JP2006137848A - インフレーションフィルム - Google Patents

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幸一 柳瀬
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直弘 三野
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Abstract

【課題】フィルム製造時の装置への負荷が小さく、強度が高く、かつ外観に優れるエチレン−α−オレフィン共重合体からなるインフレーションフィルムの提供。
【解決手段】エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、流動の活性化エネルギーが50kJ/mol以上であり、メルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)と190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度(η;単位はPa・secである。)とが下記式(1)の関係を満たし、該樹脂をインフレーション成形する際に、該成形機の環状ダイより押出された溶融状樹脂に、エアリングの2つ以上のスリットから冷却媒体を吹きつけて冷却して得られるフィルムであり、当該フィルムの複屈折値が下記式(2)を満たすことを特徴とするインフレーションフィルム。 η<1550×MFR-0.25−420 式(1) −0.5×10-3<nx−ny<0.5×10-3 式(2)
【選択図】なし

Description

本発明はエチレン−α−オレフィン共重合体からなるインフレーションフィルムに関する。
エチレン系重合体からなるフィルムは、包装用、農業用、規格袋等幅広い分野で用いられている。特にエチレン−α−オレフィン共重合体からなるフィルムは強度に優れるため、種々の用途での利用が期待されている。しかしながらエチレン−α−オレフィン共重合体を押出し成形した場合には、装置(押出機)への負荷が大きく、長時間安定して製造することが困難であるといった問題や、得られるフィルムに表面荒れが生じるといった問題があった。
このような問題に対処するために、従来のエチレン−α−オレフィン共重合体は高圧法低密度ポリエチレンと混合して用いられていた。このようなエチレン−α−オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの混合物を用いてインフレーション成形して得られるフィルムが特許文献1に開示されている。
特開平11−181173号公報
しかしながらエチレン−α−オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの混合物からなるフィルムは、強度が不十分であるという問題があった。
本発明は、フィルム製造時の装置への負荷が小さく、強度が高く、かつ外観に優れるエチレン−α−オレフィン共重合体からなるインフレーションフィルムを提供するものである。
すなわち本発明は、エチレンから誘導される構成単位と炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン−α−オレフィン共重合体であって、流動の活性化エネルギーが50kJ/mol以上であり、メルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)と190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度(η;単位はPa・secである。)とが下記式(1)の関係を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体を、環状ダイおよび複数のスリットを有するエアリングを備えたインフレーション成形機によりインフレーション成形して得られるフィルムであって、該フィルムが、前記環状ダイより押出された溶融状エチレン−α−オレフィン共重合体に、前記エアリングの2つ以上のスリットから冷却媒体を吹きつけて冷却して得られるフィルムであり、当該フィルムの複屈折値が下記式(2)を満たすことを特徴とするインフレーションフィルムに関する。
η<1550×MFR-0.25−420 式(1)
−0.5×10-3<nx−ny<0.5×10-3 式(2)
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体からなるインフレーションフィルムは、フィルム製造時の装置への負荷が小さく、強度が高く、かつ外観に優れるインフレーションフィルムである。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位と炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン−α−オレフィン共重合体である。
エチレンから誘導される構成単位とは、単量体であるエチレンから誘導され、エチレン−α−オレフィン共重合体に含有される単位である。炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位とは、単量体である炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導され、エチレン−α−オレフィン共重合体に含有される単位である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。より好ましくは、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンである。
