JP2006116598A - ダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法 - Google Patents

ダイカスト鋳造装置及びダイカスト鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 溶湯を高速で金型キャビテイに充填し、閉塞されたキャビテイ内の溶湯を有効に加圧して、ひけ巣の発生がなくかつガスの巻き込みのない鋳造品を簡便に鋳造することのできる、作業効率がよくメンテナンスの容易な設備費の安いダイカスト鋳造装置及び該装置を用いるダイカスト方法を提供すること。
【解決手段】 金型キャビテイを形成することができる固定金型1及び可動金型2、固定金型1側に設けられ金型キャビティCに連通する鋳込みスリーブ5、並びに鋳込みスリーブ5内を摺動し鋳込みスリーブ5に送出された溶湯を金型キャビティCへ注入するプランジャー6とを有する装置本体と、鋳込みスリーブ5に形成された溶湯送出開口51を介して鋳込みスリーブ5に下方から溶湯を供給充填する鋳込手段とを備えた装置であって、鋳込手段が、装置本体に装脱着可能なガス加圧注湯鍋7を有しているダイカスト鋳造装置及び該装置を用いるダイカスト方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金型キャビテイ内へ溶湯を下方から充填してアルミニウム合金等の鋳造品を鋳造することができるダイカスト鋳造装置、特にガス加圧注湯鍋を用いて金型キャビテイ内へ溶湯を下方から供給充填するダイカスト鋳造装置やそれを用いたダイカスト鋳造方法に関する。
従来、固定金型と可動金型によって形成される金型キャビティに、溶融されたアルミニウム合金等の溶湯を注入し、冷却して鋳物を作製するアルミニウム合金等のダイカスト鋳造装置においては、図12に示すように、金型キャビティに溶湯を供給する場合、ラドルによって溶湯保持炉内に保持される溶湯を汲み取り、鋳込みスリーブの上部の入口穴から注湯する方法が採用されているが、スリーブ上部の入口穴を大きく、長さが長いスリーブとせざるを得なかった。かかる鋳込みスリーブを用いる場合、1回分の鋳込みスリーブに注湯される溶湯量は、鋳込みスリーブ及びその先端に設けられた湯溜まりの容積の和に比較して大幅に小さく、注湯された溶湯が鋳込みスリーブを充満することなく、溶湯上部の大きな空気溜まりにより湯面が酸化されやすい上に、鋳込みスリーブとの接触面積も大きくなって冷却され、凝固層が発生しやすい。また、プランジャーが前進して金型キャビティに溶湯を充填するとき、鋳込みスリーブ内の溶湯湯面が波立ち、溶湯上部の空気溜まりから空気を巻き込むとともに、溶湯湯面の酸化膜もが混入し、加えて、発生した凝固層がプランジャー前進の抵抗となって実質的な鋳込力の低下を来たし、不良鋳造製品発生の原因となっていた。
一方、酸化物の混入や、ガスの巻込みを防止しながら、溶湯保持炉から金型キャビテイに溶湯を供給する手段としては、低圧ガスを利用する事が既に知られている(特許文献1参照。)。しかしながら、かかる装置は、装置本体に固定された溶湯保持炉に大量の溶湯が収容されており、鋳込速度は遅く、圧力も低いので、溶湯凝固時に発生するひけ巣の防止や薄肉製品に対して充分に対応しうるものではなく、また、装置が大型化していた。さらに、装置本体に固定された溶湯保持炉への溶湯の補充は容易ではなく、また、装置本体内部の清掃や潤滑のためのスプレー作業が非常に困難であった。
また、本発明者は、金型キャビテイに溶湯を供給する手段として、浸漬型の電磁ポンプを用いる方法を発明したが(特許文献2参照。)、この装置も高速鋳込みに対応するためには電磁ポンプが大きくなって装置が大型化し実用化は難しく、その他、溶湯補充の困難性等上記と同様の問題を有していた。
特開昭58−55166号公報 特開2002−108881号公報
ダイカスト鋳造装置による鋳造において、高品質の鋳造品、特に薄肉で大型の鋳造品を鋳造するためには、溶湯を高速で金型キャビテイに充填する必要がある。また、鋳造品の不良欠陥の原因となる酸化物の混入やガスの巻き込みを防止し、凝固収縮によって発生するひけ巣を防止するためには、下方から溶湯を充填すると共に充分量の溶湯を有効に加圧して補充する必要がある。また、その際、稼働運転中のトラブルを少なくするために実用上キャビテイの構造や鋳造装置全体の構造を簡単にする必要がある。そして、作業効率やメンテナンスの容易さも非常に重要な要素である。
本発明の課題は、溶湯を高速で金型キャビテイに充填し、閉塞されたキャビテイ内の溶湯を有効に加圧して、ひけ巣の発生がなくかつガスの巻き込みのない鋳造品を簡便に鋳造することのできる、作業効率がよくメンテナンスの容易な設備費の安いダイカスト鋳造装置及び該ダイカスト鋳造装置を用いるダイカスト方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究し、装置本体と装脱着可能なガス加圧注湯鍋を用いることにより、作業効率がよくメンテナンスの容易な設備費の安いダイカスト鋳造装置とすることができると共に、かかるガス加圧注湯鍋のガス圧力を高くすることによって溶湯を高速で供給することができ、酸化膜の混入及びガスの巻込みのない鋳造品を鋳造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。さらに、鋳込まれた溶湯がキャビテイ内を充填した後、かかる閉塞状態の溶湯を複数箇所で圧力伝達距離を短くして有効に加圧すると、ひけ巣の発生がなくかつ酸化膜の混入及びガスの巻込みのない鋳造品を鋳造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、金型キャビテイを形成することができる固定金型及び可動金型、固定金型側に設けられ金型キャビティに連通する鋳込みスリーブ、並びに鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに送出された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを有する装置本体と、前記鋳込みスリーブに形成された溶湯送出開口を介して該鋳込みスリーブに下方から溶湯を供給充填する鋳込手段とを備えたダイカスト鋳造装置であって、前記鋳込手段が、前記装置本体に装脱着可能なガス加圧注