JP2006116546A - 溶接電源の出力制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】出力電流iの微分値に増幅率を乗じて電流微分値Biを算出し、予め定めた出力電圧設定値Erから電流微分値Biを減算して電圧制御設定値Ecrを算出し、出力電圧Eが電圧制御設定値Ecrと略等しくなるように出力を制御する溶接電源の出力制御方法において、リアクトルWLによる固定インダクタンス値Li以下の適正インダクタンス値を電子的に形成すること。
【解決手段】本発明は、電流変化切換信号SiがHighレベルのときは出力電圧設定値Erから電流微分値Biを減算して電圧制御設定値Ecrを算出し、電流変化切換信号SiがLowレベルのときは出力電圧設定値Erに電流微分値Biを加算して電圧制御設定値Ecrを算出する溶接電源の出力制御方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、短絡アーク溶接に使用する溶接電源の出力制御方法に関し、特に、短絡期間及びアーク期間の出力電流の変化を適正化するためのリアクトルを電子的に形成するいわゆる電子リアクトル制御の改善に関する。
溶接ワイヤと母材との間で短絡とアークとを繰り返す短絡アーク溶接においては、アーク負荷の変動に応じて短絡期間及びアーク期間中の出力電流iの変化を適正化することが良好な溶接品質を確保するために重要である。上記の短絡アーク溶接には、短絡移行アーク溶接だけでなく、短絡を伴うグロビュール移行溶接、短絡を伴うスプレー移行溶接等も含まれる。短絡アーク溶接には定電圧特性の溶接電源を使用するので、その出力電圧をE[V]とする。また、溶接電源の内部及び外部を合わせたリアクトルのインダクタンス値をL[H]とし、内部及び外部を合わせた抵抗の値をr[Ω]とし、アーク負荷の電圧(以下、溶接電圧という)をv[V]とすると、出力に関して下式が成立する。
E=L・di/dt+r・i+v …(1)式
上式において、抵抗値rは通常小さな値であるので省略し、電流変化率(電流微分値)di/dtで整理すると下式となる。
di/dt=(E−v)/L …(2)式
上式において出力電圧Eは予め設定された値であるので、アーク負荷が変動して溶接電圧vが変化したときの電流変化率di/dtはインダクタンス値Lに反比例することになる。したがって、アーク負荷の変動に応じて電流変化率di/dtを適正化するためには、インダクタンス値を適正値Lm[H]に設定すればよいことになる。
通常、上記の適正インダクタンス値Lmは100〜500μHと大きな値であり、かつリアクトルに通電する出力電流iは最大500A超と非常に大きな値であるために、リアクトルのサイズが大きくなり重量も重くなる。さらに、上記の適正インダクタンス値Lmは、溶接ワイヤの材質、直径、シールドガスの種類、ワイヤ送給速度(平均出力電流値)等の種々の溶接条件によって変化する。しかし、鉄芯に導線を巻いて製作されるリアクトルでは、そのインダクタンス値を上記の溶接条件に応じて所望値に自在に変化させることはできない。そこで、以下に説明する従来技術では、このリアクトルと等価な作用を電子的に形成する制御(以下、電子リアクトル制御という)が開示され、広く慣用されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
電子リアクトル制御の原理は以下のとおりである。出力電圧の設定値をEr[V]とし、適正インダクタンス値をLm[μH]とし、出力電流iを平滑するための数十μH(インバータ制御時)の固定インダクタンス値をLi[μH]とし、電子リアクトル制御によって形成される電子インダクタンス値をLr[μH]とする。したがって、Lm=Li+Lrとなる。これらを上記(2)式に代入して整理すると下式となる。
Er−Lr・di/dt=Li・di/dt+v …(3)式
上式において、出力電圧がE=Er−Lr・di/dtになるように制御することによって電子インダクタンス値Lrを形成することができる。すなわち、出力電流iを検出して微分し増幅率Lrを乗じた電流微分値Bi=Lr・di/dtを算出する.続いて、予め定めた出力電圧設定値Erから上記の電流微分値Biを減算して電圧制御設定値Ecr=Er−Lr・di/dtを算出し、出力電圧Eがこの電圧制御設定値Ecrと略等しくなるように制御する。ここで、上記の増幅率Lr=Lm−Liであるので、種々の溶接条件に応じて適正インダクタンス値Lmが決まると、増幅率(電子インダクタンス値)Lrが決まる。したがって、適正インダクタンス値Lmを任意の値に電子リアクトル制御によって設定することができる。
図6は、上述した従来技術の電子リアクトル制御を採用した溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
