JP2006122971A - 鋳鉄の鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張強度に優れるとともに、伸びのある鋳鉄鋳物とする。
【解決手段】 鋳鉄の溶湯を傾斜冷却板2に流して半凝固状態まで冷却し、半凝固状態の溶湯を金型3内に鋳込み、鋳込み直後に加圧して凝固し、その後に得られた鋳物に熱処理を施す。特に金型を200〜400°Cに予熱しておくと、炭素濃度を2.87重量%、Si濃度を1.95重量%[炭素当量3.55]とした亜共晶鋳鉄で、引張強度800MPa、伸び4%の鋳物が得られた。
【選択図】 図1
【解決手段】 鋳鉄の溶湯を傾斜冷却板2に流して半凝固状態まで冷却し、半凝固状態の溶湯を金型3内に鋳込み、鋳込み直後に加圧して凝固し、その後に得られた鋳物に熱処理を施す。特に金型を200〜400°Cに予熱しておくと、炭素濃度を2.87重量%、Si濃度を1.95重量%[炭素当量3.55]とした亜共晶鋳鉄で、引張強度800MPa、伸び4%の鋳物が得られた。
【選択図】 図1
Description
この発明は鋳鉄の鋳造方法、特に半凝固冷却ー鋳込みー加圧ー熱処理を組み合わせた鋳造方法に関する。
半溶融、半凝固状態の金属は、溶解している金属から鋳造するよりも凝固収縮量が小さく、偏析も小さく、更に均一で微細な組織が得られるなどの現象からレオキャスト法(半凝固鋳造法)、チクソキャスト法などと称せられて、最近種々の研究がなされている。従来のレオキャスト法は、溶融金属を半凝固状態まで冷却し、これを金型に鋳込んで結晶の微細な鋳造物を得る方法である。また、一般にチクソキャスト法は、一旦レオキャスト法で得た固体金属をペレット状、チップ状に加工し、これを再度半溶融、半凝固状態まで加熱した後に、金型に鋳込む方法である。
特許文献1には、チクソキャスト法に用いるビレットの製造方法の発明が開示されている。
また、特許文献2には、マグネシウム合金の鋳造法として、溶解炉から排出された溶融金属を傾斜冷却板上に流して半凝固状態まで冷却し、これを金型に直接流し込んで鋳造する方法が開示されている。
また、特許文献2には、マグネシウム合金の鋳造法として、溶解炉から排出された溶融金属を傾斜冷却板上に流して半凝固状態まで冷却し、これを金型に直接流し込んで鋳造する方法が開示されている。
発明者らは鋳鉄への適用を検討し、溶融鋳鉄を傾斜冷却板上に流して半凝固状態まで冷却し、これを金型に直接流し込んで鋳造する方法を検討した結果、従来では得られなかった性質の鋳物が得られることが判明し、発明の完成に至った。
請求項1の発明では、鋳鉄の溶湯を傾斜冷却板に流して半凝固状態まで冷却し、半凝固状態の溶湯を金型内に鋳込み、鋳込み直後に加圧しながら凝固させ、その後に得られた鋳物に熱処理を施すことを特徴としている。
鋳鉄は、カーボン濃度が2%以上の亜共晶、共晶、過共晶のいずれの鋳鉄であってもよい。望ましくは、溶湯の半凝固状態を制御しやすい炭素当量(CE)(=%C+1/3%Si)が、亜共晶組成では2〜4重量%、過共晶組成では4.6〜5.5重量%の固相線と液相線の温度範囲が広い範囲が望ましい。
亜共晶の鋳鉄では、引張強さに優れ、伸びのある鋳物が得られる。特に、内部よりも表層部で硬い鋳物が得られる(請求項3)。
亜共晶の鋳鉄では、引張強さに優れ、伸びのある鋳物が得られる。特に、内部よりも表層部で硬い鋳物が得られる(請求項3)。
注湯温度は、鋳鉄が均一に溶解していれば良く、いわゆる鉄ーカーボン系の状態図において液相線以上50〜100°C程度が望ましい。
傾斜冷却板は、流れる溶湯が固相率で0.10〜0.4の半凝固状態で金型に鋳込むことのできるように冷却板の長さ、傾斜角度等を調整する。固相率が0.1未満では得られる鋳物の材料特性が不十分となり、一方、0.4を越えると粘性が大きくなって円滑な鋳込みが困難になる。傾斜冷却板により半凝固状態まで冷却することによって、微細な初晶の晶出核が多数発生して結晶の微細化が図られる。
金型は、室温であってもよいが150〜400°Cに予熱することが望ましい(請求項2)。予熱により、引張強さ、伸びともに向上する。特に、200〜300°Cに予熱することが望ましい。
鋳込み後、直ちに加圧する。これにより、冷却が促進されるとともに凝固中の結晶組織が破壊され、更に結晶の微細化が図られる。加圧圧力は30MPa以上とする。30MPa未満では、加圧した大きな効果が得られない。特に50MPa以上が望ましい。
凝固後に、従来から知られている黒鉛析出のための熱処理を施す。たとえば、950°C以上に60分間加熱することにより行う。この熱処理により、センメンタイトが黒鉛、フェライト及びパーライトになる反応が半凝固鋳造と加圧の相乗効果により速やかに行われ、黒鉛が微細に分布する。