湯鍋を有していることを特徴とするダイカスト鋳造装置(請求項1)や、ガス加圧注湯鍋が装置本体に装着されることにより密閉構造を形成することを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造装置(請求項2)や、ガス加圧注湯鍋が鋳込みストークを備え、該鋳込みストークの上端部を装置本体に密着させて密閉構造を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイカスト鋳造装置(請求項3)や、装置本体が鋳込みストークを備え、ガス加圧注湯鍋の上端部を装置本体に密着させて密閉構造を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイカスト鋳造装置(請求項4)や、ガス加圧注湯鍋の容量が、1回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な容量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項5)や、ガス加圧注湯鍋が、加熱手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置(請求項6)に関する。
また本発明は、プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が溶湯で充満されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置(請求項7)や、金型キャビティが、その入口に鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状の湯溜部を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置(請求項8)や、金型キャビテイ内の溶湯を加圧する加圧手段を備え、金型キャビティが加圧手段用湯溜を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項9)や、鋳込みスリーブが、固定金型及び/又は固定盤に、水平又は垂直に固定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項10)や、金型キャビティがガス排出通路を備え、該ガス排出通路に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙が前記ガス排出通路の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のダイカスト鋳造装置(請求項11)や、鋳込手段が、金型キャビテイ内のガスを真空吸引してガス加圧注湯鍋の溶湯を真空吸引充填する真空吸引機構を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置(請求項12)や、プランジャーロッドがその後部に鋳込みスリーブ内を摺動する大径摺動部を備え、該大径摺動部とプランジャーチップとの間にガス室を形成可能なことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置(請求項13)や、ガス加圧注湯鍋が、その下部に設けられた開口に連通した溶湯供給管を備え、該溶湯供給管の給湯口にガス加圧に耐えうるシール力をもった開閉可能な給湯口蓋が設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置(請求項14)に関する。
さらに本発明は、請求項1〜14のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置を用いる鋳造方法であって、ガス加圧注湯鍋から鋳込みストークを通じて溶湯を鋳込みスリーブに送出し、次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で充満し、さらに、プランジャーを前進させ、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧し、ガスの巻込みのない鋳造品を鋳造することを特徴とするダイカスト鋳造方法(請求項15)や、鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞した後、直ちにガス加圧溶湯鍋内のガス圧を大気解放すると共に装置本体から脱着して、次回に必要な溶湯をガス加圧溶湯鍋に供給し、再び装置本体に装着して、次回の鋳造に備えることを特徴とする請求項15に記載のダイカスト鋳造方法(請求項16)や、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、プランジャーロッドの大径摺動部を鋳込みスリーブに進入させたときに、該大径摺動部とプランジャーチップとの間にガス室を形成し、該ガス室にガスを送入して、プランジャーを更に前進させ、プランジャーチップの後端を溶湯送出開口に到達させて前記ガス室とストークを連結し、該ガス室からのガス圧でストーク内の溶湯を注湯鍋に落下させるようにしたことを特徴とする請求項15又は16に記載のダイカスト鋳造方法(請求項17)や、ガス加圧注湯鍋内のガス圧を1kg/cm2以上に調整して、高速で短時間に鋳込むことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のダイカスト鋳造方法(請求項18)や、鋳造品が、軽金属合金の薄肉で大型の鋳造品であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のダイカスト鋳造方法(請求項19)に関する。
本発明によれば、溶湯を高速で金型キャビテイに充填し、閉塞されたキャビテイ内の溶湯を有効に加圧して、ひけ巣の発生がなくかつガスの巻き込みのない鋳造品を簡便に鋳造することのできる、作業効率がよくメンテナンスの容易な設備費の安いダイカスト鋳造装置及び該ダイカスト鋳造装置を用いるダイカスト方法を提供することができる。
