JP2006127910A - 有機elディスプレイ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水分の放出や浸透を防止するための層を簡易に形成する方法およびそのような層を備える有機ELディスプレイを提供すること。
【解決手段】 本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、(a)透明基板上に色変換フィルタ層、オーバーコート層および第1パッシベーション層を少なくとも含む色変換フィルタ基板を形成する工程と、(b)該色変換フィルタ基板上に第1電極を形成する工程と、(c)該色変換フィルタ基板上の第1電極上に第2パッシベーション層を形成し、レーザー光により、第1電極を露出させる工程と、(d)有機EL層および第2電極を形成する工程とを含む。本発明の有機ELディスプレイは、上記方法により作成された無機材料からなる第2パッシベーション層を有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機ELディスプレイおよびその製造方法に関する。
有機化合物のエレクトロルミネッセンス(以下有機ELとも称する)を利用した有機ELディスプレイの一つにパッシブマトリックス型(単純マトリクス型)ディスプレイがある。
パッシブマトリクス型ディスプレイは、透明基板上に設けられた複数の第1電極と、第1電極に直行する複数の第2電極と、これらに挾持された有機層から構成される。第1電極と第2電極の交差領域の発光部を1単位として1画素を形成し、この画素が複数個配列することにより表示部分が形成される。このような有機ELディスプレイの汎用性を考慮した場合、フルカラー化が必要である。有機ELディスプレイのカラー化方式の一つに、基板上にカラーフィルタや蛍光変換層のような色変換フィルタ層を形成し、これを利用して有機発光層からの光を赤、緑、青の3原色に分離あるいは3原色を発生させる方式がある。
このような、色変換方式を採用したフルカラー有機ELパッシブマトリクス型ディスプレイは、第1電極の下側(すなわち、第1電極と透明基板の間)に色変換フィルタが配設されている。色変換フィルタは、樹脂中に色変換用の色素を混合したものであり、フォトリソグラフ法等で形成されるが、混合する色素の熱安定性の問題から、200℃を超える温度での乾燥が行えない。したがって、塗液中に含有している水分や、パターン形成工程中に混入した水分が保持された状態で色変換フィルタ層が形成される可能性が高い。色変換フィルタ層内に保持された水分は、保存もしくは駆動中に素子に達し、ダークスポットの成長を促進する要因となる。
上述の色変換フィルタより発生した水分に対処する方法として、ガスバリア性を有したオーバーコート層を配設する方法がある。ガスバリア性を有したオーバーコート層の例として、たとえば、高分子材料からなる平坦化層(オーバーコート層)と無機酸化物からなるパッシベーション層を配設するもの(特開平8−279394号公報、特開平11−26156号公報(特許文献1、2))、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂と酸化ケイ素含有バリア膜とを積層して配設するもの(特開2001−60495号公報(特許文献3))、ハードコート層付フィルムを結合剤で接着したもの(特開平11−121164号公報(特許文献4))、単層または積層の高分子材料で形成されたオーバーコート層を配設するもの(特開2000−182780号公報、特開平11−219786号公報(特許文献5、6))、などが開示されている。
フルカラー有機ELパッシブマトリクス型ディスプレイでは、残存する水分対策として、上述のように多くのガスバリア性を有する層が形成されている。しかしながら、完全にガスバリア性を確保するのは非常に難しく、特に、パッシベーション層の破壊孔跡から有機EL層へ侵入する水分を防ぐことができず、ダークスポットなどの発生を完璧に抑えることは非常に困難である。
また、パッシブマトリクス型ディスプレイの第1電極および第2電極の周囲は、電極形状が急激に変化するため電界集中が発生しやすい部位であり、有機EL層が絶縁破壊し、第1電極と第2電極の短絡により、第1電極上あるいは第2電極上に並列する全ての画素が常時発光する等の表示欠陥が発生する。第1電極と第2電極間の短絡を防ぐ方法として、特許第2911552号明細書(特許文献7)に開示されるように、第1電極および第2電極の周囲に絶縁膜を形成する方法や、特開平9−330792号公報(特許文献8)に示されるように、絶縁膜材料としてポリイミド、ノボラック樹脂、酸化珪素、窒化珪素などを用いる方法が示されている。
絶縁膜を設ける場合、その材料として、ポリイミドやノボラック樹脂等の高分子材料を用いることの利点は、十分な耐電圧を持つ膜厚をフォトリソグラフ等の方法を用いて簡便に形成することが可能なことである。しかしこれらの材料は吸湿性が高いため、パッシベーション層を抜けてきた水分やガスを吸蔵しやすく、保存または駆動中に水分やガスが有機EL層へ達し、有機EL層の変質をもたらし画素エリアの減少を生じる可能性が高く、有機EL層を形成する前に十分な脱水工程が必要となる。
例えば、車載パネル等の高い信頼性が求められる分野に有機ELディスプレイを使用するためには、高温高湿条件下でも輝度低下の少ないディスプレイが求められるが、特に高温での駆動では高分子材料からの水分の放出が加速的に起こり、有機EL層に拡散する。この水分の放出により有機EL層の変質が起こり発光面積が低下する。
特開平8−279394号公報 特開平11−26156号公報 特開2001−60495号公報 特開平11−121164号公報 特開2000−182780号公報 特開平11−219786号公報 特許第2911552号明細書 特開平9−330792号公報
水分の放出を防止する方法として、上述のようなオーバーコート層、パッシベーション層などを設けることの他に、絶縁膜材料に高分子材料より吸湿性の低い無機材料を用いることが考えられる。しかしながら無機材料をフォトリソグラフ法でパターニングすると、第1電極に損傷を与え表示欠陥の原因となりうる表面粗さを生じていた。また、上述の通り、オーバーコート層、パッシベーション層などを設けるのみでは水分の放出を完全に防止することは困難である。
