本発明の一実施の形態による光ヘッドの誤差信号検出方法及びそれを用いた光ヘッド並びに光記録再生装置について図1乃至図17を用いて説明する。まず、本実施の形態による光ヘッド1の概略の構成について図1乃至図4を用いて説明する。本実施の形態の光ヘッド1は、物理的トラックピッチの長さが異なる2種類の光記録媒体15のそれぞれに情報の記録又は再生を行うことができるようになっている。物理的トラックピッチが相対的に広い光記録媒体15(第1の光記録媒体15a)は、DVD−RAM及びこれと同等の物理的トラックピッチを備えた光記録媒体である。また、物理的トラックピッチが相対的に狭い光記録媒体15(第2の光記録媒体15b)は、DVD−ROM、DVD±R/RW及びこれらと同等の物理的トラックピッチを備えた光記録媒体である。第1の光記録媒体15aの物理的トラックピッチの長さP1は1.23μmであり、第2の物理的トラックピッチの長さP2は0.74μmである。
図1に示すように、光ヘッド1は、光ビームを射出する光源としてレーザダイオード3を有している。レーザダイオード3は、コントローラ(不図示)からの制御電圧に基づいて記録/再生毎に異なる光強度の光ビームを射出できるようになっている。
レーザダイオード3の光射出側の所定位置には、回折格子19が配置されている。レーザダイオード3から射出された光ビームは、回折格子19に入射して3本の光ビーム(0次の主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29b)に分割される。±1次の副ビーム29a、29bは、主ビーム27位置を中心にトラック方向に所定距離隔てて対称に並んで光記録媒体15の表面(情報記録面)に配置されている。
レーザダイオード3から見て回折格子19の光透過側には、偏光ビームスプリッタ5、1/4波長板7、コリメータレンズ9及び対物レンズ13がこの順に並んで配置されている。コリメータレンズ9は、レーザダイオード3からの発散光線束を平行光線束に変換して対物レンズ13に導くと共に、対物レンズ13からの平行光線束を集束光線束に変換して受光素子23、25a、25bに導くために設けられている。対物レンズ13はコリメータレンズ9からの平行光線束を光記録媒体15の情報記録面に集光して読み取りスポットを形成すると共に、光記録媒体15からの反射光を平行光線束に変換してコリメータレンズ9に導くために設けられている。
1/4波長板7から見て偏光ビームスプリッタ5の光反射側には、センサレンズ17、シリンドリカルレンズ21及び受光素子23、25a、25bがこの順に配置されている。また、レーザダイオード3から見て偏光ビームスプリッタ5の光反射側には、レーザダイオード3から射出された光ビームの光強度を計測するためのパワーモニタ用フォトダイオード11が配置されている。
センサレンズ17は、光記録媒体15で反射された主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bの合焦位置を光学的に調整するための反射光合焦位置調整部として機能する。また、センサレンズ17は光記録媒体15で反射した主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bを所定の光学系倍率で拡大させてシリンドリカルレンズ21を介して受光素子23、25a、25b上にそれぞれ個別に結像させるようになっている。受光素子23は主ビーム27を受光し、受光素子25aは+1次の副ビーム29aを受光し、受光素子25bは−1次の副ビーム29bを受光するようになっている。受光素子23、25a、25bで光電変換された各電気信号は、光記録再生装置150に備えられた誤差信号検出部31に入力される。誤差信号検出部31では、光記録媒体15で反射した主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bに基づいて、対物レンズ13が光記録媒体15のトラックを横切る際に生じるトラッククロス信号を減衰させた焦点ズレ誤差信号(FES)や、対物レンズ13の光記録媒体15のラジアル方向へのシフトによって生じるDCオフセット成分が除去されたトラッキング誤差信号(TES)が検出されるようになっている。
図2は、光記録媒体15の情報記録面に主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bが集光された状態を模式的に示している。図2(a)は、第1の光記録媒体15aとしてのDVD−RAMの情報記録面を示している。図2(b)は、第2の光記録媒体15bとしてのDVD−RWの情報記録面を示している。図2(c)は、第2の光記録媒体15bとしてのDVD−ROMの情報記録面を示している。図中の左右方向の矢印Rは第1及び第2の光記録媒体15a、15bの半径(ラジアル)方向を示し、上下方向の矢印Tは第1及び第2の光記録媒体15a、15bのトラックの接線方向を示している。
図2(a)乃至図2(c)に示すように、第1及び第2の光記録媒体15a、15bのいずれにおいても、ラジアル方向に見た主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのスポット間隔BPは0.45μmに調整されている。すなわち、+1次の副ビーム29aのスポットは主ビーム27のスポットに対し、ラジアル方向に+0.45μm離れて配置されている。また、−1次の副ビーム29bのスポットは主ビーム27のスポットに対し、ラジアル方向に−0.45μm離れて配置されている。このように、第1の光記録媒体15aでは、主ビーム27のスポットに対してラジアル方向に、+1次の副ビーム29aが+P1×(n+0.32)=+0.39μm(n=0)以上、−1次の副ビーム29bが−P1×(n+0.32))=−0.39μm(n=0)以上だけずれて位置して調整されている。
また、第2の光記録媒体15bでは、主ビーム27のスポットに対してラジアル方向に、+1次の副ビーム29aが+P2×(n+0.61)=0.451μm(n=0)以下、−1次の副ビーム29bが−P2×(n+0.61)=−0.451μm(n=0)以下だけずれて位置するように調整されている。
このように、第1の光記録媒体15a又は第2の光記録媒体15bに対し、±1次の副ビーム29a、29bのスポットは、主ビーム27のスポットに関し、対称且つラジアル方向にP1×(n+1/2)=1.23μm×1/2=0.615μm(n=0)及びP2×(n+1/2)=0.74μm×1/2=0.37μm(n=0)を除く位置に配置されている。主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのラジアル方向の間隔は、例えば回折格子19の格子面を回折格子19の光軸回りに回転させることにより調整される。
図3は、受光素子23、25a、25bの受光部の構成と、受光素子23、25a、25bと誤差信号検出部31との接続状態を示している。図3に示すように、受光素子23は、正方形状の受光領域内を光記録媒体15(図3では不図示)のトラックの接線方向にほぼ平行な分割線(分割線α)24と、分割線24にほぼ直交する分割線(分割線β)24’とで分割して、隣接してマトリクス状に配置された正方形状の4つの受光領域A、B、C、Dを有している。受光領域Aは分割線24を介して受光領域Bに隣接し、分割線24’を介して受光領域Dに隣接し、受光領域Cに対角に位置して配置されている。受光領域Cは分割線24を介して受光領域Dに隣接し、分割線24’を介して受光領域Bに隣接して配置されている。
