JP2006131658A - 熱可塑性エラストマー組成物及び成形体 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 引張強度が大きくて、かつ、低硬度で圧縮永久歪に優れる成形体を与える、加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体を提供すること。
【解決手段】 (A)(a)特定平均分子量のの芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体55〜95重量%、(b)芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体0〜40重量%及び(c)特定平均分子量のポリイソプレン5〜33重量%からなり、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が特定の重合体混合物、並びに、(B)クマロン−インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ビニルトルエン共重合体、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体又はポリインデン樹脂からなる相溶性樹脂を含有してなり、(c)成分と(B)成分の配合重量比が特定の熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、引張強度が大きくて、かつ、低硬度で圧縮永久歪に優れる成形体を与える、加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体に関する。
一般に熱可塑性エラストマーは、架橋ゴムと比較して架橋反応工程が不要であるので生産面で有利であり、かつ、再利用も容易である。また、熱可塑性エラストマーは、架橋剤を配合することなく使用できるので、通常、衛生的なポリマーである。
このような熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が知られているが、それらは一般に、加硫ゴムに比して硬度が高く、圧縮永久歪が大きい。
熱可塑性エラストマーに架橋剤を配合して架橋反応を行えば圧縮永久歪を改良することは可能であるが、硬度がさらに上昇する難点を招来する。
また、熱可塑性エラストマーに可塑剤を多量に配合して低硬度の成形体を得ることは可能であるが、得られる成形体は、一般に引張強度が低かったり、可塑剤のブリードが生じたりする問題を有する。
そのため、そのような問題を克服しつつ、引張硬度が大きくて、かつ、低硬度で圧縮永久歪が小さい熱可塑性エラストマーを得る検討がなされてきた。
特許文献1は、スチレン重合体ブロックを少なくとも2つ含むブロック共重合体の水素添加物、低分子量の共役ジエン系重合体の水素添加物及びポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物を開示した。しかしながら、具体的に示されている成形体は、圧縮永久歪は小さく、また、引張強度に優れるものの、硬度はJIS A硬度で70を超える高いものである。
また、特許文献2は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加物、非芳香族系オイル及びポリオレフィン系樹脂を特定の順序で二軸押出機に供給、混練して得られる熱可塑性エラストマー組成物を開示している。しかしながら、具体的に示されている成形体は、JIS A硬度が22と低く、かつ、圧縮永久歪が小さいものの、引張強度が約4MPa程度と小さい欠点を有するものである。
このように、硬度が低くて圧縮永久歪が小さく、かつ、引張強度の大きな成形体を与える熱可塑性エラストマー組成物は未だ存在せず、その実現が待たれている。また、従来より、熱可塑性樹脂エラストマー組成物には、広範な加工機械に適用することのできる加工性の良さが強く求められている。
特開平8−41283号公報 特開2000−44691号公報
本発明は、上記の事情に鑑み、引張強度が大きくて、かつ、低硬度で圧縮永久歪に優れる成形体を与える、加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定分子量の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体と特定の分子量のポリイソプレンとを特定量比で含有する重合体混合物と特定の相溶性樹脂との特定割合の熱可塑性エラストマー組成物が上記目的の達成を可能とすることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
かくして本発明によれば、以下の1〜8が提供される。
1. (A)(a)重量平均分子量が14,000〜100,000の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体55〜95重量%、(b)芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体0〜40重量%及び(c)重量平均分子量が5,000〜300,000のポリイソプレン5〜33重量%からなり、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が14〜30重量%である重合体混合物、並びに、(B)クマロン−インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ビニルトルエン共重合体、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体又はポリインデン樹脂からなる相溶性樹脂を含有してなり、
(c)成分と(B)成分の配合重量比(c)/(B)が0.5〜30である熱可塑性エラストマー組成物。
2. 前記芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体(a)の芳香族ビニル単量体単位含有量が17〜50重量%である上記1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
3. 前記芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体(a)の重量平均分子量が120,000〜1,200,000である上記1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