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、水分の放出や浸透を更に防止するための層を所定の形状に簡易に形成する方法を提供し、かつ、このような層を含むフルカラー有機ELディスプレイを提供することを目的とし、長期にわたって安定した発光特性を維持するフルカラー有機ELディスプレイを得ることを目的とする。
本発明の第1は、フルカラー有機ELパッシブマトリクス型ディスプレイに関し、該ディスプレイは、透明基板上に、少なくともパターン化された色変換フィルタ層と、該色変換層上のオーバーコート層と、該オーバーコート層上の第1パッシベーション層と、該パッシベーション層上の第1電極と、第1電極に直交する第2電極と、該第1電極と該第2電極の間の有機EL層と、第1電極間の第2パッシベーション層とを少なくとも備える有機ELディスプレイであって、第2パッシベーション層が無機酸化物からなり、かつ、第2パッシベーション層がレーザー加工により形成されることを特徴とする。
本発明の第2は、フルカラー有機ELパッシブマトリクス型ディスプレイの製造方法に関し、該方法は、(a)透明基板上に色変換フィルタ層、オーバーコート層および第1パッシベーション層を少なくとも含む色変換フィルタ基板を形成する工程と、(b)該色変換フィルタ基板上に第1電極を形成する工程と、(c)該色変換フィルタ基板上に第1電極上に第2パッシベーション層を形成し、レーザー光により、第1電極を露出させる工程と、(d)有機EL層および第2電極を形成する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の製造方法では、前記工程(c)において、第2パッシベーション層を形成する前に、第1電極が形成されている領域に蒸発層を形成することを特徴とする。蒸発層は第2パッシベーション層よりも融点か低い材料から形成されることが好ましく、光感応性樹脂であることが好ましい。
本発明の製造方法では、第2パッシベーション層は絶縁性無機化合物からなり、該無機化合物が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機フッ化物、無機酸化窒化物、またはこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。また、第2パッシベーション層は可視領域の波長に吸収を有することが好ましい。更に、第2パッシベーション層は、顔料を含有することが好ましく、この顔料は、Fe、Cr、CoOまたはAlから選択される酸化物、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料またはローダミン/キサンテン系顔料から選択される有機顔料、DBCまたはTCBから選択される染料、または、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルビフェニルアミンまたはキノリノール錯体から選択される有機EL材料から選択されることが好ましい。
第2パッシベーション層を無機物で形成し、パターンニングをレーザー光で行うことにより、長期にわたって安定した発光特性を有するカラー有機ELディスプレイを得ることができる。
以下の本発明の説明では、適宜図面を参照する。図1は本発明の有機ELディスプレイの一実施形態を示す概略図である。
図1は本発明のディスプレイの構造を示す。本発明のディスプレイは、透明基板1上に、色変換フィルタ層(2、3、4)、オーバーコート層5、第1パッシべーション層6、第1電極7、第1電極間に設けられた第2パッシべーション層9、有機EL層10、および第2電極11を少なくとも含む。本発明のディスプレイでは、第1電極間に第2パッシべーション層9を設けたことを特徴とし、この第2パッシベーション層として無機酸化物を使用することが特徴である。このような構造を有し、特定の材料を使用することで、有機EL層への水分の侵入を防止し、長期間安定した発光特性を維持できるフルカラー有機ELディスプレイを得ることが可能となる。
なお、図1において、カラー有機ELディスプレイは、複雑化を避けるため一画素として表したが、もちろん複数画素からなるカラー有機ELディスプレイであってもよい。また、図1には示していないが、適切な封止部材を含むことが好ましい。
なお、本発明の有機ELディスプレイは、以下に示すように、第2パッシベーション層がレーザー加工により所望の形状に形成されることを特徴とする。
本発明の有機ELディスプレイの各構成要素に使用される材料などは、以下に説明する本発明の第2の側面(有機ELディスプレイの製造方法)において、併せて説明する。
次に、本発明の有機ELディスプレイの製造方法を図2および図3を参照しながら説明する。以下の説明では、上記図1で説明した有機ELディスプレイを例に取りその製造方法を例示する。以下の説明では、第1電極7が陽極であり、第2電極11が陰極であり、透明な支持基板1上に各色の色変換フィルタ層2、3、4、オーバーコート層5を形成する場合を例に取る。
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、(a)透明基板上に色変換フィルタ層、オーバーコート層および第1パッシベーション層を少なくとも含む色変換フィルタ基板を形成する工程と、(b)該色変換フィルタ基板上に第1電極を形成する工程と、(c)該色変換フィルタ基板上および第1電極上に第2パッシベーション層を形成し、レーザー光により、第1電極を露出させる工程と、(d)有機EL層および第2電極を形成する工程とを含む。
本発明の第1の工程は、色変換フィルタ基板を形成する工程である。本発明のディスプレイでは、色変換フィルタ基板は、絶縁性の透明基板1、色変換フィルタ層2、3、4、オーバーコート層5が設けられている。これらの層は従来の一般的手順により作製することができる。すなわち、まず、透明な支持基板1上に、ブラックマトリックス12をパターン形成し、色変換フィルタ層2、3、4を形成し、オーバーコート層5を形成する(図2(a))。なお、ブラックマトリックスは、任意構成要素であり、本発明ではこれを設けても設けなくてもよい。以下の説明では、ブラックマトリックスを設ける例である。