エチレンから誘導される構成単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50〜99重量%である。炭素数4〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常1〜50重量%である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、上記のエチレンから誘導される構成単位および炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位以外の他の単量体から誘導される構成単位を含有していても良い。他の単量体としては、例えば、共役ジエン(例えばブタジエンやイソプレン)、非共役ジエン(例えば1,4−ペンタジエン)、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチルやアクリル酸エチル)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル)、酢酸ビニル等が挙げられる。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体として好ましくは、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、より好ましくは、エチレンと炭素数5〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、さらに好ましくは、エチレンと炭素数6〜10のα−オレフィンとの共重合体である。例えば、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン−1−ヘキセン共重合体である。また、エチレンと炭素数6〜10のα−オレフィンと1−ブテンとの3元共重合体も好ましく、例えばエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、より好ましくはエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR、単位はg/10分である。)は、通常0.01〜100であり、好ましくは0.05〜20であり、より好ましくは0.1〜10であり、さらに好ましくは0.1〜6である。
本発明において、メルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)は、JIS K7210−1995に規定された方法に従い、190℃において、荷重21.18N(2.16Kg)で測定された値である。そして、上記のメルトフローレートの測定には、予め酸化防止剤を1000ppm配合した重合体を用いる。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、通常、890〜970kg/m3であり、JIS K6760−1981に規定された方法に従って、測定された値である。上記の密度として、好ましくは、本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体から得られるフィルムの剛性と衝撃強度のバランスの観点から、905〜940kg/m3であり、より好ましくは907〜930kg/m3である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有するような溶融張力に優れたエチレン−α−オレフィン共重合体であり、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は従来から知られている通常のエチレン−α−オレフィン共重合耐に比べて、流動の活性化エネルギーがより高い。
このようなエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea、単位はkJ/molである。)は、通常50kJ/mol以上である。従来から知られている通常のエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギーは、通常50kJ/mol未満であり、押出機負荷の上昇や加工安定性の不良を招くなど押出加工性に劣る。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)として、より好ましくは55kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、高温で溶融粘度を低下させずに十分な成形性を得るという観点や、外観が良好なフィルムが得られるという観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
流動の活性化エネルギー(Ea)は、粘弾性測定装置として、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800を用いて、下記の条件(1)〜(4)で測定される各温度T(単位はKである。)における動的粘弾性データを、温度−時間重ね合わせ原理に基づいてシフトさせて190℃での動的粘度(η;単位はPa・secである。)の剪断速度(ω:単位はrad/secである。)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)のアレニウス型方程式から算出される数値であって、加工性の指標となるものである。
各温度T(K)における動的粘弾性データの測定条件
(1)ジオメトリー:パラレルプレート、直径25mm、プレート間隔:1.5〜2mm
(2)ストレイン:5%
(3)剪断速度:0.1〜100rad/sec
(4)温度:190、170、150、130℃
また、サンプルには予めイルガノックス1076などの酸化防止剤を、適量(例えば1000ppm以上)配合し、測定はすべて窒素下で実施する。
シフトファクター(aT)のアレニウス型方程式
log(aT)=Ea/R(1/T−1/T0
(Rは気体定数であり、T0は基準温度(463K)である。)