4. 前記芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(b)の芳香族ビニル単量体単位含有量が17〜50重量%である上記1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
5. 前記芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(b)の重量平均分子量が60,000〜250,000である上記1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
6. 前記相溶性樹脂(B)の軟化点が80〜250℃である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
7. 上記1〜6に記載のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形体。
8. 上記7記載の成形体を弾性体として有するロール。
本発明により、引張強度が大きくて、かつ、低硬度で圧縮永久歪に優れる成形体を与える、加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体が提供される。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)(a)重量平均分子量が14,000〜100,000の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体55〜95重量%、(b)芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体0〜40重量%及び(c)重量平均分子量が5,000〜300,000のポリイソプレン5〜33重量%からなり、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が14〜30重量%である重合体混合物、並びに、(B)クマロン−インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ビニルトルエン共重合体、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体又はポリインデン樹脂からなる相溶性樹脂を含有してなり、(c)成分と(B)成分の配合重量比(c)/(B)が0.5〜30であることを特徴とする。
本発明で用いる重合体混合物(A)における芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体(a)(以下、「(a)成分」と記すことがある。)中の芳香族ビニル重合体ブロックは、(a)成分の重合体鎖で芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。該芳香族ビニル重合体ブロックは芳香族ビニル単量体単位含有量が80重量%以上のものが好ましく、芳香族ビニル単量体単位単独からなるものが特に好ましい。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどが挙げられる。なかでも、スチレンが好ましく使用できる。
(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックは、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、芳香族ビニル単量体と、芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン単量体が好ましく挙げられる。
(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)は、14,000〜100,000であることを要し、より好ましくは16,000〜80,000、特に好ましくは22,000〜50,000のものである。芳香族ビニル重合体ブロックのMwが小さすぎると成形体の圧縮永久歪が大きくなるおそれがあり、逆に、大きすぎると熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下して射出成形が行いにくくなる可能性がある。
(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックのMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
(a)成分中のイソプレン重合体ブロックは、(a)成分の重合体鎖でイソプレン単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。イソプレン重合体ブロックは、イソプレン単位含有量が80重量%以上のものが好ましく、イソプレン単位単独からなるものが特に好ましい。
(a)成分中のイソプレン重合体ブロックは、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、イソプレンと、イソプレンと共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。イソプレンと共重合可能な単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体;1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン単量体;が好ましく挙げられる。
(a)成分の芳香族ビニル単量体単位含有量は、通常、15〜75重量%、好ましくは17〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。
(a)成分におけるイソプレン単位中のビニル結合含有量は、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5〜10重量%である。
(a)成分のMwは、好ましくは120,000〜1,200,000、より好ましくは140,000〜1,000,000、特に好ましくは160,000〜800,000である。
(a)成分のMwとMnとの比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
重合体混合物(A)中の(a)成分の割合は55〜95重量%であることを要し、好ましくは55〜89重量%、より好ましくは55〜85重量%である。この割合が少なすぎると成形体の引張強度が大きく低下し、また、圧縮永久歪が悪化するおそれがあり、逆に、多すぎると硬度が高くなる可能性がある。
芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(b)(以下、「(b)成分」と記すことがある。)は、ただ1つの芳香族ビニル重合体ブロックとただ1つのイソプレン重合体ブロックとからなるブロック共重合体である。
