JP2006126092A - 薄層流路および透析膜を有する微小バイオセンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】 血液試料などの妨害物質を含む試料についても、良好な定量性を維持しながら、目的物質を繰り返しまたは連続的に測定することが可能なバイオセンサの提供。
【解決手段】 透析膜によって隔てられた試料用薄層流路と透析液用薄層流路とを含むフローセルを含み、透析液用薄層流路は少なくとも1つの電極を含むバイオセンサであって、試料用薄層流路に目的試料を含む分析試料を導入し、透析液用薄層流路に透析液を導入して、目的試料の透析および電気化学的検出を同時に行うことを特徴とするバイオセンサ。
【選択図】 図1
【解決手段】 透析膜によって隔てられた試料用薄層流路と透析液用薄層流路とを含むフローセルを含み、透析液用薄層流路は少なくとも1つの電極を含むバイオセンサであって、試料用薄層流路に目的試料を含む分析試料を導入し、透析液用薄層流路に透析液を導入して、目的試料の透析および電気化学的検出を同時に行うことを特徴とするバイオセンサ。
【選択図】 図1
Description
本発明は、血液や尿などの体液中に存在する生体分子やイオンを、間欠的あるいは連続的に定量を行うためのバイオセンサに関する。
医療現場において患者の血液や尿などの体液中に含まれる生体成分を分析することは、病気の診断や治療方針の決定に重要な要素であり、現在様々な手法により各種生体成分の測定が行われている。現在、これら生体成分の分析には主として液体クロマトグラフィ装置やICP発光分析装置が用いられ、患者から採血された血液試料は一旦臨床検査施設に送られ、専門技術者が分析を行うのが一般的である。このため、採血から分析、データが得られるまでに数日を要している。
近年、ベッドサイドでの分析や在宅医療を目的とした、小型分析装置の開発が行われている。これは、現在血液中に含まれる生体成分の分析においては、液体クロマトグラフィ装置などの高価で大型の装置が主に用いられており、個人病院や在宅での自己診断は困難なためである。このため、小型かつ迅速に血液成分の分析が可能となるバイオセンサの開発が重要である(非特許文献1参照)。
医歯薬出版(株)、メディカル・テクノロジー「携帯検査・ベッドサイド検査のすべて」、1999年、l27巻、10号、ISSN−0389−1887
Analytica Chimica Acta, 350, 77 (1997)
現在までに血液中の生体成分の迅速な測定を目的としたバイオセンサがいくつか報告されている。しかしながら、血液試料の測定においては血液中に含まれるタンパク質や血球のセンシング部分への吸着により感度が低下していまい、定量性良く目的物質を繰り返し測定することや連続的に目的物質を測定することは非情に難しい(非特許文献2参照)。
上記課題を解決するため、2つの流路が透析膜によって隔てられたフローセルを作製し、一方の流路中に目的物質を検出する電極を形成した。さらに、もう一方の流路に生体試料を流すことにより、電極上には透析された分子量の小さな分子のみが拡散してくるが、吸着性のあるタンパク質などの高分子は電極上に拡散してこないため長期間にわたり安定した感度が得られる。また2つの流路をともに薄層流路とすることにより、透析膜に対して垂直方向の目的成分の拡散距離を小さくし、高効率に目的とする生体成分の透析を行うことが可能となり、高感度に目的成分を検出可能となる。
以上のような構成を採って、電極と透析膜を集積化したバイオセンサを用いることにより、妨害物質を含む血液のような試料においても、定量性よく安定した電気化学的検出が可能である。また、透析膜にタンパク質や血栓の付着を抑制する修飾を施すことによって、前述の効果を高めることができる。さらに、透析膜に妨害物質の透過を防止する修飾を施すことによって、そのような妨害物質が存在する試料についても、本発明のバイオセンサによる電気化学的検出が可能となる。
本発明のバイオセンサは、透析膜によって隔てられた試料用薄層流路と透析液用薄層流路とを含むフローセルを含み、前記透析液用薄層流路は少なくとも1つの電極を含む構成を有する。試料用薄層流路に分析試料を導入し、前記透析液用薄層流路に透析液を導入して、前記目的試料を透析して、分析試料中の目的試料を透析液中に移動させ、そして透析液用薄層流路中に設けられた少なくとも1つの電極によって目的試料の電気化学的検出を行うことを特徴とする。
