従って、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、デュアルインジェクションシステムを備えた内燃機関に適用される空燃比制御装置であって、触媒の上流、及び下流の排気通路にそれぞれ配設された空燃比センサに基づくそれぞれの空燃比フィードバック制御間の相互干渉を回避し得るとともに、急激な機関のトルク変動の発生を抑制し得るものを提供することにある。
本発明に係る空燃比制御装置は、デュアルインジェクションシステムを備えた内燃機関に適用される。この装置は、上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値に基づいて(上流側フィードバックコントローラにより)上流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された上流側フィードバック補正量により前記ポート噴射手段(前記ポート噴射弁)により噴射される燃料の量(前記ポート噴射量)のみを補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する上流側フィードバック制御手段と、下流側空燃比センサの出力値に基づく値に基づいて(下流側フィードバックコントローラにより)下流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された下流側フィードバック補正量により前記筒内噴射手段(前記筒内噴射弁)により噴射される燃料の量(前記筒内噴射量)、及び/又は前記ポート噴射手段により噴射される燃料の量を補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御する下流側フィードバック制御手段とを備えている。なお、以下、前記筒内噴射量と前記ポート噴射量とを「燃料噴射量」と総称することもある。
これによれば、上流側フィードバック制御手段により算出された上流側フィードバック補正量と下流側フィードバック制御手段により算出された下流側フィードバック補正量とによりそれぞれ独立に燃料噴射量を直接補正するように構成することで、上記提案された装置と同様、各フィードバック制御定数の適合を行う際の労力が低減され得る。
また、上流側フィードバックコントローラには上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値が入力される。ここで、ハイパスフィルタ処理におけるハイパスフィルタのカットオフ周波数は、一般に、触媒の酸素吸蔵機能の程度に照らして決定されるべきであり、好ましくは、上述したように、上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(上限値)近傍に設定される。
これにより、上述のように、上流側フィードバック制御の制御周波数帯域と下流側フィードバック制御の制御周波数帯域とが互いに重複しないように設定され得、上記提案された装置と同様、上流側フィードバック制御と下流側フィードバック制御との干渉が回避され得る。
ここにおいて、「上流側空燃比センサの出力値に基づく値であってハイパスフィルタ処理がなされている値」は、例えば、前記上流側空燃比センサの出力値(或いは、検出空燃比)、又は前記上流側空燃比センサの出力値と同センサの出力の目標値である上流側目標値との相違の程度に応じた値、をハイパスフィルタ処理した後の値である。
また、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」は、例えば、前記下流側空燃比センサの出力値と同センサの出力の目標値である下流側目標値との相違の程度に応じた値である。
「上流側目標値」、及び「下流側目標値」は理論空燃比に相当する値に設定されることが好適であり、或いは、これらの値は対応する空燃比が互いに等しくなるように設定されることが好適である。
また、「センサの出力値と目標値との相違の程度に応じた値」は、例えば、センサの出力値と目標値との偏差、センサの出力値に対応する検出空燃比(実空燃比)と目標値に対応する目標空燃比との偏差、筒内吸入空気量をセンサの出力値に対応する検出空燃比で除した値である実際の筒内燃料供給量と同筒内吸入空気量を目標値に対応する目標空燃比で除した値である目標筒内燃料供給量との偏差であって、これらに限定されない。
なお、上記構成によれば、機関が過渡運転状態にある場合等、排ガスの空燃比が上記ハイパスフィルタ処理におけるハイパスフィルタのカットオフ周波数以上の高周波数で急変・変動するような場合における空燃比制御(即ち、過渡運転状態における空燃比の急変に対する補償)は、上流側フィードバック制御により迅速に行われる。
また、触媒下流の空燃比変動として現れ得る上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域(一般には、比較的低い周波数帯域)の定常的な空燃比変動に対する空燃比制御は、下流側フィードバック制御により確実に達成され得る。
更に、本発明に係る空燃比制御装置の特徴は、上記上流側フィードバック補正量により上記ポート噴射量のみが補正されること(即ち、上流側フィードバック補正量により筒内噴射量が補正されないこと)にある。
筒内噴射弁により直接燃焼室内に噴射された燃料は、その全量が直後の燃焼に寄与し得る。従って、筒内噴射量が変動すると、その変動の影響の総てが機関の出力変動(即ち、トルク変動)として現れ得る。従って、フィードバック補正量により筒内噴射量を補正することで空燃比フィードバック制御を実行する場合において、フィードバック補正量が急激に変動すると、筒内噴射量が急激に変動することで機関に急激なトルク変動が発生し、この結果、ドライバビリティが悪化し易くなる。
ここで、フィードバック補正量の変動周波数が高いほど、同一の振幅に対する変化速度が大きくなるから同フィードバック補正量の急激な変動が発生し易い。従って、少なくともハイパスフィルタのカットオフ周波数(例えば、上述した触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値近傍)以上の高周波数で変動し得る上流側フィードバック補正量には急激な変動が発生し易い。よって上流側フィードバック補正量により筒内噴射量を補正することは、急激な機関のトルク変動が発生し易くなることに繋がるから好ましくない。
一方、上述のごとく、ポート噴射弁により吸気弁よりも上流の吸気通路(吸気ポート)に噴射された燃料は、その一部が吸気ポート、及び吸気弁(以下、「吸気ポート等」と称呼する。)に一旦付着する。従って、ポート噴射量が急激に変動しても、実際に燃焼室内に吸入される燃料の量(以下、「筒内吸入燃料量」と称呼する。)の変動は減衰され、その結果、機関に急激なトルク変動が発生し難い。よって、急激な変動が発生し易い上流側フィードバック補正量によりポート噴射量を補正しても急激な機関のトルク変動が発生し難い。
以上のことから、上記構成のように、上流側フィードバック補正量により、筒内噴射量を補正することなくポート噴射量のみを補正することで上流側フィードバック制御を行えば、上流側フィードバック制御に基づく急激な機関のトルク変動が発生することを抑制できる。
一方、下流側フィードバック補正量は、触媒通過低周波数成分の周波数帯域内の周波数である比較的低い周波数でしか変動し得ないからその変化速度は比較的小さい。従って、下流側フィードバック補正量には急激な変動が発生し難い。よって、上記構成のように、下流側フィードバック補正量により、ポート噴射量のみならず、筒内噴射量のみ、或いは、ポート噴射量及び筒内噴射量を補正することで下流側フィードバック制御を行っても、下流側フィードバック制御に基づく急激な機関のトルク変動は発生し難い。
この結果、上記本発明に係る空燃比制御装置によれば、上流側フィードバック制御に基づく急激な機関のトルク変動の発生、及び下流側フィードバック制御に基づく急激な機関のトルク変動の発生を共に抑制することができ、従って、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。
この場合、下流側フィードバック補正量により少なくとも筒内噴射量を補正することで下流側フィードバック制御が行われることが好適である。その理由は以下のとおりである。即ち、上述したように、筒内噴射弁により噴射された燃料は、その全量が直後の燃焼に寄与し得る。従って、フィードバック補正量により筒内噴射量を補正することで空燃比フィードバック制御を実行すると、同フィードバック補正量の影響の全てが直ちに排ガスの空燃比に反映され得るから、空燃比フィードバック制御において高い応答性が確保し得る。
一方、上述のごとく、ポート噴射弁により噴射された燃料は、その一部が吸気ポートに一旦付着する。従って、フィードバック補正量によりポート噴射量を補正することで空燃比フィードバック制御を実行すると、同フィードバック補正量の影響の全てが直ちに排ガスの空燃比に反映されることはない。この結果、フィードバック補正量により筒内噴射量を補正する場合に比して空燃比フィードバック制御の応答性が低くなる。