本発明のダイカスト鋳造装置としては、金型キャビテイを形成することができる固定金型及び可動金型、固定金型側に設けられ金型キャビティに連通する鋳込みスリーブ、並びに鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに送出された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを有する装置本体と、前記鋳込みスリーブに形成された溶湯送出開口を介して該鋳込みスリーブに下方から溶湯を供給充填する鋳込手段とを備え、前記鋳込手段が前記装置本体に装脱着可能なガス加圧注湯鍋を有していれば特に制限されるものではなく、横型であっても竪型であってもよく、本発明のダイカスト鋳造装置は、注湯鍋が小さくガス圧を高くすることができるので、高速の鋳込み速度を確保でき、薄肉鋳造が可能になり、注湯鍋を移動することにより、溶湯補充も容易で、設備費が安くなるだけでなく、装置の配置、運転も容易になると共に、型開時、注湯鍋を機外に出すことにより、鋳込みスリーブの掃除や、金型表面の冷却、潤滑のためのスプレー作業を容易に安全にできる。本発明のダイカスト鋳造装置により製造できる鋳造品としては特に限定されるものではないが、軽金属合金、特に凝固収縮が大きいアルミニウム合金が好ましい。アルミニウムは凝固するとき約7%収縮することから、ひけ巣の発生を防止しうる本発明の鋳造装置や鋳造方法は、アルミニウム合金等の凝固収縮が大きい軽金属合金からなる溶湯から、特に薄肉で大型の鋳造品を鋳造する場合に、特に有利に適用することができる。
前記鋳込み手段におけるガス加圧注湯鍋としては、ガス加圧が可能な注湯鍋であって、装置本体に装脱着可能な注湯鍋であれば特に制限されるものではなく、前記ガス加圧のためにガス加圧注湯鍋を密閉構造とする必要があるが、例えば、上方が開放されたガス加圧注湯鍋に蓋を設けて密閉構造とすることもできるが、装置本体に装着することにより密閉構造を形成することが好ましい。装置本体に装着することにより密閉構造を形成する構成としては、ガス加圧注湯鍋が鋳込みストークを備えている場合には、鋳込みストーク上端部を装置本体に密着させて密閉構造を形成することができ、具体的に、例えばストークの上面を鋳込みスリーブの下部に押し付けて密閉構造を形成することができる。また、装置本体が鋳込みストークを備えている場合には、ガス加圧注湯鍋の上端部を装置本体に密着させて密閉構造を形成することができ、具体的に、例えばガス加圧注湯鍋の上面を固定盤下面に押し付けて密閉構造を形成したり、固定金型又は固定盤の下部に設けられたシールパッキンに押し込んで密閉構造を形成したりすることができる。このとき、ガス加圧注湯鍋の上部を下部に比して小さくして、装置本体に密封しやすい形状とすることが好ましい。
このように装置本体に装脱着可能なガス加圧注湯鍋を用いることにより、脱着した(取り外した)ガス加圧注湯鍋の上方(開放部)から溶湯を例えば給湯ラドルを用いて導入することができるので、非常に容易に溶湯の補充を行なうことができる。また、ガス加圧注湯鍋を脱着して、装置本体の鋳込みスリーブの清掃や潤滑のためのスプレー作業を行なうことができるので非常にメンテナンスを行いやすい。
また、ガス加圧注湯鍋は、その下部に設けられた開口に連通した溶湯供給管(溶湯供給通路)を備えていてもよく、その場合、該溶湯供給管の給湯口には、ガス加圧に耐えうるシール力をもった開閉可能な給湯口蓋が設けられる。ここで、開口が設けられるガス加圧注湯鍋の下部とは、(充満時の)溶湯鍋内の溶湯の湯面より下方の部位を意味し、鋳込みストーク下端の下方の部位であることが好ましい。この場合、給湯時にガス加圧溶湯鍋を脱着して移動する必要は必ずしもないが、脱着して給湯する場合、その移動距離を短縮することができ、より効率的に作業を行うことができる。
かかるガス加圧注湯鍋は、加熱手段を備えていることが好ましく、これにより、凝固層の発生を抑制し、湯廻りが良好で鋳造製品の不良発生を極力抑制することが可能となる。
また、ガス加圧注湯鍋の容量としては、装置大型化の防止やガス加圧注湯鍋の搬送の容易さの点から、例えば1〜3回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な容量であることが好ましく、1回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な容量であることがより好ましい。1回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な容量とすることにより、各鋳込み時の注湯鍋内の溶湯量が常に一定なので圧力補正を行う必要がなく、より簡便に連続して充填を行うことができると共に、酸化物の混入やガスの巻き込みを抑制して安定した運転が可能となる。すなわち、複数回分の容量の場合には、各鋳込み時の液面レベルが異なり、圧力の微妙な調整を行なう必要があるが、1回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な容量とすることにより、このような微妙な調整を行なう必要がない。
このようなガス加圧注湯鍋の小型化は、湯面を高くしてガス部の体積を小さくできるので、溶湯の供給量調整が容易にできると共にガス圧の高圧化を可能にし、また、金型キャビティへの定量的な溶湯の供給や供給速度の高速化及びショットタイムラグの短縮化を可能とし、高品質な鋳造や薄肉で大型の鋳造品の鋳造が可能となる。さらに、このような注湯鍋を用いることにより、生産サイクルタイムが短くなるので、生産性も向上する。
また、鋳込手段は、上記ガス加圧注湯鍋に加えて、金型キャビテイ内のガスを真空吸引してガス加圧注湯鍋の溶湯を真空吸引充填する真空吸引機構を有することが好ましい。これにより、金型キャビティへの溶湯の高速充填を可能とすると共に、金型キャビテイ内のガスを排出しガスの巻込みを防止することができる。なお、この真空吸引は、後述するガス排出通路を通じて行なうことができる。