図1に、本発明の例示的構成を示す。図1の構成においては、アクリル基板1と両面粘着性シート2によって試料用薄層流路が構成され、アクリル基板5と両面粘着性シート4によって透析液用薄層流路が構成され、そして、両流路が対向するように透析膜3に貼り合わせられている。試料用薄層流路には、試料導入キャピラリ6と試料排出キャピラリ7が設けられて、分析試料の導入/排出を行う。透析液用薄層流路には、透析液導入キャピラリ8と透析液排出キャピラリ9が設けられて、透析液の導入/排出を行う。さらに、図1の構成においては、透析液用薄層流路中に、目的試料の電気化学的検出を行うための対向電極10、参照電極11および作用電極12が設けられ、それぞれの電極は独立的に電極パッド13に電気的に接続されている。
試料用薄層流路は、基板表面に形成された凹部であってもよいし、図1に示したように、平坦な基板1の表面に対して孔を設けた薄膜(両面粘着性シート2)を貼り合わせて形成されていてもよい。基板としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂基板、ガラス基板、Fe、Al、Cu等の金属基板などを用いることができる。あるいはまた、ガラス基板または金属基板の表面を前述の樹脂で被覆した樹脂被覆基板を、基板として用いてもよい。
透析液用薄層流路も、試料薄層流路と同様の構成であってもよい。ただし、後述する検出用の電極を設ける必要があるため、透析液用薄層流路を形成するために用いられる基板は、少なくともその表面において絶縁性であることが必要である。したがって、透析液用薄層流路の作製にあたっては、樹脂基板、ガラス基板、または樹脂被覆基板を用いることが望ましい。
試料用薄層流路および透析液用薄層流路は、1μm以上100μm以下の厚さを有することが望ましい。このような厚さを有することによって、測定対象となる目的試料の基板表面に対して垂直方向(流動方向に直交する方向)への拡散距離を短くして、高い透析率を実現し、それによって高感度のバイオセンサを作製することができる。
試料用薄層流路および透析液用薄層流路には、それぞれ試料用または透析液用の導入手段および排出手段が設けられる。図1に示す試料用薄層流路に関しては、試料導入キャピラリ6および試料排出キャピラリ7が、それぞれ導入手段、排出手段に相当する。本発明のバイオセンサにおいては、試料用薄層流路の一端に導入手段を、他端に排出手段を設けて、分析試料が基板表面に平行に、該流路の一端から他端へと流れるようにして、流路中に分析試料が不必要に滞留しないようにすることが望ましい。透析液用薄層流路についても同様であり、図1の構成においては、透析液導入キャピラリ8および透析液排出キャピラリ9が、それぞれ導入手段、排出手段に相当する。本発明のバイオセンサにおいては、分析試料の流動方向と透析液の流動方向を一致させることが、高い感度を実現する上で好ましい。
透析膜3は、セルロース、再生セルロース、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル系ポリマーアロイなどの材料から作製することができる。
特に分析試料として血液などの生体試料を用いる場合、透析膜3に対して、血液中のタンパク質および/または血栓の付着を防止する修飾を施してもよい。たとえば、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ヘパリンなどによって、前述の透析膜を修飾することができる。このような修飾透析膜を用いることによって、タンパク質および/または血栓の付着を防止して、生体試料分析時の透析膜の透析率低下を抑制することができる。これによって、長期間にわたって安定した感度で生体試料の分析を行うことが可能となる。
あるいはまた、分析試料中に目的試料の電気化学的検出を妨害する妨害物質が含まれている場合、透析膜3に対して妨害物質の分子を除くための修飾を施してもよい。そのような修飾の例としては、イオノマーによる修飾(分子の帯電状態による選別)、あるいはシリカポリマーコンポジットプロトン交換膜もしくは過酸化ポリピロールによる修飾(アスコルビン酸、尿酸などの除去)などを挙げることができる。たとえば、アニオン性イオノマーであるナフィオンなどを用いて、アニオン性物質が透析膜を透過するのを防止ないし低減することが可能である。このような修飾によって、妨害物質分子の透析液中への移動を防止し、たとえ妨害物質を含有する試料であっても、長期間にわたって安定した感度で目的試料の分析を行うことが可能となる。