また、計算ソフトウェアには、Rheometrics社 Rhios V.4.4.4を使用し、アレニウス型プロットlog(aT)−(1/T)において、直線近似をした時に得られる相関係数r2が0.99以上であるときのEa値を、本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギーとする。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)と190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度(η;単位はPa・secである。)とは、式(1)の関係を満たすものである。
η<1550×MFR-0.25−420 式(1)
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度ηとは、前述の粘弾性測定において測定される剪断溶融粘度である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度ηが式(1)の関係を満たさない場合、フィルム加工時の押出機負荷が十分に低下せず押出成形加工性が不十分になることがある。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体が満たすメルトフローレート(MFR)と190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度ηとの関係として、式(1)の関係より好ましい関係は、
η<1500×MFR-0.25−420 式(1’)
であり、さらに好ましい関係は、
η<1450×MFR-0.25−420 式(1'')
であり、もっとも好ましい関係は、
η<1350×MFR-0.25−420 式(1''')
である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布としては、好ましくは7.0〜25であり、より好ましくは7.5〜20であり、さらに好ましくは8.5〜17である。分子量分布が狭すぎる場合は、押出負荷が上昇して押出成形加工性が損なわれ、一方で、分子量分布が広すぎる場合は、フィルムの耐ブロッキング性が悪化する場合がある。上記の分子量分布とは、前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを算出し、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である
鎖長分布曲線は、以下の条件(1)〜(6)で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得ることができる。
(1)装置:Water製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
(3)測定温度:145℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
一般的に、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)と溶融張力の間には関係があり、MFRが増大するにつれて、溶融張力が低下することが知られている。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有するような溶融張力の高いエチレン−α−オレフィン共重合体であり、好ましくはメルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)と190℃における溶融張力(MT;単位はcNである。)とが下記式(3)の関係を満たすものである。
2×MFR-0.59<MT<40×MFR-0.59 式(3)
従来のエチレン−α−オレフィン共重合体は、式(3)の左辺を通常満たさない。
溶融張力が低すぎると、押出加工性が悪化することがあり、溶融張力が高すぎると、高速での引取りが困難となることがある。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体が満たすメルトフローレート(MFR)と溶融張力(MT)の関係として、上記の式(3)の関係より好ましい関係は、
2.2×MFR-0.59<MT<25×MFR-0.59 式(3’)
であり、さらに好ましい関係は、
2.5×MFR-0.59<MT<15×MFR-0.59 式(3'')
である。
上記の式(3)における溶融張力(MT;単位はcNである。)とは、東洋精機製作所等から販売されているメルトテンションテスターを用いて、190℃、押出速度5.5mm/分のピストンで、直径2.09mmφ、長さ8mmのオリフィスから溶融樹脂ストランドを押し出し、前記ストランドを直径50mmのローラーを用いて毎分40rpm/分づつ回転速度を上昇させながら巻き取ったときに、前記ストランドが切れる直前の張力値である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた鎖長分布曲線を、少なくとも2つの対数正規分布曲線に分割して得られる対数正規分布曲線のうち、最も高分子量である成分に相当する対数正規分布曲線のピーク位置の鎖長Aと前記MFRとが下記式(4)の関係を満たすものである。
3.30<logA<−0.0815×log(MFR)+4.05 式(4)
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体が上記式(4)の関係を満たすと、溶融張力がより高く押出加工性により優れ、または、押出機負荷がより低く押出加工性により優れ、さらに得られるフィルムの外観に優れる。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体が満たすメルトフローレート(MFR)と鎖長A(logA)の関係として、上記の式(4)の関係より好ましい関係は、
3.30<logA<−0.0815×log(MFR)+4.03 式(4’)
であり、さらに好ましい関係は、
3.30<logA<−0.0815×log(MFR)+4.02 式(4'')
である。
鎖長分布曲線は、以下の条件(1)〜(6)で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得ることができる。
