JP2006111592A - 血管新生阻害剤 - Google Patents

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隆夫 矢守
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Abstract

【課題】抗腫瘍活性を有し抗癌剤として有用な、新規な血管新生阻害剤を提供する。さらには、より低濃度で十分な血管阻害活性を有し、抗癌剤としての副作用が低減された、新規な血管新生阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明の血管新生阻害剤は、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、およびこれらの生理学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、血管新生阻害剤に関する。詳しくは、血管新生を阻害することにより抗腫瘍活性を有し、抗癌剤として使用することができる、血管新生阻害剤に関する。
癌治療の分野においては、これまでにも、様々な作用機構に基づく種々の抗癌剤が開発され使用されている。より有効性が高く且つ副作用の少ない新たな抗癌剤の開発は、従来から盛んに行われているが、近年、そのターゲットとして、血管新生阻害剤が特に注目を集めている。例えば、組み換えヒト抗VEGF(血管内皮増殖因子)であるアバスチン(米国ジェネンテック社製)や、EGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(アストラゼネカ社製)等が、既に認可を受け使用されている段階にある。
しかしながら、これらの血管新生阻害剤では、抗腫瘍活性を十分に発現させる為に必要な濃度で使用すると、従来の抗癌剤と同様、体重減少等の副作用が生じるという問題が依然として残っていた。
ところで、“アバロン(avarone)”は、海綿(Dysidea avara)抽出物由来の天然化合物であり、抗白血病活性、抗HIV活性、あるいは抗炎症活性など、様々な生物活性を有する化合物であることが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜5参照)。
特開昭62−292717号公報 Muller W. E. G. et al., Biochem. Physiol., 1985, vol.80C, p.47 Muller W. E. G.et al., Cancer Res., 1985, vol.45, p4822-4826 Sarin P. S. et al., J. Natl. Cancer Inst., 1987, vol.78, p.663 Hirsch S. et al., J. Nat. Prod., 1991, vol.54, p.92-97 Cozzolino R. et al., J. Nat. Prod., 1990, vol.53, p.699-702
そこで、本発明が解決しようとする課題は、抗腫瘍活性を有し抗癌剤として有用な、新規な血管新生阻害剤を提供することにある。さらには、より低濃度で十分な血管阻害活性を有し、抗癌剤としての副作用が低減された、新規な血管新生阻害剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その過程において、血管新生の阻害剤を探索することを目的にMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害活性を指標として活性物質の探索を行った結果、前述したアバロンに活性が認められることを確認した。さらに、各種タンパク質リン酸化酵素(PKA、PKC、PTK、eEF2K、EGFR、Flt-1)に対する阻害活性についても調べたところ、アバロンは、血管新生に深く関わる因子であるVEGF(血管内皮増殖因子)の1型受容体であるFlt-1のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害することが分かった。
以上の事実をもとに、当該アバロンについて、マウス角膜を用いたin vivoでの血管新生阻害作用を調べたところ、十分な阻害能を有することを確認した。しかも、驚くべきことに、極めて低い濃度での使用であっても、血管新生を有効に阻害できることが分かった。なお、この阻害活性は、強力な血管新生阻害剤として公知であり本系において最も低い濃度で阻害活性を示し得る「SU5416」の阻害活性[Kuwano et al., The FEBS J., vol.18, p.300-310, 2000]よりも強いものであった。
さらに、ヌードマウスXenographtによる抗腫瘍効果を調べたところ、例えば、5.0、3.3、2.2 mg/kgのいずれの濃度で使用しても、体重の減少(副作用)や毒性死を伴わずに腫瘍増殖抑制効果を示すことを確認した。なお、タキソール(12mg/kg/day)およびシスプラチン(3 mg/kg/day)を同スケジュール(q1d×5)で投与した場合、タキソールでは2〜15%の体重減少が認められ、シスプラチンでは12〜26%の体重減少が認められた。
本発明者はまた、上記アバロンと同様に、アバロン誘導体や、アバロール及びその誘導体についても、新規な血管新生阻害剤となるものであり、かつ優れた血管新生阻害能を有するものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、およびこれらの生理学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む、血管新生阻害剤である。
Figure 2006111592
