JP2006119045A - 接触燃焼式ガスセンサおよび可燃性ガス測定装置 - Google Patents

接触燃焼式ガスセンサおよび可燃性ガス測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 一酸化炭素を選択的に検出できる接触燃焼式ガスセンサおよび、この接触燃焼式ガスセンサを用いた可燃性ガス測定装置を提供する。
【解決手段】 この接触燃焼式ガスセンサは、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体上に、CoOx(xは1.000〜1.334の実数である)の組成のコバルト酸化物を付着させてなる。銅酸化物を混在させると、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規な接触燃焼式ガスセンサに関する。より具体的には、被測定ガスに含まれる一酸化炭素を検出する接触燃焼式ガスセンサに関する。
ガス機器の点検やメンテナンスにおいては、ガス機器からの排出ガスをサンプリングし、その排出ガス中の一酸化炭素ガス濃度を測定し、その濃度に応じて、ガス機器の故障、異常の有無が判断される。具体的には、所定濃度を超える一酸化炭素ガス濃度が測定された場合、ガス機器の故障、異常と判断される。この濃度測定においては、一般的に、半導体式ガスセンサを利用した可燃性ガス濃度測定装置が用いられることが多い。
半導体式ガスセンサは、酸化スズ(SnO2)を主成分とするn型酸化物半導体焼結材料を使用したガスセンサである(たとえば特許文献1参照)。半導体表面でのガス吸着により電気抵抗が指数関数的に変化(減少)する性質を利用してガス濃度が検出される。
図1は、半導体式ガスセンサの構造を示す図である。図1に示すように、半導体式ガスセンサは、一対の貴金属線コイル(例えば、Ir−Pd合金線)が半導体(SnO2)焼結体で覆われた構造を有している。一方のコイルは、半導体をたとえば350℃程度に加熱するためのヒータの役割を有する。詳しい原理は解明されていないが、このような構造の半導体ガスセンサに可燃性ガスが吸着されると、センサの抵抗値がガス濃度に応じて減少し、その抵抗値の変化を電位差として検出することにより、可燃性ガスの濃度を測定することができる。
このように、半導体式ガスセンサは、ガス濃度に応じて、出力電圧が減少する特性を有するので、低濃度領域における出力が高いという特徴を有する。その反面、検出可能濃度の上限値が低く、半導体式ガスセンサの実用的な検出可能濃度範囲は、約0.005体積%(50体積ppm)〜0.15体積%(1500体積ppm)と比較的狭く、高濃度領域におけるガス濃度を高精度に検出することができない。
一方、半導体式ガスセンサが検出できるガス濃度の上限より高い高濃度領域のガス濃度を検出できるセンサとして、接触燃焼式ガスセンサが知られている。接触燃焼式ガスセンサは、触媒表面での可燃性ガスの接触燃焼を利用して、それに伴うセンサ表面の温度変化をセンサ抵抗値の変化として検出する方式のセンサである。
図2−A,Bは、接触燃焼式ガスセンサの構造を説明するための図である。図2−Aは、検出素子としての接触燃焼式ガスセンサの構造を示す図であって、例えば、直径約20μmの白金コイルを触媒担持担体としてのアルミナで球状に包むような構造であり、その触媒担持担体の表面に触媒(例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属)が付着している。
図2−Bは、接触燃焼式センサを用いた検出回路を示す図である。白金コイルは、センサを加熱するヒータとしての役割のほか、可燃性ガスの接触燃焼による温度の変化を捉える温度計としての役割も兼ねている。このため、検出素子E1は、ガスの接触燃焼以外の温度変化、例えば、周囲の温度や風の変化に対しても抵抗値が変化する。これを補償するために温度補償素子E2が用いられる。温度補償素子は、検出素子と温度特性の同一なものが望ましいため、検出素子と同一の白金コイルに触媒を担持しないアルミナを焼結させたものを用いている。図2−Bの回路による検出原理は以下のとおりである。
