JP2006115780A - 組織の癌化の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 医学分野、生化学分野等の研究用試薬又は診断薬としての利用が考えれる核酸を提供する。また、該核酸の発現量を指標とする組織の癌化の検出方法を提供する。
【解決手段】 特定の核酸に対応する遺伝子の「被検組織における発現量の検出値」と、「前記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とする被検組織の癌化の検出方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ヒトDNAライブラリーから見出された核酸の「被検組織における発現量の検出値」と「当該被検組織の癌化」とを関連づけることによる「組織の癌化の検出方法」に関する。
組織の癌化を検出する方法としては、様々な方法が知られており、例えばX線検査、内視鏡検査や、CA19-9等の腫瘍マーカー検査等があげられる。X線検査や内視鏡検査などでは組織を外観からしか観察できず、また、腫瘍マーカーは偽陽性、偽陰性が現れる点で確定的な診断には不十分であった。
組織の癌化の確定診断は、実際に組織を生検により採取し、その組織の培養を行って確認する方法が行われているが、この方法は組織の培養の為の相当の時間を要する。
一方、内視鏡下で外科的手法により、生体組織の病変部を切除する手術は一般に行われており、その様な病変部について簡単に癌化の有無を確認する手法が存在すれば、癌化の早期発見にも繋がり、その後の患者の治療や予防に有用となる。
採取した組織から、早期に信頼性の高い結果が得られる「組織の癌化を検出する方法」の開発が望まれている。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ヒトDNAライブラリーから特定の核酸(遺伝子)を見出し、当該核酸(遺伝子)の転写産物量を指標として、癌細胞における当該核酸の発現量を測定したところ、「癌化した組織における発現量」が「健常組織における発現量」と異なるという実験結果を得、これら知見を組織の癌化の検出方法に応用することで本発明を完成した。
すなわち本発明は以下の(1)〜(10)に関する。
(1) 下記(a)〜(d)の何れかに記載の核酸に対応する遺伝子の「被検組織における発現量の検出値」と、「前記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とする被検組織の癌化の検出方法。
(a) 配列番号1記載の塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
(b) 配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
(c) 上記(a)又は(b)記載の核酸の塩基配列において、1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
(d) 上記(a)、(b)又は(c)記載の核酸の塩基配列と、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
(2) 「被検組織における発現量の検出値」が、被検組織と健常組織における前記遺伝子の転写産物量をそれぞれ定量し、当該定量によって得られた被検組織における値と健常組織における値との差又は比である(1)記載の被検組織の癌化の検出方法。
(3) 「被検組織における発現量の検出値」が、配列番号1記載の塩基番号112〜185の領域を増幅させることにより得られた値である(1)又は(2)記載の被検組織の癌化の検出方法。
(4) 被検組織が大腸由来の組織又は肺由来の組織であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の被検組織の癌化の検出方法。
(5) 被検組織及び健常組織に由来するcDNAを配列番号11記載の塩基配列を5’プライマーとし、配列番号12記載の塩基配列を3’プライマーとしてPCR法により増幅して得た転写産物量を、標準遺伝子の転写産物量で除し、被検組織における該値が、健常組織における該値よりも大きいときに、被検組織が癌化していると判定する被検組織の癌化の検出方法。
(6) 下記(A)〜(C)の何れかに記載の塩基配列を有する核酸。
(A) 配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列。
(B) 上記(A)記載の塩基配列に相補的な塩基配列。
(C) 上記(A)又は(B)の塩基配列において、1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列であって、かつ、当該塩基配列を含む核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする核酸。
(7) 配列番号1記載の塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列からなる核酸であり、かつ、当該核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする核酸。
(8) 配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする核酸であり、当該核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする核酸。
(9) DNAであることを特徴とする(6)〜(8)の何れか一項に記載の核酸。
(10) (6)〜(9)の何れか一項に記載の核酸の、被検組織の癌化の検出のための使用。