以上のことから、上記のように、下流側フィードバック補正量により少なくとも筒内噴射量が補正されるように構成すると、下流側フィードバック制御において高い応答性が確保され得る。この結果、ドライバビリティの悪化を抑制しつつ、触媒から排出されるエミッションの排出量も一層抑制することができる。
上記本発明に係る空燃比制御装置において、前記下流側フィードバック制御手段が、下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってローパスフィルタ処理がなされている値に基づいて下流側フィードバック補正量を算出し、前記算出された下流側フィードバック補正量により少なくとも筒内噴射量を補正するように構成されている場合であって、筒内噴射量とポート噴射量の和に対する筒内噴射量の比率である筒内噴射割合を内燃機関の運転状態に応じて変更する筒内噴射割合変更手段が備えられている場合、前記筒内噴射割合に応じて前記下流側フィードバック制御手段による前記ローパスフィルタ処理におけるフィルタ特性を変更するローパスフィルタ特性変更手段を更に備えることが好適である。ここで、「フィルタ特性」としては、例えば、カットオフ周波数、ゲイン等が挙げられる。
デュアルインジェクションシステムを備えた内燃機関においては、一般に、上記筒内噴射割合が機関の運転状態(例えば、機関の回転速度、筒内吸入空気量、冷却水温等)に応じて変更せしめられるように構成される場合が多い。ここで、一般に、同一のフィードバック補正量の変動に対する、同フィードバック補正量により補正される燃料噴射量の変動における変化速度は、同燃料噴射量そのものが大きくなるほど大きくなる。換言すれば、フィードバック補正量に急激な変動が発生していなくても、同フィードバック補正量により補正される筒内噴射量そのものが大きくなるほど急激な機関のトルク変動が発生し易くなる。
従って、上述のように急激な変動が発生し難い下流側フィードバック補正量により筒内噴射量が補正される場合においても、筒内噴射割合が大きくなることで筒内噴射量が大きくなるほど急激な機関のトルク変動が発生し易くなる。この場合、係る急激な機関のトルク変動の発生を抑制するため、筒内噴射割合の増大に応じて、下流側フィードバック補正量の変動における周波数をより低くすることでその変化速度をより小さくすることが考えられる。このためには、下流側フィードバック補正量の計算に使用される上記ローパスフィルタのカットオフ周波数を、(例えば、触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値以下の値であって)筒内噴射割合が増大するほどより低い値に設定すればよい。
本発明は係る知見に基づくものである。即ち、上記構成のように、筒内噴射割合に応じてローパスフィルタ処理におけるフィルタ特性を変更するように構成すれば、例えば、筒内噴射割合の増大に応じてローパスフィルタのカットオフ周波数をより低い値に設定することができる。この結果、筒内噴射割合にかかわらず安定して急激な機関のトルク変動の発生を抑制することができる。
この場合、筒内噴射割合の増大に応じてローパスフィルタのゲインをより低い値に設定するように構成してもよい。下流側フィードバック補正量の計算に使用されるローパスフィルタのゲインを小さくすると、同下流側フィードバック補正量の変動幅が小さくなるからその変化速度も小さくなる。従って、これによっても、筒内噴射割合にかかわらず安定して急激な機関のトルク変動の発生を抑制することができる。
なお、ここにおいて、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってローパスフィルタ処理がなされている値」は、例えば、下流側空燃比センサの出力値と上記下流側目標値との相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値、又は下流側空燃比センサの出力値(或いは、検出空燃比)をローパスフィルタ処理した後の値と下流側目標値(或いは、下流側目標空燃比)との相違の程度に応じた値である。
また、上記本発明に係る空燃比制御装置においては、前記下流側フィードバック制御手段は、下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってローパスフィルタ処理がなされている値に基づいてローパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量を算出するとともに、下流側空燃比センサの出力値に基づく値であってバンドパスフィルタ処理がなされている値に基づいてバンドパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量を算出し、前記算出されたローパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量により筒内噴射量のみを補正するとともに、前記算出されたバンドパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量によりポート噴射量のみを補正することで前記内燃機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御するように構成されてもよい。
上述したように、筒内噴射割合の増大に応じて下流側フィードバック補正量の計算に使用されるローパスフィルタのカットオフ周波数を小さくするように構成される場合において、上流側フィードバック補正量の計算に使用されるハイパスフィルタのカットオフ周波数を常に一定(例えば、上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値)に維持する場合について考える。なお、ローパスフィルタのカットオフ周波数の変動範囲は、最小値ωmin〜最大値ωmaxとする(最大値ωmaxは、例えば、上記触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値に設定される)。
この場合、筒内噴射割合が大きくなると、ローパスフィルタのカットオフ周波数がハイパスフィルタのカットオフ周波数よりも低い値となることで、何れの空燃比フィードバック制御の制御周波数帯域にも含まれない周波数帯域(以下、「制御対象外周波数帯域」と称呼する。)が下流側フィードバック制御の制御周波数帯域において発生し得る。係る制御対象外周波数帯域が発生することは、確実な空燃比制御を維持する上で、一般に好ましくないと考えられる。
ここで、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」の変動における上記ローパスフィルタのカットオフ周波数の変動範囲内(ωmin〜ωmax)の周波数成分に基づいて計算される下流側フィードバック補正量により筒内噴射量を補正するように構成すると、上述したように、筒内噴射割合の増大により急激な機関のトルク変動が発生し易くなる。これに対し、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」の変動における上記(ωmin〜ωmax)の周波数成分に基づいて計算される下流側フィードバック補正量によりポート噴射量を補正するように構成すると、筒内噴射割合にかかわらず、上述したように、燃料の吸気ポート等への付着に起因して急激な機関のトルク変動が発生し難い。
従って、例えば、上記最小値ωminを低周波数側カットオフ周波数とし、上記最大値ωmaxを高周波数側カットオフ周波数とするバンドパスフィルタを新たに準備し、上記構成のように、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」であって同準備したバンドパスフィルタによるフィルタ処理がなされている値に基づく下流側フィードバック補正量(即ち、上記バンドパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量)によりポート噴射量を補正するように構成すれば、下流側フィードバック制御の制御周波数帯域において制御対象外周波数帯域を発生させることなく、且つ急激な機関のトルク変動の発生を確実に抑制することができる。
また、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」の変動における上記最小値ωmin未満の周波数成分は、その変化速度が十分に小さい。換言すれば、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」の変動における上記最小値ωmin未満の周波数成分に基づいて計算される下流側フィードバック補正量により筒内噴射量を補正するように構成しても、筒内噴射割合の増大により急激な機関のトルク変動が発生し易くなることはない。
