JP2006108492A - シリコン酸化物層の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 Si−O結合が強固であって緻密性の高い高品質のシリコン酸化物層を形成することができるシリコン酸化物層の形成方法を提供する。
【解決手段】 大気圧または大気圧近傍の圧力下で電極とシリコンウエハの表面との間に流入させた酸素含有ガスのプラズマを生成し、シリコンウエハの表面から底面にかけて温度勾配を形成した状態でプラズマをシリコンウエハの表面と接触させることによりシリコン酸化物層を形成するシリコン酸化物層の形成方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】 大気圧または大気圧近傍の圧力下で電極とシリコンウエハの表面との間に流入させた酸素含有ガスのプラズマを生成し、シリコンウエハの表面から底面にかけて温度勾配を形成した状態でプラズマをシリコンウエハの表面と接触させることによりシリコン酸化物層を形成するシリコン酸化物層の形成方法である。
【選択図】 図1
Description
本発明はシリコン酸化物層の形成方法に関し、特に緻密性の高い高品質のシリコン酸化物層を形成することができるシリコン酸化物層の形成方法に関する。
半導体デバイスにおいて、絶縁層である酸化物層は半導体デバイスの性能、品質および信頼性に大きな影響を与える重要な因子の一つである。特に、シリコン(Si)ウエハを用いた半導体デバイスにおいてはゲート絶縁膜にシリコン酸化物層(SiO2層)が主に用いられており、シリコン酸化物層については様々な形成方法が提案されている。ここで、シリコン酸化物層の形成方法は大きく分けて2種類あり、一つはシリコンウエハ表面を酸化することによりシリコン酸化物層を形成する方法であり、もう一つはシリコンウエハ表面にシリコン酸化物を堆積させることによりシリコン酸化物層を形成する方法である。
シリコンウエハの表面を酸化することによってシリコン酸化物層を形成する方法としては、シリコンウエハを酸素などのガス雰囲気中で高温に加熱し、シリコンウエハの表面を酸化させる熱酸化法がある。しかしながら、この方法においては、シリコンウエハを高温に保持する必要があるため、シリコンウエハ中の不純物が拡散し、設計した不純物プロファイルの実現が困難であるという問題があった。
また、シリコン酸化物層を形成する方法としては、低圧下で酸素(O2)や一酸化二窒素(N2O)などのガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中でプラズマを生成し、生成したプラズマ中の酸素ラジカルをシリコンウエハの表面に作用させてシリコン酸化物層を形成する低圧プラズマを用いた方法がある。この方法においては、酸素ラジカルの生成を促進するために希ガスにクリプトン(Kr)ガスを使用するなどの工夫が提案されており、上記の熱酸化法よりも低温でシリコン酸化物層を形成することができるものの、一般には数百℃程度のシリコンウエハの加熱を要し、シリコン酸化物層の形成速度も十分とは言えない。また、低圧プラズマを用いた方法においては、プラズマ中の原子や分子が少ないため、プラズマ中のイオンが直接シリコンウエハに衝突してシリコンウエハがダメージを受け、その結果、シリコン酸化物層の品質に悪影響を及ぼしてしまう。
また、上記の低圧プラズマを用いた方法に対して、大気圧または大気圧近傍の圧力下でプラズマを生成する大気圧プラズマを利用した技術が盛んに研究されており、シリコン酸化物層の形成に関しても大気圧プラズマを利用した試みがなされている。大気圧プラズマを用いた場合には、シリコン酸化物層の形成に寄与する活性種の絶対数が多くなるため、シリコン酸化物層の形成速度を向上させることができる。また、大気圧プラズマ中には多数の原子や分子などが存在することから、大気圧プラズマ中のイオンが直接シリコンウエハ表面に衝突することが少なくなるため、シリコンウエハ表面のダメージが低減されて高品質のシリコン酸化物層を形成することができる。また、大気圧プラズマを用いた場合には、低圧下の雰囲気を形成するのに必要な強固な真空容器や大掛かりな排気装置が不要となる。
また、大気圧プラズマは低圧プラズマと比較して雰囲気圧力が2桁以上異なることからその性質は大きく異なり、プラズマ生成技術、プラズマ生成装置および適用可能な処理など、低圧プラズマの単なる延長線上の技術として扱うことができない。
