JP2006111999A - 繊維状物、およびその製造方法。 - Google Patents

繊維状物、およびその製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】マルチフィラメントからなる長繊維に対して、均一な厚みの熱可塑性樹脂層を被覆することにより、また最小曲げ半径が小さい上、そのバラつきが少なく、さらに繊維/熱可塑性樹脂層の接着性に優れた繊維状物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】マルチフィラメントからなる長繊維に対して、その外層に熱可塑性樹脂を被覆した繊維状物であって、その熱可塑性樹脂層の厚みが0.1mmから0.25mmであり、かつその厚みのバラつきが標準偏差で0.5以下であり、繊維/熱可塑性樹脂層の接着強力が10N/cm以上である繊維状物。
【選択図】なし

Description

本発明は、光ファイバケーブル用抗張力体などに応用が可能な繊維状物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、マルチフィラメントからなる長繊維に対して、その外層に熱可塑性樹脂を被覆した繊維状物であって、その熱可塑性樹脂層の厚みのバラつき小さく、また最小曲げ半径が小さい上、繊維/熱可塑性樹脂層の接着性に優れた繊維状物およびその製造方法に関する。
電話局から引かれた光ファイバケーブルを一般住宅などの加入者へ配線する、いわゆるFTTH(Fiber to the Home)の普及により、一般家庭やオフィスなどでも高容量の情報を高速で送受信できるようになった。このように、光ファイバケーブルを一般住宅などに引き落とす際には、光ファイバドロップケーブルを用いるのが一般的である。この光ファイバドロップケーブルは、例えば特許文献1(特開2001−83385号公報)や特許文献2(特開2003−90941号公報)で示されているように、光ファイバ心線とこの光ファイバ心線を挟んでその両側に平行に配置された一対の第一抗張力体とを被覆材で被覆してなる光エレメント部分と、第二抗張力体を被覆材で被覆してなるケーブル支持線部分とをお互いに平行に固着された構造を有している。このようなドロップケーブルの抗張力体には、鋼線やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、パラ系アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)の細径ロッドなどが用いられる。しかしながら、家庭内まで配線される光エレメント部分の第一抗張力体については、落雷対策の観点から非導電性であるAFRPやGFRPを用いることが望まれている。さらに、家庭内まで配線される光エレメント部分は、コーナーへの施工などで大きく曲げられることが多々あり、抗張力体には最小曲げ半径が小さいことが要求されるため、最小曲げ半径が大きなGFRPは不適である。このような背景から、現在、光ファイバドロップケーブルの抗張力体には、主にAFRPロッドが使用されている。
しかしながら、AFRPロッドは、繊維をエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂をディップし、これを引抜き成型により製造するため、生産速度が遅いという欠点がある。さらに、AFRPロッドは、光ファイバドロップケーブルの被覆材として主に用いられるポリエチレン樹脂との接着性が悪いため、これらの接着性を向上させるために新たに接着層を設ける必要があり、製造工程がさらに煩雑になりコスト高になる問題がある。
一方、AFRPロッドとは別の手法として、アラミド繊維に熱可塑性樹脂を直接被覆した構造を有する繊維状物も提案することができる。このような繊維状物の製造方法としては、特許文献3(特開平8−187728号公報)において、繊維に熱可塑性樹脂を含浸した繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法が提案されている。この方法で作製される繊維強化熱可塑性樹脂材料は、繊維を溶融ポリマー溜中に導入し圧力により樹脂を繊維に被覆することから、樹脂が繊維に高度に含浸された、繊維/樹脂層の接着性が高いものである。
