JP2018012878A - 微細なBi粒子を有するAl合金とその製造方法 - Google Patents

微細なBi粒子を有するAl合金とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】「超音波エネルギーを利用した非混和性液体のエマルジョン化」という原理に基づいて、Al−Bi系アルミニウム合金において、良好な特性を有するフローゼンエマルジョン合金を提供する。【解決手段】本発明は、Bi:4.0〜9.5質量%、Mg:0.2〜0.5質量%、Zn:0.4〜2.0質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含み、残部がAlと不可避的不純物からなる成分組成を有し、Bi粒子の累積分布95%に相当する粒径で決められる平均粒径が15μm以下である、加工性に優れるアルミニウム合金である。【選択図】図7

Description

本発明は、フローゼンエマルジョン型のAl合金とそれを溶製法により製造する方法に関する。とくに微細なBi粒子を有するAl合金とその製造方法に関する。
フローゼンエマルジョン(frozen emulsion)型の合金は、鋳造複合材料の範疇に属する合金材料である。一般に、鋳造複合材料とは、金属マトリックス中に、固体粒子、ウイスカー、長繊維等のナノサイズ又はミクロンサイズの第2相が分散する複合組織を有する材料であって、鋳造法により製造されたものをいう。フローゼンエマルジョン合金は、マトリックス相を構成する非混和性液相内において、この液相とは別種類の非混和性液相をエマルジョン化させて形成した液滴が微細に分散した後、これら液相を迅速に凝固させることにより得られる複合材料である。
フローゼンエマルジョン合金は、様々な用途への適用が可能である。例えば、アルミニウム基の軸受合金、熱応力緩和材、応力緩衝材等の用途を例示できる。しかしながら、従来、フローゼンエマルジョン合金は、その製造が困難であるため、汎用的な材料とされていなかった。そのため、フローゼンエマルジョン合金を簡便かつ安価に供給可能な製造方法が望まれている。
フローゼンエマルジョン合金を製造する際、金属溶湯をエマルジョン化する処理が行われる。溶湯撹拌としては、機械的手段による撹拌や超音波照射による撹拌が考えられる。しかしながら、アルミニウム合金の製造において超音波照射でエマルジョン化し、アルミニウム基フローゼンエマルジョン合金を作製した試みは、国内外を問わず、皆無である。
一方、AlとPbとは相互に非混和性の成分である。Al−Pb系溶融合金を超音波処理で撹拌し、凝固組織が得られたことについて、以下のような報告がある。
非特許文献1(Materials Letters,29(1996),p67−71)は、Al−Pb−Sn合金に関して記載されている。非特許文献1によると、Si(1〜6%)またはCu(1〜6%)を添加されたAl−10%Pb−10%Sn合金を溶融して高温(1500K)で保持した後、溶湯を100〜400K/minの速度で冷却し、凝固させた。冷却の間、溶湯中に超音波を照射し、それと同時に溶湯の電磁撹拌を行った。その結果、アルミニウム基マトリックスに、3〜8μmのPb−Sn系粒子が均一に分散された複合材料が得られた旨、報告されている。
しかしながら、非特許文献1には、主にSnを構成する30μm以上の粗大粒子が存在することも報告されている。非特許文献1の製造方法は、高温で溶解する必要があること、電磁撹拌を適用する必要があることから、製造コストが増大するなどの課題があり、実用化は困難である。
非特許文献2(Journal of Materials Science Letters,17(1998),p259−260)によると、Al−16%Pb合金を973Kで溶融した後、溶湯中にTi合金製ホーンを浸漬させ、周波数20kHz、振動振幅25μmの条件下で超音波処理を行った。凝固させた後、ミクロ組織の観察を行い、アルミニウムマトリックスに均一分散したPb粒子のサイズは、10μmを超えないことが確認された旨、報告されている。
しかしながら、非特許文献2は、製造された合金量、超音波ホーンの直径と浸漬深さ等の凝固鋳造条件について報告されていない。また、非特許文献2で使用されたTi合金製ホーンは、アルミニウム溶湯中で溶損するため、ホーン寿命の短縮や溶湯の汚染等の問題が引き起こされる。
ところで、アルミニウム基軸受合金は、耐摩耗性及びなじみ性が高く、自己潤滑性及び耐疲労性に優れることから、自動車のエンジン用すべり軸受やトランスミッション用軸受などの輸送機械用部品、冷蔵庫やエアコン等のコンプレッサー用軸受などの電気機械用部品への応用が図られてきた。これまで、数多くのアルミニウム基軸受合金及びそれらの製造方法が開発されてきた。
一般に、アルミニウム基軸受合金は、マトリックス強度、靭性、耐摩耗性などで優れた特性を得るために、Cu,Si,Mn,Ni,Fe,Crなどの合金元素を添加し、自己潤滑性、なじみ性や非焼付性を向上させるために、軟質元素のSnまたはPbが添加される。他方、Snを含有するアルミニウム基軸受合金は、自己潤滑機能が十分に発揮されないため、必要な耐摩耗性と非焼付性を得るために、Sn含有量を12wt%以上にする必要がある(例えば特許文献1を参照)。
しかしながら、高Sn含有量のアルミニウム基軸受合金の特性、例えば耐疲労性および耐熱性には限界がある。その理由としては、凝固時に、アルミニウム結晶粒界にネットワーク状のAl−Sn系晶出物が生成するためであると考えられる。その結果、比較的高温では、これらの合金の耐荷重能力が相当に低下する(例えば特許文献2を参照)。
Al−Pb系軸受合金は、Al−Sn系軸受合金に比べて優れた耐摩耗性を有する。しかしながら、近年の環境問題により、Pb含有合金の使用が制限されている。また、AlとPbの比重差が非常に大きいため、従来のAl−Pb系軸受合金の製造法では、十分なPb含有量の軸受合金を得ることが困難である。
そこで、SnとPb以外の元素を用いることが従来から検討されている。上述のような自己潤滑性、なじみ性、非焼付性などの特性を有する合金元素として、ビスマス(Bi)が知られている。しかしながら、Al−Bi系軸受合金について報告された文献は、極めて少ない。以下、本発明に関連する文献を紹介する。
特許文献1(特表2008−542548号公報)には、偏晶アルミニウム滑り軸受合金に関して記載されている。当該文献によると、その合金の製造において、好ましくは、およそ7〜12重量%のビスマスと、3〜6重量%の亜鉛と、2〜4重量%の銅と、さらにマンガン、バナジウム、ニオブ、ニッケル、モリブデン、コバルト、鉄、タングステン、クロム、銀、カルシウム、スカンジウム、セリウム、ベリリウム、アンチモン、ホウ素、チタン、炭素およびジルコニウムのうち1以上の成分を合計で5重量%以下と、100重量%にするアルミニウムとを含む溶湯を用意し、5〜1000℃/sの冷却速度でストリップ鋳造が行われた。鋳造後に圧延または圧延接合(圧延被覆)を行い、その後、およそ270〜400℃の熱処理が行われた。上記圧延または圧延接合によって延伸された長いビスマス粒子またはシートは、上記熱処理により、再凝固し、20μm以下のサイズをもつ微細分布した球状溶滴を与えることができる。
