JP2006118029A - ホワイトゴールド合金及びその熱硬化処理方法 - Google Patents

ホワイトゴールド合金及びその熱硬化処理方法 Download PDF

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Abstract

【目的】 ニッケルフリーのホワイトゴールド合金であって、明るい白色を損なわずにバネ材としても十分な弾性強度を有し、しかも安価な石膏系埋没材を使用して製品を鋳造することができるものを比較的低コストで提供する。
【構成】 それぞれ重量比で75%以上の金と8〜9%のパラジウムと16〜17%の銅からなる3元合金であるホワイトゴールド合金である。そのホワイトゴールド合金を鋳造等によって所望の形状に成形した後、600℃以上の温度で30分以上保持し(S1)、その後急水冷した(S2)後に、275℃以上の温度で30分以上保持し(S3)、その後空冷する(S4)ことによって熱硬化させることにより、バネ材に必要とされる弾性強度(ビッカース硬度HV190〜HV240)を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、装身具などのバネ材として利用されるホワイトゴールド合金、及びその硬化処理方法に関する。
従来から、ブローチやネクタイピンなどの装身具、あるいは各種の装飾品においては、留め金などに弾性を持たせるバネ材としてホワイトゴールド合金が多用されている。このホワイトゴールド合金は、K18(金の含有率が75%以上)の純度の金合金であり、明るい白色で光沢がよく優れた美観を呈するとともに、引っ張り強度や鋳造性などの機械的性質にも優れているため、バネ材以外にも装身具や装飾品などの本体部の材料としても多用されている。
このホワイトゴールド合金の一般的な組成としては、含有率が重量比で75%以上の金(Au)の他に主に銀(Ag)や銅(Cu)を含み、さらに漂白を兼ねた機能材としての用途別にパラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)などを添加させていた。そして装身具等に使用されるバネ材としては、機能的にバネ性が要求されることはもちろんのこと、生産性や仕上りのよいすぐれた鋳造性も要求されることから、以前はニッケルを多く添加したものが使用されていた。
しかし近年では、ニッケルが人体に対してアレルギー反応を生じさせるなどの悪影響を及ぼすことが指摘されているため、特に身体に付ける装身具の材料として使用するホワイトゴールド合金は、ニッケルを全く添加しないニッケルフリーのものに移行する傾向にある。また、生産コストの面からできるだけ高価なパラジウムを抑え、光沢などの美観を維持したい要望もある。
そこで、例えば特許文献1には、金(Au)が75重量%に対して銅(Cu)とパラジウム(Pd)だけをそれぞれ10〜15重量%配合した3元の白色金合金が提案されている。これによれば、ニッケルが配合されていないので人体にアレルギー反応を生じさせることがなく、また銀が配合されていないため、研磨加工に際して毛羽立ちやササクレ現象の発生がほとんどなく、表層を容易に金属光沢面にすることができ、硬度および強度、鋳造特性等も向上し宝飾品としての汎用性に優れたものとなっている。
特開平9−78160号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された白色金(ホワイトゴールド)合金では、バネ材として要求される弾性強度を得ることができない。また、パラジウムも高価な元素であるため、銀を使用しなくても代わりにパラジウムの配合率を多くしたのでは、あまりコストの低下につながるものではなかった。
さらに、パラジウムの含有率が高いため融点が高く、所望の成形品を得るために鋳造する場合には、プラチナ用の高価な埋没材(型材)とプラチナ用の鋳造機を使用しなければならず、手間と時間とコストがかかり、しかも仕上りも従来の金銀合金に比べて悪い。
この発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、ニッケルフリーのホワイトゴールド合金であって、明るい白色を損なわずにバネ材としても十分な弾性強度を有し、しかも安価な石膏系埋没材を使用して安価な鋳造機で製品を鋳造することができるものを比較的低コストで提供することを目的とする。
