しかしながら、図23(C)に示す従来の水平偏波用全方向性アンテナは、水平偏波の電波に対して水平面内における全方向性の指向特性が得られるものの、2個のダイポールアンテナが直角に交差した状態で維持されるように個々のダイポールアンテナを各々保持する必要があると共に、個々のダイポールアンテナに位相が90°異なる電流を各々供給する必要があるので、アンテナ及び周辺回路の構成が複雑化するという問題がある。
また、特許文献1に記載の半波長ダイポールアンテナは、鉛直軸に関して対称な形状とすれば(水平面内の何れの方向から見ても同じ様な形状とすれば)、水平面内における全方向性の指向特性が得られるのではないかとの考えに基づいており、特許文献1には、上記のアンテナにより水平偏波の水平面内の指向性をほぼ無指向性にできる旨が記載されている。しかし、上記のアンテナは軸対称に近い形状ではあるものの、両端部が離間しているので完全な軸対称ではなく、実際には水平面内のうち離間している両端部付近に相当する方向で指向特性に乱れが生ずるという問題がある。また上記のアンテナでは、湾曲された放射素子のうち両端部に近い部分(給電点付近の放射素子と平行に近い向きとなっている部分)がアンテナの効率に悪影響を及ぼすという問題もある。
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、簡易な構成で、水平面内における全方向性の指向特性を有する水平偏波用アンテナを得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナは、各々直線状で全長が略等しく略平行に対向配置された第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子と、直線状で略中央に給電点が設けられ、前記第1アンテナ素子と略直角をなすように一端が前記第1アンテナ素子の一端に接続されると共に、前記第2アンテナ素子と略直角をなすように他端が前記第2アンテナ素子の一端に接続された第3アンテナ素子と、を備え、前記第1乃至第3アンテナ素子の全長の合計が使用周波数帯域の電波の1波長以下とされている。
請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナの一例を図1(及び図2(A))に示す。図1に示す水平偏波用アンテナ10は、各々直線状で全長が等しく平行に対向配置された第1アンテナ素子12及び第2アンテナ素子14と、直線状で中央に給電点が設けられ、第1アンテナ素子12と略直角をなすように一端が第1アンテナ素子12の一端に接続されると共に、第2アンテナ素子14と略直角をなすように他端が第2アンテナ素子14の一端に接続された第3アンテナ素子16から成り、各アンテナ素子12〜16の全長の合計が使用周波数帯域の電波の1波長以下とされている。なお、上記の水平偏波用アンテナ10は、例えば全長が使用周波数帯域の電波の1波長以下とされた単一のダイポールアンテナを、全体の形状が略コ字状をなすように、給電点からの距離が等しい中間部の2箇所において、同一平面内で略直角に各々折り曲げることで実現することができる。水平偏波用アンテナ10は、各アンテナ素子12〜16が上記のように配置・接続されていることで、第1アンテナ素子12と第2アンテナ素子14に空間的に逆位相(位相差180°)の電流Iが流れることになる。
図1及び図2(A)に示す水平偏波用アンテナ10の各アンテナ素子12〜16は、図2(B)に示すように、コ字型に配置され互いに独立に給電される(但し、電気ダイポールアンテナ#1,#2には空間的に逆位相の電流Iが流れるように給電される)3個の電気(微小)ダイポールアンテナ#1〜#3で近似することができる。更に、計算式表示を簡潔にするため、電気ダイポールアンテナ#1〜#3が図2(C)に示すようにH型に配置されているものとし、この電気ダイポールアンテナ#1〜#3を用いて請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナの原理を説明する。
請求項1記載の発明に係る第3アンテナ素子に相当する電気ダイポールアンテナ#3の中央を原点とし、電気ダイポールアンテナ#3に沿う方向をx軸、請求項1記載の発明に係る第1アンテナ素子に相当する電気ダイポールアンテナ#1及び請求項1記載の発明に係る第2アンテナ素子に相当する電気ダイポールアンテナ#2に平行な方向をy軸、xy平面を水平面、この水平面に垂直な方向をz軸としたときに、x軸からの水平面内角度がθの方向における電気ダイポールアンテナ#3の電界強度Edは、前出の(1)式と同様に次の(5)式で表される。
但し、(5)式におけるk=2π/λ(λは波長)、rは電気ダイポールアンテナ#3(原点)からの距離であり、Kは前出の(2)式で表される。
一方、電気ダイポールアンテナ#1,#2は、互いに平行で空間的に逆位相の電流Iが流れるので、電気ダイポールアンテナ#1,#2の間隔を2dとすると、x軸からの水平面内角度がθの方向における電気ダイポールアンテナ#1の電界強度E1及び電気ダイポールアンテナ#2の電界強度E2は、r≫d の関係に基づき、各々次の(6),(7)式で表される(図3も参照)。
そして、x軸からの水平面内角度がθの方向における電気ダイポールアンテナ#1、#2の合成電界強度EPは次の(8)式で表される。
なお(8)式におけるsin(kd・cosθ)はベッセル関数Jによる級数になるが(次の(9)式を参照)、請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナはkdの値が小さく(kd≒0.5 程度)、ベッセル関数Jの高次項は第1項と比較して数%以下の値であるため(次の(10)式を参照)、(8)式ではベッセル関数Jの第1項J1(0.5)のみを用いて近似した。
ここで、図2(C)に示すように各々水平面内に配置された電気ダイポールアンテナ#1〜#3のうち、電気ダイポールアンテナ#3の電界強度Edを表す(5)式と、平行に配置された電気ダイポールアンテナ#1、#2の合成電界強度EPを表す(8)式を比較すると、(8)式には虚数単位を表すj項が付加されている。これは、従来の水平偏波用全方向性アンテナと同様に、電気ダイポールアンテナ#3の電界の位相に対して電気ダイポールアンテナ#1、#2の合成電界の位相が90°ずれていることを示している。このため、電気ダイポールアンテナ#1〜#3の合成電界強度ETは、次の(11)式に示すように、電気ダイポールアンテナ#3の電界強度Edと電気ダイポールアンテナ#1、#2の合成電界強度EPとのベクトル合成で表される。