特許文献2(特開平11−335760号公報)には、アルミニウム−ビスマス軸受合金及びその連続鋳造方法に関して記載されている。特許文献2によると、少なくとも5wt/wt%のビスマスを含有するビスマス均一分布アルミニウム合金であって、前記ビスマスは、該合金当たり約3.5wt/wt%が直径5μm以下の非常に小さい粒子の形態で分布し、該合金当たり少なくとも2wt/wt%を構成するビスマスが直径10〜40μmの球状粒子の形態で分布し、かつ、これら非常に小さい粒子と球状粒子とがアルミニウムマトリクス全体に均一に分布してなるアルミニウム合金が記載されている。当該アルミニウム合金の製造方法は、(a)前記合金の成分を少なくとも、単相の溶融合金溶液が得られる温度まで加熱溶融する工程と、(b)所定量の核を添加する工程と、(c)凝固装置に前記溶融した合金を連続的に導入する工程と、(d)前記溶融した合金に所定強度の電場と磁場を互いに交差するように方向づけて作用させて、アルミニウムマトリクス中でのビスマス粒子の分離が起こらないようにし、その中のビスマス粒子の重力による分離をゼロに減少させる工程と、(e)前記溶融物を凝固温度まで30冷却する工程と、(f)凝固装置から凝固した合金を連続的に取り出す工程を含む方法である。
特許文献3(特開2001−152210号公報)には、ビスマスが3〜50容積%であり、残部の97〜50容積%がAlからなる合金、またはビスマスが3〜50容積%であり、残部の97〜50容積%がAl97重量%、Mg3重量%の組成からなるAl−Bi系焼結軸受合金に関して記載されている。上記の組成は、重量換算すると、ビスマスが10.2〜78.7重量%、残部アルミニウムの合金、またはビスマスが26.8〜78.7重量%、マグネシウムが0.6〜2.7重量%、残部アルミニウムの合金に相当する。当該Al−Bi系焼結軸受合金は、この組成範囲内で、ビスマスが約40容積%の場合に最も小さい比摩耗量を示している。
非特許文献3(J.Mater. Sci.Technol.,(2010),26(2),p136−140)には、Al合金の凝固組織に及ぼす過熱温度の影響について報告されている。当該文献によると、Al−4Bi−2.5Co合金の溶湯を、過熱温度830〜1130℃範囲内で30分間保持した後、750℃まで急冷し、その温度で8分間保持する。その後、方向性凝固を行い、合金の凝固組織に及ぼす過熱温度の影響について調べられた。過熱温度が上記の範囲内で増加するにつれて、Bi粒子の平均直径が4μmから1.6μmまで減少したことが確認された。また、最高過熱温度1130℃においても直径60μmのBi粒子が存在することを示している。
特表2008−542548号公報 特開平11−335760号公報 特開2001−152210号公報
V.O.Abramov, O.V.Abramov, F.Sommer and D.Orlov: Materials Letters, 29(1996),p67−71 Feng Chen and Guangji Shu: Journal of Materials Science Letters, 17(1998),p259−260 Jie He, Chengyao Xing, Jiuzhou Zhao and Lei Zhao: J.Mater. Sci.Technol.,(2010),26(2),p136−140
[I]従来の軸受合金に関する問題点
しかしながら、上述した従来のAl−Bi系のアルミニウム基軸受合金およびその製造方法は、次の(i)〜(iii)の短所を内包する。
(i)Bi含有量の高い合金の製造において、鋳造前の段階では、溶湯を混和温度より50〜60℃高い温度に加熱保持させる必要がある。例えば、Al−12wt%Bi二元合金の場合は、図1に示す状態図によると、均一な液相を呈する温度が約830℃であるから、Al−Bi合金の混和温度としては、830℃以上の範囲になる。50〜60℃の過熱度を考慮すると、溶湯の保持温度は、約900℃に設定される。このような高温に溶湯を保持する場合、(a)エネルギーコストの上昇に加えて、耐火物の損傷が大きくなり、炉修繕に要するコストも上昇する、(b)保持炉の耐火物が損傷を受けることによって溶湯の汚染が発生する、(c)Biの揮発性が高いため、溶湯の加熱保持中にBiの一部が溶湯から蒸発する、という諸問題が生じる。
(ii)鋳造工程では、凝固時に生成されるBi粒子は、相対的に比重が高くて沈降するので、Bi粒子の偏析を発生させる恐れがある。当該偏析の発生を防止するために、極めて大きい冷却速度で冷却させる必要がある。しかしながら、このような高速冷却が可能な実用的なプロセスは少ない。また、溶湯保持炉から溶湯を鋳型へ供給する間に、溶湯の温度低下に伴ってBi粒子の生成および沈降が開始するので、その対策も必要である。
(iii)焼結による軸受合金の製造は、多数の手順を有するため、コストが高くなる。また、製造原料が粉末であるから、粉末粒子の表面に酸化膜などのコンタミネーションが発生し、粒子同士間の接合性を劣化させる可能性がある。
[II]熱応力緩和材に関する課題
熱応力緩和性を有する熱応力緩和材は、一般的に、発熱部品の冷却装置で使用される部材であって、特に熱膨張係数が異なる部品を組み合わるときは、部品間の熱応力を緩和するため、中間材として部品間に設けられる。例えば、半導体技術分野では、半導体素子(シリコンチップ)と金属放熱板(銅、アルミニウム等)との間で熱膨張係数の差が3〜4倍以上に達する。この差によって生じる熱応力に起因して半導体素子が割れるのを防止するため、熱応力緩和材が使用される。この熱応力緩和材は、Si,Cu,Alの各素材と接するので、当該素材との高接合性、高なじみ性が要求される。さらに、高延性、低熱膨張係数、低剛性、耐ヒートサイクル性等の特性を満たす必要もある。熱応力緩和材にはこのような課題がある。Biは、その熱膨張係数と剛性がAlに比べて低いことから、BiをAlに添加したAl−Bi系合金は、熱応力緩和材に適用される可能性があるものの、そのような実用例は知られていない。
本発明は、軸受材、熱応力緩和材などに使用される合金材料に関して、上述の課題を解決するため、「超音波エネルギーを利用した非混和性液体のエマルジョン化」という原理に基づいて、Al−Bi系アルミニウム合金において、良好な特性を有するフローゼンエマルジョン合金を提供すること、また、当該合金を効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、相互非混和性を有する溶融Al合金と溶融Biの間の界面へ強力超音波を照射することにより、溶融Al合金中にミクロンサイズのBi液滴を短時間で、かつ均一に分散させて凝固できることを見出した。このような知見に基づき、Bi粒子がAlマトリックスに微細に分散した凝固組織を備えた合金、および当該合金の製造方法について検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
(1) 本発明は、Bi:4.0〜9.5質量%、Mg:0.2〜0.5質量%、Zn:0.4〜2.0質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含み、残部がAlと不可避的不純物からなる成分組成を有し、Bi粒子の累積分布95%に相当する粒径で決められる平均粒径が15μm以下である、加工性に優れるアルミニウム合金である。