同様に、受光素子25aは、正方形状の受光領域内を光記録媒体15のトラックの接線方向にほぼ平行な分割線(分割線α)26と、分割線26にほぼ直交する分割線(分割線β)26’とで分割して、隣接してマトリクス状に配置された正方形状の4つの受光領域E1、F1、G1、H1を有している。受光領域E1は分割線26を介して受光領域F1に隣接し、分割線26’を介して受光領域H1に隣接し、受光領域G1に対角に位置して配置されている。受光領域G1は分割線26を介してH1に隣接し、分割線26’を介してF1に隣接して配置されている。
同様に、受光素子25bは、正方形状の受光領域内を光記録媒体15のトラックの接線方向にほぼ平行な分割線(分割線α)28と、分割線28にほぼ直交する分割線(分割線β)28’とで分割して、隣接してマトリクス状に配置された正方形状の4つの受光領域E2、F2、G2、H2を有している。受光領域E2は分割線28を介して受光領域F2に隣接し、分割線28’を介して受光領域H2に隣接し、受光領域G2に対角に位置して配置されている。受光領域G2は分割線28を介してH2に隣接し、分割線28’を介してF2に隣接して配置されている。
受光素子23、25a、25bは光記録媒体15の情報記録面での主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bのスポット位置が異なることにより生じる光路のズレに対応させて、ラジアル方向に若干ずらして配置されている。また、分割線24、26、28はそれぞれ略平行に配置され、分割線24’、26’、28’はそれぞれ略平行に配置されている。
受光領域E1〜H1、E2〜H2からは各1本ずつ配線が引き出されている。受光素子25aの受光領域内での相対位置と、受光領域25bの受光領域内での相対位置とが同じ受光領域同士が接続されるように、各配線は接続されている。すなわち、受光領域E1、E2から引き出された配線同士、受光領域F1、F2から引き出された配線同士、受光領域G1、G2から引き出された配線同士及び受光領域H1、H2から引き出された配線同士は接続されている。このため、受光領域E1、E2からそれぞれ出力された電気信号は同電位になる。同様に、受光領域F1、F2からそれぞれ出力された電気信号、受光領域G1、G2からそれぞれ出力された電気信号及び受光領域H1、H2からそれぞれ出力された電気信号はそれぞれ同電位になる。当該配線は誤差信号検出部31に接続されている。
受光領域A、B、C、Dから各1本ずつ引き出された配線は誤差信号検出部31に接続されている。誤差信号検出部31は受光領域A〜D、E1〜H1、E2〜H2から出力された電気信号を用いて所定の演算処理を行い、TESやFESを検出するようになっている。
図4は誤差信号検出部31に備えられたFES検出部33及びTES検出部35の回路構成を示している。図4(a)はFES検出部33を示し、図4(b)はTES検出部35を示している。図4(a)に示すように、FES検出部33は、受光素子25a、25bから出力された電気信号を差動演算する第1の差動演算部37と、受光素子23から出力された電気信号を差動演算する第2の差動演算部39と、第1及び第2の差動演算部37、39から出力された出力信号を加算してFESを生成するFES生成部(加算部)41とを有している。
第1の差動演算部37は加算部37a、37bと差動部37cとを有している。加算部37a、37b及び差動部37cは2入力1出力の回路構成を有している。加算部37aの2つの入力端子(+)は受光領域E1、E2を接続した配線E1+E2と、受光領域G1、G2を接続した配線G1+G2に1つずつ接続されている。加算部37aの出力端子は差動部37cの非反転入力端子(+)に接続されている。加算部37bの2つの入力端子(+)は受光領域F1、F2を接続した配線F1+F2と、受光領域H1、H2を接続した配線H1+H2に1つずつ接続されている。加算部37bの出力端子は差動部37cの反転入力端子(−)に接続されている。差動部37cの出力端子(第1の差動演算部37の出力端子)はFES生成部41に備えられた信号増幅部43の入力端子に接続されている。
受光領域E1、E2と、受光領域H1、H2から出力された電気信号が加算部37aで加算され、受光領域F1、F2と、受光領域G1、G2から出力された電気信号が加算部37bで加算される。加算部37a、37bから出力された電気信号は差動部37cで差動演算される。従って、第3の差動演算部37は、受光素子25a、25bのそれぞれにおいて対角に位置する受光領域E1、G1(一方の対)及び受光領域E2、G2(一方の対)から出力された電気信号と、受光領域F1、H1(他方の対)及び受光領域F2、H2(他方の対)から出力された電気信号とを差動演算するように機能する。第1の差動演算部37での差動演算により得られる電気信号は、±1次の副ビーム29a、29bに基づく非点収差信号SADであり、以下のように表すことができる。
SAD={(E1+E2)+(G1+G2)}−{(F1+F2)+(H1+H2)}=(E+G)−(F+H) ・・・(1)
但し、式(1)において、E1+E2=Eとし、F1+F2=Fとし、G1+G2=Gとし、H1+H2=Hとしている。
第2の差動演算部39は加算部39a、39bと差動部39cとを有している。加算部39a、39b及び差動部39cは2入力1出力の回路構成を有している。加算部39aの2つの入力端子(+)は受光領域A、Cに1つずつ接続されている。加算部39aの出力端子は差動部39cの非反転入力端子(+)に接続されている。加算部39bの2つの入力端子(+)は受光領域B、Dに1つずつ接続されている。加算部39bの出力端子は差動部39cの反転入力端子(−)に接続されている。差動部39cの出力端子(第2の差動演算部39の出力端子)はFES生成部41に備えられた加算部45の一方の入力端子(+)に接続されている。
第2の差動演算部39は、受光素子23において対角に位置する受光領域A、C(一方の対)から出力された電気信号と、対角に位置する受光領域B、D(他方の対)から出力された電気信号とを差動演算するように機能する。第2の差動演算部39での差動演算により得られる電気信号は、主ビーム27に基づく非点収差信号MADであり、以下のように表すことができる。
MAD=(A+C)−(B+D) ・・・(2)
FES生成部41は信号増幅部43と加算部45とを有している。信号増幅部43の入力端子は第1の差動演算部37の出力端子に接続され、出力端子は加算部45の他方の入力端子(+)に接続されている。信号増幅部43の増幅率(係数k1)は、±1次の副ビームに基づく非点収差信号SADに混入したトラッキング信号と、主ビーム27に基づく非点収差信号MADに混入したトラッキング信号とが相殺できるように所定の値に設定される。なお、係数k1は正負のいずれも取り得る係数である。係数k1が正(+)の場合は、第1の差動演算部37と同位相且つ振幅がk1倍された信号が、信号増幅部43から出力される。係数k1が負(−)の場合は、第1の差動演算部37の位相と180度位相が異なり且つ振幅がk1倍された信号が、信号増幅部43から出力される。