電気ダイポールアンテナ#3の電界強度Edの指向性は、(5)式に示すようにsinθで定まるのに対し、平行に配置された電気ダイポールアンテナ#1、#2の合成電界強度EPの指向性は、(8)式に示すように近似的にjcos2θで定まる。このため、電界強度Edと合成電界強度EPとのベクトル合成で表される電気ダイポールアンテナ#1〜#3の合成電界強度ETは、sinθで定まる電界強度Edとjcos2θで定まる合成電界強度EPとが補完し合うことで、上記の(11)式からも明らかなように、x軸からの水平面内角度θと略無関係に一定値となる。これにより、図2に示す電気ダイポールアンテナ#1〜#3が水平面内における全方向性の指向特性を有していることが理解できる。
なお、本発明に係る実際の水平偏波用アンテナについても、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子の合成電界強度と第3アンテナ素子の電界強度の最大値が略等しくなるように、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子と第3アンテナ素子の長さ(比率)を調整すれば、本発明に係る水平偏波用アンテナの水平面内指向特性(この水平面内指向特性は、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子によって形成される水平面内における8の字状の指向特性と、第3アンテナ素子の水平面内における8の字状の指向特性とを合成した結果に相当する)が略円形(全方向性)となる。
本願発明者は、上記原理に基づき、請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナの水平面内における指向特性を確認するために、図1に示す水平偏波用アンテナ10において、使用周波数帯域の中心周波数を300MHZとし、第1アンテナ素子12の長さL1及び第2アンテナ素子14の長さL2をL1=L2=約0.24m、第3アンテナ素子16の長さ2L3を約0.16m(L3=0.08m)、アンテナ素子12〜16の直径2ρ=5mmとしたときに、水平偏波の電波に対する水平面内指向特性をモーメント法により計算した。図4に示す計算結果からも明らかなように、水平面内指向特性は略円形を示しており、請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナ10が、水平偏波の電波に対して水平面内における全方向性の指向特性を有していることが確認された。
但し、上記の条件では各アンテナ素子12〜16の全長の合計が使用周波数帯域の中心周波数の電波の1波長の64%程度となるが、各アンテナ素子12〜16の全長の合計が使用周波数帯域の中心周波数の電波の1波長を超えると、アンテナ素子12〜16に部分的に逆位相の電流が流れることで水平面内指向特性に大きな乱れが生ずるので、アンテナ素子12〜16の全長の合計は使用周波数帯域の電波の1波長以下とすればよい。
このように、請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナは、「逆位相給電された平行アンテナ(請求項1記載の発明に係る第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子に相当)は、該平行アンテナに対して直角に配置された単一のアンテナ(請求項1記載の発明に係る第3アンテナ素子に相当)に対して放射位相が90°異なる」という原理に基づいて水平面内における全方向性の指向特性を実現するものであり、前述した特許文献1に記載の半波長ダイポールアンテナとは原理が全く異なっており、鉛直軸に関して対称な形状でないにも拘らず、第1及び第2アンテナ素子と第3アンテナ素子の長さ及びその比率を適切に調整することで、水平面内における全方向性の指向特性を得ることができる。
また、請求項1記載の発明に係る水平偏波用アンテナは、単一のアンテナに給電するのみで水平面内における全方向性の指向特性が得られるので、図23(C)に示す従来の水平偏波用全方向性アンテナのように、複数個のアンテナが一定の配置状態で維持されるように複数個のアンテナを各々保持したり、個々のアンテナに位相が互いに90°異なる電流を供給する必要もなく、アンテナ自体及び周辺回路の構成の簡易化も実現することができる。
ところで、本願発明者は、本発明に係る水平偏波用アンテナにおいて、使用周波数帯域の電波の波長に対して第1乃至第3アンテナ素子の長さの合計を種々の値に変化させたときの水平面内指向特性とアンテナ自体のインピーダンス(=R+jX)の変化を確認する解析検討を行った。その結果、使用周波数帯域の電波の波長λに対して第1乃至第3アンテナ素子の長さの合計を短くしていくと、水平面内における全方向性の指向特性は理想的な形状(略円形)となるものの、アンテナ自体のインピーダンスの実部Rの値が減少すると共にアンテナ自体のインピーダンスの虚部Xの値(リアクタンス成分X)が増大し、使用周波数帯域の電波の波長λに対して第1乃至第3アンテナ素子の長さの合計を長くしていくと、アンテナ自体のインピーダンスの実部Rは同軸給電線と整合する適正な値(例えば50Ω)に近づいていきアンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xも減少していくものの、第1及び第2アンテナ素子の水平面内指向特性及び第3アンテナ素子の水平面内指向特性が各々シャープな形状(指向特性を表す8の字状を構成する個々の円がアンテナ素子に直交する方向を長軸とする楕円形状)となってしまうことで、水平偏波用アンテナ全体としての水平面内指向特性も略円形からいびつな形状へ変化してしまうことが明らかとなった。
そして、本発明に係る水平偏波用アンテナは、使用周波数帯域の電波の波長λに対して第1乃至第3アンテナ素子の長さの合計を適切に調整することで、水平面内における全方向性の指向特性を得ることと、アンテナ自体のインピーダンスの実部Rを同軸給電線と整合する適正な値に一致させることは両立できるものの、このときアンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xはゼロにはならないことが本願発明者によって確認された。例えば、図1に示す水平偏波用アンテナ10の各部の寸法を前述の条件(L1=L2=約0.24m、L3=0.08m、2ρ=5mm)に合致させたときのアンテナ自体のインピーダンスZinは約50+j250Ωとなり、アンテナ自体のインピーダンスZinの実部Rは同軸給電線と整合する適正な値(50Ω)に一致しているものの、アンテナ自体のインピーダンスZinのリアクタンス成分X(j250Ω)の影響により本発明に係る水平偏波用アンテナの送信機又は受信機と整合させることができないという問題が生ずる。