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックは、(b)成分の重合体鎖で芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位含有量が80重量%以上のものが好ましく、芳香族ビニル単量体単位のみからなるものがより好ましい。
芳香族ビニル単量体としては、前記と同様のものが挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックは、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、芳香族ビニル単量体と、芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン単量体が好ましく挙げられる。
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量も、(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックと同様に、好ましくは14,000〜100,000、より好ましくは16,000〜80,000、特に好ましくは22,000〜50,000のものである。
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックのMwとMnとの比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
(b)成分中のイソプレン重合体ブロックは、(b)成分の重合体鎖でイソプレン単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。イソプレン重合体ブロックは、イソプレン単位含有量が80重量%以上のものが好ましく、イソプレン単位のみからなるものがより好ましい。このイソプレン単位含有量が少なすぎると、成形体の硬度が高くなる傾向にある。
(b)成分中のイソプレン重合体ブロックは、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲であれば、イソプレンと、イソプレンと共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。イソプレンと共重合可能な単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体;1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン単量体;が好ましく挙げられる。
(b)成分の芳香族ビニル単量体単位含有量は、通常、15〜75重量%、好ましくは17〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。
(b)成分におけるイソプレン単位中のビニル結合含有量は、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5〜10重量%である。
(b)成分のMwは、好ましくは60,000〜250,000、より好ましくは70,000〜230,000、特に好ましくは80,000〜220,000である。
(b)成分のMwとMnとの比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
重合体混合物(A)中の(b)成分の割合は、0〜40重量%であることを要し、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは5〜30重量%である。(b)成分が多すぎると成形体の引張強度が大きく低下し、圧縮永久歪が増大するおそれがある。
(a)成分の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法が採用でき、例えば、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル重合体ブロック及びイソプレン重合体ブロックを、それぞれ逐次的に重合する方法や、リビング性の活性末端を有するブロック共重合体を製造した後、それとカップリング剤とを反応させてカップリングしたブロック共重合体として製造する方法が採用できる。
また、(b)成分の製造方法も特に限定されず、従来公知の製造方法が採用でき、例えば、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル重合体ブロック及びイソプレン重合体ブロックを、逐次的に重合する方法が採用できる。
なお、(a)成分と(b)成分は、上記のようにそれぞれ別々に製造してもよいが、以下のように、それぞれの重合工程を1つにまとめて、(a)成分と(b)成分の混合物として製造することもできる。
アニオンリビング重合法を用いて、第一に、重合溶媒中、アニオン重合開始剤を用いて芳香族ビニル単量体を重合して、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル重合体ブロックを形成する(「第1工程」ともいう。)。第二に、芳香族ビニル重合体ブロックのリビング性の活性末端からイソプレンブロックを重合して、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体を得る(「第2工程」ともいう。)。第三に、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応し、カップリングした芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルブロック共重合体〔(a)成分に相当する。〕を形成する(「第3工程」ともいう。)。第四に、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の残部を重合停止剤で、そのリビング性の活性末端を失活させて芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体〔(b)成分に相当する。〕を形成させる(「第4工程」ともいう。)。以上により、(a)成分と(b)成分の混合物を製造できる。以下、具体的に順を追って説明する。
上記第1工程においては、重合溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて芳香族ビニル単量体を重合して、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル重合体ブロックを形成する。