上記鋳込みスリーブとしては、鋳込みスリーブ内の溶湯を金型キャビティに注入することができるように、例えば合金鋼製の固定金型を固定する固定盤を貫通して固定金型に略水平状態又は略垂直状態、或いは傾斜状態で固着されているものを例示することができる(以下、鋳込みスリーブが略水平状態に設置されている給湯装置を水平タイプ給湯装置、鋳込みスリーブが略垂直状態に設置されている給湯装置を垂直タイプ給湯装置という)。鋳込みスリーブにはストークとの連通口である溶湯送出開口が設けられ、例えば、水平タイプ給湯装置では鋳込みスリーブ下面に、垂直タイプ給湯装置では鋳込みスリーブ側面に溶湯送出開口が設けられることになるが、いずれの場合であっても、金型キャビティに近い方の鋳込みスリーブの先端近傍に溶湯送出開口を設けることや、固定盤により固定された固定金型側に溶湯送出開口を設けることが、プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分と湯溜部との内容積を小さくし、1回の鋳造に必要な注湯量で、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が少なくとも溶湯で充満される結果、溶湯とガスとの接触が極力減少し、さらにプランジャーチップを前進させて、溶湯をサイドゲートからキャビティ製品部に注入する際、溶湯が波立ったり、ガスを巻き込む心配がない点で好ましい。例えば、水平タイプ給湯装置の場合、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップが溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方の体積と湯溜部のスリーブの最高位置水平面以下の内容積との総和を、1回の鋳造に必要な注湯量より小さくなるように構成しておくことにより、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を少なくとも溶湯で充満することができる。
また、鋳込みスリーブに送出された溶湯を前記金型キャビティへ注入する前記給湯装置におけるプランジャーとしては、鋳込みスリーブ内を気密下に摺動しうるプランジャーチップ(プランジャーヘッド)と、前記プランジャーチップを進退させることができるプランジャーロッドを有するものを例示することができ、プランジャーロッドの往復動の駆動源としては、油圧シリンダやサーボモータを挙げることができる。プランジャーチップが鋳込みスリーブの後退限に位置したとき、かかるプランジャーチップの金型キャビティ側近傍の鋳込みスリーブに、前記ストークからの溶湯の送出開口を設けることが速やかに注湯しうることから好ましく、また、通常は、プランジャーチップ背面に溶湯が流出しないように、プランジャーチップが鋳込みスリーブの前進限に位置したときであっても、前記ストークからの溶湯の送出開口を閉塞するような長さのプランジャーチップとしておくことが、運転トラブルを回避する上で好ましい。
また、プランジャーチップが鋳込みスリーブの前進限に位置したときに、ストークからの溶湯の送出開口を開放するような長さのプランジャーチップを用いることもでき、その場合、プランジャーロッドがその後部に鋳込みスリーブ内を摺動する大径摺動部を備え、該大径摺動部とプランジャーロッドのプランジャーチップとの間にガス室を形成可能な構成とすることが好ましい。すなわち、先方に位置するプランジャーチップ及び後方に位置する大径摺動部の間にガス室を形成し、かかるガス室にガス供給手段を用いてガスを送入し、プランジャーチップの後端を溶湯送出開口に到達させてガス室とストークを連結させ、ガス室からのガス圧により、ストーク内の溶湯を注湯鍋に落下させるようにする構成とすることもできる。これにより、ストーク内に溶湯を残存させることなくすべての溶湯を確実に溶湯鍋に導くことが可能となり、プランジャーチップ後退時の溶湯のさしこみや、ストーク内での凝固固着などのトラブルの発生を防止することができる。前記ガス室内のガス圧としては特に制限されないが、溶湯鋳込み圧力と同等であることが好ましく、注湯鍋に送入するガスを供給するガス供給手段と同一のガス供給手段を用いることができる。なお、大径摺動部が設けられるプランジャーロッドの後部とは、所定容量のガス室が形成できるよう、プランジャーチップとある程度の距離をもった位置であればよく、具体的には、プランジャーロッドの中央部や後端部が挙げられ、かかる大径摺動部は、プランジャーチップ同様、プランジャーロッドと一体成型のものであってもよいし、別途取り付けてもよい。
また、前記プランジャーの他に、金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段を、金型キャビティのキャビティ製品部等の加圧手段用湯溜に備えているものが好ましい。かかる金型キャビティ内に注入された溶湯を加圧する加圧手段としては、閉塞された金型キャビティ内に充填されている溶湯を加圧することにより、凝固時にひけ巣の発生を抑制しうる手段であればどのようなものでもよいが、金型キャビティ内の溶湯を加圧する手段として、金型キャビティのキャビティ製品部を形成する可動金型に摺動自在に配設された加圧ピンを具体的に例示することができる。金型キャビティ内の溶湯凝固時に、かかる加圧ピンを金型キャビティ内に前進させて溶湯を加圧すると、凝固収縮体積を補充しひけ巣の発生を防止することができるが、プランジャーに加えて加圧ピンの進出速度をキャビティ製品部内の溶湯の凝固収縮速度に適応した速度となるようにプログラム制御を行う等、加圧速度を調節することにより、小さい型締め力のプレス装置でバリ吹きを防止しながらひけ巣の発生を防止することができる。また、加圧ピンは複数設けることもできる。
また、上記金型キャビティとしては、薄肉で大型の鋳造品を鋳造することができる金型キャビティが好ましく、また、鋳込みスリーブと連通状態で隣接する金型キャビティ入口に、鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状に形成されている湯溜部を備えているものが、湯溜部側壁に発生した凝固層をプランジャーが加圧しないので、プランジャー前進時の抵抗が小さくなり、かつ小さい加圧力で溶湯を充分に加圧することが可能となる点でより好ましい。かかる湯溜部はサイドゲートを介して金型キャビティと連通させることができる。
また、上記鋳込みストークとしては、装置本体に備えられていても、ガス加圧溶湯鍋に備えられていてもよいが、ガス加圧溶湯鍋内の溶湯が最も低くなったその湯面よりも、その下端が下方に位置することが好ましい。これにより、注湯溶湯に酸化膜が混入することなく、凝固層及び酸化膜の混入による鋳造製品の不良を抑制することが可能になる。
