JP2006116766A - 耐熱性基体とその製造方法およびそれを用いた調理機器と調理容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温でのシロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、撥水撥油性を持たせた耐熱性基体を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜2と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板1とを備えたものである。これにより、基板1とシロキサン膜との間に熱膨張係数5×10−6/K以下の膜2があることで、高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力を小さくし、シロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、安定した撥水撥油性を持たせることができる。
【選択図】図1
【解決手段】少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜2と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板1とを備えたものである。これにより、基板1とシロキサン膜との間に熱膨張係数5×10−6/K以下の膜2があることで、高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力を小さくし、シロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、安定した撥水撥油性を持たせることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、撥水撥油性を持たせた耐熱性基体とその製造方法およびそれを用いた調理機器と調理容器に関するものである。
従来、撥水撥油性を持たせるために、基板表面にアルキル基もしくはフルオロアルキル基を有するシロキサン膜を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平5−31441号公報
しかしながら、前記従来の構成では、高温の基板上でのシロキサン膜の安定性、すなわち高温でのシロキサン膜の耐久性、耐熱性に課題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高温でのシロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、撥水撥油性を持たせた耐熱性基体とその製造方法およびそれを用いた調理機器と調理容器を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の耐熱性基体とその製造方法およびそれを用いた調理機器と調理容器は、少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えたものである。
これにより、基板とシロキサン膜との間に熱膨張係数5×10−6/K以下の膜があることで、高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力を小さくし、シロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、安定した撥水撥油性を持たせることができる。また、調理機器または調理容器では、防汚性にすぐれたものとなる。
本発明の耐熱性基体とその製造方法およびそれを用いた調理機器と調理容器は、高温でのシロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、撥水撥油性を持たせることができる。
第1の発明は、少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えた耐熱性基体とすることにより、基板とシロキサン膜との間に熱膨張係数5×10−6/K以下の膜があることで、高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力を小さくし、シロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、安定した撥水撥油性を持たせることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、少なくともシロキサン結合を有する膜と、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜が、シロキサン結合を介して化学結合していることにより、シロキサン結合を有する膜と5×10−6/K以下の膜とが強固に結合するので、シロキサン結合を有する膜の耐熱性を大幅に向上できる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜が表面水酸基を有することにより、シロキサン結合を有する膜とシロキサン結合を介して熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜が容易に化学結合できるので、シロキサン結合を有する膜の耐熱性をさらに向上できる。
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜がシリカまたはシリカアルミナ複合酸化物であることにより、汎用基板上でも、シロキサン結合を有する膜の耐熱性を向上できる。特に、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜の形成がスパッタ法でも可能となることから、樹脂にも適用が可能となる。
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、シロキサン結合を有する膜が少なくともアルキル基またはフルオロアルキル基を有することにより、容易に撥水、撥油性を有し、かつ耐熱性に優れた膜が提供できる。
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、シロキサン結合を有する膜が単分子膜であることにより、膜厚が数ナノメートルの光の干渉が起こらない透明で耐熱性に優れた膜が基板上に形成されるので、基板の色感を損なわない。
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と基板が透明であることにより、膜厚が数〜数十ナノメートルの光の干渉が起こらない透明で耐熱性に優れた膜が透明な基板上に形成されることとなる。