加算部45の一方の入力端子(+)には第2の差動演算部39の出力端子が接続されている。加算部45は信号増幅部43から出力された、k1倍に増幅された±1次の副ビームに基づく非点収差信号SADと、第2の差動演算部39から出力された主ビーム27に基づく非点収差信号MADを加算するように機能する。従って、FES生成部41から出力されるFESは以下のように表すことができる。
FES={(A+C)−(B+D)}+k1×{(E+G)−(F+H)} ・・・(3)
式(3)に示すように、FES検出部33では、差動非点収差法を用いてFESが検出される。係数k1を最適な値に設定することにより、主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bに混入したトラッククロス信号が減衰されたFESを検出することができる。
図4(b)に示すように、TES検出部35は、受光素子25a、25bから出力された電気信号を差動演算する第3の差動演算部47と、受光素子23から出力された電気信号を差動演算する第4の差動演算部49と、第4の差動演算部49の出力信号から第3の差動演算部47の出力信号を減算してTESを生成するTES生成部(差動演算部)51とを有している。
第3の差動演算部47は加算部47a、47bと差動部47cとを有している。加算部47a、47b及び差動部47cは2入力1出力の回路構成を有している。加算部47aの2つの入力端子(+)は受光領域E1、E2を接続した配線E1+E2と、受光領域H1、H2を接続した配線H1+H2に1つずつ接続されている。加算部47aの出力端子は差動部47cの非反転入力端子(+)に接続されている。加算部47bの2つの入力端子(+)は受光領域F1、F2を接続した配線F1+F2と、受光領域G1、G2を接続した配線G1+G2に1つずつ接続されている。加算部47bの出力端子は差動部47cの反転入力端子(−)に接続されている。差動部47cの出力端子(第3の差動演算部47の出力端子)はTES生成部51に備えられた信号増幅部53の入力端子に接続されている。
受光素子25a、25bの分割線26、28で分割された受光領域の一方の側の受光領域E1、H1、E2、H2から出力された電気信号が加算部47aで加算され、他方の側の受光領域F1、G1、F2、G2から出力された電気信号が加算部47bで加算される。加算部47a、47bから出力された電気信号は差動部47cで差動演算される。第3の差動演算部47での差動演算により得られる電気信号は、±1次の副ビーム29a、29bに基づくプッシュプル信号SPPであり、以下のように表すことができる。
SPP={(E1+E2)+(H1+H2)}−{(F1+F2)+(G1+G2)}=(E+H)−(F+G) ・・・(4)
但し、式(4)において、E1+E2=Eとし、F1+F2=Fとし、G1+G2=Gとし、H1+H2=Hとしている。
第4の差動演算部49は加算部49a、49bと差動部49cとを有している。加算部49a、49b及び差動部49cは2入力1出力の回路構成を有している。加算部49aの2つの入力端子(+)は受光領域A、Dに1つずつ接続されている。加算部49aの出力端子は差動部49cの非反転入力端子(+)に接続されている。加算部49bの2つの入力端子(+)は受光領域B、Cに1つずつ接続されている。加算部49bの出力端子は差動部49cの反転入力端子(−)に接続されている。差動部49cの出力端子(第4の差動演算部49の出力端子)はTES生成部51に備えられた減算部55の非反転入力端子(+)に接続されている。
受光素子23の分割線24で分割された受光領域の一方の側の受光領域A、Dから出力された電気信号が加算部49aで加算され、他方の側の受光領域B、Cから出力された電気信号が加算部49bで加算される。加算部49a、49bから出力された電気信号は差動部49cで差動演算される。第4の差動演算部49での差動演算により得られる電気信号は、主ビーム27に基づくプッシュプル信号MPPであり、以下のように表すことができる。
MPP=(A+D)−(B+C) ・・・(5)
TES生成部51は信号増幅部53と減算部55とを有している。信号増幅部53の入力端子は第3の差動演算部47の出力端子に接続され、出力端子は減算部55の反転入力端子(−)に接続されている。信号増幅部53の増幅率(係数k2)は、対物レンズ13の光記録媒体15のラジアル方向へのシフトによって生じるDCオフセット成分をMPPとSPPとを用いて相殺するために所定の値に設定される。なお、係数k2は正負のいずれも取り得る係数である。係数k2が正(+)の場合は、第3の差動演算部47と同位相且つ振幅がk2倍された信号が、信号増幅部53から出力される。係数k2が負(−)の場合は、第3の差動演算部47の位相と180度位相が異なり且つ振幅がk2倍された信号が、信号増幅部53から出力される。
減算部55の非反転入力端子(+)には第4の差動演算部49の出力端子が接続されている。減算部55は、第4の差動演算部49から出力された主ビーム27に基づくプッシュプル信号MPPから信号増幅部53から出力され、k2倍に増幅された±1次の副ビーム29a、29bに基づくプッシュプル信号SPPを減算するように機能する。従って、TES生成部51から出力されるTESは以下のように表すことができる。
TES={(A+D)−(B+C)}−k2×{(E+H)−(F+G)} ・・・(6)
式(6)に示すように、TES検出部35では、差動プッシュプル法を用いてTESが検出される。係数k2を最適な値に設定することにより、対物レンズ13のラジアル方向への変位によってTESに生じるDCオフセット成分を効果的に除去できる。
次に、光記録媒体15の情報記録面での主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのラジアル方向のスポット間隔BPの最適化について図5乃至図16を用いて説明する。図5は、主ビームと副ビームに混入するトラッククロス信号の様子をスカラ回折理論を用いて算出したシミュレーション結果を示している。横軸は光記録媒体のラジアル方向の位置(μm)を表し、縦軸はトラッククロス信号の振幅(任意単位)を表している。図中◆印を結ぶ曲線は、主ビームに混入するトラッククロス信号を示している。図中■印を結ぶ曲線は、ラジアル方向における、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔が物理的トラックピッチの0.135倍の際に副ビームに混入するトラッククロス信号を示し、図中▲印を結ぶ曲線は、ラジアル方向における、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔が物理的トラックピッチの0.270倍の際に副ビームに混入するトラッククロス信号を示し、図中×印を結ぶ曲線は、ラジアル方向における、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔が物理的トラックピッチの0.405倍の際に副ビームに混入するトラッククロス信号を示し、図中*印を結ぶ曲線は、ラジアル方向における、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔が物理的トラックピッチの0.541倍の際に副ビームに混入するトラッククロス信号を示している。副ビームに混入されるトラッククロス信号は±1次の副ビームに混入されるトラッククロス信号を加算して算出されている。
