以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
図1〜図26は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両のブレーキ系を簡略化して示す図、図2はブレーキ液圧系の構成を示す図、図3は制御系の構成を示す図、図4は駐車ブレーキ処理のメインルーチンのフローチャート、図5は停車判定ルーチンのフローチャート、図6は自動動作許可判定ルーチンのフローチャート、図7は自動動作ルーチンのフローチャートの第1分図、図8は自動動作ルーチンのフローチャートの第2分図、図9は自動動作ルーチンのフローチャートの第3分図、図10は自動動作ルーチンのフローチャートの第4分図、図11はスロットル開度閾値のマップを示す図、図12は自動作動ルーチンのフローチャートの第1分図、図13は自動作動ルーチンのフローチャートの第2分図、図14は第1の目標牽引力の設定マップを示す図、図15は自動解除ルーチンのフローチャート、図16は手動動作ルーチンのフローチャートの第1分図、図17は手動動作ルーチンのフローチャートの第2分図、図18は手動動作ルーチンのフローチャートの第3分図、図19は手動動作ルーチンのフローチャートの第4分図、図20は手動・自動優先判定ルーチンのフローチャート、図21は手動作動ルーチンのフローチャートの第1分図、図22は手動作動ルーチンのフローチャートの第2分図、図23は手動解除ルーチンのフローチャート、図24は車両移動監視ルーチンのフローチャート、図25は自動増引ルーチンのフローチャートの第1分図、図26は自動増引ルーチンのフローチャートの第2分図である。
先ず図1において、図示しないエンジンの動力がたとえば自動変速機を介して伝達される駆動輪である左前輪WAおよび右前輪WCには、液圧の作用に応じてブレーキ作動する左前輪用ディスクブレーキ2Aおよび右前輪用ディスクブレーキ2Cが車輪ブレーキとして装着され、従動輪である右後輪WBおよび左後輪WDには、液圧の作用に応じてブレーキ作動する右後輪用ディスクブレーキ2Bおよび左後輪用ディスクブレーキ2Dが車輪ブレーキとして装着される。
図2において、タンデム型のマスタシリンダMは、ブレーキ操作部材であるブレーキペダルPをドライバーが操作するのに応じた液圧を出力する第1および第2出力ポート1A,1Bを備えており、第1および第2出力ポート1A,1Bは、液圧制御装置5を介して前記各ディスクブレーキ2A〜2Dに接続される。
前記液圧制御装置5は、第1出力ポート1Aに通じ得る第1液圧路20Aと、第2出力ポート1Bに通じ得る第2液圧路20Bと、第1および第2出力ポート1A,1Aならびに第1および第2液圧路20A,20B間にそれぞれ介設される第1および第2調圧弁17A,17Bと、左前輪用ディスクブレーキ2Aに連なるディスクブレーキ側液圧路4Aおよび第1液圧路20A間に介設される常開型電磁弁6Aと、右後輪用ディスクブレーキ2Bに連なるディスクブレーキ側液圧路4Bおよび第1液圧路20A間に介設される常開型電磁弁6Bと、右前輪用ディスクブレーキ2Cに連なるディスクブレーキ側液圧路4Cおよび第2液圧路20B間に介設される常開型電磁弁6Cと、左後輪用ディスクブレーキ2Dに連なるディスクブレーキ側液圧路4Dおよび第2液圧路20B間に介設される常開型電磁弁6Dと、前記各常開型電磁弁6A〜6Dに並列に接続されるチェック弁7A〜7Dと、第1および第2出力ポート1A,1Bに個別に対応した第1および第2リザーバ8A,8Bと、第1リザーバ8Aおよびディスクブレーキ側液圧路4A,4B間に介設される常閉型電磁弁9A,9Bと、第2リザーバ8Bおよびディスクブレーキ側液圧路4C,4D間に介設される常閉型電磁弁9C,9Dと、共通な電動モータ11で駆動されるとともに吐出側が第1および第2液圧路20A,20Bに接続される第1および第2ポンプ10A,10Bと、第1および第2リザーバ8A,8Bならびに第1および第2ポンプ10A,10Bの吸入側間に介設される一方向弁19A,19Bと、第1および第2出力ポート1A,1Bならびに第1および第2ポンプ10A,10Bの吸入側間に介設される第1および第2サクション弁18A,18Bと、第1および第2液圧路20A,20Bならびに第1および第2ポンプ10A,10Bの吐出側間に接続される第11および第2ダンパ13A,13Bとを備える。
調圧弁17A,17Bは、第1および第2出力ポート1A,1Bならびに第1および第2液圧源20A,20B間の連通・遮断を切り換え可能であるとともに、第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を調圧するように作動することも可能である。またディスクブレーキ側液圧路4A,4Cには、左前輪用ディスクブレーキ2Aおよび右前輪用ディスクブレーキ2Cに作用しているブレーキ液圧、すなわち常開型電磁弁6A,6Cが開弁している通常のサービスブレーキ状態では第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を検出するブレーキ液圧センサ15,15が設けられる。
而して第1および第2サクション弁18A,18Bを励磁、開弁した状態で電動モータ11を作動せしめることにより、第1および第2ポンプ10A,10Bが、マスタシリンダM側から吸入して加圧したブレーキ液を第1および第2液圧路20A,20Bに吐出することになる。この際、ブレーキ液圧センサ15…で検出されるブレーキ液圧に応じて調圧弁17A,17Bの作動を制御することにより、第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を一定とすることができる。
すなわち第1および第2ポンプ10A,10Bならびに第1および第2調圧弁17A,17Bは、非ブレーキ操作時に第1および第2液圧路20A,20Bに一定の液圧を作用せしめるものであり、第1および第2液圧路20A,20Bの一定液圧を各常開型電磁弁6A〜6Dおよび各常閉型電磁弁9A〜9Dで制御することにより、各ディスクブレーキ2A〜2Dに相互に異なるブレーキ液圧を作用せしめることができ、それにより車両走行時の挙動安定制御やトラクション制御等の自動ブレーキ制御を実行することができる。
またサービスブレーキ時には、第1および第2調圧弁17A,17Bが開弁されるとともに第1および第2サクション弁18A,18Bが閉弁されており、各常開型電磁弁6A〜6Dおよび各常閉型電磁弁9A〜9Dのうちサービスブレーキ時にロック状態に陥る可能性が生じた車輪に対応する常開型および常閉型電磁弁の開閉作動を制御するアンチロックブレーキ制御を実行することにより、車輪をロックさせることなく、効率良く制動することができる。
再び図1において、右後輪用ディスクブレーキ2Bおよび左後輪用ディスクブレーキ2Dには、駐車専用ブレーキであるドラムブレーキ21,21が装着されており、該ドラムブレーキ21は、ブレーキディスク23に一体に設けられるブレーキドラム24と、ブレーキドラム24の内周面に接触可能な一対のブレーキシュー25,26と、両ブレーキシュー25,26を連結する連結ロッド27と、一方のブレーキシュー25にピン28を介して一端が回転自在に支持されるレバー29とを備える。
前記両ドラムブレーキ21,21は、電動ブレーキ駆動手段22により作動せしめられるものであり、この電動ブレーキ駆動手段22は、車体に固定される支持枠30に取付けられる正逆回転自在の電動モータ31と、一端が該電動モータ31に同軸に連結されるとともに他端が前記支持枠30に回転自在に支承されるねじ軸32と、ねじ軸32の軸線まわりの回転を不能としつつ前記軸線まわりのスライドを可能として前記支持枠30に支承されるとともに前記ねじ軸32に螺合されるイコライザ33と、該イコライザ33に一端が連結される左右一対のボーデンワイヤ34,34と、非通電時に前記ねじ軸32の回転を拘束する電磁ブレーキ35とを備え、前記両ボーデンワイヤ34,34の他端が前記両ドラムブレーキ21,21におけるレバー29…の他端に連結される。
このような電動ブレーキ駆動手段22において、電磁ブレーキ35に通電してねじ軸32の回転拘束状態を解除した状態で、電動モータ31によってねじ軸32を回転作動せしめることにより、左右のボーデンワイヤ34,34を緊張させて両ドラムブレーキ21,21をブレーキ作動せしめたり、左右のボーデンワイヤ34,34を緩めて両ドラムブレーキ21,21のブレーキ作動を解除したりすることができ、両ドラムブレーキ21,21のブレーキ状態で前記電磁ブレーキ35を非通電状態としてねじ軸32の回転を拘束することにより、電動モータ31への通電を停止した状態でドラムブレーキ21,21のブレーキ状態を保持することができる。
すなわち電動ブレーキ駆動手段22は、電動モータ31の出力を機械的に伝達することにより、ブレーキ作動およびブレーキ解除を切換えつつドラムブレーキ21,21を駆動することが可能であるとともに、ドラムブレーキ21,21のブレーキ状態を保持可能である。
図3に示すように、電源系36から給電されて液圧制御装置5および電動ブレーキ駆動手段22の作動を制御する制御ユニット37には、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作の許可および不許可を切り換える自動動作選択手段としての自動動作許可スイッチ38と、手動により電動ブレーキ駆動手段22のブレーキ作動および解除を指示する手動動作指示スイッチ39と、イグニッションスイッチ40と、回転方向を含む各車輪速度を検出する4個の車輪速度センサ41…と、「P」(パーキング),「N」(ニュートラル),「D」(ドライブ),「R」(リバース)の各シフトポジションを検出するシフトポジションセンサ42と、サービスブレーキのブレーキペダルPがオンしたことを検出するブレーキスイッチ43と、サービスブレーキのブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ15…と、スロットル開度を検出するスロットルセンサ44と、Gセンサで構成されて車両の傾斜状態(路面の傾斜状態)を検出する傾斜センサ45と、ドライバーが座るドライバーシートの傾斜角度を検出するシート角度センサ46と、ポテンショメータで構成されて電動ブレーキ駆動手段22におけるボーデンワイヤー34,34のストローク量を検出するストロークセンサ47とから信号が入力され、それらの信号に基づいて、液圧制御装置5の作動と、電動モータ31を含む電動ブレーキ駆動手段22の作動と、ドライバーに電動ブレーキ駆動手段22が作動中であることを表示する作動ランプ48の作動とが制御ユニット37によって制御される。
