JP2006132343A - 内燃機関の始動装置及びその始動装置に備えられたスタータギアユニット - Google Patents

内燃機関の始動装置及びその始動装置に備えられたスタータギアユニット Download PDF

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Abstract

【課題】 スタータ機構の駆動力によってエンジンを始動させるに際し、エンジンの停止制御途中でエンジン始動要求が発生した場合であっても、迅速にエンジン始動動作に移行でき、また、エンジンの始動性を良好に得ることができる始動装置及びその始動装置に備えられるスタータギアユニットを提供する。
【解決手段】 エンジン始動用スタータ機構2のスタータギアユニット6に、シンクロナイザリング62と、このシンクロナイザリング62の内部に配置されたピニオンギア61とを備えさせる。シンクロナイザリング62の外周面にリングギアRに当接可能なテーパ面62fを備えさせ、このテーパ面62fをリングギアRに当接させ、シンクロナイザリング62を介してピニオンギア61をリングギアRと同期回転させた状態で、ピニオンギア61を前進させてリングギアRに噛み合わせてクランキングを行う。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに代表される内燃機関を始動させるための始動装置及びその始動装置に備えられたスタータギアユニットに係る。特に、本発明は、内燃機関の始動性を良好に得るための対策に関する。
市街地等を自動車が走行する際に交差点の信号待ち等で停車すると、エンジンがアイドリング運転状態となり、その間、燃料を浪費してしまう。この点に鑑み、従来より、自動車が停車するなど一定の条件が成立した場合には、燃焼室への燃料供給を停止(所謂フューエルカット)してエンジンを停止させる所謂「アイドリングストップ制御」が行われている(例えば下記の特許文献1を参照)。
また、この「アイドリングストップ制御」によってエンジンが停止している状態から所定のエンジン始動条件(例えばマニュアルトランスミッション車にあってはクラッチペダルの踏み込み等)が成立した場合には、スタータ機構を駆動し、その駆動力をエンジンに伝達(所謂クランキング)してエンジンを再始動させるようにしている。
上記スタータ機構の一般的な構成としては、下記の特許文献2にも開示されているように、スタータモータ、スタータギア、マグネットスイッチを備えている。スタータギアは、スタータモータの駆動シャフトに回転一体で且つこの駆動シャフトの軸心方向に進退移動自在に支持されている。上記マグネットスイッチは、出没自在なプランジャを備え、このプランジャがレバーを介してスタータギアに連繋している。このため、プランジャの出没動作に伴ってスタータギアは、エンジンのクランク軸に連結されているフライホイールリングギア(以下、単にリングギアという)に噛み合う位置と、このリングギアから退避する位置(非噛み合い位置)との間を移動する。
そして、エンジンの再始動動作として一般的には、エンジン始動条件が成立すると、スタータモータが始動すると共にマグネットスイッチが駆動する。これにより、スタータギアが回転しながらスタータモータの駆動シャフト上で前進してリングギアに噛み合う。その結果、スタータモータの回転駆動力がスタータギア及びリングギアを介してエンジンのクランク軸に伝達(クランキング)され、エンジンが始動することになる。
しかしながら、従来のスタータ機構にあっては、以下に述べる状況においてエンジンの始動に遅れが生じてしまうため、始動性を良好にするための改良が必要であった。
例えば自動車が交通信号の停止信号によって停車する際、エンジン停止条件の成立に伴い燃料供給を停止(フューエルカット)してエンジンを停止させる制御(上記アイドリングストップ制御)が開始される。ところが、このエンジン停止制御の途中、つまり、未だエンジンが完全には停止していない状況(惰性で回転している状況)において交通信号が切り換わった場合、運転者はエンジン始動のための運転操作(例えばクラッチペダルの踏み込み操作やアクセルペダルの踏み込み操作)を行う。
しかしながら、従来の制御にあっては、エンジンが完全に停止しない限り、エンジン始動条件が成立したとしてもエンジン始動動作は開始しないようにしている。その理由は、エンジンが完全に停止していないにも拘わらずエンジン始動動作を開始してしまうと、上記リングギアが惰性によって回転している状態で、スタータモータからの回転駆動力を受けたスタータギアがリングギアに噛み合う方向に移動することになり、これら両ギアの周
速度の差が大きい場合には噛み合い動作が円滑に行えないためである。
従って、上記状況の場合、運転者がエンジン始動のための運転操作を行っているにも拘わらず、エンジンが完全に停止した後でなければエンジン始動動作(スタータ機構によるクランキング動作)は行われないことになる。その結果、運転者の運転操作が行われてからエンジンが始動するまでの時間を長く要してしまい、エンジン始動が遅れてしまって運転者に違和感(所謂、発進のもたつき感)を与えてしまうことになる。
また、このようにエンジンが完全に停止した後でなければエンジン始動動作が行われないようになっているので、スタータギアは、停止しているリングギアに対する噛み合いを良好に行うべく、その外周に形成されているギア(歯)のバックラッシュが大きめに設計されている。このため、スタータギアがリングギアに対して噛み合う際の噛み合い音が大きくなってしまう傾向があり、これによってもユーザに違和感を与えていた。