可燃性ガスの酸化反応に対して、高い触媒活性を持つ白金やパラジウムを担持したアルミナで白金コイルを包み込んだ検出素子E1に、可燃性ガスを含む空気を接触させると、触媒上で可燃性ガスと空気中の酸素が反応(接触燃焼反応)し、反応熱(燃焼熱)が発生する。この反応熱は可燃性ガスの濃度に比例し、それに応じて白金コイルの抵抗値が増大する。このため、結果的に、空気中の可燃性ガスの濃度に比例して白金コイルの抵抗値が増大する。これを電気量に変換するために、図2−Bのように、検出素子E1と温度補償素子E2を2辺とするブリッジ回路(他辺は固定抵抗R1、R2)が用いられる。検出素子E1及び温度補償素子E2には、常時100mA程度の電流が供給され、可燃性ガスが接触燃焼反応を起こすのに必要な温度に保たれている。検出素子E1と温度補償素子E2の電気抵抗が等しくなるように設定されているため、可燃性ガスが含まれていない空気中では、ブリッジ回路は平衡を保ち、A−B間に電位差は生じない。一方、空気中に可燃性ガスがあるときには、その接触燃焼のために、検出素子E1の温度が上昇し、電気抵抗が大きくなるため、A−B間に電位差が生じる。この電位差は可燃性ガスの濃度に比例して変化するため、この電位差により、空気中の可燃性ガスの濃度を知ることができる。
特開平11−326258号公報(段落番号0010)
ガス機器からの排出ガス等の被測定ガス中には、一酸化炭素と共に水素も共存する。燃焼不良の検出の観点からは、特に一酸化炭素の検出が重要であるが、上記従来方式の接触燃焼式ガスセンサは可燃性ガスを纏めて検出するものであり、その構成成分を別個に検出するものではない。
本発明は、このような問題点を解決し、水素を燃焼させず、一酸化炭素を選択的に検出できる接触燃焼式ガスセンサを提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
本発明の一態様によれば、コバルト酸化物よりなる接触燃焼式ガスセンサが提供される。コバルト酸化物がCoOx(xは1.000〜1.334の実数である)の組成のコバルト酸化物であること、コバルト酸化物を一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分と混合させてなることが好ましい。
本発明の他の一態様によれば、水酸化コバルト、一酸化一コバルトおよび四酸化三コバルトからなる群から選ばれた少なくとも一つのコバルト化合物を含む組成物を焼成して得られるコバルト酸化物よりなる接触燃焼式ガスセンサが提供される。この組成物が、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分を構成できる担体用原料を含むこと、焼成温度が300〜750℃の範囲にあること、コバルト酸化物を、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体上に担持してなること、コバルト酸化物に銅酸化物を混在させてなること、コバルト酸化物と銅酸化物とにおけるCoとCuの比が、Co34:CuO(モル比)換算で4:1〜1:3の範囲にあること、センサーが多孔体であることが好ましい。
これらの発明態様により、一酸化炭素を選択的に検出できる接触燃焼式ガスセンサを提供できる。
本発明の他の一態様によれば、上記の接触燃焼式ガスセンサにより被測定ガスに含まれる一酸化炭素を検出する可燃性ガス測定装置が提供される。この発明態様により、一酸化炭素を選択的に検出測定できる可燃性ガス測定装置が得られる。
本発明により、一酸化炭素を選択的に検出できる接触燃焼式ガスセンサおよび、この接触燃焼式ガスセンサを用いた可燃性ガス測定装置が得られる。
以下に、本発明の実施の形態を図、表、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、実施例等及び説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
本発明に係る接触燃焼式ガスセンサ(以下単に「センサ」ともいう)はコバルト酸化物よりなる。
このコバルト酸化物は、CoOx(xは1.000〜1.334の実数である)の組成を有することが好ましい。xは、更に好ましくは1.300〜1.334の実数である。このような酸化物は典型的にはCo34であるが、それより低い酸化数のものでもよく、それらの混合物でもよい。
このようなコバルト酸化物を使用すると、一酸化炭素を選択的に検出することができることが判明した。xが1未満では、一酸化炭素への酸素供給が速やかに行われず一酸化炭素を燃焼させる能力が不足する場合がある。更に、センサとして利用するときコバルト酸化物が空気中で徐々に酸化され、酸化数が変化することにより燃焼能力についても変化が生じ、結果的にセンサの感度が初期と時間経過後で異なってしまう場合がある。またxが1.334を超えると、一酸化炭素以外の炭化水素、水素を燃焼してしまう場合もあり得、選択性が失われ易くなる。また、空気中で徐々に安定な酸化数のコバルト酸化物に変化してしまうため初期感度と時間経過後の感度が異なってしまう場合がある。