具体的な製造方法は、例えば黒色の無機層、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層等を、例えばコーニング社製のガラスのような透明な支持基板上に、スパッタ法、CVD法、真空蒸着等のドライプロセス、スピンコート法のようなウエットプロセスにより形成することができ、フォトリソグラフ法等によりパターンニングしてブラックマトリックス12を形成することができる。なお透明な支持基板1は、上記のもの以外にも、一般のガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基板、または、半導電性や導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板を用いることができる。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、支持基板1として用いてもよい。本発明では、支持基板1は透明であることが必要である。支持基板の厚さなどのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。
次に、色変換フィルタ層(2、3、4)を作成する。具体的にはカラーフィルタ層の材料をブラックマトリックス12を設けた透明な支持基板1上にスピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフ法などによりパターンニングを行えばよい。次に、このカラーフィルタ層上に蛍光変換層を形成する。例えば、染料または顔料を含有したマトリックス樹脂をスピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフ法などによりパターンニングを行うことにより蛍光変換層を形成することができる。以上のようにして色変換フィルタ層(2、3、4)を形成する。より具体的には、例えば、カラーフィルタ層の材料やマトリックス樹脂を光および/または熱処理して、ラジカル種やイオン種を発生させ、必要なパターンのみ重合または架橋させて硬化させる。次いで、未硬化の部分を除去して、各層を形成する。このような成膜の条件は、従来通りである。
色変換フィルタ層の材料などの諸条件は以下の通りである。
色変換フィルタ層
各色変換フィルタ層は、それぞれ、赤、緑および青の染料または顔料からなる赤色変換フィルタ層、緑色変換フィルタ層および青色変換フィルタ層である。
本明細書において、色変換フィルタ層は、カラーフィルタ層、蛍光変換層、およびカラーフィルタ層と蛍光変換層との積層体の総称である。蛍光変換層は、有機EL層で発光される近紫外領域ないし可視領域の光、特に青色ないし青緑色領域の光を吸収して異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。R、G、Bそれぞれの蛍光変換層は、少なくとも有機蛍光色素とマトリクス樹脂とを含む。フルカラー表示を可能にするためには、少なくとも赤色(R)領域、緑色(G)領域および青色(B)領域の独立した色変換フィルタ層が設けられる。
1)R、G、B色変換フィルタ層
本発明では、有機蛍光色素として、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種類以上が用いられ、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種以上と組み合わせることが好ましい。これは以下の理由による。有機EL層が発光源である場合、青色ないし青緑色領域の光を発光するものが得やすいが、これを単なる赤色フィルタ層に通して赤色領域の光に変更しようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないため、極めて暗い出力光になってしまう。従って、十分な強度の出力を持った赤色領域の光を得るためには、発光体としての有機EL層からの光を蛍光色素によって一旦吸収させ、赤色領域の光に変換させることが必要となる。このように、赤色領域の光は、発光体からの光を蛍光色素によって赤色領域の光に変換させることにより、十分な強度の出力が可能となる。
一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、発光体からの光を別の蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力させてもよいし、または、発光体の発光が緑色領域の光を十分に含むならば、この発光体からの光を単に緑色フィルタ層を通して出力してもよい。
また、青色領域の光に関しては、発光源からの光(例えば有機EL層からの光)を単なる青色フィルタ層に通して出力させることが可能である。
(有機蛍光色素)
本発明において、有機蛍光色素は、有機EL層のような発光体から発せられる近紫外領域ないし可視領域の光、特には青色ないし青緑色領域の光を吸収して、該発光体とは異なる波長の可視光を発するものであれば特に限定されない。
有機EL層から発せられる青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素には、例えば以下のような有機蛍光色素がある。すなわち、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、べ一シックバイオレット11、べーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−13−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などである。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も所望の蛍光を発することができれば使用することができる。
有機EL層から発せられる青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素には、例えば以下のような有機蛍光色素がある。すなわち、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、または、クマリン色素系染料であるべーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などである。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も所望の蛍光を発することができれば使用することができる。