なお手動動作指示スイッチ39は、自己復帰型の3位置切り換えスイッチであり、手を離した状態では常にオフ位置にあり、手動動作指示スイッチ39を作動および解除のいずれか側に操作している間だけ、作動指示および解除指示のいずれかの信号を出力する。また自動動作許可スイッチ38は、2位置切り換えスイッチであり、自動動作の許可位置および不許可位置のいずれか一方を選択するものである。
次に制御ユニット37による液圧制御装置5、電動ブレーキ駆動手段22および作動ランプ48の作動と制御についてフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「自動動作モード」とは、自動動作許可スイッチ38がオン位置(許可位置)にあるときに選択されるモードであって、車両の運転状態に応じて電動ブレーキ駆動手段22が自動的にブレーキをかける側に作動する「自動作動」と、電動ブレーキ駆動手段22が自動的にブレーキを解除する側に作動する「自動解除」とが含まれる。また「手動動作モード」とは、駐車時等にドライバーが手動動作指示スイッチ39を操作することによってブレーキをかける側に電動ブレーキ駆動手段22を作動せしめる「手動作動」ならびにブレーキを解除する側に電動ブレーキ駆動手段22を作動せしめる「手動解除」の何れか一方をマニュアルで選択するモードである。
先ず図4のフローチャートに基づいてメインルーチンを説明すると、ステップS1でイグニッションスイッチ40がオンしていれば、ステップS2で各センサやスイッチ類15,38〜47の出力を読み込み、その値が正常値にあるか否かにより故障の有無を診断する。ステップS3で何らかの故障があれば、ステップS4でフェールセーフ動作を行う。またステップS5では異常減速の判定を実行し、ステップS6で車両の停車判定を行い、続くステップS7で自動動作許可判定を行い、自動動作が禁止されていないことをステップS8で確認したときにはステップS9で自動動作(自動作動あるいは自動解除)を行い、次のステップS10で手動動作(手動作動あるいは手動解除)を行い、さらにステップS11で車両の移動監視を行う。またステップS8で自動動作が禁止されていることを確認したときにはステップS9を迂回してステップS10に進み、ステップS1でイグニッションスイッチ40がオフしていることを確認したときにはステップS12でエンジン停止時動作を行う。
前記ステップS5の異常減速判定処理は、推定車体速度が5〜10km/hの範囲にあるときに、車体速度に基づく減速度変化量ならびに傾斜センサ45の検出値に基づく減速度変化量の差の絶対値がたとえば1m/sec2 を超える状態、車体速度に基づく減速度がたとえば6m/sec2 を超える高減速度の状態、ならびに液圧制御装置5でアンチロックブレーキ制御を実行することができない状態のいずれかが設定時間以上持続したときに、異常減速フラグを「1」とするものであり、異常減速フラグが「1」の状態では、自動動作モードにあっても電動ブレーキ駆動手段22の自動作動は実行されない。
前記ステップS6の停車判定ルーチンは、図5に示すフローチャートに従って実行されるものであり、図5のステップS21で推定車体速度VR4Rが2km/hを超えていることを確認し、ステップS22,23で作動継続フラグおよび解除継続フラグが「0」であることを確認したときには、ステップS24で停止確定フラグを「0」にリセットする。
ところで、作動継続フラグ=「1」は電動ブレーキ駆動手段22のブレーキ作動側への作動途中である状態を記憶し、作動継続フラグ=「0」はブレーキ作動側への電動ブレーキ駆動手段22の作動が完了した状態を記憶するものであり、解除継続フラグ=「1」は電動ブレーキ駆動手段22のブレーキ解除側への作動途中である状態を記憶し、解除継続フラグ=「0」はブレーキ解除側への電動ブレーキ駆動手段22の作動が完了した状態を記憶するものであり、停止確定フラグ=「0」は車両の停止が確定しない状態を記憶し、停止確定フラグ=「1」は車両の停止が確定した状態を記憶するものである。仮に、推定車体速度VR4Rが0km/hを越えたときに停止確定フラグを「0」にリセットすると、車体の微妙な揺れや車輪速度センサ41…のノイズ等によって停止確定フラグが「0」にリセットされてしまう不都合があるが、本実施例のように推定車体速度VR4Rが2km/hを越えたときに停止確定フラグを「0」にリセットすれば、上記不都合を回避することができる。
上記ステップS24に続くステップS25では、自動作動禁止フラグおよび自動解除禁止フラグを「0」にリセットし、ステップS26では停止確定タイマー(実施例では300msec)をリセットする。なお自動作動禁止フラグおよび自動解除禁止フラグ=「0」は、電動ブレーキ駆動手段22の「自動作動」および「自動解除」が禁止されていない状態を記憶し、自動作動・解除禁止フラグ=「1」は電動ブレーキ駆動手段22の「自動作動」および「自動解除」が禁止されている状態を記憶するものであり、自動作動・解除禁止フラグが「1」であって電動ブレーキ駆動手段22の「自動作動」および「自動解除」が禁止されている状態でも、推定車体速度VR4Rが2km/hを超え、車両が走行を開始したときには自動作動禁止フラグおよび自動解除禁止フラグを「0」として、電動ブレーキ駆動手段22の「自動作動」および「自動解除」が許可されることになる。
また前記ステップS22,23で作動継続フラグおよび解除継続フラグが「1」であることを確認したとき、ならびに推定車体速度VR4Rが2km/h以下であってもステップS27で4輪のうちの何れかの車輪速度センサ41…の車輪速度パルスが出力されたときには、前記ステップS26に移行する。このように、車輪速度パルスが出力される度に停止確定タイマーをリセットすることで、車輪速度パルスが出力されない状態が連続して300msec以上継続しないと停止確定しない。また車輪速度パルスが出力される度に停止確定タイマーをリセットすることで、車輪速度パルスが出力されない状態が連続して300msec以上継続しないと停止確定判断を行わない。
前記ステップS27で何れの車輪速度センサ41…も車輪速度パルスを出力しなければ、ステップS28で停止確定タイマーをカウントアップし、ステップS29で停止確定タイマーが300msec以上になれば、ステップS30でブレーキスイッチ43がオン状態となったときに「1」となるフラグが「1」となっているか否か、すなわちドライバーが車両を停止または駐車せしめる意図をもってブレーキペダルPを踏み込んだか否かを判断し、ブレーキスイッチ43がオン状態となっていることを確認したときにステップS31で停止確定フラグを「1」にセットする。
このように停止確定をする際には、ブレーキスイッチ43の信号がオンであることを条件にすることで、ドライバーが車両を停止または駐車せしめる意図をもっていることを把握して車両の停止を確認することになる。
停止確定フラグのセット後のステップS32では緊急作動フラグが「0」にリセットされ、続くステップS33でABSフラグが「0」にリセットされ、さらにステップS34で低路面摩擦係数フラグが「0」にリセットされる。またステップS30でブレーキスイッチ43がオフ状態となっていることを確認したときには、ステップS31,32を迂回してステップS33に進む。
なお上記緊急作動フラグは、推定車体速度VR4Rが2km/hを越えた状態で手動動作指示スイッチ39が作動側に押されたときに「1」にセットされ、手動動作指示スイッチ39が解除側に押されたときに「0」にリセットされるフラグである。ABSフラグは、電動ブレーキ駆動手段22の作動により左後輪WDおよび右後輪WBがロックする可能性があるときに「1」にセットされ、ロックする可能性がないときに「0」にリセットされるフラグである。低路面摩擦係数フラグは、路面摩擦係数が小さいときに「1」にセットされ、路面摩擦係数が大きいときに「0」にセットされるフラグである。
前記ステップS7の自動動作許可判定ルーチンは、図6で示すフローチャートに従って実行されるものであり、図6のステップS41,S42で作動継続フラグおよび解除継続フラグが「1」であることを確認したときには、ステップS43で自動動作禁止フラグが「1」であるか否かを確認する。この自動動作禁止フラグ=「1」は電動ブレーキ駆動手段22の自動動作すなわちブレーキをかける側の自動作動ならびにブレーキを解除する側の自動解除を禁止する状態を記憶し、自動動作禁止フラグ=「0」は電動ブレーキ駆動手段22の自動動作の禁止が解除されている状態を記憶するものであり、ステップS43で自動動作禁止フラグが「1」であることを確認したときにはステップS44で自動動作禁止フラグを「0」にリセットしてステップS46に進む。
すなわち電動ブレーキ駆動手段22の自動作動途中および自動解除途中には、自動動作許可スイッチ39によって自動動作が不許可となっても、自動動作禁止フラグを「0」にリセットすることにより電動ブレーキ駆動手段22の作動が途中で停止してしまうことはない。
またステップS41,42で作動継続フラグおよび解除継続フラグが「0」であることを確認したときにはステップS45に進み、ステップS43で自動動作禁止フラグが「0」であることを確認したときにはステップS44を迂回してステップS45に進む。
ステップS45では、自動動作許可スイッチ38が許可状態を選択しているか否かを判定し、不許可状態にあったときにはステップS46に進み、前回の自動動作禁止フラグが「0」であったか否かを判定し、前回の自動動作禁止フラグが「0」であったことを確認したときには、ステップS47で自動動作禁止フラグを「1」にセットし、ステップS48で作動ランプ48を消灯する。
ステップS45において、自動動作許可スイッチ38が許可状態を選択していることを確認したときには、ステップS52に進んで前回の自動動作禁止フラグが「1」であるか否かを確認し、前回の自動動作禁止フラグが「1」であったときにはステップS53で自動動作禁止フラグを「0」にリセットし、ステップS54で自動作動禁止および自動解除禁止フラグを「0」にリセットし、さらにステップS55で作動ランプ48を点灯することになる。