後述の特定の核酸(遺伝子)の発現量を指標とする組織の癌化の検出方法を提供する。また、当該核酸の医学分野、生化学分野等の研究用試薬又は診断薬としての利用も考えられる。
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)本発明核酸
本発明核酸は、配列番号1記載の全塩基配列(GenBank Accession No.NM_017877)からなる核酸、当該全塩基配列の一部の塩基配列若しくは当該一部の塩基配列に相補的な塩基配列を含み30bp以上である核酸、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする核酸、当該核酸の一部の塩基配列若しくは当該一部の塩基配列に相補的な塩基配列を含み30bp以上である核酸などであり、これら核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする。
なお、本発明核酸は用いる目的により、後述の本発明検出方法において遺伝子の発現量の検出対象である遺伝子を構成する核酸(以下、本発明核酸1とも言う。)と、ポリペプチドの遺伝子工学的製造や遺伝子の測定等の遺伝子工学に関する研究においてプローブやプライマー等として用いられる核酸、及び、後述の本発明検出方法において遺伝子の発現量を定量する際に、増幅領域として選択することが可能である遺伝子の一部分に相当する核酸など(以下、本発明核酸2とも言う。)とに分けられる。
本発明核酸1は、上記本発明核酸の中でも30〜1600bpが好ましく、30〜1570bpがより好ましく、中でも1554bpである核酸が最も好ましい。本発明核酸1における上記の「配列番号1記載の全塩基配列の一部」又は「配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列の一部」は、塩基数30〜1500bpが好ましく、50〜1300bpがより好ましく、更には80〜1200bpが好ましく、より具体的には、配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする全塩基配列、及び、配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列等が好ましく挙げられる。
本発明核酸1として具体的には、(A)配列番号1記載の全塩基配列からなる核酸(GenBank Accession No.NM_017877)、(B)配列番号2記載の全アミノ酸配列をコードする塩基配列を含み全長1554bpである核酸、(C)配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列を含み全長1554bpである核酸、(D)配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列を含み全長1554bpである核酸、(E)配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする核酸、及び(F)配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列からなる核酸等が挙げられ、これら核酸が有する塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸も同様に挙げられる。
更に、上記本発明核酸1の具体例(A)〜(F)の核酸において、1又は数個(好ましくは2以上60以下)の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸も本発明核酸1として挙げられる。
更に、本発明核酸1には、本発明核酸1の上記具体例の核酸それぞれとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸も含まれる。例えば、上記(A)〜(F)の核酸又はこれらに相補的な塩基配列からなる核酸、及び、これら(A)〜(F)の核酸において1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列からなる核酸又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハブリダイズする核酸(特にDNA)で、且つ、これら核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織で異なる核酸が挙げられる。
なお、例えば配列番号1記載の全塩基配列からなる核酸に対応する遺伝子とは、当該核酸を逆転写酵素によって合成する際の鋳型であるRNAが、生体内での遺伝情報の転写及びプロセシングにより合成されるmRNAに相当する様なゲノムDNAが挙げられる。また、遺伝子工学的に発現させる場合等においては、配列番号1記載の全塩基配列からなる核酸に対応する遺伝子には、当該核酸そのものであるcDNAも同様に含まれる。
ここで「ストリンジェントな条件下」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等参照)。一般に「核酸同士の相補性に基づくハイブリダイゼーションを利用する実験手法(例えばノザンブロットハイブリダイゼーション、サザンブロットハイブリダイゼーション)」等で用いられる条件が挙げられ、好ましくは37.5%ホルムアミド、5×SSPE(塩化ナトリウム/リン酸ナトリウム/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)緩衝液)、5×デンハルト溶液(Denhardt's solution)、0.5%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)存在下での42℃の条件が例示される。