上記を考慮すると、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、第3アンテナ素子の給電点付近に、インピーダンスを整合させるためのリアクタンスを挿入することが好ましい。例えば先の例のようにアンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの符号が正の場合、インピーダンスを整合させるためのリアクタンスとしてはキャパシタンスを挿入すればよく、具体的には、図5(A)に示すように容量性の集中定数素子(コンデンサ)18を挿入してもよいし、図5(B)に示すように容量性の分布定数回路(同軸回路)20を挿入してもよい。また、アンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの符号が負の場合には、インピーダンスを整合させるためのリアクタンスとしてインダクタンスを挿入すればよく、このインダクタンスについても集中定数素子又は分布定数回路を用いることができる。
一例として、図1に示す水平偏波用アンテナ10の各部の寸法を前述の条件(L1=L2=約0.24m、L3=0.08m、2ρ=5mm)に合致させ、アンテナ自体のインピーダンスZin=約50+j250Ωのうちのリアクタンス成分X(j250Ω)を略ゼロにするリアクタンス(キャパシタンス)を図5に示すように給電点付近に挿入したときの、水平偏波用アンテナ10のVSWR(電力反射係数)特性を計算した結果を図6に示す。図6より明らかなように、予め設定した使用周波数帯域の中心周波数300MHZにおけるVSWR値は、1.0に近い良好な値を示している。このように、請求項2記載の発明によれば、本発明に係る水平偏波用アンテナ全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロにすることができ、本発明に係る水平偏波用アンテナを送信機又は受信機と整合させることができる。なお、請求項2記載の発明において、給電点付近に挿入したリアクタンスが水平偏波用アンテナの水平面内指向特性に影響を与えることはなく、上述した図6のVSWR特性を示す水平偏波用アンテナ10の水平面内指向特性は前述した図4の水平面内指向特性と同じである。
また、請求項1記載の発明において、例えば請求項3に記載したように、第1乃至第3アンテナ素子のうち少なくとも第3アンテナ素子と略平行に配置され、少なくとも両端部が、個々の端部の位置の近傍に配置されている第1乃至第3アンテナ素子の何れかに各々接続された副アンテナ素子を更に設けることが好ましい。この副アンテナ素子は、第1乃至第3アンテナ素子と同一平面内に配置されていてもよいし、第1乃至第3アンテナ素子が配置されている平面からずれた位置に配置されていてもよい。また、上記の副アンテナ素子は、第3アンテナ素子と略平行に配置された部分(及び両端部を第1乃至第3アンテナ素子の何れかに各々接続する部分)のみから構成されていてもよいし、第1アンテナ素子と略平行に配置された部分及び第2アンテナ素子と略平行に配置された部分も含んで構成されていてもよい。更に、上記の副アンテナ素子は、両端部のみがアンテナ素子に接続されていてもよいし、両端部に加えて中間部分の任意の箇所においてもアンテナ素子に接続されていてもよい。
上述したように、請求項3に記載の副アンテナ素子は、第1乃至第3アンテナ素子のうち少なくとも第3アンテナ素子と略平行に配置され、少なくとも両端部が、個々の端部の位置の近傍に配置されている第1乃至第3アンテナ素子の何れかに各々接続されているので、この副アンテナ素子が略平行に配置されると共に副アンテナ素子の個々の端部が接続されたアンテナ素子(第3アンテナ素子、或いは第1乃至第3アンテナ素子)と副アンテナ素子は折り返しアンテナとして作用する。折り返しアンテナは、『内田英成,虫明康人,「超短波空中線」株式会社コロナ社,1955年7月25日,p.157-183』にも記載されているように、同じ長さのダイポールアンテナと比較して、指向性に影響を与えることなくアンテナ自体のインピーダンスを増大させることができるので、同様に請求項3記載の発明についても、水平面内指向特性に悪影響を及ぼすことなく本発明に係る水平偏波用アンテナのインピーダンスを増大させることができる。また、副アンテナ素子を設けることで、本発明に係る水平偏波用アンテナの強度も向上させることができる。
また、図1に示す水平偏波用アンテナ10は、平行2線式給電線(平行フィーダー線)には直接接続できるものの、同軸給電線に接続するためには平衡不平衡変換器(バラン)を用いる必要がある。しかし、バランを介して同軸給電線をアンテナに接続した場合、一般に損失が増大(効率が低下)し、周波数特性にも悪影響を及ぼすと共に、コストも増大するので望ましくない。これに対し、請求項3に記載の副アンテナ素子は第3アンテナ素子と略平行に配置されている部分を備えており、第3アンテナ素子と略平行に配置されている部分のうち第3アンテナ素子に設けられた給電点に対応する箇所(給電点位置で第3アンテナ素子と略直交し副アンテナ素子へ向けて延びる仮想線が副アンテナ素子と交差する箇所)では電位が基準電位(例えば0V)となるので、これを利用して、バランを用いることなく本発明に係る水平偏波用アンテナに同軸給電線を接続することも可能となる。
すなわち、請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、副アンテナ素子は、第3アンテナ素子と略平行に配置されている部分のうち第3アンテナ素子に設けられた給電点に対応する箇所に同軸給電線の外部導体が接続されており、同軸給電線の内部導体は、前記箇所から給電点に至る経路上の各アンテナ素子の内部を挿通されて給電点の位置まで延設されていることを特徴としている。同軸給電線では外部導体が基準電位(例えば0V)に維持されているが、前述のように請求項3に記載の副アンテナ素子が設けられた水平偏波用アンテナでは、第3アンテナ素子と略平行に配置されている部分のうち第3アンテナ素子に設けられた給電点に対応する箇所で電位が基準電位となるので、この箇所に同軸給電線の外部導体を接続することで、同軸給電線からの電磁波の放射等の不都合が生ずることを防止することができる。従って、請求項4記載の発明によれば、バランを用いることなく本発明に係る水平偏波用アンテナに同軸給電線を接続することができ、バランを用いることで損失の増大(効率の低下)や周波数特性の悪化、コストの増大等を招くことを回避することができる。