(2) 本発明は、2.0〜5.5質量%のBiと不可避的不純物を含有するアルミニウム合金溶湯を用意し、平衡温度Tより50℃以上高い温度で溶解した当該溶湯に当該Biショットを添加して、所定組成のアルミニウム合金溶湯を得た後、当該アルミニウム合金溶湯に超音波照射してエマルジョン化処理を行い、その後、鋳造凝固する、加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(3) 本発明は、前記アルミニウム合金溶湯は、さらに、Zn:0.4〜2.0質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含有する、上記(2)に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(4) 本発明は、前記アルミニウム合金溶湯は、さらに、0.2〜0.5質量%のMgを含有する、上記(2)または(3)に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(5) 本発明は、鋳型ヘッダ内または鋳型直前の移湯樋部分に、キャビテーション処理用チャンバーが設けられた鋳造手段を用いて、前記チャンバー内にアルミニウム合金溶湯を通過させる、上記(2)〜(4)のいずれかに記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(6) 本発明は、前記キャビテーション処理用チャンバー内に超音波ホーンが設けられた鋳造手段を用いて、前記ホーン先端付近にキャビテーションの強い領域を形成し、アルミニウム合金溶湯の少なくとも8割以上の量が前記領域を通過する、上記(5)に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(7) 本発明は、前記領域は、超音波ホーンの先端の直下および周囲の溶湯部分に形成される、上記(6)に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(8) 本発明は、前記チャンバー内には、溶湯を通過させると同時にビスマスを添加しながら、ホーン先端と前記キャビテーション処理用チャンバー中のBi浴面との間の距離を20mm以下に維持する、上記(6)または(7)に記載されたBi粒子の微細組織を有するアルミニウム合金の製造方法である。
(9) 本発明は、前記ホーンの先端の振動振幅は、40μm(p−p)以上に維持する、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法である。
(10) 本発明は、上記(2)〜(9)のいずれかに記載された製造方法で使用されるアルミニウム合金溶湯である。
本発明によれば、溶融Al合金中にミクロンサイズのBi液滴を短時間で、かつ均一に分散させて凝固できる。得られたAl−Bi合金は、Alマトリックス相内にBi粒子が微細に分散した組織を有しており、塑性加工時の加工性が良好である。そのため、薄いシートや複雑形状に成形することができる。
本発明の合金を製造する際、溶湯を過度に加熱保持する必要がないので、溶湯保持容器の耐火物損傷が抑制される。大きな冷却速度を必要としないので、大掛かりな設備を必要としない。溶製法により製造するので、焼結法における粉末表面の酸化を避けることができ、良好な機械的特性を有する合金材料が得られる。
Al−Bi合金の状態図を説明するための図である。 水−ガリウム系で超音波処理を行った実験を説明するための図であり、(a)は、実験装置を示す図であり、(b)は、超音波ホーンとの距離による影響を示す図である。 図2の実験で得られたGa液滴の外観を示す図である。 Al−Bi溶湯におけるBi液滴の沈降速度とBi液滴径との関係を示す図である。 本発明に係るフローゼンエマルジョン合金を製造するための装置を示す模式図である。(a)は、エマルジョン化用チャンバーを鋳型ヘッダ内に設置した例を示す図であり、(b)は、エマルジョン化用チャンバーを移湯樋部分に設置した例を示す図である。 キャビテーション強度と振動振幅との関係を示す図である。 実施例1の合金サンプルのミクロ組織写真を示す図である。 実施例1の合金サンプルのBi粒子の累積分布を示す図である。 実施例1のAl−Bi合金に生成された化合物及び粒子の外観を示す図である。 本発明に係る実施例で使用した試験装置を示す模式図である。 実施例の摩耗試験で使用された摩耗子の形状を示す図である。 比較例1のAl合金のミクロ組織を示す図である。 比較例2−2のAl−20Sn−1Cu合金のミクロ組織を示す図である。 実施例の圧延性に関する評価例を示す図である。(A)が良好(○)、(B)が普通(△)、(C)が不適(×)の例を示す。
以下、本発明の実施形態について説明する。この説明は、本発明の範囲を限定するものではない。
(超音波エネルギーを利用したエマルジョン化)
本発明は、「超音波エネルギーを利用した非混和性液体のエマルジョン化」の原理を利用したものである。当該超音波エネルギーを利用したエマルジョン化とは、次の三つの現象を利用する処理方法を指している。
(1)音響キャビテーション
液体中で超音波が照射された際の振動振幅が閾値(しきいち)を超えた場合、液体中で無数の気泡が発生する。当該気泡は、膨張及び圧縮を繰り返し、条件によっては崩壊する。このような現象を「音響キャビテーション」という。気泡の崩壊は、液体中で高速マイクロジェット及び衝撃波の発生を引き起こす。相互非混和性を有する2つ液体間界面の近傍において上記の高速マイクロジェット及び衝撃波が発生すると、界面近傍の液体中に他の液体の微細な液滴が生成され、エマルジョンと呼ばれる状態となる。
(2)音響流
音響流は、超音波エネルギーが液体の粘性、熱伝導性等により消散し、それによって液体中に生じる定常流である。音響キャビテーションにより生成された液滴は、音響流により界面から液体内に移動し、均一に分散される。
(3)超音波照射による熱発生
超音波照射の振動振幅が高い条件においては、超音波ホーンの直下で極めて多数のキャビテーション気泡が生成される。当該気泡が短期間で崩壊するとき、局部的な高温場が瞬間的に発生する。例えば、水の場合、キャビテーション気泡の崩壊時の局部的温度は、2500〜3000Kまで上昇することが一般的に知られている。このような局所的な発熱により、ホーン直下の液体中の温度は、その周辺液体の温度と比べて高くなる。その結果、温度の高いキャビテーション領域から周辺液体への熱移動が起こる。これが超音波照射による熱発生の機構である。
(液体間界面張力及び比重差)
さらに、エマルジョン化の効率に影響する要因としては、「液体間界面張力」、「比重差」が考えられる。
まず、液体間界面張力について検討する。界面張力の増大にしたがい、エマルジョン化が進み難くなることが一般に知られている。例えば、水−ガリウム系は、220mJ/mという大きな界面張力を有する。水中でガリウムをエマルジョン化させるのに必要な超音波振動振幅(キャビテーション強度)は、水−油系(界面張力30mJ/m)に比べてとても高い。また、エマルジョン化が可能であるとしても、ガリウムと水の比重差が大きいため、水中のガリウム液滴は急速に沈殿する傾向にある。
しかしながら、水−ガリウム系のようなエマルジョン化が難しい材料系であっても、強力な超音波を利用することによりエマルジョン化を十分に行うことができる。それを確認するために、超音波照射を用いた予備的な試験を行った。この予備的試験について、以下で説明する。
(予備的試験)