従って、ローパスフィルタのカットオフ周波数を上記最小値ωminに設定するとともに、上記構成のように、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」であって同ローパスフィルタによるフィルタ処理がなされている値に基づく下流側フィードバック補正量(即ち、上記ローパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量)により筒内噴射量を補正するように構成すれば、急激な機関のトルク変動の発生を抑制しつつ、上記最小値ωmin未満の周波数成分に基づく下流側フィードバック制御において高い応答性が確保され得る。
以上のように、下流側フィードバック制御の制御周波数帯域を、ポート噴射量の補正に係わる高周波数側の帯域と筒内噴射量の補正に係わる低周波数側の帯域とに分けることにより、下流側フィードバック制御において或る程度の高い応答性を確保しつつ、下流側フィードバック制御の制御周波数帯域において制御対象外周波数帯域を発生させることなく急激な機関のトルク変動の発生を確実に抑制することができる。
この場合、ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数とバンドパスフィルタ処理の高周波数側のカットオフ周波数とが同一であるとともに、バンドパスフィルタ処理の低周波数側のカットオフ周波数とローパスフィルタ処理のカットオフ周波数とが同一であることが好適である。
これによれば、ポート噴射量の補正に係わる上流側フィードバック制御の制御周波数帯域と、ポート噴射量の補正に係わる下流側フィードバック制御の制御周波数帯域と、筒内噴射量の補正に係わる下流側フィードバック制御の制御周波数帯域とが連続することになり、制御対象外周波数帯域が完全になくなる。即ち、あらゆる周波数の空燃比変動に対して何れかの空燃比フィードバック制御により確実に空燃比制御が実行され得るようになり、この結果、触媒から排出されるエミッションの排出量をより一層安定して抑制することができる。
以下、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による空燃比制御装置をデュアルインジェクションシステムを備えた火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、燃料を吸気ポート31内に噴射するポート噴射弁39P、燃料を燃焼室25内に直接噴射する筒内噴射弁39Cを備えている。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、及びスロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51(実際には、各排気ポート34に連通したそれぞれのエキゾーストマニホールド51が集合した集合部)に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52に配設(介装)された上流側の三元触媒53(上流側触媒コンバータ、又はスタート・キャタリティック・コンバータとも云うが、以下「第1触媒53」と称呼する。)、及びこの第1触媒53の下流のエキゾーストパイプ52に配設(介装)された下流側の三元触媒54(車両のフロア下方に配設されるため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータとも云うが、以下「第2触媒54」と称呼する。)を備えている。排気ポート34、エキゾーストマニホールド51、及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、第1触媒53の上流の排気通路(本例では、上記各々のエキゾーストマニホールド51が集合した集合部)に配設された空燃比センサ66(以下、「上流側空燃比センサ66」と称呼する。)、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流の排気通路に配設された空燃比センサ67(以下、「下流側空燃比センサ67」と称呼する。)、及びアクセル開度センサ68を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量に応じた電圧Vgを出力するようになっている。かかるエアフローメータ61の出力Vgと、計測された吸入空気量(流量)Gaとの関係は、図2に示したとおりである。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ66は、限界電流式の酸素濃度センサであり、図3に示したように、空燃比A/Fに応じた電流を出力し、この電流に応じた電圧である出力値vabyfsを出力するようになっていて、特に、空燃比が理論空燃比であるときには出力値vabyfsは値vstoichになる。図3から明らかなように、上流側空燃比センサ66によれば、広範囲にわたる空燃比A/Fを精度良く検出することができる。
下流側空燃比センサ67は、起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサであり、図4に示したように、理論空燃比近傍において急変する電圧である出力値Voxsを出力するようになっている。より具体的に述べると、下流側空燃比センサ67は、空燃比が理論空燃比よりもリーンのときは略0.1(V)、空燃比が理論空燃比よりもリッチのときは略0.9(V)、及び空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)の電圧を出力するようになっている。アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、同アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びにADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜68接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、ポート噴射弁39P、筒内噴射弁39C、及びスロットル弁アクチュエータ43aに駆動信号を送出するようになっている。
(空燃比フィードバック制御の概要)
次に、上記のように構成された空燃比制御装置が行う機関に供給される混合気の空燃比(以下、単に「機関の空燃比」と云うこともある。)のフィードバック制御の概要について説明する。
第1、第2触媒53,54のような三元触媒(以下、単に「触媒」と云うこともある。)は、触媒に流入するガスの空燃比が理論空燃比であるときに、HC,COを酸化するとともにNOxを還元し、これらの有害成分を高い効率で浄化する。また、触媒は、酸素を吸蔵・放出する上述した酸素吸蔵機能(酸素吸蔵・放出機能)を有し、この酸素吸蔵・放出機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC,CO、及びNOxを浄化することができる。即ち、機関の空燃比がリーンとなって触媒に流入するガスにNOxが多量に含まれると、触媒はNOxから酸素分子を奪って同酸素分子を吸蔵するとともに同NOxを還元し、これによりNOxを浄化する。また、機関の空燃比がリッチになって触媒に流入するガスにHC,COが多量に含まれると、触媒はこれらに吸蔵している酸素分子を与えて(放出して)酸化し、これによりHC,COを浄化する。
従って、触媒が連続的に流入する多量のHC,COを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を多量に貯蔵していなければならず、逆に連続的に流入する多量のNOxを効率的に浄化するためには、同触媒が酸素を十分に貯蔵し得る状態になければならないことになる。以上のことから、触媒の浄化能力は、同触媒が貯蔵し得る最大の酸素量(最大酸素吸蔵量)に依存する。
一方、第1、第2触媒53,54のような三元触媒は燃料中に含まれる鉛や硫黄等による被毒、或いは触媒に加わる熱により劣化し、これに伴い最大酸素吸蔵量が次第に低下してくる。このように最大酸素吸蔵量が低下した場合であっても、エミッションの排出量を継続的に抑制するには、触媒から排出されるガスの空燃比(従って、触媒に流入するガスの空燃比)が、理論空燃比に極めて近い状態となるように制御する必要がある。
そこで、本実施形態の空燃比制御装置は、上流側、及び下流側空燃比センサ66,67の出力値が対応するセンサ目標値(原則的に理論空燃比に対応する値)にそれぞれ一致するように、上流側空燃比センサ出力値vabyfs(即ち、第1触媒上流の空燃比)、及び下流空燃比センサ出力値Voxs(即ち、第1触媒下流、且つ第2触媒上流の空燃比)に応じて機関の空燃比をフィードバック制御する。
より具体的に述べると、この空燃比制御装置(以下、「本装置」と云うこともある。)は、その機能ブロック図である図5に示したように、A1〜A17の各要素を含んで構成されている。以下、図5を参照しながら各要素について説明していく。
<基本燃料噴射量の決定>