この自動動作許可判定処理によれば、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作の許可を自動動作許可スイッチ38で選択している状態で、新たに自動動作許可スイッチ38で不許可が選択されたときには、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作すなわち自動作動および自動解除を禁止すべく自動動作禁止フラグを「1」にセットするとともに作動ランプ48を点灯状態から消灯状態に切り換えてその状態を表示することでドライバーに注意を促す。また自動動作許可スイッチ38による不許可選択ならびに手動動作指示スイッチ39による指示に応じて自動作動が禁止されている状態で、自動動作の許可が自動動作許可スイッチ38によって選択されたときには、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作を許可すべく、自動動作禁止フラグ、自動作動禁止フラグおよび自動解除禁止フラグを「0」にリセットするとともに作動ランプ48を点灯する。
前記ステップS9の自動動作ルーチンは、図7〜図10で示すフローチャートに従って実行されるものであり、先ず図7のステップS61でブレーキペダルPが踏まれてブレーキスイッチ43がオン状態となったか否かを判定するのであるが、その判定にあたっては、ブレーキスイッチ43のオン状態が所定時間たとえば100msecを超えて持続したときにブレーキスイッチ43がオン状態になったと確定して、ブレーキスイッチフラグを「1」にセットする。また次のステップS62では、変速機のシフトポジションがいずれのポジションにあるかを判定するものであり、この判定にあたっては、シフトポジションセンサ42が「P」,「N」,「D」,「R」の各シフトポジションを検出している時間がそれぞれの設定時間以上持続したときにシフトポジションフラグをP,N,D,Rにセットし、また走行レンジであるシフトポジション「D」に新たに移行してきたときには、自動作動・解除禁止フラグを「0」にリセットし、前記設定時間が経過する前であって「P」,「N」,「D」,「R」のいずれのシフトポジションとも確定し得ない状態ではシフトポジションフラグを「0」にセットする。
停止確定フラグが「0」であって車両の停止が確定されていないことをステップS63で確認したとき、ならびに停止確定フラグが「1」であって車両の停止が確定されていても異常減速フラグが「1」であることをステップS64で確認したときには、ステップS65で緊急作動フラグが「1」であるか否かを判定する。而してステップS65で緊急作動フラグが「1」にセットされていないことを確認したときには、走行中に電動ブレーキ駆動手段22が作動状態になって引きずりが発生しないように、ステップS66で電動ブレーキ駆動手段22を自動で解除する自動解除を実行してステップS67に進み、ステップS65で緊急作動フラグが「1」にセットされていることを確認したときには、ステップS66を迂回してステップS67に進む。
ステップS67,S68,S69では、ブレーキスイッチ確定タイマー、シフトポジション確定タイマーおよび登坂・降坂・平地確定タイマーをそれぞれリセットして図4のステップS10に進む。
またステップS64で異常減速フラグが「0」であった場合には、ステップS70で傾斜判定を実行する。この傾斜判定にあたっては、傾斜センサ45の検出値をそのまま用いたのでは車両のピッチング等の影響を受け易いので、傾斜センサ45の検出値を車両応答周波数である2.5Hz程度で移動平均処理することにより得られた路面の傾斜がたとえば10%を超える前上がりの状態の登坂であるか、路面の傾斜がたとえば−15%未満の超える前下がりの状態の降坂であるか、路面の傾斜が10%以下であって−15%以上の範囲にある状態の平地であるかを、それらの状態が登坂・降坂・平地確定タイマーによる経過時間たとえば200msec以上持続するか否かを判定する。而して登坂であると判定したときには登坂判定フラグを「1」にセットするとともに降坂・平地判定フラグを「0」にリセットし、降坂であると判定したときには降坂判定フラグを「1」にセットするとともに登坂・平地判定フラグを「0」にリセットし、さらに平地であると判定したときには、平地判定フラグを「1」にセットするとともに登坂・降坂判定フラグを「0」にリセットする。
ステップS70の傾斜判定処理後には図8のステップS71に進み、シフトポジションセンサ42で検出したシフトポジションが「P」であることをステップS71,S72で確認したときにはステップS73で電動ブレーキ駆動手段22をブレーキをかける側に自動作動させる自動作動を実行する。またシフトポジションが「N」であったときには、ステップS74で作動継続フラグが「1」であることを確認するのに応じてステップS75に進んで自動作動を実行し、さらに作動継続フラグが「0」であることをステップS74で確認したときにはステップS76に進んで解除継続フラグが「1」であるか否かを確認し、解除継続フラグが「1」であることを確認したときには電動ブレーキ駆動手段22を自動で解除する自動解除をステップS77で実行する。
またステップS76において、解除継続フラグが「0」であることを確認したとき、すなわちシフトポジションが「N」の状態で停止が確定し、電動ブレーキ駆動手段22がブレーキをかける側にも、ブレーキを解除する側にも作動していない状態では、図4のステップS10に移行することになり、したがってステップS9の自動動作は実行されないことになる。
シフトポジションが「P」でも「N」でもないとき、つまり「D」または「R」であることをステップS71で確認し、かつステップS78でアクセルペダルがオフしていることを確認し、ステップS79でブレーキペダルPがオンしていることを確認し、作動継続フラグおよび解除継続フラグが「0」であることをステップS80,81で確認したときには図9のステップS82に移行する。
図9のステップS82において緊急作動フラグが「0」であることを確認し、しかもエンジンがかかっており、シフトポジションが「D」であり、スロットル開度が解除閾値THDを超える状態であり、登坂判定フラグが「0」であることを、ステップS83,84,86で確認したときには、駐車ブレーキを解除しても車両のずり下がりが生じる可能性がないものとしてステップS87で自動解除を実行する。またステップS86において、登坂判定フラグが「1」であることを確認した場合にも前下がりの傾斜が−20%以上の緩やかな傾斜また平地であることをステップS88で確認したときにはステップS87で自動解除を行い、前下がりの傾斜が−20%未満の急傾斜であったときには急発進を起こすことがないようにすべくステップS89で電動ブレーキ駆動手段22をゆっくりと解除する自動解除2を実行する。
またステップS84でシフトポジションが「D」ではなかったときには、シフトポジションが「R」であり、スロットル開度が解除閾値THRを超え、登坂判定フラグが「1」であり、前上がりの傾斜が15%を超える傾斜値であることをステップS90,91,92,93で確認したときには、ステップS94で自動解除2を実行する。
またステップS85でスロットル開度が解除閾値THD以下であることを確認したとき、ならびにステップS82で緊急作動フラグが「1」であることを確認したときには、図7のステップS67に進む。
前記ステップS79,80,81において、ブレーキペダルPがオフしているか、作動継続フラグおよび解除継続フラグが「1」であることを確認したときには、図10のステップS95に移行し、シフトポジションが「R」であったときには、ステップS96で降坂判定フラグが「0」であることを確認し、ステップS97でエンジンがかかっていることを確認し、ステップS98でブレーキスイッチがオン状態であることを確認するのに応じて、ステップS99で自動解除を実行し、ステップS96において降坂判定フラグが「1」であったときにはステップS100で自動作動を実行し、ステップS97でエンジンがかかっていないことを確認したとき、ならびにエンジンがかかっていてもブレーキスイッチがオフ状態であることをステップS98で確認したときには、ステップS101で解除継続フラグが「1」であることを確認するのに応じてステップS99に移行する。
またステップS95でシフトポジションが「R」ではなかったときに、ステップS102でシフトポジションが「D」であることを確認するのに応じてステップS103に移行し、このステップS103で登坂判定フラグが「1」であるのを確認したときにはステップS100に移行し、登坂判定フラグが「0」であったときにはステップS104に移行する。
ステップS104でエンジンがかかっていることを確認し、ステップS105でブレーキスイッチがオン状態であることを確認したときには、ステップS106で自動解除を実行する。またステップS104でエンジンがかかっていないことを確認したとき、ならびにエンジンがかかっていてもブレーキスイッチがオフ状態であることをステップS105で確認したときにはステップS107に移行する。
ステップS102でシフトポジションが「D」ではなかったときには、シフトポジションが未確定であるとしてステップS108に進み、作動継続フラグが「1」であることをステップS108で確認したときにはステップS109で自動作動を実行し、作動継続フラグが「0」であたときには、自動解除継続フラグが「1」であり、しかもエンジンがかかっていることをステップS110,111で確認するのに応じてステップS112において自動解除を実行する。
前記ステップS85でスロットル開度を解除閾値THDと比較する理由は次のとおりである。クリープ力の大きさや傾斜センサ45の出力にはばらつきが存在するため、たとえ緩い傾斜地であってもブレーキペダルPがオフするだけの条件で電動ブレーキ駆動手段22を解除すると、車両が逆方向に移動する可能性がある。従って、アクセルペダルがオンしてスロットル開度が解除閾値THDを越えたことを条件に、ブレーキ解除側に電動ブレーキ駆動手段22を作動せしめる。
図11には、シフトポジションが「D」の場合に、路面の傾斜度からスロットル開度の解除閾値THDを検索するマップが示される。前上がりの傾斜地で前進発進する場合には、傾斜度が0%から増加するのに伴って、自動解除を実行する解除閾値THDは基本的にリニアに増加するが、傾斜度が0%〜10%の低傾斜地では、解除閾値THDが前記リニアな特性(破線参照)よりも小さく設定される。具体的には、傾斜度が0%〜5%の領域では解除閾値THDを0°に設定し、5%〜10%の領域では前記リニアな特性に復帰するように解除閾値THDの増加率を高めに設定している。このように、車両がずり下がる虞のない傾斜度が0%〜5%の領域では、つまりエンジンによるクリープ力が路面の傾斜による移動力を上回っている場合には、アクセルペダルを踏み込むと同時に電動ブレーキ駆動手段22を自動解除することで、発進時の引っ掛かり感を少なくしてスムーズな発進を可能にすることができる。傾斜度が5%〜の領域では、傾斜度の増加に応じて電動ブレーキ駆動手段22が自動解除されるスロットル開度が増加するので、発進時の車両の逆行を確実に防止することができる。