なお、本発明に用いることができる有機蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、有機蛍光顔料としてもよい。また、これらの有機蛍光色素や有機蛍光顔料(本明細書中で、前記2つを合わせて有機蛍光色素と総称する)は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に用いる有機蛍光色素は、色変換フィルタ層に対して、この色変換フィルタ層の重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量で含有される。有機蛍光色素の含有量が0.01重量%未満の場合には、十分な波長変換を行うことができず、その含有量が5%を越える場合には、濃度消光等の効果により色変換効率の低下が起こる。
2)マトリックス樹脂
次に、本発明の色変換フィルタ層に用いられるマトリックス樹脂について説明する。マトリックス樹脂は、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂からなる。これを、光および/または熱処理して、ラジカル種やイオン種を発生させて重合または架橋させ、樹脂を不溶不融化させて、色変換フィルタ層等を形成する。
光硬化性または光熱併用型の硬化性樹脂には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマー、(2)ポリビニル桂皮酸エステル、(3)鎖状または環状オレフィン、(4)エポキシ基を有するモノマーなどが含まれる。また、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂は、色変換フィルタ層として硬化されない状態では、有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶であることが好ましい。
これらの硬化性樹脂は、例えば以下のような組成物として使用され、基板上に塗布された後、パターンニングされる。例えば、(1)の硬化性樹脂は、光または熱重合開始剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理して、光ラジカルや熱ラジカルを発生させて重合させる。また、(2)の硬化性樹脂は、増感剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理により二量化させて架橋する。(3)の硬化性樹脂は、ビスアジドと混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理によりナイトレンを発生させ、オレフィンと架橋させる。(4)の硬化剤は、光酸発生剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理により、酸(カチオン)を発生させて重合させる。本発明では、特に(1)の光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂からなる組成物が高精細でパターンニングが可能であり、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性の面でも好ましい。
3)カラーフィルタ層
カラーフィルタ層は、特定の波長の透過率を制御するものである。カラーフィルタ層には、例えば、顔料または染料を樹脂中に分散した膜、真空蒸着した着色膜、屈折率の異なる多層膜、または基板に対する着色など、様々なものがあり、本発明で何れの方法も採用することができる。例えば、顔料を分散させた樹脂膜によるカラーフィルタ層には、フタロシアニン等の顔料をポリイミド等の樹脂に分散したものなどを例として挙げることができる。
4)ブラックマトリックス
ブラックマトリックスは、可視光をよく吸収し、発光部および色変換フィルタ層へ悪影響を与えないものであれば特に限定されない。本発明では、黒色の無機層、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層等によりブラックマトリックスを形成することが好ましい。例えば、黒色の無機層としては、クロム膜(酸化クロム/クロム積層膜)などを挙げることができる。また、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン等の顔料または染料をポリイミドなどの樹脂に分散したもの、カラーレジストなどが挙げられる。これらのブラックマトリックスは、スパッタ法、CVD法、真空蒸着等のドライプロセス、スピンコート法のようなウエットプロセスにより形成することができ、フォトリソグラフ法等によりパターンニングすることができる。
本発明では、ブラックマトリックスの光反射率は、40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である。これ以上の反射率であると、外部からの入射光を反射し、コントラストを低下させる原因となる。本発明では、上記クロム膜(数十%)、および顔料分散樹脂層(10%以下)が好ましい光反射率を有するが、クロム膜よりも顔料分散樹脂層の方が低い反射率を有するため好ましい。ただし、無機層は、材料により電気伝導性を持たせることが可能であり、透明電極の補助電極としての機能を持たせることができる場合があるので、ブラックマトリックスの材料は、色変換フィルタ層の用途に応じて適宜選択すればよい。ブラックマトリックスは、好ましくは0.5〜2.0μmの厚さを有する。
続いて、オーバーコート層5および第1パッシベーション層6を形成する。オーバーコート層の形成方法は、例えば、高分子材料を用いる場合には、上記の色変換フィルタ層、ブラックマトリックスなどを設けた支持基板上に、オーバーコート層を形成するための材料を、スピンコート法等で塗布し、これに紫外線を照射してオーバーコート層を硬化し、次いでアルカリ液等を用いて未硬化の部分を除去するというような手段が含まれる。また、無機材料を使用する場合には、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法などの慣用的手段により当該層を形成することができる。