電源主回路PMCは、商用電源(3相200V等)を入力として、後述する誤差増幅信号Ampに従ってインバータ制御、チョッパ制御、サイリスタ位相制御等による出力制御を行い、出力電圧Eを出力する。リアクトルWLは、鉄芯に導線を巻いたものであり、インバータ制御のときは数十μH程度の小さな値の固定インダクタンス値Li[μH]を有する。溶接ワイヤ1はワイヤ送給装置の送給ロール5によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。
電流検出回路IDは、出力電流iを検出して電流検出信号idを出力する。電子リアクトル制御回路ERCは、上記の電流検出信号idを微分して増幅率Lrを乗じて電流微分信号Bi=Lr・di/dtを出力する。増幅率Lrは、上述したように種々の溶接条件に応じて適正値に予め設定する。このときに、溶接状態を安定化するために、出力電流iの上昇時と下降時とで上記の増幅率Lrを変化させて、上昇時は大きな値に下降時は小さな値に設定することも多い。
出力電圧設定回路ERは、所望値の出力電圧設定信号Erを出力する。減算回路SUBは、この出力電圧設定信号Erから上記の電流微分信号Biを減算して、電圧制御設定信号Ecr=Er−Biを出力する。出力電圧検出回路EDは、出力電圧Eを検出して出力電圧検出信号Edを出力する。誤差増幅回路AMPは、上記の電圧制御設定信号Ecrとこの出力電圧検出信号Edとの誤差を増幅して誤差増幅信号Ampを出力する。
図7は、図6で上述した溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は出力電流iの、同図(B)は電流微分信号Biの、同図(C)は電圧制御設定信号Ecrの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
同図(A)に示すように、時刻t1〜t2の短絡期間Ts中はアーク負荷が短絡負荷になるために、出力電流iは上昇する。これに伴い、同図(B)に示すように、電流微分信号Biは出力電流iの上昇率に比例した正の値となる。続いて、同図(A)に示すように、時刻t2〜t3のアーク期間Ta中は短絡負荷からアーク負荷に変化するために、出力電流iは下降する。これに伴い、同図(B)に示すように、電流微分信号Biは出力電流iの下降率に比例した負の値となる。そして、同図(C)に示すように、電圧制御設定信号Ecrは出力電圧設定信号Erから同図(B)に示す電流微分信号Biを減算した値となる。この電圧制御設定信号Ecrと略等しくなるように溶接電源の出力電圧Eが出力制御される。この結果、固定インダクタンス値Liよりも大きな値の適正インダクタンス値Lmが形成される。このために、同図(A)に示すように、実線の出力電流の電流変化は点線の固定インダクタンス値Liのみのときの電流変化よりも緩やかになる。
特開2004−114098号公報 特開2004−181526号公報
上述した適正インダクタンス値Lmを有するリアクトルの主な作用は2つある。第1は、出力電流i及び出力電圧Eを平滑してリップルを所定値よりも小さくすることである。リップルが大きいと、平均出力電流が小さいときにアーク切れを発生しやすくなる。また、リップルが大きいとリップルによる電流変化幅が大きくなりビード外観が悪くなる場合もある。出力制御方式が数十kHzのインバータ制御の場合は、この平滑作用のために数十μH以上あれば十分であり、上述した固定インダクタンス値Liで対応することができる。しかし、出力制御方式がサイリスタ位相制御の場合には制御周波数が商用交流電源の6倍(300又は360Hz)と低いために、この平滑作用のために数百μH例えば250μH程度のインダクタンス値が必要になる。数kHzのチョッパ制御の場合でも、150μH程度のインダクタンス値が必要となる。
第2の作用は、上述したように、短絡期間中の電流上昇率及びアーク期間中の電流下降率を適正化することである。この作用のためには、上述したように、100〜500μH程度のインダクタンス値が必要になる。この電流変化適正化作用は、アーク現象によって定まる値であるので、出力制御方式がインバータ制御、チョッパ制御又はサイリスタ位相制御と変わり制御周波数が変化してもあまり影響を受けない。
上述した電子リアクトル制御は、上記の第1の平滑作用においてインダクタンス値を電子的に形成することには使用することができない。この理由は、以下のとおりである。すなわち、電子リアクトル制御は電圧制御設定信号Ecrと出力電圧Eが略等しくなるようにそれぞれの出力制御方式の制御周波数で制御している。このために、制御周波数で定まるリップルを制御することはできない。したがって、第1の平滑作用に必要なインダクタンス値は固定インダクタンス値Liによって形成する必要がある。他方、第2の電流変化適正化作用に必要なインダクタンス値は、上述したように、電子リアクトル制御によって形成することができる。しかし、従来技術の電子リアクトル制御では、固定インダクタンス値Liに電子インダクタンス値Lrを加算して大きくし適正インダクタンス値Lmを得るものである。