このようにスタータギアがリングギアに噛み合う構成であることに起因する課題を解消できるものとして下記の特許文献3がある。この特許文献3には、スタータモータの回転駆動力を摺動摩擦によって伝達することが開示されている。つまり、エンジンのクランク軸に回転一体に連結されたスタートホイールに円錐台形状の摩擦面を設けておく一方、スタータモータの回転駆動力を受ける駆動ローラの外周面にも摩擦面を設けておく。そして、エンジン始動動作時には、駆動ローラをスタートホイールに向けて移動させることによって両摩擦面同士を接触させ、これによってスタータモータの回転駆動力を駆動ローラとスタートホイールとの間の摩擦によって伝達してクランキングを行うようにしている。
特開2002−70699号公報 特開2004−100502号公報 特開2003−506628号公報
ところが、上述した特許文献3に開示されている構成では、スタートホイールの摩擦面と駆動ローラの摩擦面との間で滑りが生じる場合があり、スタータモータの回転駆動力をスタートホイールに十分に伝達することができず、エンジンの始動が円滑に行えない可能性がある。また、経年劣化によってスタートホイールの摩擦面と駆動ローラの摩擦面との間の摩擦係数が低くなった場合にはエンジンの始動に支障を来してしまう可能性もある。
このように、摩擦伝動によってスタータモータの回転駆動力をエンジンのクランク軸まで伝達する構成は、エンジン始動性の面で実用性に乏しいものであった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スタータ機構の駆動力によってエンジンを始動させるに際し、エンジンの停止制御途中でエンジン始動要求が発生(エンジン始動条件が成立)した場合であっても、迅速にエンジン始動動作に移行できると共に、スタータモータの回転駆動力の伝達が確実に行えてエンジン始動性を良好に得ることができる始動装置及びその始動装置に備えられるスタータギアユニットを提供することにある。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、内燃機関始動用の駆動力を発生する始動機構を備え、内燃機関の始動時に、この始動機構で発生した駆動力を内燃機関の動力入力ギアに伝達して内燃機関を始動させる始動装置を前提とする。この始動装置に対し、上記始動機構に、上記動力入力ギアに形成された動力伝達面に対して当接可能な当接面を有する回転体と、この回転体と共に回転し、動力入力ギアに対して退避する「
退避位置」から動力入力ギアに噛み合う「噛合位置」への移動が可能な噛み合いギアと、内燃機関始動用の駆動力を上記回転体及び噛み合いギアのうち少なくとも一方に与える動力発生手段と、上記動力発生手段を駆動させ且つ回転体の当接面を動力入力ギアの動力伝達面に当接させて回転体及び動力入力ギアが共に回転した状態で、噛み合いギアを上記「退避位置」から「噛合位置」に移動させる移動機構とを備えさせている。
例えばアイドリングストップ制御を行う自動車に搭載する場合、従来の始動装置にあっては、エンジン停止条件が成立してエンジン停止制御が開始され、このエンジン停止制御の途中にエンジン始動条件が成立したとしても、ギア同士の噛み合いを円滑に行うために、エンジン(内燃機関)が完全に停止するのを待ってエンジン始動動作を行っていた。これに対し、本解決手段では、このエンジン停止制御の途中(上記動力入力ギアが回転状態にあるとき)にエンジン始動条件が成立した場合、直ちにエンジン始動動作を行うことが可能である。その理由について以下に述べる。本解決手段のエンジン始動動作では、上記タイミングでエンジン始動条件が成立した場合に、動力発生手段及び移動機構を作動させ、回転体の当接面を動力入力ギアの動力伝達面に当接させて回転体及び動力入力ギアを共に回転させた状態で噛み合いギアを上記「退避位置」から「噛合位置」に移動させる。このとき、噛み合いギアは回転体と共に回転しているため、この噛み合いギアと動力入力ギアとの周速度を近付けることができ、この状態で噛み合いギアを動力入力ギアに円滑に噛み合わせることができる。このため、エンジンが完全に停止するのを待つことなく、つまり、動力入力ギアが回転している状態であってもエンジン始動動作を開始できる。言い換えると、本解決手段によれば回転体を仲介して噛み合いギアを動力入力ギアに略同期回転させながらこの両者を噛み合わせることが可能である。これにより、動力発生手段からの駆動力は、噛み合いギアを介して動力入力ギアに確実に伝達され、クランキング動作が開始されてエンジンを始動させることができる。このように、本解決手段によれば、エンジン停止制御の途中でエンジン始動条件が成立した場合に、エンジンが完全に停止するのを待つことなく迅速にエンジン始動動作に移行できる。また、上述した如く噛み合いギアと動力入力ギアとの周速度を近付けた状態(略同期回転させた状態)でこの両者を噛み合わせることが可能であるため、この噛み合い時におけるギア同士の衝突音を抑制することもできる。従来では、停止している動力入力ギア(リングギア)に対する噛み合いが良好に行われるように噛み合いギア(ピニオンギア)のバックラッシュが大きめに設計されていたために噛み合い音が大きくなる傾向があった。これに対し、本解決手段によれば、このバックラッシュを大きめに設計しなくても噛み合いギアを動力入力ギアに円滑に噛み合わせることができ、バックラッシュを小さく設計することが可能になって噛み合い音を小さくできる。更に、本解決手段では、動力発生手段が発生した駆動力を噛み合いギアによって動力入力ギアに伝達している。つまり、ギア同士の噛み合いによる動力伝達であるため、摩擦伝動によって駆動力を伝達するものに比べて動力入力ギアに十分な駆動力を伝達することができ、内燃機関の始動を短時間で行うことができて、良好な始動性を得ることができる。