しかし、この方法で得られる繊維強化熱可塑性樹脂材料は、樹脂が溶融した段階で成型用ノズルを通過させることで整った形状のものを得ることができる。しかしながら、この方法では、樹脂層の厚みを調整することが非常に困難で、特に樹脂層の厚みが0.1mmから0.25mmといった非常に薄い場合においては、もはや調整が不可能であり、均一な厚みの樹脂層を有する繊維状物を得ることができない。その結果、同一断面において樹脂層の厚みが薄い部分が優先的に曲がりやすくなり、最小曲げ半径に偏りが出るばかりではなく、樹脂層の厚みが厚い部分に比べ、薄い部分は容易に座屈しやすくなるため、最小曲げ半径が大きくなるという問題がある。
特開2001−83385号公報 特開2003−90941号公報 特開平8−187728号公報
本発明は、マルチフィラメントからなる長繊維に対して、均一な厚みの熱可塑性樹脂層を被覆することにより、また最小曲げ半径が小さい上、そのバラつきが少なく、さらに繊維/熱可塑性樹脂層の接着性に優れた繊維状物およびその製造方法を提供するものである。
本発明は、マルチフィラメントからなる長繊維に対して、その外層に熱可塑性樹脂を被覆した繊維状物であって、その熱可塑性樹脂層の厚みが0.1mmから0.25mmであり、かつその厚みのバラつきが標準偏差で0.5以下であり、繊維/熱可塑性樹脂層の接着強力が10N/cm以上であることを特徴とする繊維状物に関する。
次に、本発明は、下記(イ)〜(ホ)の工程を有することを特徴とする繊維状物の製造方法に関する。
(イ)マルチフィラメントからなる長繊維を200℃以上の温度で熱処理し、表面を活性化させる工程。
(ロ)押出し成型機に、真円でかつ均一なスリットを有する金型を取り付け、このスリットから溶融した熱可塑性樹脂を均一な厚みを有するようにチューブ状に押出す工程。
(ハ)工程(ロ)でチューブ状に押出された熱可塑性樹脂の中空部に、工程(イ)で得られるマルチフィラメントからなる長繊維を連続的に配する工程。
(ニ)熱可塑性樹脂を長繊維に強固に密着させる工程。
(ホ)熱可塑性樹脂を冷却して固化し、繊維状物を巻き取る工程。
本発明によれば、均一な厚みを有する樹脂層をマルチフィラメントからなる長繊維に被覆された、繊維/樹脂層の接着性に優れ、最小曲げ半径が小さい繊維状物が得られる。
本発明は、真円でかつ均一なスリットを有するダイスから均一な厚みを有するチューブ状の溶融熱可塑性樹脂を押し出し、その中空部分に繊維を導入することで、繊維に対して均一な厚みの樹脂を被覆することが可能で、さらにマルチフィラメントからなる長繊維をあらかじめ200℃以上の温度で熱処理し表面を活性化させた上でチューブ状の溶融熱可塑性樹脂の中空部に導入し、すぐに高圧下のチャンバーに導入することで、熱可塑性樹脂を長繊維に強固に密着できる。また、マルチフィラメントからなる長繊維の直径と、被覆する樹脂層の厚みを調整することで、繊維状物の最小曲げ半径が5mm以下にすることができる。
本発明に用いられるマルチフィラメントからなる長繊維は、ケーブル用抗張力体として一般によく用いられる有機繊維であるパラ系アラミド繊維やポリベンザゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維などの高強力繊維が好ましい。
その具体例としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレン−テレフタルアミドのなどのパラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールなどのポリベンザゾール繊維、またポリアリレートなどの全芳香族ポリエステル繊維を挙げることができる。
本発明に用いられるマルチフィラメントからなる長繊維の直径は、好ましくは0.2mmから0.5mm、さらに好ましくは0.4mmから0.5mmであり、また繊度は好ましくは330dtexから1,670dtex、さらに好ましくは1,100dtexから1,670dtexである。また、この繊維のフィラメント数、断面形状、微細構造や、ポリマー性状(末端カルボキシル基濃度、分子量など)、ポリマー中の添加剤の有無などには、なんら限定を受けるものではない。