凝固後に、従来から知られている黒鉛析出のための熱処理を施す。たとえば、950°C以上に60分間加熱することにより行う。この熱処理により、センメンタイトが黒鉛、フェライト及びパーライトになる反応が半凝固鋳造と加圧の相乗効果により速やかに行われ、黒鉛が微細に分布する。
請求項1の発明では、鋳鉄の溶湯を傾斜冷却板に流して半凝固状態まで冷却し、半凝固状態の溶湯を金型内に鋳込み、鋳込み直後に加圧しながら凝固して、その後に得られた鋳物に熱処理を施すことにより、引張強度に優れるとともに、伸びのある鋳鉄鋳物を得ることができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、金型を200〜400°Cに予熱することにより、さらに引張強度に優れるとともに、伸びのある鋳鉄鋳物を得ることができる。
請求項3の発明では、請求項1の発明において、鋳鉄を亜共晶鋳鉄とすることにより、内部よりも表層部で硬い鋳物が得られ、耐摩耗性に優れる鋳鉄鋳物とすることができる。
以下、一例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。図1は、鋳造装置を示す説明図であって、図示しない電気抵抗炉内に納めたるつぼ内で均一に溶解した鋳鉄を注湯装置1内に保持される。傾斜冷却板2は、樋状の形状とされ、水平面に対して下向きの勾配10°の傾斜面とされ、また、鋳鉄の流下面に潤滑剤としてBNが塗布されている。また、傾斜冷却板2の背面側には、水冷の冷却パイプが配設されて、流下する溶湯を固相率で0.1〜0.4の半凝固状態まで冷却する。傾斜冷却板2の上端側に設けた注ぎ口の近傍に注湯装置1を移動し、溶湯を注入する。傾斜冷却板2の出口側には、金型3が配置され、溶湯が傾斜冷却板2上を冷却されながら流下して金型3内に鋳込まれる。この鋳込みが完了すると、加圧装置4により直ちに半凝固状態の溶湯が加圧される。
この試験装置を使用して、試験を行った。金型3は、2種類用意した。図2(A)に示す鋳物は、円柱状鋳物用鋳型により作成された例であって、長さlが130mm、下端の直径dが20mmである。また、図2(B)に示す鋳物は円盤状鋳物用鋳型により作成された例であって、下部の最大径D1が200mm、上部の最小径D2が50mmである。なお、金型は、SKD62製で厚さ30mm程度として、金型3内に離型剤を塗布している。
円柱状金型、円盤状金型にそれぞれに鋳込む鋳鉄(供試材)は、2種類の亜共晶組成の鋳鉄を使用した。その組成を表1に示す。
円柱状金型、円盤状金型にそれぞれに鋳込む鋳鉄(供試材)は、2種類の亜共晶組成の鋳鉄を使用した。その組成を表1に示す。
また、円柱状鋳物を製作した試験条件を表2に示す。
最初に、マクロ的外観に及ぼす加圧の影響を知るために、加圧装置4を使用していない「加圧なし」の条件と、69MPaに加圧した条件での試験を行った。この試験は、供試材1の組成の鋳鉄を円柱状鋳型に鋳込んだ鋳物についておこない、そのマクロ的外観を観察した。この結果、加圧なしで凝固した場合には、半凝固スラリの粘性に対応しきれずに、溶湯の充填不良や巻きこんだガスによる気孔を生じていた。一方、69MPaに加圧したものでは、気孔の発生がほとんどなく良好な鋳物が得られていた。
次に、供試材2の組成の鋳鉄を円盤状鋳型に鋳込んだ鋳物により充填率を検討した。図2(B)において、ポイントP部での充填率を測定し、その結果を図3に示す。図3に示されるように、加圧しない場合には、注湯温度によりばらつきもあるが、ほぼ0.95以下を示した。一方、35MPa、69MPaに加圧した実施例においては、いずれも0.98以上の充填率を示し、35MPaの加圧力であっても十分なことが判明した。
次に、供試材1の組成の鋳鉄を円柱状鋳型に鋳込んだ鋳物について、金型予熱温度が及ぼす影響を検討した。図4、図5に示すように、実施例においては、金型の予熱温度を300°Cとした時に最も高い引張強さと伸びを示し、予熱をしていない20°C及び200°C程度の予熱温度では若干低い引張強さを示した。また伸びの特性については、300°Cでは4%と高く、200°Cでは3%、予熱をしていない場合には1%と明白な影響を示した。一方、加圧なしの比較例では、300°Cの予熱をしても、引張強さは200MPa、伸びは0.5%と著しく低い値を示した。
次に、加圧と熱処理が及ぼす鋳物の特性を検討するために試験を行った。
表1に示す供試材1を用いて、円柱状鋳型による鋳込み試験を行い、その後950°C、180分間、大気中で熱処理を施した。