たとえば特許文献1の段落[0060]〜[0062]には、大気圧近傍の圧力下で酸素含有ガスを用いてパルス電界を印加してプラズマを生成し、200℃に保持されたシリコンウエハを酸化処理してシリコン酸化物層が形成されていることが記載されている。
特開2002−176050号公報
しかしながら、シリコンウエハを用いた半導体デバイスにおいてはSi−O結合が強固であって緻密性の高いシリコン酸化物層を形成することが要求されるが、大気圧プラズマを用いた場合にはこのような要求を満たすシリコン酸化物層を形成することができていない。それゆえ、上記のような大気圧プラズマを用いたシリコン酸化物層の形成方法は、シリコンウエハを用いた半導体デバイスにおいては実用化されていない。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、Si−O結合が強固であって緻密性の高い高品質のシリコン酸化物層を形成することができるシリコン酸化物層の形成方法を提供することにある。
本発明は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で電極とシリコンウエハの表面との間に流入させた酸素含有ガスのプラズマを生成し、シリコンウエハの表面から底面にかけて温度勾配を形成した状態でプラズマをシリコンウエハの表面と接触させることによりシリコン酸化物層を形成するシリコン酸化物層の形成方法である。
ここで、本発明のシリコン酸化物層の形成方法において、酸素含有ガスは、酸素ガスと希ガスとの混合ガスであり得る。
また、本発明のシリコン酸化物層の形成方法においては、シリコンウエハの底面を冷却しながらプラズマをシリコンウエハの表面と接触させることが好ましい。
また、本発明のシリコン酸化物層の形成方法においては、シリコンウエハがプラズマ以外の熱源から加熱されなくてもよい。
また、本発明のシリコン酸化物層の形成方法においては、シリコンウエハがプラズマ以外の熱源から加熱されている場合であってもその加熱温度は200℃未満であり得る。
また、本発明のシリコン酸化物層の形成方法においては、電極をシリコンウエハの表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、プラズマをシリコンウエハの表面と接触させ得る。ここで、電極とシリコンウエハの表面との間の距離が一定に保たれていることが好ましい。
また、本発明のシリコン酸化物層の形成方法においては、電極がシリコンウエハの表面と平行な回転軸を有しており、電極が回転し得る。
本発明によれば、高品質のシリコン酸化物層を形成することができるシリコン酸化物層の形成方法を提供することができる。また、本発明によれば、シリコン層とシリコン酸化物層との界面を急峻にすることができるシリコン酸化物層の形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、大気圧または大気圧近傍の圧力下における大気圧プラズマを用いているので、シリコン酸化物層の形成に寄与する活性種を大量に生成できるため、シリコン酸化物層の形成速度を向上させることができる。また、大気圧プラズマ中のイオンは、シリコンウエハに衝突する前に何らかの分子や原子と衝突することが多くなって、シリコンウエハに直接衝突することが低減されるため、形成されるシリコン酸化物層の品質を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、低圧プラズマで必要とされるような強度を有する反応容器や強力な排気システムなどが必要でなくなり、装置コストを低下させることができるので、最終製品のコストダウンを図ることもできる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本願の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
図1(a)は本発明に用いられるシリコン酸化物層の形成装置の好ましい一例の模式的な側面透視図であり、図1(b)は図1(a)に示す装置の一部を示す模式的な斜視図である。
この装置は、図1(a)に示すように、シリコンウエハの酸化処理の反応場となる内部空間が設けられた反応容器1を有しており、この反応容器1はその内部空間に反応容器1の底面に対して水平に設けられた基板ステージ4と、この基板ステージ4の上方に回転軸3が基板ステージ4に対して平行になるように設けられた円筒型回転電極2と、を含んでいる。
