JP2006131837A - インクジェット絵画作製方法及び絵画 - Google Patents

インクジェット絵画作製方法及び絵画 Download PDF

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Abstract

【課題】 発色性や色調に優れ、また画像形成後の耐水性や耐光性に優れると共に、絵画の質感を有する画像を形成することができるインクジェット絵画作製方法、及び該方法により作製され、保存安定性に優れる絵画を提供すること。
【解決手段】 少なくとも1種の油溶性化合物と、重合性基を有するモノマーと、を含有するインク組成物を用いて、記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット絵画作製方法、及び該方法を用いて作製されることを特徴とする絵画。
【選択図】 なし

Description

本発明は、絵画の質感を有する画像を容易に形成することができるインクジェット絵画作製方法、及び該方法により作製された絵画に関する。
画像処理プログラムの品質及び機能向上により、スキャナーで取り込んだ写真画像を、カラープリンターを用いてそのまま出力するだけではなく、簡単な画像処理で写真を絵画風の質感に変えて出力することが可能になってきている。
また、個人向けに肖像画の画像出力を行なったり、美術館に展示してある絵画の複製品作製として画像出力を行うサービスが始まっている。
上記の様な画像出力を行うプリンターの種類には、昇華型熱転写方式、ワックス溶融型熱転写方式、インクジェットプリント方式、レーザープリント方式などがある(例えば、特許文献1〜14参照)。中でもインクジェットプリンターは他の記録方式と比較してインクが多様であり、インク形態と色材、乾燥・定着方式の選択により、多種の記録材への記録が可能である。ハードも家庭で使用される小型・低価格品だけではなく、AO幅、BO幅までプリントできる大型プリンターなど、幅広い機種が普及している。大型インクジェットプリンターの出力媒体(記録材)には、紙の他に樹脂フィルムや布(キャンバス)等も使用されており、絵画の作製には最適である。
しかし、インクジェットプリント方式を含めた何れのプリント方式においても、絵画の質感を高い水準で満足する画像を得ることはできなかった。
特開平5−185609号公報 特開平6−051589号公報 特開平6−236144号公報 特開平7−257099号公報 特開平9−175053号公報 特開平10−006700号公報 特開平10−044580号公報 特開平11−105500号公報 特開平11−277866号公報 特開2000−238344号公報 特開2000−318140号公報 特開2001−140173号公報 特開2001−301267号公報 特開2004−018630号公報
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、発色性や色調に優れ、また画像形成後の耐水性や耐光性に優れると共に、絵画の質感を有する画像を形成することができるインクジェット絵画作製方法を提供することにある。更に、該インクジェット絵画作製方法により作製され、保存安定性に優れる絵画を提供することにある。
上記課題は、以下の発明によって達成される。即ち本発明のインクジェット絵画作製方法は、
<1> 少なくとも1種の油溶性化合物と、重合性基を有するモノマーと、を含有するインク組成物を用いて、記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット絵画作製方法である。
<2> 前記油溶性化合物が、油溶性染料であることを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット絵画作製方法である。
<3> 前記油溶性染料が、少なくとも1つの複素環を有するアゾ染料、或いは少なくとも分子中に−SO−又は−SO2−の連結基を有するフタロシアニン染料であることを特徴とする前記<2>に記載のインクジェット絵画作製方法である。
<4> 前記油溶性染料の酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であることを特徴とする前記<2>又は<3>に記載のインクジェット絵画作製方法である。
<5> 前記記録材が、目止めを行いその上に白色の下地塗料を設けた布製キャンバスであることを特徴とする前記<1>〜<4>の何れか一項に記載のインクジェット絵画作製方法である。
<6> 前記記録材上に吐出された前記インク組成物を、紫外線照射することによって硬化することを特徴とする前記<1>〜<5>の何れか一項に記載のインクジェット絵画作製方法である。
<7> 前記画像が絵画の質感を有する画像であることを特徴とする前記<1>〜<6>の何れか1項に記載のインクジェット絵画作製方法である。
また、本発明の絵画は、
<8> 前記<1>〜<7>の何れか一項に記載のインクジェット絵画作製方法によって作製されたことを特徴とする絵画である。
破棄
本発明によれば、発色性や色調に優れ、また画像形成後の耐水性や耐光性に優れると共に、絵画の質感を有する画像を形成することができるインクジェット絵画作製方法を提供することができ、更には、該インクジェット絵画作製方法により作製され、保存安定性に優れる絵画を提供することができる。
本発明のインクジェット絵画作製方法は、少なくとも1種の油溶性化合物と、重合性基を有するモノマーと、を含有するインク組成物を用いて、記録材に画像を形成することを特徴とする。また、本発明の絵画は、上記インクジェット絵画作製方法により作製されたことを特徴とする。
以下、本発明のインクジェット絵画作製方法及び絵画について説明するにあたり、先ず本発明に用いるインク組成物と記録材とについて説明した後、本発明のインクジェット絵画作製方法について説明する。
<インク組成物>
最初に、本発明のインクジェット絵画作製方法に用いられるインク組成物について説明する。本発明におけるインク組成物には、油溶性化合物、重合性基を有するモノマー、その他任意の各成分(紫外線吸収剤、酸化防止剤など)が、微粒子分散物中に含有される。
(油溶性化合物)
本発明における前記微粒子分散物は、油溶性化合物を必須成分として含む。ここで、油溶性化合物は、水不溶性の化合物を総て包含し特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて公知化合物の中から適宜選択することができる。このような油溶性化合物としては、例えば、油溶性染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光褪色防止剤、液晶化合物、蛍光性化合物、電子供与性無色染料、有機EL材料、及びそれらの重合体等が挙げられる。
つまり、本発明に用いる油溶性化合物は、実質的に水に不溶な化合物を意味する。より具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる色素の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを意味する。このような化合物の中でも、本発明における油溶性化合物としては、所謂、水に不溶性の顔料や油溶性染料が挙げられ、特に油溶性染料(油溶性色素)であることが好ましい。油溶性染料を用いたインク組成物は、取り扱いが容易で、無臭性、安全性を備えており、ノズル先端での目詰まりが発生し難く、また発色性や色調に優れた画像を得るという観点から好ましい。
本発明における油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、微粒子分散物及びインク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。また、油溶性染料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて、他の水性染料、分散染料、等の着色剤が含有されていてもよい。
本発明における油溶性化合物としては、酸化電位が貴であるものほど好ましく、1.0V(vs SCE)よりも貴である油溶性化合物が好ましい。また、1.1V(vs SCE)よりも貴であるものが好ましく、1.15V(vs SCE)より貴であるものがより好ましく、特に1.2V(vs SCE)より貴であるものが最も好ましい。
酸化電位の値は、試料から電極への電子の移りやすさを表し、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表わす。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。
酸化電位の値は、下記に詳述するが、化合物がボルタンメトリーにおいて陽極で、化合物の電子が引き抜かれる電位を意味し、その化合物の基底状態におけるHOMOのエネルギーレベルと近似的に一致すると考えられている。
発明者らは、着色画像のオゾン堅牢性について研究したところ、着色画像に用いる化合物の酸化電位とオゾン堅牢性との間に相関があり、酸化電位の値が飽和カロメル電極(SCE)に対してより貴である化合物を用いることにより、オゾン堅牢性が改良されることがわかった。
着色画像のオゾン堅牢性が改良される理由としては、化合物とオゾンガスのHOMO(最高被占軌道)及びLUMO(最低空軌道)の関係によって説明することができる。即ち、着色剤のHOMOとオゾンガスのLUMOとの反応により着色剤が酸化されて、その結果、着色画像のオゾン堅牢性が低下していると考えられるため、オゾン堅牢性を向上させるには着色剤のHOMOを下げてオゾンガスとの反応性を低下させればよい。
酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP. Delahay著"New Instrumental Methods in Electrochemistry"(1954年 Interscience Publishers)やA. J. Bard他著"Electrochemical Methods"(1980年 John Wiley & Sons)、藤嶋昭他著"電気化学測定法"(1984年 技報堂出版社)に記載されている。