重合溶媒としては、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されず、例えば、鎖状炭化水素溶剤、環式炭化水素溶剤またはこれらの混合溶剤が使用できる。鎖状炭化水素溶剤としては、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンタン、トランス−2−ペンタン、ネオペンタン及びこれらの混合物などが例示される。環式炭化水素溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどが例示される。重合温度の制御および重合体の分子量を制御し易い点で、鎖状炭化水素溶剤と環式炭化水素溶剤とを、重量比が好ましくは5:95〜50:50、より好ましくは10:90〜40:60となるよう混合して用いる。
重合溶媒の使用量は、重合に使用する単量体100重量部あたり、通常、100〜1000重量部、好ましくは150〜400重量部である。
アニオン重合開始剤は、特に限定されず、芳香族ビニル単量体及びイソプレンの重合に用いられる公知のものが使用でき、その具合例としては、メチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどの有機モノリチウム開始剤が挙げられる。これらの中でもn−ブチルリチウムが好ましい。重合開始剤の使用量は、常法に基づき、所望の重量平均分子量を有する重合体が得られるよう、適宜決定すればよい。
また、重合速度を調整し、分子量分布の狭い重合体を製造し易い点で、極性化合物の存在下に重合を行うことが好ましい。極性化合物としては、25℃で測定した比誘電率が2.5〜5.0の芳香族エーテル、脂肪族エーテルまたは第3級アミンが好ましく使用できる。このような極性化合物の具体例としては、ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族エーテル;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどの第3級モノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミンなどの第3級ポリアミン類が挙げられる。なかでも、テトラメチルエチレンジアミンが好ましく使用できる。
極性化合物の使用量は、アニオン重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.05〜0.5モル、より好ましくは0.01〜0.1モルの範囲である。
上記第2工程においては、芳香族ビニル重合体ブロックのリビング性の活性末端からイソプレン重合体ブロックを重合して、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体を得る。ここで、イソプレンは急激な反応熱の発生を抑制するために、連続的に添加しながら反応させることが好ましい。
上記第3工程においては、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応し、カップリングした芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルブロック共重合体〔(a)成分に相当する。〕を形成する。
カップリング剤は、重合体分子のリビング活性末端と反応して、該重合体分子と結合する部位を2以上有する化合物である。
反応部位が2つある2官能性カップリング剤として、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;安息香酸、CO、2―クロロプロペンなどが挙げられる。
反応部位が3つ以上ある3官能性以上のカップリング剤としては、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性スズ化合物;などが挙げられる。
これらの中では、2官能性カップリング剤が好ましく、ジメチルジクロロシランがより好ましい。
カップリング剤の使用量は、カップリングした芳香族ビニル−イソプレン−芳香族ビニルブロック共重合体〔(a)成分に相当する。〕の量が所望の範囲になるよう、適宜決定すればよい。
上記第4工程においては、リビング性の活性末端を有する芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体の残部を重合停止剤で、そのリビング性の活性末端を失活させて芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体〔(b)成分に相当する。〕を形成させる。
重合停止剤としては、アニオンリビング重合において通常使用されるものが使用でき、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類、塩酸、酢酸などの無機酸または有機酸などが挙げられる。
以上の方法により、(a)成分と(b)成分とを含む溶液が得られる。この溶液に、必要に応じて老化防止剤を添加した後、スチームストリッピングのような公知の重合体分離法により重合体を溶媒から分離し、乾燥工程を経て(a)成分と(b)成分の混合物を得る。
上記の(a)成分と(b)成分の混合物を製造する場合、(a)成分および(b)成分の合計量に対する(a)成分の割合は、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上となるようにする。この割合は、カップリング剤の使用量によって調整できる。この割合が少なすぎると、本発明における熱可塑性エラストマー組成物を製造する際に、別途製造した(a)成分を追加する必要が生じる場合がある。
本発明で用いるポリイソプレン(c)(以下、「(c)成分」と記すことがある。)は、その重合体鎖において、イソプレン単位を主たる構成単位として含有する重合体である。(c)成分は、イソプレン単位含有量が80重量%以上のものが好ましく、イソプレン単位のみからなるものがより好ましい。
(c)成分は、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲で、イソプレンおよびイソプレンと共重合可能な単量体の共重合体であってもよい。イソプレンと共重合可能な単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体の他ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン単量体が好ましく挙げられる。
(c)成分におけるイソプレン単位中のビニル結合含有量は、特に限定されず、通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5〜10重量%である。