また、請求項4記載の発明において、使用周波数帯域が変化するとアンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさが変化することを考慮すると、例えば請求項5に記載したように、第3アンテナ素子の給電点付近に配置されると共に同軸給電線の内部導体に接続され、同軸給電線を介して供給される高周波電流に重畳された直流電流に応じてリアクタンスの大きさが変化する可変リアクタンス素子を更に設け、可変リアクタンス素子を介して給電されるように構成することが好ましい。これにより、使用周波数帯域が変化してアンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさが変化した場合にも、変化した後のリアクタンス成分Xの大きさに応じて、同軸給電線を介して供給する高周波電流に重畳する直流電流を変化させることで、本発明に係る水平偏波用アンテナ全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロにすることができ、本発明に係る水平偏波用アンテナを送信機又は受信機と整合させることができる。従って、請求項5記載の発明によれば、本発明に係る水平偏波用アンテナの広帯域化を実現することができる。
以上説明したように本発明は、各々直線状で全長が略等しく略平行に対向配置された第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子を設けると共に、直線状で略中央に給電点が設けられ、第1アンテナ素子と略直角をなすように一端が第1アンテナ素子の一端に接続されると共に、第2アンテナ素子と略直角をなすように他端が第2アンテナ素子の一端に接続された第3アンテナ素子を設け、第1乃至第3アンテナ素子の全長の合計を使用周波数帯域の電波の1波長以下としたので、簡易な構成で、水平面内における全方向性の指向特性を実現できる、という優れた効果を有する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、本発明は以下に記載した数値に限定されるものではない。
〔第1実施形態〕
図7(A)には本第1実施形態に係る水平偏波用アンテナ24が示されている。水平偏波用アンテナ24は、各々直線状で全長が等しく平行に対向配置された第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28を備えており、第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28の間には、直線状で中央に給電点として機能する空隙が設けられた第3アンテナ素子30が配置されている。第3アンテナ素子30の一端は、第3アンテナ素子30が第1アンテナ素子26と略直角をなすように第1アンテナ素子26の一端に接続されており、第3アンテナ素子30の他端は、第3アンテナ素子30が第2アンテナ素子28と略直角をなすように第2アンテナ素子28の一端に接続されている。従って、アンテナ素子26〜30は、各々同一平面上に位置しかつ全体の形状が略コ字状をなすように端部が接続されている。なお、アンテナ素子26〜30は、各々の全長の合計が使用周波数帯域の電波の1波長以下となるように、全長が調整されている。
また、水平偏波用アンテナ24には副アンテナ素子32も設けられている。副アンテナ素子32は、直線状で全長が第3アンテナ素子30と等しく、アンテナ素子26〜30と同一平面内のうち第3アンテナ素子30を挟んでアンテナ素子26〜30が形成する略コ字状の開口部と反対側の位置に第3アンテナ素子30と平行に配置された平行部32Aと、一端が平行部32Aの一端に接続され他端が第1アンテナ素子26と第3アンテナ素子30の接続部に接続された接続部32Bと、一端が平行部32Aの他端に接続され他端が第2アンテナ素子28と第3アンテナ素子30の接続部に接続された接続部32Cから構成されている。
また、副アンテナ素子32の平行部32Aには、同軸給電線としての同軸管34の外部導体34Aが中央(請求項4に記載の「給電点に対応する箇所」に相当)の下部に接続されている。同軸管34の内部導体34Bは、副アンテナ素子32の平行部32A及び接続部32B、第3アンテナ素子30の内部を挿通されて給電点の位置まで延設されている。また内部導体34Bの先端部は、第3アンテナ素子30の中央に設けられた空隙を通過して反対側の第3アンテナ素子30の内部へ所定長さに亘って挿入されている。従って、内部導体34Bは容量性の分布定数回路(同軸回路)36を介して第3アンテナ素子30に容量結合している。本実施形態では、水平偏波用アンテナ24の使用周波数帯域の中心周波数における水平偏波用アンテナ24自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xが事前に測定され、分布定数回路36は、使用周波数帯域の中心周波数における水平偏波用アンテナ24全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分が略ゼロになるように、測定されたリアクタンス成分Xの大きさに応じてキャパシタンスの大きさ(内部導体34Bの先端部の挿入長さ等)が調整されている。
次に本第1実施形態に係る水平偏波用アンテナ24の作用を説明する。水平偏波用アンテナ24には、第3アンテナ素子30と平行に配置された平行部32Aと、平行部32Aの両端を第3アンテナ素子30の両端に各々接続する接続部32B,32Cから成る副アンテナ素子32が設けられているが、この副アンテナ素子32は第3アンテナ素子30と共に折り返しアンテナとして機能するので、水平偏波用アンテナ24全体の指向特性に影響を与えることはない。このため、水平偏波用アンテナ24は、図1に示す水平偏波用アンテナ10と同様に水平面内における全方向性の指向特性を示す。また、副アンテナ素子32が設けられていることで、水平偏波用アンテナ24は、図1に示す水平偏波用アンテナ10と比較してインピーダンスが増大しており、かつ強度も向上している。
また、水平偏波用アンテナ24は給電点付近に分布定数回路36が設けられており、前述のように、使用周波数帯域の中心周波数における水平偏波用アンテナ24自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさに応じて、分布定数回路36のリアクタンス(詳しくはキャパシタンス)の大きさが調整されているので、使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ24全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分が略ゼロとなり、水平偏波用アンテナ24を送信機又は受信機と整合させることができる。
