JP2006111483A - 酸化鉄粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 粒子の分散性が高く、また環境安定性の良好な酸化鉄粒子を提供すること。
【解決手段】 本発明の酸化鉄粒子は、粒子表面がカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層によって被覆されていることを特徴とする。酸化鉄粒子は、カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーに、水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行いコア粒子表面にカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層を形成することで製造される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カルシウム及びリンを含有する酸化鉄粒子、特にマグネタイト粒子に関する。
本出願人は先に、カルシウムを含むマグネタイト粒子を提案した(特許文献1及び2参照)。特許文献1においては、アルミニウム及びカルシウムを含む複合酸化鉄層が表面に形成されたマグネタイト粒子が開示されている。このマグネタイト粒子は、高電気抵抗、高飽和磁化を有するものであり、静電複写磁性キャリア用材料粉や磁性トナー用材料粉として特に好適なものである。一方、特許文献2に記載の技術は、カルシウム等の軽元素をマグネタイト粒子の内部に取り込ませてその比重を小さくし、樹脂との混合性を改良しようとするものである。しかし、特許文献1においては、飽和磁化の環境安定性についての検討はあるものの、電気抵抗値の環境安定性を高めつつ、粒子を高分散させることについての検討は特になされていない。特許文献2においても電気抵抗値の環境安定性についての検討は特になされていない。また粒子を高分散させることについての検討もなされていない。
これらとは別に、リンを含むマグネタイト粒子が提案されている(特許文献3及び4)。これらの特許文献に記載の技術は、リンを含有させることで残留磁化を下げて磁気凝集を防止し、粒子の分散性を向上させようとするものである。しかし、これらの特許文献においても、電気抵抗値の環境安定性についての検討は特になされていない。
特開2003−267731号公報 特開2000−335920号公報 特開平8−169717号公報 特開平10−101339号公報
従って本発明の目的は、電気抵抗値の環境安定性を高めつつ、粒子の分散性が高い酸化鉄粒子を提供することにある。
本発明は、粒子表面がカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層によって被覆されていることを特徴とする酸化鉄粒子を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、前記酸化鉄粒子の好ましい製造方法として、
カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーに、水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行いコア粒子表面にカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層を形成することを特徴とする酸化鉄粒子の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記酸化鉄粒子の別の好ましい製造方法として、
カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーに、第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行い、該湿式酸化を、水溶性リン化合物を添加しながら行うことを特徴とする酸化鉄粒子の製造方法を提供するものである。
本発明の酸化鉄粒子は、電気抵抗値の環境安定性が良好であり、粒子の分散性に優れたものである。従って本発明の酸化鉄粒子は、塗料用黒色顔料粉や静電複写磁性トナー用材料粉として特に好適に用いられる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明でいう酸化鉄粒子とは、好ましくはマグネタイトを主成分とするものである。以下の説明では、酸化鉄粒子としてその代表的なものであるマグネタイト粒子について説明する。また、酸化鉄粒子又はマグネタイト粒子という時には、その内容によって個々の粒子又はその集合のいずれも意味する。