図5に示すように、主ビームと副ビームとのスポット間隔によって、副ビームに混入するトラッククロス信号の振幅は変化する。しかし、±1次の副ビームに混入されるトラッククロス信号を加算することにより、主ビームに混入するトラッククロス信号と副ビームに混入するトラッククロス信号の位相差は、主ビームと副ビームとのスポット間隔に依存せず、常に0度か180度(即ち、同位相または逆位相)となる。主ビーム及び副ビームにそれぞれ混入するトラッククロス信号の位相差が同位相から逆位相に変わる臨界位置において、副ビームへのトラッククロス信号の混入はほとんどなくなる。
図6は、主ビームに混入するトラッククロス信号と±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号との位相差を示すリサージュ波形を示している。図6(a)及び図6(b)の横軸は主ビームに混入するトラッククロス信号を表し、縦軸は±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号を表している。図6(a)は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔BPを物理的トラックピッチの0.81倍にした場合のトラッククロス信号のリサージュ波形を示している。図6(b)は主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔BPを物理的トラックピッチの1.22倍にした場合のトラッククロス信号のリサージュ波形を示している。主ビームに混入するトラッククロス信号は式(5)に示すプッシュプル法を用いて算出され、±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号は式(4)に示すプッシュプル法を用いて算出されている。
図6(a)及び図6(b)に示すように、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔BPが物理的トラックピッチに対して0.81倍や1.22倍になっても、主ビームに混入するトラッククロス信号と±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号の位相は同相のままである。
図5及び図6に示すように、主ビームに混入するトラッククロス信号と副ビームに混入するトラッククロス信号の位相差は、主ビームと副ビームとのスポット間隔に依存せず、同位相または逆位相となる。図3に示すように、±1次の副ビーム29a、29bを受光する受光素子25a、25bの受光領域内での相対位置が同じ受光領域同士、すなわち受光素子25a、25bの受光領域E1、E2同士、受光領域F1、F2同士、受光領域G1、G2同士及び受光領域H1、H2同士が同電位になるように接続する。こうすると、例えば式(3)に示すFESの検出に用いる差動非点収差法において、光記録媒体の情報記録面上の主ビーム及び±1次の副ビームのスポット間隔を最適値(光記録媒体の物理的トラックピッチの略1/2倍)から遠ざけて配置しても、係数k1を適宜調整して差動演算することにより、主ビームに混入するトラッククロス信号を±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号を用いて除去することができる。なお、これらの結果はスカラ回折理論を用いたシミュレーションにより算出した。
図7は、DVD−RAM及びDVD±R/RWの物理的トラックピッチと、差動プッシュプル法や差動非点収差法における、光記録媒体のラジアル方向の主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔の最適値(物理的トラックピッチの1/2倍)を示している。また、図7は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔をDVD±R/RWの最適値0.37μmに合わせた場合を示している。図7に示すように、DVD±R/RWでは、当該スポット間隔は物理トラックピッチの0.5倍になり、DVD−RAMでは0.3倍になる。
図8は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を0.37μmに設定した場合の、±1次の副ビームに混入したトラッククロス信号の振幅を示している。横軸は主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を光記録媒体の物理的トラックピッチに対する比率で表し、縦軸はトラッククロス信号振幅を表している。トラッククロス信号振幅は主ビーム及び±1次の副ビームの光量、受光素子の感度及び電流/電圧変換時のゲイン(増幅率)によって決まる値であるが、図8では任意単位を用いて示している。また、図中に破線で示す2本の直線は、DVD−RAM及びDVD±R/RWにおける、物理的トラックピッチに対するスポット間隔BPの比率を示している。
スポット間隔をDVD±R/RWの最適値に合わせると、図8に示すように、DVD±R/RWでは最大のトラッククロス信号振幅が得られる。これに対し、DVD−RAMでのトラッククロス信号振幅は最大値の約20%(=0.15/0.75)しか得られない。このため、スポット間隔をDVD±R/RWの最適値に合わせた光ヘッドでは、DVD−RAMに対しては差動非点収差法や差動プッシュプル法は良好に機能しない。
この場合、DVD−RAMに対して、差動プッシュプル法ではなく、3ビーム法でトラッキング誤差信号を得る方法も提案されている。3ビーム法であれば振幅の大きい良好なトラッククロス信号を得ることができる。しかし、±1次の副ビームが記録済み領域と未記録領域にそれぞれかかると、光記録媒体のトラック上の±1次の副ビームのスポット位置に関係なく、±1次の副ビーム間で顕著な光量の差異が生じてしまう。このため、3ビーム法は未記録の光記録媒体に情報を記録する際には使用できないという問題を有している。
図9は、DVD−RAM及びDVD±R/RWの物理的トラックピッチと、差動プッシュプル法や差動非点収差法における、光記録媒体のラジアル方向の主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔の最適値(物理的トラックピッチの1/2倍)を示している。また、図9は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔をDVD−RAMの最適値0.615μmに合わせた場合を示している。図9に示すように、DVD−RAMでは、当該スポット間隔BPは物理トラックピッチの0.5倍になり、DVD±R/RWでは0.83倍になる。