(一般式(1)中、R1およびR2は互いに独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキルアミノ基を表す。)
Figure 2006111592
(一般式(2)中、R3およびR4は互いに独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキルアミノ基を表し、R5およびR6は互いに独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、加水分解性エーテル基、および加水分解性エステル基のうちのいずれか1種を表す。)
上記式(1)において、R1およびR2は水素原子であることが好ましい。また、上記式(2)において、R3、R4、R5およびR6は水素原子であることが好ましい。
本発明によれば、抗腫瘍活性を有し抗癌剤として有用な、新規な血管新生阻害剤を提供することができる。さらには、より低濃度で十分な血管阻害活性を有し、抗癌剤としての副作用が低減された、新規な血管新生阻害剤を提供することができる。
先に述べたアバロンの優れた血管新生阻害能は、血管新生の主要なファクターとなる「MMPおよびVEGF受容体のチロシンキナーゼ活性」を共に阻害し得るという、従来の血管新生阻害剤には見られないマルチファンクショナルな特性により発揮されるものであると考えられる。すなわち、アバロンは、従来の血管新生阻害剤では活性を発揮し得ない程の低濃度で用いても、十分な血管新生阻害活性を示すことができ、しかも低毒性である。したがって、アバロンは、新しいタイプの医薬品(たとえば抗癌剤)として使用可能であり、非常に利用価値の高いものであると考えられる。
以下、本発明の血管新生阻害剤について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。

1.血管新生阻害剤
本発明の血管新生阻害剤は、前述したように、上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(2)で表される化合物、およびこれら化合物の生理学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分とすることを特徴とするものである。
(1) 有効成分
上記一般式(1)で表される化合物については、R1およびR2が共に水素原子の場合はアバロンを表し、R1およびR2の少なくとも一方が水素原子以外である場合はアバロン誘導体を表す。
アバロンは、限定はされないが、一般には、海綿(Dysidea avara)のエチルアセテート抽出物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで調製することができる。また、同様にして精製されたアバロールを銀酸化物により酸化処理して得ることもできる。具体的には、西ドイツ特許出願公開明細書第3427383号に記載されている調製方法を適用することができる。
上記一般式(1)において、R1やR2が水素原子以外である場合としては、炭素数1〜4のアルキルアミノ基が好ましく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基等が挙げられる。
R1やR2が炭素数1〜4のアルキルアミノ基である一般式(1)の化合物の調製は、限定はされないが、まず、アバロンと、炭素数1〜4のアルキルアミン塩酸塩(例えば、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、プロピルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、n−ブチルアミン塩酸塩、イソブチルアミン塩酸塩、t−ブチルアミン塩酸塩)とを反応させ、必要に応じ、生理学的に適切な酸類を有する塩に変換する。この際、ピリジン存在下、50%エタノール中で行うことが好ましい。次いで、得られた3'−、4'−および3',4'−アルキルアミノアバロン類の混合物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより目的の化合物を分離回収することができる。
上記一般式(1)において、R1およびR2は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよく、限定はされない。
本発明の血管新生阻害剤が上記一般式(1)で表される化合物を有効成分として含む場合、当該化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、限定はされないが、より高い活性を示す点でアバロンのみであることが好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物の生理学的に許容可能な塩(アバロン誘導体に含まれる)としては、限定はされないが、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウムなどの無機塩基との塩や、カフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジン、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンなどの有機塩基との塩や、リジン、アルギニン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
塩は、例えば、塩酸などの適切な酸、あるいは水酸化ナトリウム等の適切な塩基を用いる方法で調製することができる。具体的には、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、一般に知られている標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。