このマルチフィラメントからなる長繊維に加える撚りについては特に規定はないが、撚りをかけた場合、マルチフィラメントからなる長繊維の断面がより真円になることから、熱可塑性樹脂を被覆した後も真円になり、同一断面での最小曲げ半径においてバラつきがでない効果が期待できる。一方、無撚の場合、被覆する熱可塑性樹脂が繊維内部に入り込みやすくなるため、繊維/樹脂の接着性が高くなることが期待できる。これら両方の特性を発現させるために、マルチフィラメントからなる長繊維に対して、撚り係数が1以下の撚りをかけることが望ましい。
一方、本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフェイト、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂およびこれらの混合物やこれらを含む共重合体が挙げられる。
また、これらの熱可塑性樹脂には、化学的・物理的特性を改善させる目的や、意匠性を向上させる目的で種々の添加剤、例えば紫外線吸収剤、耐光剤、耐熱剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤などを添加してもよい。
次に、本発明の方法を説明する。
図1には本発明に使用する、繊維に熱可塑性樹脂を被覆する一連の工程を行うことができる装置の一例を示す。
以下、この図面に従って説明する。マルチフィラメントからなる長繊維1は、ボビン2からガイド3を経て、張力制御装置4で必要回数ターンさせ、予備乾燥ヒーター5に導入される。この予備乾燥ヒーター5において、マルチフィラメントからなる長繊維1は、200℃以上に加熱され、成型を阻害する水や油剤などの揮発成分や不純物が除去されるとともに、該繊維表面が活性化される[工程(イ)]。
次に、長繊維1を、ガイド6を経て、導入側ダイ7に導入する。一方、熱可塑性樹脂をスクリュー8で溶融加圧し、溶融した熱可塑性樹脂はスロート9を経て2重構造のクロスヘッドダイ10の、外側に配された均一でかつ真円のスリットからチューブ状に押し出される[工程(ロ)]。
なお、この際の熱可塑性樹脂の溶融温度は、用いる熱可塑性樹脂の種類により異なるが、用いる熱可塑性樹脂の融点以上で、かつ融点よりも100℃高い温度以内であれば特に問題はない。
このとき、マルチフィラメントからなる長繊維1は、2重構造の導出側ダイ10の内側を通過する。この出口において、マルチフィラメントからなる長繊維1は、チューブ状に押し出された溶融した熱可塑性樹脂で被覆される[工程(ハ)]
引き続いて、熱可塑性樹脂の溶融温度以上を保ちながら、高圧チャンバー11へ導入し繊維と樹脂を密着させる[工程(ニ)]。その後、熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱した成型用ダイ12を通過させて、繊維状物の断面形状を整える。
なお、高圧チャンバーにおける圧力は、通常、1.1〜1.5気圧、好ましくは1.2〜1.4気圧である。
また、上記成形用ダイの設定温度は、通常、180〜300℃、好ましくは200〜250℃である。
そして、案内ガイドローラー14を有する冷却バス13で冷却し、張力制御装置15で必要回数ターンさせて、引き取りロール16を経てワインダー17で巻き取る[工程(ホ)]。
この方法により、樹脂層の厚みが均一な繊維状物を得ることができる。
なお、冷却バス13は、通常、循環機能を持った浴であり、該バス内の温度は、通常、10〜50℃、好ましくは25〜35℃である。また、冷却バスにおける冷却処理時間は、通常、1〜20秒、好ましくは1〜10秒である。
予備乾燥ヒーター5において、200℃以上に加熱する目的は、繊維に付着もしくは吸着している水分や油剤などの処理剤および不純物を除去すると共に、繊維の最表層部分を酸化により活性化し、樹脂との濡れ性を向上させることである。このような熱処理を行わずに繊維に対して溶融した熱可塑性樹脂を被覆した場合、繊維に含まれる水分や油剤などが揮発し、熱可塑性樹脂層にボイドを発生させたり、繊維と樹脂との間に留まり、繊維と樹脂の接着を阻害したりといった問題が発生する。