ポリイソプレン(c)のMwは、5,000〜300,000であることを要し、好ましくは10,000〜250,000、より好ましくは30,000〜200,000である。Mwが小さすぎると成形体は引張強度が大きく低下し、また、表面がべたつくおそれがあり、逆に、大きすぎると硬度が上昇し、圧縮永久歪が増大する可能性がある。
(c)成分のMwとMnとの比(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
(c)成分の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法が採用でき、例えば、重合溶媒中、前記のアニオン重合開始剤を用いてイソプレンを重合する方法が採用できる。
重合体混合物(A)中の(c)成分の割合は、5〜33重量%であることを要し、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜30重量%である。(c)成分が少なすぎると、硬度が高く、逆に多すぎると、引張強度が低下し、成形体表面がべたつきやすくなる。
重合体混合物(A)においては、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が14〜30重量%の範囲にあることが必須である。この含有量は14〜28重量%にあることが好ましく、16〜25重量%の範囲にあることがより好ましい。この含有量が少なすぎると得られる成形品は圧縮永久歪が大きくなるおそれがあり、逆に、多すぎると硬度が高くなる可能性がある。
本発明で用いる相溶性樹脂(B)(以下、「(B)成分」と記すことがある。)は、クマロン−インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ビニルトルエン共重合体、ビニルトルエン−α―メチルスチレン共重合体又はポリインデン樹脂からなり、溶融時に前記(a)成分及び(b)成分の芳香族ビニル重合体ブロックと優先的に相溶して、該ブロックの凝集部に適度の凝集力と硬さを与えて成形体に高度の引張強度を具備させる作用を有する成分である。
(B)成分の軟化点は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜230℃、特に好ましくは130〜200℃である。また、(B)成分のMwは、好ましくは500〜30,000、より好ましくは1,000〜25,000、特に好ましくは2,000〜20,000である。(B)成分の軟化点が低すぎると、又は、(B)成分のMwが低すぎると、相溶性樹脂(B)が溶融時に前記(a)成分及び(b)成分の末端の芳香族ビニル重合体ブロックへの選択的相溶が不完全になってイソプレン重合体ブロックにも相溶するおそれがある。(B)成分の軟化点が高すぎると、又は、(B)成分のMwが高すぎると、溶融流動性が欠如して芳香族ビニル重合体ブロックへの相溶が実現しない可能性がある。
クマロン−インデン樹脂及びポリインデン樹脂は、それらの製造法は限定されないが、通常、タールの160〜180℃留分を精製して得られる、それぞれクマロン及びインデン、又はインデンを主とする成分を熱によるラジカル重合、又は、硫酸、有機酸、金属ハロゲン化物などからなる触媒によるカチオン重合で製造される。原料の純度や重合法により淡褐色ないし黒褐色の色相を示す。溶媒はベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素が好適である。
ポリスチレン樹脂は、その製造法は限定されないが、通常、スチレン、又は、スチレンを50重量%以上含有するスチレン及びスチレンと共重合可能な単量体の混合物をラジカル重合による塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などで重合して製造される。ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エステル、ハロゲン化炭化水素などが溶媒として使用できる。
スチレン−ビニルトルエン共重合体及びビニルトルエン−α―メチルスチレン共重合体は、それらの製造法は限定されないが、通常、それぞれスチレン及びビニルトルエンを、又は、ビニルトルエン及びα―メチルスチレンを割合の限定なく用いてラジカル重合による塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などで重合して製造される。ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エステル、ハロゲン化炭化水素などに溶解して用いると利便である。
これら相溶性樹脂のなかでも、引張強度と加工性のバランスに優れる点で、クマロン−インデン樹脂及びビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体が好ましく、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体が特に好ましい。
相溶性樹脂(B)の使用量は、(c)成分である重量平均分子量5,000〜300,000のポリイソプレンの、(B)成分に対する配合重量比(c)/(B)が0.5〜30、好ましくは1.0〜20、より好ましくは1.5〜15となる量である。(c)/(B)の値が小さすぎると、すなわち(B)成分の使用量が多すぎると、硬度が高く成形性が低下して成形体は圧縮永久歪が高くなるおそれがある。また、(c)/(B)の値が大きすぎると、すなわち(B)成分の使用量が少なすぎると、強度の改良効果が発現しない可能性がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、(a)成分、(b)成分および(c)成分以外のエラストマー、熱可塑性樹脂、充填剤、補強繊維、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、酸化防止剤、難燃剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、内部離型剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、帯電防止剤、架橋剤、架橋助剤、加硫剤、加硫促進剤などの配合剤を所望量含んでいてもよい。
(a)成分、(b)成分および(c)成分以外のエラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びその変性物、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