なお、本発明において「検出」は、単に一酸化炭素の存在を見出すこと、一酸化炭素の濃度がある値以上であることを見出すこと、一酸化炭素の濃度がある範囲内にあることを見出すこと、一酸化炭素の濃度がある値であることを測定することのいずれの意味にでも用いることができる。以下においては、本発明に係るセンサを、一酸化炭素の濃度がある値であることを測定するために使用する例について主に説明するが、上記のどのような意味の検出目的にも本発明に係るセンサを使用できることは言うまでもない。
このような接触燃焼式ガスセンサは、コバルト酸化物を、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分と混合させて造ることができる。一酸化炭素および水素に対し不活性であれば、いわゆる担体には用いられないような化合物を含んでいてもよい。
また、コバルト酸化物を、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体上に担持してもよい。この場合、コバルト酸化物ならびに一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分を混合させたものを一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体上に担持してもよい。この方法によりたとえば薄膜状のセンサを得ることができる。
上記xの決定は公知のどのような分析方法によってもよい。直接分析により求められる場合には、その値を採用することができる。担体成分とコバルト酸化物が混在する場合には、分析により直接上記xを知ることはできない場合もあるが、そのような場合には、担体成分がすべて化学式通りの酸化物構成になっているという前提の下に計算する。たとえば、分析の結果、センサがCoとAlと酸素とからなっており、その構成割合が把握できた場合には、AlがすべてAl23になっているものとして、計算すればよい。
このようなコバルト酸化物としては、どのような原料を焼成して作製してもよい。酢酸塩、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩を例示することができる。単体のCoを使用してもよい。本発明の趣旨に反しない限り、他の元素との複塩になっていてもよい。しかしながら、水酸化コバルト、一酸化一コバルトおよび四酸化三コバルトからなる群から選ばれた少なくとも一つのコバルト化合物を含む組成物を焼成して得られるものを使用することが、製品品質の安定性の上から好ましい。この場合における、水酸化コバルト、一酸化一コバルトおよび四酸化三コバルトの割合には特に制限はなく目的に応じて任意に定めることができる。得られる一酸化炭素除去触媒に所定の形状を与えるには、焼成に際しては、原料を、水を媒体とするスラリーとして扱うことが好ましい。
使用する組成物中には、本発明の趣旨に反しない限り、他の成分が含まれていてもよい。一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分を構成できる担体用原料や有機物をその典型的なものとして例示できる。前者の場合には、粒子状等の様々な形状のセンサを容易に作製することができるようになる。後者の場合には、焼成により多孔体を得ることができるようになる。
また、この組成物を、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体上に担持して焼成してもよい。このようにすればたとえば薄膜状のセンサを容易に得ることができる。
以下、本発明に係るセンサの製造方法の一例について説明する。本発明のセンサは、担体用原料と本発明に係るコバルト化合物とを分散した水スラリーを、ニッケル(Ni)線や白金(Pt)線からなるコイル線に付着させて焼結することで得ることもできるが、電着塗装手法を用いて、以下のようにして製造することもできる。
図3−A〜Dは電着塗装手法によるセンサの製造方法を説明する図である。まず、図3−Aに示すように、15μm〜30μm程度の細線のニッケル(Ni)線や白金(Pt)線からコイル線を作成する。コイル線の線材として、Fe−Pd系合金線が用いられてもよい。また、あらかじめ作成されたコイル線を使用してもよい。
続いて、図3−Bに示すように、担体用原料、本発明に係るコバルト化合物、電着樹脂を水中に分散した電着液スラリーにコイル線を浸す。そして、コイル線を陰極とし、所定時間、所定電圧を印加し、コバルト化合物と電着樹脂が混合された担体用原料をコイル線に電着させる。このとき、電圧を間欠的に印加することが好ましい。電圧を間欠的に印加するのは、電着中の電着液の成分が一定濃度を保つための拡散時間を設けることができ、一定電圧を持続的に印加する場合と比較して、電着液成分の濃度むらを抑えることができるからである。
