の場合、粘膜深さ0.2〜0.3mm付近、及び、1mm付近に浸潤度診断の閾値を設ける考え方がある。実施例13を前記大腸癌の場合に照らし合わせると、415nmの狭帯域光により粘膜表面の画像を取得でき、436nmの狭帯域光撮像で深さ0.203mm(0.152(mm)×1.333)のスライス像が取得でき、546nmの狭帯域光撮像で深さ0.917mm(0.688(mm)×1.333)のスライス像が取得できる。
この場合、図3(b)にてB2バンド・G2バンド・R2バンドの中心波長をそれぞれ415nm・436nm・546nmに設定して、各バンド画像を独立に表示できるようにすれば非常に有用である。もしくは、照明系に分光装置や波長の異なるLEDやレーザーダイオードなどの狭帯域発光素子を組み合わせることで、さらに多数のスライス像を得ることができる。
実施例18のような高倍率の設定においては、粘膜表層付近で深さ分解能を高めた解析が可能となり、In Vivoで病理検査に近い解析が行え、研究用途に有用である。
なお、WD[546]−WD[415]<0.05mmでは波長毎の合焦物体位置移動が小さすぎて粘膜層の識別には不足であり、WD[546]−WD[415]>0.75では深さ方向の分解能としては粗くなりすぎる。
なお、実施例13〜18の観察光学系単独では内視鏡に必要な挿入時のオリエンテーションを確保できないため、広角な観察光学系と合わせて内視鏡に実装されることが多い。よって、可視光通常観察との切り替えについては考慮する必要がない。
ヘモグロビンの吸光特性を示す図である。 生体粘膜断層模式図と光の進達度を示す図である。 面順次式光源におけるRGB時分割方式での照明光分光強度特性を示す図である。 血管強調観察における画像を示す図である。 従来の軸上色収差が補正された観察光学系を示す概念図である。 本発明の第1の実施形態に係る観察光学系における軸上色収差残存状態を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る観察光学系における軸上色収差残存状態を示す図である。
符号の説明
1,11 対物光学系(観察光学系)

Claims (4)

  1. 可視光通常観察、及び、480nm以下の波長帯に存在するヘモグロビンの吸収ピークを表示画像の主成分とする血管強調観察、の両方に対応する内視鏡の観察光学系であり、
    波長が415nmの光における前記観察光学系の軸上色収差を補正不足傾向に残存させ、
    前記血管強調観察時の合焦物体位置を前記可視光通常観察時の合焦物体位置よりも近点側に設定することを特徴とする内視鏡観察光学系。
  2. 可視光通常観察、及び、480nm以下の波長帯に存在するヘモグロビンの吸収ピークを表示画像の主成分とする血管強調観察、の両方に対応する内視鏡の観察光学系であり、
    前記可視光通常観察時の合焦物体位置に対して下式を満足することを特徴とする内視鏡観察光学系。
    Figure 2006141711
  3. 前記観察光学系が、下式を満足することを特徴とする請求項2の内視鏡観察光学系。
    Figure 2006141711
  4. 近軸横倍率絶対値が0.5倍以上の拡大観察が可能な内視鏡の観察光学系であり、
    前記拡大観察状態で下式を満足するように、前記観察光学系の軸上色収差を設定することを特徴とする内視鏡観察光学系。
    Figure 2006141711
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