本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、染料骨格に電子求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ましい。従って、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いて説明すると、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、スルホニル基、スルファモイル基のようにσp値が大きい置換基を導入することにより酸化電位をより貴とすることができると言える。
ここで、本明細書におけるハメットの置換基定数σp値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。
上記置換基の他、一般に電子陰性度の高い原子を発色団の構成原子として多く含むほど酸化電位を貴とすることができる。従って、例えば発色団の構成要素として、アリール基よりも不飽和ヘテロ環を用いたほうが酸化電位を貴とすることができる。電子陰性度の高いヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、特に窒素原子が好ましい。
従って、本発明で用いる油溶性化合物は発色団がヘテロ原子で構成されているもの、不飽和ヘテロ環を含むもの、電子吸引性基を含むものが好ましい。ヘテロ原子で構成されている好ましい発色団としては、アゾ染料、アゾメチン染料、フタロシアニン染料等を挙げることができるが、特にアゾ染料が好ましい。不飽和ヘテロ環としては、5又は6員の不飽和ヘテロ環が好ましく、チオフェン環、フラン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環などを例として挙げられる。不飽和ヘテロ環は、炭化水素環又はヘテロ環との縮合環を形成してもよい。含窒素ヘテロ環の場合には、窒素原子は4級化されていてもよい。また、互変異性となり得るヘテロ環については、互変異性体の1つのみを記載している場合でも、他の互変異性体も合わせて含まれる。上記のうち好ましいものはチアゾール環、イソチアゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環である。最も好ましくは、イソチアゾール環、ピラゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、ピリジン環である。
好ましい電子吸引性の置換基としては、ハメットのσp値が0.4以上の置換基が好ましく、更に0.45以上の置換基が好ましく、0.50以上の置換基が最も好ましい。また、発色団上の置換基として複数の電子吸引性基が存在する場合には、置換基のσp値の総和が0.50以上のものが好ましく、0.60以上が更に好ましく、0.70以上が最も好ましい。σp値が0.40以上の電子吸引性基の具体例については、前述の、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)のものを挙げることができる。
本発明に用いる油溶性化合物のうちイエロー染料としては、下記一般式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。
Het(A)−N=N−Het(B) ……… 一般式(I)
一般式(I)において、Het(A)及びHet(B)は、各々独立に、置換基を有する5又は6員不飽和ヘテロ環を表す。Het(A)及びHet(B)で表わされる不飽和ヘテロ環の例としては、チオフェン環、フラン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環などが挙げられる。これらの不飽和ヘテロ環は更に置換基を有していてもよい。不飽和ヘテロ環上の置換基同士が結合することで、炭化水素環又は不飽和ヘテロ環との縮合環を形成してもよく、更に縮合環上に置換基を有してもよい。含窒素不飽和ヘテロ環の場合には、窒素原子は4級化されていてもよい。また、互変異性となり得る不飽和ヘテロ環については、互変異性体の1つのみを記載している場合でも、他の互変異性体も合わせて含まれる。
Het(A)及びHet(B)で表わされるヘテロ環として好ましくは、チアゾール環、イソチアゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、ピラジン環である。更に好ましくは、イソチアゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環である。最も好ましくは、ピラゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、ピリジン環である。
Het(A)及びHet(B)は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル若しくはアリールスルフィニル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスホリル基、ホスフィノ基、ホスホノ基、ホスフィニル基、ホスホニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。これらの中でもハロゲン原子、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル若しくはアリールスルフィニル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスホリル基、ホスホノ基、ホスフィニル基、ホスホニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基が好ましく、その中でも、電子吸引性基が好ましく、特にσpが0.40以上の置換基が好ましい。σpが0.40以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルファモイル基、アルキル若しくはアリールスルフィニル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスホノ基、ホスホリル基の他、電子吸引性基で置換されたアルキル基(トリハロメチル基、パーフルオロアルキル基、ジシアノメチル基、イミノメチル基等)、電子吸引性基で置換されたアルケニル基(トリシアノビニル基等)、4級塩置換基(スルホニウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基等)も挙げることができる。上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基などが挙げられる。またヘテロ環上の置換基同士が結合することで、ヘテロ環と縮合環を形成してもよく、更に縮合環上に置換基を有してもよい。
マゼンタ染料としては、下記一般式(M−I)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2006131837
一般式(M−I)中、Aは5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。B1及びB2は、各々−CR1=及び−CR2=を表すか、又は、いずれか一方が窒素原子、他方が−CR1=若しくは−CR2=を表す。R5及びR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。
G、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(複素環アミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキル若しくはアリールチオ基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキル若しくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、又は複素環チオ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。R1とR5、又はR5とR6が結合して5又は6員環を形成してもよい。
以下、一般式(M−I)における各置換基について説明する。
一般式(M−I)において、Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。複素環のヘテロ原子の例には、N、O、及びSを挙げることができる。好ましくは含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。Aの好ましい複素環の例には、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。各複素環基は更に置換基を有していてもよい。中でも下記一般式(a)から(f)で表されるピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましい。
Figure 2006131837
上記一般式(a)から(f)において、R7〜R20はG、R1、R2で説明した置換基と同じ置換基を表す。一般式(a)から(f)のうち、好ましいのは、一般式(a)で表されるピラゾール環、及び一般式(b)で表されるイソチアゾール環であり、最も好ましいのは一般式(a)で表されるピラゾール環である。
一般式(M−I)において、B1及びB2は、各々−CR1=及び−CR2=を表すか、或いはいずれか一方が窒素原子、他方が−CR1=又は−CR2=を表すが、各々−CR1=、−CR2=を表すものがより好ましい。
5及びR6で表される置換基としては、先ほど列挙した置換基の中でも、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基がより好ましい。更に好ましくは、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。但し、R5、R6が同時に水素原子であることはない。