ガラスビーカー24内に約90gのガリウム(融点約30℃)を入れ、シートヒーター22により約50℃まで加熱し、ガリウムを液状にした後、約250ccの水を静かに注いだ。ガラスビーカー24内には、水(HO)25の層とガリウム(Ga)26の層の2層に分かれた液体が形成される。図2の(a)に示すように、チタン合金製の超音波ホーン23(先端径48mm)を上層の水25の中に浸漬させた。当該ホーン23は、その先端を、水25とガリウム26との界面27から一定の距離Hとなる位置で固定された。ビデオを撮影しながら、振幅46μm(p−p,空気中測定)の超音波(約20kHz)を当該界面へ照射した。
撮影後のビデオ記録によると、水とガリウム間の界面近傍では、水中にガリウム液滴が混合する様子を視認できた。目視により水の濁りを観察し、この濁りの程度を定性的に評価した。本明細書では、当該濁りの程度を「エマルジョン程度」と称する。そして、超音波ホーン先端とHO−Ga間界面との距離Hを変化させて、同様に「エマルジョン程度」を評価した。その結果を図2の(b)に示す。図2(b)に示すように、ホーン先端がHO−Ga間界面に近接するにともない、エマルジョン程度が大きくなる傾向にあり、距離Hが20cm以内では、「エマルジョン程度」が急激に大きくなり、水中におけるガリウムのエマルジョン化が促進されることが分かった。
また、上記照射後の水のサンプルを採取し、光学顕微鏡によりガリウム液滴の観察を行った。図3に当該ガリウム液滴の外観を示す。図3のように、当該液滴の大多数は、直径10μm未満の微細形状を示していた。
表1に、水−ガリウム(HO−Ga)系とAl−Bi系における、界面張力、密度の相対比を示す。Al溶湯とBi溶湯との間の界面張力(48mN/m)は、水−ガリウム系の界面張力(220mN/m)と比べて非常に低いレベルにある。そのため、Al−Bi系では、エマルジョン化処理を効率良く実施できることが期待される。その一方で、表1の密度相対比に示すように、AlとBiとの比重差が大きいので、超音波処理で生成されたBi液滴が短時間でAl溶湯中を沈降し、Bi液滴のエマルジョン化を困難になる恐れが考えられる。
そこで、Bi液滴の沈降速度Uを算出した。理論上の沈降速度Uは、以下の式(1)で表わすことができる( R.Clift,J.R.Grace and M.E.Weber,「Bubbles,Drops,and Particles」, R.Clift,J.R.Grace and M.E.Weber,Academic Press New York,1978,p.33)を参照)。
式(1)において、gは重力加速度(m/s)、dは液滴径(m)、ΔρはBi及びAlの密度差(kg/m)、μは溶融Alの動的粘性率(Pa・s)、κは溶融Bi及び溶融Alの動的粘性率の比である。
図4は、700℃および800℃のAl−Bi溶湯におけるBi液滴の沈降速度U(cm/s)、上記の式(1)により算出し、Bi液滴径d(μm)に対してプロットしたものである。図4から判るように、沈降速度Uは、Bi液滴径dの増加にともなって速くなる傾向にある。また、溶湯の温度増加とともに若干速くなる傾向にある。例えば、溶湯が800℃である場合、Bi液滴径dが20μmを超えると、沈降速度Uは、0.2cm/sec以上に増大している。
よって、Al−Bi合金のエマルジョン処理における重要な技術課題は、Bi液滴径の微細化であるといえる。この点で、本発明が提供する処理により、Al−Bi溶融合金のAl−Bi界面に対して強力なキャビテーション場と高温場が付与されるので、Al−Bi合金溶湯中のBi液滴のエマルジョン化が著しく促進され、Al溶湯中に分散されたBi液滴は、平均直径10μm未満の微細サイズで形成することができる。本発明によると、微細なBi液滴がAl溶湯中を沈降せずに、Al溶湯とともに鋳型内へ供給され、Bi粒子が微細かつ均一に分散された凝固組織を有するアルミニウム合金が得られる。
以上によると、本発明におけるAl中でのBiのエマルジョン化は、次のような機構および工程で進行すると考えられる。
(i)強力キャビテーションによる物理的エマルジョン化が進行する。
(ii)界面近傍の温度の局部的上昇に伴い、Al−Bi界面張力がさらに低下し、エマルジョン化しやすくなる。
(iii)界面近傍での温度が局部的に上昇し、Al溶湯中に溶解されるBi濃度が一時的に高まり、高Biアルミニウム溶湯が生成される。当該高Biアルミニウム溶湯がキャビテーション領域から離れて冷却領域へ移ると、当該溶湯の温度が低下し、溶湯中に微小なBi滴が生成される。
さらに、添加元素の作用について、以下に説明する。
Bi:2.0〜5.5質量%
Biは、2.0質量%未満であると、十分な自己潤滑性が得られない。その一方で、5.5質量%を超えると、Al合金における濃度の不均一性が増大し、塑性加工時の延性及び圧延性が低下する。そのため、Biの含有量は、2.0〜5.5質量%が好ましい。
Mg:0.2〜0.5質量%
Mgは、0.2質量%未満の添加であると、一次Bi粒子の核生成剤としての機能が低減する。その一方で、Zn及びCuが共添加される場合、Mgが0.5質量%を超えて添加されると、Al合金の強度が過度に高まるため、軸受け性、なじみ性が低下する。そのため、Mgの含有量は、0.2〜0.5質量%が好ましい。
Zn:0.4〜2.0質量%
Znは、0.4質量%未満であると、十分な自己潤滑性が得られない。また、Alマトリックスの強化、マトリックスとBi粒子と間における結合改善の効果が低減する。その一方で、MgとCuが共添加される場合、Znが2.0質量%を超えて添加されると、Al合金の強度が過度に高まるため、軸受け性、なじみ性が低下する。そのため、Znの含有量は、0.4〜2.0質量%が好ましい。
Cu:0.2〜1.0質量%
Cuは、0.2質量%未満であると、Alマトリックスの強化、マトリックスとBi粒子との間における結合改善の効果が低減する。その一方で、MgとZnが共添加される場合、2.0質量%を超えて添加されると、Al合金の強度が過度に高まるため、軸受け性、なじみ性が低下する。そのため、Cuの含有量は、0.2〜1.0質量%が好ましい。
不可避的不純物には、Siが挙げられる。
本発明は、Al−Bi系溶融合金及び超音波処理に関して、次のような特徴を利用している。
(1)アルミニウム溶湯と溶融ビスマスとの間の界面張力が比較的低いため、エマルジョン化しやすい。
(2)溶湯温度を上げると、Al−Bi界面張力がさらに減少する。
(3)溶湯温度を上げることにより、Al−Biの相互溶解度が増加する。
(4)Cu,Zn等の元素をアルミニウムに添加した際、Al−Biの相互溶解度及びその温度依存性は、さらに高まる。(CuまたはZnにおけるBi溶解度は、AlにおけるBi溶解度と比べて高いことから、AlにCuまたはZnを添加すると、Al中のBi溶解度も高くなると考えられる。)また、CuとZnは、Al及び溶融Biの双方に溶解するので、Bi粒子とAlマトリックスとの結合を改善する。
(5)凝固するときには、多くの金属元素では収縮するのに対し、Biは、膨張する。Biのその特性は、Bi粒子とAlマトリックスとの結合において重要な役割を果たす。
(6)Si,Fe,Ni,Ti等の添加元素を含有する溶湯が強力キャビテーション領域を通過するときに、Al−Si−Fe,Al−Si−Ni等の金属系化合物は、効率よく微細化される。微細化された組織を有する鋳造材は、塑性加工される際に延性(伸び)の向上が可能となる。