尚、シフトポジションが「R」の場合の解除閾値THRのマップは、図11のマップを縦軸に関して反転したような特性となる。またステップS88の「D」ポジションでの傾斜度の閾値の絶対値が20%であるのに対し、ステップS93の「R」ポジションでの傾斜度の閾値の絶対値が15%であるのは、ドライバーにとって後方への急発進に対応する方が前方への急発進に対応するよりも困難であるため、後退発進時に路面の傾斜度が小さいうちから電動ブレーキ駆動手段22の解除速度を遅くしてドライバーの車両コントロールを容易にするためである。
以上のように、車両が下り坂にあってシフトポジジョンが「D」であるために、重力による移動力の方向とエンジンによるクリープ力の方向とが一致し、かつ前下りが極端に強い場合には、自動解除2で電動ブレーキ駆動手段22をゆっくりと解除するので、車両が急激に前進発進するのを防止することができる。同様に、車両が上り坂にあってシフトポジジョンが「R」であるために、重力による移動力の方向とエンジンによるクリープ力の方向とが一致し、かつ前上がりが極端に強い場合には、自動解除2で電動ブレーキ駆動手段22をゆっくりと解除するので、車両が急激に後退発進するのを防止することができる。
上記ステップS73,S75,S100,S109の自動作動ルーチンは、図12および図13で示すフローチャートに従って実行されるものであり、図12のステップS121で解除継続フラグが「1」であることを確認したときには、ステップS122で解除継続フラグを「0」にリセットし、さらにステップS123で電動モータ31の逆転作動すなわちブレーキ解除側の作動をオフ状態とする。
次のステップS124で自動作動禁止フラグが「0」ではないこと、すなわち作動禁止状態にあることを確認したときには、ステップS125に移行して自動作動禁止処理を実行する。また自動作動禁止フラグが「0」であったときにはステップS126で動作モードフラグが「0」であるか否かを判定する。この動作モードフラグは、「電動ブレーキ駆動手段22がブレーキ作動側に作動完了するのに応じて「1」ずつ加算されるものであり、「1」以上で作動済みにあることを記憶し、「0」で非作動状態にあることを記憶するものであり、動作モードフラグが「0」すなわち非作動状態にあることをステップS126で確認したときには、ステップS127でVSA加圧禁止フラグが「0」であるか否かを判定する。
このVSA加圧禁止フラグは、車両走行時の挙動安定制御を実行するために、第1および第2ポンプ10A,10Bを作動せしめるとともに第1および第2調圧弁17A,17Bを調圧作動して第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を一定に制御する処理を実行することを実行し得るか否かを判断するためのものであり、上記VSA加圧禁止フラグが「0」である状態は液圧制御装置5が正常に作動し得る状態を示し、VSA加圧禁止フラグが「1」である状態は液圧制御装置5が正常に作動し得ない状態を示す。
而してステップS127でVSA加圧禁止フラグが「0」である状態を確認したときには、ステップS128に進んでブレーキスイッチがオン状態にあるか否かを判定し、オン状態であったときには、ステップS129においてブレーキ液圧センサ15で検出されるマスタシリンダMの出力液圧が設定圧BfF1たとえば3Mpaを超えるか否かを判断し、超えていると判断したときには、ステップS130で液圧保持要求フラグを「1」にセットする。
この液圧保持要求フラグのセットに応じて制御ユニット37は、液圧制御装置5における調圧弁17A,17Bを閉弁し、第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を一定に保持する。これにより、各ディスクブレーキ2A〜2Dに一定の液圧が作用した状態が維持されることになり、パーキングブレーキ状態を得るときに電動ブレーキ駆動手段22からドラムブレーキ21,21に作用せしめ操作力を比較的小さく設定することを可能とし、電力消費を抑えることが可能となる。
またステップS128でブレーキスイッチがオフであることを確認したとき、ならびにブレーキスイッチがオン状態にあってもステップS129でマスタシリンダMの出力液圧が設定圧BfF1以下であることを確認したときには、ステップS131に移行し、このステップS131では、VSA加圧要求フラグを「1」にセットし、次いでステップS132で目標液圧を前記設定圧BfF1に設定する。而して上記VSA加圧要求フラグは、車両走行時の挙動安定制御を実行するために、第1および第2ポンプ10A,10Bを作動せしめるとともに第1および第2調圧弁17A,17Bを調圧作動して第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を一定に制御する処理を実行することを要求するか否かを定めるものであり、VSA加圧要求フラグを「1」にセットし、目標液圧を設定圧BfF1に定めることにより、第1および第2液圧路20A,20Bの液圧が設定圧BfF1に調圧されることになる。すなわちパーキングブレーキを得るための自動作動時には、ブレーキペダルPを踏んでいないときには、第1および第2ポンプ10A,10Bの作動によって得た設定圧BfF1の液圧をディスクブレーキ2A〜2Dに作用せしめることになり、これにより、電動ブレーキ駆動手段22の作動によるドラムブレーキ21,21の作動遅れを液圧ブレーキでカバーし、上記作動遅れによる車両の移動を未然に防ぐことができる。
ステップS127においてVSA加圧禁止フラグが「1」である状態、すなわち液圧制御装置5が正常に作動し得ない状態であることを確認したときには、図13のステップS133に移行する。
このステップS133では、センサの異常を検出したときに「1」となる異常検出フラグが「0」であるか否かを判定し、異常であったときには、ステップS134に進んで目標牽引力BfTを第3の目標牽引力BfT3にセットし、正常であったときにはステップS135で目標牽引力を第1の目標牽引力BfT1にセットする。
ここで、第1の目標牽引力BfT1は、図14で示すマップで定まる牽引力マップ値BftMに状態係数kを乗じて得られるものであり、牽引力マップ値BftMは、傾斜度に応じて、積荷変化の影響が大きくなりがちな10%以下の傾斜度では、定積時必要牽引力および軽積時必要牽引力よりも高い一定値であり、10%を超えるとともに20%未満の傾斜度では、平地で停車後に傾斜地となる場合(トラック移送での積み下ろし時)を考慮して定積時必要牽引力と同一の値に設定される。また状態係数kは、動作モードに応じて変化するものであり、動作モードF=0のときにはk=1.0、動作モードF=1のときにはk=1.5、動作モードFが2以上のときにはk=2.0である。さらに第3の目標牽引力BfT3は、傾斜度30%での停止保持相当ブレーキ力に前記状態係数kを乗じて得られるものである。
次のステップS136では、電動モータ31に供給する目標電流TAを、(TA=目標牽引力BfT×変換係数a)によって算出する。前記変換係数aは、牽引力を電流に変換するための係数である。また次のステップS137でデューティ比100%で電動モータ31を正転駆動し、電動ブレーキ駆動手段22を作動させる。
続くステップS138で作動継続フラグが「0」であること、すなわち電動ブレーキ駆動手段22の作動途中ではないことを確認したときには、ステップS139で作動タイマーをリセットした後、ステップS140でストローク量をリセットし、さらに次のステップS141で作動タイマーをカウントアップする。そしてステップS142で作動タイマーが500msecを超えるか否かを判断する。
作動タイマーが500msec以下の状態では、ステップS143で作動継続フラグを「1」にセットし、自動作動が開始されたことを示すためにステップS144で作動ランプ48を点灯し、作動タイマーが100msecを超えたことをステップS145で確認したときにステップS146で作動ランプ48を消灯する。
また作動タイマーが500msecを超えたときには、ステップS147でストローク量が、目標電流TAに応じて定まる規定ストローク量SOを超えるかどうかを判定し、超えたときにステップS148で電動モータ31の電流値が目標電流TA以上になれば、電動ブレーキ駆動手段22が必要な牽引力を発生して作動が完了したと判断し、ステップS149で電動モータ31の正転を停止し、ステップS150で電動ブレーキ駆動手段22の作動が完了したことを示すために作動ランプ48を点灯し、ステップS151で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットし、さらにステップS152で作動継続フラグを「0」にリセットし、ステップS153で動作モードをインクリメントする。
一方、前記ステップS147でストローク量が規定ストローク量SO以下であったとき、ならびにストローク量が規定ストローク量SOを超えていても電動モータ31の電流値が目標電流TA未満であることをステップS148で確認したときには、ステップS154に移行し、作動タイマーが5.0sec以上であるか否かを確認する。
而して作動タイマーが5.0sec以上であったときには、ボーデンワイヤー34,34が破断したために電動ブレーキ駆動手段22が作動完了状態にならないと推定され、ステップS155で作動中フェールセーフ処理を行った後に、ステップS156で電動モータ31の正転処理を停止し、さらにステップS157で作動ランプ48を点滅させる。一方、作動タイマーが5.0sec未満であれば、電動ブレーキ駆動手段22が作動継続中であると判断してステップS154からステップS158に進み、作動継続フラグを「1」にセットする。