さらに、本発明に用いられる高強力繊維は有機繊維であり、その表面は一般に低活性であるとされている。そのため、このように低活性の状態で、繊維に樹脂を被覆しても繊維/樹脂層において十分な接着性を得ることができない。そこで、高温、例えば300℃〜400℃で熱処理し、繊維の最表層を酸化させることにより、表面が活性化された結果、樹脂との濡れ性が向上し繊維/樹脂の接着性が向上する。
予備乾燥ヒーターの温度としては、200℃以上でかつマルチフィラメントからなる長繊維の分解温度以下、例えばパラアラミド繊維の場合、500℃であり、好ましくは250℃から450℃、さらに好ましくは300℃〜400℃である。
また、予備乾燥ヒーター中での熱処理時間は、熱処理の温度にもよるが、例えば処理温度が400℃の場合、10秒以上であれば、繊維に付着もしくは吸着している水分や油剤などの処理剤および不純物を除去し、さらに繊維の最表層部分を酸化により活性化させることができる。
図1に示した一連の工程の中で、繊維および樹脂を被覆した繊維状物にかかる張力には特に規定はないが、10gfから100gfが望ましい。この張力は、張力制御装置4および15で調整することができる。
導入側ダイ7の径は、用いるマルチフィラメントからなる長繊維の直径により異なるが、その繊維の直径の1.1倍以上であることが望ましい。また、導入側ダイの最小径の部分にアールがついていることが望ましい。繊維とほぼ同じなどの内径のダイに通した場合、繊維がダイの端で削れて繊維が損傷する可能性がある。また、導入側ダイの最小径の部分にアールがついていなければ、同様に繊維がダイの端で削れて繊維が損傷する可能性がある。このアールについては特に規定はないが、1mm以上であることが望ましい。
クロスヘッドダイ10は、マルチフィラメントからなる長繊維が通過する部分と、その外側に溶融した熱可塑性樹脂がチューブ状に押し出される円弧状または円環状の均一なスリット部からなる構造を有している。クロスヘッドダイ10において、長繊維が通過する部位の径は用いるマルチフィラメントからなる長繊維の直径により異なるが、上記の理由からその繊維の直径の1.1倍以上であることが望ましい。また、導入側ダイの最小径の部分にΦ1mm以上のアールがついていることが望ましい。溶融した熱可塑性樹脂がチューブ状に押し出される円弧状または円環状のスリット部の厚みは、被覆する樹脂層の厚みにより異なるが、均一な厚みを有している必要がある。また、チューブ状に押し出された熱可塑性樹脂はバラス効果により膨張しているため、冷却やドラフトなどにより樹脂層の厚みは小さくなる。そのため、バラス効果を十分に考慮した上でスリットの厚みや円弧状のスリットの数を調整する必要がある。そのため、例えば樹脂層の厚みを0.2mmとした場合、スリットの厚みは0.18mm〜0.20mmが望ましい。また、円弧状のスリットの数は2個から8個が望ましい。
また、長繊維とチューブ状に押し出された熱可塑性樹脂がより密着しやすいように、長繊維が通過する部分とスリットの間隔は0.2mm以下であることが望ましい。
なお、導入側ダイ7およびクロスヘッドダイ10は、ダイヘッド18に取り付けられている。
チューブ状に押し出された熱可塑性樹脂を被覆された繊維状物は、被覆された樹脂層をドラフトしながら、熱可塑性樹脂の溶融温度以上に保たれた高圧チャンバー11に導入される。高圧チャンバー内の圧力については特に規定はないが、1.2気圧以上であれば繊維と樹脂とを強固に密着させることができる。
その後、繊維状物は熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱した成型用ダイ12を通過させる。成型用ダイ12の内径は、繊維の直径および樹脂層の厚みにより異なるが、繊維部分と熱可塑性樹脂部分を合わせた繊維状物の直径に対して、1.02から1.05倍であることが望ましい。成型用ダイの内径がこれよりも小さい場合、被覆した樹脂が剥ぎ取られ、樹脂層の厚みが不均一になる危険性がある。一方、大きすぎる場合、樹脂層の断面形状を整えることができない。