(7)微細化剤として添加されたTiB,TiCの粒子は、強力キャビテーション領域を通過するときに、溶湯中で効率よく分散され、α−アルミニウム結晶が微細化される。微細化された組織を有する鋳造材は、塑性加工性が向上する。また、共晶温度以下の温度で凝固されるビスマス粒子を微細化させる。
(合金溶湯の溶融温度)
本発明に係る製造方法は、2.0〜5.5質量%のBiと不可避的不純物を含有するアルミニウム合金溶湯を用意し、その溶湯に当該Biショットを添加して所定組成のアルミニウム合金溶湯を得た後、当該アルミニウム合金溶湯に超音波照射してエマルジョン化処理を行い、その後、鋳造凝固するものである。アルミニウム合金溶湯は、確実に単一相とするため、平衡温度(T)より50℃程度以上高い温度で溶融することが好ましい。
(超音波を利用した鋳造装置)
本発明に係る超音波処理を適用した鋳造装置の一例を、図5に示す。図5の(a)は、ホットトップ式鋳造法による製造において、エマルジョン化用チャンバーを鋳型ヘッダ内に設置した装置を用いた例である。エマルジョン化用チャンバー14内には、保持炉(図示しない)からAl−Bi合金溶湯1が供給されるとともに、さらに所定量のBiショット2が添加される。追加添加されたBiショット2が下方に沈降し、Bi濃度の高いAl−Bi合金溶湯3が当該チャンバーの下層領域に形成される。当該チャンバーの上方から超音波ホーン11が浸漬している。超音波ホーン11から所定の振動振幅で超音波が照射されると、当該ホーン11の先端の直下および近傍には、上記のAl−Bi合金溶湯3に対して強いキャビテーション作用を引き起こす領域6が形成される。当該領域6のキャビテーション作用によって、上記Al−Bi合金溶湯3中において、Bi液滴のエマルジョン化が行われる。その後もAl−Bi溶融合金1及びBiショット2が供給されるので、エマルジョン化されたBi液滴を含むAl−Bi合金溶湯4は、当該チャンバー14の側壁に設けられた開口15を通じて、鋳型ヘッダ12内へ流出する。流出したAl−Bi合金溶湯4は、鋳型ヘッダ12に接した箇所から凝固を開始し、外殻が形成された凝固体が形成される。当該凝固体は下方に引き出され、鋳型ヘッダ12と隣接する冷却部13に接することにより、内側全体にわたって凝固が進行し、Bi粒子が微細に分散した組織を有するAl−Bi合金インゴット5が形成される。
図5の(b)は、鋳型ヘッダの直前に移湯桶部を配置した形式の鋳造装置において、エマルジョン化用チャンバーを当該移湯桶部に設置した例である。エマルジョン化用チャンバーは、隔壁18で2室16、17に区分されており、一方の溶湯導入室17が保持炉(図示しない)に接続しており、他方のエマルジョン化室16が鋳型ヘッダ12に接続している。エマルジョン化室16のAl−Bi合金溶湯中には、超音波ホーン11が浸漬している。Al−Bi合金溶湯1は、保持炉から導入室17に供給され、隔壁18に設けた接続口19を通じてエマルジョン化室16へ流入する。エマルジョン化室16では、さらに所定量のBiショット2が添加され、エマルジョン化室16の下層領域に、所定組成のAl−Bi合金溶湯3が形成される。超音波ホーン11の先端付近に生成されるキャビテーション領域6で、Al−Bi溶湯3においてBi液滴のエマルジョン化が行われ、エマルジョン化されたBi液滴を含むAl−Bi合金溶湯4は、鋳型ヘッダ12内に流入して凝固し、冷却部13を通過し、Bi粒子が微細に分散した組織を有するAl−Bi合金インゴット5が形成される。
超音波ホーン先端の直下およびその付近には、金属溶湯に対するキャビテーション作用を発生する領域(以下、「キャビテーション領域」ということもある。)が形成される。Al合金溶湯は、キャビテーション領域を通過するときにBi液滴のエマルジョン化が行われる。その後、溶湯の流れにしたがい、エマルジョン化されたBi液滴を有するAl溶湯は、鋳型内へ移動する。キャビテーション領域を通過する溶湯量が多いほど、エマルジョン化されたBi粒子は、効率よく鋳型内へ移動できる。そのため、Biを含有するAl溶湯は、その8割以上がキャビテーション領域を通過させることが好ましい。
キャビテーション領域のうちホーン先端に対向する部分とホーン先端との距離は、20mmを超えると、金属溶湯に対して十分なキャビテーション作用を付与できないので、Biを微細にエマルジョン化した溶湯が得られず、エマルジョン化効率が低下する。そのため、上記の距離は、20mm未満が好ましい。より好ましくは、15mm未満である。
超音波振動の振幅が大きいと、キャビテーション作用が増大し、強いキャビテーション場を形成できる。そのため、超音波振動の振幅は、40μm未満であると、Al溶湯におけるBiのエマルジョン化効率が低下するため、40μm以上が好ましい。
超音波を照射するホーンは、セラミックス製ホーンまたは金属製ホーンを使用できる。金属製ホーンは、振動振幅が高くなると、ホーン先端のエロージョンが進行し、溶湯の汚染を招く可能性がある。耐溶損性に優れるセラミックス製ホーンが好ましい。
エマルジョン化処理が施されるAl−Bi合金溶湯は、キャビテーション領域を通過する前に所定量のBiを添加して所定組成の溶湯に調製される。当該Biの添加は、Al溶湯またはAl合金溶湯に対して添加される。ある程度のBiを含有するAl合金溶湯にBiを追加して添加することもできる。
本発明のAl−Bi系フローゼンエマルジョン合金は、軸受合金、熱応力緩和材などに使用することができる。
熱応力緩和材としては、以下の利点がある。
(1)ビスマスの熱膨張係数(CTE)及び剛性(ヤング率E)は、アルミニウムのそれよりも低い。アルミニウムは、CTEが24〜27μm/m/℃、ヤング率Eが68GPaであるのに対し、ビスマスは、CTEが13.3μm/m/℃、ヤング率Eが31.7GPaであり、アルミニウムの数値よりも低い。
(2)Si,Ca等の元素を添加することにより、Al合金の熱膨張係数および剛性を減少させることが可能である。
(3)アルミニウムは、Cu,Si等の元素を固溶できる限度(固溶限)が大きく、これらの元素と合金化し易い。そのため、Al基合金からなる熱応力緩和材は、発熱部品、熱交換器等に取り付ける際に、アルミニウム系ろう材によるろう付けの接合性に優れる。
以下に、本発明の実施例について説明する。本発明の内容は、この説明により限定されない。まずは、予備的な試験として、以下の試験例1、2を行った。
(試験例1: ホーン先端直下の温度変化に関する試験)
アルミニウムを電気炉により坩堝内で730〜750℃で溶解した後、予熱されたセラミックスホーンの先端(直径48mm)を深さ10mmで溶湯中に浸漬させた。ホーン先端にKタイプの熱電対(φ1.6mm)を固定した。超音波を断続的に照射しながら、上記の熱電対により溶湯温度を測定した。測定された溶湯温度を用いて、超音波の照射されていないときの溶湯温度に対する温度増加を算出した。
ホーン端面と熱電対の間の距離は、10mm、20mm、30mmで、また、超音波照射の振動振幅は、27μm、44μm、60μmで、それぞれ変化させて測定した。これらの測定結果を表2に示す。
表2から分かるように、ホーン端面と熱電対との距離が30mmの場合は、振動振幅が高い条件であっても温度増加がほとんど生じない。一方、上記の距離が小さい場合、とくに10mmの場合は、振動振幅の増加とともに温度増加が大きくなる。
超音波照射による発熱の原因については、上述したとおりである。すなわち、超音波照射の振動振幅が高い条件においては、超音波ホーンの直下で極めて多数のキャビテーション気泡が生成される。当該気泡が短期間で崩壊するとき、局部的な高温場が瞬間的に発生する。その結果、超音波ホーン直下の液体中の温度は、その周辺液体の温度と比べて高くなり、キャビテーション領域から周辺液体へ熱移動が起こる。