回転体及び噛み合いギアの具体構成及びその具体的な動作としては以下のものが掲げられる。先ず、回転体を、その当接面が動力入力ギアの動力伝達面に対して後退した位置から当接する位置まで移動可能とし、この回転体の当接面を動力入力ギアの動力伝達面に当接させた後に、噛み合いギアを「噛合位置」に移動させて動力入力ギアに噛み合わせるようにしている。このように内燃機関の始動動作時以外では回転体を動力入力ギアから後退させて動力伝達面に当接させないようにしていることで、内燃機関の通常運転時の負荷を軽減することができて内燃機関の運転効率の向上を図ることができる。
また、噛み合いギアを、回転体の内部に形成されたギア収容空間に収容し、これら噛み合いギアと回転体とを同一軸心上で相対的に進退移動自在であって且つ回転一体に係合させる。そして、これら噛み合いギアと回転体とを一体的に動力入力ギアに向かって移動さ
せて、回転体の当接面が動力入力ギアの動力伝達面に当接した後に、噛み合いギアのみを「噛合位置」に移動させて動力入力ギアに噛み合わせる構成としている。
この場合、噛み合いギアと回転体とを同一軸心上で相対的に進退移動自在であって且つ回転一体に係合するための具体構成として、噛み合いギアの外周面と回転体のギア収容空間の内面とをスプライン係合させている。
これら構成によれば、噛み合いギア及び回転体を始動装置に組み付ける際、予め噛み合いギアと回転体とを一体的に係合させてスタータギアユニットとして構成しておいた状態でこれを始動装置に組み付けることが可能になり、始動装置の製造作業を簡素化できる。また、噛み合いギアの外周面に形成された歯をそのままスプライン係合のためのスプラインとして使用でき、動力入力ギアに噛み合うための歯と回転体にスプライン係合するためのスプラインとを個別に形成する必要がなくなって動力入力ギアの構成及びその製作作業を簡素化できる。
上述した各解決手段に係る始動装置の適用形態として、具体的にはアイドリングストップ制御動作を行う自動車に搭載された内燃機関を始動させるものとして適用することが掲げられる。つまり、上記内燃機関は、停車中に自動的に内燃機関を停止させるアイドリングストップ制御動作を行う自動車に搭載されるものであり、アイドリングストップ制御動作によって内燃機関が停止している際、内燃機関の始動要求を受けることにより、動力発生手段及び移動機構を駆動して動力発生手段からの駆動力を噛み合いギアを介して動力入力ギアに伝達させる構成である。
また、上述した各解決手段に係る始動装置に備えられるスタータギアユニットも本発明の技術的思想の範疇である。つまり、回転体の中心部に噛み合いギアを収容するギア収容空間を形成し、噛み合いギアの外周面に、動力入力ギアに噛み合い可能な歯車を形成する一方、回転体におけるギア収容空間の内面に、上記噛み合いギアの歯車に噛み合う内歯車を形成したスタータギアユニットである。
本発明では、噛み合いギアと共に回転する回転体を動力入力ギアに当接させてこれらを回転させることによって、噛み合いギアと動力入力ギアとの周速度を近付けた状態で、これら両ギアを噛み合わせて内燃機関始動用の駆動力を伝達するようにしている。このため、内燃機関の停止制御の途中であって動力入力ギアが未だ回転している状況で内燃機関始動条件が成立した場合であっても、内燃機関が完全に停止するのを待つことなく迅速に内燃機関始動動作に移行できる。また、上記ギア同士の噛み合いが円滑に行えるので噛み合いギアのバックラッシュを小さく設計することが可能になり、ギア同士の噛み合い音を抑制でき、内燃機関始動時の静粛性を向上できる。更に、ギア同士の噛み合いによる動力伝達によって内燃機関を始動できるため、摩擦伝動によって駆動力を伝達するものに比べて始動性を良好に得ることが可能であり、運転者の始動要求に対する応答性の良い始動装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、交差点での信号待ち等のように自動車が一時的に停車した際に燃料供給を停止してエンジン(例えばガソリンエンジン)を停止させる所謂アイドリングストップ制御を行う自動車に搭載された始動装置として本発明を適用した場合について説明する。また、本形態では、マニュアルトランスミッション搭載車に適用した場合について説明する。
−始動装置の構成説明−
図1は、本形態に係る始動装置1を備えた自動車のエンジン制御系の一部を示すブロック図である。また、図2は、本形態に係る始動装置1のスタータ機構(本発明でいう始動機構)2の概略構成を示す一部を破断した側面図である。この始動装置1は、アイドリングストップ制御を行うアイドルストップコントローラ3に備えられた始動制御手段31と、この始動制御手段31により制御される上記スタータ機構2とにより構成されている。また、上記アイドルストップコントローラ3は、エンジンを統轄制御するエンジンコントローラ4との間で各種検知信号及び制御信号の送受信を行うようになっている。
本形態におけるアイドリングストップ制御の概略動作について説明すると、所定のアイドルストップ条件(エンジン停止条件)の成立時にアイドルストップコントローラ3がエンジンコントローラ4に向けてアイドルストップ要求信号となるf/c(フューエルカット)信号を発してエンジン停止を指示する。これにより、エンジンコントローラ4は燃焼室への燃料供給を停止する制御を行いエンジン停止動作を開始させる。このようにして本制御では、一時的な停車中におけるエンジンのアイドリング運転を停止することで自動車の低燃費化を図るようにしている。