円筒型回転電極2の回転軸3には、反応容器1の外部に設けられた高周波電源7が、回転軸3の回転を阻害することなく接続されている。基板ステージ4は反応容器1の外部において接地されており、基板ステージ4の内部には基板ステージ4上に載置されるシリコンウエハ6の底面を冷却するための水冷ライン5が設けられている。
基板ステージ4は、図1(a)の矢印Aで示されているように水平方向にスライド可能に構成されているとともに、上下方向にも移動可能に構成されている。そして、基板ステージ4が上下方向に移動することにより、上方の円筒型回転電極2との距離を適宜変更することができる。また、基板ステージ4には、基板ステージ4上に載置されるシリコンウエハ6を吸着固定するための真空チャック(図示せず)が設けられており、酸化処理中のシリコンウエハ6が、基板ステージ4の移動によって載置位置からずれないように固定されている。
反応容器1の一方の側部には、酸素含有ガスを導入するためのガス導入ライン8が設けられており、このガス導入ライン8はガスを供給するガスボンベなど(図示せず)に接続されている。反応容器1の他方の側部には、反応容器1内のガスを排出するためのガス排気ライン9が設けられている。ガス排気ライン9は、反応容器1の外部にガス(図示せず)を吸引するためのポンプ(図示せず)に接続されている。
このような構成の装置を用いてシリコンウエハ6の表面の酸化処理を行なってシリコン酸化物層を形成する方法の一例について以下に説明する。まず、反応容器1の内部のガスをガス排気ライン9によって十分に排気した後、ガス導入ライン8から酸素含有ガスを反応容器1の内部に導入する。
ここで、反応容器1の内部の圧力は大気圧または大気圧近傍の圧力とされる。そして、酸素含有ガスを反応容器1の内部に導入した後には、所定の条件(円筒型回転電極2の回転速度、円筒型回転電極2と基板ステージ4上に載置されたシリコンウエハ6との間の距離、基板ステージ4のスライド方向およびスライド速度、シリコンウエハ6の底面を冷却する場合には水冷ライン5への冷却水の流入など)が設定される。
そして、反応容器1の外部に設けられた高周波電源7から高周波電力を回転軸3を介して円筒型回転電極2に印加する。この高周波電力が円筒型回転電極2に印加されると、円筒型回転電極2と基板ステージ4との間に電場が生じる。
円筒型回転電極2と基板ステージ4との間に形成された電場は、円筒型回転電極2とシリコンウエハ6の表面との間に供給された酸素含有ガスを分解および励起して、円筒型回転電極2とシリコンウエハ6の表面との間にプラズマ10を形成する。このプラズマ10がシリコンウエハ6の表面に接触し、プラズマ10から活性種がシリコンウエハ6の表面に拡散することによって酸化処理が行なわれて、シリコンウエハ6の表面にシリコン酸化物層(図示せず)が形成される。
ここで、シリコンウエハ6の表面には高温のプラズマ10が接触しているため、シリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度が低下する温度勾配が形成されている。このような温度勾配が形成された状態のシリコンウエハ6の表面には圧縮応力場が形成されている。このような圧縮応力場が形成された状態でシリコンウエハ6にプラズマ10から活性種が拡散した場合には、活性種が拡散して形成されたSi−O結合は強固なものとなって緻密性の高い高品質のシリコン酸化物層が形成される。
また、シリコンウエハ6がある温度に均一に加熱された場合には、プラズマ10からの活性種の拡散によりシリコン層とシリコン酸化物層との界面にいわゆるダレ(シリコン層とシリコン酸化物層との境界が明確でない状態)が形成されるが、本発明のようにシリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度が低下する温度勾配が形成されている場合には、シリコンウエハ6の底面方向へ活性種が拡散しにくくなるためシリコン層とシリコン酸化物層との界面を急峻なものとするのに有利であると考えられる。
特に、水冷ライン5に冷却水を流してシリコンウエハ6の底面を冷却しながらプラズマ10を接触させた場合には、シリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度が低下する温度勾配をさらに大きなものとすることができるため、緻密性の高い高品質のシリコン酸化物層をより形成しやすくなり、シリコン層とシリコン酸化物層との界面もより急峻なものとすることができる傾向にある。