本発明のマグネタイト粒子は、コアマグネタイト粒子(以下コア粒子ともいう)及びコア粒子の表面を被覆する複合酸化鉄層とから構成されている。コア粒子は、後述するように、湿式法で製造されることが好ましいが、乾式法で製造されたものであってもよい。コア粒子中には、ケイ素やアルミニウム等の各種の有効元素が適量含有されていてもよい。コア粒子を被覆する複合酸化鉄層は、カルシウム、リン、鉄及び酸素を含んでいる。カルシウムやリンは、例えばリンとカルシウムとの化合物の状態や、鉄との複合酸化物の状態で複合酸化鉄層中に存在していると考えられる。
カルシウムは、複合酸化鉄層にのみ存在していてもよく、或いはマグネタイト粒子の中心から表面までの部位に亘って存在していてもよい。好ましくは粒子内部及び複合酸化鉄層の双方に存在しており、且つ複合酸化鉄層中に偏在している。これによって、粒子の電気抵抗を適度に高くできるというという有利な効果が奏される。この観点から、複合酸化鉄層中に存在するカルシウムの量は、粒子全体の質量に対して0.01〜0.9質量%、特に0.05〜0.8質量%であることが好ましい。カルシウムが偏在しているとは、複合酸化鉄層におけるCa/Feのモル比が、コア粒子におけるCa/Feのモル比よりも高いことをいう。
リンは、複合酸化鉄層中にのみ存在しており、コア粒子中には実質的に存在していないことが好ましい。つまり、粒子全体の質量に対する複合酸化鉄層中に存在するリンの量の割合は、粒子全体の質量に対する粒子全体に含まれるリンの量の割合と実質的に同じであることが好ましい。これによって粒子の分散性を向上させるという有利な効果が奏される。なお、粒子全体の質量に対する粒子全体に含まれるリンの量の割合については後述する。
粒子全体に対する、複合酸化鉄層中に存在するカルシウム及びリンそれぞれの量は次の方法で測定する。先ず、最終的に生成した粒子20gに見合う、複合酸化鉄層形成を行う前のマグネタイト粒子と、複合酸化鉄層を形成後のマグネタイト粒子とをそれぞれ別個に酸に完全溶解する。各溶液をICPでそれぞれ定量し、その質量差を粒子の複合酸化鉄層及びその外側部分の元素量とする。この量をAとする。一方、0.01mol/lのフタル酸水素カリウム水溶液(25℃でpHは4.01)100mlに、複合酸化鉄層を形成後のマグネタイト粒子粉末20gを懸濁させ、25℃で3時間撹拌する。撹拌後、0.1μm開孔径のメンブランフィルターで濾過し、得られた濾液中のカルシウム及びリンの量をICPにて分析し、液量との積で、粒子より溶出した元素量(複合酸化鉄層より外側部分の元素量)を求める。この量をBとする。以上の結果から、(A−B)/20×100によって、複合酸化鉄層中の各元素の含有量(%)を求める。
粒子全体に含まれるカルシウムの量は、粒子全体の質量に対して0.05〜1質量%、特に0.1〜0.9質量%であることが、磁気特性の点から好ましい。一方、粒子全体に含まれるリンの量は、粒子全体の質量に対して0.05〜1質量%、特に0.1〜0.9質量%であることが、磁気特性と環境安定性とのバランスの点から好ましい。
粒子全体に対する、粒子全体に占めるカルシウム及びリンそれぞれの量は、粒子を酸性液に完全溶解して得られた溶液をサンプルとして用い、ICPによって測定することができる。
本発明のマグネタイト粒子は、その粒子形状に特に制限はなく、例えば八面体状、球状、六面体状、及び八面体超の多面体状とすることができる。マグネタイト粒子の粒径は、一次粒子の平均粒径が0.15〜0.3μm程度であることが、マグネタイト粒子を例えば磁性トナー用材料粉として用いた場合に解像度を向上させ得る点から好ましい。磁性トナーは解像度の改良のため、その粒径が小さくなる傾向にあり、かかるトナーに対しては、使用されるマグネタイトも小粒径化することが好ましい。しかし、小粒径化されたマグネタイト粒子は諸特性の安定性に欠ける傾向にある。これに対して本発明のマグネタイト粒子は小粒径でありながら、特に環境安定性に優れた特徴を有する。一次粒子の平均粒径は、試料をTEM観察しフェレ径で求める。
一般に残留磁化の高いマグネタイト粒子、特に八面体形状のマグネタイト粒子は磁気凝集に起因して分散性が悪化する。これに対して本発明のマグネタイト粒子は、残留磁化が高くとも、分散性が高いものとなる(なお残留磁化については後述する)。具体的には、分散性の指標となる鏡面反射率(入射角60°)の値が60〜100%、特に70〜100%という高い値になる。この理由は、粒子の表面が、先に述べたカルシウム及びリンを含有する複合酸化鉄層によって被覆されていることに起因していると本発明者らは考えている。
鏡面反射率は次の方法で測定される。スチレンアクリル系樹脂(TB−1000F)をトルエン(樹脂:トルエン=1: 2)にて溶解した液を調製する。また直径1mmのガラスビーズを用意する。この液60gと、ガラスビーズ90gと、マグネタイト粒子10gとを、内容積140mlのビンに入れて蓋をする。ビンの内容物を、ペイントシェーカー(トウヨウセイキ社製)にて30分混合する。混合後の内容物を、ガラス板上に4milのアプリケーターを用いて塗布し乾燥させて塗膜を得る。この塗膜の鏡面反射率を、ムラカミ式GLOSS METER(GM−3M)を用いて測定する。入射角は60°とする。