なお、本第1実施形態に係る水平偏波用アンテナ24は、アンテナ24自体のインピーダンスZinのリアクタンス成分Xの符号が正(すなわちインダクタンス)であるため、内部導体34Bの先端部を、第3アンテナ素子30の中央に設けられた空隙を通過して反対側の第3アンテナ素子30の内部へ挿入させることで、容量性の分布定数回路36を形成し、これにより、使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ24全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロにしているが、アンテナ24自体のインピーダンスZinのリアクタンス成分Xの符号が負(すなわちキャパシタンス)である場合には、反対側の第3アンテナ素子30の内部へ挿入した内部導体34Bの先端部を反対側の第3アンテナ素子30とショート(短絡)すれば分布定数回路が誘導性となるので、上記と同様に使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ24全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロにすることができる。
また、水平偏波用アンテナ24の副アンテナ素子32は、第3アンテナ素子30と平行に配置された平行部32Aを備えているが、この平行部32Aの中央(平行部32Aのうち給電点に対応する箇所)では電位が基準電位(例えば0V)となる。水平偏波用アンテナ24ではこれを利用し、平行部32Aの中央の下部に同軸管34の外部導体34Aが接続されており、同軸管34の内部導体34Bは、副アンテナ素子32の平行部32A及び接続部32B、第3アンテナ素子30の内部を挿通されて給電点の位置まで延設されている。これにより、水平偏波用アンテナ24と同軸給電線(同軸管34)を直接接続することが、バランを用いることなく、また同軸管34からの不必要な電磁波の放射等を生じさせることなく実現され、バランを用いることで損失の増大(効率の低下)や周波数特性の悪化、コストの増大等を招くことが回避される。
また、水平偏波用アンテナ24では同軸給電線として同軸管34を用いており、同軸管34の外部導体34Aは水平偏波用アンテナ24の副アンテナ素子32に接続されているので、同軸管34の外部導体34Aが鉛直方向に沿うように外部導体34Aを支持することで、同時に水平偏波用アンテナ24を一定の姿勢に保持することができ、水平偏波用アンテナ24の設置も容易に行うことができる。
続いて、本第1実施形態に係る水平偏波用アンテナ24の特性について、具体的な数値を挙げて更に説明する。水平偏波用アンテナ24において、使用周波数帯域の中心周波数を300MHZとし、第1アンテナ素子26の長さL1及び第2アンテナ素子28の長さL2をL1=L2=約0.21m、第3アンテナ素子16の長さ2L3を約0.16m(L3=約0.08m)、アンテナ素子26〜30及び副アンテナ素子32の直径2ρ=5mm、副アンテナ素子32の平行部32Aと第3アンテナ素子30との間隔(接続部32B,32Cの長さ)bをb=約0.03mとした場合、水平偏波用アンテナ24自体のインピーダンスZinは、本願発明者の計算によればZin≒50+j230Ωとなる。このインピーダンスZinのリアクタンス成分X(j230Ω)に応じて分布定数回路36のリアクタンス(詳しくはキャパシタンス)の大きさを調整した場合の水平偏波用アンテナ24のVSWR特性及び水平面内指向特性を計算した結果を図8及び図9に示す。
図8に示すように、水平偏波用アンテナ24は、使用周波数帯域の中心周波数300MHZにおけるVSWR値が略1.0となっており、送信機又は受信機と整合できることが明らかである。また図9に示すように、水平面内指向特性も略円形となっており、副アンテナ素子32が水平面内指向特性に影響を与えておらず、図1に示す水平偏波用アンテナ10と同様に水平面内における全方向性の指向特性が得られていることが理解できる。
なお、第1実施形態では、第3アンテナ素子30を挟んでアンテナ素子26〜30が形成する略コ字状の開口部と反対側の位置に副アンテナ素子32が設けられている構成を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例として図10(A)に示すように、副アンテナ素子32が第1アンテナ素子26と第2アンテナ素子28の間に配置されている構成を採用してもよい。図10(A)に示す水平偏波用アンテナ38では、副アンテナ素子32が、直線状で全長が第3アンテナ素子30と等しく、アンテナ素子26〜30と同一平面内に第3アンテナ素子30と平行に配置された平行部のみから成り、副アンテナ素子32の両端部は、個々の端部の位置の近傍に配置されているアンテナ素子、すなわち第1アンテナ素子26又は第2アンテナ素子28に各々接続されている。
水平偏波用アンテナ38では、図10(B)にも示すように、副アンテナ素子32の中央の下部に同軸管34の外部導体34Aが接続され、この同軸管34の内部導体が、副アンテナ素子32、第1アンテナ素子26、第3アンテナ素子30の内部を挿通されて給電点の位置まで延設されている。この水平偏波用アンテナ38は、先に説明した水平偏波用アンテナ24と同様に水平面内における全方向性の指向特性が得られると共に、同軸管34の外部導体34Aを支持することで水平偏波用アンテナ38を一定の姿勢に保持することを考慮すると、水平偏波用アンテナ24よりも重量バランスの点で優れている。
また、第1実施形態では、副アンテナ素子32の平行部32Aの全長を第3アンテナ素子30と等しくした例を説明したが、これに限定されるものではなく、例として図11に示すように、副アンテナ素子32の平行部32Aの全長は第3アンテナ素子30の全長よりも短くてもよい。図11に示す水平偏波用アンテナ40では、平行部32Aの全長が第3アンテナ素子30の全長よりも短く、接続部32B,32Cは平行部32Aの両端部と、平行部32Aの個々の端部の位置の近傍に配置されているアンテナ素子、すなわち第3アンテナ素子30との間を接続している。
この水平偏波用アンテナ40においても、第3アンテナ素子30のうち副アンテナ素子32の平行部32Aと対向している部分と、副アンテナ素子32(の平行部32A、接続部32B,32C)が折り返しアンテナとして機能するので、副アンテナ素子32が水平偏波用アンテナ40全体の指向特性に影響を与えることはなく、水平偏波用アンテナ40も水平面内における全方向性の指向特性を示す。
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。図12に示すように、本第2実施形態に係る水平偏波用アンテナ44は、第1実施形態で説明した水平偏波用アンテナ24と比較して副アンテナ素子の構成が相違している。