表1に示す供試材1を用いて、円柱状鋳型による鋳込み試験を行い、その後950°C、180分間、大気中で熱処理を施した。
熱処理後の組織を顕微鏡により観察した。図6、図7は加圧無しの条件で鋳造した比較例であって、図6は腐食前の状態の黒鉛組織、図7は腐食後の組織を示す。図8,図9は加圧圧力69MPaで鋳込み後直ちに加圧した実施例であって、図8は腐食前の状態の黒鉛組織、図9は腐食後の組織を示す。
比較例と実施例との対比において、図6と図8により、加圧した実施例の方がより微細化された黒鉛粒となっていることが判明した。この理由は、鋳造直後の加圧により、析出センメンタイトが細かく分散し、その後の熱処理において炭素の拡散が容易になって、微細な黒鉛粒が多数生成したものである。また、5%ナイタル液腐食液を用いて腐食後に観察したところ、比較例の図7では、柱状のセンメンタイト地に黒鉛が分散している。これに対して、実施例の図9では、パーライトとフェライトの混合晶地に粒状の微細な黒鉛が分散していた。
これらの比較例と実施例について、引張試験と伸び試験を行った。
図10は、引張試験の結果を示し、69MPaの加圧した実施例においては、注湯温度1300、1350、1400°Cのいずれも700MPa以上の高い値を示した。一方、加圧なしの比較例では200MPa程度の低い値を示した。図11に示す伸び試験においても、加圧なしの比較例においては0.5%程度の低い伸びであったのに対して、2〜4%の高い伸びを示した。
図10は、引張試験の結果を示し、69MPaの加圧した実施例においては、注湯温度1300、1350、1400°Cのいずれも700MPa以上の高い値を示した。一方、加圧なしの比較例では200MPa程度の低い値を示した。図11に示す伸び試験においても、加圧なしの比較例においては0.5%程度の低い伸びであったのに対して、2〜4%の高い伸びを示した。
次に鋳物内部と表面との特性の変化を検討した。試験は、表1に示す供試材2を用い、図2(B)の円盤状鋳物について、図12に示すエッジ部と距離3mm離れたセンター部までの間の硬度を測定した。図13にその結果を示す。この硬度試験により、比較例の加圧なしの場合には、内部とエッジ部では、その硬度に大きな変化が見られなかった。これに対して、加圧した実施例では、内部ではビッカース硬度540Hvであったのが、エッジ部では650Hvと、表面の硬度が内部よりも高い結果が得られた。これは、加圧により、半凝固組織の間から液相が表面に押し出されて、内部よりも急冷されたものと考えられる。これにより、表層部では優れた耐摩耗性を発揮し、内部に靱性に優れた鋳鉄が得られた。なお、従来から行われている均一な溶湯を用いて鋳込む金型重力鋳造法により得られた試験結果についても併せて比較したところ、センター部とエッジ部との間に大きな硬度の変化は見られず、また加圧した場合に比べて硬度が低くなっていた。
次に、表3に示す組成の過共晶鋳鉄を用いて図2(A)に示す円柱状鋳物を作成し、亜共晶組成の場合と同様に試験を行った。試験条件を表4に示す。
熱処理後の組織を顕微鏡により観察した。図14は、加圧無しの条件で鋳造した比較例である。図15は、加圧圧力69MPaで鋳込み後直ちに加圧した実施例である。
図14と図15との対比において、黒鉛粒は加圧した実施例の方がより粒状化し、微細化されている。また、析出セメンタイト(写真において白色部分)も細かく分散していることが判明した。これらの顕微鏡写真から、過共晶組織においても、引張強度と伸びの高い鋳鉄が得られることが判明した。
1…注湯装置
2…傾斜冷却板
3…金型
4…加圧装置
2…傾斜冷却板
3…金型
4…加圧装置
Claims (3)
- 鋳鉄の溶湯を傾斜冷却板に流して半凝固状態まで冷却し、該半凝固状態の溶湯を金型内に鋳込み、鋳込み直後に加圧しながら凝固させ、その後に得られた鋳物に熱処理を施すことを特徴とする鋳造方法。
- 金型を200〜400°Cに予熱していることを特徴とする請求項1記載の鋳造法。
- 鋳鉄は炭素当量2〜4%の亜共晶鋳鉄であることを特徴とする請求項1,2記載の鋳造方法。
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JP2004315994A JP2006122971A (ja) | 2004-10-29 | 2004-10-29 | 鋳鉄の鋳造方法 |
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2004
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