本発明では、有機ELディスプレイの発光部が水分やアルカリ等に弱いことがあるので、色変換フィルタ層の各要素を密閉し、保護するための第1パッシベーション層6を設ける。第1パッシベーション層6は、スパッタ法などで成膜することができる。なお、本発明においては、上記オーバーコート層およびパッシベーション層を両機能を備えた1つの層(表面平滑層)として形成することもできる。この場合、例えば上記無機酸化物、無機窒化物等を、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法などの慣用的手段により当該層を形成することができる。
以下にオーバーコート層5および第1パッシベーション層6の材料等について説明する。
オーバーコート層(5)
オーバーコート層は、電極間の短絡の原因となる色変換フィルタ層により生じる支持基板上の凹凸を平坦化する。オーバーコート層は、前記の平坦化と、発光部および色変換フィルタ層へ悪影響のない当該技術分野で知られている任意の材料により形成することができる。好ましくは、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnO等の無機酸化物または窒化物、あるいはポリイミドまたはアクリル樹脂から形成される。オーバーコート層の膜厚は、1μm〜10μmであることが好ましい。
第1パッシベーション層(6)
本発明では、支持基板上のブラックマトリックス、色変換フィルタ層、オーバーコート層などを覆う第1パッシベーション層6を設ける。このパッシベーション層6は、外部環境からの酸素、低分子成分および水分の透過を防止し、それらによる有機EL層の機能低下を防止するのに有効である。また、第1パッシベーション層6は、この上に形成される第1電極などが断線しないように、高い平坦性を有していることが好ましい。さらに、第1パッシベーション層6は、有機EL層の発光を外部へと透過させるために、その発光波長域において透明であることが好ましい。
これらの要請を満たすために、第1パッシベーション層は、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、電気絶縁性を有し、水分、酸素および低分子成分に対するバリア性を有し、好ましくは鉛筆硬度2H以上の膜硬度を有する材料で形成される。例えば、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnO等の無機酸化物、無機窒化物等の材料を使用できる。第1パッシベーション層6の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
なお、本発明においては、上記オーバーコート層5および第1パッシベーション層6を両機能を備えた1つの層(表面平滑層)として形成することもできる。この場合、当該技術分野で知られている任意の材料、例えば上記無機酸化物、無機窒化物等により当該層を形成することができる。
本発明の第2の工程は、該色変換フィルタ基板上に第1電極を形成する工程である(図2(b))。第1電極の材料としては、ITO、In−Zn酸化物、ATO等を用いることができ、特に室温成膜により比較的低抵抗な膜が得られ、弱酸によりパターニングが可能なIn−Zn酸化物を用いることが望ましい。成膜方法としてはスパッタ法等の方法を用い、フォトリソグラフ法によりパターニングを行う。
本発明の第3の工程は、色変換フィルタ基板上および第1電極上に第2パッシベーション層を形成し、レーザー光により、第1電極を露出させる工程である(図2(b)、(c)、図3(a)、(b))。
本発明では、第2パッシベーション層を形成する前に、第1電極上に蒸発層8を形成することが好ましい(図2(b))。蒸発層8は必要に応じて適宜用いられる層であり、第1電極7へのレーザー加工による損傷を防止する。蒸発層8は第1電極7上のレーザー加工部に形成され、第2パッシべーション層9よりも融点の低い材料から構成されればよい。
蒸発層8は第2パッシベーション層9よりも融点が低いためにレーザー光の熱を吸収して蒸発しやすい。したがって加工部の周囲に熱が拡散しにくく、第1電極に対し損傷を与えることがない。蒸発層の材料は上述のように、第2パッシべーション層よりも低融点であれば特に制限はないが、有機化合物、特には光感応性樹脂からなることが好ましい。例えば一般的なフォトレジスト材料を用いることができる。
蒸発層8は、上記材料をスピンコート法により成膜し、プリベークの後、露光、現像などを順次行い、所望に応じてポストベークを行うなどの各工程により形成することができる。蒸発層8の膜厚は、100〜2000nm、好ましくは500〜1000nmである。なお、蒸発層は、後述する第2パッシベーション層の膜厚と等しいか、または該膜厚よりも厚く形成することが好ましい。
次にパネル全面に第2パッシべーション層9を形成する(図2(c))。第2パッシべーション層の材料は、絶縁性無機化合物からなり、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物、酸化窒化物、またはこれらの化合物を組み合わせて用いてもよい。金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒素物を構成する金属は、珪素、アルミニウム、チタンおよびこれらの混合物が好ましい。絶縁膜層の好ましい材料は、SiまたはAlの少なくとも1種と、OまたはNの少なくとも1種とを含む材料である。たとえば、SiOx、SiNx、SiOx、Ny、AlOx、AlNx、Si−Al−O−Nを用いることができる。その他の絶縁性材料として、TiO、BNなどが、また、炭化物材料としては、SiCなども利用可能である。
第2パッシべーション層は後述するようにレーザーにより加工するが、加工しやすいように以下の材料を添加して、可視域に吸収をもつようにすることもできる。第1電極に対して透明な波長領域において、第2パッシべーション層に吸収を持たせることによりレーザー光は第2パッシべーション層に吸収される。第2パッシべーション層が蒸発しやすくなることから、第1電極に対し損傷を与えることがない。