本発明のダイカスト鋳造装置においては、金型キャビテイ内への溶湯充填時にキャビテイ内に存在するガスを排出することができるガス排出通路と、該ガス排出通路に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙を有するものが好ましい。ガス排出通路としては、可動金型中を貫通しているガス排出孔と、ガス排出空隙とから構成されているものが好ましい。溶湯凝固ゾーン用空隙は、ガス排出通路の近傍に設けることが好ましく、特に加圧手段に近接していることが好ましい。かかる溶湯凝固ゾーン用空隙としては、例えばキャビテイ内のガスをガス排出通路から排出した後に、溶湯凝固ゾーンとなる空隙で先湯を凝固させることができ、前記プランジャーと相俟って、簡単にキャビテイ内を密封・閉塞することができる空隙であればどのようなものでもよく、かかる溶湯凝固ゾーン用空隙を単に設けておくだけで、エアベントバルブやフイルター等を配設しかつ複雑な切替弁やバルブを用いることなく、簡単にキャビテイ内を密封・閉塞することができ、また鋳造装置の稼働に際して圧力調節等の複雑な操作も不要となり、さらに故障等の発生がないことから、溶湯凝固ゾーン用空隙を設けることは極めて実用的であると言える。
具体的に、溶湯凝固ゾーン用空隙としては、前記加圧ピンの外周面と可動金型内周面との間に形成されるガス排出空隙を介してガス排出通路に連通している溶湯凝固ゾーン溶空隙を例示することができ、かかる溶湯凝固ゾーン用空隙としては、加圧ピンと同芯に設けられ、加圧ピンの直径よりも1〜5mm大きい内径で10〜40mm程度の深さ(長さ)を有する溶湯凝固ゾーンとなる空隙を具体的に例示することができる。このように、それぞれの湯溜部の外径を加圧ピンの外形よりもわずかに大きくしておくことにより、各湯溜部の外周壁に生じた凝固層が加圧ピンによって製品の中に押し込まれることを防止すると共に、加圧ピンの加圧抵抗を少なくすることができる。そして、上記のように、溶湯凝固ゾーン用空隙を溶湯の温度や鋳込速度に適合した寸法に設計しておくと、溶湯が充填された時に先湯がこの空隙部分で冷却凝固しガス排出空隙に侵入することはない。
また、上記ガス排出空隙は先湯が流入しない構造や大きさのものが好ましく、例えば、ガス排出空隙としては、加圧ピンと同芯に設けられ、加圧ピンの直径より0.4〜1.0mm程度大きい内径のガス排出空隙を具体的に挙げることができる。そして、金型キャビテイを真空にする際、空気の侵入を防止するために、パーテイング面にはガス排出孔、及びガス排出空隙からなるガス排出通路は設けずにできればシールパッキングを設置するか、漏入空気をガス排出口に連結されたガス排出溝を設け、金型外部からの金型キャビテイへの空気の漏入を防止する。
ところで、ガス加圧注湯鍋によるガス圧と真空吸引機構との併用による溶湯の鋳込み開始速度を最適値の1.0〜2.4m/secとすると、加圧ピンの外周に近接設けられた溶湯凝固ゾーン用空隙やガス排出空隙等の2段空隙部における空気抵抗が大きくなるが、加圧ピンの数及び配置を適宜選択することにより、上記溶湯凝固ゾーン用空隙やガス排出空隙の設置も目的を達成することができる。すなわち、先湯が2段空隙の溶湯凝固ゾーン用空隙で冷却凝固し、溶湯凝固ゾーン空隙より狭いガス排出空隙に侵入しない構造に、当業者であれば容易に設計することができる。また、溶湯凝固ゾーン用空隙で先湯を確実に冷却凝固するために、加圧ピンにベリリューム銅など熱伝導の良い材料を用い、その内部を水冷することができる構造とすることもできる。
次に、本発明のダイカスト鋳造方法について説明する。
本発明のダイカスト鋳造方法としては、上記ダイカスト鋳造装置を用いる鋳造方法であって、ガス加圧注湯鍋から鋳込みストークを通じて溶湯を鋳込みスリーブに送出し、次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で充満し、さらに、プランジャーを前進させ、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧し、ガスの巻込みのない鋳造品を鋳造するダイカスト鋳造方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、注湯量1回分以上の溶湯を受け取ったガス加圧注湯鍋の上端を固定盤の下部に設けられたシールパッキングに押し込みシール密閉し、注湯鍋に好ましくは1kg/cm2以上のガス圧を加え、注湯鍋内の湯面を加圧して鋳込みストークを通じて溶湯を鋳込みスリーブに送出する。このとき、ガス加圧注湯鍋が溶湯供給管を備えている場合には、かかる供給管の湯面の上方から同じガス圧を同時に加えてもよい。次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブ内の溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で充満し、さらに、プランジャーを前進させ、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧し、その後金型キャビテイ内の溶湯を加圧手段(加圧ピン)で加圧して、凝固時にひけ巣の発生がなく、かつガスの巻込みのない鋳造品、好ましくは軽金属合金の薄肉で大型の鋳造品を鋳造する。
また、本発明のダイカスト鋳造方法においては、鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞した後、直ちにガス加圧溶湯鍋内のガス圧を大気解放すると共に装置本体から脱着して、次回に必要な溶湯を供給し、再び装置本体に装着して、次回の鋳造に備えることが好ましい。これにより、1つのガス加圧注湯鍋を用いて非常に効率的に鋳造を行なうことができる。なお、ガス加圧注湯鍋を複数用いて鋳造することも可能である。また、溶湯供給管を備えたガス加圧注湯鍋を用いる場合には、注湯鍋内のガスを大気解放すると共に、溶湯鍋を装置本体から脱着して又は脱着せずに、溶湯供給管の蓋を開いて次回の溶湯を供給する。
また、プランジャーロッドの後部に大径摺動部が設けられている本発明のダイカスト鋳造装置を用いる場合には、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、該プランジャーのプランジャーロッドの大径摺動部を鋳込みスリーブ内に進入させたときに、プランジャーチップと大径摺動部の間のプランジャーロッド小径部の周囲にガス室を形成させ、該ガス室にガスを送入し、プランジャーを更に前進させて、大径収納部の後端が溶湯送出開口に到達させガス室とストークを連結させて、ガス室からのガス圧でストーク内の溶湯を注湯鍋に落下させることもできる。これにより、ストーク内に溶湯を残存させることなくすべての溶湯を確実に溶湯鍋に導くことが可能となり、プランジャーチップ後退時の溶湯のさしこみや、ストーク内での凝固固着などのトラブルの発生を防止することができる。