透析液用薄層流路内に設けられる電極は、試料用薄層流路中の分析試料中から透析膜を透過して透析液用薄層流路内に入る目的試料を電気化学的に検出するためのものである。たとえば、図1の構成においては、対向電極10、参照電極11、および作用電極12が設けられ、参照電極11の電位を基準として作用電極12を定電位に設定し、作用電極12および対向電極10の間を流れる電流(応答電流)をモニターすることにより、目的試料の電気化学的検出が行われる。透析液用薄層流路内に設けられる1つまたは複数の電極は、それぞれ独立的に電極パッドに対して電気的に接続されており、該電極パッドを経由して、外部回路に接続される。
本発明の1つまたは複数の電極は、金、白金、銀、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、モリブデン、クロムのような金属またはそれら金属を含む合金を用いて作製することができる。電極材料は、検出する目的試料の種類に応じて選択することが望ましい。また、必要に応じて、複数の金属層からなる積層構造の電極を用いてもよい。積層構造の電極は、目的試料の検出に最適な金属の導電率が小さいとき、または該金属が高価であるときに特に有効であり、高い導電率を有する金属からなる下層の表面上に、検出に最適な金属からなる上層を設けることによって、高感度および高導電率を両立した電極を提供することが可能となる。
あるいはまた、本発明の少なくとも1つの電極、特に作用電極を、目的試料である生体成分と特異的に反応する酵素によって表面修飾してもよい。表面修飾に用いることができる酵素としては、種々のペルオキシダーゼ、乳酸酸化酵素などを挙げることができる。これらの修飾物質は、必要に応じて有機高分子等を用いて電極上に固定化されていてもよい。このような修飾を行うことによって、目的試料に対する感度を高めること、または応答の特異性を高めることが可能となる。一方、参照電極11は、その表面を目的試料と電気化学的反応を起こさないような導電性材料で修飾することが望ましい。
図2に、本発明のバイオセンサを用いた測定システムの一例を示す。図1に構造を示したバイオセンサ14の各電極10〜12はそれぞれに対応する電極パッド13を介して、ポテンシオスタット19に接続されている。ポテンシオスタット19は、収集したデータを処理するためのパーソナルコンピュータ20に接続されている。また、試料導入用キャピラリ6および透析液導入キャピラリ8は、それぞれ試料導入用シリンジポンプ17および透析液導入用シリンジポンプ18に接続されている。さらに試料導入用キャピラリ6には、分析試料注入口(不図示)が設けられている。
図2に示した構成では、収集したデータを処理するためにパーソナルコンピュータ20を接続した例を示したが、各電極からの出力電流を適正に処理して表示ないし紙などの記録媒体への出力ができる限りにおいて、当該技術において知られている任意の装置(プリンタ、プロッタなど)を用いることができる。同様に、図2においては試料および透析液を送液するためのポンプの例としてシリンジポンプを示したが、一定速度で液体を送液することができ、かつ脈流などが発生しないことを条件として、当該技術で知られている任意のポンプ(ダイヤフラム型、ベローズ型、蠕動型など)を用いることができる。
(実施例1)
アクリル基板5上に、メタルマスクを重ね、マグネトロンスパッタ装置(日本シード社製)に取り付け、厚さ5nmのチタンおよび厚さ100nmの金を堆積させて、アクリル基板5上に積層構造の対向電極10、参照電極11および作用電極12、ならびにそれら電極をポテンシオスタット19に接続するための電極パッド13を形成した。参照電極11の表面を、参照物質として用いる銀ペーストで修飾した。
アクリル基板5上に、メタルマスクを重ね、マグネトロンスパッタ装置(日本シード社製)に取り付け、厚さ5nmのチタンおよび厚さ100nmの金を堆積させて、アクリル基板5上に積層構造の対向電極10、参照電極11および作用電極12、ならびにそれら電極をポテンシオスタット19に接続するための電極パッド13を形成した。参照電極11の表面を、参照物質として用いる銀ペーストで修飾した。