この発明によるホワイトゴールド合金は、それぞれ重量比で75%以上の金と8〜9%のパラジウムと16〜17%の銅からなる3元合金である。
特に、重量比で75%が金で残りがパラジウムと銅であることが望ましい。
また、この発明によるホワイトゴールド合金の熱硬化処理方法は、上記ホワイトゴールド合金を鋳造等によって成形した後、600℃以上の温度で30分以上保持し、その後急水冷した後に275℃以上の温度で30分以上保持し、その後空冷する。
この方法によって硬化処理を行った上記のホワイトゴールド合金は、ビッカース硬度がHV190〜HV240となる。
この発明によるホワイトゴールド合金は、金、銅及びパラジウムのみを含有する3元合金であり、ニッケルを全く添加していないことから装身具として身体に付けてもアレルギー反応を生じさせることのない身体にやさしい材料である。さらに、パラジウムの含有率が重量比で8〜9%であるため、融点が低く1200℃以下で鋳造できるため、安価な石膏系埋没材と鋳造機を用いて低コストで鋳造できるとともに、外観においても明るい白色を維持でき、他の含有合金と比較して高価なパラジウムの含有量も少ないので、比較的安価なホワイトゴールド合金を提供することができる。
また、銅の含有率が重量比で16〜17%であることから、熱硬化処理を施すことによってバネ材に必要とされる弾性強度が得られるとともに、熱硬化処理の際に割れが生じるのを防ぐことができる。
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
この発明によるホワイトゴールド合金の一実施例は、金(Au)を重量比で75%含有しており、その他に銅(Cu)を重量比で17%、パラジウム(Pd)を重量比で8%含有した3元合金である。これは、金の含有純度からK18(18金)の金合金であり、さらに外観が明るい白色を呈していることから白色金合金(ホワイトゴールド合金)と称されるものである。
そこで、この実施例のホワイトゴールド合金の特徴について詳細に説明する。
まず、このホワイトゴールド合金は、組成が完全に金、銅及びパラジウムの3元で構成されており、ニッケルを全く添加していないので装身具として身体に付けてもアレルギー反応を生じさせることがなく、身体にやさしい材料となっている。
そして、実際にこのようなホワイトゴールド合金を装身具の材料として使用する場合には、通常は表面にロジウムメッキを施して明るい白色で光沢を持たせるようにしているが、長く使用することによってこのメッキが部分的にはがれても地肌が目立つことがないよう、地金にはメッキと同等程度に明るい白色と表面の仕上りのよさが要求される。そこで、この実施例のホワイトゴールド合金は、重量比8%のパラジウムを含有しているため、パラジウムが5%未満の場合のような淡いピンクの色彩を帯びることなく、明るい白色を呈し、装身具への使用に好適な材料となっている。
また、このホワイトゴールド合金は、後述する計測結果からも分かるように融点が1016℃であり、それよりも100〜120℃高い温度に設定される鋳造温度(1136℃)が石膏材の分解点温度である1200℃を超えないため、安価な石膏系埋没材を利用して鋳造作業を行うことができ、少ない手間と時間とコストで所望の装身具の本体や部品等を鋳造により成形することができる。また、融点が低いため、パラジウムを含有していることに起因する鋳造欠陥(ゴマスやピンホールなどの穴が開いたり、鋳肌の仕上りが悪くなるなどの欠陥)の発生を防ぐことができ、鋳造品質の高い成形品を得ることができる。
そして、このホワイトゴールド合金は、適量の銅を含有していることによって硬度などの機械的性質を得ており、さらに図1によって後述する熱硬化処理を施すことによってビッカース硬度HV190〜240の硬度を得ることができる。これは、装身具等に使用するホワイトゴールド合金製のバネ材として要求される弾性強度として最適である。
ここで、図1はこのホワイトゴールド合金の成形後に行う熱硬化処理の一実施例を示すフロー図であり、この図を参照してその処理について説明する。この図においては、各工程を「S」と略記している。なお、この熱硬化処理は、前述したこの発明によるホワイトゴールド合金を所望の形状に成形した後に実行するが、鋳造によって成形したものに適用する場合には、鋳造直後の石膏型(埋没材)に入ったままの高温状態のものを急冷したもの、あるいは室温まで自然冷却させた状態のもののどちらの鋳造物(成形物)に対しても同様に行うことができ、いずれの場合にも同等の硬度が得られる。