インバータ制御のように制御周波数が高い場合には、上述したように、第1の平滑作用のためのインダクタンス値は数十μHであるので、この値を固定インダクタンス値Liの値とすればよい。そして、第2の電流変化適正化作用のために必要な100〜500μHと固定インダクタンス値Liとの差のインダクタンス値は電子的に形成すればよい。
他方、サイリスタ位相制御の場合には制御周波数が低いので、第1の平滑作用のために必要なインダクタンス値は250μH程度となる。この値を固定インダクタンス値Liにする必要がある。第2の電流変化適正化作用のために必要なインダクタンス値は100〜500μHである。したがって、250μH以上のインダクタンス値が必要な場合には電子リアクトル制御によって形成することができる。しかし、100μH以上250μH未満のインダクタンス値は固定インダクタンス値Liよりも小さいために電子リアクトル制御によっては形成することができない。チョッパ制御の場合も同様である。すなわち、固定インダクタンス値Liが電流変化適正化のための適正インダクタンス値Lmよりも大きい場合には、従来技術の電子リアクトル制御では適正インダクタンス値Lmを形成することができなかった。このために、適正インダクタンス値Lmが小さな小電流の溶接において溶接品質をさらに改善したいという課題があった。特に、細径の溶接ワイヤ(直径1.0mm以下)を使用した小電流の溶接では適正インダクタンス値が100μH程度と最小になるために、溶接品質の改善要望は強かった。
また、インバータ制御式溶接電源においても、溶接電源の出力端子と母材及び溶接トーチとが離れているために溶接ケーブルが長くなる場合には、ケーブルによるインダクタンス値とリアクトルWLによるインダクタンス値が加算されて100μH超になることもある。このような場合には、制御周波数が高くても上述した課題が発生する。
そこで、本発明では、固定インダクタンス値Liよりも電流変化適正化のための適正インダクタンス値Lmが小さい場合でも電子リアクトル制御によって形成することができる溶接電源の出力制御方法を提供する。
上述した課題を解決するために、第1の発明は、溶接ワイヤと母材との間で短絡とアークとを繰り返す短絡アーク溶接に使用する溶接電源にあって、前記溶接電源の出力電流の微分値に予め定めた増幅率を乗じて電流微分値を算出し、予め定めた出力電圧設定値から前記電流微分値を減算して電圧制御設定値を算出し、前記溶接電源の出力電圧が前記電圧制御設定値と略等しくなるように出力を制御する溶接電源の出力制御方法において、
負荷変動に対する前記出力電流の変化速度を緩やかにするときはHighレベルとなり速くするときはLowレベルとなる電流変化切換信号を出力する電流変化切換回路を設け、前記電流変化切換信号がHighレベルのときは前記出力電圧設定値から前記電流微分値を減算して前記電圧制御設定値を算出し、前記電流変化切換信号がLowレベルのときは前記出力電圧設定値に前記電流微分値を加算して前記電圧制御設定値を算出することを特徴とする溶接電源の出力制御方法である。
また、第2の発明は、第1の発明記載の電流変化切換回路は、溶接ワイヤの種類又はワイヤ送給速度に応じて予め定めた適正な電流変化切換信号を出力することを特徴とする溶接電源の出力制御方法である。
また、第3の発明は、第1の発明記載の電流変化切換回路は、負荷状態に応じて予め定めた適正な電流変化切換信号を出力することを特徴とする溶接電源の出力制御方法である。
上記第1の発明によれば、溶接電源内部及び外部のリアクトルによる固定インダクタンス値Li以上又は未満の適正インダクタンス値Lmを電子的に形成することができる。このために、サイリスタ位相制御、チョッパ制御等のように制御周波数が低く出力リップルを小さくするために固定インダクタンス値Liを大きくする必要がある場合ににおいて、溶接条件に応じた適正インダクタンス値Lmを形成することができる。この結果、負荷変化に対する出力電流の変化速度が適正化されて、溶接品質が良好になる。また、インバータ制御式溶接電源においても、MIG溶接の溶接性能を向上させるために固定インダクタンス値Liを大きくする場合がある。この溶接電源でCO2溶接又はMAG溶接を行うと固定インダクタンス値Liが大きすぎるために溶接が不安定になる場合がある。このような場合にも本発明を適用することによって、上記のすべての溶接法において良好な溶接を行うことができる。さらに、長い溶接ケーブルによる固定インダクタンス値Liが大きくなる場合も同様である。