カルシウム及びリンを含有する複合酸化鉄層で粒子の表面が被覆されていることに起因して、本発明のマグネタイト粒子は、環境安定性に優れたものとなる。この理由は複合酸化鉄層の存在によって粒子の比表面積の増大が抑制されるからであると本発明者らは考えている。これに関連し、本発明のマグネタイト粒子は、BET法による比表面積が好ましくは4〜15m2/g、更に好ましくは5〜14m2/gという低レベルのものとなる。比表面積は、例えば島津−マイクロメリティックス製の2200型BET計で測定される。
環境安定性の尺度として、本発明においては、10℃・20%RHと、35℃・85%RHの各環境下で24時間曝露された後のマグネタイト粒子の体積電気抵抗の比率を採用している。具体的には、10℃・20%RH環境下で24時間曝露された後の体積電気抵抗の値をRLLとし、35℃・85%RH環境下で24時間曝露された後の体積電気抵抗の値をRHHとしたとき、RHH/RLLの値(以下、この値と体積電気抵抗比という)が1に近いほど好ましい。その下限値は0.3であり、特に0.4、とりわけ0.5であることが好ましい。一般に湿度が高くなれば体積電気抵抗の値は低下することが知られているが、本発明のマグネタイト粒子は、環境の違いによる電気抵抗値の変化が少なく、環境の違いに対して安定した電気特性を持つようになる。その結果、本発明のマグネタイト粒子を磁性トナー用材料粉として用いた場合、各種環境下で安定して感光ドラムに転写することができる。すなわち、本発明のマグネタイト粒子を磁性トナー用材料粉に使用することにより、各種環境に依存せず、安定して感光ドラムに転写できるようになる。
HHとRLLとの比である体積電気抵抗比の値については前述の通りであり、RHH及びRLLそのものの値についてはそれぞれ次の通りであることが好ましい。即ちRHHは1×102〜1×106Ω・cm、特に1×103〜1×105Ω・cmであることが、トナー用材料粉として用いた場合の電気特性の点から好ましい。またRLLは1×102〜1×106Ω・cm、特に1×103〜1×105Ω・cmであることが、同様の理由により好ましい。
体積電気抵抗の値は次の方法で測定される。マグネタイト粒子を環境室内にて、10℃・20%RH、35℃・85%RHの各環境下で24時間曝露する。次いでマグネタイト粒子10gをホルダーに入れ、600kg/cm2の圧力を加えて、25mmφの錠剤型に成形する。成形体に電極を取り付け、150kg/cm2の加圧状態で電気抵抗を測定する。測定に使用した試料の厚さ及び断面積と抵抗値から体積抵抗の値を求める。
本発明のマグネタイト粒子は、796kA/mの外部磁場をかけた条件下での飽和磁化σsが70〜92Am2/kg、特に75〜90Am2/kg、とりわけ80〜90Am2/kgであることが、磁性トナーの摩擦帯電性不良による画像劣化を防止する観点から好ましい。同様の観点から、796kA/mの外部磁場をかけた条件下での残留磁化σrが、3〜25Am2/kg、特に5〜20Am2/kgであることが好ましい。更に、796kA/mの外部磁場をかけた条件下での保磁力が3〜25kA/m、特に5〜20kA/mであることが好ましい。これらの磁気特性は、例えば東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を用いて測定される。
本発明のマグネタイト粒子は、そのFeO含有率が18質量%以上であることが、充分な磁気特性を得る点、及び黒色度を高くする点から好ましい。マグネタイト粒子中のFeO含有量は、マグネタイト粒子の黒色度を左右するものである。環境安定性の点からは、FeO劣化率が低いことが好ましい。具体的には、マグネタイト粒子を、大気中で150℃、1時間曝露した後のFeO劣化率が10%以下であることが好ましい。これに関連し、本発明のマグネタイト粒子の黒色度はL値が18.5以下であることが好ましい。黒色度は、先に説明した鏡面反射率の測定において調製した塗膜を測定対象として色差計を用いて測定する。FeO劣化率は、マグネタイト粒子を時計皿に入れ、通風型乾燥機(タバイエスペック製オーブン PH−201型)にて150℃、1時間保持し、その前後でのFeO含有量から算出する。FeO含有量は、マグネタイト粒子を硫酸にて溶解し、過マンガン酸カリウム標準溶液を用い酸化還元滴定にて測定する。
次に、本発明のマグネタイト粒子の好ましい製造方法について説明する。本製造方法は、カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーを準備する第一工程と、第一工程で得られたスラリーに、水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行いコア粒子表面にカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層を形成する第二工程とを有する。以下、各工程について説明する。