第8の発明は、基板上に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成する工程と、少なくともシラン化合物を含む溶液を塗布する工程を含む耐熱性基体の製造方法とすることにより、高温時に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜上のシロキサン結合を有する膜に蓄積される内部応力が小さくできるので、耐熱性が向上する膜が製造できる。
第9の発明は、特に、第8の発明において、シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランであることにより、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜が製造できる。
第10の発明は、特に、第9の発明において、ハロゲン化シランがクロロシランであることにより、表面上にクロロシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有し、かつシロキサン結合を介して表面と化学結合する膜が製造できる。
第11の発明は、特に、第8〜第10のいずれか1つの発明において、シラン化合物を含む溶液の溶媒が非水溶媒であることにより、シラン化合物が水と反応することがないので、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合した膜を有する耐熱性基体を安定して製造できる。
第12の発明は、特に、第11の発明において、非水溶媒がシリコーンであることにより、さらにシリコーンによりシラン化合物は溶媒和されるので、外部からの水の影響を受けにくく、優れた非水溶媒となる。
第13の発明は、特に、第8〜第12のいずれか1つの発明において、シラン化合物を含む溶液を塗布する工程が湿度35%以下の無水雰囲気下であることにより、シラン化合物が外気からの水と反応することがないので、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合する膜を有する耐熱性基体が安定して製造できる。
第14の発明は、特に、第8〜第13のいずれか1つの発明において、シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に溶媒を除去する乾燥工程を含むことにより、乾燥工程においてシラン化合物が濃縮されるため、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合する膜が高密度にでき、その結果、耐熱性を大幅に向上できる。
第15の発明は、特に、第14の発明において、シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に溶媒を除去する乾燥工程が湿度35%以下の無水雰囲気下であることにより、乾燥工程においてシラン化合物が濃縮される過程で、外部の水とシラン化合物とが反応することがないから、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合した膜がさらに高密度にでき、その結果、耐熱性をさらに大幅に向上できる。
第16の発明は、特に、第8〜第15のいずれか1つの発明において、シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に過剰な未反応のシラン化合物を洗浄する工程を含むことにより、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜が単分子膜になる。
第17の発明は、特に、第16の発明において、シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に過剰な未反応のシラン化合物を洗浄する工程が湿度35%以下の無水雰囲気下であることにより、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜が単分子膜になるとともに、過剰なシラン化合物と水との反応物が残らないので、単分子膜が表面に露出することとなる。
第18の発明は、少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えた耐熱性基体を、少なくとも天面、壁面、底面のいずれかに用いた調理機器とすることにより、調理機器の底面、例えば、加熱されるクッキングヒータのプレート面に用いて、調理物が焼き付いても容易に除去することができ、かつ、耐熱性が良好のため、長期にわたりこれを維持できる。
第19の発明は、特に、第18の発明において、耐熱性基体が透明であることにより、さらに耐熱性基体を通して調理物を観察できるので、調理しやすくなる。
第20の発明は、少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えた耐熱性基体を、少なくとも内面に用いた調理容器とすることにより、調理容器の内面、例えば、セラミック鍋に用いて加熱調理し、調理物が焼き付いても容易に除去することができ、かつ、耐熱性が良好のため、長期にわたりこれを維持できる。
第21の発明は、特に、第20の発明において、耐熱性基体が透明であることにより、さらに耐熱性基体を通して調理物を観察できるので、調理しやすくなる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
発明者らは、高温の基板上でのシロキサン膜の安定性は、シロキサン膜の熱膨張率と基板の熱膨張率の差、すなわち高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力が重要であることを見出した。そこで、基板とシロキサン膜との間に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を設けることで、高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力を小さくし、シロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、安定した撥水撥油性を持たせることができることを確認することができた。