第2パッシべーション層への添加材料としては、無機顔料、具体的にはFe,Cr,CoO,Alなどの酸化物系や、フタロシアニン系、アントラキノン系、ローダミン/キサンテン系などの有機顔料、またはDCB、TCBなどの染料あるいはN,N′−ビス(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニルビフェルアミン、キノリノール錯体などの有機EL材料であってもよい。
第2パッシべーション層は、スパッタ法、蒸着法等の成膜方法により膜形成をおこなうことができる。添加物は、ターゲットの形成が可能な材料の場合には、スパッタ法で主成分と積層してもよいし、蒸着法で積層してもよい。あるいは、第2パッシベーション層の主成分を蒸着により形成する場合には、主成分と添加物を共蒸着で成膜してもよい。第2パッシベーション層の膜厚は、100〜1000nm、好ましくは100〜500nmである。
次に、第1電極の一部が露出するようにレーザー光13により所定の形状に加工する(図3(a)、(b))。レーザー加工は、エキシマレーザー(ArF,KrF,XeCl,XeF)や、YAGレーザー(SHG,THG,FHGを含む)等を用いて行うことができる。レーザー加工の手順としては、レーザー光13をレンズより数十〜数百μmに絞って走査したり、または面光源を使用して、加工部のみを透過するようなマスクを用いて基板に対して照射する方法などがある。なお、レーザー光の強度は第1電極まで傷つけないよう適切に調整する必要がある。例えば、エキシマレーザーの場合100〜450mJ/パルスのレーザー光を用いることができる。
本発明では、前記第2パッシべーション層9上に陰極分離隔壁を形成してもよい。陰極分離隔壁にはアクリレート等のネガ型のフォトレジストやノボラック樹脂等のネガ型フォトレジストを用いることができる。陰極分離隔壁は逆テーパー形状を有しており、陰極のパターニング機能をもつ。陰極を目的の形状に開口部を形成したマスクにより成膜する場合には陰極分離隔壁を用いる必要はない。
本発明では、オーバーコート層5と透明な支持基板1との間の層において、水分を含有しうる層、すなわち、色変換フィルタ層2、3、4、およびオーバーコート層5、に含まれる水分を除く為に、真空中内で加熱を行い、樹脂中に含まれる水分や形成された素子の表面に吸着した水分を除去することが好ましい。
本発明の第4の工程は、有機EL層および第2電極を形成する工程である(図3(c))。前述のパターンを形成した基板上に有機EL層を形成する。
第1電極上に設けられる有機EL層は、陽極および陰極に電圧が印加されることによって生じる正孔および電子が再結合することで発光する有機発光層を少なくとも含み、陽極/発光層/陰極の構成を基本として、これに正孔注入輸送層や電子注入輸送層を設けたもの、たとえば以下のような構成のものが知られている。
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の層構成において、陽極および陰極の少なくとも一方は、該有機発光体の発する光の波長域において透明であることが望ましく、透明である電極を通して光を取りだし、前記色変換フィルタ層に光を入射させる。
該正孔注入輸送層は、陽極より注入された正孔を有機発光層に伝達する機能を有し、また、電子注入輸送層は陰極より注入された電子を有機発光層に伝達する機能を有している。そして、該正孔注入輸送層を発光層と陽極との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、発光層に陰極または電子注入層より注入された電子は、正孔注入輸送層が電子を輸送しないので、正孔注入輸送層と有機発光層との界面に蓄積され発光効率が上がることが知られている。
有機EL層における各層の材料としては、特に限定されるものではなく公知のものが使用される。正孔注入層は、フタロシアニン類(銅フタロシアニンなど)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。正孔輸送層は、TPD、N,N′−ビス(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニルビフェルアミン(α−NPD)、4,4′,4″−トリス(N−3−トリル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N,N′−テトラビフェニル−4,4′−ビフェニレンジアミン(TBPB)などのトリアリールアミン系材料を含む公知の材料を用いることができる。有機発光層は、例えば、青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層中に、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などの材料が好ましく使用される。あるいはまた、ホスト化合物(ジスチリルアリーレン化合物、TPD,アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alqなど))にドーパント(ペリレン、キナクリドン類、ルブレンなど)を添加することによって、種々の波長域の光を発する有機発光層を形成してもよい。電子輸送層は、2−(4−ビフェニル)−5−(p−tブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、アルミニウムのキノリノール錯体(例えばAlq)などを用いることができる。電子注入層としては、以下の第2電極の説明で記載した仕事関数の小さな材料を使用することができる。
有機EL層の形成方法としては、たとえば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜化することにより形成することができる。また樹脂などの結着材とともに溶剤に溶かして溶剤としたのち、スピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。
第2電極は、仕事関数4.8eV未満(仕事関数の小さい)の金属及び合金が好ましく、Al,Ag,MgまたはMnまた、それらの金属を含有する合金AlLi,MgAgなどが好ましい。また、LiF/Alなどの積層電極を用いることもできる。
なお、上記説明では、第1電極を陽極、第2電極を陰極として説明したが、本発明においては、これらの電極は陽極、陰極の何れとしても機能させることができる。上記説明とは逆に、第1電極を陰極とし、第2電極を陽極とする際の電極の構成は、従来の通りである。