上記ステップS66,S77,S87,S99,S106,S112の自動解除ルーチンは、図15で示すフローチャートに従って処理されるものであり、ステップS161で、作動継続フラグが「1」であることを確認したときには、ステップS162で作動継続フラグを「0」にリセットし、ステップS163で電動モータ31の正転作動すなわちブレーキ作動側の作動をオフ状態とし、さらにステップS164で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットする。
次のステップS165で自動解除禁止フラグが「0」ではないこと、すなわち自動解除禁止状態にあることを確認したときには、ステップS166に移行して自動解除禁止処理を実行する。また自動解除禁止フラグが「0」であったときにはステップS167で動作モードフラグが「0」であるか否かを判定し、動作モードフラグが「1」すなわち作動状態にあることをステップS167で確認したときには、ステップS168で解除継続フラグが「1」であるか否かを判定する。
解除継続フラグが「0」であったときには、ステップS169で解除タイマーを「0」にリセットし、次のステップS170では、ストローク量が初期位置(0位置)から2mmまでの状態であるか否かを判定し、2mm以下のときには、ステップS171で電動ブレーキ駆動手段22の解除作動が完了したと判断して電動モータ31の逆転を停止し、ステップS172で電動ブレーキ駆動手段22の解除が完了したことを示すために作動ランプ48を消灯し、ステップS173で解除継続フラグを「0」にリセットし、ステップS174で動作モードを「0」にリセットする。
一方、前記ステップS170でストローク量が初期位置(0位置)から2mmまでの状態に達していないと判断したときには、ステップS175で電動モータ31の逆転動作をデューテイ100%でオン状態としたままとし、ステップS176で解除タイマーをカウントアップする。
その解除タイマーが5.0sec以上であることをステップS177で確認したときには、ステップS178で解除中フェールセーフ処理を行った後に、ステップS179で電動モータ31の逆転処理を停止し、さらにステップS180で作動ランプ48を点滅させる。一方、解除タイマーが5.0sec未満であれば、電動ブレーキ駆動手段22が解除作動を継続中であると判断してステップS177からステップS181に進み、解除継続フラグを「1」にセットする。
ステップS89,S94の自動解除2ルーチンでは、ストローク量が初期位置(0位置)から20mmまでの状態では電動モータ31をデューテイ50%で逆転作動せしめ、その後で電動モータ31をデューテイ100%で逆転作動せしめるようにして、電動ブレーキ駆動手段22をゆっくりと解除することになる。
次に図16〜図19のフローチャートに基づいて、図4のフローチャートのステップS10のサブルーチンである手動動作ルーチンを説明する。
先ずステップS191で手動動作指示スイッチ39で作動指示がなされたことを確認したときには、ステップS192で作動スイッチタイマーをカウントアップし、次のステップS193で作動スイッチタイマーが3秒未満であれば、ステップS194で作動スイッチタイマーが100msec以上であるか否かを確認し、100msec以上であったときには、ステップS196で指示レベルを「1」にセットして、図17のステップS211に移行する。またステップS193で100msec未満であったときには、ステップS195,S196を迂回して前記ステップS211に進む。またステップS193で作動スイッチタイマーが3秒以上であることを確認したときには、ステップS197で指示レベルを「2」にセットした後に、ステップS211に進む。すなわち手動動作指示スイッチ39で作動指示がなされてから、作動スイッチタイマーが100msec以上となったときに指示レベルが「1」にセットされ、さらに作動スイッチタイマーが3秒以上となったときに指示レベルが「2」にセットされる。
ステップS191で手動動作指示スイッチ39による作動指示がなされていなかったときには、ステップS191からステップS198に移行し、このステップS198で手動動作指示スイッチ39による解除指示がなされたことを確認したときには、ステップS199で解除スイッチタイマーをカウントアップし、次のステップS200で解除スイッチタイマーが100msec以上であったときには、ステップS201で指示レベルフラグを「0」にリセットし、ステップS202で解除指示フラグを「1」にセットし、さらにステップS203で緊急作動フラグを「0」にリセットした後、ステップ211に移行する。またステップS200で解除スイッチタイマーが100msec未満であったときには、ステップS201,S202,S203を迂回してステップS211に進む。すなわち解除指示がなされてから100msecが経過したときに、指示レベルフラグを「0」にリセットし、解除指示フラグを「1」にセットし、さらに緊急作動フラグを「0」にリセットすることになる。
上記ステップS198で解除指示がなされていないことを確認したとき、すなわち手動動作指示スイッチ39による作動指示も解除指示もなされていなかったときには、ステップS204〜S210を経過してステップS211に移行するものであり、ステップS204〜S210では、解除スイッチタイマーおよび作動スイッチタイマーをそれぞれリセットし、指示レベルフラグ、緊急作動フラグ、解除指示フラグ、ABSフラグおよび低路面摩擦係数フラグを「0」にそれぞれリセットし、さらに目標減速度Gtを0Gにリセットする。
尚、指示レベルフラグは、推定車体速度VR4R<2km/hの領域では、作動指示フラグとしての機能のみを持ち、電動ブレーキ駆動手段22の作動が完了すると「0」にリセットされる。また推定車体速度VR4R≧2km/hの領域では、作動指示フラグとしての機能に加えて、目標減速度Gtを決めるパラメータとして機能を持つので、手動動作指示スイッチ39による解除指示がなされない限り「0」にリセットされない。
図17のステップS211では、手動・自動優先判定処理を実行し、次のステップS212で解除指示フラグが「1」であったときには、ステップS213に移行し、ブレーキスイッチがオフ状態にあれば、ステップS214で解除継続フラグが「1」であるか否かを確認し、「1」であったときにはステップS215に進んで手動解除を実行する。またステップS213でブレーキスイッチがオン状態にあることを確認したときにはステップS215に移行する。
またステップS212で解除指示フラグが「0」であったときには、ステップS216に進んで以下の4つのパラメータを算出する。
第1のパラメータは推定車体速度VR4Rであり、4輪の車輪速度の最大値として算出される。電動ブレーキ駆動手段22の作動により何れかの車輪がロック状態になる可能性があるため、すべての車輪速度を取り込んで、そのうち最大の車輪速度を選択するものである。
第2のパラメータは車体減速度GRFであり、{右前輪速度の今回値FRVw(n)−右前輪速度の前回値FRVw(n−1)}/dtと、{左前輪速度の今回値FLVw(n)−左前輪速度の前回値FLVw(n−1)}/dtとの平均値として、つまり左右の前輪の加減速度の平均値として算出される。これは電動ブレーキ駆動手段22の作動により後輪WB,WDがロックしている可能性があるため、前輪WA,WCの車輪速度から算出するものであり、また旋回時には左右の前輪WA,WCの車輪速度が異なるため、左右の前輪WA,WCから算出した値の平均値を採用する。
第3のパラメータは前輪推定車体速度VRFであり、左右の前輪WA,WCの車輪速度FRVw,FLVwのローセレクト値として算出される。ローセレクト値を採用することで、旋回時に前輪推定車体速度VRFが実際以上に大きくなることを防止する。
第4のパラメータは後輪加減速度RrGであり、左右の後輪WD,WBの加減速度のローセレクト値(減速度の大きい方)として算出される。ローセレクト値を採用することで、後輪WD,WBのロックを確実に検出することができる。
続くステップS217で指示レベルフラグが「0」であり、しかもステップS218で推定車体速度VR4Rが5km/h以上であればステップS215に移行して手動解除処理を実行し、推定車体速度VR4Rが5km/h未満であれば、つまり車両が実質的に停止していれば、ステップS219で解除継続フラグが「1」であるか否かを確認し、「1」であったときにはステップS215に進み、解除継続フラグが「0」であり、しかも作動継続フラグが「1」であることをステップS220で確認したときにはステップS211に移行して手動作動処理を実行する。
またステップS217で指示レベルフラグが「1」以上であることを確認し、ステップS222で推定車体速度VR4Rが5km/h未満であれば、ステップS225でVSA加圧禁止フラグが「0」であるか否かを判定し、「0」であったときには図18のステップS227に移行し、「1」であったときには、ステップS226で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットし、電動ブレーキ駆動手段22のみでパーキングブレーキ状態を得るべく図19のステップS249に移行する。
図18のステップS227で緊急動作フラグが「0」であることを確認したときにはステップS228で目標減速度Gtを−0.6GにセットしてステップS229に進み、ステップS227で緊急動作フラグが「1」であることを確認したときにはステップS228を迂回してステップS229に進む。
ステップS229で車体減速度GRFが目標減速度Gt以下であることを確認したときには、ステップS230でそのときの車体減速度GRFで目標減速度Gtを更新し、次のステップS231で、緊急動作フラグを「1」にセットする。このとき、目標減速度Gtは−0.1G〜−0.8Gの範囲に制限される。
ステップS232では、車体の挙動制御やABS制御が実行されていることを確認したときには、ステップS233で低路面摩擦係数フラグを「1」にセットし、ステップS234で目標減速度Gtを(前回目標減速度Gt×0.8)として算出し、さらにステップS235で目標液圧BfFを(目標減速度×10Mpa)として設定してステップS239に移行する。またステップS232で車体の挙動制御やABS制御が実行されていないことを確認したときには、ステップS236で低路面摩擦係数フラグを「0」にリセットし、ステップS237で車体減速度GRFが−0.8G未満であると判定するのに応じてステップS234に移行し、また車体減速度GRFが−0.8G以上であったときには、ステップS238で目標液圧BfFを(目標減速度×10Mpa)として設定してステップS239に移行する。すなわちABS制御中には加圧指示液圧を所定の割合(80%)で低下させるようにし、それにより車輪がロック状態に陥らないようにしている。