Gで表される置換基としては、先ほど列挙した置換基の中でも、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基(アニリノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル若しくはアリールチオ基、又は複素環チオ基が好ましく、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基(アニリノ基、複素環アミノ基を含む)又はアシルアミノ基であり、中でも水素原子、アニリノ基、アシルアミノ基が最も好ましい。
1及びR2で表される置換基としては、先ほど列挙した置換基の中でも、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基が好ましい。
A、R1、R2、R5、R6、Gで表される各置換基が更に置換基を有する場合の置換基としては、上記G、R1、R2で挙げた置換基を挙げることができる。
尚、本明細書において、脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、及び置換アラルキル基が含まれる。脂肪族基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜16であることが更に好ましい。アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
脂肪族基の例には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、及びアリル基を挙げることができる。
芳香族基には、アリール基及び置換アリール基が含まれる。アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜16が更に好ましい。芳香族基の例には、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基を挙げることができる。
複素環基には、置換基を有する複素環基及び無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環基は5員又は6員環の複素環基が好ましい。置換基の例には、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキル若しくはアリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、イオン性親水性基を挙げることができる。複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基及び2−フリル基を挙げることができる。
アルキル若しくはアリールスルホニル基には、置換基を有するアルキル若しくはアリールスルホニル基、無置換のアルキル若しくはアリールスルホニル基が含まれる。アルキル若しくはアリールスルホニル基の例としては、各々メチルスルホニル基及びフェニルスルホニル基を挙げることができる。
アルキル若しくはアリールスルフィニル基には、置換基を有するアルキル若しくはアリールスルフィニル基、無置換のアルキル若しくはアリールスルフィニル基が含まれる。アルキル若しくはアリールスルフィニル基の例としては、各々メチルスルフィニル基及びフェニルスルフィニル基を挙げることができる。
アシル基には、置換基を有するアシル基及び無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素原子数が1〜20のアシル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アシル基の例には、アセチル基及びベンゾイル基を挙げることができる。
ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子を挙げることができる。
アミノ基には、アルキル基、アリール基又は複素環基で置換されたアミノ基が含まれ、アルキル基、アリール基及び複素環基は、更に置換基を有していてもよい。
アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基及びジエチルアミノ基を挙げることができる。
アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基及び無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基を挙げることができる。アリールアミノ基の例としては、フェニルアミノ基及び2−クロロフェニルアミノ基を挙げることができる。
複素環アミノ基には、置換基を有する複素環アミノ基及び無置換の複素環アミノ基が含まれる。複素環アミノ基としては、炭素数2〜20個の複素環アミノ基が好ましい。置換基の例としては、アルキル基、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基を挙げることができる。
アルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基及び無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜20のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基、及びイオン性親水性基を挙げることができる。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及び3−カルボキシプロポキシ基を挙げることができる。
アリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基及び無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、及びイオン性親水性基を挙げることができる。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基及びo−メトキシフェノキシ基を挙げることができる。
シリルオキシ基としては、炭素原子数が1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシを挙げることができる。
複素環オキシ基には、置換基を有する複素環オキシ基及び無置換の複素環オキシ基が含まれる。複素環オキシ基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシ基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、及びイオン性親水性基を挙げることができる。複素環オキシ基の例には、3−ピリジルオキシ基、及び3−チエニルオキシ基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルオキシ基及び無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、及びイソプロポキシカルボニルオキシ基を挙げることができる。
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルオキシ基及び無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基を挙げることができる。
アシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基及び無置換基のアシルアミノ基が含まれる。アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アシルアミノ基の例には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノ及び3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基を挙げることができる。
ウレイド基には、置換基を有するウレイド基及び無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、炭素原子数が1〜20のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基及びアリール基を挙げることができる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基及び3−フェニルウレイド基を挙げることができる。
スルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基及び無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基を挙げることができる。スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基及び無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基を挙げることができる。
アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基、及び無置換のアルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基が含まれる。アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル、若しくは6〜20のアリールスルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ基、N−フェニル−メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、及び3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ基を挙げることができる。
カルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基及び無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基を挙げることができる。カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジメチルカルバモイル基を挙げることができる。
スルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基及び無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基を挙げることができる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基及びジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基を挙げることができる。
アルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基及び無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基を挙げることができる。
アシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基及び無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜20のアシルオキシ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基及びベンゾイルオキシ基を挙げることができる。
カルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基及び無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基を挙げることができる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基を挙げることができる。
アリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基及び無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基を挙げることができる。
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカボニルアミノ基及び無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基を挙げることができる。
アルキル,アリール若しくは複素環チオ基には、置換基を有するアルキル,アリール若しくは複素環チオ基と無置換のアルキル,アリール若しくは複素環チオ基が含まれる。アルキル,アリール若しくは複素環チオ基としては、炭素原子数が1から20のものが好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。アルキル,アリール若しくは複素環チオ基の例には、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基を挙げることができる。
複素環オキシカルボニル基には、置換基を有する複素環オキシカボニル基及び無置換の複素環オキシカルボニル基が含まれる。複素環オキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。複素環オキシカルボニル基の例には、2−ピリジルオキシカルボニル基を挙げることができる。
複素環スルホニルアミノ基には、置換基を有する複素環スルホニルアミノ基及び無置換の複素環スルホニルアミノ基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜12の複素環スルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。複素環スルホニルアミノ基の例には、2−チオフェンスルホニルアミノ基、及び3−ピリジンスルホニルアミノ基を挙げることができる。
複素環スルホニル基には、置換基を有する複素環スルホニル基及び無置換の複素環スルホニル基が含まれる。複素環スルホニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルホニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。複素環スルホニル基の例には、2−チオフェンスルホニル基、及び3−ピリジンスルホニル基を挙げることができる。
複素環スルフィニル基には、置換基を有する複素環スルフィニル基及び無置換の複素環スルフィニル基が含まれる。複素環スルフィニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルフィニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基を挙げることができる。複素環スルフィニル基の例には、4−ピリジンスルフィニル基を挙げることができる。
本発明において、一般式(M−I)で表される化合物のうち、より好ましいものとして、下記一般式(M−II)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2006131837
一般式(M−II)中、Z1はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。Z1はσp値が0.30以上の電子吸引性基であるのが好ましく、0.45以上の電子吸引性基が更に好ましく、0.60以上の電子吸引性基が特に好ましいが、1.0を超えないことが望ましい。好ましい具体的な置換基については後述する電子吸引性置換基を挙げることができるが、中でも、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基及び炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
1、R2、R5、R6は、一般式(M−I)と同義である。
3及びR4は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。中でも水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基が好ましく、水素原子、芳香族基、複素環基が特に好ましい。
2は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。
Qは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。中でもQは5〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましい。5〜8員環は置換されていてもよいし、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。その中でも特に芳香族基、複素環基が好ましい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子又は炭素原子が挙げられる。そのような環構造の具体例としては、例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環、チアン環等が挙げられる。
一般式(M−II)における置換基として説明した各基は、更に置換基を有していてもよい。これらの各基が更に置換基を有する場合の該置換基としては、一般式(M−I)で説明した置換基、G、R1、R2で例示した基やイオン性親水性基が挙げられる。
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えアシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばm−クロロフェノキシカルボニル基)、アルキルスルフィニル基(例えばn−プロピルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ハロゲン化アルキル基(例えばトリフロロメチル基)を挙げることができる。ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)、ハロゲン化アルコキシ基(例えばトリフロロメチルオキシ基)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えばペンタフロロフェニルオキシ基)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えばジフロロメチルチオ基)、σp値が0.15以上の電子吸引性基が2つ以上置換したアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基、ペンタクロロフェニル基)、及びヘテロ環基(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル基)を挙げることができる。σp値が0.20以上の電子吸引性基としては、上記に加え、ハロゲン原子などが挙げられる。
ここで、一般式(M−I)で表される化合物として特に好ましい置換基の組み合わせを以下に挙げる。
5及びR6として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基を有し、更に好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基を有し、最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基を有し、(但し、R5及びR6が共に水素原子であることは無い。)
Gとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基を有し、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基を有し、最も好ましくは水素原子、アミノ基、アシルアミノ基を有し、