一方、この停車中にエンジン始動条件が成立した際には、アイドルストップコントローラ3がエンジンコントローラ4に向けて始動要求信号であるf/c解除信号を発すると共に、このアイドルストップコントローラ3の始動制御手段31からの始動制御信号がスタータ機構2に送信される。これにより、エンジンコントローラ4は燃焼室への燃料供給を開始する制御を行うと共に、スタータ機構2が所定の始動動作を行ってエンジンをクランキングさせ、これによってエンジンが始動することになる。尚、上述したアイドルストップ条件、エンジン始動条件、スタータ機構2の始動動作の詳細については後述する。
以下、本形態に係る始動装置1を構成するスタータ機構2及びアイドルストップコントローラ3について説明する。
(スタータ機構2の説明)
先ず、上記スタータ機構2について説明する。このスタータ機構2は、図2に示すように、スタータモータ(本発明でいう動力発生手段)5、エンジンのクランク軸に連結されているリングギア(本発明でいう動力入力ギア)Rに駆動力を伝達するためのスタータギアユニット6、このスタータギアユニット6を移動させるためのマグネットスイッチ(本発明でいう移動機構)7を備えており、これらが図示しないケーシング内に収容されて構成されている。
・スタータモータ5
上記スタータモータ5は、水平方向に延びる駆動軸51を備えており、上記始動制御手段31からの始動制御信号の受信に伴って所定タイミングで駆動軸51を回転駆動(例えば300rpm)させる。つまり、駆動軸51の回転駆動力を上記スタータギアユニット6を介してリングギアRに伝達することによりクランキングを行うようになっている(スタータギアユニット6からリングギアRへの動力伝達動作については後述する)。
また、このスタータモータ5の駆動軸51の先端部近傍には円環状のフランジ52が形成されており、駆動軸51の外周面における、この駆動軸51の基端部(スタータモータ5側の端部)からフランジ52までの間にはヘリカルスプライン53が形成されている。このヘリカルスプライン53は、後述するように、駆動軸51とスタータギアユニット6との相対回転によってこのスタータギアユニット6の進退移動(駆動軸51に沿った移動)を行わせるためのものである。
・スタータギアユニット6
上記スタータギアユニット6は、ピニオンギア(本発明でいう噛み合いギア)61と、シンクロナイザリング(本発明でいう回転体)62と、コイルスプリング63とを備えている。以下、それぞれについて説明する。
上記ピニオンギア61は、軸心方向に延びる貫通孔61aが形成されており、この貫通孔61aの内面には、上記スタータモータ5の駆動軸51に形成されているヘリカルスプライン53に噛み合うスプライン溝61bが形成されている。このため、スタータモータ5の駆動軸51とピニオンギア61とが相対的に回転した場合に、ピニオンギア61がスタータモータ5の駆動軸51に沿ってその軸心方向に移動するようになっている。
また、このピニオンギア61は、その先端側(図中左側)から順に、ギア部61c、抜け止め部61d、進退動力伝達部61eが備えられている。
上記ギア部61cは、上記リングギアRの外周面に形成されたギア(歯)に噛み合うための歯車として形成されている。つまり、図2に示す後退位置から前進移動してリングギアRに噛み合うことによりスタータモータ5の回転駆動力をリングギアRに伝達可能となっている(図4参照)。
抜け止め部61dは、ギア部61cの後端位置から外周側に張り出したフランジにより構成されている。上記シンクロナイザリング62の内周面にはストッパリング62aが装着されており、このストッパリング62aにピニオンギア61の抜け止め部61dが当接することによって、このピニオンギア61がシンクロナイザリング62から抜け落ちないようになっている。
上記進退動力伝達部61eは、上記マグネットスイッチ7の作動レバー71からの作動力を受ける部分であって、作動レバー71の先端部に対して前進側に位置するフロントプレート61fと後退側に位置するリアプレート61gとを備えている。つまり、マグネットスイッチ7の作動レバー71から前進側(図中左側)への作動力をフロントプレート61fが受けてピニオンギア61が前進方向へ付勢される一方、作動レバー71から後退側(図中右側)への作動力をリアプレート61gが受けてピニオンギア61が後退方向へ付勢される構成となっている。
上記シンクロナイザリング62は、上記ピニオンギア61の外周囲を囲むように配設された筒型の部材であって、その内面形状としては、先端側から順に小径部62b及び大径部62cが形成されている。小径部62bの内径寸法は上記ピニオンギア61のギア部61cの外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。また、この小径部62bの内周面の一部には内歯車62dが形成されており、この内歯車62dが上記ピニオンギア61のギア部61cに噛み合っている。一方、大径部62cは、その内径寸法が上記ピニオンギア61の抜け止め部61dの外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。また、この大径部62cの内周面にはリング溝62eが形成されており、このリング溝62eに上記ストッパリング62aが嵌め込まれている。また、このシンクロナイザリング62とピニオンギア61との間にはコイルスプリング63が圧縮された状態で装着されている。具体的には、このコイルスプリング63は、ピニオンギア61のギア部61cとシンクロナイザリング62の大径部62cとの間に形成されている空間Sに配置されており、一端がピニオンギア61の抜け止め部61dに、他端がシンクロナイザリング62の小径部62bと大径部62cとの間の段部62gにそれぞれ当接している。以上の如くスタータギアユニット6が構成されているため、シンクロナイザリング62の内部空間にピニオンギア61が配置され、この両者は相対的な回転が不能な状態(回転一体となる状態)で且つ軸心方向への相対的な移動が自在に(ピニオンギア61がシンクロナイザリング62から抜け落ちることのない範囲での相対移動が自在に)組み付けられている。また、上記コイルスプリ