本発明の血管新生阻害剤が上記一般式(1)で表される化合物の生理学的に許容可能な塩を有効成分として含む場合、当該塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、限定はされない。
上記一般式(1)で表される化合物、およびその生理学的に許容可能な塩については、分子中に不斉炭素原子や二重結合を有するため、これに基づく立体異性体(ラセミ体、光学活性体、ジアステレオマー等)や、幾何異性体(シスまたはトランス体)や、二重結合の位置異性体が存在し得る。本発明においては、一般式(1)で表される化合物、およびその生理学的に許容可能な塩は、これら各種異性体をも含むものであるとする。
上記一般式(2)で表される化合物については、R3、R4、R5およびR6がすべて水素原子の場合はアバロールを表し、それらのうちの少なくとも一つが水素原子以外である場合はアバロール誘導体を表す。
アバロールは、限定はされないが、一般には、アバロンの調製と同様に、海綿(Dysidea avara)のエチルアセテート抽出物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで調製することができる。具体的には、西ドイツ特許出願公開明細書第3427383号に記載されている調製方法を適用することができる。
上記一般式(2)において、R3やR4が水素原子以外である場合としては、炭素数1〜4のアルキルアミノ基が好ましく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基等が挙げられる。
R3やR4が炭素数1〜4のアルキルアミノ基である一般式(2)の化合物の調製は、限定はされないが、まず、アバロールと、炭素数1〜4のアルキルアミン塩酸塩(例示は前述したものと同様)とを反応させ、必要に応じ、生理学的に適切な酸類を有する塩に変換する。この際、ピリジン存在下、50%エタノール中で行うことが好ましい。次いで、得られた3'−、4'−および3',4'−アルキルアミノアバロール類の混合物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより目的の化合物を分離回収することができる。
上記一般式(2)において、R3およびR4は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよく、限定はされない。
上記一般式(2)において、R5やR6が水素原子以外である場合としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数4〜6のジアシル基、加水分解性エーテル基、および加水分解性エステル基のうちのいずれか1種が好ましい。
上記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
R5やR6が炭素数1〜4のアルキル基である一般式(2)の化合物は、限定はされないが、アバロールや前述したアルキルアミノアバロール類と、ハロゲン化アルキルとを反応させること等により調製することができる。この際、水酸化ナトリウム存在下等の条件下で反応を行うことができる。
上記炭素数2〜6のアシル基としては、例えば、CH3−CO−、C2H5−CO−、C3H7−CO−、CH3(CH3)−CH2−CO−、C4H9−CO−、CH3−CH(CH3)−CH2−CO−、CH3−CH2−CH(CH3)−CO−、C(CH3)3−CO−、C5H11−CO−、CH3−CH(CH3)−CH2−CH2−CO−、CH3−CH2−CH(CH3)−CH2−CO−、CH3−CH2−CH2−CH(CH3)−CO−、C(CH3)3−CH2−CO−、CH3−CH(CH3)−CH(CH3)−CO−、CH3−CH2−C(CH3)2−CO−等が挙げられる。
R5やR6が炭素数2〜6のアシル基である一般式(2)の化合物は、限定はされないが、アバロールや前述したアルキルアミノアバロール類と、酸塩化物とを反応させること等により調製することができる。この際、塩基性等の条件下で反応を行うことができる。
上記加水分解性エーテル基としては、生理学的に容易に加水分解可能なエーテル基が好ましく、具体的には、例えば、メトキシメチルエーテル基、テトラヒドロピラニルエーテル基等が挙げられる。
R5やR6が加水分解性エーテル基である一般式(2)の化合物は、限定はされないが、アバロールや前述したアルキルアミノアバロール類と、ハロゲン化エーテルとを反応させること等により調製することができる。この際、塩基性等の条件下で反応を行うことができる。
上記加水分解性エステル基としては、生理学的に容易に加水分解可能なエステル基が好ましく、具体的には、例えば、ピルビン酸エステル基等のα−ケトカルボン酸エステル基や、オルトギ酸エステル基、トルエンスルホン酸エステル基等が挙げられる。
R5やR6が加水分解性エステル基である一般式(2)の化合物の調製は、限定はされないが、アバロールや前述したアルキルアミノアバロール類と、酸塩化物とを反応させること等により行うことができる。この際、ピリジン存在下等の条件下で反応を行うことができる。
上記一般式(2)において、R5およびR6は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよく、限定はされない
本発明の血管新生阻害剤が上記一般式(2)で表される化合物を有効成分として含む場合、当該化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、限定はされないが、より高い活性を示す点でアバロールのみであること好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物の生理学的に許容可能な塩(アバロール誘導体に含まれる)としては、限定はされないが、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が挙げられる。酸付加塩や塩基性塩の例示は前述したものと同様である。また、塩の調製方法の例示についても前述した内容と同様である。