まず、工程1で前述したこの発明によるホワイトゴールド合金(Au:75%,Cu:17%,Pd:8%)による成形物(成形品)を炉の中に置き、600℃の温度で30分以上保持する。これにより、成形物の内部に残留している応力を除去することができる。次に、工程2でその成形物を水槽に入れて急水冷する。まだこの時点では、ビッカース硬度HV160程度のやわらかい状態となっている。そして、次の工程3で再びその成形物を炉に戻し、今度は275℃の温度で30分以上保持し、その後工程4で常温まで空冷する(常温の大気中に放置する)ことにより硬度をHV190〜HV240まで上げることができる。そして、この熱硬化処理を終了する。
以上のような熱硬化処理を行うことにより、本来やわらかいホワイトゴールド合金に対して、装身具のバネ材として必要な弾性強度を容易かつ低コストで与えることができる。なお、工程1と工程3における設定温度は、それぞれ上記の600℃と275℃が最低必要とする温度であり、それ以上に高い温度で行っても必要とする硬度を得ることができる。但し、成形されたホワイトゴールド合金の形状が変形しない温度範囲に限られることは勿論である。また、各工程で炉内に保持する時間についてもそれぞれ30分が最低必要とする時間であり、また30分より長く保持しても得られる硬度にあまり変化はない。
以上説明したように、この実施例のホワイトゴールド合金は、ニッケルフリーで明るい白色のホワイトゴールド合金であって、しかも安価な石膏系埋没材を使用して高品質な製品を鋳造することができる。そして、上述のような熱硬化処理を行うことによって、バネ材としても十分な弾性強度が得られる。
なお、この発明によるホワイトゴールド合金を材料とする製品(部品を含む)の成形は鋳造に限るものではなく、鍛造、プレス、打ち抜き、手加工など種々の手段によって行うことができる。いずれの手段による成形物に対しても、上述の熱硬化処理を実行することによってHV190〜240の硬度を得ることができる。
次に、前述した実施例のホワイトゴールド合金と同等の性質が得られる各金属元素の含有率範囲を検証する。まず、ホワイトゴールド合金をK18の分類で考えた場合、一般的には金の純度は重量比75%以上のものであるが、ここでは75%を固定基準として考え、それ以外に含有する銅とパラジウムの含有率を変えて作成した各種のホワイトゴールド合金の性質について調べる。
下記の表1は、重量比75%の金に重量比10%の銅と重量比15%のパラジウムを含有した合金をNo.1とし、それより合金No.の昇順に銅の重量比を1%ずつ増加させるともにパラジウムの重量比を1%ずつ減少させた合金をNo.15まで作り、それぞれの融点を計測した結果を示したものである。なお、前述した実施例のホワイトゴールド合金は、No.8の合金に相当する。
Figure 2006118029
この表1からわかるように、No.1の合金が最も融点が高く、合金No.の昇順で(番号が大きくなる程)融点が低くなっている。そして、上述したように融点より120℃高く設定される鋳造温度が、石膏材の分解点温度である1200℃より低くくなければ石膏系埋没材を利用しての鋳造作業を行うことができない。この条件を満たす合金、すなわち融点が1080℃(=1200℃−120℃)以下である合金はNo.5以上(No.5〜15)の合金である。
しかし、パラジウムの含有率が重量比7%以下(合金No.9以上)になると、色が白色ではなく薄いピンク色を帯び、ホワイトゴールド合金とは云えなくなる。
次に、下記の表2は、No.5以上の合金の成形物に対し、それぞれ前述した熱硬化処理を行った場合に得られた硬度(ビッカース硬度)の計測結果を示したものである。なお、熱硬化処理の工程1(S1)における処理温度を一律600℃とし、工程3(S3)における処理温度を275℃、325℃、375℃に変えてそれぞれ得られた結果を比較して示している。
なお、装身具等のバネ材に必要な弾性強度を得るために最低限要求されるビッカース硬度はHV190である。また、これらホワイトゴールドの3元合金に共通してビッカース硬度がHV240を超えるものは、熱硬化処理によって割れが生じてしまい成形品として使用できなくなる。