本発明では、上記のようにして得られた素子を封止部材により封止することが好ましい。封止部材として、酸化シリコンや酸化窒化シリコン等も無機膜を用いて第2電極を形成した後に、これらの無機膜を連続的に形成する方法や、ガラス基板、SUS缶、ポリカーボネート等のフィルム基板を用いて、UV硬化樹脂等により透明支持基板と接着する方法を用いることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。以下の実施例では適宜図面を参照しながら説明する。
図1は透明な支持基板1上に赤、緑、青の染料または顔料からなる色変換フィルタ層2、3、4を形成し、後に、オーバーコート層5と第1パッシべーション層6、第1の電極7、第2パッシべーション層9、有機EL層10、第2の電極11とを形成した、有機ELディスプレイの断面図である。
以下に本発明の有機ELディスプレイの製造工程を示す。以下の説明においては、適宜図面を参照する。
[青色フィルタの作製]
青色フィルタ材料(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製:カラーモザイクCB−7001)を透明基板1としてのコーニングガラス(50×50×1.1mm)上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施した。
[緑色変換フィルタの作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布溶剤を、青色フィルタのラインパターンが形成済である。透明基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施した。
[赤色変換フィルタ層の作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布溶剤を、青色フィルタおよび緑色変換フィルタのラインパターンが形成済である。透明基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施した。
[オーバーコート層の作製]
この蛍光変換フィルタの上に、オーバーコート層5としてUV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯にて照射し、膜厚8μm形成した。この時、蛍光変換フィルタのパターンは変形がなく、且つ、オーバーコート層の上面は平坦であった。
[第1パッシべーション層の作製]
第1パッシべーション層6としてDCスパッタ法により室温において、SiOx膜を300nm形成した。スパッタターゲットにはSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。製膜はマスク製膜で実施し、オーバーコート層5の全面を覆うように形成した。
[第1電極の形成]
第1電極7として透明導電膜であるIn−Zn酸化物パターンを形成した。透明導電膜は、DCスパッタ法により室温において、In−Zn酸化物膜を200nm形成した。スパッタターゲットにはIn−Zn酸化物焼成ターゲットを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。フォトリソグラフによりレジストをパターニングした後にシュウ酸をエッチング液として用いてパターニングすることにより形成した。
[蒸発層の形成]
ノボラック系樹脂を用いたポジ型フォトレジスト(東京応化製、OFPR−800)をスピンコート法にて成膜して、通常のフォトリソグラフ法により、画素領域以外が除去されるようにパターニングを行って、蒸発層8を形成した。即ち、膜厚約1.2μmに成膜した後、クリーンオーブンにてプリベークを行い、マスクを用いて露光、現像を行うことにより、蒸発層8とした。
[第2パッシべーション層の作製]
第2パッシべーション層9としてDCスパッタ法により室温において、SiOx膜を300nm形成した。スパッタターゲットにはSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。製膜後、レーザー加工により、パターニングを実施し、第1電極上で各画素に対応した位置に開口部を得た。尚、レーザー加工には、YAG高調波レーザーを使用した。出力調整をした後マスクとレンズを用い、レーザー線を線幅80μmに絞って照射することにより、良好に第2パッシべーション層を加工することができた。
[有機EL素子の作製]
次いで、前記透明導電膜を形成した基板1を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を、真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層は銅フタロシアニン(CuPc)を100nm積層した。正孔輸送層は4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を20nm積層した。発光層は4,4′−ビス(2,2′−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm積層した。電子注入層はアルミキレート(Alq)を20nm積層した。
この後、第1電極9のラインと垂直に幅0.165mm、空隙0.03mmキャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、厚さ200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層からなる陰極11を、真空を破らずに形成した。こうして得られた有機発光素子をグローブボックス内乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに1ppm以下)下において、封止ガラスとUV硬化接着剤を用いて封止した。
[実施例2]
第2パッシべーション層SiOxにFeを添加したことと、蒸発層を形成しないことを除いて、実施例1と同様に有機ELディスプレイを作製した。
[実施例3]
第2パッシべーション層LiFにAlqを添加したことと、蒸発層を形成しないことを除いて、実施例1と同様に有機ELディスプレイ作製した。