ング63の付勢力によってピニオンギア61の抜け止め部61dがストッパリング62aに当接している状態では、ギア部61cの先端はシンクロナイザリング62の内部空間(ギア収容空間)に没入した状態となっている。
そして、本形態の特徴の一つとして、上記シンクロナイザリング62の外周面における先端部分には先端側に向かって次第に外径寸法が小さくなる(先細りとなる)テーパ面(本発明でいう当接面)62fが形成されている。一方、上記リングギアRには、スタータギアユニット6が配設されている側に向く面に断面略台形状の凸部R1が全周囲に亘って形成されており、この凸部R1の外周側の面がテーパ面(本発明でいう動力伝達面)R2として形成されている。そして、上記シンクロナイザリング62に形成されているテーパ面62fと、リングギアRに形成されているテーパ面R2が略同一の傾斜角度を有しており、シンクロナイザリング62がリングギアRに向かって前進移動した際にこれらテーパ面62f,R2同士が当接して回転駆動力の伝達が可能な構成となっている。また、各テーパ面62f,R2には、それぞれスチールファイバー等で成る高摩擦材料が付着されており、これらテーパ面62f,R2同士が当接した際に高い摩擦力が得られるようになっている。
・マグネットスイッチ7
上記マグネットスイッチ7は、上記ピニオンギア61に対して作動力を与えると共に、このピニオンギア61を介して上記シンクロナイザリング62に対しても作動力を与えるものである。このマグネットスイッチ7は、出没自在なプランジャ72を備えている。そして、このプランジャ72と上記ピニオンギア61との間には上記作動レバー71が架け渡されており、この作動レバー71の先端部が、ピニオンギア61の上記進退動力伝達部61eに係止されている。具体的には、この作動レバー71は、その延長方向の略中央部が水平軸回りに回動自在に支持されており、一端(図中上端)がマグネットスイッチ7のプランジャ72に係止している一方、他端(図中下端)がピニオンギア61の進退動力伝達部61eにおけるフロントプレート61fとリアプレート61gとの間に係止している。また、このマグネットスイッチ7の内部にはスプリング及び電磁ソレノイドが収容されており、電磁ソレノイドの非励磁状態ではスプリングの付勢力によってプランジャ72が突出した状態となり、電磁ソレノイドの励磁状態ではスプリングの付勢力に抗してプランジャ72が没入した状態となるようになっている。
そして、図2に示すようにマグネットスイッチ7のプランジャ72が突出した状態では、スタータギアユニット6がスタータモータ5側に後退した位置にある。これに対し、図3及び図4に示すようにマグネットスイッチ7のプランジャ72が没入した状態では、作動レバー71から作用する作動力をピニオンギア61が受けて、スタータギアユニット6がスタータモータ5から離間する方向に前進し、この状態で、シンクロナイザリング62がリングギアRに当接し(図3参照)、また、ピニオンギア61がリングギアRに噛み合うようになっている(図4参照)。
(アイドルストップコントローラ3の説明)
次に、アイドルストップコントローラ3について説明する。このアイドルストップコントローラ3は、上述した如くアイドルストップ条件の成立時にエンジンコントローラ4に向けてf/c信号を発信する。一方、エンジン始動条件が成立した際、アイドルストップコントローラ3は、エンジンコントローラ4に向けてf/c解除信号を発信する。また、このとき、始動制御手段31は始動制御信号をスタータ機構2に送信するようになっている。
図1に示すように、このアイドルストップコントローラ3には、車速センサ81からの車速検知信号、ニュートラルスイッチ82からのニュートラル検知信号、クラッチ位置検
知スイッチ83からのクラッチペダル踏み込み信号やクラッチペダル踏み込み解除信号が入力されるようになっている。更に、上記エンジンコントローラ4は、エンジン回転数センサ84からのエンジン回転数信号を受信するようになっており、アイドルストップコントローラ3は、エンジンコントローラ4からこのエンジン回転数信号を受けるようになっている。
本形態に係る自動車のアイドルストップ条件は、車速センサ81からの車速検知信号によって車速が「0」であることが検知され、ニュートラルスイッチ82からのニュートラル検知信号によってシフトレバーがニュートラル位置であることが検知され、更に、クラッチ位置検知スイッチ83からのクラッチペダル踏み込み解除信号によってクラッチペダルの踏み込みが解除されたことが検知された場合に成立する。このアイドルストップ条件が成立することで、アイドルストップコントローラ3は、エンジンコントローラ4に向けてf/c信号を発信することになる。また、このf/c信号の発信に伴ってエンジンコントローラ4は燃焼室への燃料供給を停止する制御を行いエンジン停止動作を開始する。
一方、エンジン始動条件は、上記アイドルストップ条件が成立した後に、クラッチ位置検知スイッチ83からのクラッチペダル踏み込み信号によってクラッチペダルが踏み込まれたことが検知された場合に成立する。このエンジン始動条件が成立することで、アイドルストップコントローラ3がエンジンコントローラ4に向けてf/c解除信号を発信すると共に、始動制御手段31が始動制御信号をスタータ機構2に送信するようになっている。上記f/c解除信号を受けたエンジンコントローラ4は燃焼室への燃料供給を開始する制御を行う。また、上記始動制御信号によってマグネットスイッチ7が作動する。これにより、スタータギアユニット6がスタータモータ5から離間する方向に前進するようになっている。また、上記始動制御信号によってスタータモータ5が所定タイミングで始動するようになっている(詳細については後述する)。