発明者らは、高温の基板上でのシロキサン膜の安定性は、シロキサン膜の熱膨張率と基板の熱膨張率の差、すなわち高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力が重要であることを見出した。そこで、基板とシロキサン膜との間に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を設けることで、高温時のシロキサン膜に蓄積される内部応力を小さくし、シロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、安定した撥水撥油性を持たせることができることを確認することができた。
図1は本発明の実施の形態における耐熱性基体とその製造方法を示すものであり、耐熱性基体は、基板1としてフロートガラス(熱膨張係数が5.8×10−6/K)を用い、これの上にスパッタ法で、熱膨張係数が1×10−6/Kのシリカ膜2を形成している。このシリカ膜2を形成した基板1を、窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン3(シラン化合物)を含む溶液4に浸漬する工程と、過剰なヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン3を溶媒5で洗浄する工程を経て、その後、通常雰囲気で乾燥する工程へ移行し、耐熱性基体6を得ている。これにより、耐熱性基体6は表面にヘプタデカフルオロデシル基による防汚性を付与することができる。
なお、前記したシラン化合物としては、次のものが有効である。
(1)SiX4 (n=0に相当)
(2)SiX3−O−SiX3 (n=1に相当)
さらに具体的な化合物としては、
(3)Si(OC2H5)4
(4)Si(OCH3)3−O−Si(OCH3)3
(5)Si(OC2H5)3−O−Si(OCH3)3
(6)Si(OC2H5)3−O−Si(OC2H5)3
(7)Si(NCO)4
(8)Si(NCO)3−O−Si(NCO)3
(9)SiCl4
(10)SiCl3−O−SiCl3
が挙げられる。
(1)SiX4 (n=0に相当)
(2)SiX3−O−SiX3 (n=1に相当)
さらに具体的な化合物としては、
(3)Si(OC2H5)4
(4)Si(OCH3)3−O−Si(OCH3)3
(5)Si(OC2H5)3−O−Si(OCH3)3
(6)Si(OC2H5)3−O−Si(OC2H5)3
(7)Si(NCO)4
(8)Si(NCO)3−O−Si(NCO)3
(9)SiCl4
(10)SiCl3−O−SiCl3
が挙げられる。
また、本実施の形態で用いることができるシラン化合物としては、下記のものを例示することができる。
(11)SiYpCl4−p
(12)CH3(CH2)sO(CH2)tSiYqCl3−q
(13)CH3(CH2)u−Si(CH3)2(CH2)v−SiYqCl3−q
(14)CF3COO(CH2)wSiYqCl3−q
但し、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。また、Yは、水素、アルキル基、アルコキシル基、含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基である。
(11)SiYpCl4−p
(12)CH3(CH2)sO(CH2)tSiYqCl3−q
(13)CH3(CH2)u−Si(CH3)2(CH2)v−SiYqCl3−q
(14)CF3COO(CH2)wSiYqCl3−q
但し、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。また、Yは、水素、アルキル基、アルコキシル基、含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基である。
さらに、具体的なシラン系化合物として下記に示す(15)−(21)が挙げられる。
(15)CH3CH2O(CH2)15SiCl3
(16)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(17)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(18)CH3COO(CH2)15SiCl3
(19)CF3(CF2)7−(CH2)2−SiCl3
(20)CF3(CF2)5−(CH2)2−SiCl3
(21)CF3(CF2)7−C6H4−SiCl3
また、上記クロロシラン系化合物の代わりに、全てのクロロシリル基をイソシアネート基に置きかえたイソシアネート系化合物、例えば、下記に示す(22)−(26)を用いてもよい。
(22)SiYp(NCO)4−p
(23)CH3−(CH2)rSiYp(NCO)3−p
(24)CH3(CH2)sO(CH2)tSiYq(NCO)q−P
(25)CH3(CH2)u−Si(CH3)2(CH2)v−SiYq(NCO)3−q
(26)CF3COO(CH2)vSiYq(NCO)3−q
但し、rは1〜25の整数、p、q、s、t、u、v、およびYは、前記と同様である。
(15)CH3CH2O(CH2)15SiCl3
(16)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(17)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(18)CH3COO(CH2)15SiCl3
(19)CF3(CF2)7−(CH2)2−SiCl3
(20)CF3(CF2)5−(CH2)2−SiCl3
(21)CF3(CF2)7−C6H4−SiCl3
また、上記クロロシラン系化合物の代わりに、全てのクロロシリル基をイソシアネート基に置きかえたイソシアネート系化合物、例えば、下記に示す(22)−(26)を用いてもよい。
(22)SiYp(NCO)4−p
(23)CH3−(CH2)rSiYp(NCO)3−p
(24)CH3(CH2)sO(CH2)tSiYq(NCO)q−P
(25)CH3(CH2)u−Si(CH3)2(CH2)v−SiYq(NCO)3−q
(26)CF3COO(CH2)vSiYq(NCO)3−q
但し、rは1〜25の整数、p、q、s、t、u、v、およびYは、前記と同様である。
前記シラン系化合物に代えて、下記(27)−(33)に具体的に例示するシラン系化合物を用いてもよい。
(27)CH3CH2O(CH2)15Si(NCO)3
(28)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(NCO)3
(29)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(30)CH3COO(CH2)15Si(NCO)3
(31)CF3(CF2)7−(CH2)2−Si(NCO)3