(試験例2: ホーン先端直下のキャビテーション強度に関する試験)
上記の試験例1と同様に、アルミニウムを坩堝内で溶解して、溶湯中にセラミックスホーン先端を浸漬させた。超音波ホーンの先端の下方にキャビテーション強度測定装置のプローブ(長さ500mm、直径4mm)の先端を設置した。超音波ホーン先端から20mm、40mm、60mmの各距離で離れた地点におけるキャビテーション強度を測定した。振動振幅を25〜60μmの範囲で変化させて測定した。各測定において、データ集録システムを適用し、500k」Hzのサンプリングレートで測定データを収集した。この試験で使用された上記のキャビテーション強度測定装置は、ロシア科学アカデミーで開発されたものであり、0.3MHz以下の周波数において音圧を含む総合雑音レベルの測定が可能である。本明細書では、上記のキャビテーション強度測定装置により測定された総合雑音信号レベルを、キャビテーション強度という。
測定データの一例を図6に示す。図6の縦軸は、キャビテーション強度に比例する測定装置の出力値(mV)を示し、横軸は、振動振幅(μm,p−p)を示す。この振動振幅では全振幅(peak to peak)の数値を示している。20,40,60mmの各距離で測定されたキャビテーション強度が、ホーン先端の振動振幅に対してプロットされている。図6によると、ホーン先端からの距離が短いときのキャビテーション強度は、振動振幅が大きくなるにしたがい上昇する傾向を示している。
他方、ホーン先端からの距離が長くなると、上記と逆の傾向を示すことが分かる。とくに、当該距離が60mmの場合は、振動振幅の増加とともにキャビテーション強度が低下する。この低下傾向を示した理由は、次のように推測される。振動振幅が大きくなるにつれて、超音波ホーン先端の直下または周辺で生成されるキャビテーション気泡は、その個数密度が劇的に上昇する。そのため、超音波ホーンの先端が上記の気泡群で取り囲まれることにより、超音波振動が大きく減衰したと考えられる。つまり、振動振幅が大きい条件下では、ホーン先端の近傍では非常に強いキャビテーション領域が発生するものの、その領域の長さはとても短いため、キャビテーション強度が低下したと考えられる。
(機械的特性、硬度、圧延性に関する測定)
ブックモールド(金型、190×150×30mm)に鋳込んだインゴットの中央部を切り出し、JIS14B試験片を作製した。当該試験片を用いて、As−cast合金の引張強さ、耐力、伸びを測定した。
また、インゴット中央部から150×30×15mmのブロックを切り出し、面削した後、1回のパスで圧延材の厚さが0.5〜0.7mmの範囲内で変化する冷延条件において、複数回のパスで冷間圧延を行い、厚さ15mmのブロックから厚さ2mmの板材を作製した。この板材における亀裂の有無等を目視で観察し、合金の圧延性に関する評価を行った。上記の圧延材の状態に応じて、圧延性を良好(○)、普通(△)、不適(×)と判定した。その一例を図14に示す。
次いで、当該板材からJIS14B試験片を切り出した。そのうち、一部の試験片に対しては、さらに熱処理(1時間、200℃)を施した。熱処理を施した試験片と熱処理を施さなかった試験片の両方を用いて、JISZ2241に準じて引張試験を行い、引張強さ、耐力、伸びを測定し、これらの機械的特性について評価した。同様の試験片を用いて、硬度(HV50:ビッカース硬度、試験荷重50kg)を測定した。
(摩擦係数と摩耗量に関する測定)
As−castのインゴットから摩耗試験用の試験片を作成した。エンジンオイルDL−15W−30を用いた油中環境において、荷重25MPaと摩擦速度0.4m/sで、3時間の摩耗試験を行い、耐摩耗性(摩擦係数、摩耗量)を測定した。この摩耗試験で使用された摩耗子の形状を図11に示す。摩耗子の材質は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼)である。
(化学分析、ミクロ組織観察)
合金のミクロ組織を観察するために、SEM観察/EDX解析を用いた。インゴットの中央部から切り出したサンプルを加工し、常温硬化エポキシ樹脂に埋め込んだ後、エメリー研磨を#180、#320、#600の順で行い、ダイアモンド研磨(油性)をダイアモンド砥粒6μm、1μmの順で行い、次いで、7μmのMgO粉により研磨を行い、ミクロ組織観察に供した。また、このサンプルを用いて、化学分析を行い、Biの平均濃度を測定した。
以下、Al合金組成の成分含有量に関する数値は、質量%を意味する。
(実施例1)
試験装置を図10に示す。耐火物製容器32を用いて、超音波エマルジョン化処理を行った。上記容器32は、その底部にテーパ状の出湯口35を備え、当該出湯口35の直下には連通口36を有するスライドバー33を備え、スライドバー33の下方には上記出湯口35と同軸に位置する注湯口37を備えた構造を有している。上記容器32の下方にはブックモールド(190×150×30)34が配置され、容器32内の溶湯38は、スライドバー33の開閉により出湯されて、ブックモールド34に注入できる。
溶解炉内に配置された坩堝を用いて、約2kgのAl−2%Bi−2%Zn−0.7%Cu−0.4%Mg合金(質量%)を約800℃で溶融した。耐火物製容器32は、約200℃で予熱し、耐火物製容器32の注湯口35の上には所定量のBiショット39が配置された。そして、上記坩堝内のAl溶湯が当該容器32内に注入された。上記のBiショット39は、Bi混合後のAl溶湯組成が4質量%Biの濃度となる量で配置した。
その後、耐火物製容器32のAl−Bi溶湯38中に超音波ホーン31を浸漬し、出湯口35及び注湯口37とほぼ同軸となる位置に設けた。上記ホーン31の先端と上記容器32の底部との間の距離が15mmとなるように浸漬させた。溶湯温度が約750℃に低下した時点で、振動振幅50μm(p−p)の超音波照射を開始した。照射開始と同時にスライドバー33を移動させ出湯口37を開けて、溶湯をブックモールド34内へ注入した。その後、超音波照射を停止した。超音波照射時間は約20秒であり、照射終了時の溶湯温度は約700℃であった。
得られたインゴットは、4質量%Biを含むAl合金である。インゴットの中央部から切り出して組織観察用の試験体を作製し、化学分析とミクロ組織観察を行った。
Al−Bi合金中のBi平均濃度は、インゴット内の異なる場所(5〜6か所)からサンプルを採取し、ICP発光分光分析法によりBi濃度を測定して平均値と標準偏差を測定した。この平均値を、Al−Bi合金中のBi平均濃度とした。標準偏差の数値が小さいほど、Bi分布は、より均一であるといえる。Bi粒子の分布に関して均一性が高い場合を良好(○)、均一性が低い場合を不適(×)と判定した。
また、ミクロ組織観察による組織写真を図7に示す。図7から分かるように、一次Bi粒子(白丸)は、粒径30μm未満の粒子であって、Alマトリックス中にほぼ均一に分散されている。ImagePro画像処理ソフトを用いて、少なくとも4〜5枚の写真を処理した。写真における1mm×1mmの4角形内に含まれるBi粒子の平均値として、平均粒径DBiを算出した。