先ず、基本燃料噴射量Fbaseの決定について説明する。上流側目標空燃比設定手段A1は、内燃機関10の運転状態であるエンジン回転速度NE、及びスロットル弁開度TA等に基づいて上流側空燃比センサ出力の目標値(上流側目標値)に対応する上流側目標空燃比abyfr(k)を決定する。ここで、添え字の(k)は、今回の吸気行程に対する値であることを示している(以下、他の物理量についても同様。)。この上流側目標空燃比abyfr(k)は、例えば、内燃機関10の暖機終了後においては、特殊な場合を除き理論空燃比に設定されている。また、上流側目標空燃比abyfrは、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
基本燃料噴射量決定手段A2は、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ63の出力に基づいて得られるエンジン回転速度NEとを引数とする所定のテーブルに基づいて求められる今回の吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を上流側目標空燃比設定手段A1により設定された上流側目標空燃比abyfr(k)で除することにより、基本燃料噴射量Fbaseを求める。即ち、基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比を上流側目標空燃比abyfr(k)とするために必要な今回の吸気行程に対するポート噴射弁39P及び筒内噴射弁39Cからの燃料噴射量の合計量である。このように、本装置は、上流側目標空燃比設定手段A1、及び基本燃料噴射量決定手段A2を利用して基本燃料噴射量Fbaseを求める。
<筒内噴射量、及びポート噴射量の算出>
次に、筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipの算出について説明する。筒内噴射割合決定手段(筒内噴射割合変更手段)A3は、内燃機関10の運転状態であるエンジン回転速度NEと、上記筒内吸入空気量Mcと、冷却水温THWとを引数とする所定のテーブルに基づいて、筒内噴射量Ficとポート噴射量Fipの和に対する筒内噴射量Ficの比率(より正確には、後述する基本筒内噴射量Fbasecと後述する基本ポート噴射量Fbasepの和に対する基本筒内噴射量Fbasecの比率)である筒内噴射割合Rを決定する。これにより、機関の運転状態に応じて筒内噴射割合Rが変更せしめられる。
基本筒内噴射量決定手段A4は、基本燃料噴射量決定手段A2により求められた基本燃料噴射量Fbaseに上記決定された筒内噴射割合Rを乗算することで、下記(1)式に従って基本筒内噴射量Fbasecを決定する。
Fbasec=Fbase・R ・・・(1)
同様に、基本ポート噴射量決定手段A5は、上記基本燃料噴射量Fbaseに値(1−R)を乗算することで、下記(2)式に従って基本ポート噴射量Fbasepを決定する。
Fbasep=Fbase・(1−R) ・・・(2)
筒内噴射量算出手段A6は、基本筒内噴射量決定手段A4により求められた基本筒内噴射量Fbasecに、後述するサブフィードバック補正係数KFisub(下流側フィードバック補正量)を乗算することで、下記(3)式に基づいて、(最終)筒内噴射量Ficを求める。
Fic=Fbasec・KFisub ・・・(3)
同様に、ポート噴射量算出手段A7は、基本ポート噴射量決定手段A5により求められた基本ポート噴射量Fbasepに、上記サブフィードバック補正係数KFisub(下流側フィードバック補正量)と後述するメインフィードバック補正係数KFimain(上流側フィードバック補正量)を乗算することで、下記(4)式に基づいて、(最終)ポート噴射量Fipを求める。
Fip=Fbasep・KFisub・KFimain ・・・(4)
本装置は、このようにして、筒内噴射量算出手段A6により基本筒内噴射量Fbasecをサブフィードバック補正係数KFisubにより補正することにより得られる筒内噴射量Ficの燃料を今回の吸気行程を迎える気筒に対して筒内噴射弁39Cにより噴射する。また、ポート噴射量算出手段A7により基本ポート噴射量Fbasepをメインフィードバック補正係数KFimainとサブフィードバック補正係数KFisubとによりそれぞれ独立に補正することにより得られるポート噴射量Fipの燃料を今回の吸気行程を迎える気筒に対してポート噴射弁39Pにより噴射する。
<サブフィードバック制御>
続いて、下流側フィードバック制御としてのサブフィードバック制御について説明する。下流側目標値設定手段A8は、上述した上流側目標空燃比設定手段A1と同様、内燃機関10の運転状態であるエンジン回転速度NE、及びスロットル弁開度TA等に基づいて下流側空燃比センサ出力の目標値である下流側目標値Voxsrefを決定する。この下流側目標値Voxsrefは、例えば、内燃機関10の暖機終了後においては、特殊な場合を除き理論空燃比に対応する値である0.5(V)に設定されている(図4を参照。)。また、本例では、下流側目標値Voxsrefは、同下流側目標値Voxsrefに対応する下流側目標空燃比が上述した上流側目標空燃比abyfr(k)と常時一致するように設定される。
出力偏差量算出手段A9は、下記(5)式に基づいて、下流側目標値設定手段A8により設定されている現時点での下流側目標値Voxsrefから現時点での下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。この出力偏差量DVoxsは、「下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値」に相当する。
DVoxs=Voxsref-Voxs ・・・(5)
ローパスフィルタA10(LPF)は、その特性をラプラス演算子sを用いて表した下記(6)式に示すように、一次のフィルタ(ソフトフィルタ、デジタルフィルタ)である。下記(6)式において、τlpfはローパスフィルタA10の時定数、GlpfはローパスフィルタA10の入力信号周波数「0」でのゲイン(以下、単に「ゲイン」と称呼する。本例では、Glpf=1)である。このローパスフィルタA10の周波数−ゲイン特性は図6に示したとおりである。図6に示したように、ローパスフィルタA10は、入力値(入力信号)の変動におけるカットオフ周波数ωlpf(=1/τlpf)以上の高周波数成分を減衰することで同高周波数成分が通過することを実質的に禁止する。なお、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfは、後述するLPF特性変更手段A17により変更されるようになっている。
Glpf・(1/(1+τlpf・s)) ・・・(6)
ローパスフィルタA10は、出力偏差量算出手段A9により求められた前記出力偏差量DVoxsの値を入力するとともに、上記(6)式に従って同出力偏差量DVoxsの値をローパスフィルタ処理した後の値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを出力する。従って、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowは、「下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値」である。
PIDコントローラA11(下流側フィードバックコントローラ)は、ローパスフィルタA10の出力値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを比例・積分・微分処理(PID処理)することで、下記(7)式に基づいて下流側フィードバック補正量としてのサブフィードバック補正係数KFisub(>0)を求める。
KFisub=(Kp・DVoxslow+Ki・SDVoxslow+Kd・DDVoxslow)+1 ・・・(7)
上記(7)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間積分値であり、DDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間微分値である。
このようにして、本装置は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値をローパスフィルタ処理した後の値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslow(下流側フィードバック入力値)をPIDコントローラA11に入力することでサブフィードバック補正係数KFisubを求める。そして、本装置は、前記基本筒内噴射量Fbasec、及び前記基本ポート噴射量Fbasepに同サブフィードバック補正係数KFisubをそれぞれ乗算することで、後述するメインフィードバック制御による(前記メインフィードバック補正係数KFimainによる)基本ポート噴射量Fbasepの補正とは独立に同基本筒内噴射量Fbasec、及び基本ポート噴射量Fbasepを補正してサブフィードバック制御を実行する。