また、シリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度が低下する温度勾配を大きくする観点からは、シリコンウエハ6がプラズマ10以外の熱源から加熱されていないことが当然に好ましい。しかしながら、プラズマ10の温度を考慮すると、仮にシリコンウエハ6がプラズマ10以外の熱源から加熱されている場合であってもその加熱温度が200℃未満であれば、シリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度が低下する温度勾配を形成することができるものと考えられる。また、このようにシリコンウエハ6をプラズマ10以外の熱源から加熱した場合には、シリコン酸化物層の形成速度を向上させることができる。
また、円筒型回転電極2は、図1(b)に示すように高速回転していることから、円筒型回転電極2の表面と酸素含有ガスとの間の粘性によって、酸素含有ガスが回転する円筒型回転電極2の表面とともに移動して、プラズマ10に均一に供給される。その結果、大気圧下でプラズマ10による酸化処理を行う場合であっても、シリコンウエハ6の表面の酸化処理を高速化できるとともに、酸化処理によって形成されるシリコン酸化物層の品質を向上させることができる。
さらに、シリコンウエハ6が載置された基板ステージ4を所定のスライド方向に所定の速度でスライドさせることによって、円筒型回転電極2をシリコンウエハ6の表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、プラズマ10をシリコンウエハ6と接触させることもできる。円筒型回転電極2をシリコンウエハ6の表面に対して平行方向に相対的に移動させることによって、シリコンウエハ6の表面が大きい場合でもシリコンウエハ6の表面全体にシリコン酸化物層を形成することができる。また、シリコンウエハ6の表面のプラズマの熱がシリコンウエハ6の底面に到達する前に基板ステージ4をスライドさせた場合には、シリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度勾配をより形成しやすくなる傾向にある。なお、円筒型回転電極2をシリコンウエハ6の表面に対して相対的に移動させる方法としては、上記のようにシリコンウエハ6のみを移動させてもよく、シリコンウエハ6を固定した状態で円筒型回転電極2のみを移動させてもよい。また、シリコンウエハ6と円筒型回転電極2の双方を移動させて、円筒型回転電極2をシリコンウエハ6の表面に対して相対的に移動させてもよい。
また、円筒型回転電極2とシリコンウエハ6の表面との間の距離を一定とした状態で、円筒型回転電極2をシリコンウエハ6の表面に対して平行方向に相対的に移動させることが好ましい。この場合には、シリコンウエハ6の表面に形成されるシリコン酸化物層の品質や厚みのばらつきを低減することができる。
なお、本発明において用いられる酸素含有ガスは、たとえば酸素ガスと希ガスとの混合ガスなどが挙げられる。ここで、希ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのいずれか1種または複数種を用いることができる。
また、本発明において反応容器1の内部の圧力は特に大気圧において最もその効果を発揮するものであるが、本発明においては100Torr〜2気圧を好適な圧力範囲とし、適用可能な圧力範囲としてはたとえば10Torr〜5気圧が挙げられる。
(実施例1)
図1(a)に示す装置の反応容器1の内部に5体積%の酸素ガスと95体積%のヘリウムガスとからなる混合ガスを導入し、反応容器1の内部の圧力を1気圧とした。円筒型回転電極2とシリコンウエハ6との間の距離を800μmに設定し、円筒型回転電極2の回転速度を41.8m/sに設定した。
図1(a)に示す装置の反応容器1の内部に5体積%の酸素ガスと95体積%のヘリウムガスとからなる混合ガスを導入し、反応容器1の内部の圧力を1気圧とした。円筒型回転電極2とシリコンウエハ6との間の距離を800μmに設定し、円筒型回転電極2の回転速度を41.8m/sに設定した。
そして、反応容器1の外部に設けられた高周波電源7から高周波電力を電力密度1200W/cm3で回転軸3を介して円筒型回転電極2に印加することによって、円筒型回転電極2と基板6との間にプラズマ10を形成した。そして、プラズマ10をシリコンウエハ6の表面に30分間接触させることによってシリコン酸化物層を形成した。なお、実施例1においては、シリコン酸化物層の形成の際に水冷ライン5によるシリコンウエハ6の底面の冷却は行わなかった。また、実施例1において、シリコン酸化物層の形成時におけるシリコンウエハ6の表面温度は400℃〜500℃であると推測され、シリコンウエハ6の底面温度は150℃前後であると推測される。