断面形状を整えられた繊維状物は、冷却バスで冷却され、引き取りロールを経てワインダーにより巻き取られる。ワインダーでの巻き取り速度は、樹脂の吐出量などにより異なるが、好ましくは50m/分から500m/分、さらに好ましくは100m/分から300m/分である。
本発明の方法により、マルチフィラメントからなる長繊維に熱可塑性樹脂を被覆した繊維状物であって、その熱可塑性樹脂層の厚みのばらつきが少なく、また繊維/樹脂層の接着性が高く、かつ最小曲げ半径が小さい繊維状物をより簡便な製造方法により得ることができる。
本発明の繊維状物の製造方法は、あらかじめ熱処理により揮発成分を除去し、さらに酸化により表面を活性化させたマルチフィラメントからなる長繊維を、均一な厚みを有するチューブ状の溶融した熱可塑性樹脂を被覆し、高圧チャンバー内でより強固に密着させるため、得られる繊維状物において樹脂の厚みが均一で、繊維/樹脂層の接着性が高く、さらに最小曲げ半径が小さいので、例えば光ファイバケーブル用抗張力体の用途に特に有用である。
このようにして得られる本発明の繊維状物における熱可塑性樹脂層の厚みは、0.1から0.25mm、好ましくは0.15から0.20mmである。熱可塑性樹脂層の厚みが0.1mm未満である場合、熱可塑性樹脂をチューブ状に押出すクロスヘッドダイ10のスリットの厚みを0.1mm未満にする必要があり、そのようなスリットを有するクロスヘッドダイを製造することは技術的に困難であるばかりでなく、熱可塑性樹脂層の厚みが薄すぎて屈曲などにより容易に亀裂などの破壊が生じる危険がある。一方、0.25mmを超えると、樹脂層の厚みが厚すぎるために樹脂層の柔軟性が失われ、屈曲の際に目標とする最小曲げ半径に至る前に樹脂層が座屈する可能性がある。この熱可塑性樹脂層の厚みは、使用する2重構造のクロスヘッドダイ10の外側に配した均一でかつ真円のスリットの厚みを調整することにより、容易に調整することができる。
また、本発明の繊維状物は、長繊維に被覆された熱可塑性樹脂の厚みのバラツキが標準偏差で0.5以下、好ましくは0.4以下である。標準偏差が0.5を超えると、同一断面において樹脂層の厚みが不均一となり、その結果、樹脂層の厚みが薄い部分が優先的に曲がりやすく、最小曲げ半径に偏りが出るばかりでなく、樹脂層の厚みが厚い部分に比べ、薄い部分は容易に座屈しやすくなるため好ましくない。標準偏差を0.5以下にするには、クロスヘッドダイ10の外側に配した円弧状または円環状のスリットの厚みを均一にする、また長繊維が通過する部位と熱可塑性樹脂が押出されるスリットの間隔を一定にする必要がある。
さらに、本発明の繊維状物において、繊維/熱可塑性樹脂層の接着力は10N/cm以上、好ましくは20〜30N/cmである。接着力が10N/cm未満では、長繊維とその周りに被覆した熱可塑性樹脂において機械的物性や熱膨張係数等が異なるため、例えば強い引張が加わった場合や寒暖の差による継続的な伸縮により、長繊維と熱可塑性樹脂層で剥離が生じやすくなり、その結果として抗張力体としての機能を果たさなくなるため好ましくない。接着力を10N/cm以上にするには、長繊維を予め熱処理により揮発成分を除去し、酸化により表面を活性化させ、また長繊維に対して熱可塑性樹脂を被覆する際に、強固に密着させるためにクロスヘッドダイ10において、長繊維が通過する部位と熱可塑性樹脂が押出されるスリットの間隔を0.2mm以下にし、さらに長繊維に熱可塑性樹脂を被覆した後の工程として高圧チャンバー11へ導入する必要がある。
さらに、本発明の繊維状物は、最小曲げ半径が好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。最小曲げ半径が5mmを超えると、光ファイバドロップケーブルに使用する際、コーナーへの施工などで大きく曲げられるため、この曲げに対して十分に耐え得ることができず好ましくない。最小曲げ半径を5mm以下にするには、繊維状物における熱可塑性樹脂層の厚みを0.1から0.25mmにし、かつその熱可塑性樹脂層の厚みのバラツキを標準偏差で0.5以下にする必要がある。
さらに、本発明の繊維状物は、長繊維部分と熱可塑性樹脂部分を合わせた直径は、好ましくは0.4mmから1.0mm、さらに好ましくは0.5mmから0.7mmである。