(32)CF3(CF2)5−(CH2)2−Si(NCO)3
(33)CF3(CF2)7−C6H4−Si(NCO)3
また、シラン系化合物として、一般に、SiYk(OA)4−k(Yは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2または3)で表される物質を用いることが可能である。中でも、CF3−(CF2)n−(R)l−SiYq(OA)3−q(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、シリコーンもしくは酸素原子を含む置換基、lは0または1、Y、Aおよびqは前記と同様)で表される物質を用いると、よりすぐれた防汚性の被膜を形成できるが、これに限定されるものではなく、これ以外にも、 CH3−(CH2)r−SiYq(OA)3−qおよびCH3−(CH2)s−0−(CH2)t−SiYq(OA)3−q、CH3−(CH2)u−Si(CH3)2−(CH2)v−SiYq(OA)3−q、CF3COO−(CH2)v−SiYq(OA)3−q(但し、q、r、s、t、u、v、YおよびAは、前記と同様)などが使用可能である。
(27)CH3CH2O(CH2)15Si(NCO)3
(28)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(NCO)3
(29)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(30)CH3COO(CH2)15Si(NCO)3
(31)CF3(CF2)7−(CH2)2−Si(NCO)3
(32)CF3(CF2)5−(CH2)2−Si(NCO)3
(33)CF3(CF2)7−C6H4−Si(NCO)3
また、シラン系化合物として、一般に、SiYk(OA)4−k(Yは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2または3)で表される物質を用いることが可能である。中でも、CF3−(CF2)n−(R)l−SiYq(OA)3−q(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、シリコーンもしくは酸素原子を含む置換基、lは0または1、Y、Aおよびqは前記と同様)で表される物質を用いると、よりすぐれた防汚性の被膜を形成できるが、これに限定されるものではなく、これ以外にも、 CH3−(CH2)r−SiYq(OA)3−qおよびCH3−(CH2)s−0−(CH2)t−SiYq(OA)3−q、CH3−(CH2)u−Si(CH3)2−(CH2)v−SiYq(OA)3−q、CF3COO−(CH2)v−SiYq(OA)3−q(但し、q、r、s、t、u、v、YおよびAは、前記と同様)などが使用可能である。
さらに、より具体的なシラン系化合物としては、下記に示す(34)−(57)を挙げることができる。
(34)CH3CH2O(CH2)15Si(OCH3)3
(35)CF3CH2O(CH2)15Si(OCH3)3
(36)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(37)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(38)CH3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(39)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(40)CF3(CF2)7−C6H4−Si(OCH3)3
(41)CH3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(42)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(43)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(44)CF3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(45)CH3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(46)CF3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(47)CF3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(48)CF3(CF2)9(CH2)2Si(OC2H5)3
(49)CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3
(50)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
(51)CF3(CF2)7C6H4Si(OC2H5)3
(52)CF3(CF2)9(CH2)2Si(OCH3)3
(53)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(54)CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2
(55)CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2
(56)CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2OC2H5
(57)CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2OCH3
上記した(22)−(57)の化合物を用いた場合には、塩酸が発生しないため、装置保全および作業上のメリットもある。
(34)CH3CH2O(CH2)15Si(OCH3)3
(35)CF3CH2O(CH2)15Si(OCH3)3
(36)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH3)3
(37)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH3)3
(38)CH3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(39)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(40)CF3(CF2)7−C6H4−Si(OCH3)3