第一工程において、カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーを準備するには、例えば、水酸化第一鉄スラリー中にカルシウムイオンが共存している条件下に、水酸化第一鉄スラリーを湿式酸化させる方法を用いることができる。なお、カルシウムイオンはイオン半径が大きいので、コア粒子内に取り込まれにくいという特徴がある。
カルシウムイオンは、水酸化第一鉄の生成前に系内に存在させておくことができる。例えば、アルカリ水溶液及び第一鉄塩水溶液を中和混合して水酸化第一鉄スラリーを得る際に、アルカリ水溶液及び第一鉄塩水溶液の何れか一方に水溶性カルシウム化合物を含有させ、両者を中和混合して水酸化第一鉄を生成させることができる。この場合、水溶性カルシウム化合物は、第一鉄塩水溶液よりも、アルカリ水溶液に含有されていることが好ましい。
水溶性カルシウム化合物としては、例えば水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等が用いられる。アルカリとしては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が用いられる。一方、第一鉄塩としては、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが用いられる。アルカリの使用量は、目的とするマグネタイト粒子の形状に応じて適切な量が選択される。例えば球状のマグネタイト粒子を得る場合には、アルカリの使用量は第一鉄イオンの中和当量とすることが好ましい。八面体状のマグネタイト粒子を得る場合には、アルカリの使用量は第一鉄イオンの中和当量以上とすることが好ましい。水溶性カルシウム化合物の使用量は、第一鉄イオン1モルに対して、カルシウムイオンがモル比(カルシウムイオン使用量(mol)/第一鉄イオン使用量(mol)×100(%))で0.1〜3.0%、特に0.3〜2.8%となるようにすることが好ましい。使用量をこの範囲内とすることによって、第一段反応の終了時に、スラリー中に十分な量のカルシウムイオンが残存するようになる。
湿式酸化は、水酸化第一鉄スラリーに酸素含有ガス、典型的には空気を通気することで行われる。酸化の際のスラリー温度は70〜98℃程度であることが好ましい。湿式酸化によってマグネタイトコア粒子が得られる。先に述べた通り、カルシウムイオンはコア粒子に取り込まれにくいので、得られたコア粒子におけるカルシウムの含有量はそれほど多くない。従って、コア粒子生成後のスラリー中にはカルシウムイオンが残存している。カルシウムイオンの残存量が十分でない場合には、後述するように、適切な時点で追加的に水溶性カルシウム化合物を添加することができる。
先に述べた通り、本発明のマグネタイト粒子の粒子形状に特に制限はないが、第一工程のpHが8未満の中性領域の場合には球状のマグネタイト粒子が得られ、8〜10.5の場合には六面体状のマグネタイト粒子が得られ、10.5を超えた場合には八面体状のマグネタイト粒子が得られる。従っていずれかの条件を選べば目的の形状とすることが可能である。
湿式酸化は好ましくはスラリー中に未反応の鉄イオンが残存しなくなるまで行う。未反応の鉄イオンが残存しないことを確認した後に酸素含有ガスの通気を停止し第一工程は終了する。尤も、或る程度の量の鉄イオンが残存している状態で湿式酸化を停止し、第一工程を終了させてもよい。
第一工程においては、カルシウムイオンは、水酸化第一鉄スラリーを湿式酸化して得られたマグネタイトコア粒子のスラリーに後から添加することもできる。具体的には、常法に従い水酸化第一鉄スラリーを湿式酸化してマグネタイトコア粒子のスラリーを生成させる。次いでそのスラリーに水溶性カルシウム化合物を別途添加する。この方法によれば、マグネタイトコア粒子のスラリー中におけるカルシウムイオンの濃度を正確にコントロールできる。
マグネタイトコア粒子のスラリー中におけるカルシウムイオンの濃度は、得られるマグネタイト粒子の性能に影響を及ぼすことが本発明者らの検討の結果判明した。詳細には、マグネタイトコア粒子のスラリー中に存在するカルシウムイオンはその濃度が低いことが好ましい。カルシウムイオンの濃度が高すぎると、後述する第二工程において、カルシウムと水溶性リン化合物とが反応して水不溶性又は水難溶性の生成物がスラリー中に生じやすくなるからである。この観点から、マグネタイトコア粒子の生成前にカルシウムイオンを添加しておくか、又は生成後に別途添加するかを問わず、カルシウムイオンの濃度は、0.001〜0.05mol/l、特に0.002〜0.04mol/lにしておくことが好ましい。