なお、本明細書における核酸の長さを表す単位「bp」とは、核酸が二本鎖となっている場合には、その二本鎖を形成する塩基対の数、一本鎖となっている場合には、その核酸に相補的な塩基配列からなる一本鎖がハイブリダイズした二本鎖の塩基対数に相当する数に換算した核酸の長さである。従って、例えば、「1000bp」の一本鎖のDNAは1000個のヌクレオチドで形成されていることになり、「1000bp」の二本鎖のDNAは2000個のヌクレオチド(1000対のヌクレオチド)で形成されていることになるが、双方とも同じ「1000個のヌクレオチドからなる鎖長」のDNAを表すことになる。
一方、本発明核酸2は、用いる目的により必要な長さを適宜選択することが出来る。
配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸、配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸、配列番号1記載の全塩基配列中における500〜1000bpの連続した塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸等は、これらの核酸の長さにより、ハイブリダイズ能と取り扱いやすさの双方を兼ね備えている為、ハイブリダイズ用プローブとして優れている。同様に、これら核酸に対してストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする核酸(特にDNA)も有用である。例えば、配列番号1記載の塩基配列からなる核酸に対応する遺伝子の転写産物量の検査に際し、ハイブリダイズ用プローブとして使用することが可能であり、医学、生化学等の研究用試薬又は診断薬として極めて有用である。
また、配列番号1記載の全塩基配列中における30〜300bpの連続した塩基配列領域は、後述の本発明検出方法における本発明核酸1に対応する遺伝子の発現量をRT−PCR法を用いて定量する際の増幅領域として選択可能な領域であり、当該領域の塩基配列からなる核酸が増幅される。例えば、配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列からなる核酸等が挙げられる。
なお、当該増幅領域をPCR法において増幅させるのに用いるプライマーとしては、後述のプライマーが挙げられ、これらも本発明核酸2に包含される。
更に、配列番号1記載の塩基配列からなる核酸、及び、配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列を少なくとも含む核酸(好ましくは配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列からなる核酸)は、タンパク質合成における終止コドンに相当する塩基配列を含む為、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを遺伝子工学的に調製する為に用いることが出来、有用である。なお、この様なポリペプチドの遺伝子工学的調製を目的とする際には、その調製を効率良く行う為にプロモーター配列、シグナル配列等の塩基配列を連結していても構わない。
なお、配列番号1記載はcDNAの塩基配列であるが、本発明核酸はDNAに限定されない。例えば、配列番号1記載の塩基配列に相補的な塩基配列を有する核酸としては、RNAも含まれる。つまり、本発明核酸に対応する遺伝子の転写産物であるmRNAも含む。
本発明核酸は、DNAであってもRNAであっても構わないが、本発明核酸2、つまり、後述の本発明検出方法でハイブリダイズ用プローブ等として使用する場合や、組換ベクター及び組換体の調製時に安定である点で優れるため、DNAであることが好ましい。
本発明核酸は例えば以下の方法により調製することが可能である。
公知のウリジン二リン酸−N−アセチル−D−グルコサミン(UDP-GlcNAc)トランスポーター関連遺伝子の塩基配列(GenBank accession No.AB021981)をクエリーとしてBLASTにより塩基配列の検索を行ない、配列番号1の全配列を含むクローン(GenBank accession No.NM_017877)を得ることができる。得られたクローンを相補配列として用いポリメラーゼチェイン反応(以下「PCR法」とも記載する)などを行いcDNAライブラリー等から本発明核酸を増幅して調製することができる。
本発明核酸は、例えば配列番号3記載の塩基配列(aaaaagcagg cttcgccgac atggcctgga ccaagtac)を5'プライマーとして、配列番号4記載の塩基配列(agaaagctgg gtcgctggca tcattgatgg g)を3'プライマーとして使用し、例えばヒトゲノムcDNAライブラリーを鋳型として常法に従って一次PCR法を行い、更に配列番号5記載の塩基配列(ggggacaagt ttgtacaaaa aagcaggct)を5'プライマー、配列番号6記載の塩基配列(ggggaccact ttgtacaaga aagctgggt)を3'プライマーとして使用し、上記一次PCR法による産物を鋳型として二次PCR法を行うことで調製することができる。
また、配列番号1に記載の本発明核酸の塩基配列に基づき、当業者であれば目的とする本発明核酸や、調製したい「本発明核酸の部分領域」の両端の塩基配列を基に適宜プライマーを作製し、それを用いてPCR法などによって目的の塩基配列領域を有する核酸を増幅して、部分核酸を調製することが容易である。