図10は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を0.615μmに設定した場合の、±1次の副ビームに混入したトラッククロス信号の振幅を示している。横軸は主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を光記録媒体の物理的トラックピッチに対する比率で表し、縦軸はトラッククロス信号振幅(任意単位)を表している。また、図中に破線で示す2本の直線は、DVD−RAM及びDVD±R/RWにおける、物理的トラックピッチに対するスポット間隔BPの比率を示している。
スポット間隔をDVD−RAMの最適値に合わせると、図10に示すように、DVD−RAMでは最大のトラッククロス信号振幅が得られる。これに対し、DVD±R/RWでのトラッククロス信号振幅の絶対値は最大値の約50%(=−0.35/0.75)しか得られない。さらに、DVD±R/RWでのトラッククロス信号振幅はDVD−RAMでのトラッククロス信号振幅に対して負の値になる。これは、DVD±R/RWにおいて、主ビームに混入したトラッククロス信号と、副ビームに混入したトラッククロス信号との位相が同相であることを意味している。このため、差動プッシュプル信号の演算を行って得られるTESの振幅は激減してしまう。従って、スポット間隔をDVD−RAMの最適値に合わせた光ヘッドでは、DVDに±R/RW対しては差動非点収差法や差動プッシュプル法は良好に機能しない。
ここで、スポット間隔が変化することにより、TESの振幅が減少することについて説明する。図11及び図12は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を変化させた場合のプッシュプル信号振幅を示している。横軸は位相(度)を表し、縦軸はプッシュプル信号振幅を表している。プッシュプル信号振幅は、主ビームに基づくプッシュプル信号の最大振幅を1として規格化されている。図11及び図12の図中に示す曲線Aは、主ビームに基づくプッシュプル信号を示し、曲線Bは+1次の副ビームに基づくプッシュプル信号を示し、曲線Cは−1次の副ビームに基づくプッシュプル信号を示し、曲線Dは、+1次の副ビームに基づくプッシュプル信号と−1次の副ビームに基づくプッシュプル信号とを加算してk倍した±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号を示し、曲線Eは、主ビームに基づくプッシュプル信号と±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号とを差動演算した差動プッシュプル信号、すなわちTESを示している。
図11(a)及び図11(b)は順に、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を物理的トラックピッチの0.5倍及び0.3倍に設定した際のプッシュプル信号振幅を示している。図12(a)乃至図12(c)は順に、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を物理的トラックピッチの0.25倍、0.2倍及び0.83倍に設定した際のプッシュプル信号振幅を示している。また、図11(b)はスポット間隔をDVD±R/RWの最適値に合わせた場合のDVD−RAMでのプッシュプル信号振幅を示している。図12(c)はスポット間隔をDVD−RAMの最適値に合わせた場合のDVD±R/RWでのプッシュプル信号振幅を示している。
図11及び図12に示すように、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔が狭くなると、+1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線B)と−1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線C)との位相差は大きくなる。このため、両プッシュプル信号を加算してk倍した±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)の振幅は小さくなる。図12(a)に示すように、スポット間隔が物理的トラックピッチの0.25倍になると、+1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線B)と−1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線C)との位相差は180度になり、±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)の振幅は常に0となる。
さらに、スポット間隔を狭くしていくと、図11(b)、図12(a)及び図12(b)に示すように、スポット間隔が物理的トラックピッチの0.25倍となる状態を境界として、主ビームに基づくプッシュプル信号(曲線A)と、±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)との位相が逆位相(180度)から同位相(0度)に反転する。
このように、スポット間隔が変化すると±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)の振幅と位相が変化する。このため、主ビームに基づくプッシュプル信号(曲線A)と±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)とを差動演算して得られるTES(曲線E)の振幅は、スポット間隔が物理的トラックピッチの0.5倍で最大となり、スポット間隔が狭くなるに従って小さくなる。また、スポット間隔が物理的トラックピッチの0.25倍より狭くなると、主ビームに基づくプッシュプル信号(曲線A)の位相と±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)の位相とが同位相になるため、TES(曲線E)の振幅は主ビームに基づくプッシュプル信号(曲線A)の振幅より小さくなる。
主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔が、光記録媒体の物理的トラックピッチの0.5倍の長さより広くなると、図11及び図12(a)及び図12(b)に示す+1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線B)及び−1次の副ビーム基づくプッシュプル信号(曲線C)のそれぞれの位相が180度反転する。しかし、両プッシュプル信号を加算して得た±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)の位相は反転しない。このため、光記録媒体の物理的トラックピッチの0.5倍の長さより広くなるとTES(曲線E)の振幅は小さくなる。なお、スポット間隔が光記録媒体の物理的トラックピッチの0.75倍になると、±1次の副ビームに基づくプッシュプル信号(曲線D)の振幅は0になる。