例えば、機関の平均的(定常的)な空燃比がリーンであるために下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーンである空燃比に対応した値を定常的に示すと、出力偏差量算出手段A9により求められる出力偏差量DVoxsの値が定常的に正の値となる(図4を参照)。従って、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowも正の値となり、PIDコントローラA11にて求められるサブフィードバック補正係数KFisubは「1」より大きい値となる。これにより、筒内噴射量算出手段A6、及びポート噴射量算出手段A7にてそれぞれ求められる筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipの合計量は基本燃料噴射量Fbaseよりも大きくなって、機関の空燃比がリッチとなるように制御される。
反対に、機関の定常的な空燃比がリッチであるために下流側空燃比センサ出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチである空燃比に対応した値を定常的に示すと、出力偏差量DVoxs(従って、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslow)が負の値となるので、サブフィードバック補正係数KFisubは「1」より小さい値(>0)となる。これにより、筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipの合計量は基本燃料噴射量Fbaseよりも小さくなって、機関の空燃比がリーンとなるように制御される。
また、PIDコントローラA11は積分処理を実行する(即ち、積分(I)項「Ki・SDVoxslow」が使用されている)から、機関が定常運転状態にある場合、出力偏差量DVoxsが「0」になることが保証される。換言すれば、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsの下流側目標値Voxsrefからの定常偏差がゼロになる。そして、定常運転状態では、出力偏差量DVoxsが「0」になることで比例項Kp・DVoxslow、及び微分項Kd・DDVoxslowが「0」となるから、サブフィードバック補正係数KFisubは積分項Ki・SDVoxslowの値に「1」を加えた値となる。この値が基本筒内噴射量Fbasec、及び基本ポート噴射量Fbasepにそれぞれ乗算されることにより、筒内噴射弁39C、及びポート噴射弁39Pの誤差(指令される燃料噴射量と実際の燃料噴射量の差)、エアフローメータ61の誤差(吸入空気流量計測値Gaと実際の吸入空気流量の差)が補償されつつ、定常運転状態において第1触媒53の下流の空燃比(従って、機関の空燃比)が下流側目標値Voxsrefに対応する目標空燃比(即ち、原則的に理論空燃比)に収束する。以上、筒内噴射量算出手段A6、ポート噴射量算出手段A7、下流側目標値設定手段A8、出力偏差量算出手段A9、ローパスフィルタA10、及びPIDコントローラA11が下流側フィードバック制御手段に相当する。
<メインフィードバック制御>
続いて、上流側フィードバック制御としてのメインフィードバック制御について説明する。テーブル変換手段A12は、上流側空燃比センサ66の出力値vabyfsと、先に説明した図3に示した上流側空燃比センサ出力値vabyfsと空燃比A/Fとの関係を規定したテーブルとに基づいて、上流側空燃比センサ66による現時点における検出空燃比abyfsを求める。
目標空燃比遅延手段A13は、上流側目標空燃比設定手段A1により吸気行程毎に求められRAM73に記憶されている上流側目標空燃比abyfrのうち、現時点からNストローク(N回の吸気行程)前に吸気行程を迎えた気筒についての上流側目標空燃比abyfrをRAM73から読み出し、これを上流側目標空燃比abyfr(k-N)として設定する。ここで、前記値Nは、内燃機関10の排気量、及び燃焼室25から上流側空燃比センサ66までの距離等により異なる値である。
このように、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)が使用されるのは、燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側空燃比センサ66に到達するまでには、Nストロークに相当する時間Lを要しているからである。
上流側空燃比偏差算出手段A14は、下記(8)式に基づいて、テーブル変換手段A12により求められた現時点での上記検出空燃比abyfsから、目標空燃比遅延手段A13により設定された現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)を減じることにより、上流側空燃比偏差Dabyfを求める。この上流側空燃比偏差Dabyfは、Nストローク前の時点での実際の空燃比と目標空燃比との差を表す量であって、「上流側空燃比センサ66の出力値vabyfsと上流側目標値との相違の程度に応じた値」に相当する。
Dabyf=abyfs−abyfr(k-N) ・・・(8)
ハイパスフィルタA15(HPF)は、その特性をラプラス演算子sを用いて表した下記(9)式に示すように、一次のフィルタ(ソフトフィルタ、デジタルフィルタ)である。下記(9)式において、τhpfはハイパスフィルタA15の時定数、GhpfはハイパスフィルタA15の入力信号周波数「∞」でのゲイン(以下、単に「ゲイン」と称呼する。本例では、Ghpf=1)である。このハイパスフィルタA15の周波数−ゲイン特性は図6に示したとおりである。図6に示したように、ハイパスフィルタA15は、入力値(入力信号)の変動におけるカットオフ周波数ωhpf(=1/τhpf)以下の低周波数成分を減衰することで同低周波数成分が通過することを実質的に禁止する。なお、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfは、本例では、触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(後述する値ωcut)に設定されている。
Ghpf・(1−1/(1+τhpf・s)) ・・・(9)
ハイパスフィルタA15は、前記上流側空燃比偏差算出手段A14により求められた前記上流側空燃比偏差Dabyfの値を入力するとともに、上記(9)式に従って同上流側空燃比偏差Dabyfの値をハイパスフィルタ処理した後の値であるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを出力する。従って、ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiは、「上流側空燃比センサ66の出力値vabyfsと上流側目標値との相違の程度に応じた値をハイパスフィルタ処理した後の値」である。
PIコントローラA16(上流側フィードバックコントローラ)は、ハイパスフィルタA15の出力値であるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを比例・積分処理(PI処理)することで、下記(10)式に基づいてメインフィードバック補正係数KFimain(>0)を求める。
KFimain=(Gp・Dabyfhi+Gi・SDabyfhi)+1 ・・・(10)
上記(10)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Giは積分ゲイン(積分定数)である。また、SDabyfhiはハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiの時間積分値である。
このようにして、本装置は、メインフィードバック制御回路とサブフィードバック制御回路とを基本燃料噴射量Fbaseの補正(より正確には、基本ポート噴射量Fbasepの補正)に関して並列に接続している。また、本装置は、上流側空燃比センサ66の出力値vabyfsと上流側目標空燃比abyfrに対応する上流側目標値との相違の程度に応じた値をハイパスフィルタ処理した後の値であるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhi(上流側フィードバック入力値)をPIコントローラA16に入力することでメインフィードバック補正係数KFimainを求め、前記基本ポート噴射量Fbasepに同メインフィードバック補正係数KFimainを乗算することで、前記サブフィードバック制御による基本筒内噴射量Fbasec及び基本ポート噴射量Fbasepの補正とは独立に同基本ポート噴射量Fbasepを補正してメインフィードバック制御を実行する。