本発明の血管新生阻害剤が上記一般式(2)で表される化合物の生理学的に許容可能な塩を有効成分として含む場合、当該塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、限定はされない。
上記一般式(2)で表される化合物、およびその生理学的に許容可能な塩については、分子中に不斉炭素原子や二重結合を有するため、これに基づく立体異性体(ラセミ体、光学活性体、ジアステレオマー等)や、幾何異性体(シスまたはトランス体)や、二重結合の位置異性体が存在し得る。本発明においては、一般式(2)で表される化合物、およびその生理学的に許容可能な塩は、これら各種異性体をも含むものであるとする。
(2) その他の成分
本発明の血管新生阻害剤は、上述した有効成分以外にも他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、後述する各種用法(使用形態)に応じて必要とされる(または好ましく用いられる)成分等が挙げられる。これら他の成分は、上述した有効成分により発揮される血管新生阻害効果が損なわれない範囲で含有することができる。

2.用法、用量
本発明の血管新生阻害剤の投与は、例えば、経口または非経口等の公知の用法で行うことができ、限定はされないが、好ましくは経口投与である。
これら各種用法に用いる製剤(経口剤や非経口剤等)は、薬剤製造上一般に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。
本発明の血管新生阻害剤の投与量は、一般には、製剤中の有効成分の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、病気の種類・進行状況や、投与経路、投与回数(/1日)、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。
本発明の血管新生阻害剤を経口剤または非経口剤として用いる場合について、以下に具体的に説明する。
経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定はされず、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれであってもよいし、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。当該経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン等)、充填材(乳糖、糖、コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(各種でんぷん等)、および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
経口剤の投与量(1日あたり)は、一般には、前述した有効成分を、適用対象(患者)の体重1kgあたり0.01〜1000mg服用できる量であることが好ましく、より好ましくは0.05〜500mgである。本発明においては、当該有効成分は、低濃度の使用であっても高い血管新生阻害活性を発現し副作用も極めて少ないので、上記のように比較的少ない服用量でも十分にその有効性を示し得る。
経口剤中の有効成分の配合割合は、限定はされず、1日あたりの投与回数等を考慮して、適宜設定することができる。
非経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定はされず、例えば、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤等のいずれであってもよい。各種注射剤の場合は、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態や、使用時に溶解液に再溶解させる凍結乾燥粉末の状態で提供され得る。当該非経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、各種注射剤の場合は、水、グリセロール、プロピレングリコールや、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリアルコール等が挙げられる。
非経口剤の投与量(1日あたり)は、限定はされないが、例えば各種注射剤であれば、一般には、前述した有効成分を、適用対象(患者)の体重1kgあたり0.01〜1000mg服用できる量であることが好ましく、より好ましくは0.05〜500 mgである。本発明においては、当該有効成分は、低濃度の使用であっても高い血管新生阻害活性を発現し副作用も極めて少ないので、上記のように比較的少ない服用量でも十分にその有効性を示し得る。

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<単離・試験>
1.アバロンの単離
八丈島産のDysidea属の海綿60gを50%メタノール、メタノール、クロロフォルム−メタノール(1:1)、酢酸エチル(各200mL)で抽出し、抽出液を濃縮後水とクロロフォルムで2層分配した。クロロフォルム層を濃縮後ノルマルヘキサンと90%メタノールで2層分配した。90%メタノール層に水を添加し60%メタノールとした後にクロロフォルムで抽出した。このクロロフォルム抽出画分を濃縮後、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)を溶媒系としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(直径2cm×長さ40cm)により分画し、アバロンを高濃度で含む画分(フラクション10〜14、各15mL)を得た。この画分を逆相カラム(COSMOSIL 5C18-ARII,2cm×25cm)と70%1−プロパノールによるHPLCによって精製し、135.8 mgのアバロンを得た(収率22.6%湿重量換算)。