充填剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー,珪藻土,シリカ,タルク,硫酸バリウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,金属酸化物,マイカ,グラファイト,水酸化アルミニウム、各種の金属粉、木粉、ガラス粉、セラミックス粉などの他、ガラスバルーン,シリカバルーンなどの無機中空フィラー;ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン,ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラー;が挙げられる。
補強繊維としては、例えば、ガラスファイバー、金属ファイバー、ワラ、毛、その他各種のポリマーファイバーなどの短繊維および長繊維が挙げられる。
軟化剤としては、例えば、芳香族系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどの伸展油;ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状重合体;などが挙げられる。
発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4´−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物;などが挙げられる。
発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。かかる発泡助剤の例としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル・テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイトなどの亜燐酸塩類などが挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の調製方法は特に限定されないが、先ず重合体混合物(A)を調製して、これに(B)成分を加えて溶融混練する方法が一般的である。
重合体混合物(A)の調製方法は特に限定されない。別個に製造した(a)成分、(b)成分、(c)成分及び上記任意成分を混練して製造してもよく、(a)成分と(b)成分の混合物として製造されたものに、別途製造された(c)成分及び上記任意成分を混合して製造してもよい。また、各重合体又は一部の重合体を溶媒に溶解して溶液状態で混合した後、重合体を溶媒から分離して乾燥することにより製造してもよい。
本発明の成形体は、上記の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形法(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等含む)、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、ラミネート成形法、ブロー成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、回転成形法、トランスファー成形法、真空成形法、パウダースラッシュ成形法などの成形方法により成形されてなる。本発明成形体は、その形状に合わせて適切に選択された成形方法により製造されるが、多くの場合、射出成形法によって製造されると好ましい。
本発明成形体は、引張強度(JIS K6301)が好ましくは8MPa以上、より好ましくは10MPa以上であり、かつ、硬度(JIS A)が好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下で、圧縮永久歪(JIS K-6301、70℃、22時間後)が好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下の特性を有するものである。すなわち、本発明成形体は、引張強度が大きくて、かつ、低硬度で圧縮永久歪に優れる。そのため、OA機器、事務機器などのほか、各種機器におけるロール類として好適に使用される。
本発明のロールは、本発明成形体を弾性体として有し、軸体とこれを取り囲む弾性体とから構成される。該弾性体層は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層一つ有する単層構造でも、本発明の熱可塑性エラストマー組成物以外の材料からなる層も有する多層構造でもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物以外の材料としては、従来公知のゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂などが挙げられる。多層構造の場合、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層が弾性体の最外層を形成することが好ましい。
本発明のロールに用いられる軸体の材質としては、鉄、ステンレスなどの金属;6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂;などが挙げられる。
上記軸体の形状は、特に限定されず、所望のロール形状を形成できるように、適宜選択すればよい。軸体の表面形状は、平滑でも、波状や歯車状の凹凸が形成されたものでもよい。
軸体には、弾性体を成形、付設するに先立ち、通常、予めショットブラスト、サンドブラスト、サンドペーパー等により表面の粗面化や、弾性体との接着性を向上させるコーティング剤の塗布が施される。
上記弾性体の形状は特に限定されないが、通常、円筒状または円柱状である。ロールの弾性体の表面形状は、滑らかでも、歯車状、ローレット状、又はシボ加工面状の凹凸が形成されたものでもよい。
上記弾性体の表面は、成形後のロール表面をショットブラスト、サンドブラスト、サンドペーパー等により研磨処理したり、金型内表面に特定の凹凸面を形成した成形金型を用いて成形したりして形成される。
上記の熱可塑性エラストマー組成物からなる弾性体層の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5mm以上、好ましくは1mm〜10cmである。
本発明のロールの製造方法は特に限定されないが、射出成形用金型に軸体又は軸体を取り囲んで従来公知の材料からなる弾性体を付設したロールをセットして本発明の熱可塑性エラストマー組成物をインサート成形する方法;押出成形用金型に軸体をセットして本発明の熱可塑性エラストマー組成物を押出成形する方法;本発明の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形又は押出成形して円筒状または円柱状の弾性体を得てこれに軸体を刺し込む方法;などがある。