これは、本発明に用いられるマルチフィラメントからなる長繊維の直径が0.2mmから0.5mmであり、また繊維状物の熱可塑性樹脂層の厚みが0.1mmから0.25mmであるためあるが、特に限定されるものではなく、この範囲以外の長繊維の直径や熱可塑性樹脂層で繊維状物を作製しても特に問題はない。しかし、本発明においては、0.4mm未満では、繊維状物に十分な繊維量を導入することができないため、抗張力体として必要かつ十分な強度を保つことができず、一方、1.0mmを超えると、太すぎるために光ファイバドロップケーブルの抗張力体としては不適になる場合があるため、好ましくない。この合わせた直径は、長繊維の直径と熱可塑性樹脂層の厚みにより、容易に調整することができる。
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例における各種の物性値の測定は、以下に述べる測定方法に従った。
抗張力体の物性評価
1.繊維状物の直径
ノギスにより同一断面において3箇所の直径を測定し、異なる3点について同様に直径を測定した。これら9箇所の平均値を繊維状物の平均直径とした。
2.樹脂層の平均厚み
繊維状物の異なる3箇所の断面を実体顕微鏡で観察し、写真を撮影した。この断面の異なる3箇所について樹脂層の厚みを測定し、これら9箇所の樹脂層の厚みを繊維状物の平均厚みとした。
3.樹脂層厚みの標準偏差
上記2.で求めた9箇所の樹脂層厚みから標準偏差を算出した。
4.破断荷重
下記の試験方法、および条件で繊維状物の破断荷重測定を行った。
試験機:INSTRON 5565型(INSTRON社製)
試験片:長さ700mmに切断したものを試験片とした。
温度:室温
引張速度:250mm/分
5.弾性率
下記の試験方法、および条件で繊維状物の弾性率測定を行った。
試験機:INSTRON 5565型(INSTRON社製)
試験片:長さ700mmに切断したものを試験片とした。
温度:室温
引張速度:250mm/分
6.最小曲げ半径
約5cmの繊維状物の両端を持ち、ループを作った。そしてそのループの直径を小さくしてゆき、繊維状物が折れるもしくは座屈したときの内側の直径を測定し、最小曲げ半径を算出。これを異なる5サンプルについて測定を行い、その平均値をその繊維状物の最小曲げ半径とした。
7.引抜接着強力
下記の試験方法、および条件で繊維状物における繊維/樹脂との引抜接着強力測定を行った。
試験機:INSTRON 5565型(INSTRON社製)
試験片:長さが30cmほどの繊維状物において、繊維に被覆した樹脂を長さ1cmを残してそれ以外の樹脂はニッパーなどを用いて取り除く。その後、樹脂が残った部分に繊維へ押さえる力を加えることなく固定した。この状態で繊維を引抜き、引き抜くときに要する力を引抜接着強力とした。
温度:室温
試験速度:200mm/分
実施例1
パラ系芳香族ポリアミド繊維であるテクノーラT−200(帝人テクノプロダクツ(株)製、繊度:1,670dtex、フィラメント数:1,000)を、撚糸機にて37T/m(撚り係数:0.5)でS撚りしたものをマルチフィラメントからなる長繊維として用いた。
次に、下記工程を経て樹脂を被覆し、繊維状物を得た。
上記長繊維を用い、400℃の予備乾燥ヒーター中で20秒熱処理を行った後、内径がΦ0.4mmの導入側ダイに導入した。一方、熱可塑性樹脂には変性ポリエチレン樹脂であるアドマーHE055(三井化学株式会社)を用い、これをスクリューにより220℃で溶融加圧(圧力:30kgf/cm)して、クロスヘッドダイの0.2mmの厚みを有する円環状に均一に配された4つの円弧状スリットから溶融樹脂をチューブ状に押し出した。このチューブ状の溶融熱可塑性樹脂を繊維に被覆した後、220℃、1.2気圧の高圧チャンバーに導入した。その後、220℃に加熱した、直径が0.85mmの成型用ダイに通過させ、冷却バスで冷却しワインダーで巻き取ることにより繊維状物を得た。このときの巻き取り速度は100m/minであった。この方法により得られた繊維状物の直径は0.81mmであった。
比較例1