第一工程によって、カルシウムイオンが存在している状態のマグネタイトコア粒子のスラリーが準備できたら第二工程を行う。第二工程においては、先ず第一工程で得られたスラリーに、水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合する。水溶性リン化合物としては、例えばリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩、オルトリン酸、亜リン酸などが用いられる。水溶性リン化合物の使用量は、第一鉄イオン1モルに対して、リンがモル比(リン使用量(mol)/第一鉄イオン使用量(mol)×100(%))で0.4〜10%、特に0.8〜8%となるようにすることが好ましい。
水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を、第一工程で得られたスラリーに添加混合し湿式酸化を行う。必要に応じ、水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液の添加後に、追加的に水溶性カルシウム化合物を適量添加してもよい。添加量は、スラリー中のカルシウムイオンの濃度が先に述べた範囲となるような量とすることが好ましい。湿式酸化のpHは、8〜13、特に9〜12に調整することが重要である。これによって、スラリー中に存在しているカルシウムイオンが水溶性リン化合物と反応して水不溶性又は水難溶性の反応生成物が生じ、その反応生成物が取り込まれながら複合酸化鉄層がコア粒子の表面に形成される。例えば水溶性リン化合物としてリン酸塩やオルトリン酸を用いた場合には、水難溶性の物質であるリン酸カルシウムが生成し、それが取り込まれながら複合酸化鉄層が形成される。その結果、カルシウム及びリンは、複合酸化鉄層中に偏在することとなる。この偏在によって、マグネタイト粒子の比表面積の増大が抑制され、環境安定性が向上する。
第二段反応におけるpHの調整は、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ水溶液の添加によって行う。また、第二工程における湿式酸化の条件は、第一工程のそれと同様とすることができる。湿式酸化はスラリー中に未反応の鉄イオンが残存しなくなるまで行う。第二工程の終了後、反応生成物を濾過、洗浄し、乾燥、粉砕工程を経て本発明のマグネタイト粒子を得る。
第二工程の別法として、カルシウムイオンが存在している状態のマグネタイトコア粒子のスラリーに、第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行い、該湿式酸化を、水溶性リン化合物を添加しながら行う方法が挙げられる。水溶性リン化合物はその水溶液の状態で反応系に連続して且つ徐々に添加することが好ましい。水溶性リン化合物の使用量は、第一鉄イオン1モルに対して、リンがモル比(リン使用量(mol)/第一鉄イオン使用量(mol)×100(%))で0.4〜10%、特に0.8〜8%となるようにすることが好ましい。また水溶性リン化合物の水溶液における水溶性リン化合物の濃度は、0.1〜1.0mol/l、特に0.2〜0.5mol/lであることが好ましい。この方法によっても、スラリー中に存在しているカルシウムイオンが水溶性リン化合物と反応して水不溶性又は水難溶性の反応生成物が生じ、その反応生成物が取り込まれながら複合酸化鉄層がコア粒子の表面に形成される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
0.045mol/lの水酸化カルシウム及び5mol/lの水酸化ナトリウムを含む水溶液29リットルと、Fe2+を2mol/l含む硫酸第一鉄水溶液35リットルとを混合撹拌し、水酸化第一鉄を含むスラリーを得た。このときのpHは12であった。このスラリーを85℃に維持しながら65l/minで空気を吹き込み300分湿式酸化を行いコア粒子を得た。
スラリー中に未反応のFe2+イオンが残存しないことを確認した後、空気の吹き込みを停止して第一工程を終了した。次に、0.085mol/lのオルトリン酸及びFe2+を2mol/l含む硫酸第一鉄水溶液15リットルをスラリーに添加混合し、65l/minで再び空気を吹き込み120分湿式酸化を行った。湿式酸化の過程においては水酸化ナトリウム水溶液を適宜スラリーに添加してスラリーのpHを10に維持した。スラリー中に未反応のFe2+イオンが残存しないことを確認した後、空気の吹き込みを停止して第二工程を終了した。得られた粒子を濾過、洗浄し、乾燥、粉砕工程を経てマグネタイト粒子を得た。
〔実施例2並びに比較例1及び2〕
第一工程及び第二工程における原料の仕込み量を表1及び表2に示す値とする以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粒子を得た。
〔実施例3〕
5mol/lの水酸化ナトリウムを含む水溶液29リットルと、Fe2+を2mol/l含む硫酸第一鉄水溶液35リットルとを混合撹拌し、水酸化第一鉄を含むスラリーを得た。このときのpHは12であった。このスラリーを85℃に維持しながら65l/minで空気を吹き込み湿式酸化を行いコア粒子を得た。スラリー中に未反応のFe2+イオンが残存しないことを確認した後、空気の吹き込みを停止した。このスラリーに、1mol/lの水酸化カルシウムを含む水溶液1.1リットルを加え、第一工程を終了した。