上記の写真における1mm×1mmの4角形内に含まれるBi粒子の粒径(直径)に対応した累積分布をImagePro画像処理ソフトにより求めた。Bi粒子の粒径による累積分布を図8に示す。図8の縦軸から出ている破線は、累積分布95%のレベルを示している。この累積分布95%に相当する粒径を算出し、平均粒径DBi95とした。
測定した結果は、以下のとおりであった。
(1)Biの平均濃度は、4.2±0.15質量%であり、インゴット内でほぼ均一に分布している。
(2)Bi粒子の平均粒径DBiは、6.21±0.06μmであり、累積分布95%の粒径は、約9μmであった。
インゴットの製造条件と合わせて、上記のBi平均濃度、Bi粒子分布に関する測定結果を表3に示す。インゴットの合金組成を表4に示す。
さらに、インゴット内の中央部から切り出してJIS14B試験片を作製した。さらに、所定の条件で圧延または熱処理が施された試験片を作製した。これらの試験片を用いて、機械的特性(引張強さ、耐力、伸び)、硬度、圧延性、摩耗特性(摩擦係数、摩耗量)を測定し評価した。測定及び評価の結果を表5〜表7に示す。
(実施例2)
実施例1と同様の超音波処理装置を用いて、超音波エマルジョン化処理を行った。溶解炉内に配置された坩堝を用いて、約2kgのAl−4%Bi−2%Zn−0.7%Cu−0.4%Mg合金(質量%)を約820℃で溶融した。耐火物製容器32は、約200℃で予熱し、耐火物製容器32の注湯口35の上には所定量のBiショット39が配置された。そして、上記坩堝内のAl溶湯が当該容器32内に注入された。上記のBiショット39は、Bi混合後のAl溶湯組成が6質量%Biの濃度となる量で配置した。
その後、耐火物製容器32のAl−Bi溶湯38中に超音波ホーン31を浸漬し、出湯口35及び注湯口37とほぼ同軸となる位置に設けた。上記ホーン31の先端と上記容器32の底部との間の距離が15mmとなるように浸漬させた。溶湯温度が約780℃に低下した時点で、振動振幅50μm(p−p)の超音波照射を開始した。照射開始と同時にスライドバー33を移動させ出湯口37を開けて、溶湯をブックモールド34内へ注入した。その後、超音波照射を停止した。超音波照射時間は約20秒であり、照射終了時の溶湯温度は約730℃であった。
得られたインゴットは、6質量%Biを含むAl合金である。実施例1と同様に、インゴットから切り出された試験体を用いて、化学分析とミクロ組織観察を行った。
測定した結果は、以下のとおりであった。
(1)Biの平均濃度は、6.3±0.23質量%であり、インゴット内でほぼ均一に分布している。
(2)Bi粒子の平均粒径DBiは、8.47±0.12μmであり、累積分布95%の粒径は、約11μmであった。
インゴットの製造条件と合わせて、上記のBi平均濃度、Bi粒子分布に関する測定結果を表3に示す。インゴットの合金組成を表4に示す。
さらに、実施例1と同様に、インゴットからJIS14B試験片を作製し、当該試験片を用いて、機械的特性、硬度、圧延性、摩擦係数、摩耗量について測定し評価した。その評価結果を表5〜表7に示す。
(実施例3)
実施例1と同様の超音波処理装置を用いて、超音波エマルジョン化処理を行った。溶解炉内に配置された坩堝を用いて、約2kgのAl−5%Bi−2%Zn−0.7%Cu−0.4%Mg合金(質量%)を約830℃で溶融した。耐火物製容器32は、約200℃で予熱し、耐火物製容器32の注湯口35の上には所定量のBiショット39が配置された。そして、上記坩堝内のAl溶湯を当該容器32内に注入された。上記のBiショット39は、Bi混合後のAl溶湯組成が9質量%Biの濃度となる量で配置した。
その後、耐火物製容器32のAl−Bi溶湯38中に超音波ホーン31を浸漬し、出湯口35及び注湯口37とほぼ同軸となる位置に設けた。上記ホーン31の先端と上記容器32の底部との間の距離が15mmとなるように浸漬させた。溶湯温度が約800℃に低下した時点で、振動振幅50μm(p−p)の超音波照射を開始した。照射開始と同時にスライドバー33を移動させ出湯口37を開けて、溶湯をブックモールド34内へ注入した。その後、超音波照射を停止した。超音波照射時間は約30秒であり、照射終了時の溶湯温度は約750℃であった。
得られたインゴットは、9質量%Biを含むAl合金である。実施例1と同様に、インゴットから切り出された試験体を用いて、化学分析とミクロ組織観察を行った。
測定した結果は、以下のとおりであった。
(1)Biの平均濃度は、9.2±1.13質量%であり、インゴット内でほぼ均一に分布している。
(2)Bi粒子の平均粒径DBiは、11.4±1.82μmであり、累積分布95%の粒径は、約13μmであった。
インゴットの製造条件と合わせて、上記のBi平均濃度、Bi粒子分布に関する測定結果を表3に示す。インゴットの合金組成(残部Alおよび不可避的不純物)を表4に示す。
さらに、実施例1と同様に、インゴットからJIS14B試験片を作製し、当該試験片を用いて、機械的特性、硬度、圧延性、摩擦係数、摩耗量について測定し評価した。その評価結果を表5〜表7に示す。
(Bi液体粒子に対するMgの核生成機能)
溶融Bi一次沈殿の段階において、より高温域で生成したMg−Bi系化合物(β−MgBi)がBi液滴の生成核の役割を果たすことが考えられる。そこで、実施例で得られたAl−Bi合金について、そのミクロ組織のSEM観察/EDX解析を行った。図9は、その一例として、実施例1のAl−4%Bi−2%Zn−0.7%Cu−0.4%Mg合金(インゴット)に生成された化合物及び粒子の外観写真である。図9に示すように、MgBi粒子の周囲にBi粒子が存在することを確認できた。このように、溶解MgとBiとの反応によって生成される初晶Mg−Bi系化合物は、超音波照射によって微細化して分散されることにより、Bi核生成能を持つため、一次Bi粒子の微細化を実現できる。
図1のAl−Bi状態図を参照すると、Al−Bi合金溶湯は、その温度が二液相(L1+L2)の液相線温度より低くなると、合金溶湯内でBiが液滴として生成し始める。このBiが一次Biと呼ばれる。図9に示された上記の一次Bi粒子は、このようなBi液滴を指している。なお、上記合金溶湯の温度がさらに下がり、共晶温度(657℃)より低くなると、Alが凝固し始める。その後、上記合金溶湯の温度がさらに低くなると、固相Al中のBi溶解度が小さくなり、α−Alの粒界において二次Biが偏析する。
(比較例1)
実施例1と同様の溶解炉と耐火物製容器を用いて、実施例1と同様の組成を有する溶融Al合金を回転式インペラーにより攪拌し、実施例1と同様の条件で金型(ブックモールド)により凝固させた。化学分析とミクロ組織観察の結果は、以下のとおりである。
(1)Bi濃度は、インゴットの上部と下部で大きく異なり、2.9質量%から8.1質量%までの範囲内で変化し、インゴット内では不均一であった。
(2)Bi粒子平均粒径DBiは、16.26±3.88μm、累積分布95%の粒径が約32μmであった。
インゴットの製造条件と合わせて、上記のBi平均濃度、Bi粒子分布に関する測定結果を表3に示す。Bi濃度が高くなったインゴット部分のミクロ組織の一例を、図12に示す。なお、このサンプルは、組成の均一性が達成されなかったので、機械的特性、硬度等の測定及び評価を行なわなかった。
(比較例2)
実施例1と同様の溶解炉内に配置された坩堝を用いて、約2kgのAl−X%Sn−1.0%Cu合金(質量%、X=6,10,20)を約800℃で溶融した。Snが6%、10%、20%を有する上記Al合金を、それぞれ、「比較例2−1」、「比較例2−2」、「比較例2−3」と表記する(まとめて「比較例2」と表記することもある)。実施例1と同様の耐火物製容器に注入した後、溶融Al合金を回転式インペラーにより攪拌し、同様の条件で金型(ブックモールド)により凝固させた。