(1)装置:Water製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
(3)測定温度:145℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
鎖長分布曲線の分割は以下のとおりに行う。
初めに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって、鎖長Awの対数であるlogAw(x値)に対して重量割合dW/d(logAw)(y値)がプロットされた鎖長分布曲線を実測する。プロットデータ数は、連続的な分布曲線になるよう、通常少なくとも300以上ある。次に、上記のx値に対して、標準偏差0.30を有し、任意の平均値(通常、ピーク位置の鎖長Aに相当する。)を有する4つの対数正規分布曲線(x−y曲線)を任意の割合で足し合わることによって、合成曲線を作成する。さらに、実測された鎖長分布曲線と合成曲線との同一x値に対するy値の偏差平方和が最小値になるように、平均値と割合を求める。偏差平方和の最小値は、各ピークの割合がすべて0の場合の偏差平方和に対して通常0.5%以下になる。そして、偏差平方和の最小値を与える平均値と割合が得られたときに、4つの対数正規分布曲線に分割して得られる対数正規分布曲線のうち、最も高分子量である成分に相当する対数正規分布曲線のピーク位置の鎖長AからlogAが算出される。この最も高分子量である成分に相当する対数正規分布曲線のピークの割合は、通常10%以上である。
長鎖分岐を有するようなエチレン−α−オレフィン共重合体は通常、190℃での特性緩和時間が長いが、長すぎることなく少し短めであると、溶融張力がより高く押出加工性により優れ、または、押出機負荷が低く押出加工性により優れ、さらに、フィルムの押出外観に優れる。
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、好ましくは、190℃での特性緩和時間(τ;単位はsecである。)と前記MFRとが下記式(5)の関係を満たすものである。
2<τ<8.1×MFR-0.746 式(5)
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体が満たすメルトフローレート(MFR)と特性緩和時間(τ)の関係として、上記の式(5)の関係より好ましい関係は、
2<τ<7.9×MFR-0.746 式(5’)
であり、さらに好ましい関係は、
2<τ<7.8×MFR-0.746 式(5'')
である。
190℃での特性緩和時間(τ)は、粘弾性測定装置として、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800を用いて、下記の条件(1)〜(4)で測定される各温度T(単位はKである)における動的粘弾性データを、温度−時間重ね合わせ原理に基づいてシフトさせて190℃での動的粘度(η;単位はPa・secである。)の剪断速度(ω:単位はrad/secである。)依存性を示すマスターカーブを得たのちに、そのマスターカーブを下記のクロス式で近似する際に算出される数値である。
各温度T(K)における動的粘弾性データの測定条件
(1)ジオメトリー:パラレルプレート、直径25mm、プレート間隔:1.5〜2mm
(2)ストレイン:5%
(3)剪断速度:0.1〜100rad/sec
(4)温度:190、170、150、130℃
また、サンプルには予めイルガノックス1076などの酸化防止剤を、適量(例えば1000ppm以上)配合し、測定はすべて窒素下で実施する。
クロスの近似式
η=η0/[1+(τ×ω)n
(η0およびnはそれぞれ、特性緩和時間τと同様に、測定に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体ごとに求められる定数である。)
また、マスターカーブの作成やクロス式近似のための計算ソフトウェアには、Rheometrics社 Rhios V.4.4.4を使用する。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート比(MFRR)としては、流動性の観点から高いほどよく、60以上であると、押出負荷がより低く、押出加工性により優れる。
上記のメルトフローレート比(MFRR)は、JIS K7210−1995に規定された方法に従い、190℃、荷重211.82N(21.60kg)で測定されたメルトフローレート値を、荷重21.18N(2.16kg)で測定されたメルトフローレート値で除した値である。なお、上記のメルトフローレート測定には、予め酸化防止剤を1000ppm配合した重合体を用いる。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法は、下記のメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法である。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられるメタロセン系オレフィン重合用触媒は、助触媒担体(A)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)、有機アルミニウム化合物(C)および電子供与性化合物(D)を接触させて得られる触媒であり、前記助触媒担体(A)はジエチル亜鉛(a)、2種類のフッ素化フェノール(b)と(c)、水(d)、無機化合物の粒子(e)および(f)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させて得られる担体である。
2種類のフッ素化フェノール(b)と(c)として、好ましくはペンタフルオロフェノール、トリフルオロフェノールである。
無機化合物の粒子(e)として、好ましくはシリカゲルである。
上記(a)、(b)、(c)、(d)各化合物の使用量は特に制限はないが、各化合物の使用量のモル比率を(a):(b):(c):(d)=1:x:y:zのモル比率とすると、x、yおよびzが下記の式(3)を満足することが好ましい。
|2−(x+y)−2z|≦1 (3)