−始動装置1の動作説明−
次に、上述の如く構成された始動装置1の動作について説明する。特に、本形態の特徴とする動作は、上記エンジン停止条件の成立に伴い燃料供給を停止するエンジン停止制御の途中、つまり、未だエンジンが完全には停止していない状況(惰性で回転している状況)において交通信号が切り換わるなどして、運転者がエンジン始動のための運転操作(本形態の場合にはクラッチペダルの踏み込み操作)を行った場合の始動動作である。従って、ここでは、この場合の始動動作について説明する。
自動車の通常の走行時には、図2に示すように、マグネットスイッチ7のプランジャ72は突出した状態にあり、スタータギアユニット6がリングギアRから退避している。
そして、信号待ちなどによって上述したアイドルストップ条件が成立すると、アイドルストップコントローラ3は、エンジンコントローラ4に向けてf/c信号を発信し、これによってエンジンコントローラ4が燃焼室への燃料供給を停止する。これにより、エンジン回転数は徐々に低下していく。
そして、このようにしてエンジン回転数が徐々に低下していく状態において、未だエンジンが完全には停止していない状況(リングギアRが惰性で回転している状況)で、上記エンジン始動条件が成立すると、アイドルストップコントローラ3がエンジンコントローラ4に向けてf/c解除信号を発信する。これにより、エンジンコントローラ4は燃焼室への燃料供給を開始する制御を行う。また、これと同時に、アイドルストップコントローラ3の始動制御手段31は、始動制御信号をスタータ機構2に送信する。これにより、マグネットスイッチ7が作動し、電磁ソレノイドを励磁する。この励磁動作によりマグネットスイッチ7のプランジャ72が没入して作動レバー71が図中の時計回り方向に回動し
、この作動レバー71からの作動力をピニオンギア61が受ける。シンクロナイザリング62はピニオンギア61との間にコイルスプリング63が介在されているため、ピニオンギア61が受けた上記作動力はシンクロナイザリング62にも伝達され、これらピニオンギア61及びシンクロナイザリング62で構成されるスタータギアユニット6はスタータモータ5から離間する方向(図中左方向)に前進していく。上述した如く、ピニオンギア61とシンクロナイザリング62とは相対的な回転が不能な状態に組み付けられていると共に、ピニオンギア61の内面にはスタータモータ5の駆動軸51に形成されているヘリカルスプライン53に噛み合うスプライン溝61bが形成されている。このため、このスタータギアユニット6の前進動作は、ピニオンギア61とシンクロナイザリング62とが一体となってその軸心回りに回転(ヘリカルスプライン53に沿って回転)しながらリングギアRに向かって移動することになる。
このようにしてスタータギアユニット6が前進していくと、先ず、図3に示すように、シンクロナイザリング62の先端部分に形成されているテーパ面62fが、リングギアRに形成されたテーパ面R2に当接することになる。スタータモータ5は、この両テーパ面62f,R2が当接する直前に起動し、駆動軸51が回転する。つまり、スタータギアユニット6がスタータモータ5の回転駆動力を受けながら前進してシンクロナイザリング62のテーパ面62fがリングギアRのテーパ面R2に当接することになる。これにより、シンクロナイザリング62とリングギアRとの間では動力伝達が可能な状態になる。
この際、上述した如くリングギアRは惰性で回転している状況であるため、このリングギアRのテーパ面R2の周速度がシンクロナイザリング62のテーパ面62fの周速度よりも高い場合には、シンクロナイザリング62はリングギアRからの回転力を受けることになる。逆に、リングギアRのテーパ面R2の周速度がシンクロナイザリング62のテーパ面62fの周速度よりも低い場合には、リングギアRがシンクロナイザリング62からの回転力を受けることになる。これにより、この両者R,62の周速度の差は小さくなっていく。そして、上記ピニオンギア61はシンクロナイザリング62に回転一体に組み付けられているため、この回転しているピニオンギア61の周速度とリングギアRの周速度との差も小さくなっていく。尚、このリングギアRとシンクロナイザリング62との当接状態では、シンクロナイザリング62側のイナーシャ(慣性)よりもクランク軸に繋がっているリングギアR側のイナーシャの方が大きいため、この周速度はリングギアRの周速度が支配的となる。
この状態から更に作動レバー71からの作動力がピニオンギア61に作用すると、シンクロナイザリング62はリングギアRに当接しているためにそれ以上の前進移動はできず、図4に示すように、ピニオンギア61のみが上記コイルスプリング63の付勢力に抗して(コイルスプリング63を圧縮方向に弾性変形させながら)シンクロナイザリング62の先端から突出するように移動していく。つまり、ピニオンギア61のみがリングギアRの外周部のギアに向かって前進していく。この際、シンクロナイザリング62は、圧縮変形するコイルスプリング63からの反力を受け、そのテーパ面62fがリングギアRのテーパ面R2に押圧され、このテーパ面62f,R2同士は高い接触力で当接することになって殆ど滑りが無くなった状態で動力伝達が行われている。