アバロンの同定は陰イオンモードFABMS分析(m/z 313 [M+2H−H])、およびNMRスペクトル(表1)の解析により行った。
Figure 2006111592
2.MMP阻害活性試験
(1) 組み換えpro-MT1-MMPの発現と精製
膜貫通部位を除いたMT1-MMPを発現するベクターにより形質転換した大腸菌E. coli [Kinoshita T. et al., Cancer Res., vol.56, p.2535-2538, 1996]を用い、0.4mM IPTGによってタンパク質の発現を誘導した。菌体を集め、集めた菌体をE. coli洗浄バッファー (40mM Tris-HCl pH8.0, 20% sucrose)で洗浄し、遠心分離によりペレットを回収した。菌体を溶菌バッファー (50mM Tris-HCl pH8.0, 100mM NaCl, 1mM EDTA, 0.025% リゾチーム; 培養液1000mLあたり100mL添加) に溶解し、一晩室温にて撹拌した。溶解液にデオキシコール酸 (125mg/100mL lysis buffer)とDNaseI (溶菌バッファー100mLあたり50μg添加) を加えて室温でさらに2時間撹拌した。懸濁溶液を遠心分離に付してインクルージョンボディーペレットを回収した。回収したペレットはインクルージョンボディー洗浄液 (50mM Tris-HCl pH8.0, 100mM NaCl, 1mM EDTA, 0.5% Triton-X100) にて洗浄し、再び遠心分離に付した。沈殿物を20 mM DTT を含む尿素バッファー(8M urea, 20mM Tris-HCl pH8.6, 20mM DTT, 50μM ZnSO4; 培養液1000mLあたり50mL添加)に溶解し、不溶物を遠心分離にて沈殿物として除いた。上清に最終濃度2mM になるように PMSF を添加して、尿素バッファー(8M urea, 1mM Tris-HCl pH 8.6, 1mM DTT, 50μM ZnSO4)にて平衡化したQ-column(Bio Rad High Q; 2.5×5cm for 1000mL culture)に添加して、それぞれ、0、0.1、0.2および1.0MのNaClを含む上記尿素バッファー(各200mL)にて溶出した。MT1-MMPを含む画分を回収し、尿素バッファーで280nmにおける吸収A280 が0.1以下になるように希釈して、最終濃度20mMになるようにシスタミンを添加した。溶液を10倍量の透析バッファー (50mM Tris-HCl pH 8.6, 150mM NaCl, 5mM CaCl2, 100μM ZnSO4, 5mM β-mercaptethanol, 1mM 2-hydroxyethyl disulfide, 0.02% NaN3)を用いて4℃で一晩透析し、次いで50μMのZnSO4を含むTNCバッファーを用いて、4℃で透析を行った(4時間×3回)。酵素溶液は沈殿物を取り除くために遠心分離に付し、上清を−80℃にて使用時まで保存した。
(2) MT1-MMP 阻害活性試験
蛍光基質 MOCAc-Pro-Leu-Gly-Leu-A2pr(Dnp)-Ala-Arg-NH2 (3163-v) はペプチド研究所から購入した。基質は10%DMSOおよび90%TNC バッファー(50mM Tris-HCl pH7.5, 150 mM NaCl, 10 mM CaCl2, 0.05% Brij-35, 0.02% NaN3) に溶解し、100 mMの濃度になるように調製した。蛍光度の測定は Molecular Devices 社SPECTRA MAX GEMINI fluorescence spectrometerにて行った。組み換えpro-MT1-MMPはheterologous expression systemによって作成した。
MT1-MMP の阻害試験は Knight らの方法.[knight, C. G.; Willenbrock, F.; Murphy, G. FEBS Lett. 1992, 296, 263-266.]を改変して行った。すなわち、1ウェルあたり2μLの試験サンプルを、100μLのTNCバッファーを含む96穴マイクロプレートに添加し、そこに50μLの活性化MT1-MMPを添加して37℃で10分間プレインキュベーションを行った。pro-MT1-MMPはトリプシン(最終濃度0.1μg/mL)を用いて20℃で1時間活性化を行い、 PMSF (最終濃度2mM)にて活性化反応を停止して、TNC バッファーにて80 ng/mL になるように活性化 MT1-MMP 溶液の濃度を調製した。この溶液に50μLの蛍光基質(8μM)を添加し酵素反応を開始させた。インキュベーション(37°C、1時間)後、328nmの励起光を当て、393nmの蛍光度を測定した。酵素溶液の代わりにTNCバッファーのみを加えたものをポジティブコントロールとして用い、テストサンプルを加えないものをネガティブコントロールとした。ネガティブコントロールの蛍光度をFlNC、ポジティブコントロールの蛍光度をFlPCとして、サンプルの蛍光度をFlSとしたときに、阻害率(I.R.)を「I.R.(%)=〔(FlNC−FlS)/(FlNC−Flpc)〕×100」で定義した。すべての測定はトリプリケートで行い、阻害率の算出にはその平均値を用いた。
3.39種類のヒト癌細胞パネルを用いた細胞増殖抑制活性評価