本発明のダイカスト鋳造装置を適用した好ましい実施の態様を以下図面を参照して説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明のダイカスト鋳造装置を示す概略断面図、図2は図1におけるA−A矢視図であり、図3〜図8は図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図である。以下、鋳込み手段としてガス加圧注湯鍋及び真空吸引機構を備えたダイカスト鋳造装置を例に挙げて説明する。
図1〜図8に示される本発明のダイカスト鋳造装置は、図面上右側に配置された固定盤3に固定される合金鋼製の固定金型1と、固定金型1に圧着される図面上左側に配置された可動金型2と、固定金型1と可動金型2との間に形成される金型キャビティCに溶湯を注入するための鋳込みスリーブ5と鋳込みスリーブ5内を往復動するプランジャー6と、ストーク9を介して鋳込みスリーブ5に溶湯を供給するための装脱着可能なガス加圧注湯鍋7と、金型キャビティC内の溶湯を加圧する加圧ピン11と、金型キャビティC内に連通する真空吸引通路13を有し、金型キャビティCに溶湯を自動的に鋳込み、冷却して鋳造品を製造するものである。なお、図示されていないが、ダイカスト鋳造装置には溶湯冷却後、金型キャビティCから鋳造品10を取り出すための型開きを行なう型締装置等が設けられている。
図1に示すように、鋳込みスリーブ5は、金型キャビティCに連通されるように固定盤3を貫通し、固定金型1に略水平に固定され、溶湯Mを金型キャビティCへ給湯する円管であって、金型キャビティ寄りの先端近傍付近の管壁下面には、ガス加圧注湯鍋7に挿入されるストーク(連絡ダクト)9が接続する溶湯送出開口51が設けられている。また、鋳込みスリーブ5の内径は、溶湯の充満度を高くして空間の体積を小さくしてガスの巻込みを排除するため、また、鋳込みスリーブ5の内壁を気密に摺動するプランジャー6の作用面を小さくし、同一の鋳込み圧力を小さい駆動力で得るため、従来のものよりも小径となっており、プランジャー6のプランジャーチップ63が鋳込みスリーブ5内の溶湯送出開口51を閉塞したとき、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方部分が少なくとも溶湯で充満されるように構成されている。すなわち、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63が溶湯送出開口51を閉塞したとき、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方の体積と、湯溜部C1の鋳込みスリーブ5の最高位置水平面以下との内容積の総和を、1回の鋳造に必要な注湯量より小さくするために、鋳込みスリーブ5の長さは短く小径のものとして構成されている。
このような鋳込みスリーブ5内を往復動するプランジャー6は、鋳込みスリーブ5に供給された溶湯Mを金型キャビティCへ押し出すものであり、油圧シリンダ61によって駆動され、小径のプランジャーロッド62と、プランジャーロッド62の先端に設けられ、鋳込みスリーブ5の内壁を摺動する鋳込みスリーブ5の内径と略同一径であり、その先端面が溶湯Mを押し出す作用面を構成するプランジャーチップ63とを有する。プランジャーチップ63の軸方向の長さは、進出限においても溶湯送出開口51を閉塞し、また、後退限に配置されるとき、鋳込みスリーブ5の管壁下面に設けられる溶湯送出開口51を閉塞せず、その先端が溶湯送出開口51の直前に位置するような長さであって、ガス加圧注湯鍋7から溶湯Mが鋳込みスリーブ5へ送出されている間は溶湯送出開口51の全面を開放させ、鋳込みスリーブ5への溶湯Mの供給が終了して前方へ移動することにより、溶湯送出開口51を閉塞しながら、鋳込みスリーブ5へ供給された溶湯Mを前方へ押し出し、溶湯送出開口51から余剰の溶湯Mの鋳込みスリーブ5への供給を防止しうるようになっている。
ガス加圧注湯鍋7は、1回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な耐圧注湯鍋であって、ストーク9を通じて鋳込みスリーブ5に接続されており、かかる鋳込みスリーブ5へ供給する溶湯Mを保持する。また、ガス加圧注湯鍋7には加圧ガス通路81が連通しており、ガス加圧注湯鍋7を加圧可能としている。ガス加圧注湯鍋7を装置本体に装着し、パッキング8で密封した時、ガス加圧注湯鍋7の上部のガス体積は小さく、ガス圧による注湯速度制御は容易にでき、また、装置本体から脱着し、ストーク9の下端に当たらぬ位置迄下降させ、移動した時、ガス加圧注湯鍋7の上方は解放されており、溶湯ポンプ、ラドル等いずれの方法によっても溶湯Mの補給が容易にできる構造となっている。また、装置本体装着時、ストーク9の下端入口は、金型キャビティへの1回の注湯により下降する湯面の下限位置より下方に配置されており、溶湯Mが送出される際に、溶湯表面近傍の酸化膜等が鋳込みスリーブ内へ混入することはない。ストーク9はセラミック製であり、溶湯Mの付着を少なくすると共に、溶湯Mによる侵食を防止している。
鋳込みスリーブ5に連通する金型キャビティCには、鋳込みスリーブ5の内径より少し大きいテーパー形状の湯溜部C1が設けられ、湯溜部C1はサイドゲートC2を介して金型キャビティCの製品部に連通している。また、金型キャビティCの製品部の一端には、金型キャビティC内の溶湯を加圧ピン用油圧シリンダ12の駆動により加圧ピン湯溜14に進出して加圧する加圧ピン11が設けられている。なお、図示はしていないが、加圧手段に近接して真空吸引通路(ガス排出通路)13に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙が設けられている。
次に、上記ダイカスト鋳造装置を用いたダイカスト鋳造方法について説明する。