実施例1と同様に、インゴットから切り出された試験体を用いて、化学分析とミクロ組織観察を行った。インゴットの製造条件と測定結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様に、インゴットからJIS14B試験片を作製し、当該試験片を用いて、機械的特性(引張強さ、耐力、伸び)、硬度、圧延性、摩擦係数、摩耗量を測定し評価した。評価結果を表4〜表6に示す。
実施例1〜3で得られたAl−Bi合金は、本発明で規定する範囲の合金組成と微細なBi粒子を含む金属組織を有している。実施例1〜3は、Al−Bi合金溶湯に超音波を照射して処理したので、合金溶湯中のBi粒子が均一分散して凝固した組織が得られた。
それに対し、比較例1、比較例2−1〜比較例2−3の各インゴットは、本発明で規定する範囲の合金組成ではなく、また、本発明の方法で製造されたものでもない。そのため、インゴットにおけるBi組成が不均一であり、また、インゴット組織におけるBi粒子が微細に分布しておらず、粒径分布も微細でなかった。Biは、その密度がAlより3倍程度大きい。そのため、超音波照射による処理が施されなかった比較例2−1〜比較例2−3においては、Al−Bi合金溶湯中をBiが沈降した状態で凝固し、インゴット内の上部と下部とでBi濃度が大きく異なったと考えられる。
表5〜表7は、インゴットから試験片を採取し、所定の冷間圧延と熱処理を施した試験片について測定した結果を示している。
表4の機械的特性(引張強さ、耐力、伸び)、表5の硬度および圧延性によると、実施例1〜3は、従来の軸受材に相当する比較例2−1(6%Sn)、比較例2−2(10%Sn)のAl−Sn合金とほぼ同等の特性を有しており、機械的強度及び加工性の点で従来の軸受材と遜色ないことが分かる。
他方、表6の摩擦特性(摩擦係数、摩耗量)によると、実施例1〜3は、比較例2−1、比較例2−2と比べて、摩擦係数が小さく、摩耗量が少なく、良好な摩擦特性を示した。実施例1〜3のAl合金が軸受材に適していることを確認できた。
さらに、実施例3(Al−9Bi−2Zn−0.7Cu−0.4Mg合金)と比較例2−2(Al−20Sn−1Cu合金)を対比すると、比較例2−2は、圧延性、耐摩耗性、延性等が実施例3より劣っていた。図13に、Al−20Sn−1Cu合金のミクロ組織のSEM写真を一例として示す。Sn含有量が10%を超えると、αAl結晶の粒界にSn粒子が析出し、析出したSn粒子同士が結合してネット構造を形成する。このようなネット構造は、圧延性、耐摩耗性、延性などを劣化させる原因であると考えられる。
Al−Bi系合金においても、Bi濃度が9%まで上昇すると、αAl結晶の粒界にBi粒子が析出し始めて、ネット構造を形成する。その結果、延性や圧延性などの特性が劣化すると考えられる。
1 Al−Bi溶融合金
2 Biショット
3 Bi濃度が高いAl−Bi合金溶湯
4 エマルジョン化されたBi液滴を含むAl−Bi合金溶湯
5 Al−Bi合金インゴット
11 超音波ホーン
12 鋳型ヘッダ
13 冷却部
14 エマルジョン化チャンバー
15 開口
16 エマルジョン化室
17 溶湯導入室
18 隔壁
19 接続口
22 シートヒーター
23 超音波ホーン
24 ガラスビーカー
25 水
26 ガリウム
27 水とガリウムとの界面
31 超音波ホーン
32 耐火物製容器
33 スライドバー
34 ブックモールド
35 出湯口
36 連通口
37 注湯口
38 Al−Bi溶湯
39 Biショット

Claims (10)

  1. Bi:4.0〜9.5質量%、Mg:0.2〜0.5質量%、Zn:0.4〜2.0質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含み、残部がAlと不可避的不純物からなる成分組成を有し、Bi粒子の累積分布95%に相当する粒径で決められる平均粒径が15μm以下である、加工性に優れるアルミニウム合金。
  2. 2.0〜5.5質量%のBiと不可避的不純物を含有するアルミニウム合金溶湯を用意し、平衡温度Tより50℃以上高い温度で溶解した当該溶湯に当該Biショットを添加して、所定組成のアルミニウム合金溶湯を得た後、当該アルミニウム合金溶湯に超音波照射してエマルジョン化処理を行い、その後、鋳造凝固する、加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  3. 前記アルミニウム合金溶湯は、さらに、Zn:0.4〜2.0質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含有する、請求項2に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  4. 前記アルミニウム合金溶湯は、さらに、0.2〜0.5質量%のMgを含有する、請求項2または3に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  5. 鋳型ヘッダ内または鋳型直前の移湯樋部分に、キャビテーション処理用チャンバーが設けられた鋳造手段を用いて、前記チャンバー内に請求項5記載のアルミニウム合金溶湯を通過させる、請求項2〜4のいずれかに記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  6. 前記キャビテーション処理用チャンバー内に超音波ホーンが設けられた鋳造手段を用いて、前記ホーン先端付近にキャビテーションの強い領域を形成し、アルミニウム合金溶湯の少なくとも8割以上の量が前記領域を通過する、請求項5に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  7. 前記領域は、超音波ホーンの先端の直下および周囲の溶湯部分に形成される、請求項6に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  8. 前記チャンバー内には、溶湯を通過させると同時にビスマスを添加しながら、ホーン先端と前記キャビテーション処理用チャンバー中のBi浴面との間の距離を20mm以下に維持する、請求項6または7に記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  9. 前記ホーンの先端の振動振幅は、40μm(p−p)以上に維持する、請求項6〜8のいずれかに記載の加工性に優れるアルミニウム合金の製造方法。
  10. 請求項2〜9のいずれかに記載された製造方法で使用されるアルミニウム合金溶湯。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019209362A (ja) * 2018-06-06 2019-12-12 本田技研工業株式会社 アルミニウム合金の製造方法
CN115383107A (zh) * 2022-10-14 2022-11-25 中冶赛迪工程技术股份有限公司 一种纳米颗粒改性的均质Zn-Bi偏晶合金的制备方法及其产品

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