(41)CH3CH2O(CH2)15Si(OC2H5)3
(42)CH3(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15Si(OC2H5)3
(43)CH3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(44)CF3(CH2)6Si(CH3)2(CH2)9Si(OC2H5)3
(45)CH3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(46)CF3COO(CH2)15Si(OC2H5)3
(47)CF3COO(CH2)15Si(OCH3)3
(48)CF3(CF2)9(CH2)2Si(OC2H5)3
(49)CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3
(50)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
(51)CF3(CF2)7C6H4Si(OC2H5)3
(52)CF3(CF2)9(CH2)2Si(OCH3)3
(53)CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3
(54)CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2
(55)CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2
(56)CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2OC2H5
(57)CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)2OCH3
上記した(22)−(57)の化合物を用いた場合には、塩酸が発生しないため、装置保全および作業上のメリットもある。
なお、図1のシラン化合物を浸漬する工程に示す最初の反応ステップ(脱塩化水素反応)は、一般に化学吸着反応と呼ばれている。この化学結合により、シロキサン結合を有する膜と5×10−6/K以下の膜とが強固に結合するので、シロキサン結合を有する膜の耐熱性を大幅に向上できる。
また、シロキサン結合を有する膜が、少なくともアルキル基またはフルオロアルキル基を有することにより、容易に撥水、撥油性を有し、かつ耐熱性に優れた膜が提供できる。また、シロキサン結合を有する膜が単分子膜であれば、膜厚が数ナノメートルの光の干渉が起こらない透明で耐熱性に優れた膜が基板1上に形成されるので、基板1の色感を損なわない。
また、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と基板1が透明であれば、膜厚が数〜数十ナノメートルの光の干渉が起こらない透明で耐熱性に優れた膜が透明な基板上に形成されることとなる。
また、基板1上に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成する工程と、少なくともシラン化合物を含む溶液4を塗布する工程を含む耐熱性基体の製造方法とすることにより、高温時に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜上のシロキサン結合を有する膜に蓄積される内部応力が小さくできるので、耐熱性が向上する膜が製造できる。
また、シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランであることにより、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜が製造できる。また、ハロゲン化シランがクロロシランであることにより、表面上にクロロシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有し、かつシロキサン結合を介して表面と化学結合する膜が製造できる。
また、非水溶媒がシリコーンであることにより、さらにシリコーンによりシラン化合物は溶媒和されるので、外部からの水の影響を受けにくく、優れた非水溶媒となる。
また、シラン化合物を含む溶液4を塗布する工程が湿度35%以下の無水雰囲気下であることにより、シラン化合物が外気からの水と反応することがないので、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合する膜を有する耐熱性基体が安定して製造できる。
また、シラン化合物を含む溶液4を塗布する工程の後に溶媒を除去する乾燥工程を含むことにより、乾燥工程においてシラン化合物が濃縮されるため、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合する膜が高密度にでき、その結果、耐熱性を大幅に向上できる。
また、シラン化合物を含む溶液4を塗布する工程の後に溶媒を除去する乾燥工程が湿度35%以下の無水雰囲気下であることにより、乾燥工程においてシラン化合物が濃縮される過程で、外部の水とシラン化合物とが反応することがないから、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合した膜がさらに高密度にでき、その結果、耐熱性をさらに大幅に向上できる。
また、シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に過剰な未反応のシラン化合物を洗浄する工程を含むことにより、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜が単分子膜になる。
また、シラン化合物を含む溶液4を塗布する工程の後に過剰な未反応のシラン化合物を洗浄する工程が湿度35%以下の無水雰囲気下であることにより、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜が単分子膜になるとともに、過剰なシラン化合物と水との反応物が残らないので、単分子膜が表面に露出することとなる。
次に、シラン化合物を含む溶液4の溶媒5が非水溶媒であることにより、シラン化合物が水と反応することがないので、表面上にこれらのシラン化合物同士が結合してできるシロキサン結合を有する膜、またはシロキサン結合を介して表面と化学結合した膜を有する耐熱性基体を安定して製造できる。
