JP2015208748A - アルミニウム合金ビレットの製造方法及びアルミニウム合金ビレット - Google Patents
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Abstract
Description
それらの結果に基づいて、凝固割れの原因については次のように考えられる。
すなわち、鋳造における凝固過程の固液共存域において温度降下によって液相率fLが1から0まで変化する。固液共存域を図1に模式的に示す。
高速鋳造において凝固割れ発生を防止するためには次のような4つの方法から選択するのが一般的である。
(1) 鋳造条件最適化、
(2) 鋳型冷却の均一化、
(3) 微細化剤の添加、
(4) 合金組成の調整。
したがって、多くの場合は凝固割れ感受性を下げるために、上記4つの手法の内、(1)や(4)の鋳片の鋳造速度(冷却条件)を制御しながら、微細化材を添加し、合金組成を最適化する方法が提案されている。その代表例として次の特許文献1,2,3が挙げられる。
しかしながら、アルミニウムの加工用高強度合金をDC鋳造法で鋳造し、鋳造速度を上げると、ビレットの中心部が凝固終了付近で一文字や十字型、又は三方向に割れる熱間割れという重大な欠陥が発生することがある。熱間割れが一度発生すると伝搬して同じ条件で鋳造すると最後まで欠陥が続くことが起きる。このため、アルミニウムの加工用高強度合金の鋳造速度は熱間割れで限界があり、コスト安く鋳造することができなかった。
なお、本明細書中では「DC鋳造」や単に「DCビレット」と表記しているが、この「DC」は、Direct Chillのことを指す。「DC鋳造」は鋳型により表面だけが凝固した鋳塊を、直接冷却水中に鋳造する方法である。これにより、水中冷却凝固であるため鋳型内で固めるよりも冷却効率が高く、急冷組織が得られる。また、「DCビレット」はDC鋳造により製造されたビレットのことである。
しかしながら、上述のとおり、凝固割れ感受性と合金組成との関係は複雑であり、合金の適正な組成を見付けるのはかなり困難である。さらに、組成調整により合金の機械的特性が劣化してしまう場合が少なくない。したがって、添加剤の添加や組成変更を行わずに、凝固割れ防止を実現する方法が必要とされている。
特許文献3では、外周面を鋳塊に接触させて冷媒を除去する回転体を設けたアルミニウム合金のDC鋳造鋳塊割れ防止装置と、この鋳塊割れ防止装置により液状冷媒が十分に遮断され、アルミニウム合金鋳塊の割れが発生しないDC鋳造機を提供している。つまり、その方法は冷却時における冷媒遮断によって鋳塊中央部と内外周部の冷却速度差を十分小さくし、熱残留応力を抑えようとしたものである。
しかも、加工用高強度アルミニウム合金のDCビレット製品に於いては、製品の使用方法が高度化し、これまでの技術以上に加工用高強度アルミニウム合金ビレットの鋳造速度の高速化に依るコストダウンや組織改善による材料特性(強度、耐力、伸び)の向上や均一組織化した材料が求められていた。
Ls+50≧LH≧Ls+10 (1)
ここで、Ls(mm)は式(2)により求められた距離である、
Vcは鋳造速度(mm/min)、Rbは鋳型半径(=ビレット半径,mm)、Qw水冷流量(L/min)
さらにCu:0.5質量%以下、Mn:0.6質量%以下、Cr:0.4質量%以下の内のいずれか1種以上を含有するものがより好ましい。
超音波照射は、ホーン先端の振動振幅を30μm(p‐p)以上で保持することが好ましい。
その結果、予め溶湯中に添加した微細化剤(P,TiB2,Zr等)又は/及び溶湯中に存在する制御不能な異物(Al2O3介在物等)がキャビテーション場を通過する間に微細化剤又は/及び異物の粒子が溶湯中で効率よく分散され、かつ粒子表面に付着された水素が表面から除去され、濡れ性が向上されることにより結晶核の個数が劇的に増えることによって凝固組織が微細化されることが報告されている。
(1)音響キャビテーションについて
音響キャビテーションとは、超音波ホーンにより液体中に超音波を照射する時のホーン先端の振動振幅がある「しきい値、AC」を超えた場合、液体中で無数の気泡が発生し、膨張、圧縮を繰り返し、ある条件で崩壊する現象である。気泡崩壊が液体中で高速マイクロジェットと衝撃波の発生を引き起こす。これらが鋳造プロセスに対して、微細化剤分散、デンドライト分断・粒状化など超音波照射効果の原因であると考えられる。ただし、キャビテーション強度はホーン先端から離れるほど減少するため高速マイクロジェットと衝撃波の強さも減っていく。
音響流は流体の粘性、熱伝導性等により超音波エネルギー消散によって生じる定常流であり、溶湯の攪拌、熱伝達、結晶核の移動、偏析抑制等のメカニズムに影響する現象であると推定される。
以前、発明者らが得た結果によれば音響流は、ホーン先端の直下で発生して、数十cm/secの範囲での速度を持つ下向き定常流である。固液共存領域への超音波照射においては音響流によって次のような効果をもたらす。一つ目は、融液が音響流の動圧の影響を受けて、通常(超音波照射なし)では通過できないデンドライト間を通過でき、凝固界面へより効率よく供給され、鋳造品の内部に残留した引け巣や収縮孔や微小な空隙等を補填して埋める。二つ目は、ホーン直下の高強度キャビテーション場で分散された凝固核が音響流により固液共存領域へ供給され、凝固組織の微細化を促進する。それによっても、固相ネットワーク領域において融液の流動性・充填性が改善される。三つ目は、固液共存領域周辺の溶湯がよく攪拌されることによって、溶湯のサンプが浅くなり、固液共存領域内温度の均一性が向上される。その結果、鋳造品内部の熱応力が緩和しやすくなる。