図3に示される初期状態から、加圧ガス入口81(図1参照。)を通じガス加圧注湯鍋7に送入された加圧ガスの溶湯湯面にかかるガス圧力と真空吸引通路13に連通した真空吸引機構による吸引によって、ガス加圧注湯鍋7から鋳造1回分に必要な注湯量の溶湯が鋳込みスリーブ5内へ送出される。このとき、図4に示すように、鋳込みスリーブ5から金型キャビティCの湯溜部C1に入った溶湯の湯面は、鋳込みスリーブ5の最高位置水平面より高く、鋳込みスリーブ5内のプランジャーチップ63前方部分が溶湯で充満されているので、鋳込みスリーブ5内には空気が残存せず、溶湯の表面酸化も起こらない。溶湯の送出が完了すると、図5に示すように、油圧バルブを開いて油圧シリンダ61を作動させ、プランジャーロッド62を介しプランジャーチップ63の前進が開始されると同時に、鋳込みスリーブ5の溶湯送出開口51が閉塞され、金型キャビティCに溶湯が充填される。前記したように、鋳込みスリーブ5内には空気が残存しないことから、プランジャーチップ63を前進させ、金型キャビティC(キャビティ製品部)へ溶湯を充填するする際、湯面が波立たず、ガスの巻き込みや酸化膜の混入はない。また、金型キャビティCの湯溜部C1の内径は、鋳込みスリーブ5の内径よりも大きくなるように設計されているため、仮に金型キャビティCの湯溜部C1内に凝固層が発生した場合でも、プランジャー6によって金型キャビティC内に押し出されることはない。
充填が完了し溶湯の冷却が始まると、溶湯の凝固収縮が生起するため、プランジャーでの加圧下、図6に示すように、加圧ピン用油圧シリンダ12により加圧ピン11を作動させる。プランジャー6による加圧のみでは金型キャビティCの端部までの圧力伝達が難しいが、加圧ピン11を作動させて加圧することで、全面的に凝固収縮によるひけ巣のない緻密な組織の鋳造品を得ることができる。金型キャビティCの溶湯の冷却凝固が完了した後、型開きを行い(図7)可動金型で持ち出された製品素材は各加圧ピン及び押し出しピンによって押し出され取り出すことができる(図8)。
図9及び図10は、本発明の他の実施形態に係るダイカスト鋳造装置の説明図であり、図9は、鋳込みスリーブ内へ溶湯を供給した状態を示し、図10は、溶湯を金型キャビティ内に充填完了した状態を示す。
図9及び図10に示すように、本発明の他の実施形態に係るダイカスト鋳造装置は、鋳込み完了後に、ストーク内の溶湯を直ちに注湯鍋内に落下させる方式のもので、プランジャーロッドの後端部分64(大径摺動部64)の直径をプランジャーチップ63の外径と同じにし、鋳込みスリーブ5に挿入された時、ガス室52を形成させ、ガス供給手段を用いてガス室入口82よりガスを導入する。すなわち、図9に示すように、溶湯充填時初期においては、このガス室52にガスは供給されず、プランジャーチップ63の後方も開放されているが、所定距離プランジャーを前進させることにより、密閉したガス室52を形成して、かかるガス室52内にガス供給手段を用いて注湯鍋7内と同一圧力のガスを供給する。図10に示すように、プランジャーチップ63が鋳込みスリーブ内を前進し、その後端が溶湯送出開口51に到達すると、ガス室52はストーク9に連結され、ガス室52のガスが溶湯送出開口51からストーク9に流出し、このときガス圧はガス加圧注湯鍋7と同じであるので、ストーク9内の(残存)溶湯の湯面がガス加圧注湯鍋7内の溶湯の湯面まで直ちに落下し、ガス加圧注湯鍋7及びガス室52の内部のガスを直ちに大気開放することができ、安全にガス加圧注湯鍋7を脱着することができると共に、プランジャーチップ63後退時の溶湯のさしこみやストーク内での凝固固着などのトラブルの発生を防止することができる。
図11は、本発明のさらに他の実施形態に係るダイカスト鋳造装置の説明図である。
図11に示すように、かかる本発明のダイカスト鋳造装置は、ガス加圧注湯鍋7が、その下部に設けられた開口に連通した溶湯供給管21を備え、溶湯供給管21の給湯口22に、ガス加圧に耐えうるシール力をもった開閉可能な給湯口蓋25が設けられている。かかるダイカスト鋳造装置における溶湯供給管21の上部に設けられた給湯口スリーブ23には、ガス導出入口24が設けられており、ガス加圧時には、ガス加圧注湯鍋7の上方の加圧ガス入口81から加圧ガスが供給されると共に、ガス導出入口24からも同じ加圧ガスが供給され、より効率的に溶湯を供給充填することができる。そして、鋳込み後、上記のように、ガス室52からストーク9内にガスを導入することにより、溶湯を直ちに落下させることもできるが、これとと共に又は単独で、溶湯供給管21の給湯口22のガスをガス導出入口24から真空吸引して、溶湯供給管21内の湯面を引き上げ、溶湯鍋7内の湯面をストーク9の下端まで引き下げ、ストーク9内の溶湯をより早く落下させることもできる。
本発明のダイカスト鋳造装置の概略縦断面図である。 図1におけるA−A矢視図である。 図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、鋳込み前の状態を示す。 図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、鋳込みスリーブ内へ溶湯を供給した状態を示す。 図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、溶湯を金型キャビティ内へ充填した状態を示す。 図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、金型キャビティ内の溶湯が加圧された状態を示す。 図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、溶湯の充填冷却が完了し型が開いた状態を示す。 図1に示す本発明のダイカスト鋳造装置の作動状態を示す説明図で、製品を取り出す状態を示す。 本発明の他の実施形態にかかるダイカスト鋳造装置の作動状態を示す図で、鋳込みスリーブ内へ溶湯を供給した状態を示す。 図9に示す本発明のダイカスト装置の作動状態を示す図で、溶湯を金型キャビティ内に充填完了した状態を示す。 本発明の他の実施形態にかかるダイカスト鋳造装置の概略縦断面図である。 従来の一般的なダイカスト鋳造装置の概略縦断面図である。
符号の説明
1……固定金型
2……可動金型
3……固定盤
4……可動盤
5……鋳込みスリーブ
51……溶湯送出開
52……ガス室
6……プランジャー
61……プランジャー用油圧シリンダ
62……プランジャーロッド(小径部)
63……プランジャーチップ
64……大径摺動部