溶媒5としては、活性水素を含まない非水系溶媒を用いるのが好ましく、水を含まない炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒などを用いることが可能である。なお、石油系の溶剤の他に具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン、ジメチルミリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエステルシリコーンなどを挙げることができる。また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)などがある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、よく混合するものなら2種以上を組み合わせてもよい。
また、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜としては、シリカ、および、シリカアルミナ複合酸化物が有効である。特に、シリカアルミナ膜は高温安定性がよい。製法としてはスパッタ、蒸着などは密着性がよいが、これらの微粉末を含む塗料をドット上に印刷し、溶融焼成する方法も可能である。さらに、これらは表面水酸基を有しており、特に、シリカアルミナはこれが多く、これを介してシロキサン結合を有する膜を強固に固定化できる。
また、基板1としては、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜2が密着できればよく、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属、ガラス、セラミック、陶器等の酸化物、また、製膜の溶媒等、焼成、スパッタなどに耐えられるのであれば、樹脂などが適用できる。
また、耐熱性基体6が透明であることにより、耐熱性基体6を通して調理物を観察できるので、調理しやすくなる。耐熱性基体6が適用できる調理機器としては、クッキングヒータ、オーブン、電子レンジ、ホットプレート、トースタ、ガスレンジなどで、特に、加熱部分である少なくとも天面、壁面、底面のいずれかに用いることにより、調理機器の底面、例えば、加熱されるクッキングヒータのプレート面に用いて、調理物が焼き付いても容易に除去することができ、かつ、耐熱性が良好のため、長期にわたりこれを維持できる。
また、耐熱性基体6が適用できる調理容器としては、炊飯器の鍋、ジャーポット容器、セラミック鍋、セラミック皿、ガラス皿などで、特に、少なくとも内面に用いた調理容器とすることにより、調理容器の内面、例えば、セラミック鍋に用いて加熱調理し、調理物が焼き付いても容易に除去することができ、かつ、耐熱性が良好のため、長期にわたりこれを維持できる。
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
[実験例1]
表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、窒素雰囲気(無水)下で、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランと溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液に浸漬し、浸漬後、無水雰囲気で乾燥することで、耐熱性基体Aを作製した。
表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、窒素雰囲気(無水)下で、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランと溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液に浸漬し、浸漬後、無水雰囲気で乾燥することで、耐熱性基体Aを作製した。
(比較例1)
フロートガラス(熱膨張係数が8×10−7/K)を使用したことを除き、実験例1と同様にしてガラス基体aを作製した。
フロートガラス(熱膨張係数が8×10−7/K)を使用したことを除き、実験例1と同様にしてガラス基体aを作製した。
(基体の熱膨張係数の影響)
耐熱性基体Aとガラス基体aを300℃雰囲気下で所定の時間放置し、その後、その表面に純水10μlを滴下して水の接触角を測定した。その結果を図2に示した。
耐熱性基体Aとガラス基体aを300℃雰囲気下で所定の時間放置し、その後、その表面に純水10μlを滴下して水の接触角を測定した。その結果を図2に示した。
この結果より明らかに、 耐熱性基体Aの撥水膜の方がガラス基体aのものより耐熱性に優れていることがわかる。
[実験例2]
表面にスパッタ法で100nmのシリカアルミナ(Si/Al=4/1)(熱膨張係数が2×10−6/K)を設けたことを除き、実験例1と同様に耐熱性基体Bを作製した。
表面にスパッタ法で100nmのシリカアルミナ(Si/Al=4/1)(熱膨張係数が2×10−6/K)を設けたことを除き、実験例1と同様に耐熱性基体Bを作製した。
(基体における表面水酸基の有無の影響)
300℃に加熱した耐熱性基体AとBの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対し耐熱性基体Bは35回であった。これは耐熱性基体Aに比べBは表面水酸基を多く有し、それとシラン化合物が反応してできるシロキサン結合を介し基板1と膜が強固に結合するためと考えられる。
300℃に加熱した耐熱性基体AとBの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対し耐熱性基体Bは35回であった。これは耐熱性基体Aに比べBは表面水酸基を多く有し、それとシラン化合物が反応してできるシロキサン結合を介し基板1と膜が強固に結合するためと考えられる。
[実験例3]
表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、窒素雰囲気(無水)下で、へプタデカフルオロデシルトリクロロシラと溶媒ヘキサメチルシロキサンンを含む溶液に浸漬し、浸漬後過剰なヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを溶媒で洗浄し、無水雰囲気で乾燥することで、耐熱性基体Cを作製した。
表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、窒素雰囲気(無水)下で、へプタデカフルオロデシルトリクロロシラと溶媒ヘキサメチルシロキサンンを含む溶液に浸漬し、浸漬後過剰なヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを溶媒で洗浄し、無水雰囲気で乾燥することで、耐熱性基体Cを作製した。