図2に、シリコン酸化物層形成後のシリコンウェハ6の赤外吸収分光法(FTIR)による赤外吸収特性を示す。図2に示すように、波数1060cm-1付近にSi−O伸縮モードに起因するピークが観察される。エリプソメータでシリコン酸化物層の膜厚と屈折率を測定したところ、膜厚は46.1nmであって、屈折率1.432であった。屈折率は一般的なシリコン酸化物層とほぼ同等であり、シリコン酸化物層の形成速度は1.54nm/minであった。
(実施例2)
図1(a)に示す水冷ライン5に20℃の冷却水を流し(冷却水は、図1(a)中のinから水冷ライン5を通過した後に図1(a)中のoutから排出される)、シリコンウエハ6の底面を冷却しながらシリコンウェハ6の表面にプラズマ10を接触させたこと以外は実施例1と同様にしてシリコン酸化物層を形成した。ここで、実施例2において、シリコン酸化物層の形成時におけるシリコンウエハ6の表面温度は400℃〜500℃であると推測され、シリコンウエハ6の底面温度は100℃前後であると推測される。
図1(a)に示す水冷ライン5に20℃の冷却水を流し(冷却水は、図1(a)中のinから水冷ライン5を通過した後に図1(a)中のoutから排出される)、シリコンウエハ6の底面を冷却しながらシリコンウェハ6の表面にプラズマ10を接触させたこと以外は実施例1と同様にしてシリコン酸化物層を形成した。ここで、実施例2において、シリコン酸化物層の形成時におけるシリコンウエハ6の表面温度は400℃〜500℃であると推測され、シリコンウエハ6の底面温度は100℃前後であると推測される。
図3に、シリコン酸化物層形成後のシリコンウェハ6の赤外吸収分光法(FTIR)による赤外吸収特性を示す。図3に示すように、波数1060cm-1付近にSi−O伸縮モードに起因するピークが観察される。また、エリプソメータでシリコン酸化物層の膜厚と屈折率を測定したところ、膜厚は37.3nmであって、屈折率1.454であった。屈折率は一般的なシリコン酸化物層とほぼ同等であり、シリコン酸化物層の形成速度は1.24nm/minであった。
(考察)
実施例1および実施例2のシリコン酸化物層と、熱酸化法により形成されたシリコン酸化物層(比較例1)とを比較した。なお、表1には、実施例1、実施例2および比較例1のシリコン酸化物層の形成条件および物性が記載されている。
実施例1および実施例2のシリコン酸化物層と、熱酸化法により形成されたシリコン酸化物層(比較例1)とを比較した。なお、表1には、実施例1、実施例2および比較例1のシリコン酸化物層の形成条件および物性が記載されている。
表1に示すように、実施例1および実施例2においては、比較例1と比べて、シリコンウェハ6を加熱せずともシリコン酸化物層の形成速度が大きく向上していることがわかる。
また、上記の特許文献1の段落[0062]においては、シリコンウエハの表面におけるシリコン酸化物層の形成速度が20分で50nm、すなわち2.5nm/minであることが記載されており、実施例1および実施例2よりも高速となっている。しかしながら、実施例1および実施例2においても、シリコンウエハ6を加熱すると、シリコンウエハ6の表面に到達した活性種がシリコンウエハ6の内部へ拡散するのが促進され、シリコン酸化物層の形成速度を向上させることができると容易に想像できる。したがって、シリコン酸化物層の形成速度は表1に示した値よりもまだ向上の余地がある。しかし、シリコンウエハ6の表面と底面との間に温度勾配を形成するためには、プラズマ10の温度を考慮すると、シリコンウエハ6の加熱温度は200℃未満とすることが好ましいと考えられる。
また、実施例1および実施例2のシリコン酸化物層に特徴的なことは、FTIRにおける1060cm-1付近のSi−O伸縮モードに起因する吸収ピークの中心波数が比較例1のシリコン酸化物層よりも高波数側に位置していることである。
大気圧下でのプラズマ10を用いて作製された実施例1および実施例2のシリコン酸化物層中のSi−O結合は、比較例1のシリコン酸化物層中のSi−O結合が吸収する赤外線波長よりも短い、すなわち、Si−O結合が強固であると考えることができる。これはシリコン酸化物層の形成の際のシリコンウエハ6の表面状態の差異によるものと考えられる。