キャビテーション気泡が崩壊する段階で、キャビテーション発生に使ったエネルギーが消散して、熱エネルギーに変換される熱が放射熱と呼ばれる。
発明者ら以前報告した結果によると放射熱量はホーンの振動振幅と超音波伝播媒体の音響インピーダンスの増加とともに増加する。また、キャビテーションの強いホーン先端直下で放射熱が大きくなるが、ホーン先端から離れるほど少なくなる傾向にある。
以上のような考察から、超音波ホーンを用いて鋳型内の溶湯に超音波振動を付与するに当たっては、溶湯内での超音波振動の付与位置が、超音波振動の付与効率に大きく影響していると理解され、本発明は、その超音波振動の付与位置について検討し、以下の結果を得たものである。
竪型DC鋳造鋳型の中に超音波ホーンの縦方向の位置、面積比、出力を請求範囲の位置に配置することによってビレットが凝固するときの液体域、スラリー部分、固定したマッシー域に作用して結果的に鋳造可能速度の増大、鋳造組織改善による材料特性の向上が得られた。
発明者らは、Alが初晶として晶出する組成を持つアルミニウム合金溶湯を直径が45mmφから325mmφのDCビレット鋳造する際に、ホーン先端の鋳型下端からの距離LHを下記式(1)、(2)の範囲内とすれば、凝固割れを防止することができることを確認した。
Ls+50≧LH≧Ls+10 (1)
LHは距離LS(サンプ深さ)によって正値も負値もなりえる。図5に示すように、鋳型下端から下方.にいくにつれ負の値となり情報にいくにつれ正の値とする。たとえばLS=−30mmの場合、LHの上限は20mmであり、下限は−20mmである。
なお、LS(mm)は式(2)により求められた距離である。
ここでVCは鋳造速度(mm/min)、Rbは鋳型半径(=ビレット半径mm),QWは水冷流量(L/min)。LSは鋳型下端に一致する原点(図5a)に対して求められるので常に負値である。
なお、アルミニウム合金の組成はアルミニウムが初晶として晶出する組成の場合ならば上記式(1)、(2)によって求められるLHの範囲にホーン先端を設定すると凝固割れが防止できることが当てはまる。
なお、超音波ホーン先端の形状としては、図5(a)に示すような平面形状、図5(b)に示すような円錐台形状、図5(c)に示すような丸い形状、その他、円錐台形状などを適用することができるが、ホーン先端径/ビレット径との比を0.35〜0.6の範囲内に設定する。0.35より小さいと、キャビテーション領域を通過する溶湯の量が少なくなってしまい微細化効果が十分ではなくなる可能性がある。また、キャビテーション場が発生する領域は一般的に、幅約Dc=1.5Dh(Dh;ホーンの直径)であるため、0.6より大きいと、キャビテーション領域が鋳型壁まで及びキャビテーションによりエロージョンされ溶湯のコンタミネーションが生じるおそれがでてしまう。
DC鋳造時に凝固割れを無くし、鋳造組織をより適切なものとするためには、上記超音波ホーンの位置調整や得ようとするビレット径に対するホーン先端径の他に、出力をも調整することが好ましい。
ホーン先端での振動振幅Aを30μm以上とすることが好ましい。Aが30μmより小さくなるとキャビテーション強度と音響流速度が減少するため超音波の凝固割れ防止効果が低下する場合がある。
凝固時にAlが初晶として晶出するような亜共晶アルミニウム合金の鋳造では凝固最終段階で晶出する共晶と金属間化合物が融体として結晶粒間に存在し凝固後、結晶粒間で共晶あるいは金属間化合物として固体となる。DC鋳造のような一方向的凝固鋳造プロセスでは通常温度勾配によってそれら晶出物はそれら自身で成長するか、過冷却によって核発生し凝固する。晶出量も温度勾配と流動によって変化する。
つまり、超音波照射を与えたDC鋳造では、上述のとおり、超音波照射時に発生される音響流・キャビテーションにより、アルミニウム合金溶湯が良く攪拌されるので凝固時に固相と液相が平衡状態に近づき液相量が増加し、結晶粒間の融体が維持され、結晶間の結合が遅れることにより、熱収縮に相応する引張り応力の発生量が低下し、凝固割れ防止が可能となる、と理解される。
本発明に適用されるアルミニウム合金としては、凝固時にAlが初晶として晶出するような合金成分を有するものであれば、どのような成分組成を有するものでも構わない。なお、以下の記載にあって、「%」表示は「質量%」を示している。
Alが初晶として晶出するアルミニウム合金としては、例えば、Si:5%以下、Fe:1%以下、Cu:10%以下、Mg:12%以下、Mn:1%以下を含有し、さらに必要に応じて、Zn:15%以下、Ni:4%以下、V:0.4%以下、Ti:0.15%以下、Sc:1%以下、Cr:0.4%以下、B:50ppm以下、Zr:0.3%以下、Sn:2%以下、Bi:1%以下、Pb:1%以下の一種類以上含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。
この組成範囲のアルミニウム合金溶湯を上記の条件で鋳造すると、ビレット中心部に結晶粒径が80μm以下で標準偏差20μm以下、DAS(デンドライトアームスペーシング)が35μm以下で標準偏差10μm以下となるような初晶Alが晶出した微細組織を有し、凝固割れが生じにくいアルミニウム合金ビレットを製造することができる。
そこで、本発明にあっては、ビレット中心部において初晶Alの結晶粒径が80μm以下で標準偏差20μm以下、DASが35μm以下で標準偏差が10μmであることが好ましい、としている。