Aとして好ましくは、ピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を有し、更に好ましくは、ピラゾール環、イソチアゾール環を有し、最も好ましくは、ピラゾール環を有し、
1及びB2として、それぞれ−CR1=、−CR2=を有し、R1及びR2として、各々好ましくは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基を有し、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、カルボキシル基、シアノ基、カルバモイル基を有する化合物である。
シアン染料としては、下記一般式(C−I)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2006131837
一般式(C−I)において、X1、X2、X3及びX4は、各々独立に、σp値が0.40以上の電子吸引性基を表す。Y1、Y2、Y3及びY4は、各々独立に、一価の置換基を表す。Mは、水素原子、金属元素若しくはその酸化物、水酸化物又はハロゲン化物を表す。a1〜a4、b1〜b4は、それぞれX1〜X4、及びY1〜Y4の置換基数を表す。a1〜a4は、各々独立に、0〜4の整数を表し、b1〜b4は、各々独立に、0〜4の整数を表す。但し、a1〜a4の総和は2以上であり、3以上が好ましく、特にa1=a2=a3=a4=1である場合が最も好ましい。
一般式(C−I)で表される化合物(フタロシアニン染料)の中でも、下記一般式(C−II)で表される化合物(フタロシアニン染料)が更に好ましい。以下に、一般式(C−II)で表される化合物(フタロシアニン染料)について詳しく述べる。
Figure 2006131837
一般式(C−II)において、X11〜X14は、各々独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR2122、スルホ基、−CONR2122、又は−CO221を表す。Y11〜Y18は、各々独立に、一価の置換基を表す。M1は水素原子、金属原子若しくはその酸化物、水酸化物又はハロゲン化物を表す。a11〜a14は、各々X11〜X14の置換基数を表し、各々独立に、1又は2の整数を表す。Zは、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基を表す。R21及びR22は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基を表す。
一般式(C−II)中、a11〜a14は、各々独立に、1又は2の整数を表し、好ましくは4≦a11+a12+a13+a14≦6であり、特に好ましくはa11=a12=a13=a14=1である。
11、X12、X13及びX14は、それぞれ全く同じ置換基であってもよく、或いは例えばX11、X12、X13及びX14が全て−SO2−Zであるが各Zは互いに異なるものを含む場合のように、同じ種類の置換基であるが部分的に互いに異なる置換基であってもよく、或いは例えば−SO2−Zと−SO2NR2122が同時に置換した場合のように、互いに異なる置換基を含んでいてもよい。
一般式(C−II)で表される化合物(フタロシアニン染料)の中でも、特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の通りである。
11〜X14としては、各々独立に−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR2122、又は−CONR2122が好ましく、特に−SO2−Z、又は−SO2NR2122が好ましく、−SO2−Zが最も好ましい。
Zは、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基が好ましく、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好ましい。また、会合性を高め、堅牢性を向上させるという理由から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基を置換基中に有する場合が好ましい。
21及びR22は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基が好ましく、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ましい。但し、R21、R22が共に水素原子であることは好ましくない。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向上させるという理由から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基を置換基中に有する場合が好ましい。
11〜Y18は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、及びスルホ基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、及びスルホ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。a11〜a14はそれぞれ独立に1又は2であることが好ましく、特に全てが1であることが好ましい。M1は、水素原子、金属元素又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物を表し、特にCu、Ni、Zn、Alが好ましく、なかでもCuが最も好ましい。
一般式(C−II)で表される化合物の置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明で好ましく使用されるフタロシアニン染料の化学構造としては、スルフィニル基、スルホニル基、スルファモイル基のような電子吸引性基を、フタロシアニンの4つの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ、フタロシアニン骨格全体の置換基のσp値の合計で1.6以上となるように導入することが好ましい。
一般式(C−I)で表される化合物は、その合成法によって不可避的に置換基X1〜X4及びY1〜Y4の導入位置及び導入個数が異なる類縁体混合物である場合が一般的であり、従って一般式はこれら類縁体混合物を統計的に平均化して表している場合が多い。本発明では、これらの類縁体混合物を以下に示す三種類に分類すると、特定の混合物が特に好ましいことを見出したものである。即ち、一般式(C−I)及び(C−II)で表される化合物であるフタロシアニン系染料類縁体混合物を、置換位置に基づいて以下の三種類に分類して定義する。
(1)β−位置換型:2及び/又は3位、6及び/又は7位、10及び/又は11位、14及び/又は15位に特定の置換基を有するフタロシアニン染料。
(2)α−位置換型:1及び/又は4位、5及び/又は8位、9及び/又は12位、13及び/又は16位に特定の置換基を有するフタロシアニン染料。
(3)α,β−位混合置換型:1〜16位に規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン染料。
本明細書中において、構造が異なる(特に、置換位置が異なる)フタロシアニン染料の誘導体を説明する場合、上記β−位置換型、α−位置換型、α,β−位混合置換型を使用する。
本発明に用いられるフタロシアニン誘導体は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行’Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用若しくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
本発明における一般式(C−I)で表される化合物(フタロシアニン染料)は、国際公開WO00/17275、同00/08103、同00/08101、同98/41853、特開平10−36471号などに記載されているように、例えば無置換のフタロシアニン化合物のスルホン化、スルホニルクロライド化、アミド化反応を経て合成することができる。この場合、スルホン化がフタロシアニン核のどの位置でも起こり得る上にスルホン化される個数も制御が困難である。従って、このような反応条件でスルホ基を導入した場合には、生成物に導入されたスルホ基の位置と個数は特定できず、必ず置換基の個数や置換位置の異なる混合物を与える。従ってそれを原料として本発明の化合物を合成する時には、複素環置換スルファモイル基の個数や置換位置は特定できないので、本発明の化合物としては置換基の個数や置換位置の異なる化合物が何種類か含まれるα,β−位混合置換型混合物として得られる。
前述したように、例えばスルファモイル基のような電子求引性基を数多くフタロシアニン核に導入すると酸化電位がより貴となり、オゾン耐性が高まる。上記の合成法に従うと、電子求引性基が導入されている個数が少ない、即ち酸化電位がより卑であるフタロシアニン染料が混入してくることが避けられない。従って、オゾン耐性を向上させるためには、酸化電位がより卑である化合物の生成を抑えるような合成法を用いることがより好ましい。
それに対して、本発明における一般式(C−I)で表される化合物(フタロシアニン染料)は、例えば、下記式で表されるフタロニトリル誘導体(化合物P)及び/又はジイミノイソインドリン誘導体(化合物Q)を一般式(C−III)で表される金属誘導体と反応させて得られる。或いは下記式で表される4−スルホフタル酸誘導体(化合物R)と一般式(C−III)で表される金属誘導体を反応させて得られるテトラスルホフタロシアニン化合物から誘導することができる。
Figure 2006131837
上記各式中、Xpは上記一般式(C−II)におけるX1、X2、X3、又はX4に相当する。また、Yq,Yq’は、それぞれ上記一般式(C−II)におけるY11,Y12,Y13,Y14,Y15,Y16,Y17、又はY18に相当する。