ステップS239で目標液圧BfFが前回の目標液圧BfFに等しいと判断したときにはステップS240で液圧保持時間タイマーをカウントアップし、さらに液圧保持時間が1.0secを超えたことをステップS241で確認したときには、ステップS242で目標減速度Gtを(前回目標減速度Gt×1.2)として算出し、さらにステップS234で目標液圧を設定液圧BfF1にセットし、ステップS244でVSA加圧要求フラグを「1」にセットする。またステップS241で液圧保持時間が1.0sec以下であったときにはステップS245で液圧保持要求フラグを「1」にセットする。
一方、ステップS239で目標液圧BfFが前回の目標液圧BfFに等しくないと判断したときには、ステップS246で液圧保持時間タイマーをリセットし、ステップS247でVSA加圧要求フラグを「0」にリセットし、さらにステップS248で目標液圧を設定液圧BfF1にセットする。
すなわち保持液圧が所定時間(1秒)以上持続して同一である場合には、路面の摩擦係数が高くなった可能性があることから、目標液圧をあげて制動力を高めることになる。
図19のステップS249で低路面摩擦係数フラグが「0」であって路面摩擦係数が高い状態にあるときに、車体減速度GRFが目標減速度以下であることをステップS250で確認し、ステップS251において{−0.3G≦GRF≦−0.15G}が成立することを確認したときには、ステップS252で車体減速度GRFで目標減速度Gtを更新し、さらにステップS253で緊急動作フラグを「1」にセットする。またステップS250で車体減速度GRFが目標減速度を超えたときには、ステップS254で{指示レベル×(−0.15G)}として目標減速度を算出してステップS253に移行する。
ステップS253の次のステップS255では、前輪推定車体速度VRFと、後輪WD,WBの車輪速度のローセレクト値RrVw(Lo)との差が2km/h以上であるか否かを判定し、2km/h以上であったときには、路面摩擦係数が小さいために後輪WB,WDがロック傾向にあると判断し、ステップS256で低路面摩擦係数フラグを「1」にセットし、次のステップS257で後輪加減速度RrGが0.0G以下であれば、つまり後輪WB,WDの車輪速度が減少しつつあれば、後輪WB,WDがロックする可能性があると判断し、後輪WB,WDがロックを防止すべく、ステップS258で目標減速度Gtを(車体減速度GRF×0.9)として算出し、ステップS259でABSフラグを「1」にセットしてステップS260に移行する。このとき、算出された目標減速度Gtは−0.15G〜−0.30Gの範囲に制限される。
ステップS260ではストローク量が初期位置(0位置)から2mmまでの間にあるかどうかを判断し、その範囲になかったときには、ステップS261で電動モータ31を逆転作動せしめることで制動力を低減し、後輪WB,WDのロックを抑制する。さらにステップS262で継続タイマーを「0」にリセットする。
一方、ステップS255で、{VRF−RrVw(Lo)}<2km/hであったときには、ステップS263で車体減速度GRFが(−0.4G)未満であるかどうかを判断し、GRF<−0.4Gのときには制動力が過剰であると判断してステップS257に移行し、GRF≧−0.4GのときにはステップS264で車体減速度GRFが目標減速度未満かどうかを判断し、GRF<目標減速度であるときには、ステップS265で電動モータ31の作動を停止し、さらにステップS266で継続タイマーをリセットする。またステップS260において、ストローク量が初期位置(0位置)から2mmまでの範囲にあると判断したときにはステップS260からステップS265に移行して、戻し過ぎを防止するために電動モータ31の逆転を停止し、またステップS257で後輪加減速度RrGが0.0Gを超えると判断したときにはステップS257からステップS265に移行することになる。
このように、車体減速度GRFの上限値を−0.4Gに設定することにより、後輪WB,WDのロックを確実に防止して車両挙動の安定を図ることができる。特に、電動ブレーキ駆動手段22が発生する制動力の大きさを、電動モータ31の電流値や電動ブレーキ駆動手段22のストローク量ではなく、車体減速度GRFに基づいて制御するので、ブレーキシュー25,26の温度や摩耗状態に関わらずに制動力の大きさを正確に制御し、後輪WB,WDのロックを確実に防止することができる。前記ステップS266で継続タイマーをリセットするのは、そのセット時間である500msecが経過する前に、車体減速度GRF<目標減速度Gtとなって電動モータ31の正転を停止した後、再び車体減速度GRF≧目標減速度Gtとなって再び電動モータ31が正転駆動される場合があるからである。
一方、ステップS264で車体減速度GRFが目標減速度以上であったときには、ステップS267に進んで継続タイマーをカウントアップし、ステップS268で継続タイマーが500msecを超えたと判断したときにはステップS270でABSフラグを「0」にリセットする。すなわち動力の不足を補うために電動モータ31を正転駆動して制動力を増加させるということは、後輪WB,WDがロックする可能性が無くなったということで、500msecの経過を待ってABSフラグを「0」にリセットする。またステップS270でABSフラグが「1」であることを確認したときにはステップS271で電動モータ31のデューティを(目標減速度Gt×変換係数k)にセットし、ステップS272で電動モータ31を正転作動せしめ、さらにABSフラグが「0」であったときにはステップS273で電動モータ31のデューティを100%にセットした後、ステップS272で電動モータ31を正転作動せしめる。
以上のように、車体減速度GRFが目標減速度Gt以上であって制動力が不足しており、かつABSフラグが「1」にセットされているとき、100%未満のデューティ比で電動モータ31を正転駆動し、車体減速度GRFが目標減速度Gtになるように制動力をゆっくりと増加させる。そして500msecが経過しても車体減速度GRFが目標減速度Gtに達しない場合には、電動ブレーキ駆動手段22のブレーキシュー25,26の過熱等で制動力で出難い状態にあることが考えられるので、そのときはABSフラグを「0」にリセットして100%のデューティ比で電動モータ31を駆動して制動力を増加させる。
ステップS211の手動・自動優先判定ルーチンは図20のフローチャートに従って実行されるものであり、図10のステップS281で指示レベルフラグが「1」以上であることを確認したときには、ステップS282でドライバーシートがリクライニング状態にあるか否か、たとえばドライバーがドライバーシートを後方に基準角度たとえば30度以上傾斜させて仮眠状態にあるか否かをシート角度センサ46に検出値に基づいて判断し、リクライニング状態ではないことを確認したときに、ステップS283で解除指示フラグが「1」であれば、ステップS284で自動作動禁止フラグを「1」にセットする。
またステップS281で指示レベルフラグが「1」未満すなわち「0」であることを確認したとき、ならびに指示レベルフラグが「1」以上であってもドライバーシートがリクライニング状態にあるとステップS282で判断したときには、ステップS285に移行して自動解除禁止フラグを「1」にセットする。
すなわちエンジンをかけたままドライバーが仮眠中に不用意にアクセルを踏み込んでも自動解除禁止フラグを「1」にセットすることにより、パーキングブレーキ状態を解除することはなく、ドライバーの意図せぬ車両の発進は阻止されている。また手動動作指示スイッチ39による解除指示によって解除指示フラグが「1」にセットされると、自動動作モードにあっても強制的に自動作動禁止フラグが「1」にセットされることになり、電動ブレーキ駆動手段22がブレーキをかける側に自動的に作動することはない。
上記ステップS221の手動作動ルーチンは、図21および図22のフローチャートに従って実行されるものであり、図21のステップS291で解除継続フラグが「1」であることを確認したときには、ステップS292で解除継続フラグを「0」にリセットし、さらにステップS293で電動モータ31の逆転作動すなわちブレーキ解除側の作動をオフ状態とする。
次のステップS294では停車確定フラグが「1」であるか否かを確認し、停車確定フラグが「0」、すなわち停車が確定されていないときには、ステップS295で指示レベルフラグが「1」を超えているか否かを確認し、指示レベルフラグが「1」を超えており、しかも異常検出フラグが「1」であることをステップS296で確認したときには、ステップS297で目標牽引力BfTを第3の目標牽引力BfT3に設定し、図22のステップS303に移行する。また異常検出フラグが「0」であってセンサーの異常が検出されていないときには、ステップS298で目標牽引力BfTを第2の目標牽引力BfT2に設定した後、ステップS303に移行する。而して第2の目標牽引力BfT2は、平地で0.15Gの車体減速度を生じさせる制動力を発揮すべく、0.15Gに相当するブレーキ力に状態係数kを乗じることによって得られるものである。またステップS294で停車確定フラグが「1」であるときにも、ステップS299で目標牽引力BfTを第2の目標牽引力BfT2に設定した後、ステップS303に移行する。
ステップS295で指示レベルフラグが「1」を超えていないとき、すなわち「1」または「0」であったときには、ステップS300で異常検出フラグが「1」であってセンサーの異常が検出されるのに応じて、ステップS301で目標牽引力BfTを第3の目標牽引力BfT3に設定した後、ステップS303に移行し、センサーの異常が検出されなかったときには、ステップS302で目標牽引力BfTを第1の目標牽引力BfT1に設定した後、ステップS303に移行する。
図22のステップS303では、電動モータ31に供給する目標電流TAを、(TA=目標牽引力BfT×変換係数a)によって算出し、次のステップS304でデューティ比100%で電動モータ31を正転駆動し、電動ブレーキ駆動手段22を作動させる。続くステップS305で作動継続フラグが「0」であること、すなわち電動ブレーキ駆動手段22の作動途中ではないことを確認したときには、ステップS306で作動タイマーをリセットした後、ステップS307でストローク量をリセットし、さらに次のステップS308で作動タイマーをカウントアップする。そしてステップS309で作動タイマーが500msecを超えるか否かを判断する。