すなわち、水平偏波用アンテナ44の副アンテナ素子46は、各々直線状で第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28と全長が等しく平行に対向配置された第1平行部46A及び第2平行部46Bと、直線状で第3アンテナ素子30と全長が等しく第1平行部46Aと第2平行部46Bの間に配置された第3平行部46Cを備えている。第3平行部46Cの一端は、第3平行部46Cが第1平行部46Aと略直角をなすように第1平行部46Aの一端に接続されており、第3平行部46Cの他端は、第3平行部46Cが第2平行部46Bと略直角をなすように第2平行部46Bの一端に接続されている。従って平行部46A〜46Cは、アンテナ素子26〜30と同様に、各々同一平面上に位置しかつ全体の形状が略コ字状をなすように端部が接続されている。
そして、平行部46A〜46Cが位置している平面はアンテナ素子26〜30が位置している平面と平行とされ、平行部46A〜46Cは、第1平行部46Aが第1アンテナ素子26と平行に対向配置され、第2平行部46Bが第2アンテナ素子28と平行に対向配置され、第3平行部46Cが第3アンテナ素子30と平行に対向配置されている。また副アンテナ素子46は、第1平行部46Aと第1アンテナ素子26の先端部同士を接続する接続部46D、第2平行部46Bと第2アンテナ素子28の先端部同士を接続する接続部46E、第1平行部46Aと第1アンテナ素子26の中間部同士を接続する短絡部46F及び第2平行部46Bと第2アンテナ素子28の中間部同士を接続する短絡部46Gも備えている。
また、水平偏波用アンテナ44では、副アンテナ素子46の第3平行部46Cの中央下部に同軸管34の外部導体34Aが接続されており、同軸管34の内部導体34Bは、副アンテナ素子46の第3平行部46C、第1平行部46A、短絡部46F、第1アンテナ素子26及び第3アンテナ素子30の内部を挿通されて給電点の位置まで延設され、第1実施形態で説明した水平偏波用アンテナ24と同様に、容量性の分布定数回路(同軸回路)36を介して第3アンテナ素子30に接続されている。なお、本第2実施形態に係る水平偏波用アンテナ44についても、アンテナ自体のインピーダンスZinのリアクタンス成分Xの符号が正(インダクタンス)であるために容量性の分布定数回路36を設けているが、アンテナ自体のインピーダンスZinのリアクタンス成分Xの符号が負(キャパシタンス)であれば、誘導性の分布定数回路を設ければよい。
次に本第2実施形態に係る水平偏波用アンテナ44の作用を説明する。水平偏波用アンテナ44には、第1アンテナ素子26と平行に配置された第1平行部46A、第2アンテナ素子28と平行に配置された第2平行部46B、第3アンテナ素子30と平行に配置された第3平行部46C、平行部46A,46Bをアンテナ素子26,28に接続する接続部46D,46E及び短絡部46F,46Gから成る副アンテナ素子46が設けられているが、この副アンテナ素子46はアンテナ素子26〜30と共に折り返しアンテナとして機能するので、水平偏波用アンテナ44全体の指向特性に殆ど影響を与えることはない。このため、水平偏波用アンテナ44についても水平面内における全方向性の指向特性を示す。また、水平偏波用アンテナ44は副アンテナ素子46が設けられていることでインピーダンスが増大し、かつ強度も向上している。
また水平偏波用アンテナ44は、水平偏波用アンテナ24と同様に、使用周波数帯域の中心周波数における水平偏波用アンテナ44自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさに応じて、給電点付近に設けられている分布定数回路36のリアクタンスの大きさが調整されているので、使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ44全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分が略ゼロとなり、水平偏波用アンテナ44を送信機又は受信機と整合させることができる。更に、水平偏波用アンテナ44は、電位が基準電位(例えば0V)となる第3平行部46Cの中央下部に同軸管34の外部導体34Aが接続されており、同軸管34の内部導体34Bはアンテナ内部を挿通されて給電点の位置まで延設されているので、水平偏波用アンテナ24と同様に、水平偏波用アンテナ44と同軸給電線(同軸管34)を接続することを、バランを用いることなく、また同軸管34からの不必要な電磁波の放射等を生じさせることなく実現している。
続いて、本第2実施形態に係る水平偏波用アンテナ44の特性について、具体的な数値を挙げて更に説明する。水平偏波用アンテナ44において、使用周波数帯域の中心周波数を300MHZとし、第1アンテナ素子26(第1平行部46A)の長さL1及び第2アンテナ素子28(第2平行部46B)の長さL2をL1=L2=約0.22m、第3アンテナ素子16(第3平行部46C)の長さ2L3を約0.16m(L3=約0.08m)、アンテナ素子26〜30及び副アンテナ素子46の直径2ρ=5mm、副アンテナ素子46の平行部46A〜46Cとアンテナ素子26〜30との間隔(接続部46D,46E及び短絡部46F,46Gの長さ)bをb=約0.02m、第3アンテナ素子30の両端部と短絡部46F,46Gとの距離sをs=約0.08mとし、水平偏波用アンテナ44自体のインピーダンスZinのリアクタンス成分X(j230Ω)に応じて分布定数回路36のリアクタンス(キャパシタンス)を約-j230Ωに調整した場合の水平偏波用アンテナ44の水平面内指向特性及びVSWR特性を計算した結果を図13及び図14に示す。
図13に示すように、水平偏波用アンテナ44の水平面内指向特性は略円形となっており、副アンテナ素子46が水平面内指向特性に影響を与えておらず、水平面内における全方向性の指向特性が得られていることが理解できる。また、図14に示すように、使用周波数帯域の中心周波数300MHZにおける水平偏波用アンテナ44のVSWR値は略1.0となっており、送信機又は受信機と整合することができる。
また、本第2実施形態に係る水平偏波用アンテナ44は設計が容易であるという利点も有している。すなわちアンテナの諸特性は指向特性とインピーダンスに集約されるため、アンテナの設計に際しては、指向特性が所望の特性を示し、かつインピーダンスが所望の値を示すことが主目標となる。一方、本発明に係る水平偏波用アンテナでは、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子と第3アンテナ素子の長さ(比率)を調整することで所望の指向特性(水平面内指向特性の全方向性)が得られるものの、同時にアンテナ自体のインピーダンスも変化してしまうため、水平面内指向特性が全方向性を示し、かつインピーダンスが所望の値を示すように第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子と第3アンテナ素子の長さ(比率)を定めることに困難が伴うという問題がある。