7……ガス加圧注湯鍋
8……パッキング
81……加圧ガス入口
82……ガス室入口
9……ストーク
10……鋳造品
11……加圧ピン
12……加圧ピン用油圧シリンダ
13……真空吸引通路
14……加圧ピン湯溜
21……溶湯供給通路
22……給湯口
23……給湯口スリーブ
24……ガス導出入口
25……給湯口蓋
26……加熱手段
C……金型キャビティ
C1……湯溜部
C2……サイドゲート
M……溶湯

Claims (19)

  1. 金型キャビテイを形成することができる固定金型及び可動金型、固定金型側に設けられ金型キャビティに連通する鋳込みスリーブ、並びに鋳込みスリーブ内を摺動し鋳込みスリーブに送出された溶湯を前記金型キャビティへ注入するプランジャーとを有する装置本体と、前記鋳込みスリーブに形成された溶湯送出開口を介して該鋳込みスリーブに下方から溶湯を供給充填する鋳込手段とを備えたダイカスト鋳造装置であって、前記鋳込手段が、前記装置本体に装脱着可能なガス加圧注湯鍋を有していることを特徴とするダイカスト鋳造装置。
  2. ガス加圧注湯鍋が装置本体に装着されることにより密閉構造を形成することを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造装置。
  3. ガス加圧注湯鍋が鋳込みストークを備え、該鋳込みストークの上端部を装置本体に密着させて密閉構造を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイカスト鋳造装置。
  4. 装置本体が鋳込みストークを備え、ガス加圧注湯鍋の上端部を装置本体に密着させて密閉構造を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイカスト鋳造装置。
  5. ガス加圧注湯鍋の容量が、1回の鋳込みに必要な溶湯を収容可能な容量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
  6. ガス加圧注湯鍋が、加熱手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置。
  7. プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分が溶湯で充満されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置。
  8. 金型キャビティが、その入口に鋳込みスリーブ端部から漸次拡大するテーパー形状の湯溜部を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置。
  9. 金型キャビテイ内の溶湯を加圧する加圧手段を備え、金型キャビティが加圧手段用湯溜を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
  10. 鋳込みスリーブが、固定金型及び/又は固定盤に、水平又は垂直に固定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
  11. 金型キャビティがガス排出通路を備え、該ガス排出通路に連通した溶湯凝固ゾーン用空隙が前記ガス排出通路の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のダイカスト鋳造装置。
  12. 鋳込手段が、金型キャビテイ内のガスを真空吸引してガス加圧注湯鍋の溶湯を真空吸引充填する真空吸引機構を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置。
  13. プランジャーロッドがその後部に鋳込みスリーブ内を摺動する大径摺動部を備え、該大径摺動部とプランジャーチップとの間にガス室を形成可能なことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置。
  14. ガス加圧注湯鍋が、その下部に設けられた開口に連通した溶湯供給管を備え、該溶湯供給管の給湯口にガス加圧に耐えうるシール力をもった開閉可能な給湯口蓋が設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載のダイカスト鋳造装置を用いる鋳造方法であって、ガス加圧注湯鍋から鋳込みストークを通じて溶湯を鋳込みスリーブに送出し、次いで、鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、該プランジャーのプランジャーチップが鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞したとき、鋳込みスリーブ内のプランジャーチップ前方部分を溶湯で充満し、さらに、プランジャーを前進させ、溶湯を金型キャビティへ注入・加圧し、ガスの巻込みのない鋳造品を鋳造することを特徴とするダイカスト鋳造方法。
  16. 鋳込みスリーブの溶湯送出開口を閉塞した後、直ちにガス加圧溶湯鍋内のガス圧を大気解放すると共に装置本体から脱着して、次回に必要な溶湯をガス加圧溶湯鍋に供給し、再び装置本体に装着して、次回の鋳造に備えることを特徴とする請求項15に記載のダイカスト鋳造方法。
  17. 鋳込みスリーブ内を摺動するプランジャーを前進させ、プランジャーロッドの大径摺動部を鋳込みスリーブに進入させたときに、該大径摺動部とプランジャーチップとの間にガス室を形成し、該ガス室にガスを送入して、プランジャーを更に前進させ、プランジャーチップの後端を溶湯送出開口に到達させて前記ガス室とストークを連結し、該ガス室からのガス圧でストーク内の溶湯を注湯鍋に落下させるようにしたことを特徴とする請求項15又は16に記載のダイカスト鋳造方法。
  18. ガス加圧注湯鍋内のガス圧を1kg/cm2以上に調整して、高速で短時間に鋳込むことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のダイカスト鋳造方法。
  19. 鋳造品が、軽金属合金の薄肉で大型の鋳造品であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のダイカスト鋳造方法。

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