成形した弾性体の最外表面に、所望により、樹脂コーティングを施したり、コロナ放電、蒸着などの表面処理を施すこともできる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下において「部」は特に断りのない限り重量基準である。また、各特性の試験、評価は、下記のようにして行った。
(重合体の特性値の測定)
重合体の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランをキャリアーとし、ポリスチレン換算値として高速液体ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定した。
(a)成分と(b)成分の割合は、高速液体ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより得られた各共重合体のピーク面積の割合から求めた。
共重合体の組成は、1H−NMRにより測定した。
(成形体の試験評価用試料の作成)
得られたペレットを用いて射出成形機(ニッセイプラスチック社製FS80S12ASE)により、厚みが2mmで9cm四方の平板を成形した。この平板を硬度および引張強度を測定する試料とした。
得られたペレットを、厚さ12.7mm、直径29.0mmの金型を用いて、140℃で5分間圧縮成形し、圧縮永久歪を測定するための試験片とした。
(成形体の試験評価)
試料の硬度はJIS K6301に準じて、JIS A型硬度計にて測定した。
試料の引張強度は、JIS K6301に準じて、500cm/分の引張速度で伸張させ、破断時の応力(MPa)として求めた。
試料の圧縮永久歪は、JIS K6301に準じて、25%圧縮、70℃で22時間熱処理した後の圧縮永久歪率(%)として求めた。
(ロールの試験評価)
(1)摩擦係数
ヘイドン摩擦試験機(新東化学社製)を用い、荷重100g、速度100mm/secの条件で、紙を通す前(初期)及び1000枚通紙後のロール表面の摩擦係数を測定した。摩擦係数の値は上記試験機から読み取った。
(2)耐摩耗性
ヘイドン摩耗試験機(新東化学社製)を用い、ロールを荷重100gで1000番耐水ペーパー上を速度6000mm/secで往復させ、1000サイクル後のロール表面の摩耗量を測定し、その逆数を用いる。実施例1の磨耗量の逆数を100とする指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れる。
(3)呼び込み力(単位:g)
複写機の紙送り部にロールを取り付け、ロールを通過する時の紙に加わる力をロードセルで測定した。測定は、通紙前(初期)及び1000枚通紙後に行った。値が大きい程呼び込み力は大きい。
(参考例1)
耐圧反応器を用い、シクロヘキサン112部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(「TMEDA」と略号で示す。)0.000728部及びスチレン11.7部を40℃で攪拌しつつ開始剤n−ブチルリチウム0.0267部を添加し、50℃に温度を上げながら1時間重合した。この時点でのスチレンの重合転化率は100%であった。反応液の一部を採取して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、スチレン重合体ブロックのMwを測定したところ31,000であった。
引き続き、イソプレン36.3部を反応温度が50℃から60℃の間になるように温度制御しながら一時間かけて添加し、添加終了後にさらに1時間重合した。この時点での重合転化率は100%であった。反応液の一部を採取して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、スチレン−イソプレンジブロック共重合体〔(b)成分に相当する。〕のMwを測定したところ168,000であった。
次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン0.0242部を添加して2時間カップリング反応を行ない、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体〔(a)成分に相当する。〕を形成させた。この後、反応器に重合停止剤としてメタノール0.04部を添加し良く混合して、(a)成分と(b)成分とからなる芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体組成物Iを得た。反応液の一部を採取して、上記組成物I中のスチレン単位含有量(%)を測定し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、組成物全体のMw、及び、(a)成分と(b)成分の含有量(%)を測定した。芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体組成物Iの重合体の特性値を表1に示す。
(参考例2)
参考例1において、TMEDAを0.000881部、n−ブチルリチウムを0.0324部、スチレンを11.6部、イソプレンを36.4部、ジメチルジクロロシランを0.0293部及びメタノールを0.0485部にそれぞれ変更した他は参考例1と同様にして(a)成分と(b)成分とからなる芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体組成物IIを得た。芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体組成物IIの重合体の特性値を表1に示す。
Figure 2006131658
(参考例3)
耐圧反応器を用い、シクロヘキサン112部、TMEDA0.00364部及びn−ブチルリチウム0.134部を40℃で攪拌しつつイソプレン48部を60℃に温度を上げながら1時間かけて添加し、イソプレン添加終了後さらに60℃で1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、反応器に重合停止剤としてメタノール0.2部を加えてよく混合してポリイソプレン(i)を得た。ポリイソプレン(i)のMwは40,000であった。
(実施例1)
芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体組成物Iの30%シクロヘキサン溶液85部に、ポリイソプレン(i)の30%シクロヘキサン溶液15部を加え、さらに酸化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃の温水中に滴下して溶媒を揮発させ、析出物を得た。析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥した。