電着液は、コバルト化合物、担体用原料、電着樹脂を所定の割合で含む水スラリーである。各成分の構成割合(重量比)については、電着樹脂:(コバルト化合物+担体用原料)が60:40〜85:15であることが好ましい。焼成の際に電着樹脂は分解されて、その跡が孔となるが、電着樹脂の割合を比較的大きくすることで、貫通孔や比較的径が大きく深い孔を多数形成することができ、担体内部のコバルト化合物を有効に活用することができる。
なお、コバルト化合物と担体用原料との重量割合は、Co:担体用原料が1.00:4.00〜2.00:1.00の範囲が好ましい。この範囲よりCoの割合が低いと一酸化炭素の燃焼効率が低くなりすぎる場合がある。また、この範囲よりCoの割合が高いと、コイルに付着後、もろく崩れやすくなり、センサを取り付けた測定器等が輸送中振動にあった時にコイルから剥離してしまう問題が生じる場合がある。
担体用原料としては、そのものがそのまま担体成分となる場合にはそのものが、また、焼成の結果担体成分が得られる場合にはその担体成分が、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物であれば、どのようなものでもよい。公知の材料から任意に選択することが可能である。通常、アルミナ(Al23)や水酸化アルミニウムが使用されるが、シリカ(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化クロム、酸化ニッケルなどが用いられてもよい。水酸化アルミニウムの場合は、水に溶解できるので、組成物の濃度が不均一になりにくく好ましい。
電着樹脂には、電着塗装に使用できる公知のどのような材料を使用してもよい。例えば、酢酸ビニルとアクリル酸アルキルエステル(アクリル樹脂)の混合物を挙げることができる。水溶性の樹脂であることが好ましい。
電着により、図3−Cに示すように、コバルト化合物、電着樹脂及び担体用原料の混合物がコイル線に薄膜状に付着し、コイル線のピッチが狭い場合は、隣接するコイル線に付着する混合物同士が接触し、外観上、中空薄膜の円筒形状となる。
ついで、図3−Dに示すように、コバルト化合物、電着樹脂及び担体用原料の混合物が薄膜状に付着したコイルを焼成すると、付着した電着樹脂分が酸化し、分解してしまうので、コイルへの付着物は、担体中にコバルト酸化物が分散した多孔体となる。
焼成は、空気等の酸素を含む雰囲気中で、外部から熱を加えると同時に、コイルに通電しコイルを加熱することで、内部からも加熱しながら行うことが好ましい。
焼成は、担体用原料を焼成して担体とし、電着樹脂を分解させるのに必要な条件が設定される。好ましい焼成条件は、雰囲気温度:300〜750℃、より好ましくは500〜700℃、焼成温度(すなわち焼成物表面温度):300〜750℃、より好ましくは500〜700℃、コイル印加電圧:3〜5V、焼成時間:10分以上である。これより温度を上げてしまうと、特にNi線の場合などではコイル線が酸化を起こし、コイルの役割を果たさないという問題を生じる。また、上記条件より低い場合は、電着樹脂分の燃焼が不十分となり、充分な多孔性を得ることが困難になる場合がある。
本発明に係るセンサについて、コバルト酸化物に銅酸化物を混在させると、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られることが判明した。このことにより、一酸化炭素濃度の正確な検出が期待できる。銅酸化物は、焼成された場合にはCuOの形態になっているものと思われるが、Cu2O等その他の酸化数であってもよい。
一酸化炭素を燃焼させるコバルト酸化物の触媒作用は、コバルト酸化物が環境雰囲気中から酸素を受け取り、この酸素を使って一酸化炭素を燃焼させる経路によるものと思われている。
銅酸化物の存在により、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られるのは次のような理由によるのではないかと考えられる。すなわち、銅酸化物が存在しない場合には、一酸化炭素をコバルト酸化物が燃焼させる能力が、コバルト酸化物が環境雰囲気中から酸素を受け取る能力より大きく、コバルト酸化物への酸素供給が不足して、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られない。一方、銅酸化物が存在する場合には、コバルト酸化物が環境雰囲気中から酸素を受け取る能力を高める働きがあり、これにより、コバルト酸化物への酸素供給不足が解消され、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られるようになるのである。