一般式(C−III)
M−(Y)d
一般式(C−III)中、Mは前記一般式(C−I)で表される化合物中のMと同義であり、Yはハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、酸素などの1価又は2価の配位子を示し、dは1〜4の整数である。
即ち、上記の合成法に従えば望みの置換基を特定の数だけ導入することができるのである。特に本発明のように酸化電位を貴とするために電子求引性基を数多く導入したい場合には、上記の合成法は一般式(C−I)で表される化合物の合成法と比較して極めて優れたものである。
以上のようにして得られる前記一般式(C−I)で表される化合物は、通常、Xpの各置換位置における異性体である下記一般式(C−II−1)〜(C−II−4)で表される化合物の混合物、すなわちβ−位置換型となっている。
Figure 2006131837
上記合成法において、Xpとして全て同一のものを使用すればX11、X12、X13及びX14が全く同じ置換基であるβ−位置換型フタロシアニン染料を得ることができる。一方、Xpとして異なるものを組み合わせて使用すれば、同じ種類の置換基であるが部分的に互いに異なる置換基をもつ染料や、或いは、互いに異なる種類の置換基をもつ染料を合成することができる。一般式(C−II)の染料の中でも互いに異なる電子吸引性置換基を持つこれらの染料は、染料の溶解性、会合性、インクの経時安定性などを調整できる為、特に好ましい。
本発明では、いずれの置換型においても酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であることが堅牢性の向上の観点から好ましい。また、原因は詳細には不明であるが、中でもα,β−位混合置換型よりはβ−位置換型の方が色相・光堅牢性・オゾンガス耐性等において明らかに優れている傾向にあった。
前記一般式(C−I)及び(C−II)で表される化合物であるフタロシアニン染料は、前述した特許に従えば合成することが可能であり、特願2001−226275号、同2001−96610号、同2001−47013号、同2001−193638号に記載の方法により合成することができる。また、出発物質、染料中間体及び合成ル−トについてはこれらにより限定されるものでない。
本発明で用いる油溶性化合物としてのマゼンタ染料、シアン染料は酸化電位が1.0Vよりも貴であることが好ましいが、シアン染料として広く用いられているフタロシアニンは、会合体を形成している為に酸化電位が多少低くとも堅牢性を補償できるのに対し、マゼンタ染料は会合を形成するものではない為、堅牢性を高める為には酸化電位をシアン染料以上に貴に設定することが好ましい。
本発明で好適に用いることのできる油溶性化合物としては、特開2003−238863号公報に記載されているY−1〜Y−35、M−1〜M−26、C−1〜C−50等が挙げられるが、これらは本発明を詳しく説明するためのものであって、これらにより本発明は限定されない。尚、括弧内に油溶性染料の酸化電位を示す。
本発明における化合物の例は、この他、特開2002−294097号、特願2001−24352号、同2002−249677号、同2002−256167号、同2002−275386号、同2003−12952号、同2001−279145号、同2002−309116号、同2001−110335号の各公報又は明細書にも記載されているが、これらに限定されるものではない。また、本発明おける化合物は、ここに挙げた特許に記載された方法で容易に合成できる。
本発明におけるインク組成物において、使用する油溶性化合物としては、その少なくとも1種が、上記した一般式(M−I)又は一般式(C−I)で表される化合物であることが好ましい。
本発明に使用される油溶性化合物のインク組成物における含有量としては、インク組成物に対して0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
(重合性基を有するモノマー)
本発明において用いられる重合性基を有するモノマーとしては、紫外線、熱又は電子線等のエネルギー付与によって固体化する重合性の二重結合(以後、重合性基と記す)を有する化合物である。モノマーは2官能以上の化合物(以後、多官能モノマーと記す)の使用が必須であり、粘度調整や架橋密度の調整、硬化後の物性制御(強度、接着性など)のために単官能の化合物(以後、単官能モノマーと記す)を併用してもよい。
前記重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)が挙げられ、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基が低エネルギーで硬化させることができる点で好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。前記多官能モノマーとしては、ビニル基含芳香族化合物、2価以上のアルコールとアクリル酸又はメタアクリル酸とのエステルであるアクリレート、2価以上のアミンとアクリル酸又はメタアクリル酸とのアミドであるアクリルアミド、多塩基酸と2価アルコールの結合で得られるエステル又はポリカプロラクトンにアクリル酸又はメタアクリル酸を導入したポリエステルアクリレート、アルキレンオキサイドと多価アルコールの結合で得られるエーテルにアクリル酸又はメタアクリル酸を導入したポリエーテルアクリレート、エポキシ樹脂にアクリル酸又はメタアクリル酸を導入するか、或いは2価以上のアルコールとエポシキ含有モノマーを反応させて得られるエポキシアクリレート、ウレタン結合をもったウレタンアクリレート、アミノ樹脂アクリレート、アクリル樹脂アクリレート、アルキッド樹脂アクリレート、スピラン樹脂アクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルと前記光重合性モノマーの反応生成物及びワックス類と前記重合性モノマーの反応生成物などが挙げられ、アクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルと前記光重合性モノマーの反応生成物が好ましく、アクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートが特に好ましい。
前記多官能モノマーの例としては、ジビニルベンゼン、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,6−アクリロイルアミノヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、2塩基酸と2価アルコールから成る分子量500〜30000のポリエステルの分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基をもつポリエステルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノール(A或いはS、F)骨格を含有する分子量450〜30000のエポキシアクリレート、フェノールノボラック樹脂の骨格を含有する分子量600〜30000のエポキシアクリレート、分子量350〜30000の多価イソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリル酸モノマーとの反応物、また分子内にウレタン結合を有するウレタン変性物などが挙げられる。
前記単官能モノマーとしては、置換或いは無置換の(メタ)アクリレート、置換或いは無置換のスチレン、置換或いは無置換のアクリルアミド、ビニル基含有モノマー(ビニルエステル類、ビニルエーテル類、N−ビニルアミドなど)、(メタ)アクリル酸などが挙げられ、置換或いは無置換の(メタ)アクリレート、置換或いは無置換のアクリルアミド、ビニルエステル類、ビニルエーテル類が好ましく、置換或いは無置換の(メタ)アクリレート、置換或いは無置換のアクリルアミドが特に好ましい。
前記単官能モノマーの例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、アリルアクリレート、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、2−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチルアクリレート、エステルにポリブチルアクリレート部位を含有するアクリレート、エステルにポリジメチルシロキサン部位を含有するアクリレートなどが挙げられる。
前記モノマーのインク中の含有量は、通常50〜99.6質量%の範囲が好ましく、70〜99.0質量%がより好ましく、80〜99.0質量%が更に好ましい。前記モノマーは本発明の効果が得られるものであれば何れでもよいが、安全性の高いものから選択されることが更に好ましい。安全性が高いモノマーとはPII(皮膚刺激性)の値が小さいものであり、PIIが3.0以下のものが好ましく、2.0以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましく、0.5以下が特に好ましい。
(光重合開始剤及び増感剤)
光重合開始剤としては、光により発生したラジカルや他の活性種が前記モノマー中の重合性二重結合と反応するものであれば特に制限はない。光重合開始剤としては、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、金属錯体、p−ジアルキルアミノ安息香酸、アゾ化合物、パーオキシド化合物等が一般的に知られ、アセトフェノン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体が好ましく、アセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体が特に好ましい。