(単分子膜の性能)
耐熱性基体AとCの表面に純水10μlを滴下して水の接触角を測定した。その結果、耐熱性基体Aの接触角が109°に対し、耐熱性基体Cの接触角は116°であった。これは、ガラス基体C上の浸漬後の過剰なヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを溶媒で洗浄し、耐熱性基体C上に表面にCF3基が露出した単分子膜のみが形成されているためと考えられる。
耐熱性基体AとCの表面に純水10μlを滴下して水の接触角を測定した。その結果、耐熱性基体Aの接触角が109°に対し、耐熱性基体Cの接触角は116°であった。これは、ガラス基体C上の浸漬後の過剰なヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを溶媒で洗浄し、耐熱性基体C上に表面にCF3基が露出した単分子膜のみが形成されているためと考えられる。
(比較例2)
通常雰囲気(湿度50%)下で基板として、表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランと溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液に浸漬し、浸漬後、無水雰囲気で乾燥することで、ガラス基体bを作製した。
通常雰囲気(湿度50%)下で基板として、表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランと溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液に浸漬し、浸漬後、無水雰囲気で乾燥することで、ガラス基体bを作製した。
(比較例3)
窒素雰囲気(無水)下で基板として、表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランと溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液に浸漬し、浸漬後、通常雰囲気(湿度50%)で乾燥することで、ガラス基体cを作製した。
窒素雰囲気(無水)下で基板として、表面にスパッタ法で100nmのシリカ(熱膨張係数が8×10−7/K)を設けたフロートガラス(熱膨張係数が8×10−6/K)を、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランと溶媒ヘキサメチルシロキサンを含む溶液に浸漬し、浸漬後、通常雰囲気(湿度50%)で乾燥することで、ガラス基体cを作製した。
(湿度の影響)
300℃に加熱した耐熱性基体Aとガラス基体bとガラス基体cの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対しガラス基体bは12回、ガラス基体cは2回であった。
300℃に加熱した耐熱性基体Aとガラス基体bとガラス基体cの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対しガラス基体bは12回、ガラス基体cは2回であった。
これは耐熱性基体Aの場合に比べて、ガラス基体bの場合は浸漬工程で、ガラス基体cの場合は乾燥工程で通常雰囲気と接触、つまり空気中の水分とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが優先的に反応するため、耐熱性基体Aのように表面水酸基とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランとが反応してできるシロキサン結合を介し基板と膜が強固に結合することができないためと考えられる。
(比較例4)
シラン化合物としてヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランの代わりに、へプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン使用したことを除き、実験例1と同様にガラス基体dを作製した。
シラン化合物としてヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランの代わりに、へプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン使用したことを除き、実験例1と同様にガラス基体dを作製した。
(試薬の影響)
300℃に加熱した耐熱性基体Aとガラス基体dの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対しガラス基体dは2回であった。これは耐熱性基体Aの場合、表面水酸基とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが反応してできるシロキサン結合を介し基板と膜が強固に結合するのに対し、ガラス基体dの場合、表面水酸基とへプタデカフルオロデシルトリエトキシシランがほとんど反応せず、そのためシロキサン結合を介し基板と膜が強固に結合しないためであると考えられる。
300℃に加熱した耐熱性基体Aとガラス基体dの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対しガラス基体dは2回であった。これは耐熱性基体Aの場合、表面水酸基とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが反応してできるシロキサン結合を介し基板と膜が強固に結合するのに対し、ガラス基体dの場合、表面水酸基とへプタデカフルオロデシルトリエトキシシランがほとんど反応せず、そのためシロキサン結合を介し基板と膜が強固に結合しないためであると考えられる。
(比較例5)
溶媒としてヘキサメチルジシロキサンの代わりに、アセトン使用したことを除き、実験例1と同様にガラス基体eを作製した。
溶媒としてヘキサメチルジシロキサンの代わりに、アセトン使用したことを除き、実験例1と同様にガラス基体eを作製した。
(溶媒の影響)
300℃に加熱した耐熱性基体Aとガラス基体eの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対しガラス基体eは12回であった。
300℃に加熱した耐熱性基体Aとガラス基体eの表面上に、砂糖/醤油=1/1(重量比)のシロップを0.1ml滴下し、シロップ乾燥後これを水で濡れた布巾でふき取った。この動作を砂糖醤油がこびりついてとれなくなるまで同じ場所に滴下を繰り返して、その繰り返し回数を測定した。その結果、耐熱性基体Aは28回に対しガラス基体eは12回であった。