その後、アクリル基板5に、透析液導入キャピラリ8および透析液排出キャピラリ9を接続するための穴を2カ所、ドリルにより形成した。そして、それぞれの穴に透析液導入キャピラリ8および透析液排出キャピラリ9を接続して、UV硬化性接着剤により固定化した。また、同様にして、アクリル基板1に試料導入キャピラリ6および試料排出キャピラリ7を接続した。
次に、厚さ50μm(きもと社製)の両面粘着性シートを準備し、カッティングプロッタ(MIMAKI社製)を用いて26×10mmに切り出した後、さらにカッテングプロッタを用いて切り出した両面粘着性シートの中央に20×1mmの穴を形成して、穴開け加工を行った両面粘着性シート4および5を得た。次に、図1に示すように、両面粘着性シート4および5を用いて、電極を形成したアクリル基板5、セルロースアセテートからなる透析膜3、およびアクリル基板1を接着して、図1に示す構造を有する本発明のバイオセンサを作製した。本実施例においては、それぞれの両面粘着性シートの中央に開けられた長さ20mm×幅1mm×深さ50μmの穴が、それぞれ、透析液用薄層流路(アクリル基板5側)および試料用薄層流路(アクリル基板1側)に相当する。
以上のように得られた本発明のバイオセンサをドーパミンセンサとして用いた例を以下に示す。最初に、試料導入用キャピラリ6に接続された試料導入用シリンジポンプ17から、バイオセンサ14の試料用薄層流路に対して、pH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を流速5μl/分で連続的に導入した。また透析液導入キャピラリ8に接続した透析液導入用シリンジポンプ18から、透析液としてのPBSを、バイオセンサ14の透析液用薄層流路に対して、流速5μl/分で連続的に導入した。ポテンシオスタットを用いて、作用電極12に対して、参照電極11を基準として+450mVの電位を印加し、作用電極12および対向電極10の間を流れる電流値の変化をパーソナルコンピュータ20で記録した。
試料用薄層流路および透析液用薄層流路の両方にPBSを流して、安定したベースラインを得た。次に、試料用薄層流路に対して100μMドーパミンを含むPBSを導入すると、素早く電流値が増加し、一定の電流値を示した。これは、導入されたドーパミンがセンサ内の透析膜3を透過し、作用電極12上で酸化されたことによる酸化電流を検出したものである。次に、試料用薄層流路に対して100μMドーパミンに10%(試料の総重量を基準とする)になるように妨害物質である馬血清を加えた試料を導入した場合でも、若干の電流値の低下が認められるものの、ほぼ同じ大きさの応答電流値を得ることが出来た。さらに、再び試料用薄層流路に対してPBSを流して電流値がベースラインに戻った後に、試料用薄層流路に対する10%馬血清含有100μMドーパミン試料の導入を繰り返したが、その電流値はほとんど変化しなかった。これは、馬血清中に含まれるタンパク質などの高分子は透析膜3を通過しないため、各電極10〜12を汚染することなく、定量性良く生体成分を検出可能であることを示している。図3に、上記測定を行った際の電流値変化のグラフを示す。
このように電極と透析膜を集積化したバイオセンサを用いることにより、血液試料中でも定量性よく安定した応答を得ることが可能である。
(実施例2)
透析膜としてMPCを含浸させたセルロースアセテートを用いたことを除いて、実施例1の手順を繰り返してバイオセンサを作製した。MPCの含浸処理は、透析膜を非水溶性のMPCのアルコール溶液中に浸漬させ、乾燥させることによって行った。
透析膜としてMPCを含浸させたセルロースアセテートを用いたことを除いて、実施例1の手順を繰り返してバイオセンサを作製した。MPCの含浸処理は、透析膜を非水溶性のMPCのアルコール溶液中に浸漬させ、乾燥させることによって行った。
得られたバイオセンサに対して、実施例1と同様の手順によって100μMドーパミン試料を導入し、電流値がベースラインに戻った後に、100μMドーパミンの10%馬血清含有試料を導入した。その結果、最初の100μMドーパミン試料の場合と、次の100μMドーパミンの10%馬血清含有試料の場合とにおいて、同等の電流値が得られた。
この結果は、透析膜をMPCによって修飾したことによって、血中タンパク質の付着および血栓の付着を有効に防止することができたためと考えられる。
本比較例のバイオセンサは、一体として形成された薄層流路(20mm×1mm×100μm)中を試料および透析液の両方が流れる構造を有する。
(比較例1)