本実施の形態の光ヘッド1では、±1次の副ビーム29a、29bのスポットは、主ビーム27のスポットに対して、第1及び第2の光記録媒体15a、15bにおけるいずれの最適位置からも意図的に遠ざけて配置されている。こうすると、第1及び第2の光記録媒体15a、15bのいずれにおいても、最適なTES及びFESを検出することはできないが、中程度以上に良好な各種誤差信号を検出することができる。そこで、本実施の形態の光ヘッド1は、スポット間隔BPを第1及び第2の光記録媒体15a、15bのいずれにおいても最適位置とならないように配置する。さらに、誤差信号検出部31の信号増幅部43、45の増幅率(係数k1、k2)を適切に制御してTES及びFESを検出することを特徴とする。
図13は、主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのスポット間隔BPの設定値を示している。図13に示すように、本実施の形態による光ヘッド1では、スポット間隔BPは0.45μmに設定されている。当該スポット間隔BPは第1の光記録媒体15a(DVD−RAM)の物理トラックピッチの0.37倍に相当し、第2の光記録媒体15b(DVD±R/RW)の物理トラックピッチの0.61倍に相当する。
図14は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を0.45μmに設定した場合の、±1次の副ビームに混入したトラッククロス信号の振幅を示している。横軸は主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を光記録媒体の物理的トラックピッチに対する比率で表し、縦軸はトラッククロス信号振幅(任意単位)を表している。また、図中に破線で示す2本の直線は、DVD−RAM及びDVD±R/RWにおける、物理的トラックピッチに対するスポット間隔BPの比率を示している。
スポット間隔BPを0.45μmに設定すると、図14に示すように、DVD−RAM 及びDVD±R/RWでのトラッククロス信号振幅は共に、最大振幅の約70%(=0.5/0.75)の振幅を確保できる。このため、本実施の形態における係数k1、k2は、最適なスポット間隔BP(物理的トラックピッチの0.5倍)に設定した際の係数k1、k2の1.4倍(=1/0.7)程度に設定すればよい。このように、誤差信号検出部31の信号増幅部43、53の増幅率(係数k1、k2)はスポット間隔BPが最適な場合の増幅率(係数k1、k2)に比較的近い値に設定できる。従って、DVD−RAM及びDVD±R/RWにおいて、所望の誤差信号検出方法、例えば、FESの検出には差動非点収差法を用い、TESの検出には差動プッシュプル法を用いることができる。
但し、図14に示すように、スポット間隔を0.45μmよりも広く設定すると、DVD±R/RWにおいて±1次の副ビームに混入するとトラッククロス信号が小さくなる。±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号振幅が小さくなると差動プッシュプル信号振幅は小さくなる。このため、DVD±R/RWにおける差動プッシュプル信号の振幅が最大値の70%以下に減衰してしまう。
ところで、図4(b)に示す信号増幅部53の増幅率(係数k2)は、対物レンズ13が光記録媒体15の半径方向にシフトした場合に発生するオフセット量を相殺するために適した値に設定される。このため、±1次の副ビーム29a、29bに基づくプッシュプル信号振幅の減衰に応じて、係数k2を大きい値に自由に設定することができない。従って、係数k2の値が余り大きくならないように、スポット間隔BPを設定する必要がある。すなわち、TESに用いる差動プッシュプル信号の振幅を十分に確保するために、主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのスポット間隔BPを第2の光記録媒体15bの0.61倍以下の値に設定することが望ましい。
図15は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔の他の設定値を示している。図15に示すように、スポット間隔BPは0.39μmに設定されている。当該スポット間隔BPは第1の光記録媒体15a(DVD−RAM)の物理トラックピッチの0.32倍に相当し、第2の光記録媒体15b(DVD±R/RW)の物理トラックピッチの0.53倍に相当する。
図16は、主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を0.39μmに設定した場合の、±1次の副ビームに混入するトラッククロス信号の振幅を示している。横軸は主ビームと±1次の副ビームとのスポット間隔を光記録媒体の物理的トラックピッチに対する比率で表し、縦軸はトラッククロス信号振幅(任意単位)を表している。また、図中に破線で示す2本の直線は、DVD−RAM及びDVD±R/RWにおける、物理的トラックピッチに対するスポット間隔の比率を示している。
スポット間隔を0.39μmに設定すると、図16に示すように、DVD±R/RWにおけるトラッククロス信号の振幅は最大値の90%(=0.72/0.75)以上の振幅を確保できる。一方、DVD−RAMにおけるトラッククロス信号振幅は最大値の40%(=0.3/0.75)以下に減衰してしまう。ところで、DVD−RAMでは、差動非点収差法を用いてトラッククロス信号成分が除去されたFESを検出することが目的である。FESでは、TESのように、DCオフセット成分を除去するために信号増幅部43の増幅率(係数k1)を設定しなければならないという制約がない。従って、FES検出部33の信号増幅部43の増幅率(係数k1)は、TES検出部35の信号増幅部53の増幅率(係数k2)より高い自由度を持って設定することができる。
但し、信号増幅部43の増幅率(係数k1)を必要以上に大きい値に設定すると、FESの雑音比(S/N比)が劣化する。さらに、対物レンズ13の光軸方向に対物レンズ13を上下動させた場合の振幅(S字信号曲線)のクリップ(ピーク部分の出力が許容電圧範囲を超えた時に発生する波形)が±1次の副ビームに基づく焦点誤差信号に発生すること誘発する。このため、信号増幅部43の増幅率(係数k1)を必要以上に大きい値に設定することは望ましくない。
例えば、±1次の副ビームに混入したトラッククロス信号成分が最大値の40%に減衰した場合、信号増幅部43の増幅率(係数k1)の値はトラッククロス信号が最大の場合の2.5(=1/0.4)倍に設定する必要がある。この場合、±1次の副ビームの焦点誤差信号におけるS字信号曲線の振幅も主ビームの焦点誤差信号におけるS字信号曲線の振幅の2.5倍となり、S/N比の劣化も顕著になる。従って、主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのスポット間隔BPを0.39μmより小さい値に設定することは望ましくない。
以上の結果から、光記録媒体15のラジアル方向における、主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bのスポット間隔BPは、第1及び第2の光記録媒体15a、15bの物理的トラックピッチP1、P2の略(n+1/2)倍にならないようにして、物理的トラックピッチが相対的に広い第1の光記録媒体15aの物理的トラックピッチP1の略±(n+0.32)倍以上、且つ物理的トラックピッチが相対的に狭い第2の光記録媒体15bの物理的トラックピッチP2の略±(n+0.61)倍以下(ただしnは0以上の整数)となるように設定するのが好適である。±1次の副ビーム29a、29bは主ビーム27に対して、トラック1本以上を跨いで設定することも可能であり、跨いだトラックの本数が変数nに相当する。