当業者ならば、例えば、配列番号1記載の塩基配列においてポリペプチドをコードしている領域(塩基番号82〜1197。ストップコドンを含む。)は、配列番号7の塩基配列(atggcctgga ccaagtacca gctgt)を5'プライマーとして及び配列番号8の塩基配列(tcagctggca tcattgatgg gagtg)を3'プライマーとして用いPCR法で調製することができ、配列番号1記載の全塩基配列からなる核酸(但し、polyA配列は除く部分)は、例えば配列番号9(ggcccggaag cgctcgcgca ggaga)の塩基配列を5'プライマー、配列番号10記載の塩基配列(tatgataatc tagtttatga ttcag)を3'プライマーとして使用して、市販のcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法により調製することができる。更に同様に、配列番号1記載の塩基番号112〜185の領域は、配列番号11の塩基配列(gccgggctca tgcttgt)を5'プライマーとして、配列番号12の塩基配列(ccctcggcca tgaaattgt)を3'プライマーとして使用し、同様にcDNAライブラリーから調製することができる。
この場合、配列番号3及び配列番号4のプライマーを使用したPCR法では、産物として
1146bpのDNA断片が得られ、配列番号5及び配列番号6のプライマーを使用したPCR法においては産物として1180bpのDNA断片が得られ、また、配列番号7及び配列番号8のプライマーを使用したPCR法においては産物として1116bpのDNA断片が得られる。これらを、アガロースゲル電気泳動等の、DNA断片を分子量により篩い分けることが可能な方法で分離し、特定のバンドを切り出す等の常法に従って単離して「本発明核酸」を得ることができる。
このようにして単離した本発明核酸は、本発明核酸がコードするポリペプチドを発現する組換体を調製するためにも使用することができる。
(2)本発明検出方法
本発明検出方法は、上述の本発明核酸1に対応する遺伝子の「被検組織における発現量の検出値」と「前記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とする被検組織の癌化の検出方法である。
例えば、被検組織と健常組織における、本発明核酸1に対応する遺伝子の転写産物量(mRNA量)をそれぞれ定量し、当該定量によって得られた被検組織における値と健常組織における値との差又は比を「被検組織における発現量の検出値」とし、これを指標に癌化を検出する方法である。
本発明検出方法において発現量を検出する対象は、上述の本発明核酸1であり、「配列番号1記載の全塩基配列の一部」又は「配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列の一部」が、例えば、配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、及び、配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列等から選択され、全長30〜1600bp、より好ましくは1554bpである核酸が好ましい。
更に具体的には、上述の本発明核酸の説明部分に挙げられた本発明核酸1の具体例である(A)〜(F)の核酸又はこれら核酸が有する塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸が挙げられ、また上述と同様に、これら核酸の塩基配列において1又は数個(好ましくは2以上60以下)の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸も挙げられる。
更に、上記のこれら核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸で、且つ、当該核酸に対応する遺伝子の転写産物量(mRNA量)が癌化組織と健常組織で異なる核酸が挙げられる。
「配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列」の一例として、「配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列」が挙げられるが、アミノ酸をコードする塩基コドンの縮重によって、「配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列」とは異なる塩基配列を有する核酸であっても配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする限り、同様に用いることが出来る。なお、配列番号1記載の塩基番号82〜1197の塩基配列には終止コドンが含まれており、実際にアミノ酸配列に対応している部分は塩基番号82〜1194である。
本発明検出方法における本発明核酸に対応する遺伝子の発現量の検出方法としては、特に限定されないが、本発明核酸1に対応する遺伝子の遺伝情報の転写によって生じる転写産物量を指標とする定量方法が適用可能である。例えば、配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列を含む核酸(DNA)を指標として転写産物量を定量することで、簡単に本発明核酸の発現量の検出を行うことが出来る。
この様な転写産物量の測定は、DNAの転写産物であるmRNAを検出する為に通常用いられている方法を利用することが可能であり、例えば、PCR法やノーザンブロット法等が挙げられる。mRNAの相補的配列を有するcDNAをPCR法を用いて増幅することにより転写産物量を定量するRT−PCR法(reversed transcription- polymerase chain reaction)がより好ましく、例えば、Cybergreen法やTaqManプローブ法等のようなリアルタイムRT−PCR法が特に好ましく挙げられる。
本発明核酸1に対応する遺伝子の転写産物量をTaqManプローブ法やCybergreen法などのRT−PCR法により測定する場合に用いるプライマーやプローブは、転写産物量を定量可能な配列を、常法に従い設計し、合成することにより得ることが出来る。