透析膜を用いなかったことを除いて、実施例1の手順を繰り返してバイオセンサを作製した。本比較例のバイオセンサは、一体として形成された薄層流路(20mm×1mm×100μm)中を試料および透析液の両方が流れる構造を有する。
透析膜を用いなかったことを除いて、実施例1の手順を繰り返してバイオセンサを作製した。本比較例のバイオセンサは、一体として形成された薄層流路(20mm×1mm×100μm)中を試料および透析液の両方が流れる構造を有する。
本比較例のバイオセンサを用いて、実施例1の記載と同様に、100μMドーパミン試料、続いて複数回の10%馬血清含有100μMドーパミン試料の導入を行った。図4にその際の電流値変化のグラフを示す。このグラフから、10%馬血清含有100μMドーパミン試料を導入した場合に、馬血清を含まない試料と比較して応答電流値の低下が認められる。また、馬血清含有試料の導入を繰り返すにつれて、徐々に応答電流値が低下していくことも認められる。これは、電極表面に血清中に含まれるタンパクが吸着したためである。このように血液試料を直接センサに導入した場合、定量性良く目的物質を安定に検出することは困難であり、再現性に乏しい。
(実施例3)
作用電極12を以下のように修飾したことを除いて、実施例1と同様の手順によりバイオセンサ14を作製した。作用電極を、電子移動層としてオスミウム錯体高分子を含む西洋わさびペルオキシターゼによって修飾した。さらに2%牛血清アルブミン水溶液に乳酸酸化酵素を1mg/mlとなるように溶解させ、さらに終濃度が0.1%になるようにグルタルアルデヒドを加えた混合溶液を作製し、架橋反応が進行している上記混合溶液を用いて、乳酸酸化酵素を含む架橋アルブミン層を電子移動層上に作製した。本実施例のバイオセンサは、乳酸センサとして機能する。
作用電極12を以下のように修飾したことを除いて、実施例1と同様の手順によりバイオセンサ14を作製した。作用電極を、電子移動層としてオスミウム錯体高分子を含む西洋わさびペルオキシターゼによって修飾した。さらに2%牛血清アルブミン水溶液に乳酸酸化酵素を1mg/mlとなるように溶解させ、さらに終濃度が0.1%になるようにグルタルアルデヒドを加えた混合溶液を作製し、架橋反応が進行している上記混合溶液を用いて、乳酸酸化酵素を含む架橋アルブミン層を電子移動層上に作製した。本実施例のバイオセンサは、乳酸センサとして機能する。
次に、作用電極12に対して、参照電極11を基準として−50mVの電位を印加し、実施例1と同様に、試料用薄層流路および透析液用薄層流路の両方にPBSを流速5μl/分で連続的に導入して、ベースラインを安定させた。
次に、試料用薄層流路に対して1mM乳酸を含むPBSを流速5μl/分で導入すると、素早く電流値が増加し、一定の電流値(−600nA)を示した。これは、導入された乳酸がセンサ内の透析膜3を透過し、作用電極12上の架橋アルブミン層中に固定化された乳酸酸化酵素により乳酸が酸化され、さらに該酵素反応により生成した過酸化水素が電子輸送層中の西洋わさびペルオキシターゼにより還元されたことによる還元電流を検出したものである。次に、100μM乳酸試料に対して終濃度が10%になるように妨害物質である馬血清を混入した場合でも、馬血清を含まない場合と同様の応答電流値(−600nA)を得ることができた。さらに、電流値がベースラインに戻った後に10%馬血清含有1mM乳酸試料の添加を繰り返したが、その電流値はほとんど変化しなかった。これは、馬血清中に含まれるタンパク質などの高分子は透析膜3を通過しないため、各電極10〜12を汚染することなく、定量性良く生体成分を検出可能であることを示している。
このように、酵素修飾バイオセンサにおいても透析膜を集積化することにより、血液試料中でも定量的かつ安定した応答を得ることが可能である。
(比較例2)
透析膜を用いなかったことを除いて、実施例3の手順を繰り返してバイオセンサを作製した。本比較例のバイオセンサは、一体として形成された薄層流路(20mm×1mm×100μm)中を試料および透析液の両方が流れる構造を有する。
透析膜を用いなかったことを除いて、実施例3の手順を繰り返してバイオセンサを作製した。本比較例のバイオセンサは、一体として形成された薄層流路(20mm×1mm×100μm)中を試料および透析液の両方が流れる構造を有する。