また、上記第2の発明によれば、上記の効果に加えて、溶接ワイヤの種類又はワイヤ送給速度に応じて電流変化切換信号Siの適正値を自動的に設定することができる。このために、これらの溶接条件に応じた適正インダクタンス値Lmを自動的に形成することができる。
また、上記第3の発明によれば、上記の効果に加えて、溶接中の負荷状態に応じて電流変化切換信号Siの適正値を自動的に設定することができる。このために、負荷状態に応じた適正インダクタンス値Lmを自動的に形成することができる。負荷状態には、短絡負荷状態、アーク負荷状態だけでなく、アークスタート直後の負荷状態、溶接終了時の負荷状態、アーク長急変時負荷状態等種々の状態がある。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
(1)Lm≧Liの場合
適正インダクタンス値Lmが固定インダクタンス値Li以上の場合は、Lm=Li+Lrとなる。Lrは電子インダクタンス値である。この場合には従来技術の電子リアクトル制御を適用することができ、基本式は下記の(3)式になる。
Er−Lr・di/dt=Li・di/dt+v …(3)式
ここで、Erは出力電圧設定値、Liは増幅率(電子インダクタンス値)、vは溶接電圧である。電圧制御設定値Ecr=Er−Lr・di/dtとし、出力電圧Eがこの電圧制御設定値Ecrと略等しくなるように制御する。これによってLm≧Liの適正インダクタンス値を形成することができる。
(2)Lm<Liの場合
適正インダクタンス値Lmが固定インダクタンス値Liよりも小さい場合は、Lm=Li−Lrとなる。したがって、上記(3)式は下記(4)式になる。
Er+Lr・di/dt=Li・di/dt+v …(4)式
ここで、電圧制御設定値Ecr=Er+Lr・di/dtとし、出力電圧Eがこの電圧制御設定値Ecrと略等しくなるように制御する。これによって、Lm<Liの適正インダクタンス値を形成することができる。
すなわち、Lm≧Liの場合はEcr=Er−Lr・di/dtとし、Lm<Liの場合にはEcr=Er+Lr・di/dtとすることによって、固定インダクタンス値Li以上又は未満の適正インダクタンス値を電子的に形成することができる。ここで、電流変化切換回路SIを溶接電源に設け、出力電流の電流変化を固定インダクタンス値Liのみのときよりも緩やかにするときはHighレベルとなり、速くするときはLowレベルになる電流変化切換信号Siを出力させる。したがって、電流変化切換信号Siは、Lm≧LiのときはHighレベルになり、Lm<LiのときはLowレベルになる。上記の電子インダクタンス値は、溶接条件によって適正インダクタンス値Lmが決まれば、固定インダクタンス値Liとの演算によって求まる。すなわち、Si=HighレベルのときはLr=Lm−Liであり、Si=LowレベルのときはLr=Li−Lmである。
例えば、サイリスタ位相制御の溶接電源において、上述したように、固定インダクタンス値Li=250μHとし、適正インダクタンス値Lm=350μHの場合には、電流変化切換信号SiSi=Highレベルに設定し、電子インダクタンス値Lr=150μHに設定すればよい。また、適正インダクタンス値Lm=150μHの場合には、電流変化切換信号Si=Lowレベルに設定し、電子インダクタンス値Lr=100μHに設定すればよい。このように、本発明の電子リアクトル制御によれば、細径溶接ワイヤの小電流溶接から太径溶接ワイヤの大電流溶接に至るまで、短絡アーク溶接を安定化させるための適正インダクタンス値Lmを形成することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶接電源の出力制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図において上述した図6と同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示す図6とは異なるブロックについて同図を参照して説明する。
電流変化切換回路SIは、上述したように、負荷変動に対する出力電流の変化を緩やかにするときはHighレベルになり、速くするときはLowレベルになる電流変化切換信号Siを出力する。電圧制御設定回路ECRは、上記の電流変化切換信号SiがHighレベルのときは上記(3)式のように出力電圧設定信号Erから電流微分信号Biを減算して電圧制御設定信号Ecrを算出し、電流変化切換信号SiがLowレベルのときは上記(4)式のように出力電圧設定信号Erに電流微分信号Biを加算して電圧制御設定信号Ecrを算出する。この電圧制御設定信号Ecrと出力電圧検出信号Edとが略等しくなるように出力制御されて、適正インダクタンス値Lmが形成される。