RT−PCR法により増幅する領域は、転写産物であるmRNAの塩基配列に相補的なcDNA配列において増幅可能な領域であれば特に限定されないが、本発明検出方法では、通常、転写産物であるmRNAの塩基配列に相補的なcDNAの一部である配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、好ましくは配列番号1記載の塩基配列において30bp〜300bpの連続した塩基配列からなる領域が選択される。
例えば、配列番号1記載の塩基配列中に存在する30〜300bpの連続した塩基配列の領域を選択し、選択した塩基配列に従い適宜プライマーを設計する。
ゲノムDNAから転写され、スプライシングされたmRNAには、当該DNAの遺伝情報に基づく翻訳に実質的な影響を与えない範囲において塩基配列の相違を有するバリアントが存在する可能性があることが知られている。本発明検出方法においては、本発明核酸のバリアントも転写産物として測定されうる。
上記バリアントを考慮すると、RT−PCR法において増幅させる領域は、本発明検出方法で検出対象となる本発明核酸の塩基配列中のバリアント間で共通しているエキソン上から選択するのが好ましい。
本発明検出方法における転写産物の定量方法の一例としては、配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列を増幅領域として選択し、当該塩基配列の5'末端と3'末端の塩基配列を基に作製したプライマー(例えば、配列番号11及び配列番号12記載の核酸)と、蛍光色素と消光物質とを結合させたプローブを用いた定量的リアルタイムRT−PCR法(以下「定量的RT-PCR法」とも記載する)による測定が挙げられる。なお、プローブとしては、例えば配列番号13記載の塩基配列(ccatcaacac gctctcggca aaatg)の核酸が例示される。
本発明検出方法における本発明核酸に対応する遺伝子の発現量の検出は、必ずしも「m RNA」や「DNAから転写されて生ずるmRNA(DNAの転写産物)」を定量して行なうことに限定はされない。例えば、本発明核酸に対応する遺伝子が転写、翻訳されて生ずる「本発明核酸がコードするポリペプチド」を定量して行なうことも可能である。このようなポリペプチドの定量は、精製した「本発明核酸によってコードされるポリペプチド」を用いて常法に従い調製した抗体などを使用するウエスタンブロット法やエンザイムイムノアッセイ等の一般的方法で行うことが出来る。
なお、遺伝子の発現量の検出を、当該遺伝子の転写産物量のPCR法による測定によって行う場合、一般的に、cDNA調製の元となるRNA量の違い等に起因する全体のRNA量の違いを補正した値を比較する。例えば、健常組織と癌化組織とに於ける遺伝子の発現量を比較するには、目的とする遺伝子の転写産物量の測定値を各組織に於けるβ-アクチン遺伝子やグリセロアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の様な標準遺伝子の転写産物量を同様の方法で測定し得られた値で補正した値(補正値)を用いるのが好ましい。
その為、転写産物量の実測値での比較と、当該実測値を標準遺伝子の転写産物量の測定値で補正し得られた値(補正値)による比較とは、数値の大きさが異なる場合がある。本発明方法では、補正値を比較し、被検組織の値の方が健常組織の値より増加している場合に当該被検組織が癌化していると判定される。
本発明検出方法は、組織から分離して得られる「組織片」を使用して行うことが好ましい。すなわち、生検などによって得られた組織に含まれる病変部分の組織(被検組織)と当該病変部分の周辺の健常部分の組織(健常組織)とを用いることが好ましい。
本発明検出方法が適用可能な組織としては、何れの組織であっても使用することが可能であるが、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、十二指腸、小腸、大腸、直腸および結腸などが挙げられ、肺、食道、小腸および大腸が好ましい。特に、大腸、肺における癌化を特異的に好ましく検出することが出来る。
上述の様に、例えば配列番号1記載の塩基配列からなる核酸に対応する遺伝子の転写産物の量の変化を指標として本発明検出方法を行う場合、生検等により得られた病変部分の組織とその周辺の健常部分の組織における当該核酸(遺伝子)の転写産物量(被検転写産物量)を各々定量する。更に、同様に定量した標準遺伝子の転写産物量(標準転写産物量)で、定量した被検転写産物量を補正した後、補正した値を対比することにより、被検組織の癌の診断や治療の経過観察等が出来、有用である。なお、被検組織の当該補正値が、健常組織の補正値より増加している場合、被検組織の癌化を関連付けることが出来る。
ちなみに、本発明検出方法にて本発明核酸1として配列番号1記載の全塩基配列からなる核酸を選択する場合は、対応する遺伝子の転写産物であるmRNAの塩基配列は、配列番号1記載のcDNA配列を鋳型としRNAポリメラーゼにより合成されるRNAの塩基配列と同じである。
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。しかしながら、これにより本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。
(実施例1)本発明核酸の調製方法
ヒトUDP-GlcNAcトランスポーターの塩基配列(GenBank accession No.AB021981)をクエリーとして、BLAST検索を行った。その結果、塩基配列(GenBank accession No.NM_017877)がホモロジーを有することが判明し、その塩基配列は配列番号1の通りであった。