コバルト酸化物と銅酸化物とにおけるCoとCuの比は、Co34:CuO(モル比)換算で4:1〜1:3の範囲にあることが好ましい。
この場合の銅酸化物は、銅化合物等を原料組成物の一部として含ませ、コバルト化合物の焼成時に同時に焼成させることにより得ることもできる。このような銅化合物としては、焼成の結果銅酸化物となるものであればどのようなものを使用してもよい。酢酸塩、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩を例示することができる。単体の銅を使用してもよい。本発明の趣旨に反しない限り、他の元素との複塩になっていてもよい。
上記のようにして作製された本発明に係るセンサを採用すると、一酸化炭素を選択的に検出できる可燃性ガス測定装置を実現することができる。また、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られる。このような可燃性ガス測定装置は、ガス機器の点検やメンテナンスのためにガス機器からの排出ガス中の一酸化炭素を測定する場合のみならず、一般的に一酸化炭素を検出する目的で広く使用することができる。特に炭化水素を燃料とする場合の燃焼器における一酸化炭素の検出に有用である。測定できる一酸化炭素の濃度範囲としては、100〜60000体積ppmが好ましい。
本発明に係るセンサでは、広い温度範囲に渡って水素を燃焼させないので、たとえば、ガス測定時におけるセンサの表面温度を200〜320℃の広い範囲にすることも可能であり、使用上の自由度が大きい。
なお、本発明に係るセンサに一酸化炭素と水素との両方に対し活性な成分、たとえば白金成分を混在させることは、一酸化炭素の選択的検出を必要としない場合以外は避けた方がよい。特にモル比でコバルトの1/10を超えるとその影響が大きくなる。
しかしながら、一酸化炭素および水素に対し不活性であれば、他の化合物が共存していても差し支えない。たとえば、CuOには、組成の安定化のためにクロム酸化物、マンガン酸化物、バリウム酸化物、シリカ等が含まれていることがあるが、後述するように、このような共存化合物を共存させたまま焼成して作製されたセンサの性能は、このような共存化合物が共存しない場合と同等の性能を示した。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述する。
[実施例1]
(センサの作製)
担体用原料としてはγーアルミナ(Al23)を使用し、本発明に係るコバルト化合物は水酸化コバルトを空気中にて475℃、3時間焼成し、四酸化三コバルトにしたものを使用した。
水酸化コバルトを焼成すると、熱分析では171℃から水分が失われ始め、20〜400℃においては、水酸化コバルトと一酸化一コバルトおよび四酸化三コバルトが共存する状態になり、それ以上の温度では四酸化三コバルトになっていることが見出された。最終的に四酸化三コバルトになっていることはX線回折でも確認した。本例の四酸化三コバルトについては、CoOxとして表したときのxは1.334であった。
担体原料のγーアルミナは、純度が99.99重量%、粒径が0.01μm以下のものを使用し、水酸化コバルトについてもほぼ純粋な水酸化コバルトを使用した。
2.5gのγーアルミナと4gの上記四酸化三コバルトよりなる原料および20gの純水を、酢酸ビニルとアクリル酸アルキルエステル(アクリル樹脂)の混合物を含む30gの電着液と混合し、水スラリーを得た。この水スラリーを18μmの線径のNiコイル線に付着させ、空気中にて10分乾燥した後に、大気環境下で電気式の焼成炉を使用して雰囲気700℃にて10分間かけて焼成し、外径約1.2mm、内径約0.4mm、高さ3mmの中空円筒状の多孔体のセンサを作成した。この間Niコイル線には7Vの電圧を印可した。放射温度計による測定から、焼成表面温度が瞬時最大750℃、常時700℃であることを確認した。
(一酸化炭素の検出)
一酸化炭素100体積%からなる試験ガス(試験ガス(1))および一酸化炭素66.6体積%、水素33.4体積%からなる試験ガス(試験ガス(2))を空気にて希釈し、一酸化炭素の各濃度水準の混合ガスを作り、上記で作成したセンサを使用して測定を行うと共に、一酸化炭素を赤外線分析計、水素をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。測定した試験ガスの温度は25℃であった。Niコイル線に通電して、放射温度計で測定したセンサ表面温度は、上記試験ガスを流さないとき230℃であった。