光重合開始剤の例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,2−ジメチルプロピオイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,3,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルナフチルフォスフォネート、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フィニル)チタニウム、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。更に光重合開始剤の例としては、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株)総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている光重合開始剤などを挙げることができる。
これらの光重合開始剤は1種或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、増感剤と併用してもよい。また、光重合開始剤は、70℃まで熱分解を起こさないものであることが好ましい。熱分解する温度が70℃以上であることにより、製品の保存が良好となる。これらの光重合開始剤のインク中の使用量は特に制限されていないが、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%が更に好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。0.5質量%以上であることにより硬化を良好に行うことができると共に、硬化に要する時間を短縮することができる。また、20質量%以下であることにより、溶解経時で生じることがある析出や分離を防止し、更には硬化後の強度や擦り耐性を得ることができる。
増感剤は、単独では光照射によって活性化しないが、光重合開始剤と一緒に使用した場合に光重合開始剤単独で用いた場合よりも効果があるもので、一般にアミン類が用いられる。アミン類の添加により硬化速度が速くなるのは、第一に水素引き抜き作用により光重合開始剤に水素を供給するためであり、第二に生成ラジカルが大気中の酸素分子と結合して反応性が悪くなるのに対して、アミンが組成中に溶け込んでいる酸素を捕獲する作用があるためである。増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。増感剤のインク中の使用量は、通常0〜10質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。
光重合開始剤と増感剤の選定や組み合わせ、及び配合比に関しては使用するモノマー、使用装置によって適宜選定すればよい。
(その他の成分)
本発明の効果を害しない範囲内において、目的に応じて適宜選択したその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、溶剤やポリマー、表面張力調整剤、貯蔵安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、導電性塩類、pH調整剤等の公知の添加剤が挙げられる。
前記溶剤は、インクの極性や、粘度、表面張力、油溶性染料の溶解性向上、導電性の調整及び印字性能の調整などのために使用できる。前記溶剤としては、水、低沸点有機溶剤、高沸点有機溶剤が挙げられる。前記低沸点有機溶剤は沸点が100℃以下の有機溶剤である。前記低沸点有機溶剤は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましいが、使用する場合は安全性の高いものを用いることが好ましい。安全性が高い溶剤とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶剤であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。前記高沸点有機溶剤は沸点が100℃より高い有機溶剤である。前記高沸点有機溶剤は沸点が150℃以上のものが好ましく、170℃以上のものがより好ましい。例えば、多価アルコール類、脂肪族カルボン酸のエステル類、リン酸エステル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、ジエチレングルコール、トリメチロールプロパン、フタル酸ジブチル、安息香酸−2−エチルヘキシル、アルキルナフタレンなどが挙げられる。これらは、目的に応じ、常温で液体、固体の何れのものも使用できる。前記溶剤は一種類でも複数組み合わせて使用してもよく、インク中の使用量は0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、実質的に含まないのが特に好ましい。実質的に含まないとは、使用する素材に主要な成分以外、すなわち、不純物として含有されているものであって、意図的に添加しない場合をいう。
前記ポリマーは、インクの極性や粘度の調整、油溶性化合物の溶解性向上、硬化後のインクと記録材との密着性、耐光性の調整などのために使用できる。前記ポリマーはインクに溶解していてもよいし、微細分散物でもよいが、インクの保存安定性や吐出性能の点から、溶解するものが好ましい。
前記ポリマーがインクに溶解する場合には、油溶性化合物やモノマーとの相溶性が高いものが好ましく、インクの粘度上昇を起こしにくい点から、重量平均分子量は50000以下が好ましく、20000以下が更に好ましく、10000以下が特に好ましい。該ポリマーとしては、ビニルポリマー、ポリウレタン、ポリエステルなどが挙げられ、具体的には、ポリブチルアクリレート、ポリ(イソブチルメタクリレート−ヒドロキシエチルアクリレート)(共重合質量比95:5)、ポリ(イソプロピルアクリレート−テトラヒドロフルフリルアクリレート)(共重合質量比70:30)、ポリ(ブチルメタクリレート−N−メトキシメチルアクリルアミド)(共重合質量比80:20)、ポリブチルアクリレート−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体(共重合質量比90:10)などが挙げられる。
前記ポリマーが微細分散物の場合には、モノマーに実質的に溶解しないことが必須であり、更に膨潤しにくいか又は膨潤しないことが好ましい。インク中の分散物の粒径は1μm以下が好ましく、0.5μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。該ポリマーとしては、ビニルポリマー微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリエステル微粒子、ウレタン−ビニル複合粒子などが挙げられ、具体的には、ポリ(アクリロニトリル−エチルアクリレート−エチレングルコールジメタクリレート)(共重合質量比60:37:3)、ポリ(スチレン−ブタジエン)(共重合質量比50:50)などが挙げられる。
前記ポリマーは一種類でも複数組み合わせて使用してもよく、インク中の使用量は0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%が更に好ましく、0〜20質量%が特に好ましい。
貯蔵安定剤は保存中の好ましくない重合を抑制するもので、インクに溶解するものを用いる。例としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的には、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。使用量は0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、特開2001−181549号公報に記載されているものなどを用いることができる。
導電性塩類はインクに溶解することが必須であり、例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
インクの好ましい物性は印字する装置にも依存するが、一般的には、粘度は5〜100mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sが更に好ましい。表面張力は20〜60mN/mが好ましく、30〜50mN/mが更に好ましい。
<記録材>
本発明のインクジェット絵画作製方法においては、上述のインク組成物を記録材上に吐出することにより画像を形成し、絵画を作製する。上記記録材としては、例えば、普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、フィルム、布製キャンバス、マット紙、アート紙、光沢紙、半光沢紙、バックリット用フィルム等を挙げることができ、中でも布製キャンバスがより好ましい。また、該布製キャンバスに目止めを行い、更にその上に白色の下地塗料を設けていることが特に好ましい。
(キャンバスの製造方法)
ここで、上記目止めを行いその上に白色の下地塗料を設けた布製キャンバス(以下、単に「本発明におけるキャンバス」ということがある。)の製造方法について説明する。まず、本発明におけるキャンバスの素材について説明する。
キャンバスとして用いる布としては、例えば、麻、綿、ビニロン、ポリエステルと綿との混紡、ポリエステルと麻との混紡等の織布を使用することが好ましい。その中でも、麻、綿、ポリエステルと麻との混紡が好ましく、麻、ポリエステルと麻との混紡が特に好ましい。
前記目止め剤としては、造膜性があり起泡できるものであればよく、織布への塗布時の作業性から水性材料が適している。
例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、澱粉、加工澱粉、酢酸ビニルエマルジョン、スチレンブタジエンラテックス、ネオプレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等が使用できる。
これらの材料では、消泡剤の添加されていないものが望ましい。また、これら水性目止め剤中には、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料を添加することも可能である。上記水性目止め剤の発泡をより容易にするために、起泡剤として界面活性剤、例えば、脂肪酸塩類、脂肪族アルコール系エステル等を併用してもよく、また泡の安定剤として、脂肪酸類、脂肪族アルコール等を使用してもよい。