電流変化切換信号Si=Highレベルのときのタイミングチャートは、上述した図7と同一となる。したがって、図7(A)に示すように、実船の出力電流波形の電流変化は、固定インダクタンス値のみのときの点線の出力電流波形Aの電流変化よりも緩やかになる。
他方、電流変化切換信号Si=Lowレベルのときのタイミングチャートを図2に示す.同図(A)は出力電流iの、同図(B)は電流微分信号Biの、同図(C)は電圧制御設定信号Ecrの時間変化を示す。同図は上述した図7と対応している。同図(B)は、同図(A)の出力電流iを微分した信号であり、電流微分信号Bi=Lr・di/dtとなる。同図(C)の電圧制御設定信号Ecrの算出方法が図7とは異なり、Ecr=Er+Biとなる。この結果、同図(A)に示すように、出力電流iの電流変化は、点線の固定インダクタンス値のみの出力電流波形Aのときよりも速くなる。これは、適正インダクタンス値Lmが固定インダクタンス値Liよりも小さくなるように制御されているからである。
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2は、実施の形態1における電流変化切換回路SIが溶接ワイヤの種類又はワイヤ送給速度に応じて予め定めた適正な電流変化切換信号Siを出力するものである。上述したように、サイリスタ位相制御、チョッパ制御等のように制御周波数が高くない場合には、固定インダクタンス値Liは大きな値になる。他方、適正インダクタンス値Lmは、溶接ワイヤの直径が太くなるに伴い大きくなる。さらに、適正インダクタンス値Lmは、溶接ワイヤの材質がアルミニウム材の場合は大きくなり、鉄鋼材の場合は小さくなる。さらに、適正インダクタンス値Lmは、ワイヤ送給速度(平均出力電流値)が速くなるに伴い大きくなる。したがって、溶接ワイヤの種類又はワイヤ送給速度に応じて予め電流変化切換信号SiをHighレベル又はLowレベルのどちらにするかを設定しておき、溶接条件に応じて適正な電流変化切換信号Siが自動設定されるようにする。
図3は、実施の形態2に係る溶接電源の出力制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図において上述した図6及び図1と同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示すブロックについて説明する。溶接条件設定回路WCは、少なくとも溶接ワイヤの種類又はワイヤ送給速度を含む溶接条件設定信号Wcを出力する。第2電流変化切換回路SI2は、上述したように、負荷変動に対する出力電流の電流変化を緩やかにするときはHighレベルになり、速くするときはLowレベルになり、上記の溶接条件設定信号Wcに応じて予め定めたHighレベル又はLowレベルの電流変化切換信号Siを出力する。
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3は、実施の形態1における電流変化切換回路SIが負荷状態に応じて予め定めた適正な電流変化切換信号Siを出力するものである。溶接継手、溶接速度等の溶接条件によっては、適正インダクタンス値Lmを負荷状態に応じて切り換えた方がよい場合がある。すなわち、負荷状態が短絡負荷であるときは適正インダクタンス値Lmを小さくするために電流変化切換信号Si=Lowレベルとし、アーク負荷であるときには適正インダクタンス値Lmを大きくするために電流変化切換信号Si=Highレベルとする。ここで言う負荷状態とは、短絡負荷又はアーク負荷のときだけでなく、アークスタート時の負荷状態、溶接終了時の負荷状態、送給速度の変動等の外乱によってアーク長が急変したときの編負荷状態等も想定している。したがって、実施の形態3では、1回の溶接途中での負荷状態の変化に対応して電流変化切換信号Siの値を予め定めた値に変化させる。
図4は、実施の形態3に係る溶接電源の出力制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図において上述した図6及び図1と同一のブロックには同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示すブロックについて説明する。電圧検出回路VDは、溶接電圧vを検出して電圧検出信号vdを出力する。短絡アーク判別回路SDは、上記の電圧検出信号vdの値によって短絡又はアークを判別して、短絡負荷のときはHighレベルになりアーク負荷のときはLowレベルになる短絡アーク判別信号Sdを出力する。第3電流変化切換回路SI3は、上述したように、負荷変動に対する出力電流の電流変化を緩やかにするときはHighレベルになり、速くするときはLowレベルになり、上記の短絡アーク判別信号Sdに応じて予め定めたHighレベル又はLowレベルの電流変化切換信号Siを出力する。