実施例1および実施例2においては、シリコンウエハ6の表面はプラズマ10に接触しておりプラズマ10により加熱されているが、シリコンウエハ6の底面は温度が低いため、シリコンウエハ6の厚み方向に温度が低下する温度勾配が存在する。すなわち、シリコンウエハ6の表面には圧縮応力場が形成されている。このような圧縮応力場において、シリコンウエハ6の表面に到達した活性種はシリコンウエハ6の内部に拡散しにくいものであると考えられるが、内部に拡散した活性種により形成されるSi−O結合は強固となり緻密性が高くなって高品質のシリコン酸化物層を形成する。
また、シリコンウエハ6の底面を冷却しながらシリコン酸化物層を形成した実施例2においては、シリコンウエハ6の温度が実施例1よりも低いため、活性種の拡散が遅く、シリコン酸化物層の形成速度は実施例1よりも遅い。しかしながら、表1に示すように、FTIRにおけるSi−O伸縮モードの中心波数は、実施例1よりもさらに高波数側に位置しているため、実施例2においては実施例1よりも強固なSi−O結合を有するシリコン酸化物層が形成されていることがわかる。
また、シリコンウエハ6における温度勾配は、シリコン層とシリコン酸化物層との界面特性にも影響を与えると考えられる。ある温度に均一に加熱されたシリコンウエハ6においては、活性種がシリコンウエハ6の全体に拡散しやすいため、上記界面にいわゆるダレが形成されるが、活性種が厚さ深く拡散するにしたがってシリコンウエハ6の温度が低下するという本発明の場合においては、急峻な界面を形成するのに有利であると考えられる。
つまり、高品質のシリコン酸化物層の形成を実現するための重要なポイントは、シリコンウエハ6の表面から底面にかけて温度が低下するという温度勾配を意図的に作り、シリコンウエハ6の表面に圧縮応力場を形成することであるということができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明により形成されるシリコン酸化物層は、シリコンウエハを用いた半導体デバイスにおけるゲート酸化膜として好適に利用される。
1 反応容器、2 円筒型回転電極、3 回転軸、4 基板ステージ、5 水冷ライン、6 シリコンウエハ、7 高周波電源、8 ガス導入ライン、9 ガス排気ライン、10 プラズマ。
Claims (8)
- 大気圧または大気圧近傍の圧力下で電極とシリコンウエハの表面との間に流入させた酸素含有ガスのプラズマを生成し、前記シリコンウエハの表面から底面にかけて温度勾配を形成した状態で前記プラズマを前記シリコンウエハの表面と接触させることによりシリコン酸化物層を形成することを特徴とする、シリコン酸化物層の形成方法。
- 前記酸素含有ガスは、酸素ガスと希ガスとの混合ガスであることを特徴とする、請求項1に記載のシリコン酸化物層の形成方法。
- 前記シリコンウエハの底面を冷却しながら前記プラズマを前記シリコンウエハの表面と接触させることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコン酸化物層の形成方法。
- 前記シリコンウエハが前記プラズマ以外の熱源から加熱されていないことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のシリコン酸化物層の形成方法。
- 前記シリコンウエハが前記プラズマ以外の熱源から加熱されている場合であってもその加熱温度が200℃未満であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のシリコン酸化物層の形成方法。
- 前記電極を前記シリコンウエハの表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、前記プラズマを前記シリコンウエハの表面と接触させることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のシリコン酸化物層の形成方法。
- 前記電極と前記シリコンウエハの表面との間の距離が一定に保たれていることを特徴とする、請求項6に記載のシリコン酸化物層の形成方法。
- 前記電極が前記シリコンウエハの表面と平行な回転軸を有しており、前記電極が回転することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のシリコン酸化物層の形成方法。
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