溶融樹脂を繊維に被覆する工程において、特開平8−187728号公報に記載されている方法に準拠し、繊維をポリマー溜に導き、ここで、溶融樹脂を繊維に含浸させてΦ0.8mmの導出側ダイに通過させた。それ以外の工程は、実施例1と同様の方法により繊維状物を得た。得られた繊維状物の直径は0.81mmであった。
比較例2
予備乾燥ヒーター中の温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法により繊維状物を得た。得られた繊維状物の直径は0.82mmであった。
各試験の結果を表1に示す。
Figure 2006111999
いずれも、繊維状物もほぼ同などの直径、樹脂層厚みを有するものが得られた。また、用いているマルチフィラメントからなる長繊維が同一であるため、破断荷重および弾性率はほとんど同一であった。
しかし、比較例1では、樹脂層の平均厚み自体は他と同等であるものの、バラつきが非常に大きく、標準偏差は他の2つに比べ大きい値となった。また、最小曲げ半径においても、他に比べ大きい値であった。この原因としては、樹脂層の厚みが不均一であるため樹脂層が薄いところが優先的に座屈・折損するためであると考えられる。
比較例2では、樹脂層のバラつきは小さく、繊維に対してほぼ均一に樹脂を被覆することができたが、繊維/樹脂層の接着強力は他に比べ小さい値であった。この原因として、予備乾燥ヒーター中の温度が150℃と低かったため、油剤などや揮発性の不純物が繊維中に残り、これらが220℃に加熱された溶融熱可塑性樹脂を被覆したときに揮発し、繊維と樹脂の間に留まったため、その後高圧チャンバーに導入しても繊維と樹脂の強固な接着を阻害したことが考えられる。さらに別の原因として、150℃では繊維の最表層が酸化させず、活性されていないことが考えられる。
本発明によれば、均一な厚みを有する樹脂層をマルチフィラメントからなる長繊維に被覆された、繊維/樹脂層の接着性に優れ、最小曲げ半径が小さい繊維状物を製造することができ、得られる繊維状物は、光ファイバケーブル用抗張力体などの用途に特に有用である。
本発明における繊維に熱可塑性樹脂を被覆する一連の工程を行うことができる装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1. マルチフィラメントからなる長繊維
2. ボビン
3. ガイド
4. 張力制御装置
5. 予備乾燥ヒーター
6. ガイド
7. 導入側ダイ
8. スクリュー
9. ストール
10.クロスヘッドダイ
11.高圧チャンバー
12.成型用ダイ
13.冷却バス
14.案内ガイドローラー
15.張力制御装置
16.引き取りリール
17.ワインダー
18.ダイヘッド

Claims (4)

  1. マルチフィラメントからなる長繊維に対して、その外層に熱可塑性樹脂を被覆した繊維状物であって、その熱可塑性樹脂層の厚みが0.1mmから0.25mmであり、かつその厚みのバラつきが標準偏差で0.5以下であり、繊維/熱可塑性樹脂層の接着強力が10N/cm以上であることを特徴とする繊維状物。
  2. その最小曲げ半径が5mm以下である、請求項1記載の繊維状物。
  3. マルチフィラメントからなる長繊維の直径が0.2mmから0.5mmであり、長繊維部分と熱可塑性樹脂部分を合わせた直径が0.4mmから1.0mmである請求項1または2記載の繊維状物。
  4. 下記(イ)〜(ホ)の工程を有することを特徴とする繊維状物の製造方法。
    (イ)マルチフィラメントからなる長繊維を200℃以上の温度で熱処理し、表面を活性化させる工程。
    (ロ)押出し成型機に、真円でかつ均一なスリットを有する金型を取り付け、このスリットから溶融した熱可塑性樹脂を均一な厚みを有するようにチューブ状に押出す工程。
    (ハ)工程(ロ)でチューブ状に押出された熱可塑性樹脂の中空部に、工程(イ)で得られるマルチフィラメントからなる長繊維を連続的に配する工程。
    (ニ)熱可塑性樹脂を長繊維に強固に密着させる工程。
    (ホ)熱可塑性樹脂を冷却して固化し、繊維状物を巻き取る工程。
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