[比較例1]
第2パッシべーション層としてノボラック系高分子を用いたことを除いて、比較例1と同様に有機ELディスプレイ作製した。
[比較例2]
第2パッシべーション層SiOxをフォトリソグラフ法でパターニングを形成したことを除いて、実施例1と同様に有機ELディスプレイ作製した。
(評価)
各実施例および比較例にて、それぞれカラー有機ELディスプレイを3枚作製し、駆動試験を行った。
(駆動条件)
線順次操作:駆動周波数60Hz、デューティ1/60
1画素当たりの電流量:100μA
(比較方法)
駆動雰囲気85℃での加速条件にて500時間の連続駆動を行った後に、ディスプレイパネル内の非発光面積の割合および画素欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2006127910
表1から分かるように、第2パッシべーション層が高分子材料である場合(比較例1)には、85℃の環境において、500時間後には、画素の発光部分は半分以下になるのに対し、無機材料を用いることによりディスプレイの発光可能面積の維持率が大幅に改善される。一方、フォトリソグラフ法でパターニングを行った場合は欠陥率が大幅に増加する。これに対し、レーザー加工法を用いた場合は、非発光面積の増加および輝度の低下をより良好に抑制することができるとともに画素欠陥を最小限にとどめることができた。また、電極に損傷もきたしていなかった。
本発明の構成で製作したフルカラー有機ELディスプレイパネルは、有機層と直接接触する電極、第2パッシべーション層などに高分子などの材料を用いていない。その為、水分による有機膜の劣化が抑制されるとともに、表示欠陥のなく安定した有機ELディスプレイを作製することが可能となった。
(a)は、本発明における有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイパネルの断面図である。(b)は、有機EL層の拡大断面図である。 (a)〜(c)は、本発明における有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイの製造方法を説明するための図である。 (a)〜(c)は、本発明における有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイの製造方法を説明するための図である。
符号の説明
1 透明な支持基板
2 赤色変換フィルタ
3 緑色変換フィルタ
4 青色変換フィルタ
5 オーバーコート層
6 第1パッシべーション層
7 第1の電極層
8 蒸着層
9 第2パッシべーション層
10 有機EL層
11 第2電極層
12 ブラックマトリックス
13 レーザー光
101 正孔注入層
102 正孔輸送層
103 有機発光層
104 電子注入層

Claims (9)

  1. 透明基板上に、少なくともパターン化された色変換フィルタ層と、該色変換層上のオーバーコート層と、該オーバーコート層上の第1パッシベーション層と、該パッシベーション層上の第1電極と、第1電極に直交する第2電極と、該第1電極と該第2電極の間の有機EL層と、第1電極間の第2パッシベーション層とを少なくとも備える有機ELディスプレイであって、第2パッシベーション層が無機酸化物からなり、かつ、第2パッシベーション層がレーザー加工により形成されることを特徴とする有機ELディスプレイ。
  2. (a)透明基板上に色変換フィルタ層、オーバーコート層および第1パッシベーション層を少なくとも含む色変換フィルタ基板を形成する工程と、
    (b)該色変換フィルタ基板上に第1電極を形成する工程と、
    (c)該色変換フィルタ基板上および第1電極上に第2パッシベーション層を形成し、レーザー光により、第1電極を露出させる工程と、
    (d)有機EL層および第2電極を形成する工程と
    を含むことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
  3. 前記工程(c)において、第2パッシベーション層を形成する前に、第1電極が形成されている領域に蒸発層を形成することを特徴とする、請求項2に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
  4. 前記蒸発層が第2パッシベーション層よりも融点が低い材料から形成されることを特徴とする請求項3に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
  5. 前記蒸発層が、光感応性樹脂であることを特徴とする請求項3または4に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
  6. 前記第2パッシベーション層が絶縁性無機化合物からなり、該無機化合物が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機フッ化物、無機酸化窒化物、またはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
  7. 前記第2パッシベーション層が可視領域の波長に吸収を有することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
  8. 前記第2パッシベーション層が、顔料を含有することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
  9. 前記顔料が、Fe、Cr、CoOまたはAlから選択される酸化物、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料またはローダミン/キサンテン系顔料から選択される有機顔料、DBCまたはTCBから選択される染料、または、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルビフェニルアミンまたはキノリノール錯体から選択される有機EL材料から選択されることを特徴とする請求項8に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
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