例えば、機関の空燃比が急変してリーンとなると、図3から理解できるように、上流空燃比センサ出力値に基づく検出空燃比abyfsは上流側目標空燃比設定手段A1により設定されている上流側目標空燃比abyfrも大きな値となる。このため、上流側空燃比偏差算出手段A14により求められた上流側空燃比偏差Dabyfは正の値となる。ここで、機関の空燃比の急変によりこの上流側空燃比偏差Dabyfを示す信号には前記カットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分が含まれている。係る高周波数成分は、ハイパスフィルタA15を通過し得る。従って、ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiも正の値となる。この結果、PIコントローラA16により算出されるメインフィードバック補正係数KFimainが「1」より大きい値となる。これにより、筒内噴射量算出手段A6、及びポート噴射量算出手段A7にてそれぞれ求められる筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipの合計量は、基本燃料噴射量Fbaseよりも大きくなって、機関の空燃比がリッチとなるように制御される。
反対に、機関の空燃比が急変してリッチとなると、検出空燃比abyfsは上流側目標空燃比abyfrよりも小さい値となる。このため、上流側空燃比偏差Dabyfは負の値となる。この場合も、上流側空燃比偏差Dabyfを示す信号にはハイパスフィルタA15を通過し得る前記カットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分が含まれている。従って、ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiも負の値となる。この結果、メインフィードバック補正係数KFimainが「1」より小さい値(>0)となる。これにより、筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipの合計量は、基本燃料噴射量Fbaseよりも小さくなって、機関の空燃比がリーンとなるように制御される。
以上、ポート噴射量算出手段A7、テーブル変換手段A12、目標空燃比遅延手段A13、上流側空燃比偏差算出手段A14、ハイパスフィルタA15、及びPIコントローラA16は上流側フィードバック制御手段に相当する。
<空燃比フィードバック制御間の相互干渉の回避>
一般に、ハイパスフィルタへの入力信号が定常状態から過渡状態に移行する場合(例えば、入力信号がステップ状に変化するような場合)、ハイパスフィルタは、入力信号が過渡状態に移行した時点から同ハイパスフィルタの時定数に相当する期間に亘って、同入力信号におけるあらゆる周波数成分を実質的に通過させてしまう。換言すれば、ハイパスフィルタのカットオフ周波数より低い周波数成分をも実質的に通過させてしまう。
従って、カットオフ周波数より低い周波数成分の通過をできるだけ禁止するという観点からはハイパスフィルタの時定数はなるべく小さい方が好ましい。ここで、ハイパスフィルタの時定数は同ハイパスフィルタのカットオフ周波数と反比例する関係にある。以上のことから、係る観点からすれば、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfはなるべく大きい方が好ましい。
他方、上述したように、第1触媒53のような三元触媒を通過し得る前記触媒通過低周波数成分の周波数帯域には上限がある。即ち、排ガスの空燃比変動における、触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値を超える周波数成分は、触媒を通過し得ない。従って、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfを第1触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値を超える値に設定すると、上述した制御対象外周波数帯域が実質的に発生してしまう。
よって、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfは第1触媒53に関する触媒通過低周波数成分の周波数帯域の最大値(以下、「値ωcut」と称呼する。)に設定されることが好ましいと考えられる。以上のことから、本例では、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfは上記値ωcut(一定)に設定されている。なお、値ωcutは、第1触媒53を用いた実験等を通して取得され得る。
そして、上流側フィードバックコントローラであるPIコントローラA16に入力される値Dabyfhiには、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpf(=ωcut)以上の高周波数成分のみが含まれているから、メインフィードバック制御の制御周波数帯域はωhpf以上の帯域となる。
一方、下流側フィードバックコントローラであるPIDコントローラA11に入力される値DVoxslowには、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpf以下の低周波数成分のみが含まれているから、サブフィードバック制御の制御周波数帯域はωlpf以下の帯域となる。
ここで、本装置は、後述するようにカットオフ周波数ωlpfを値ωcut以下の値に設定する。これにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御の制御周波数帯域が互いに重複しないように設定されることで上記2つの空燃比フィードバック制御間の相互の干渉が回避される。
更には、機関が過渡運転状態にある場合等、排ガスの空燃比がハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数で急変・変動するような場合、係る空燃比変動により、上流側空燃比センサ出力値に基づく検出空燃比abyfsにはカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分が含まれる。この高周波数成分はハイパスフィルタA15を通過する。従って、本装置においては、過渡運転状態における空燃比の急変に対する空燃比制御(補償)はメインフィードバック制御により迅速、且つ確実に行われ得る。
また、第1触媒53の下流の空燃比変動として現れ得る程度の、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpf以下の比較的低周波数での定常的な空燃比変動が発生するような場合、係る定常的な空燃比変動により、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsにはカットオフ周波数ωlpf以下の低周波数成分が含まれる。この低周波数成分はローパスフィルタA10を通過する。従って、本装置においては、このような定常的な空燃比変動に対する空燃比制御は、サブフィードバック制御により確実に達成され得る。
<メインフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生の抑制>
PIコントローラA16の出力であるメインフィードバック補正係数KFimainは、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpf(=ωcut)以上の高周波数で変動し得るから、その変化速度は大きくなり得る。従って、メインフィードバック補正係数KFimainには急激な変動が発生し得る。ここで、上述したように、係る急激な変動が発生し得るメインフィードバック補正係数KFimainにより筒内噴射量Fic(正確には、基本筒内噴射量Fbasec)を補正するように構成すると、機関に急激なトルク変動が発生し得る。
これに対し、本例では、メインフィードバック補正係数KFimainに急激な変動が発生しても機関に急激なトルク変動が発生しないように、メインフィードバック補正係数KFimainによりポート噴射量Fip(正確には、基本ポート噴射量Fbasep)のみを補正することでメインフィードバック制御が実行される。これにより、メインフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生が抑制される。
<サブフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生の抑制>
PIDコントローラA11の出力であるサブフィードバック補正係数KFisubは、上記値ωcut以下の周波数である比較的低い周波数でしか変動し得ないからその変化速度は比較的小さい。従って、サブフィードバック補正係数KFisubには急激な変動が発生し難い。よって、本例では、サブフィードバック補正係数KFisubにより、ポート噴射量Fip(正確には、基本ポート噴射量Fbasep)のみならず筒内噴射量Fic(正確には、基本筒内噴射量Fbasec)をも補正することでサブフィードバック制御が実行される。