図5は、上述した図4の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図は、短絡期間Ts中は電流変化切換信号Si=Lowレベルであり、アーク期間Ta中は電流変化切換信号Si=Highレベルであるときである。同図(A)は出力電流iの、同図(B)は電流微分信号Biの、同図(C)は電圧制御設定信号Ecrの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
同図(B)に示す電流微分信号Biは、同図(A)に示す出力電流iを微分した信号である。同図(C)に示す電圧制御設定信号Ecrは、短絡又はアークの負荷状態によって上述したようにその算出方法が異なる。すなわち、時刻t1〜t2の短絡期間Ts中は、短絡アーク判別信号SdがHighレベルになり電流変化切換信号SiはLowレベルになるので、Ecr=Er+Biとして算出される。次に、時刻t2〜t3のアーク期間Ta中は、短絡アーク判別信号SdがLowレベルになり電流変化切換信号SiはHighレベルになるので、Ecr=Er−Biとして算出される。この結果、同図(A)に示すように、実践の出力電流iの電流変化は、固定インダクタンス値Liのみのときの点線の出力電流波形Aの電流変化に比べて、短絡期間Ts中は速くなりアーク期間Ta中は緩やかになる。このように、負荷状態に応じて固定インダクタンス値Li以上又は未満の適正インダクタンス値Lmを形成することができる。
本発明の実施の形態1に係る溶接電源の出力制御方法法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図1の各信号のタイミングチャートである。 本発明の実施の形態2に係る溶接電源の出力制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 本発明の実施の形態3に係る溶接電源の出力制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図4の各信号のタイミングチャートである。 従来技術における溶接電源の出力制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。 図6の各信号のタイミングチャートである。
符号の説明
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
AMP 誤差増幅回路
Amp 誤差増幅信号
Bi 電流微分(値/信号)
WL リアクトル
di/dt 電流変化率
E 出力電圧
ECR 電圧制御設定回路
Ecr 電圧制御設定(値/信号)
ED 出力電圧検出回路
Ed 出力電圧検出信号
ER 出力電圧設定回路
Er 出力電圧設定(値/信号)
ERC 電子リアクトル制御回路
i 出力電流
ID 電流検出回路
id 電流検出信号
L インダクタンス値
Li 固定インダクタンス値
Lm 適正インダクタンス値
Lr 増幅率/電子インダクタンス値
PMC 電源主回路
r 抵抗値
SD 短絡アーク判別回路
Sd 短絡アーク判別信号
SI 電流変化切換回路
Si 電流変化切換信号
SI2 第2電流変化切換回路
SI3 第3電流変化切換回路
SUB 減算回路
Ts 短絡期間
v 溶接電圧
VD 電圧検出回路
vd 電圧検出信号
WC 溶接条件設定回路
Wc 溶接条件設定信号

Claims (3)

  1. 溶接ワイヤと母材との間で短絡とアークとを繰り返す短絡アーク溶接に使用する溶接電源にあって、前記溶接電源の出力電流の微分値に予め定めた増幅率を乗じて電流微分値を算出し、予め定めた出力電圧設定値から前記電流微分値を減算して電圧制御設定値を算出し、前記溶接電源の出力電圧が前記電圧制御設定値と略等しくなるように出力を制御する溶接電源の出力制御方法において、
    負荷変動に対する前記出力電流の変化速度を緩やかにするときはHighレベルとなり速くするときはLowレベルとなる電流変化切換信号を出力する電流変化切換回路を設け、前記電流変化切換信号がHighレベルのときは前記出力電圧設定値から前記電流微分値を減算して前記電圧制御設定値を算出し、前記電流変化切換信号がLowレベルのときは前記出力電圧設定値に前記電流微分値を加算して前記電圧制御設定値を算出することを特徴とする溶接電源の出力制御方法。
  2. 請求項1記載の電流変化切換回路は、溶接ワイヤの種類又はワイヤ送給速度に応じて予め定めた適正な電流変化切換信号を出力することを特徴とする溶接電源の出力制御方法。
  3. 請求項1記載の電流変化切換回路は、負荷状態に応じて予め定めた適正な電流変化切換信号を出力することを特徴とする溶接電源の出力制御方法。

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