配列番号1の塩基配列からなるDNAを得るために、ヒト大腸由来のcDNAライブラリー(クロンテック社製)を鋳型とし、5'プライマーとして配列番号3記載の塩基配列、3'プライマーとして配列番号4記載の塩基配列からなるDNAを用いて、常法により一次PCR法を行った。なお、一次PCRの反応液は、2μLの10 x pfx amplification緩衝液(インビトロジェン社製)、0.4μLの50mmol/L硫酸マグネシウム溶液、4μLの10 x PCRxenhancer 溶液(インビトロジェン社製)、2.5μLの2.5mmol/L dNTP混合溶液(デオキシヌクレオシド三リン酸混合溶液)、0.5μLの鋳型となるDNA(約50ng)、1μLの5'プライマー(終濃度0.5μmol/Lとなる様に添加)、1μLの3'プライマー(終濃度0.5μmol/Lとなる様に添加)、0.5μLのplatium pfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)に、蒸留水を8.1μL加え、全量20μLとした。
更に配列番号5記載の塩基配列を5'プライマーに、配列番号6記載の塩基配列を3'プライマーとして使用して二次PCR法を行った。なお、二次PCRの反応液は、2μLの10 x pfx amplification緩衝液、0.4μLの50mmol/L硫酸マグネシウム溶液、3μLの2.5mmol/LdNTP混合溶液、4μLの一次PCRの産物、2μLの5'プライマー(終濃度1μmol/Lとなる様に添加)、2μLの3'プライマー(終濃度1μmol/Lとなる様に添加)、0.5μLのplatinum pfx DNAポリメラーゼに、蒸留水を6.1μl加え、全量を20μLとした。
二次PCRの産物から、アガロースゲル電気泳動を用いて、1180bpのDNA断片を常法に従って回収した。
(実施例2)ヒトの各組織における本発明核酸に対応する遺伝子の発現
ヒトの各健常組織のRNAを、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で抽出し、Super-Script First-Strand Synthesis System(インビトロジェン社製)を用いたOligo(dT)法によりsingle strand DNAとした。このDNAを鋳型とし、配列番号11記載の塩基配列を5'プライマーとして、配列番号12記載の塩基配列を3'プライマーとして、及び、配列番号13記載の塩基配列をTaqManプローブとして用いてABI PRISM 7700(アプライドバイオシステム社製)により定量的リアルタイムPCR法を行った。PCRの条件は、95℃、10分で反応を行った後、95℃15秒、60℃1分のサイクルを40回繰り返して行った。内部標準としてグリセロアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子を用い、各健常組織に於けるGAPDH遺伝子の転写産物量に対するNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量の比を算出して対比した。(図1)
健常組織は、副腎、脳、小脳、大腸、胎児脳、胎児肝臓、心臓、腎臓、白血球、肝臓、肺、乳腺、すい臓、胎盤、前立腺、だ液腺、骨格筋、脊髄、胃、精巣、甲状腺、気管、子宮を用いた。
図1より、健常組織においては、検出値が低い組織が多くあったが、中でも、大腸組織と肺組織では検出されなかった。
(実施例3)大腸癌組織における本発明核酸に対応する遺伝子の発現量の変化
定量的リアルタイムPCR法を用いてヒト大腸癌組織と同一患者の健常大腸組織での本発明核酸に対応する遺伝子の転写産物の量を比較した。
ヒト大腸癌組織及び健常大腸組織のRNAを、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で抽出し、Super-Script First-Strand Synthesis System(インビトロジェン社製)を用いたOligo(dT)法によりsingle strand DNAとした。このDNAを鋳型とし、それぞれ配列番号11記載の塩基配列を5'プライマーとして、配列番号12記載の塩基配列を3'プライマーとして、及び、配列番号13記載の塩基配列をTaqManプローブとして用いてABI PRISM 7700(アプライドバイオシステム社製)により定量的リアルタイムPCR法を行った。PCRの条件は、95℃、10分で反応を行った後、95℃、15秒と、60℃、1分のサイクルを40回繰り返して行った。内部標準としてβ−アクチン遺伝子を用い、β-アクチン遺伝子の転写産物量(β-アクチン転写産物量)に対するNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量(NM_017877転写産物量)の比を算出して対比した。(表1、図2)
Figure 2006115780
(実施例4)肺癌組織における本発明核酸に対応する遺伝子の発現量の変化
定量的リアルタイムPCR法を用いてヒト肺癌組織と同一患者の健常肺組織での本発明核酸に対応する遺伝子の転写産物の量を比較した。
ヒト肺癌組織及び健常肺組織を用い、実施例2と同様の実験手順、プライマー及びプローブにて、定量的リアルタイムPCR法を行い、β-アクチン遺伝子の転写産物量に対するNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量の比(NM_017877に対応する遺伝子の転写産物量/β-アクチン遺伝子の転写産物量)を算出して測定した。(表2、図3)
Figure 2006115780