(実施例)
次に、本実施の形態の光ヘッド1の実施例を示す。主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとの光量比を18:1と設定する。受光素子23及び受光素子25a、25bでの光電変換時のゲイン比を1:7.5とする。この条件において、スポット間隔BPを物理的トラックピッチの0.5倍に設定すると、信号増幅部43の増幅率(係数k1)の値は、(18×1)/(1×2×7.5)×(1/1)=1.2となる。ここで、図15の条件に従い、スポット間隔BPを0.39μmに設定する。この場合、±1次の副ビーム29a、29bに混入するトラッククロス信号振幅が最大値の40%になる。このため、主ビーム27に混入したトラッククロス信号と±1次の副ビーム29a、29bに混入したトラッククロス信号とを相殺するためには、係数k1の値を(18×1)/(1×2×7.5)×(1/0.4)=3.0に設定すればよい。これにより、トラッククロス信号の少ない良好なFESを得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態による光ヘッド1は、主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのスポット間隔BPが第1及び第2の光記録媒体15a、15bの物理的トラックピッチP1、P2の略1/2にならないようにして設定されている。さらに、スポット間隔BPは、物理的トラックピッチが相対的に広い第1の光記録媒体15aの物理的トラックピッチP1の略±(n+0.32)倍以上、且つ物理的トラックピッチが相対的に狭い第2の光記録媒体15bの物理的トラックピッチP2の略±(n+0.61)倍以下に設定されている。このため、光ヘッド1に接続された誤差信号検出部31の信号増幅部43、53の増幅率(係数k1、k2)はスポット間隔BPが最適な場合の増幅率に比較的近い値に設定できる。これにより、誤差信号検出部31は光記録媒体15の物理的トラックピッチの長さによらず、差動非点収差法を用いてトラッククロス信号が減衰したFESを検出することができる。さらに、誤差信号検出部31は光記録媒体15の物理的トラックピッチの長さによらず、差動プッシュプル法を用いてDCオフセット成分が除去されたTESを検出することができる。
次に、光ヘッド1及び誤差信号検出部31の動作について図1を用いて説明する。図1に示すように、レーザダイオード3から出射された発散光の光ビームは回折格子19に入射する。光ビームは回折格子19により0次の主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとに分割される。回折格子19から出射された発散光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは偏光ビームスプリッタ5に入射する。偏光ビームスプリッタ5において、主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bの所定の偏光方位の直線偏光成分は透過して1/4波長板7に入射する。一方、当該偏光方位に直交する直線偏光成分は反射してパワーモニタ用フォトダイオード11に入射し、光ビーム強度が計測される。
1/4波長板7に入射した直線偏光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは、1/4波長板7を透過して円偏光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bとなる。この円偏光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは、コリメータレンズ9で平行光に変換され、コリメータレンズ9を透過して対物レンズ13により集束されて光記録媒体15の情報記録面に集光して反射する。このとき、主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとのラジアル方向のスポット間隔BPは約0.45μmとなり、±1次の副ビーム29a、29bのラジアル方向のスポット間隔は0.90μmとなる。光記録媒体15の情報記録面で反射した円偏光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは、対物レンズ13で平行光にされてからコリメータレンズ9を透過して1/4波長板7に入射する。1/4波長板7を透過することにより、円偏光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは当初の直線偏光から偏光方位が90°回転した直線偏光になって偏光ビームスプリッタ5に入射する。この直線偏光の主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは偏光ビームスプリッタ5で反射させられてセンサレンズ17に入射する。
センサレンズ17を透過した主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bはシリンドリカルレンズ21により非点収差が付与されて受光素子23、25a、25b上にそれぞれ集光する。受光素子23、25a、25bでそれぞれ受光された主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bは電気信号に変換されて誤差信号検出部31に入力される。誤差信号検出部31は、受光素子23、25a、25bから出力された電気信号から第1及び第2の光記録媒体15a、15bによらずトラッククロス信号が減衰したFESと、DCオフセット成分が除去されたTESを検出する。
次に、本実施の形態による光ヘッドの誤差信号検出方法について説明する。上記の光ヘッド1の動作で説明したように、まず、レーザダイオード3から射出した光ビームを回折格子19に入射して回折させて主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bとに分割する。次に、図1及び図2に示すように、対物レンズ13を介して光記録媒体15に集光させた主ビーム27と±1次の副ビーム29a、29bのラジアル方向のスポット間隔BPが0.45μmとなるように調整する。スポット間隔BPは回折格子19の格子面を回折格子19の光軸回りに回転させることにより調整される。
次に、光記録媒体15で反射した主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bを受光素子23、25a、25bの受光面にそれぞれ集光させる。受光素子23、25a、25bで主ビーム27及び±1次の副ビーム29a、29bを受光することにより、受光素子23で光電変換された電気信号が誤差信号検出部31に入力される。また、受光素子25a、25bの受光領域内での相対位置が同じ受光領域同士は接続されているので、受光領域E1、E2からそれぞれ出力された電気信号は同電位になり、受光領域F1、F2からそれぞれ出力された電気信号は同電位になり、受光領域G1、G2から出力された電気信号は同電位になり、受光領域H1、H2から出力された電気信号は同電位になって、誤差信号検出部31にそれぞれ入力される。