上記ピニオンギア61の前進によってそのギア部61cはリングギアRの外周部のギアに噛み合うことになるが、上述した如く、ピニオンギア61はリングギアRとの周速度の差が小さくなっている(例えば略同期回転している)ため、この噛み合いは円滑に行われる。その結果、スタータモータ5からの回転駆動力がピニオンギア61を介してリングギアRに伝達され、クランキング動作が開始されてエンジンの始動動作が行われる。
そして、エンジンの始動動作が完了すると、マグネットスイッチ7の電磁ソレノイドの
励磁が解除されてプランジャ72が突出し、作動レバー71が元の位置に戻るように回動(図中反時計回り方向に回動)する。これにより、作動レバー71の作動力がピニオンギア61のリアプレート61gに作用して、ピニオンギア61及びシンクロナイザリング62は元の位置に復帰する(図2参照)。この復帰動作にあっては、エンジンの駆動力によってリングギアRがアイドル回転数で回転しており、このリングギアRの回転力がピニオンギア61に作用することになる。これにより、ピニオンギア61はスタータモータ5の駆動軸51の回転数よりも高い回転数で回転することになり、この相対的な回転数差によってピニオンギア61は駆動軸51のヘリカルスプライン53に案内されながら後退する。つまり、ピニオンギア61は、上記作動レバー71の作動力及び上記駆動軸51との回転数差により生じる後退方向への移動力によって迅速に後退してリングギアRから離脱することになる。また、このピニオンギア61の後退移動に伴って上記抜け止め部61dがストッパリング62aに当接し、これによってシンクロナイザリング62も後退方向への付勢力を受けることになり、このシンクロナイザリング62のテーパ面62fがリングギアRのテーパ面R2から離脱する。
以上のように、本実施形態によれば、エンジン停止制御の途中でエンジン始動条件が成立した場合であっても、エンジンが完全に停止するのを待つことなく迅速にエンジン始動動作に移行することができる。また、ピニオンギア61とリングギアRとを略同期回転させた状態で両者の噛み合い動作が行われるため、この噛み合い動作を円滑に行うことができる。このため、ギア同士の噛み合い音の発生を抑制しながらもエンジンの始動性を良好に得ることができる。
尚、上述した説明では、エンジン停止制御の途中でエンジン始動条件が成立した場合の動作について説明したが、エンジンが完全に停止した後にエンジン始動条件が成立する場合にも同様の動作が行われる。つまり、この場合には、スタータモータ5の回転駆動力を受けて回転するシンクロナイザリング62のテーパ面62fが、停止しているリングギアRのテーパ面R2に当接し、これによってスタータモータ5の回転駆動力をリングギアRに伝達して、このリングギアRの周速度とピニオンギア61の周速度とを近付けた状態で、これら両ギアR,61を噛み合わせてクランキングを行うことになる。
また、本実施形態では、リングギアRの回転中心から外周縁(ピニオンギア61が噛み合うためのギアの形成位置)までの長さと、この回転中心からテーパ面R2までの長さとが僅かに異なっている。つまり、ギアの形成位置はテーパ面R2よりも外周側に位置しているため、このギアの形成位置の周速度はテーパ面R2の周速度よりも高くなる。これに対し、スタータギアユニット6における回転中心からシンクロナイザリング62のテーパ面62fまでの長さと、この回転中心からピニオンギア61のギア部61cの外周縁までの長さとが僅かに異なっている。つまり、ピニオンギア61のギア部61cはシンクロナイザリング62のテーパ面62fよりも内周側に位置しているため、このピニオンギア61のギア部61cの周速度はテーパ面62fの周速度よりも低くなる。仮に、リングギアRのテーパ面R2とシンクロナイザリング62のテーパ面62fとの当接によってこれらの周速度が完全一致した(滑りのない状態となった)場合であっても、リングギアRのギアの形成位置の周速度とピニオンギア61のギア部61cの周速度とには僅かな差が生じていることになるため、この両者のギア同士の位置が完全に一致している状況でも回転が進むに連れて両者のギア同士の位置にズレが生じて良好な噛み合い動作が行えることになる。つまり、両者のギア同士の位置が完全に一致した状況が継続されてしまって噛み合い動作が行えないといった状況を確実に回避することができる。
−その他の実施形態−
以上説明した実施形態ではマニュアルトランスミッションを搭載し且つアイドリングストップ制御を行う自動車の始動装置1に本発明を適用した場合について説明した。本発明
はこれに限らず、オートマチックトランスミッションを搭載した自動車の始動装置にも適用可能である。また、アイドリングストップ制御時における始動動作の場合に限らず、リングギアRが回転している状態でエンジンの始動動作を開始させる必要があるその他の状況(例えばイグニッション操作による始動要求時等)においても上記と同様の効果を奏することができる。
また、アイドリングストップ制御におけるエンジン停止条件及びエンジン始動条件としては上述した条件に限られるものではなく、他の検知信号や制御信号の入力をこれら条件とした自動車に対しても本発明は適用可能である。例えば、クラッチペダルの踏み込み操作に拘わりなく、マニュアルトランスミッションのシフトレバーがニュートラル位置となった時点でエンジン停止条件が成立したと判断し、シフトレバーがニュートラル以外の位置となった際にエンジン始動条件が成立したと判断してもよい。
また、上記ピニオンギア61及びシンクロナイザリング62を進退移動させるための構成としては上述した機構に限られるものではなく、これらを進退移動させるための機構をそれぞれ個別に設けるようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、シンクロナイザリング62のテーパ面62fがリングギアRのテーパ面R2に当接する直前にスタータモータ5を起動させるようにしたが、このスタータモータ5の起動タイミングはこれに限るものではない。例えば、マグネットスイッチ7の作動開始と同時にスタータモータ5を起動させてもよいし、シンクロナイザリング62のテーパ面62fがリングギアRのテーパ面R2に当接した後であってピニオンギア61がリングギアRに噛み合う前にスタータモータ5を起動させるようにしてもよい。