これに対して本第2実施形態に係る水平偏波用アンテナ44では、短絡部46F,46Gの位置を変化させると、水平面内指向特性に殆ど変化することなくアンテナ自体のインピーダンスが変化するという特性を有している。一例として、前述の条件(L1=L2=約0.22m、L3=約0.08m、2ρ=5mm、b=約0.02m)で、使用周波数帯域の中心周波数300MHZの波長λ(≒1m)に対して短絡部46F,46Gの位置(第3アンテナ素子30の両端部と短絡部46F,46Gとの距離s)を変化させた場合のインピーダンスの変化を図15に示す。
このため、水平偏波用アンテナ44の設計に際しては、まず水平面内指向特性の全方向性が得られるように第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子と第3アンテナ素子の長さを調整した後に、水平偏波用アンテナ44自体のインピーダンスの実部Rの値が所望の値(例えば同軸給電線と整合する50Ω等)になるように短絡部46F,46Gの位置(第3アンテナ素子30の両端部と短絡部46F,46Gとの距離s)を調整し、続いて、使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ44全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分が略ゼロとなるように分布定数回路36のリアクタンスの大きさを調整することで、水平面内における全方向性の指向特性を有し、かつインピーダンスが送信機又は受信機と整合できる適切な値を示す水平偏波用アンテナ44を容易に設計することができる。
なお、第2実施形態では副アンテナ素子46の平行部46A〜46Cが、アンテナ素子26〜30が位置している平面と平行かつ異なる平面上に位置している例を説明したが、これに限定されるものではなく、例として図16に示すように、副アンテナ素子46がアンテナ素子26〜30と同一平面上に位置していてもよい。図16に示す水平偏波用アンテナ48では、副アンテナ素子46の平行部46A〜46Cが、全体の形状が略コ字状をなすように端部が接続されている。そして副アンテナ素子46の平行部46A〜46Cは、アンテナ素子26〜30と同一平面上でかつアンテナ素子26〜30がなす略コ字状の全体の形状の内側に、第1平行部46Aが第1アンテナ素子26と略平行、第2平行部46Bが第2アンテナ素子28と略平行、第3平行部46Cが第3アンテナ素子30と略平行になるように配置されている。
また、副アンテナ素子46は、第1平行部46Aと第1アンテナ素子26の先端部同士を接続する接続部46D、第2平行部46Bと第2アンテナ素子28の先端部同士を接続する接続部46E、第1平行部46Aと第1アンテナ素子26の中間部同士を接続する短絡部46F及び第2平行部46Bと第2アンテナ素子28の中間部同士を接続する短絡部46Gも備えている。更に、水平偏波用アンテナ48では、副アンテナ素子46の第3平行部46Cの中央下部に同軸管34の外部導体34Aが接続されており、同軸管34の内部導体34Bは、副アンテナ素子46の第3平行部46C、第1平行部46A、短絡部46F、第1アンテナ素子26及び第3アンテナ素子30の内部を挿通されて給電点の位置まで延設され、容量性の分布定数回路(同軸回路)36を介して第3アンテナ素子30に接続されている。
図16に示す水平偏波用アンテナ48についても、副アンテナ素子46がアンテナ素子26〜30と共に折り返しアンテナとして機能するので、水平偏波用アンテナ44全体の指向特性に殆ど影響を与えることはなく、水平面内における全方向性の指向特性を示す。また、副アンテナ素子46が設けられていることでインピーダンスが増大し、かつ強度も向上している。また水平偏波用アンテナ48は、使用周波数帯域の中心周波数における水平偏波用アンテナ44自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさに応じて、給電点付近に設けられている分布定数回路36のリアクタンスの大きさが調整されているので、使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ48全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分が略ゼロとなり、水平偏波用アンテナ48を送信機又は受信機と整合させることができる。
更に、水平偏波用アンテナ48は、電位が基準電位(例えば0V)となる第3平行部46Cの中央下部に同軸管34の外部導体34Aが接続されり、同軸管34の内部導体34Bはアンテナ内部を挿通されて給電点の位置まで延設されているので、水平偏波用アンテナ48と同軸給電線(同軸管34)を接続することを、バランを用いることなく、また同軸管34からの不必要な電磁波の放射等を生じさせることなく実現できる。また、水平偏波用アンテナ48においても、短絡部46F,46Gの位置(第3アンテナ素子30の両端部と短絡部46F,46Gとの距離)を変化させることでアンテナ自体のインピーダンスが変化するので、水平面内指向特性が全方向性を示し、かつインピーダンスが所望の値を示す水平偏波用アンテナ48を容易に設計できる、という効果も有している。
図16に示す水平偏波用アンテナ48の特性について、具体的な数値を挙げて更に説明する。水平偏波用アンテナ48において、使用周波数帯域の中心周波数を300MHZとし、第1アンテナ素子26(第1平行部46A)の長さL1及び第2アンテナ素子28(第2平行部46B)の長さL2をL1=L2=約0.22m、第3アンテナ素子16(第3平行部46C)の長さ2L3を約0.16m(L3=約0.08m)、アンテナ素子26〜30及び副アンテナ素子46の直径2ρ=5mm、副アンテナ素子46の平行部46A〜46Cとアンテナ素子26〜30との間隔(接続部46D,46E及び短絡部46F,46Gの長さ)bをb=約0.01m、第3アンテナ素子30の両端部と短絡部46F,46Gとの距離sをs=約0.11mとした場合、水平偏波用アンテナ44自体のインピーダンスZinはZin=49.1+j256Ωとなり、このリアクタンス成分X(j256Ω)に応じて分布定数回路36のリアクタンス(キャパシタンス)を約-j256Ωに調整した場合の水平偏波用アンテナ48の水平面内指向特性及びVSWR特性を計算した結果を図17及び図18に示す。