実施例3と同様に、作用電極12に対して、参照電極11を基準として−50mVの電位を印加し、ベースラインを安定させた後に、10%馬血清を含む1mM乳酸試料溶液を導入した場合、乳酸に対する応答電流値は−700nA程度と、透析をしない場合に比べ、大きな応答電流値を得ることが出来た。しかしながら、10%馬血清を含む1mM乳酸試料溶液を繰り返して導入すると、応答電流値は徐々に低下し、2時間後には−400nA程度に減少した。これは、上記溶液中に含まれるタンパク質が検出電極を汚染するため、徐々に検出感度が低下していくことを示している。
(実施例4)
実施例1の手順に従ってバイオセンサ14を作製した。次に、バイオセンサの試料導入キャピラリ6から流速5μl/分にて5%ナフィオン(登録商標)を含むメタノール溶液を試料用薄層流路内に1分間送液する処理を行い、透析膜3の試料用薄層流路側表面をアニオン性ポリマーであるナフィオン(登録商標)で修飾した。
実施例1の手順に従ってバイオセンサ14を作製した。次に、バイオセンサの試料導入キャピラリ6から流速5μl/分にて5%ナフィオン(登録商標)を含むメタノール溶液を試料用薄層流路内に1分間送液する処理を行い、透析膜3の試料用薄層流路側表面をアニオン性ポリマーであるナフィオン(登録商標)で修飾した。
本実施例のバイオセンサをドーパミンセンサとして用いた例を示す。最初に、試料用薄層流路および透析液用薄層流路の両方にPBSを流して、安定したベースラインを得た。次に、試料用薄層流路に対して100μMドーパミンを含むPBSを導入すると、素早く電流値が増加し、一定の電流値(70nA)を示した。これは、導入されたドーパミンがセンサ内の透析膜3を透過し、作用電極12上で酸化されたことによる酸化電流を検出したものである。次に、100μMドーパミンに100μMアスコルビン酸を含む試料を導入した場合でも、ほぼ同じ大きさの応答電流値を得ることが出来た。これは、透析膜にアニオン性のポリマーを修飾する事により、試料中で負に帯電しているアスコルビン酸分子の透析膜透過を抑制し、ドーパミンのみが電極が配置された透析液薄層流路側に選択的に透析されたことを示している。このように、センサ内の透析膜3をイオノマーを修飾する事により、分子量の大きさのみでなく、分子の帯電状態により目的とする分子のみを検出することが可能である。
1,5 基板
2,4 両面粘着性シート
3 透析膜
6 試料導入キャピラリ
7 試料排出キャピラリ
8 透析液導入キャピラリ
9 透析液排出キャピラリ
10 対向電極
11 参照電極
12 作用電極
13 電極パッド
14 ドーパミンセンサ
17 試料導入用シリンジポンプ
18 透析液導入用シリンジポンプ
19 ポテンシオスタット
20 パーソナルコンピュータ
2,4 両面粘着性シート
3 透析膜
6 試料導入キャピラリ
7 試料排出キャピラリ
8 透析液導入キャピラリ
9 透析液排出キャピラリ
10 対向電極
11 参照電極
12 作用電極
13 電極パッド
14 ドーパミンセンサ
17 試料導入用シリンジポンプ
18 透析液導入用シリンジポンプ
19 ポテンシオスタット
20 パーソナルコンピュータ
Claims (5)
- 透析膜によって隔てられた試料用薄層流路と透析液用薄層流路とを含むフローセルを含み、前記透析液用薄層流路は少なくとも1つの電極を含むバイオセンサであって、
前記試料用薄層流路に目的試料を含む分析試料を導入し、前記透析液用薄層流路に透析液を導入して、前記目的試料の透析および電気化学的検出を同時に行うことを特徴とするバイオセンサ。 - 前記少なくとも1つの電極は、生体成分と特異的に反応する酵素によって表面修飾されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
- 前記透析膜は、血液中のタンパク質や血栓の付着を抑制する修飾を施されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
- 前記透析膜は、目的試料を測定する際に妨害物質として働く分子を除く修飾を施されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
- 前記試料用薄層流路および透析液用薄層流路は、1μm以上100μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
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