押出機の先端部に水中ホットカット装置を備えた単軸押出機に上記乾燥粉砕物100部及びエンデックス155(ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体、イーストマン社製、軟化点152℃、Mw8600)5部を供給し、平均直径が5mmの、表2に示す熱可塑性エラストマー組成物からなるペレットを得た。
このペレットを用いて、平板および圧縮永久歪を測定する試験片を得、この成形体の硬度、引張強度および圧縮永久歪を測定した。結果を表2に示す。
(実施例2〜6、比較例1〜4)
実施例1において、(a)、(b)、(c)及び(d)成分として表2に示す配合処方を用いた他は実施例1と同様にして成形体を得た。成形体の硬度、引張強度及び圧縮永久歪を測定した。結果を表2に示す。なお、エスクロンV−120は、クマロン−インデン樹脂(新日鉄化学社製、軟化点120℃、Mw640)である。
Figure 2006131658
表2が示すように、本発明の熱可塑性樹脂エラストマー組成物からなる成形体は、いずれも引張強度が10MPaよりも大きいという高強度を有し、かつ、硬度が低く、圧縮永久歪に優れるものである(実施例1〜6)。
一方、(c)成分及び(B)成分を配合しない比較例1では、引張強度に優れるものの、硬度が高く、圧縮永久歪の大きな成形体を与えた。(c)成分と(B)成分の重量比(c)/(B)が0.5より小さい配合の場合も、引張強度は大きいが、硬度が高く、圧縮永久歪みの大きい成形体を与えた(比較例2)。逆に、(c)/(B)が30より大きい配合であると、硬度は低いが引張強度が小さく、圧縮永久歪みの大きな成形体となった(比較例3)。重合体混合物(A)における(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が14重量%より小さい場合も、成形体は硬度が低く、引張強度が小さく、圧縮永久歪みの大きいものとなった(比較例3)。
(実施例7〜12、比較例5〜8)
射出成形機(ニッセイプラスチック社製FS80S12ASE)にて、実施例1〜6及び比較例1〜4の各々において得られた熱可塑性エラストマー組成物からなるペレットをそれぞれ個別に供給して直径20mm、長さ36mmの円柱状金属製軸体に対するインサート成形を行い、前記軸体の長手方向に外径28mm、内径20mm、長さ26mmの円筒状弾性体を被覆させたロールを作製した。ロールの試験評価結果を表3に示す。
Figure 2006131658
表3が示すように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物はいずれも成形加工性に優れ、得られた本発明のロールは、摩擦係数及び呼び込み力が大きく、また、これらの特性値は繰り返し使用した後においても低下しにくい。さらに、本発明のロールは耐摩耗性にも優れている。従って、本発明のロールは、紙送りロール、給紙ロールなどのロール部材として好適に使用できる。
一方、(c)成分及び(B)成分を含有しない比較例1における熱可塑性エラストマー組成物、及び、(c)/(B)の値が小さすぎる比較例2における熱可塑性エラストマー組成物を用いた場合は、耐磨耗性は良好であるが、金型の末端まで溶融組成物が充填されないため成形しても不完全な形状のロールとなり、摩擦係数、呼び込み力のいずれも劣るものとなった(比較例5、6)。
(c)/(B)の値が大きすぎる比較例3における熱可塑性エラストマー組成物を成形した場合は、成形品の離型性に劣り、ロール弾性体にちぎれや表面荒れが生じた。そのためロールの諸性能の耐久性が極めて低かった(比較例7)。
重合体混合物(A)における(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が小さすぎる熱可塑性エラストマー組成物による成形の場合は、離型性に劣り、ロール特性は比較例7に類似する状態であった(比較例8)。

Claims (8)

  1. (A)(a)重量平均分子量が14,000〜100,000の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体55〜95重量%、(b)芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体0〜40重量%及び(c)重量平均分子量が5,000〜300,000のポリイソプレン5〜33重量%からなり、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位含有量が14〜30重量%である重合体混合物、並びに、(B)クマロン−インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ビニルトルエン共重合体、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体又はポリインデン樹脂からなる相溶性樹脂を含有してなり、
    (c)成分と(B)成分の配合重量比(c)/(B)が0.5〜30である熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体(a)の芳香族ビニル単量体単位含有量が17〜50重量%である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体(a)の重量平均分子量が120,000〜1,200,000である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(b)の芳香族ビニル単量体単位含有量が17〜50重量%である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 前記芳香族ビニル−イソプレンジブロック共重合体(b)の重量平均分子量が60,000〜250,000である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 前記相溶性樹脂(B)の軟化点が80〜250℃である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 請求項1〜6に記載のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形体。
  8. 請求項7記載の成形体を弾性体として有するロール。
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