上記の式(3)における(x+y)として好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
また、(a)に対して使用する(e)の量としては、(a)と(e)との接触により得られる粒子に含まれる(a)に由来する亜鉛原子が、得られる粒子1gに含まれる亜鉛原子のモル数にして、0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。(e)に対して使用する(f)の量としては、(e)1gにつき(f)0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)として、好ましくはラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドである。
また、有機アルミニウム化合物(C)として、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムである。
また、電子供与性化合物(D)として、好ましくはトリエチルアミン、トリノルマルオクチルアミンである。
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)の使用量は、助触媒担体(A)1gに対し、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物(C)の使用量として、好ましくは、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)のジルコニウム原子モル数に対する有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子のモル数の比(Al/Zr)で表して、1〜2000である。
また、電子供与性化合物(D)の使用量は、有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子のモル数に対して、0.1〜10mol%である。
重合方法として、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う連続重合方法であり、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合であり、好ましくは、連続気相重合である。
気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられるメタロセン系オレフィン重合用触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合触媒成分を本重合の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。
重合温度としては、通常、共重合体が溶融する温度未満であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。
また、共重合体の溶融流動性を調節する目的で、水素を分子量調節剤として添加してもよい。そして、混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐のようなポリマー構造を有すると考えられる。そして、長鎖分岐のようなポリマー構造としては、緊密に絡み合った構造が好ましいと考えられる。そして、そのような緊密に絡み合った構造によって、従来のエチレン−α−オレフィン共重合体よりも高い流動の活性化エネルギーが得られ、押出成形性がさらに向上すると考えられる。
前述のように、長鎖分岐のようなポリマー構造が、緊密に絡み合った構造であると考えられるエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea、単位はkJ/molである。)としては、低温で溶融張力を上昇させ、十分な成形性を得るという観点から、好ましくは、60kJ/mol以上であり、より好ましくは63kJ/mol以上であり、さらに好ましくは66kJ/mol以上である。また、高温で溶融粘度が低下させずに、十分な成形性を得るという観点や、フィルムの表面が荒れ、外観が損なわれないようにするという観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
本発明で用いる好ましいエチレン−α−オレフィン共重合体、すなわち、流動の活性化エネルギー(Ea)が60kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体、または、上記式(7)または式(8)の関係を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体であって、長鎖分岐のようなポリマー構造として緊密に絡み合った構造を有していると考えられるエチレン−α−オレフィン共重合体は、前記のメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて、水素の共存下でエチレンとα−オレフィンとを共重合した後に、次の連続押出造粒方法で混練する方法によって、製造することができる。
方法の一つは、米国特許5、451、106号公報に記載されているUtracki等が開発した伸長流動混練(EFM)ダイを備えた押出機を用いて連続的にストランドを成形し、そのストランドを連続的にカットし、ペレットとして製造する方法である。また、方法の一つは、ギアポンプを有する異方向二軸スクリューを備えた押出機を用いて連続的にストランドを成形し、そのストランドを連続的にカットし、ペレットとして製造する方法である。後者は、スクリュー部からダイまでの間に滞留部があることが好ましい。
本発明のフィルムは複屈折値が下記(2)式を満たすものである。
−0.5×10-3<nx−ny<0.5×10-3 式(2)
ここで、nxはMD方向(フィルム引取り方向)の屈折率を示し、nyはTD方向(フィルム引取り方向と直行する方向)の屈折率を示す。