これは耐熱性基体Aの場合に比べて、ガラス基体eの場合は浸漬工程で、アセトンに含有した水とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが優先的に反応するため、耐熱性基体Aのように表面水酸基とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランとが反応してできるシロキサン結合を介し基板と膜が強固に結合することができないためと考えられる。
[実験例4]
本実施の形態における耐熱性基体Aを窓ガラスに用い、膜面を調理側にセットしたオーブントースタDに用いて、1年間各種調理(焼きもの、揚げ物再加熱)を行った。
本実施の形態における耐熱性基体Aを窓ガラスに用い、膜面を調理側にセットしたオーブントースタDに用いて、1年間各種調理(焼きもの、揚げ物再加熱)を行った。
(比較例6)
無処理のフロートガラスを用いたオーブントースタfを用いて、1年間各種調理(焼きもの、揚げ物再加熱)を行った。
無処理のフロートガラスを用いたオーブントースタfを用いて、1年間各種調理(焼きもの、揚げ物再加熱)を行った。
(調理機器および調理機器に対する実用性)
オーブントースタ窓の調理面にともにこびりつきがあったもののオーブントースタDは布巾で拭き取るレベルで容易に除去できたものの、オーブントースタfは、金属たわしやクレンザーを用いてもこびりつきを取り除くことができなかった。したがって、耐熱性基体Aの効果は絶大である。
オーブントースタ窓の調理面にともにこびりつきがあったもののオーブントースタDは布巾で拭き取るレベルで容易に除去できたものの、オーブントースタfは、金属たわしやクレンザーを用いてもこびりつきを取り除くことができなかった。したがって、耐熱性基体Aの効果は絶大である。
以上のように、本発明にかかる耐熱性基体とその製造方法およびそれを用いた調理機器と調理容器は、高温でのシロキサン膜の耐久性、耐熱性を確保し、撥水撥油性を持たせることができるので、耐熱性基体としては勿論のこと、各種調理器および調理容器などに適用できる。
1 基板
2 シリカ膜
3 へプタデカフルオロデシルトリクロロシラン
4 溶液
5 溶媒
6 耐熱性基体
2 シリカ膜
3 へプタデカフルオロデシルトリクロロシラン
4 溶液
5 溶媒
6 耐熱性基体
Claims (21)
- 少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えた耐熱性基体。
- 少なくともシロキサン結合を有する膜と、熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜が、シロキサン結合を介して化学結合している請求項1に記載の耐熱性基体。
- 熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜が表面水酸基を有する請求項1または2に記載の耐熱性基体。
- 熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜がシリカまたはシリカアルミナ複合酸化物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性基体。
- シロキサン結合を有する膜が少なくともアルキル基またはフルオロアルキル基を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性基体。
- シロキサン結合を有する膜が単分子膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性基体。
- 熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と基板が透明である請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱性基体。
- 基板上に熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成する工程と、少なくともシラン化合物を含む溶液を塗布する工程を含む耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランである請求項8に記載の耐熱性基体の製造方法。
- ハロゲン化シランがクロロシランである請求項9に記載の耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物を含む溶液の溶媒が非水溶媒である請求項8〜10のいずれか1項に記載の耐熱性基体の製造方法。
- 非水溶媒がシリコーンである請求項11に記載の耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物を含む溶液を塗布する工程が湿度35%以下の無水雰囲気下である請求項8〜12のいずれか1項に記載の耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に溶媒を除去する乾燥工程を含む請求項8〜13のいずれか1項に記載の耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に溶媒を除去する乾燥工程が湿度35%以下の無水雰囲気下である請求項14に記載の耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に過剰な未反応のシラン化合物を洗浄する工程を含む請求項8〜15のいずれか1項に記載の耐熱性基体の製造方法。
- シラン化合物を含む溶液を塗布する工程の後に過剰な未反応のシラン化合物を洗浄する工程が湿度35%以下の無水雰囲気下である請求項16に記載の耐熱性基体の製造方法。
- 少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えた耐熱性基体を、少なくとも天面、壁面、底面のいずれかに用いた調理機器。
- 耐熱性基体が透明である請求項18に記載の調理機器。
- 少なくともシロキサン結合を有する膜と、この膜が表面上に形成された熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜と、この熱膨張係数が5×10−6/K以下の膜を形成した基板とを備えた耐熱性基体を、少なくとも内面に用いた調理容器。
- 耐熱性基体が透明である請求項20に記載の調理容器。
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