矢守らの方法[Dan, S.; Tsunoda, T.; Kitahara, O.; Yanagawa, R.; Zembutsu, H.; Katagiri, T.; Yamazaki, K.; Nakamura, Y.; Yamori, T. Cancer Res. 2002, 62, 1139-1147.]により39種類のヒト癌細胞パネルを用いてアバロンの細胞増殖抑制活性を評価した。
(1) 感受性試験
ヒト癌細胞(肺癌7系、胃癌6系、大腸癌5系、卵巣癌5系、脳腫瘍6系、乳癌5系、腎癌2系およびメラノーマ1系、以上を一括して癌細胞パネルと呼ぶ)39種類を、各96ウェルプレートに播き、翌日アバロンを添加、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。アバロンが癌細胞増殖を50%阻害する濃度(GI50)を求めた。GI50は癌細胞系ごとに異なり、その癌細胞パネル全体にわたるスペクトルがアバロン固有のパターン(フィンガープリント)となる。
(2) データベースとインファーマティクス
以上の試験で得られたアバロンのフィンガープリントを元にメカニズム解析を行った。すでにデータベース化されている300種以上の標準薬剤(抗癌剤や阻害剤)のフィンガープリントと、アバロンのフィンガープリントを比較して、類似度をPearson相関解析により検定した(COMPARE解析)。
4.タンパク質リン酸化酵素阻害活性試験
(1) マルチプルタンパク質リン酸化酵素阻害活性試験
タンパク質リン酸化酵素阻害活性は、上原らの方法 [(i) Fukazawa H et al., Method for simultaneous detection of protein kinase A, protein kinase C, protein tyrosine kinase, and calmodulin-dependent protein kinase activities, Anal Biochem, vol.212, p.106-110, 1993,(ii) Li P-M et al., Evaluation of protein kinase inhibitors in an assay system containing multiple protein kinase activities, Anticancer Res., vol.13, p.1957-1964, 1993 参照]に従って測定した。すなわち、マウス NIH 3T3/v-srcをhypotonicバッファー[1mM Hepes-NaOH(pH7.4), 5mM MgCl2、アンチパイン、ロイペプチン、ペプスタチンA、各25μg/mL] に懸濁し、氷上で10分間静置した。vortex mixerにて1分間撹拌し、Hepes-NaOH(pH7.4)の濃度を20mMに調製して溶解液を500×gで5分間、4℃の遠心分離に付し、タンパク質リン酸化酵素およびその基質を含む上精postnuclear画分を得て、最終濃度[1mg/mLタンパク質/20mM Hepes-NaOH (pH 7.4)/10 mM MgCl2/0.1 mM Na3VO4/1 mM NaF/20μM cAMP/100μM CaCl2]になるように調製した。アバロンのDMSO溶液 (3μL)を22μLの本画分に添加して、氷上にて10分間インキュベーションを行った。タンパク質リン酸化酵素の反応は5μLの[γ-32P]ATP (75μM, 10μCi)を添加することにより開始させ、反応液を25℃で20分間のインキュベーションに付した。10μLの4倍濃度SDS-PAGEサンプルバッファーを添加して反応を停止させて、SDS-PAGE(9% w/v gel)でリン酸化タンパク質を分離した。PTKの活性を検出するためにゲルを1N NaOHで55℃、2時間処理後、オートラジオグラフィーにてバンドの検出を行った。各基質タンパク質バンドの位置は、各種阻害剤または活性化剤に対する感受性、およびリン酸化アミノ酸の分析[上記(i)の文献参照]に従って同定した。
(2) EGF受容体のチロシンキナーゼ阻害活性試験
A431細胞(20mM HEPES, pH7.4, 0.2%TritonX-100) からHanaiらの方法[(iii)Hanai N et al., Modified ganglioside as a possible modulator of transmembrane signaling mechanism through growth factor receptors: a preliminary note, Biochemical Biophysical Research Communication, vol.147, p.127-134, 1987]に従って膜画分を調製し、Berticsらの方法[(iv)Bertics PJ et al., Self-phosphorylation enhances the protein-tyrosine kinase activity of the epidermal growth factor receptor, J. Biol. Chem., vol.260, p.14642-14647, 1985]に従ってEGF受容体のチロシンキナーゼ阻害活性を検定した。すなわち、基質として膜画分のタンパク質10μg、2μg/mLのEGF、1.0mg/mLのアンジオテンシンIIを含むアッセイ混合液 15μL(20mM HEPES, pH7.4, 5mM MnCl2)をサンプルとともに25℃で30分間のプレインキュベーションに付し、5μLの[γ-32P]ATP(1μM, 5μCi/assay)を添加することにより酵素反応を開始させた。0℃、15分間のインキュベーション後、氷温の20%トリクロロ酢酸(TCA)を添加することで反応を停止させ、上精をP81セルロース紙(Whatmann)にスポットし、洗浄後、残存放射能をシンチレーションカウンターにて測定した。