図17に示すように、水平偏波用アンテナ44の水平面内指向特性は略円形となっており、先に説明した水平偏波用アンテナ44と同様に、副アンテナ素子46が水平面内指向特性に影響を与えておらず、水平面内における全方向性の指向特性が得られていることが理解できる。また、図18に示すように、使用周波数帯域の中心周波数300MHZにおける水平偏波用アンテナ44のVSWR値は略1.0となっており、送信機又は受信機と整合できることも明らかである。
また、第2実施形態では副アンテナ素子46の第1平行部46A及び第2平行部46Bの全長を第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28と等しくした例を説明したが、これに限定されるものではなく、例として図19に示すように、副アンテナ素子46の第1平行部46A及び第2平行部46Bの全長を第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28よりも短くしてもよい。図19に示す水平偏波用アンテナ50では、第1平行部46A及び第2平行部46Bの全長が第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28よりも短く、第1平行部46A及び第2平行部46Bの端部は、短絡部46F,46Gを介して第1アンテナ素子26及び第2アンテナ素子28の中間部に接続されている。
この水平偏波用アンテナ50は、水平偏波用アンテナ44よりも若干強度が低下するものの、第1アンテナ素子26のうち第1平行部46Aと対向している部分、第2アンテナ素子28のうち第2平行部46Bと対向している部分、第3アンテナ素子30、及び、副アンテナ素子46(の平行部46A〜46C、短絡部46F,46G)が折り返しアンテナとして機能し、電気的な特性は水平偏波用アンテナ44と殆ど変わらず、軽量かつ低コストに構成できるという効果を有する。また水平偏波用アンテナ50では、短絡部46F,46Gが水平偏波用アンテナ44における短絡部46F,46Gと同様に作用し、短絡部46F,46Gの位置(第3アンテナ素子30の両端部と短絡部46F,46Gとの距離)を変化させることでアンテナ自体のインピーダンスが変化するので、水平面内指向特性が全方向性を示し、かつインピーダンスが所望の値を示す水平偏波用アンテナ50を容易に設計することができる、という効果も有している。
なお、上記では請求項2に記載の「インピーダンスを整合させるためのリアクタンス」として分布定数回路を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記のリアクタンスとして集中定数素子(コンデンサ等)を適用してもよい。但し、集中定数素子には耐圧の制限があるので、特に本発明に係る水平偏波用アンテナを送信用として用いる場合には分布定数回路を用いることが好ましい。
また、上記の分布定数回路や集中定数素子に代えて、可変容量ダイオード等の可変リアクタンス素子を給電点付近に設けてもよい。例えば可変容量ダイオードを設ける場合、図20に示すように、第3アンテナ素子30を構成し中央に設けられた空隙を挟んで対向配置された一対のアンテナ素子30A,30Bのうち、同軸管34の内部導体34Bが挿通されていない方のアンテナ素子30Aの開口を金属板54により封止し、同軸管34の内部導体34Bと金属板54との間に可変容量ダイオード56を接続すればよい。なお、図20では同軸管34の外部導体34Aに−(マイナス)、内部導体34Bに+(プラス)を給電する場合を示しているが、逆極性に給電する場合は可変容量ダイオード56を図20と逆向きに接続すればよい。これにより、水平偏波用アンテナは可変容量ダイオード56を介して給電される。また、同軸管34を介して供給される高周波電流に直流電流を重畳すると共に、この直流電流の大きさを変化させると、可変容量ダイオード56のリアクタンス(キャパシタンス)の大きさが変化することで、水平偏波用アンテナ全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を高周波電流とは無関係に変化させることができる。
例えば図7に示す水平偏波用アンテナ24において、分布定数回路36に代えて可変容量ダイオード56を設け、高周波電流に重畳する直流電流の大きさを変化させることで、可変容量ダイオード56のリアクタンス(キャパシタンス)を各値に変化させたときの、水平偏波用アンテナ24のVSWR特性及び水平面内指向特性の変化を図21に示す。第1実施形態で説明した水平偏波用アンテナ24や第2実施形態で説明した水平偏波用アンテナ44は、実用に耐えうる周波数帯域幅(VSWRが所定値以下となる周波数帯域幅)が何れも数十MHz程度である。これに対し、上記の可変容量ダイオード56等の可変リアクタンス素子を設ければ、使用周波数帯域を変更したい場合にも、変更後の使用周波数帯域におけるアンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさに応じて、同軸管34を介して供給する高周波電流に重畳させた直流電流の大きさを変化させ、可変リアクタンス素子のリアクタンスの大きさを調整することで、変更後の使用周波数帯域における水平偏波用アンテナ全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロ又はゼロに近づけることができ、図21からも明らかなように、水平偏波用アンテナの広帯域化を実現することができる。
なお、アンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさに比して可変容量ダイオード56のキャパシタンスが不足している場合には、分布定数回路36を設けると共に、この分布定数回路36と並列に可変容量ダイオード56を接続れば、アンテナ全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロ又はゼロに近づけることができる。また、アンテナ自体のインピーダンスのリアクタンス成分Xの大きさに比して可変容量ダイオード56のキャパシタンスが大き過ぎる場合には、図20に示す構成において、可変容量ダイオード56と直列にコンデンサ(キャパシタンス)を接続すれば、アンテナ全体としてのインピーダンスのリアクタンス成分を略ゼロ又はゼロに近づけることができる。
また、上記では本発明に係る水平偏波用アンテナに接続する同軸給電線として同軸管を例に説明したが、これに代えて同軸ケーブルを用いてもよい。また、本発明に係る水平偏波用アンテナに接続する給電線は同軸給電線に限られるものではなく、例えば平行2線式給電線(平行フィーダー線)等の他の給電線を接続してもよい。