更に、リングギアRとシンクロナイザリング62との当接面はテーパ面R2,62fとしたが、これに限るものではなく、これらの回転軸に対して直交する面同士を当接させて動力伝達可能な構成としてもよい。
加えて、上述した実施形態では、スタータギアユニット6の構成として、シンクロナイザリング62の内部にピニオンギア61を位置させ、これらを同一軸心上で回転一体とするものとした。本発明はこれに限らず、ピニオンギア61とシンクロナイザリング62とを互いに異なる軸心上で回転自在に支持し、この両者間での回転駆動力の伝達を可能な構成(例えばギアやチェーンにより動力を伝動する構成)としてもよい。この場合、スタータモータ5からの回転駆動力の付与は、ピニオンギア61に対して行ってもよいし、シンクロナイザリング62に対して行ってもよい。また、ピニオンギア61及びシンクロナイザリング62の両方にスタータモータ5からの回転駆動力を直接付与するようにしてもよい。
実施形態に係る始動装置を備えた自動車のエンジン制御系の一部を示すブロック図である。 実施形態に係るスタータ機構の概略構成を示す一部を破断した側面図であって、エンジンの定常運転状態における作動状況を示す図である。 実施形態に係るスタータ機構の概略構成を示す一部を破断した側面図であって、シンクロナイザリングがリングギアに当接した状態を示す図である。 実施形態に係るスタータ機構の概略構成を示す一部を破断した側面図であって、ピニオンギアがリングギアに噛み合った状態を示す図である。
符号の説明
1 始動装置
2 スタータ機構(始動機構)
5 スタータモータ(動力発生手段)
6 スタータギアユニット
61 ピニオンギア(噛み合いギア)
62 シンクロナイザリング(回転体)
62f テーパ面(当接面)
7 マグネットスイッチ(移動機構)
R リングギア(動力入力ギア)
R2 テーパ面(動力伝達面)

Claims (6)

  1. 内燃機関始動用の駆動力を発生する始動機構を備え、内燃機関の始動時に、この始動機構で発生した駆動力を内燃機関の動力入力ギアに伝達して内燃機関を始動させる始動装置において、
    上記始動機構は、
    上記動力入力ギアに形成された動力伝達面に対して当接可能な当接面を有する回転体と、
    上記回転体と共に回転し、動力入力ギアに対して退避する「退避位置」から動力入力ギアに噛み合う「噛合位置」への移動が可能な噛み合いギアと、
    内燃機関始動用の駆動力を上記回転体及び噛み合いギアのうち少なくとも一方に与える動力発生手段と、
    上記動力発生手段を駆動させ且つ回転体の当接面を動力入力ギアの動力伝達面に当接させて回転体及び動力入力ギアが共に回転した状態で、噛み合いギアを上記「退避位置」から「噛合位置」に移動させる移動機構と、
    を備えていることを特徴とする内燃機関の始動装置。
  2. 上記請求項1記載の内燃機関の始動装置において、
    回転体は、その当接面が動力入力ギアの動力伝達面に対して後退した位置から当接する位置まで移動可能であり、
    上記回転体の当接面を動力入力ギアの動力伝達面に当接させた後に、噛み合いギアを「噛合位置」に移動させて動力入力ギアに噛み合わせる構成となっていることを特徴とする内燃機関の始動装置。
  3. 上記請求項1または2記載の内燃機関の始動装置において、
    噛み合いギアは、回転体の内部に形成されたギア収容空間に収容されており、これら噛み合いギアと回転体とが同一軸心上で相対的に進退移動自在であって且つ回転一体に係合されていて、
    これら噛み合いギアと回転体とが一体的に動力入力ギアに向かって移動して、回転体の当接面が動力入力ギアの動力伝達面に当接した後に、噛み合いギアのみが「噛合位置」に移動して動力入力ギアに噛み合う構成となっていることを特徴とする内燃機関の始動装置。
  4. 上記請求項3記載の内燃機関の始動装置において、
    噛み合いギアの外周面と回転体のギア収容空間の内面とはスプライン係合されていることを特徴とする内燃機関の始動装置。
  5. 上記請求項1〜4のうち何れか一つに記載の内燃機関の始動装置において、
    内燃機関は、停車中に自動的に内燃機関を停止させるアイドリングストップ制御動作を行う自動車に搭載されるものであり、アイドリングストップ制御動作によって内燃機関が停止している際、内燃機関の始動要求を受けることにより、動力発生手段及び移動機構を駆動して動力発生手段からの駆動力を噛み合いギアを介して動力入力ギアに伝達させる構成となっていることを特徴とする内燃機関の始動装置。
  6. 上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の内燃機関の始動装置に備えられる回転体と噛み合いギアとが一体的に組み付けられて成るスタータギアユニットであって、
    上記回転体の中心部には噛み合いギアを収容するギア収容空間が形成されており、
    上記噛み合いギアの外周面には動力入力ギアに噛み合い可能な歯車が形成されている一方、上記回転体におけるギア収容空間の内面には上記噛み合いギアの歯車に噛み合う内歯車が形成されていることを特徴とするスタータギアユニット。
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