したがって、熱硬化処理により得られるビッカース硬度がHV190〜HV240の範囲にある成形品がバネ材として利用できる合金である。そして、表2中に示すどの処理温度で熱硬化処理を行っても確実にその要求範囲の硬度が得られるのは、No.7とNo.8の合金だけである。
Figure 2006118029
下記の表3、表4、表5は、それぞれ熱硬化処理の工程1の温度を650℃、700℃、750℃に変えて表2の場合と同様に硬度を計測した結果を示したものである(No.11以上は省略)。そして、どの表の結果を見ても上記の各条件を見たす合金はNo.7とNo.8だけであることがわかる。No.9とNo.10の合金も、工程1と工程3の処理温度によっては要求範囲の硬度(HV190〜240)が得られるが、前述したように、パラジウムの含有率が重量比7%以下になるため(表1参照)、薄いピンク色になり、ホワイトゴールド合金とは云えなくなる。
Figure 2006118029
Figure 2006118029
Figure 2006118029
以上の検証結果から、各表に示されているホワイトゴールド合金のうちで、前述した実施例のホワイトゴールド合金(No.8)と同等の性質があるものは、各表中に下線を付して示しているNo.7の合金であることがわかる。そして、このNo.7とNo.8の合金との間の各金属元素の含有率範囲は、重量比75%の金に対して重量比16〜17%の銅と、重量比8〜9%のパラジウムを含有する範囲であり、この含有率範囲にあるホワイトゴールド合金はこの発明に必要な性質を有することが分かる。
さらに、同じK18として重量比75%以上(実質的には75〜76%の間)の金を含有する上記以外のホワイトゴールド合金においても、上記と同じ重量比16〜17%の銅と、重量比8〜9%のパラジウムを含有すれば上記実施例と同等な性質を持つことが確認できた。
また、この発明によるホワイトゴールド合金は、上述したように鋳造作業を行う際の融点が十分に低い材料であり、インジウム(In)や亜鉛(Zn)を添加して融点を下げる必要がないため、これらの弊害である溶解時のガスの発生も防ぐことができ、鋳造作業性、リサイクル性のよい材料である。
そして、装身具や装飾品に用ることを主な目的としていながらも、一般に明るい白色を出すために用いられる高価な銀(Ag)を全く使用していないので、原料費の面で安価に生産できる。さらに、この発明によるホワイトゴールド合金は、高価なパラジウムの含有率が重量比8〜9%であるから、他のパラジウム含有合金と比較して含有量が少ないので、このことからも比較的安価に生産できる。
この発明は、指輪、イヤリング、ピアス、ペンダント、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、ネクタイピン、ヘアピン等の各種装身具、置物などの装飾品、時計、ライター、万年筆、コンパクトなどの高級実用品等の金合金を使用する各種の製品に利用できる。特にニッケルを含有していないので、身体に直接付ける装身具などに使用してもアレルギー反応を起こす心配がなく安心である。また、成形が容易であり、熱硬化処理によりバネ性を有するため、留め金具などに弾性を持たせるバネ部材を備えたネックレス、ペンダント、イヤリング、ブローチ、ネクタイピン、ティアラなどに使用するホワイトゴールド合金としても最適である。
この発明によるホワイトゴールド合金を成形した後の熱硬化処理の一実施例の工程を示すフロー図である。

Claims (4)

  1. それぞれ重量比で75%以上の金と8〜9%のパラジウムと16〜17%の銅からなる3元合金であることを特徴とするホワイトゴールド合金。
  2. 請求項1記載のホワイトゴールド合金であって、
    重量比で75%が金で残りがパラジウムと銅であることを特徴とするホワイトゴールド合金。
  3. 請求項1又は2記載のホワイトゴールド合金であって、ビッカース硬度がHV190〜HV240であるホワイトゴールド合金。
  4. 請求項1又は2記載のホワイトゴールド合金を成形した後、600℃以上の温度で30分以上保持し、その後急水冷した後に275℃以上の温度で30分以上保持し、その後空冷することを特徴とするホワイトゴールド合金の熱硬化処理方法。

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