泡の発生方法としては、目止め剤の水溶液あるいは白色顔料を分散した目止め剤水溶液を容器中にて泡立器で撹拌することにより発生させることができる。連続的に泡を発生させたい場合には、一定量の液と一定量の空気を供給する調節器とミキシングヘッドを持つ連続泡立器を用いると好適である。
泡の直径は約10〜100μm、好ましくは20〜50μmの均一な泡が適している。発泡させる泡の発泡倍率(発泡前の原液質量/発泡後の同溶液の質量)は限定されるものではないが、塗布量や発泡効率から3〜30倍程度が効果的である。
泡の塗布は、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、スピンコーター等のコーターを使用して行うことができる。
布製キャンバスに目止め剤の泡を塗布した後は、直ちにその塗布面を熱風で乾燥することが望ましい。吸引やニップロールで泡を浸込ませたり消したりせず、泡を織布上に残したまま乾燥させることにより、効率よく目止めを行うことができる。
ポリビニルアルコールを含む泡を用いる場合には、キャンバスに予めホウ砂水溶液を含浸させておくことにより、目止め効果はさらに向上する。
目止めしたキャンバスは、更に、白色下地塗料を塗布し、次いで多色印刷を行うことにより目的とする布製キャンバスへの印刷が完了する。本発明において白色の下地塗料としては特に限定されないが、従来から使われている下地塗料も含め、カオリン、タルク、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、酸化亜鉛等の白色顔料と、スチレンブタジエンラテックス、酢酸ビニルエマルジョン、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール、加工澱粉等の結着剤を主成分とする塗料が好ましい。
目止め剤の使用量としては、0.5〜30g/m2が好ましく、2.0〜20g/m2がより好ましく、5.0〜15g/m2が特に好ましい。
<画像形成>
本発明のインクジェット絵画作製方法においては、前記インク組成物を前記記録材上に吐出して画像を形成し、絵画を作製する。
尚、本発明のインクジェット絵画作製方法においては、記録材上に吐出されたインク組成物を紫外線、可視光線、熱、電子線等のエネルギー付与によって硬化することが好ましい。硬化する、即ちモノマーを重合しポリマーとすることによって視覚的にツヤを出すことができ、高い水準で絵画の質感を得ることができる。
また、インク組成物の吐出と硬化の工程を繰り返すことにより、インク組成物を積み重ねて立体感を出すことができ、これによっても、より高い水準で絵画の質感を得ることができる。
上記インク組成物の吐出には、いかなるインクジェット記録方式も適用できる。例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等を挙げることができる。
また、紫外線や可視光線を照射する光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、デープUVランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプ等が使用でき、熱を放射するヒータとしては、赤外線ヒータ等が使用でき、電子線を照射する機器としては、電子線加速器(例えば、バンデグラーフ型のスキャニング方式、ダブルスキャニング方式、カーテンビーム方式等)等を使用することができる。
これらの中でも、エネルギーを付与する方法としては、短時間での硬化が可能であるという観点から、紫外線照射が好ましく、低圧水銀灯、高圧水銀灯を用いての紫外線照射が特に好ましい。
露光波長は450〜250nm、好ましくは400〜300nmが好適であり、露光エネルギーは500mJ/cm2以下が好ましく、10〜400mJ/cm2がより好ましい。
ここで、上述の様に、インク組成物の吐出と硬化の工程を繰り返し、インク組成物を積み重ねて立体感のある画像を得る方法について詳細に説明する。
従来、絵画の作製は、UV硬化インク等を用いたスクリーン印刷やインクジェット方式で作成されていたが、当該方法では、絵画の持つ立体感やきず等の質感の忠実な再現が不可能であった。
本発明においては、少なくとも1種の油溶性化合物と重合性基を有するモノマーとを含有する、硬化可能なインク組成物をインクジェット方式でキャンバス上に吐出させ、その直後インクが変形する前に、直ちに紫外線照射等で硬化させ、更に、その上からインクを吐出して硬化させるという手順を繰り返すことによって、インクが積層された画像を作製することができ、立体感やきず等の質感の再現性などを、更に向上させることができる。
また、上記画像の上から、色材を含まない透明な硬化性樹脂を含有するインクで全面を印字することがより好ましい。該樹脂の塗布により、光沢感や質感を付与することができ、また、湿度や温度、オゾンガス等による変色を防止することができる。更に、光堅牢性を有する染料を用いることにより画像の褪色を防止することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、本実施例において「%」は、特に断りがない限り「質量%」を表す。
[実施例1]
(インク組成物の調製)
まず、下記に示す成分を混合撹拌し、マゼンタインク組成物を得た。
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 5g
・重合性化合物:ジプロピレングリコールジアクリレート 15g
(ダイセル・ユーシービー製)
・光重合開始剤:Lucirin TPO 0.8g
(BASF製、アシルフォスフィンオキサイド化合物)
・連鎖移動剤 0.6g
(特願2004−172077号公報に記載の例示化合物2−5)
・着色剤:前記油溶性化合物M−1 0.4g
次に、上記マゼンタインク組成物の成分のうち、着色剤M−1を前記油溶性化合物Y−1に変えた以外は同様にして、イエローインク組成物を得た。
次に、上記マゼンタインク組成物の成分のうち、連鎖移動剤を連鎖移動剤(特願2004−172077号公報に記載の例示化合物2−7)に、着色剤M−1を前記油溶性化合物C−1に変えた以外は同様にして、シアンインク組成物を得た。
更に、上記マゼンタインク組成物の成分のうち、着色剤M−1を除去した以外は同様にして、透明インク組成物を得た。
(キャンバスの作製)
下記の方法により、絵画作製に用いる布製キャンバスを得た。
ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA124)の5%水溶液を作り、乳化機(ホモジナイザー)にて発泡倍率5倍の均一な細かい泡を作り、バーコーターを用いてキャンバスに1m2 当たり400mlの水溶液を塗布し、その塗布面を直ちに120℃の熱風乾燥機で乾燥した。ポリビニルアルコール固形分としての塗布量は20g/m2 であった。以上のようにして目止めされたキャンバスに、白色下地塗料(酢酸ビニルエマルジョンと酸化チタンからなる塗料)をバーコーターで、固形分として100g/m2 になるように塗布し、熱風乾燥機で乾燥した。
(画像記録および評価)
上記で調製されたマゼンタ、イエロー及びシアンのインク組成物(以下、「着色インク組成物」という)を、インクジェットプリンター(マイクロジェット社製 印字密度:300dpi、打滴周波数:4kHz、ノズル数:64)を用いて、上記より得た布製キャンバス上に、画像情報に基づいて吐出した。次いで、紫外線照射装置(ウシオ社製 SP−7)で20mJ/cm2のエネルギーになる条件で照射し、着色インク組成物を硬化させた。更にその上から、画像情報に応じて着色インク組成物を吐出し、紫外線によって硬化させるという工程を30回繰り返した。更に、着色インク組成物を積層して得た画像上に透明インク組成物を吐出し、紫外線によって硬化させて画像作製を終了した。
得られた画像(絵画)は、発色性や色調に優れた画像であり、更に立体感、および硬化したインク組成物の表面に光沢(つや)があり、高い水準で絵画の質感を得ることができた。

Claims (8)

  1. 少なくとも1種の油溶性化合物と、重合性基を有するモノマーと、を含有するインク組成物を用いて、記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット絵画作製方法。
  2. 前記油溶性化合物が、油溶性染料であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット絵画作製方法。
  3. 前記油溶性染料が、少なくとも1つの複素環を有するアゾ染料、或いは少なくとも分子中に−SO−又は−SO2−の連結基を有するフタロシアニン染料であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット絵画作製方法。
  4. 前記油溶性染料の酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット絵画作製方法。
  5. 前記記録材が、目止めを行いその上に白色の下地塗料を設けた布製キャンバスであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のインクジェット絵画作製方法。
  6. 前記記録材上に吐出された前記インク組成物を、紫外線照射することによって硬化することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のインクジェット絵画作製方法。
  7. 前記画像が絵画の質感を有する画像であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット絵画作製方法。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載のインクジェット絵画作製方法によって作製されたことを特徴とする絵画。
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