センサで得られた一酸化炭素の検出出力と一酸化炭素の測定濃度との関係を表1、図4に示す。表1および図4の結果より、本発明に係るセンサが、1500体積ppmを超え、50000体積ppmの高濃度でも高精度で測定可能であることが示された。また、一酸化炭素単独の場合と水素が共存する場合の出力差がほとんどなく、水素が共存する場合でも良好な一酸化炭素の選択的検出性があることが示された。
センサは、通常、使用時に表面に付着する異物を除去するために、400℃でヒートクリーニングを行う。このヒートクリーニングを模して、400℃で30秒間、本発明に係るセンサを熱処理した後、センサを測定条件(230℃)で24時間、排気ガス(CO2が8体積%、酸素が5体積%、COが300体積ppmで残余は窒素)に曝して被毒させ、再度上記の条件のヒートクリーニングを行った後上記と同様の測定を行った結果、上記と同様の一酸化炭素の検出出力と一酸化炭素の測定濃度との関係が得られた。
Figure 2006119045
[実施例2]
(一酸化炭素の選択検出性の確認)
センサ温度と排気ガス曝露温度を20¥¥0℃に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。最初の測定結果を表2および図6に示す。表2および図6より、本発明に係るセンサが、1500体積ppmを超え、50000体積ppmの高濃度でも高精度で測定可能であることが示された。また、一酸化炭素単独の場合と水素が共存する場合の出力差がほとんどなく、水素が共存する場合でも良好な一酸化炭素の選択的検出性があることが示された。排気ガス曝露後の測定でも同様の一酸化炭素の検出出力と一酸化炭素の測定濃度との関係が得られた。
なお、以下の表において、「水素感度/CO感度%」は、同一濃度における一酸化炭素についてのセンサ出力に対する水素についてのセンサ出力の百分率を意味し、具体的には、たとえば、一酸化炭素が5000体積ppmで水素を含まない気体の場合のセンサ出力が273mV、一酸化炭素が5000体積ppm、水素が2500体積ppmの混合気体のセンサ出力が279mVの場合、(279−273)=6mVを、水素が2500体積ppmで一酸化炭素を含まない気体の場合のセンサ出力と考え、同一濃度である5000体積ppmにおける一酸化炭素についてのセンサ出力に対する水素についてのセンサ出力の百分率を、(6×2/273)×100=4.4%として算出する。
Figure 2006119045
[実施例3]
(一酸化炭素の選択検出性の確認)
センサ温度と排気ガス曝露温度を320℃に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。最初の測定結果を表3および図7に示す。表3および図7より、本発明に係るセンサが、1500体積ppmを超え、50000体積ppmの高濃度でも高精度で測定可能であることが示された。また、一酸化炭素単独の場合と水素が共存する場合の出力差がほとんどなく、水素が共存する場合でも良好な一酸化炭素の選択的検出性があることが示された。排気ガス曝露後の測定でも同様の一酸化炭素の検出出力と一酸化炭素の測定濃度との関係が得られた。
Figure 2006119045
[実施例4]
(一酸化炭素の選択検出性の確認)
センサ温度と排気ガス曝露温度を330℃に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。最初の測定結果を表4および図8に示す。表4および図8より、本発明に係るセンサが、1500体積ppmを超え、50000体積ppmの高濃度でも高精度で測定可能であることが示された。なお、本実施例については、恐らくセンサ温度が高くなったことに起因して、水素が共存する場合のセンサ出力が、一酸化炭素単独の場合に比べて幾分高くなり、一酸化炭素の選択的検出性が若干悪化した。排気ガス曝露後の測定でも同様の一酸化炭素の検出出力と一酸化炭素の測定濃度との関係が得られた。
Figure 2006119045
[実施例5]
(銅酸化物の効果の確認)
四酸化三コバルトに代えて四酸化三コバルトとCuOの組み合わせを使用し、CoとCuの比は、Co34:CuO(モル比)換算で、4.0:1.0,3.0:1.0,1.0:1.0,1.0:3.0,1.0:4.0の5水準を選択した以外は、実施例1と同様にしてセンサを作製した。いずれの場合も四酸化三コバルトの使用量は実施例1における四酸化三コバルト量と同じにした。