実施例3及び4の結果から、β-アクチン遺伝子の転写産物の測定値でNM_017877に対応する遺伝子の転写産物の測定値を除した値(NM_017877遺伝子転写産物の測定値/β-アクチン遺伝子転写産物の測定値)を算出することによって補正することにより、一様に癌化組織では健常組織と比べて補正値の値が増加していることが判明した。よって、NM_017877遺伝子転写産物の測定値/β-アクチン遺伝子転写産物の測定値の比が健常組織の値より増加している組織は、癌化している可能性が高いと関連づけることが出来ることが示された。
ヒトの各健常組織におけるNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量を示す。縦軸は、内部標準として用いたグリセロアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子の転写産物量に対するNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量の相対値を示す。 同一患者の大腸癌組織と大腸健常組織でのNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量を示す。白抜きバーは大腸健常組織での量を、黒色バーは大腸癌組織での量を示し、縦軸は、内部標準として用いたβ-アクチン遺伝子の転写産物量に対するNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量の相対値を示す。 同一患者の肺癌組織と肺健常組織でのNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量を示す。白抜きバーは肺健常組織での量を、黒色バーは肺癌組織での量を示し、縦軸は、内部標準として用いたβ-アクチン遺伝子の転写産物量に対するNM_017877に対応する遺伝子の転写産物量の相対値を示す。

Claims (10)

  1. 下記(a)〜(d)の何れかに記載の核酸に対応する遺伝子の「被検組織における発現量の検出値」と、「前記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とする被検組織の癌化の検出方法。
    (a)配列番号1記載の塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
    (b)配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
    (c)上記(a)又は(b)記載の核酸の塩基配列において、1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
    (d)上記(a)、(b)又は(c)記載の核酸の塩基配列と、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列、又は、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸。
  2. 「被検組織における発現量の検出値」が、被検組織と健常組織における前記遺伝子の転写産物量をそれぞれ定量し、当該定量によって得られた被検組織における値と健常組織における値との差又は比である請求項1記載の被検組織の癌化の検出方法。
  3. 「被検組織における発現量の検出値」が、配列番号1記載の塩基番号112〜185の領域を増幅させることにより得られた値である請求項1又は2記載の被検組織の癌化の検出方法。
  4. 被検組織が大腸由来の組織又は肺由来の組織であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の被検組織の癌化の検出方法。
  5. 被検組織及び健常組織に由来するcDNAを配列番号11記載の塩基配列を5’プライマーとし、配列番号12記載の塩基配列を3’プライマーとしてPCR法により増幅して得た転写産物量を、標準遺伝子の転写産物量で除し、被検組織における該値が、健常組織における該値よりも大きいときに、被検組織が癌化していると判定する被検組織の癌化の検出方法。
  6. 下記(A)〜(C)の何れかに記載の塩基配列を有する核酸。
    (A)配列番号1記載の塩基番号112〜185の塩基配列。
    (B)上記(A)記載の塩基配列に相補的な塩基配列。
    (C)上記(A)又は(B)の塩基配列において、1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は転位を有する塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列であって、かつ、当該塩基配列を含む核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする核酸。
  7. 配列番号1記載の塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする塩基配列からなる核酸であり、かつ、当該核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする核酸。
  8. 配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列又は当該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする核酸であり、当該核酸に対応する遺伝子の転写産物量が癌化組織と健常組織において異なることを特徴とする核酸。
  9. DNAであることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の核酸。
  10. 請求項6〜9の何れか一項に記載の核酸の、被検組織の癌化の検出のための使用。
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