(3) 1型VEGF受容体(Flt-1)のチロシンキナーゼ阻害活性試験
VEGF受容体チロシンキナーゼ活性は、Flt-1を過剰発現したTn5細胞の膜画分を用いて測定した[(v)Sawano A et al., The phosphorylated 1169-tyrosine containing region of flt-1 kinase (VEGFR-1) is a major binding site for PLCgamma, Biochem. Biophys. Res. Commun., vol.238, p.487-491, 1997]。すなわち、膜画分(2μg)をキナーゼアッセイバッファー(HEPES (50 mM, pH7.4), Triton X-100 (0.1%), MnCl2 (10 mM), MgCl2 (2 mM), DTT (1 mM), NaF (1 mM), Na3VO4 (0.1 mM)中、[γ-32P]ATP (2.5μCi, 10μM))と25℃で10分間インキュベートし、SDSローディングバッファーを添加することで反応を停止させた。煮沸(3分)後、SDS-PAGE(7.5%ポリアクリルアミドゲル)にて分離し、リン酸化Flt-1のバンドをオートラジオグラフィーにて可視化した。
4.血管新生阻害活性試験
(1) 細胞培養
HUVECsは、Clonetics Co. (Walkersville, San Diego, CA)社からSankyo Junyaku Co. Ltd. (Tokyo. Japan)を通して購入した。細胞培養は2%fetal calf serum(FCS)を含むendothelial cell basal medium (EBM-2)を用いて行った。HUVECs は 3〜4継代目のものを用いた。ヒト類表皮癌細胞 KB3-1は、10%NBSを添加したMEM培地にて培養した。
(2) 細胞増殖試験
HUVECsは2.5×104cells/wellの密度で24ウェルに播種した。24時間後、培地を0.5%FCS 添加EBM-2に交換し、24時間後にアバロンおよび増殖因子(bFGF or VEGF; final concentration 10 or 20ng/mL, respectively)を添加した。2日後、コールターカウンターにて細胞数をカウントした。
(3) ヒト微小血管細胞の遊走試験
細胞遊走アッセイはマルチウェルチャンバーを外側チャンバーとして用いて行った。ポリカーボネート膜(8μm pores)を1.33μg/mLフィブロネクチンでコートし(1時間、 37°C)内側チャンバーとして用いた[Kundra V. et al., The chemotactic response to PDGF-BB: evidence of a role for Ras, J. Cell Biol., vol.130, p.725-731, 1995]。ヒト毛細血管内皮細胞(3×105)を0.5%FBSを含むEBM-2培地に懸濁し、内側チャンバーに播いた。外側チャンバーには同培地中に各濃度のアバロンをVEGF(20ng/mL)存在または非存在下で添加した。37°Cで4時間の培養後、膜の上側にある遊走していない細胞を取り除き、膜の下側に遊走した細胞数をカウントした。各チャンバーにつき、100倍の倍率で5カ所についてカウントし、3つのチャンバーにおける数の平均を用いた。
(4) マウス角膜法による血管新生阻害活性の検定
マウス角膜法による血管新生阻害活性の検定はUshiroらの方法[Ushiro, S. et al., Stimulation of cell-surface urokinase-type plasminogen activator activity and cell migration in vascular endothelial cells by a novel hexapeptide analogue of neurotensin, FEBS Lett., vol.418, p.341-345, 1997]によって行った。すなわち、マウスVEGF(200ng)を含む0.3μLのHydron pellets (IFN Sciences, New Brunswick, NJ)を準備し、オスのBALB/cマウスの角膜に移植した。アバロンを1mg/kg/day i.p.で6日目まで毎日投与した。7日目に角膜上の血管の写真を撮影した。角膜のイメージはNikon Coolscan softwareにて記録し、標準の照度、コントラスト、および閾値の設定にてディスク上に保存した。血管新生の領域はNIH Image 1.61ソフトウェアパッケージ[Ogawa, S. et al., Induction of macrophage inflammatory protein-1a and vascular endothelial growth factor during inflammatory neovascularization in the mouse cornea, Angiogenesis, vol.3, p.327-334, 1999] により分析し、mm2の単位で表した。
5.ヒト癌細胞を用いたXenograftによる抗腫瘍効果
メスのヌードマウスBALB/c-nu/nu.femaleの右背部皮下に、2×107cells/mLに調製したヒト大腸癌由来HT-29細胞株を0.05mL移植し、腫瘍が確認できる大きさに達した時点(移植6日後)からアバロンの投与(静脈注射)を開始した。各投与群(アバロン投与量5.0、3.3、2.2mg/kg)につき4匹のマウスを用い、対照群には6匹のマウスを用いた。投与スケジュールは、1日当たり1回で5日間の連続投与(q1d×5)とし、T/C(%)は、投与開始後14日目(Day14)における対照群の腫瘍増殖率に対する薬剤投与群の比から求めた。腫瘍増殖率は、投与開始直前(Day0)における腫瘍体積を1としたときの、それ以後の腫瘍体積の相対割合で表した。