作動タイマーが500msec以下の状態では、ステップS310で作動継続フラグを「1」にセットし、手動作動が開始されたことを示すためにステップS311で作動ランプ48を点灯し、作動タイマーが100msecを超えたことをステップS312で確認したときにステップS313で作動ランプ48を消灯する。
また作動タイマーが500msecを超えたときには、ステップS314でストローク量が、目標電流TAに応じて定まる規定ストローク量SOを超えるかどうかを判定し、超えたときにステップS315で電動モータ31の電流値が目標電流TA以上になれば、電動ブレーキ駆動手段22が必要な牽引力を発生して作動が完了したと判断し、ステップS316で電動モータ31の正転を停止し、ステップS317で電動ブレーキ駆動手段22の作動が完了したことを示すために作動ランプ48を点灯し、ステップS318で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットし、さらにステップS319で作動継続フラグを「0」にリセットし、ステップS320で動作モードをインクリメントする。
一方、前記ステップS314でストローク量が規定ストローク量SO以下であったとき、ならびにストローク量が規定ストローク量SOを超えていても電動モータ31の電流値が目標電流TA未満であることをステップS315で確認したときには、ステップS321に移行し、作動タイマーが5.0sec以上であるか否かを確認する。
而して作動タイマーが5.0sec以上であったときには、ボーデンワイヤー34,34が破断したために電動ブレーキ駆動手段22が作動完了状態にならないと推定されるので、ステップS322で作動中フェールセーフ処理を行った後に、ステップS323で電動モータ31の正転処理を停止し、さらにステップS324で作動ランプ48を点滅させる。一方、作動タイマーが5.0sec未満であれば、電動ブレーキ駆動手段22が作動継続中であると判断してステップS321からステップS325に進み、作動継続フラグを「1」にセットする。
ステップS215の手動解除ルーチンは図23で示すフローチャートに従って実行されるものであり、図23のステップS331で、作動継続フラグが「1」であることを確認したときには、ステップS332で作動継続フラグを「0」にリセットし、ステップS333で電動モータ31の正転作動すなわちブレーキ作動側の作動をオフ状態とし、さらにステップS334で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットする。
次のステップS335で解除継続フラグが「0」であったときには、ステップS336で解除タイマーを「0」にリセットし、ステップS337では、ストローク量が初期位置(0位置)から2mmまでの状態であるか否かを判定し、2mm以下のときには、ステップS338で電動ブレーキ駆動手段22の解除作動が完了したと判断して電動モータ31の逆転を停止し、ステップS339で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットし、ステップS340で電動ブレーキ駆動手段22の解除が完了したことを示すために作動ランプ48を消灯し、ステップS341で解除継続フラグを「0」にリセットし、ステップS342で動作モードを「0」にリセットする。
一方、前記ステップS337でストローク量が初期位置(0位置)から2mmまでの状態に達していないと判断したときには、ステップS343で電動モータ31の逆転動作をデューテイ100%でオン状態としたままとし、ステップS344で解除タイマーをカウントアップする。
その解除タイマーが5.0sec以上であることをステップS345で確認したときには、ステップS346で解除中フェールセーフ処理を行った後に、ステップS347で電動モータ31の逆転処理を停止し、さらにステップS348で作動ランプ48を点滅させる。一方、解除タイマーが5.0sec未満であれば、電動ブレーキ駆動手段22が解除作動を継続中であると判断してステップS345からステップS349に進み、解除継続フラグを「1」にセットする。
ステップS11の車両移動監視ルーチンは、図24および図25のフローチャートに従って実行されるものであり、図24のステップS351で、停止確定フラグが「0」であるときには、ステップS352に進んで積算距離Sをリセットする。この積算距離は4輪の車輪速度のそれぞれを積算することによって得られる距離の最大値のものである。
ステップS351で停止確定フラグが「1」であれば、ステップS353で車輪速度センサ41…から車輪速度パルスが出力されているか否かを判定し、出力されているときには、ステップS354で車輪速度パルスが正転状態にあるか否か、すなわち前進方向の車輪速度パルスが車輪速度センサ41…から出力されているかどうかを判定する。
正転方向の車輪速度パルスが出力されているときには、ステップS355において積載距離Sを前回の積算距離S(n−1)に4cmを加算した値としてステップS357に進み、また逆転方向の車輪速度パルスが出力されているときには、ステップS356において積載距離Sを前回の積算距離S(n−1)から4cmを減算した値としてステップS357に移行する。なお前記4cmは、1パルスに対応する車両の移動距離である。
ステップS357で、シフトポジションが「D」であることを確認したときには、ステップS358で積算距離Sが−10cm未満であるか否かを判定し、S<−10cmであるときにはステップS359の自動増引処理を実行する。
またシフトポジションが「D」以外であるときに、シフトポジションが「R」であることをステップS360で確認したときには、ステップS361でS>10cmであることを確認するのに応じてステップS369に移行する。
シフトポジションが「D」および「R」のいずれでもないときに、シフトポジションが「P」であることをステップS362で確認したときには、ステップS363で積算距離Sの絶対値が10cmを超えたのを確認してステップS359の自動増引処理を実行する。
さらにシフトポジションが「D」、「R」および「P」のいずれでもなく、「N」もしくは不確定であるときには、ステップS364で動作フラグが「1」であることを確認するのに応じてステップS363に移行する。
すなわちシフトポジションが「N」のときには、ブレーキ側への電動ブレーキ駆動手段22の作動が終了しているにもかかわらず車両が移動したことを確認したときには、自動増引処理を実行することになる。
そしてシフトポジションセンサ42で検出したシフトポジションが「D」であるとき、積算距離Sが−10cm未満であれば、つまり車両が10cmよりも長い距離を後退すれば、制動力が不足していると判断して自動増引を実行する。またシフトポジションが「D」でなく、シフトポジションが「R」であるとき、積算距離Sが10cmを超えていれば、つまり車両が10cmよりも長い距離を前進すれば、制動力が不足していると判断して自動増引を実行する。さらにシフトポジションが「R」でないとき、つまりシフトポジションが「P」であるとき、積算距離Sの絶対値が10cmを越えていれば、つまり車両が10cmよりも長い距離を前進または後退すれば、制動力が不足していると判断して自動増引を実行する。
以上のように、シフトポジションにより決まる車両の移動方向と、実際の車両の移動方向とが不一致の場合に電動ブレーキ駆動手段22を作動させるので、車両がドライバーの意図する方向に対して逆行するのを確実に防止することができる。
ところで、例えば「D」ポジションで前進走行している車両が停止する直前に「R」ポジションにシフトチェンジされた場合、シフトポジションに基づく移動方向と実際の移動方向とが不一致であると判定され、電動ブレーキ駆動手段22が不必要に作動してしまう問題がある。しかしながら本実施例によれば、前記ステップS64で車両が停止したことを確認した後に前記判定を行うので、電動ブレーキ駆動手段22が不必要に作動するのを未然に防止することができる。
ステップS359の自動増引ルーチンは、図25および図26のフローチャートに従って実行されるものであり、図25のステップS371で、解除継続フラグが「1」であることを確認したときには、ステップS372で解除継続フラグを「0」にリセットし、さらにステップS373で電動モータ31の逆転作動すなわちブレーキ解除側の作動をオフ状態とする。
次のステップS374で動作モードが「2」以上であることを確認したときには、図26のステップS383に移行し、また動作モードが「2」未満である場合には、「0」であることをステップS375で確認すれば、ステップS376で自動作動処理を実行し、動作モードが「1」であったときには、ステップS377に進んでVSA加圧禁止フラグが「0」であるか否かを判定する。
このVSA加圧禁止フラグが「1」である状態を確認したときには、ステップS383に移行し、またVSA加圧禁止フラグが「0」であったときには、ステップS378でブレーキスイッチがオン状態にあるか否かを判定し、オン状態であったときには、ステップS379においてブレーキ液圧センサ15で検出されるマスタシリンダMの出力液圧が設定圧BfF1たとえば6Mpaを超えるか否かを判断し、超えていると判断したときには、ステップS380で液圧保持要求フラグを「1」にセットする。
またステップS378でブレーキスイッチがオフであることを確認したとき、ならびにブレーキスイッチがオン状態にあってもステップS379でマスタシリンダMの出力液圧が設定圧BfF1以下であることを確認したときには、ステップS381に移行し、このステップS381では、VSA加圧要求フラグを「1」にセットし、次いでステップS382で目標液圧を(BfF1×kF)に設定して、ステップS383に移行する。
図26のステップS383では、センサの異常を検出したときに「1」となる異常検出フラグが「0」であるか否かを判定し、異常であったときには、ステップS384に進んで目標牽引力BfTを第3の目標牽引力BfT3にセットし、正常であったときにはステップS385で目標牽引力を第2の目標牽引力BfT2にセットする。
次のステップS386では、電動モータ31に供給する目標電流TAを、(TA=目標牽引力BfT×変換係数a)によって算出し、ステップS387でデューティ比100%で電動モータ31を正転駆動し、電動ブレーキ駆動手段22を作動させる。