誤差信号検出部31では、信号増幅部43、53の増幅率(係数k1、k2)が所定の値に設定され、受光素子23、25a、25bから出力された電気信号を用いて、FES検出部33により式(3)に示す演算処理が行われてFESが検出され、TES検出部35により式(6)に示す演算処理が行われてTESが検出される。
本実施の形態による光ヘッド1における±1次の副ビーム29a、29bに混入するトラッククロス信号は、スポット間隔BPを0.45μmに設定することにより、最大振幅の約70%の振幅を確保することができる。このため、誤差信号検出部31の信号増幅部43、53の増幅率(係数k1、k2)はスポット間隔BPが最適な場合の増幅率に比較的近い値に設定できる。これにより、誤差信号検出部31は光記録媒体15の物理的トラックピッチの長さによらず、差動非点収差法を用いてトラッククロス信号が減衰したFESを検出することができる。さらに、誤差信号検出部31は光記録媒体15の物理的トラックピッチの長さによらず、差動プッシュプル法を用いてDCオフセット成分が除去されたTESを検出することができる。
次に、本実施の形態による光記録再生装置について説明する。図17は、本実施の形態による光ヘッド1を搭載した光記録再生装置150の概略構成を示している。光記録再生装置150は、図17に示すように光記録媒体15を回転させるためのスピンドルモータ152と、光記録媒体15にレーザビームを照射するとともにその反射光を受光する光ヘッド1と、スピンドルモータ152及び光ヘッド1の動作を制御するコントローラ154と、光ヘッド1にレーザ駆動信号を供給するレーザ駆動回路155と、光ヘッド1にレンズ駆動信号を供給するレンズ駆動回路156とを備えている。
コントローラ154にはフォーカスサーボ追従回路157、トラッキングサーボ追従回路158及びレーザコントロール回路159が含まれている。誤差信号検出部31は、フォーカスサーボ追従回路157及びトラッキングサーボ追従回路158に跨って含まれている。フォーカスサーボ追従回路157が作動すると、回転している光記録媒体15の情報記録面にフォーカスがかかった状態となり、トラッキングサーボ追従回路158が作動すると、光記録媒体15の偏芯している信号トラックに対して、レーザビームのスポットが自動追従状態となる。フォーカスサーボ追従回路157及びトラッキングサーボ追従回路158には、フォーカスゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能及びトラッキングゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能がそれぞれ備えられている。また、レーザコントロール回路159は、レーザ駆動回路155により供給されるレーザ駆動信号を生成する回路であり、光記録媒体15に記録されている記録条件設定情報に基づいて、適切なレーザ駆動信号の生成を行う。
これらフォーカスサーボ追従回路157、トラッキングサーボ追従回路158及びレーザコントロール回路159については、コントローラ154内に組み込まれた回路である必要はなく、コントローラ154と別個の部品であっても構わない。さらに、これらは物理的な回路である必要はなく、コントローラ154内で実行されるソフトウェアであっても構わない。
本発明は上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施の形態による光ヘッド1は、受光領域E1、E2から引き出された配線同士、受光領域F1、F2から引き出された配線同士、受光領域G1、G2から引き出された配線同士及び受光領域H1、H2から引き出された配線同士はそれぞれ接続されているが、本発明はこれに限られない。受光領域E1〜H1、E2〜H2から引き出された配線は所定の受光領域同士を接続せずに、誤差信号検出部31に接続してもよい。
この場合、出力端子が加算部37aの2つの入力端子(+)にそれぞれ接続された、受光領域E1、E2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部、及び受光領域G1、G2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部が誤差信号検出部31に備えられている。さらに、出力端子が加算部37bの2つの入力端子(+)にそれぞれ接続された、受光領域F1、F2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部、及び受光領域H1、H2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部を誤差信号検出部31に備えることにより、上記実施の形態のFES検出部33と同様の効果が得られる。
さらに、出力端子が加算部47aの2つの入力端子(+)にそれぞれ接続された、受光領域E1、E2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部、及び受光領域H1、H2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部が誤差信号検出部31に備えられている。さらに、出力端子が加算部47bの2つの入力端子(+)にそれぞれ接続された、受光領域F1、F2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部と、受光領域G1、G2からそれぞれ出力された電気信号を加算する加算部とを誤差信号検出部31に備えることにより、上記実施の形態のTES検出部35と同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態による光記録再生装置150に備えられた誤差信号検出部31は、第1の差動演算部37からの出力信号を信号増幅部43で増幅しているが、本発明はこれに限られない。例えば、差動部37cがk1倍に信号を増幅できる信号増幅機能を有していてもよい、この場合、差動部37cの出力端子を加算部45の他方の入力端子に接続することにより、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態による光記録再生装置150に備えられた誤差信号検出部31は、第3の差動演算部47からの出力信号を信号増幅部53で増幅しているが、本発明はこれに限られない。例えば、差動部47cがk2倍に信号を増幅できる信号増幅機能を有していてもよい、この場合、差動部47cの出力端子を減算部55の反転入力端子(−)に接続することにより、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態による光ヘッド1は、隣接してマトリクス状に配置された4つの受光領域を備えた受光素子23、25a、25bを有しているが、本発明はこれに限らない。例えば、受光素子23、25a、25bの受光領域は5つ以上にそれぞれ分割されていてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果が得られる。