<結果・考察>
1.アバロンのMT1-MMP阻害活性
アバロンは、MT1−MMPに対してIC50 0.5μg/mLの阻害活性を示した。
2.39種類のヒト癌細胞パネルによるアバロンの細胞増殖抑制活性評価
39種類のヒト癌細胞株を用いてアバロンの細胞増殖阻害プロファイルを調べた(表2〜4,図1〜2)。各癌細胞株に対する増殖阻害効果はすべてGI50>10−5M(MG−MID=−4.72>−5)であり、株特異的な増殖阻害効果も弱かった(Delta=0.15<0.5,Range=0.4<1)。COMPAREプログラムによるフィンガープリントの分析の結果、r値が0.5以上を示した化合物がなかったことから、新規の作用機作を有する可能性が示唆された。
Figure 2006111592
Figure 2006111592
Figure 2006111592
3.タンパク質リン酸化酵素に対する阻害活性
(1) マルチプルタンパク質リン酸化酵素阻害活性
複数のタンパク質リン酸化を同時に検出できる系を用いてアバロンのタンパク質リン酸化酵素阻害活性を評価したところ、PKA、PKCおよびeEF-2K(CaMK-III)に対して100μg/mLで80%を超える阻害活性を示し、PTKに対しては10μg/mLで50〜80%の阻害活性を示した(図3)。
(2) EGFRのチロシンキナーゼ阻害活性
アバロンはEGFRのチロシンキナーゼに対してPTKに対するのと同等の阻害活性を示した(10μg/mLで68%の阻害活性,図4)。
(3) アバロンのFlt-1に対する阻害活性
アバロンはNIH3T3/v-srcに発現した1型のVEGF受容体であるFlt-1のリン酸化に対して1μg/mLで50%以上の阻害活性を示した(図5)。
4.血管新生阻害活性
(1) アバロンの血管内皮細胞の増殖および遊走に対する阻害活性
血管新生において血管内皮細胞の増殖、遊走、および管腔形成は必須であるが、アバロンはbFGF-誘導およびVEGF-誘導によるHUVECの増殖を阻害した(4μg/mLで、それぞれ、66%および67 %の阻害活性,図6)。
また、アバロンは20μMの濃度でVEGF誘導性のHUVECの細胞遊走を完全に阻害した (図7)。
(2) アバロンのin vivo血管新生阻害活性
VEGFはマウス角膜に著しい血管新生を引き起こした(図8A)。これに対し、アバロンの投与(10mg/kg i.p. 毎日)により、VEGF誘導性の血管新生が阻害された(図8B)。なお、本系を用いて同条件で評価した中では、既知の血管新生阻害剤SU5416が25mg/kg/dayの濃度で阻害した例が最も強い阻害剤の例であり、アバロンは大きくこれを上回る活性を示した。
定量的分析の結果、アバロン投与群(10mg/kg i.p. 毎日)において、VEGF誘導性の血管新生を平均61%阻害した(図9)。
5.ヒト癌細胞を用いたXenograftによる抗腫瘍効果
アバロンの抗腫瘍効果と毒性とをヒト大腸癌細胞(HT-29)を用いたXenograftによって検定した。腫瘍移植後6日目から、1日当たり1回で連続5日間アバロンを静脈内投与し(i.v.)、上記移植後14日目に腫瘍のサイズを確認した結果、5.0、3.3、および 2.2mg/kgのすべての投与群において腫瘍増殖阻害が認められた(表5)。いずれの投与群においても効果に大きな差が認められなかったことから、アバロンは比較的広い投与量幅で効果を示すことが明らかとなった。また、坦癌マウスの体重減少はいずれの投与群においても認められなかった(表5)。
以上の結果は、ヒト大腸癌細胞を用いたヌードマウスXenograftにおけるアバロンの治療効果を示すものである。
Figure 2006111592
アバロンの癌細胞に対する増殖阻害活性を示す図である。 アバロンの癌細胞に対する増殖阻害活性を示す図である。 タンパク質リン酸化酵素阻害活性を示す図である。 EGFRのチロシンキナーゼ阻害活性を示す図である。 アバロンのFlt-1に対する阻害活性を示す図である。 アバロンのHUVECに対する増殖阻害活性試験計画及び試験結果を示す図である。 アバロンのHUVECに対する遊走能試験計画及び試験結果を示す図である。 アバロンのin vivoによる血管新生阻害活性を示す写真である。 アバロンのVEGF誘導性の血管新生阻害活性を示す図である。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物、およびこれらの生理学的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む、血管新生阻害剤。
    Figure 2006111592
    (一般式(1)中、R1およびR2は互いに独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキルアミノ基を表す。)
    Figure 2006111592
    (一般式(2)中、R3およびR4は互いに独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキルアミノ基を表し、R5およびR6は互いに独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、加水分解性エーテル基、および加水分解性エステル基のうちのいずれか1種を表す。)
  2. R1およびR2が水素原子である請求項1記載の血管新生阻害剤。
  3. R3、R4、R5およびR6が水素原子である請求項1記載の血管新生阻害剤。
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