次に第二工程において、0.085mol/lのオルトリン酸及びFe2+を2mol/l含む硫酸第一鉄水溶液15リットルをスラリーに添加混合し、65l/minで空気を吹き込み再び湿式酸化を行った。湿式酸化の過程においては水酸化ナトリウム水溶液を適宜スラリーに添加してスラリーのpHを10に維持した。スラリー中に未反応のFe2+イオンが残存しないことを確認した後、空気の吹き込みを停止して第二工程を終了した。得られた粒子を濾過、洗浄し、乾燥、粉砕工程を経てマグネタイト粒子を得た。
〔実施例4〕
第一工程は実施例4と同様とした。次に、第二工程において、Fe2+を2mol/l含む硫酸第一鉄水溶液15リットルをスラリーに添加混合し、65l/minで空気を吹き込み再び湿式酸化を行った。湿式酸化の過程においては水酸化ナトリウム水溶液を適宜スラリーに添加してスラリーのpHを10に維持した。また1mol/lのオルトリン酸1.1リットルを連続的に且つ徐々にスラリーに添加した。スラリー中に未反応のFe2+イオンが残存しないことを確認した後、空気の吹き込みを停止して第二工程を終了した。得られた粒子を濾過、洗浄し、乾燥、粉砕工程を経てマグネタイト粒子を得た。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたマグネタイト粒子について、化学分析を行うと共に、先に述べた方法で諸特性を測定した。これらの結果を表3及び表4に示す。
Figure 2006111483
Figure 2006111483
Figure 2006111483
Figure 2006111483
表1〜表4に示す結果から明らかなように、各実施例のマグネタイト粒子(本発明品)は、各比較例のマグネタイト粒子に比較して、鏡面反射率が高く、分散性に優れていることが判る。更にRHH/RLLの値が1に近く、電気抵抗値の環境安定性に優れていることが判る。また磁気特性に関し、飽和磁化の値も十分であることが判る。これに対してカルシウムを含まない比較例1のマグネタイト粒子では、電気抵抗値の環境安定性が良好でないことが判る。リンを含まない比較例2のマグネタイト粒子では、比表面積が大きいことに起因して電気抵抗値の環境安定性が良好でなく、また、鏡面反射率が低く、分散性が良好でないことが判る。

Claims (9)

  1. 粒子表面がカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層によって被覆されていることを特徴とする酸化鉄粒子。
  2. カルシウムが粒子内部及び複合酸化鉄層の双方に存在しており、且つカルシウムが複合酸化鉄層に偏在している請求項1記載の酸化鉄粒子。
  3. 粒子全体に含まれるカルシウムの量が、粒子全体の質量に対して0.05〜1質量%であり、複合酸化鉄層中に存在するカルシウムの量が、粒子全体の質量に対して0.01〜0.9質量%である請求項2記載の酸化鉄粒子。
  4. リンが複合酸化鉄層中にのみ存在しており、リンの量が、粒子全体の質量に対して0.05〜1質量%である請求項1ないし3の何れかに記載の酸化鉄粒子。
  5. 請求項1記載の酸化鉄粒子の製造方法であって、
    カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーに、水溶性リン化合物を含有する第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行いコア粒子表面にカルシウム及びリンを含む複合酸化鉄層を形成することを特徴とする酸化鉄粒子の製造方法。
  6. 請求項1記載の酸化鉄粒子の製造方法であって、
    カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーに、第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加混合し、pHを8〜13に調整しながら湿式酸化を行い、該湿式酸化を、水溶性リン化合物を添加しながら行うことを特徴とする酸化鉄粒子の製造方法。
  7. カルシウムイオンが存在している状態の酸化鉄コア粒子のスラリーが、水溶性カルシウム化合物を含有する水酸化第一鉄スラリーを湿式酸化させて生成したものである請求項5又は6記載の酸化鉄粒子の製造方法。
  8. 前記水溶性カルシウム化合物を含有する水酸化第一鉄スラリーを得る際に、アルカリ水溶液又は第一鉄塩水溶液に水溶性カルシウム化合物を含有させる請求項7記載の酸化鉄粒子の製造方法。
  9. カルシウムと反応して水不溶性又は水難溶性の反応生成物が生ずる水溶性リン化合物を用いる請求項5ないし8の何れかに記載の酸化鉄粒子の製造方法。
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