結果を表5と図5に示す。図5には、銅酸化物を含まない、実施例1の結果も示されている。この結果、銅酸化物を共存させることにより、一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性が得られることが示された。
Figure 2006119045
[実施例6]
(不純物の影響の確認)
銅酸化物には、組成を安定化させる目的で、クロム酸化物、マンガン酸化物、バリウム酸化物、シリカ等が加えられている場合が多い。
これらの物質の影響を見るため、四酸化三コバルトに代えて、表6に示す組成の組み合わせを使用した以外は、実施例1と同様にしてセンサを作製した。いずれの場合も四酸化三コバルトの使用量は実施例1における四酸化三コバルト量と同じにした。
結果を表6に示す。この結果、これらの物質が共存しても一酸化炭素濃度とセンサ出力との間に良好な直線性に影響がないことが示された。
Figure 2006119045
半導体式ガスセンサの構造を示す模式図である。 接触燃焼式ガスセンサの構造を説明するための図である。 接触燃焼式ガスセンサの構造を説明するための他の図である。 電着塗装手法によるセンサの製造方法を説明する模式図である。 電着塗装手法によるセンサの製造方法を説明する他の模式図である。 電着塗装手法によるセンサの製造方法を説明する他の模式図である。 電着塗装手法によるセンサの製造方法を説明する他の模式図である。 センサ出力と一酸化炭素の測定濃度との関係を示すグラフである。 センサ出力と一酸化炭素の測定濃度との関係を示す他のグラフである。 センサ出力と一酸化炭素の測定濃度との関係を示す他のグラフである。 センサ出力と一酸化炭素の測定濃度との関係を示す他のグラフである。 センサ出力と一酸化炭素の測定濃度との関係を示す他のグラフである。

Claims (12)

  1. コバルト酸化物よりなる接触燃焼式ガスセンサ。
  2. 前記コバルト酸化物がCoOx(xは1.000〜1.334の実数である)の組成のコバルト酸化物である、請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  3. 前記コバルト酸化物を一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分と混合させてなる、請求項1または2に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  4. 水酸化コバルト、一酸化一コバルトおよび四酸化三コバルトからなる群から選ばれた少なくとも一つのコバルト化合物を含む組成物を焼成して得られるコバルト酸化物よりなる接触燃焼式ガスセンサ。
  5. 前記組成物が、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体成分を構成できる担体用原料を含む、請求項4に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  6. 前記焼成温度が300〜750℃の範囲にある、請求項4または5に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  7. 前記コバルト酸化物を、一酸化炭素および水素に対し不活性な無機化合物からなる担体上に担持してなる、請求項1〜6のいずれかに記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  8. 前記コバルト酸化物に銅酸化物を混在させてなる、請求項1〜7のいずれかに記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  9. 前記コバルト酸化物と銅酸化物とにおけるCoとCuの比が、Co34:CuO(モル比)換算で4:1〜1:3の範囲にある、請求項8に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  10. 多孔体である、請求項1〜9のいずれかに記載の接触燃焼式ガスセンサ。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の接触燃焼式ガスセンサにより被測定ガスに含まれる一酸化炭素を検出する可燃性ガス測定装置。
  12. 前記ガス測定時における前記接触燃焼式ガスセンサの表面温度が200〜320℃の範囲にある、請求項11に記載の可燃性ガス測定装置。
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