しかしながら、上述したように、急激な変動が発生し難いサブフィードバック補正係数KFisubにより筒内噴射量Ficが補正される場合においても、筒内噴射割合Rが大きくなることで筒内噴射量Ficが大きくなるほど急激な機関のトルク変動が発生し易くなる傾向がある。
この場合、筒内噴射割合Rが大きくなるほど、サブフィードバック補正係数KFisubの変動における最大周波数(即ち、カットオフ周波数ωlpf)をより低くすることでサブフィードバック補正係数KFisubの変化速度をより小さくすれば、係るサブフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生を抑制することができると考えられる。
以上のことから、本装置(具体的には、LPF特性変更手段A17)は、図7に示す筒内噴射割合Rとカットオフ周波数ωlpfとの関係に従って、筒内噴射割合決定手段A3により逐次決定・変更されていく筒内噴射割合Rに応じてローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfを逐次変更していく。これにより、カットオフ周波数ωlpfは、値ω0〜上記値ωcutの範囲内において、筒内噴射割合Rが大きくなるほどより小さい値に設定される(図6を参照)。
なお、図7に示す筒内噴射割合Rとカットオフ周波数ωlpfとの関係は、例えば、筒内噴射割合Rを或る値に固定した場合において急激な機関のトルク変動が発生しなくなるカットオフ周波数ωlpfの最大値を取得する実験を、筒内噴射割合Rを「0」〜「1」の範囲内で徐々に変更しながら繰り返し行うことで取得できる。
このようにして、LPF特性変更手段A17によりローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfが変更されることでサブフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生が抑制される。以上、LPF特性変更手段A17はローパスフィルタ特性変更手段に相当する。以上が、本装置が行う機関の空燃比のフィードバック制御の概要である。
(実際の作動)
次に、上記第1実施形態に係る空燃比制御装置の実際の作動について説明する。
<空燃比フィードバック制御>
CPU71は、図8にフローチャートにより示した筒内噴射量Fic、ポート噴射量Fipの計算、及び燃料噴射の指示を行うルーチンを、各気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。
従って、任意の気筒のクランク角度が前記所定クランク角度になると、CPU71はステップ800から処理を開始してステップ805に進み、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ64の出力に基づいて得られるエンジン回転速度NEと、Ga,NEを引数とするテーブルMapMcとに基づいて今回の吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mcを求める。
次に、CPU71はステップ810に進み、上記求めた筒内吸入空気流量Mcを現時点での上流側目標空燃比abyfr(k)で除することで、機関の空燃比を同上流側目標空燃比abyfr(k)とするための基本燃料噴射量Fbaseを求める。
次いで、CPU71はステップ815に進み、エンジン回転速度NEと、上記求めた筒内吸入空気量Mcと、水温センサ65から得られる冷却水温THWと、NE,Mc,THWを引数とするテーブルMapRとに基づいて筒内噴射割合Rを求める。
続いて、CPU71はステップ820に進んで、上記求めた基本燃料噴射量Fbaseと、上記求めた筒内噴射割合Rと、上記(1),(2)式とに基づいて、基本筒内噴射量Fbasec、及び基本ポート噴射量Fbasepを求める。
次に、CPU71はステップ825に進み、上記求めた基本筒内噴射量Fbasecに、後述するルーチンで計算されているサブフィードバック補正係数KFisubを乗じることで上記(3)式に従って筒内噴射量Ficを算出する。
そして、CPU71はステップ830に進んで、上記求めた基本ポート噴射量Fbasepに、上記サブフィードバック補正係数KFisubと後述するルーチンで計算されているメインフィードバック補正係数KFimainとをそれぞれ乗じることで上記(4)式に従ってポート噴射量Fipを算出する。
そして、CPU71はステップ835に進み、筒内噴射量Ficの燃料を所定の時期に噴射するための指示を今回の吸気行程を迎える気筒の筒内噴射弁39Cに対して行い、且つポート噴射量Fipの燃料を所定の時期に噴射するための指示を今回の吸気行程を迎える気筒のポート噴射弁39Pに対して行った後、ステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
以上により、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御によりそれぞれ独立に補正された後の燃料噴射量、即ち、筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipの燃料が吸気行程を迎える気筒に対してそれぞれ噴射される。
<メインフィードバック補正係数の計算>
次に、メインフィードバック制御においてメインフィードバック補正係数KFiupを算出する際の作動について説明すると、CPU71は図9にフローチャートにより示した(上流側フィードバック制御手段に相当する)ルーチンを所定時間(例えば、8msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んでメインフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
このメインフィードバック制御条件は、例えば、機関の冷却水温THWが第1所定温度以上であって、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷)が所定値以下であって、上流側空燃比センサ66が完全活性状態にあるときに成立する。
いま、メインフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ905にて「Yes」と判定してステップ910に進み、現時点の上流側空燃比センサ66の出力値vabyfsを図3に示したテーブルに基づいて変換することにより、現時点における検出空燃比abyfsを求める。
続いて、CPU71はステップ915に進んで、上記求めた検出空燃比abyfsから、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k−N)を減じることで上記(8)式に従って、現時点からNストローク前の実際の空燃比と目標空燃比との差を表す上流側空燃比偏差Dabyfを求める。
次いで、CPU71はステップ920に進み、前記上流側空燃比偏差Dabyfを、カットオフ周波数ωhpf(=ωcut一定)のハイパスフィルタA15によりハイパスフィルタ処理してハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを取得し、続くステップ925にて上記(10)式に従ってメインフィードバック補正係数KFimainを求める。ここで、SDabyfhiとしてはステップ930にて前回の本ルーチン実行時において求められている最新値が使用される。
即ち、CPU71はステップ930に進むと、その時点におけるハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差の積分値SDabyfhiに上記ステップ920にて求めたハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを加えて、新たなハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差の積分値SDabyfhiを求める。
そして、CPU71はステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上により、メインフィードバック補正係数KFimainが求められ、このメインフィードバック補正係数KFimainが前述した図8のステップ830によりポート噴射量Fipのみに反映されることで上述したメインフィードバック制御に基づく機関の空燃比制御が実行される。
一方、ステップ905の判定時において、メインフィードバック制御条件が不成立であると、CPU71は同ステップ905にて「No」と判定してステップ935に進んでメインフィードバック補正係数KFimainの値を「1」に設定し、続くステップ940にてハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差の積分値SDabyfhiの値を「0」にリセットした後、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、メインフィードバック制御条件が不成立であるときは、メインフィードバック補正係数KFimainの値を「1」としてメインフィードバック制御に基づく機関の空燃比の補正を行わない。