本発明における複屈折値は上記nxとnyの差、すなわちnx−nyで示される。複屈折値は例えばアスカ電子(株)製三次元複屈折測定装置等市販の複屈折測定装置によって測定することが可能である。測定光源の波長としては546(nm)を用いる。測定は23℃環境下において行う。
複屈折値nx−nyを前記範囲とすることにより、強度に優れるインフレーションフィルムとなる。複屈折値nx−nyは下記式(2’)を満たす範囲であることがより好ましい。
−0.3×10-3<nx−ny<0.3×10-3 式(2')
また、式(2)を満たした上で、さらに下記式(2-2)を満たすとさらに好ましい。
1.0×10-3<ny−nz<20×10-3 式(2-2)
ここで、nzはフィルムの厚み方向の屈折率を示す。この値も前記の三次元複屈折測定装置によって測定することができる。
フィルムの複屈折値が式(2)に加えて式(3)を満たすことにより、より強度に優れるインフレーションフィルムとなる。
本発明のインフレーションフィルムは、空冷インフレーションフィルム成形法により製造されるものであり、環状ダイおよび複数のスリットを有するエアリングを備えたインフレーションフィルム成形機を用いて製造される。エアリングは2つ以上のスリットを有し、各スリットから冷却媒体を吐出することができる。環状ダイより押出された溶融状エチレン−α−オレフィン共重合体に、前記エアリングの2つ以上のスリットから冷却媒体を吹きつけて冷却することにより、複屈折値が前記式(2)を満たす本発明のインフレーションフィルムを得ることができる。
インフレーション成形を行う際のBUR(Blow up ratio、ダイリップ直径に対するバブル直径の比)は1.8〜10の範囲が好ましく、2〜6の範囲がさらに好ましい。
インフレーション成形を行う際に使用する環状ダイは特に制限されないが、リップギャップは通常、0.5mm〜3mmである。本発明では、フィルムの複屈折値が前記式(2)の範囲に入るよう調整する観点から、0.5〜3.0mmであることが好ましく、0.5〜2.0mmであればさらに好ましい。
インフレーション成形を行う際の加工温度は特に制限されないが、通常130℃から230℃であり、140〜170℃が好ましい。
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体には、必要に応じて、他のエチレン系樹脂を配合してもよく、また、公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等が挙げられる。
次に、本発明を実施例によって説明する。
[1]評価方法
(1)MFR
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、190℃において、荷重21.18N(2.16Kg)の条件によって測定した。
(2)押出機負荷
押出機スクリュー駆動用電動機の電流値(A:アンペア)を読み取った。この値が低いほど押出機負荷が低く、好ましいことを示す。
(3)樹脂圧(MPa)
押出機先端に設置された樹脂圧計から読み取った。この値が小さいほど押出負荷が小さく好ましいことを示す。
(4)複屈折
アスカ電子(株)製三次元複屈折測定装置を用いて測定した。フィルムのMD方向をx方向、TD方向をy方向、厚み方向をz方向として測定を行い、屈折率nx、nyおよびnzを算出した上でnx−nyおよびny−nzを求めた。なお、測定光源の波長は546(nm)を用いた。
(5)ダートインパクト
ASTM D1709−75に従って測定した。A法を用いた。この値が高いほどフィルム強度に優れることを示す。
実施例1
[触媒成分の調製]
(1)シリカの処理
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、トルエン24kgおよび窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン 0.91kgとトルエン 1.43kgの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら33分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、95℃で3時間攪拌した。その後、得られた固体生成物をトルエン 21kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエンを 6.9kg加え、一晩静置した。
(2)助触媒担体(A)の合成
上記で得られたスラリーに、50wt%のジエチル亜鉛のヘキサン溶液 2.05kgとヘキサン 1.3kgを投入し、攪拌した。その後、5℃に冷却した後、ペンタフルオロフェノール 0.77kgとトルエン 1.17kgの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら61分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、H2O 0.11kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、55℃で2時間攪拌した。その後、室温にて50wt%のジエチル亜鉛のヘキサン溶液 1.4kgとヘキサン 0.8kgを投入した。5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール 0.42kgとトルエン 0.77kgの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、H2O 0.077kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、40℃で2時間、更に、80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し残量16Lまで上澄み液を抜き出しトルエン 11.6kgを投入し、攪拌した。95℃に昇温し、4時間攪拌した。得られた固体生成物をトルエン 20.8kgで4回、ヘキサン 24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することで助触媒担体(A)を得た。