続くステップS388で作動継続フラグが「0」であること、すなわち電動ブレーキ駆動手段22の作動途中ではないことを確認したときには、ステップS389で作動タイマーをリセットした後、ステップS390で作動タイマーをカウントアップする。そしてステップS391で作動タイマーが500msecを超えるか否かを判断する。
作動タイマーが500msecを超えたときに、ステップS392で電動モータ31の電流値が目標電流TA以上になれば、電動ブレーキ駆動手段22が必要な牽引力を発生して作動が完了したと判断し、ステップS393で電動モータ31の正転を停止し、ステップS394で電動ブレーキ駆動手段22の作動が完了したことを示すために作動ランプ48を点灯し、ステップS395で液圧保持要求フラグおよびVSA加圧要求フラグを「0」にリセットし、さらにステップS396で作動継続フラグを「0」にリセットし、ステップS397で動作モードをインクリメントする。
一方、前記ステップS392で電動モータ31の電流値が目標電流TA未満であることを確認したときには、ステップS398に移行し、作動タイマーが3.0sec以上であるか否かを確認する。而して作動タイマーが3.0sec以上であったときには、ボーデンワイヤー34,34が破断したために電動ブレーキ駆動手段22が作動完了状態にならないと推定され、ステップS399で作動中フェールセーフ処理を行った後に、ステップS400で電動モータ31の正転処理を停止し、さらにステップS401で作動ランプ48を点滅させる。一方、作動タイマーが3.0sec未満であれば、電動ブレーキ駆動手段22が作動継続中であると判断してステップS398からステップS402に進み、作動継続フラグを「1」にセットする。
このようにして、車輪速度に基づく車両の進行方向と、変速機のシフトポジションに基づく車両の進行方向とが不一致であるときには、自動動作許可スイッチ38による動作モードの選択にかかわらず、駐車ブレーキ力を高める側に作動せしめる自動増引処理を実行するものであり、特に、動作モードフラグが2未満の場合すなわち、電動ブレーキ駆動手段22がブレーキをかける側に作動した回数が1回以下の場合には、マスタシリンダMの出力液圧がたとえば6Mpaを超えるか否かを判断し、超えていると判断したときには、調圧弁17A,17Bを閉弁し、第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を一定に保持することにより、各ディスクブレーキ2A〜2Dに一定の液圧が作用した状態を維持し、またマスタシリンダMの出力液圧が6Mpa以下であるときには、第1および第2ポンプ10A,10Bを作動せしめるとともに第1および第2調圧弁17A,17Bを調圧作動して第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を一定に制御する処理を実行することになる。すなわち自動増引時にブレーキペダルPを踏んでいないときには、第1および第2ポンプ10A,10Bの作動によって得た一定の液圧をディスクブレーキ2A〜2Dに作用せしめることになる。
また動作モードフラグが2以上の場合すなわち、ドラムブレーキ21,21のブレーキ状態が解除されるまでに電動ブレーキ駆動手段22が既に2回以上作動している状態を確認したときには、電動ブレーキ駆動手段22の作動のみで自動増引を実行することになる。
次にこの実施例の作用について説明すると、制御ユニット37は、車輪速度に基づく車両の進行方向と、変速機のシフトポジションに基づく車両の進行方向とが一致するか否かを判定するとともに、不一致と判定したときには自動動作許可スイッチ38による選択とは無関係に、電動ブレーキ駆動手段22を駐車ブレーキ力を高める側に作動せしめる自動増引処理を実行するので、ドライバーの意志に反する車両の逆行を、自動動作許可スイッチ38の選択にかかわらず確実に防止することができる。
また制御ユニット37は、自動増引処理の開始時にブレーキ液圧センサ15,15で検出される液圧が設定圧以上であるときには第1および第2ポンプ10A,10Bの作動を停止したままで調圧弁17A,17Bを閉弁して保持された第1および第2液圧路20A,20Bの液圧を複数の各ディスクブレーキ2A〜2Dに作用せしめる液圧ブレーキ処理を自動増引処理の終了まで継続せしめ、自動増引処理の終了に応じて調圧弁17A,17Bを開弁するので、ドラムブレーキ21,21を機械的に駆動する電動ブレーキ駆動手段22の作動遅れが生じても、自動増引時には各ディスクブレーキ2A〜2Dを速やかにブレーキ作動させることによって車両の逆行を防止することができ、しかも電動ブレーキ駆動手段22が発揮すべき動力を比較的低く抑えることが可能であるとともに液圧を各ディスクブレーキ2A〜2Dに作用させるにあたっては第1および第2ポンプ10A,10Bを停止したまま調圧弁17A,17Bを作動せしめるだけであるので自動増引時のエネルギー消費量を最小限に抑制することが可能となる。
また自動増引処理に伴う液圧ブレーキ処理の開始時に、ブレーキ液圧センサ15…の検出液圧が設定圧未満であるときには第1および第2ポンプ10A、10Bを作動せしめるとともに調圧弁17A,17Bの調圧作動によって一定に調圧された液圧を自動増引処理の終了まで継続して各ディスクブレーキ2A〜2Dに作用せしめるので、電動ブレーキ駆動手段22の作動遅れが生じても、自動増引時には各ディスクブレーキ2A〜2Dを速やかにブレーキ作動させることによって車両の逆行を防止することができ、しかも電動ブレーキ駆動手段22が発揮すべき動力を比較的低く抑えることが可能である。
しかもドラムブレーキ21,21のブレーキ状態が解除されるまでに電動ブレーキ駆動手段22が既に2回以上作動している状態を確認したときの自動増引時には、電動ブレーキ駆動手段22の作動のみで自動増引を実行するので、駐車用のブレーキ力が既に得られている状態で、各調圧弁17A,17Bや両ポンプ10A,10Bを不必要に作動せしめることを回避することができる。
また電動ブレーキ駆動手段22の作動状態を表示するための作動ランプ48が、電動ブレーキ駆動手段22の作動開始時に一瞬点灯した後に消灯し、さらに電動ブレーキ駆動手段22の作動終了に伴って再度点灯するので、駐車ブレーキ状態を得るべく電動ブレーキ駆動手段22が作動したこと、ならびにその作動が完了したことを作動ランプ48によってドライバーに認識させることができる。
また自動動作許可スイッチ38で自動作動の許可を選択した自動モードの状態では、車両の停止を確認したことが自動動作開始条件の1つとなるのであるが、制御ユニット37は、ドライバーのブレーキ操作がなされなければ車両の停止を確認しないので、車両の停止を確認したことを自動動作開始条件の1つとして電動ブレーキ駆動手段22の自動動作による駐車ブレーキ状態を得るときには、ドライバーの停止または駐車意志が反映されることになる。
また自動モードの状態で手動動作指示スイッチ39による解除指示がなされたときに、制御ユニット37は、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作を禁止するとともに作動ランプ48を点灯状態から消灯状態に切り換えてその状態を表示するので、自動動作が禁止状態にあることをドライバーに認識させて注意を促すことができる。
しかも自動動作の許可が自動動作許可選択スイッチ38によって再度選択されたとき、車体速度が所定速度(2km/h)以上となったとき、ならびに変速機のシフトポジションが走行レンジに入れ換えられたときのいずれかで、制御ユニット37は、自動作動禁止フラグおよび自動解除禁止フラグを「0」にリセットすることで、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作を許可する自動モード状態に復帰して作動ランプ48を点灯させることになり、車両の発進もしくはドライバーの発進意志を確認したときには、自動動作許可スイッチ38によって自動動作の許可を再び選択する手間を省いて自動動作の許可状態となるようにし、ドライバーが自動動作許可スイッチ38の操作を忘れても自動動作状態を維持することが可能となる。
また制御ユニット37は、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作中に自動動作許可スイッチ38で自動動作の不許可が選択されたときには、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作終了まで自動動作の不許可選択を受け入れることなく電動ブレーキ駆動手段22の作動制御を続行するので、電動ブレーキ駆動手段22の作動が途中で終了することによる制御未達が生じるのを防止し、制動力不足が解除不足が生じるのを防止することができる。
ところで、車両停止時に変速機のシフトポジションがニュートラルポジションである状態は、ドライバーの通常の駐車操作から逸脱した状態であり、ドライバーの意図がくみ取れず、たとえば車両を滑走させたいがためにニュートラルポジションにしている可能性もあるのであるが、制御ユニット37は、その車両停止の確認時に変速機のシフトポジションがニュートラルポジションであったときには、電動ブレーキ駆動手段22の自動動作開始条件が不成立であると判断する。これにより、自動的な駐車ブレーキ状態には入らないようにしてドライバーの意図に反する状態が生じるのを回避することができる。
さらに制御ユニット37は、自動動作許可スイッチ38で自動作動の許可を選択した状態で所定値以上のアクセル操作がなされたことをドラムブレーキのブレーキ状態を自動的に解除する自動解除条件の1つとして電動ブレーキ駆動手段22の作動を制御するのであるが、その自動解除条件が成立した状態であってもドライバーシートの後方への傾斜角度が基準角度以上であるときにはドラムブレーキ21,21のブレーキ状態を自動的に解除する側への電動ブレーキ駆動手段22の作動を禁止する。
すなわちドライバーシートの後方への傾斜角度が基準角度以上であるとときにはドライバーシートを倒してドライバーが仮眠状態にあることは明らかであり、そのような場合に、ドラムブレーキ21,21のブレーキ状態を自動的に解除する側への電動ブレーキ駆動手段22の作動を禁止することにより、ドライバーが誤ってアクセルペダルを踏み込んでも駐車ブレーキ状態が解除されることを確実に防止することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。