溶解炉内に配置した坩堝内にAl‐1.4%Si‐0.85%Mg‐0.25%Fe‐0.01%Ti‐20ppmBの成分組成のアルミニウム溶湯を用意した。
平面形状の先端(直径48mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを予熱炉内で予熱した後,溶解炉から鋳型内部を流れるアルミ溶湯中に鋳型下端からの距離−70mmでホーンを浸漬させ、ホーンにより振動振幅42μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度550mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.59)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法とビレット断面観察によって鋳造割れが発生していないことを確認した。また、ビレットのR/2部分から試験片を切り出し、HO+T6熱処理を実施した後、機械的特性の評価を行った。結果は表2に示す。
なお、ここでビレット中心部の定義はビレット中心からの距離5mmを半径とした円周内部である。平均結晶粒径を測定するためには、光学顕微鏡により撮影した画像をImagePro画像解析ソフトウェアにより処理して、αAl結晶粒径を測定した。その後、約10枚画像の処理結果から平均結晶粒径を求めた。
DAS測定について同様にビレット中心からの距離5mmを半径とした円周内部を測定し、測定方法として交線法を適用した。
溶解炉内に配置した坩堝内にAl‐0.7%Si‐0.85%Mg‐0.3%Fe‐0.01%Ti‐20ppmBの成分組成のアルミニウム溶湯を用意した。
円錐台形状の先端(直径48mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを予熱内で予熱した後,溶解炉から鋳型内部を流れるアルミ溶湯中にホーンを浸漬させ、鋳型中心で鋳型下端からの距離−80mm固定して、ホーンにより振動振幅36μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度500mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.59)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法とビレット断面観察によって鋳造割れが発生していないことを確認した。また、As‐castビレットのR/2部分から試験片を切り出し、機械的特性の評価を行った。結果は表3に示す。また、ビレットの中心部に相当する平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を表1に示す。
溶解炉内に配置した坩堝内にAl‐1.4%Si‐0.85%Mg‐0.25%Fe‐0.01%Ti‐20ppmBの成分組成のアルミニウム溶湯を用意した。
平面形状の先端(直径60mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを予熱炉内で予熱した後,溶解炉から鋳型内部を流れるアルミ溶湯中にホーンを浸漬させ、鋳型中心で鋳型下端からの距離+10mm、ホーンにより振動振幅60μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度120mm/minで152mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.39)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は80L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法とビレット断面観察によって鋳造割れが発生していないことを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。
溶解炉内に配置した坩堝内にAl‐1.2%Si‐1.1%Mg‐0.3%Fe‐0.015%Ti‐30ppmBの成分組成のアルミニウム溶湯を用意した。
平面形状の先端(直径42mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを予熱炉内で予熱した後,溶解炉から鋳型内部を流れるアルミ溶湯中にホーンを浸漬させ、鋳型下端からの距離−60mmに固定して、ホーンにより振動振幅48μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度500mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.51)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法とビレット断面観察によって鋳造割れが発生していないことを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表2に示す。
溶解炉内に配置した坩堝内にAl‐0.9%Si‐0.9%Mg‐0.15%Fe‐0.02%Ti‐20ppmBの成分組成のアルミニウム溶湯を用意した。