[予備重合触媒の調製]
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、上記助触媒担体(A)0.55kgを投入し、常温常圧の水素として3リットルと、20gの1−ブテンと、ブタン80リットルを仕込んだ後、オートクレーブを30℃まで昇温した。さらにエチレンをオートクレーブ内のガス相圧力で0.02MPa分だけ仕込み、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム165mmolとラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド55mmolを投入して重合を開始した。32℃へ昇温するとともに、エチレンと水素を連続で供給しながらさらに50℃まで昇温し、合計で4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記助触媒担体(A)1g当り13gのエチレン−1−ブテン共重合体が予備重合された予備重合触媒成分を得た。
[重合]
上記で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施した。重合条件は、温度75℃、全圧2MPaエチレンに対する水素モル比は0.9%、エチレンに対する1−ヘキセンモル比は1.9%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。上記予備重合済触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持するよう、平均重合時間4hr、21kg/hrの生産効率でエチレン−1−ヘキセン共重合パウダーを得た。上記で得たエチレン−1−ヘキセン共重合パウダーに、酸化防止剤(住友化学社製 スミライザーGP)750重量ppmをブレンドし、神戸製鋼所社製LCM50押出機を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン共重合体を得た。
得られた共重合体の物性値を表1に示す。
Figure 2006137848
[インフレーション成形]
上記の方法で得られたエチレン−1−ヘキセン共重合体と市販のエチレン−1−ヘキセン共重合体(住友化学(株)製 スミカセンE FV203、密度=915kg/m3、MFR=2(g/10min))を80:20の重量比率で配合し、プラコー(株)社製インフレーションフィルム成形機を用いてフィルム成形した。
具体的には、上記配合材料をφ50mm押出機に投入し、170(℃)の温度にて溶融混練し、押出して上向きの環状ダイに導き、環状のリップから押出した。リップ径は125(mm)、リップギャップは2(mm)であった。押出量は27(kg/h)とした。
インフレーション成形機としてはエアリングがダブルスリット方式のものを用い、ブロワから送られた冷風を下段吹き出し口と上段吹き出し口に分流させて導入した。
環状リップから押出したチューブ状溶融膜に対して内部に空気を吹き込んでブローアップし、BURを2.9に調整してインフレーションフィルムを得た。フィルム厚みは30(μm)となるように、引取速度の調整によって調整した。
加工時の押出機負荷と得られたフィルムの物性を表2に示す。
実施例2
インフレーションフィルム成形の際に、ダイのリップ径を75mm、リップギャップを3.0mmとし、BURを4.2とした他は実施例1と同様に成形、評価を行った。
加工時の押出機負荷と得られたフィルムの物性を表2に示す。
比較例1
ダウケミカル社製LLDPE(Dowlex2045G,密度=0.92(g/cm3),MFR=1(g/10min)20重量部に対し、高圧法低密度ポリエチレン(住友化学(株)製、スミカセンF200,密度=0.92(g/cm3),MFR=2(g/10min))を80重量部配合した材料を用い、実施例1と同様に成形、評価を行った。
加工時の押出機負荷と得られたフィルムの物性を表2に示す。
Figure 2006137848

Claims (2)

  1. エチレンから誘導される構成単位と炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン−α−オレフィン共重合体であって、流動の活性化エネルギーが50kJ/mol以上であり、メルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)と190℃の剪断速度100rad/secにおける溶融粘度(η;単位はPa・secである。)とが下記式(1)の関係を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体を、環状ダイおよび複数のスリットを有するエアリングを備えたインフレーション成形機によりインフレーション成形して得られるフィルムであって、該フィルムが、前記環状ダイより押出された溶融状エチレン−α−オレフィン共重合体に、前記エアリングの2つ以上のスリットから冷却媒体を吹きつけて冷却して得られるフィルムであり、当該フィルムの複屈折値が下記式(2)を満たすことを特徴とするインフレーションフィルム。
    η<1550×MFR-0.25−420 式(1)
    −0.5×10-3<nx−ny<0.5×10-3 式(2)
  2. フィルムの複屈折値が上記式(2)とともに下記式(2−2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインフレーションフィルム。
    1.0×10-3<ny−nz<20×10-3 式(2−2)
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JP2008031418A (ja) * 2006-07-03 2008-02-14 Sumitomo Chemical Co Ltd フィルムおよびフィルムの製造方法

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