平面形状の先端(直径48mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを予熱炉内で予熱した後,溶解炉から鋳型内部を流れるアルミ溶湯中にホーンを浸漬させ、鋳型中心で鋳型下端からの距離−70mm、ホーンにより振動振幅48μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度500mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.59)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法とビレット断面観察によって鋳造割れが発生していないことを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。
溶解炉内に配置した坩堝内にAl‐0.7%Si‐1.2%Mg‐0.25%Fe‐0.01%Ti‐20ppmBの成分組成のアルミニウム溶湯を用意した。
平面形状の先端(直径48mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを予熱炉内で予熱した後,溶解炉から鋳型内部を流れるアルミ溶湯中にホーンを浸漬させ、鋳型中心で鋳型下端からの距離−80mm固定して、ホーンにより振動振幅44μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度550mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.59)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法とビレット断面観察によって鋳造割れが発生していないことを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。
実施例1と同一の合金を用い、超音波照射なしで鋳造速度を300mm/minから500mm/minまで50mm/minおきに増加させ、82mmφのビレットを鋳造した。
鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、鋳造速度が400mm/minを超えると鋳造割れが発生することを確認した
表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が400mm/minのときの値である。図3(b)は、比較例1で製造された鋳片の断面の写真である。また、図4(b)は、鋳片の中心部のミクロ組織の顕微鏡写真である。さらに、鋳片の中心部に相当する平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。
表1に示すデータの比較からも、超音波鋳型内処理によるミクロ組織の微細化と均一化の効果が明らかである。それが、上記のとおり、鋳造割れの防止できる原因の一つとして考えられる。また、ビレットのR/2部分から試験片を切り出し、HO+T6熱処理を実施した後、機械的特性の評価を行った。結果は表2に示す。引張強度、0.2%耐力、伸び、ともに超音波を本発明の位置で照射した実施例1、実施例3が比較例1よりも優れた値を示した。
実施例2と同一の合金を用い、超音波照射なしで鋳造速度を250mm/minから500mm/minまで50mm/minおきに増加させ、82mmφのビレットを鋳造した。鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、鋳造速度が350mm/minを超えると鋳造割れが発生することを確認した。また、As‐castビレットのR/2部分から試験片を切り出し、機械的特性の評価を行った。結果は表3に示す。
また、ビレットの中心部に相当する平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を表1に示す。表1及び表3に示す値は、鋳造速度が400mm/minのときの値である。
実施例3と同一の合金を用い、超音波照射なしで鋳造速度を90mm/minから120mm/minまで10mm/minおきに増加させ、152mmφのビレットを鋳造した。鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、鋳造速度が110mm/minを超えると鋳造割れが発生することを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が110mm/minのときの値である。
実施例1と同様超音波装置セットと同一の合金を用い、鋳型中心で鋳型下端からの距離−50mmに固定したホーンにより振動振幅52μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度500mm/minと550mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.59)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、いずれの鋳造速度においてもビレット中心部での鋳造割れが発生することを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が500mm/minのときの値である。
平面形状の先端(直径24mm)をもつ窒化珪素基超音波ホーンを用い、実施例1と同様の合金溶湯を用意して、鋳型中心で鋳型下端からの距離‐90mmに固定したホーンにより振動振幅48μm(p‐p)の超音波を照射し、鋳造速度500mm/minと550mm/minで82mmφのビレット(ホーン径とビレット径との比が0.29)を鋳造した。なお、このときの水冷流量は70L/minであった。
鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、いずれの鋳造速度においてもビレット中心部での鋳造割れが発生することを確認した。As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が500mm/minのときの値である。
実施例4と同一の合金を用い、超音波照射なしで鋳造速度を250mm/minから500mm/minまで50mm/minおきに増加させ、82mmφのビレットを鋳造した。
鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、鋳造速度が350mm/minを超えると鋳造割れが発生することを確認した。また、As‐castビレットのR/2部分から試験片を切り出し、機械的特性の評価を行った。結果は表3に示す。また、As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が400mm/minのときの値である。
実施例5と同一の合金を用い、超音波照射なしで鋳造速度を250mm/minから500mm/minまで50mm/minおきに増加させ、82mmφのビレットを鋳造した。
鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、鋳造速度が400mm/minを超えると鋳造割れが発生することを確認した。また、また、As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が400mm/minのときの値である。
実施例6と同一の合金を用い、超音波照射なしで鋳造速度を250mm/minから500mm/minまで50mm/minおきに増加させ、82mmφのビレットを鋳造した。
鋳造終了後、超音波探傷法により鋳造割れについて調べて、鋳造速度が350mm/minを超えると鋳造割れが発生することを確認した。また、As‐castビレットの中心部分から試験片を切り出し、ミクロ組織の観察を行い、平均結晶粒径、平均DASとそれらの標準偏差、及び占有面積率を求めた。その結果は表1に示す。表1に示す平均結晶粒径等は、鋳造速度が400mm/minのときの値である。
比較例4は、LHとLSの関係が式(1)から外れているものであり、比較例5は、ビレット径に対するホーン先端径が小さすぎているものである。
超音波照射を行わなかった比較例1,2,3,6,7,8はもちろん、超音波照射を行った比較例4,5でも照射位置が適切でないと、鋳造速度を速くしたときに鋳造割れが起こるばかりでなく、得られたビレットの組織が荒くなっている。
これに対して、適切なサイズのホーン先端を適切な位置に設置した実施例においては、鋳造速度を速くしても鋳造割れを起こすことなく、しかも組織の細かいビレットが得られている。
Claims (6)
- 超音波ホーンを用い、初晶としてAlが晶出する成分組成を有するアルミニウム合金溶湯をDC鋳造して(超音波ホーン先端径/ビレット径)が0.35〜0.6であり、直径が45mm〜325mmφのビレットを得る際に、前記超音波ホーンをその先端が鋳型下端から下記(1)、(2)式を満たす距離LH(mm)に位置させて鋳型内のアルミニウム合金溶湯に超音波を照射することを特徴とするアルミニウム合金ビレットの製造方法。
Ls+50≧LH≧Ls+10 (1)
ここで、Ls(mm)は式(2)により求められた距離である、
Vcは鋳造速度(mm/min)、Rbは鋳型半径(=ビレット半径,mm)、Qw水冷流量(L/min) - アルミニウム合金溶湯が、Si:0.4〜2.0質量%、Mg:0.6〜1.5質量%、Fe:0.05〜0.5質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるものである請求項1に記載のアルミニウム合金ビレットの製造方法。
- アルミニウム合金溶湯が、さらにCu:0.5質量%以下、Mn:0.6質量%以下、Cr:0.4質量%以下の内のいずれか1種以上を含有するものである請求項2に記載のアルミニウム合金ビレットの製造方法。
- ホーン先端の振動振幅を30μm(p‐p)以上で保持することを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ビレットの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造したアルミニウム合金ビレットであって、Si:0.4〜2.0質量%、Mg:0.6〜1.5質量%、Fe:0.05〜0.5質量%、Ti:0.005〜0.15質量%、B:50質量ppm以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる成分組成を有し、ビレット中心部に結晶粒径が80μm以下で標準偏差20μm以下、DASが35μm以下で標準偏差10μm以下の初晶Alが晶出していることを特徴とするアルミニウム合金ビレット。
- さらにCu:0.5%質量以下、Mn:0.6%質量以下、Cr:0.4%質量以下の内のいずれか1種以上を含有する成分組成を有する請求項5に記載のアルミニウム合金ビレット。
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