<サブフィードバック補正係数の計算>
次に、サブフィードバック制御においてサブフィードバック補正係数KFisubを算出する際の作動について説明すると、CPU71は図10にフローチャートにより示した(下流側フィードバック制御手段に相当する)ルーチンを所定時間(例えば、8msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んでサブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
サブフィードバック制御条件は、例えば、機関の冷却水温THWが前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上であって、機関の一回転当りの吸入空気量(負荷)が所定値以下であって、下流側空燃比センサ67が完全活性状態にあるときに成立する。
いま、サブフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続けると、CPU71はステップ1005にて「Yes」と判定してステップ1010に進み、上記(5)式に従って、現時点での下流側目標値Voxsrefから現時点での下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。
次に、CPU71はステップ1015に進んで、図7に示す筒内噴射割合Rとカットオフ周波数ωlpfとの関係を表す関数funcωlpf(R)と、先のステップ815にて求められている現時点での筒内噴射割合Rとに基づいて現時点で設定すべきローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfを求める。
続いて、CPU71はステップ1020に進み、前記出力偏差量DVoxsを、上記求めたカットオフ周波数ωlpfのローパスフィルタA10によりローパスフィルタ処理してローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを取得する。
次いで、CPU71はステップ1025に進み、下記(11)式に基づきローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの微分値DDVoxslowを求める。
DDVoxslow=(DVoxslow-DVoxslow1)/Δt ・・・(11)
上記(11)式において、DVoxslow1は前回の本ルーチン実行時において後述するステップ1040にて設定(更新)されたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの前回値である。また、Δtは本ルーチンの実行間隔時間(所定時間)である。
次いで、CPU71はステップ1030に進み、上記(7)式に従って、サブフィードバック制御係数KFisubを求めた後、ステップ1035に進んで、その時点におけるローパスフィルタ通過後出力偏差量の積分値SDVoxslowに上記ステップ1020にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを加えて、新たなローパスフィルタ通過後出力偏差量の積分値SDVoxslowを求め、続くステップ1040にて、上記ステップ1020にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowをローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの前回値DVoxslow1として設定した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上により、サブフィードバック制御係数KFisubが求められ、このサブフィードバック制御係数KFisubが前述した図8のステップ825,830により筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipに反映されることで上述したサブフィードバック制御に基づく機関の空燃比制御が実行される。
一方、ステップ1005の判定時において、サブフィードバック制御条件が不成立であると、CPU71は同ステップ1005にて「No」と判定してステップ1045に進んでサブフィードバック制御係数KFisubの値を「1」に設定し、続くステップ1050にてローパスフィルタ通過後出力偏差量の積分値SDVoxslowを「0」にリセットした後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、サブフィードバック制御条件が不成立であるときは、サブフィードバック制御係数KFisubを「1」としてサブフィードバック制御に基づく機関の空燃比の補正を行わない。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の第1実施形態によれば、第1触媒53の上流に配設された上流側空燃比センサ66の出力値vabyfsに基づく空燃比制御である上流側フィードバック制御(メインフィードバック制御)において、上流側空燃比センサ出力値vabyfsに基づく値(上流側空燃比偏差Dabyf)をハイパスフィルタA15(カットオフ周波数:ωhpf=ωcut一定)によりハイパスフィルタ処理した後の値を上流側フィードバックコントローラ(PIコントローラA16)で比例・積分処理(PI処理)することでメインフィードバック補正係数KFimainが求められる。
また、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流に配設された下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比制御である下流側フィードバック制御(サブフィードバック制御)において、下流側空燃比センサ出力値Voxsに基づく値(出力偏差量DVoxs)をローパスフィルタA10(カットオフ周波数:ω0≦ωlpf≦ωcut)によりローパスフィルタ処理した後の値を下流側フィードバックコントローラ(PIDコントローラA11)で比例・積分・微分処理(PID処理)することでサブフィードバック補正係数KFisubが求められる。
そして、メインフィードバック補正係数KFimain、及びサブフィードバック補正係数KFisubで互いに独立に筒内噴射量Fic、ポート噴射量Fipを補正することにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御がそれぞれ実行される。
これにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御の制御周波数帯域はそれぞれ、高周波数帯域(ωcut以上)、低周波数帯域(ωcut以下)となり、それぞれが互いに重複しないように設定され得る。これにより、メインフィードバック制御、及びサブフィードバック制御の間の相互干渉が回避されるから、良好な空燃比制御が達成され得、この結果、エミッションの排出量を安定して抑制することができる。
また、これにより、メインフィードバック制御は、機関が過渡運転状態にある場合等における高周波数の空燃比変動(外乱等による高周波数の変動を含む。)に対する空燃比制御を達成し得る。サブフィードバック制御は、第1触媒53の下流の空燃比変動として現れ得る程度の比較的低周波数での定常的な空燃比変動に対する空燃比制御を達成し得る。また、サブフィードバック制御では、PIDコントローラA11にて積分処理が実行されるから、第1触媒下流の空燃比の目標空燃比(理論空燃比)からの定常偏差が「0」になることが保証される。この結果、定常運転状態でのエミッションの排出量を効果的に低減することができる。
また、急激な変動が発生し易い上記メインフィードバック補正係数KFimainに急激な変動が発生しても機関に急激なトルク変動が発生しないように、メインフィードバック補正係数KFimainによりポート噴射量Fip(正確には、基本ポート噴射量Fbasep)のみを補正することでメインフィードバック制御が実行される。換言すれば、メインフィードバック補正係数KFimainにより筒内噴射量Ficが補正されない。これにより、メインフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生が抑制される。
更には、急激な変動が発生し難いサブフィードバック補正係数KFisubにより筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipを共に補正することでサブフィードバック制御が実行される。このとき、筒内噴射割合Rが大きくなって筒内噴射量Ficが大きくなることに起因する急激な機関のトルク変動の発生を抑制するため、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfが、ω0≦ωlpf≦ωcutの範囲内で、筒内噴射割合Rが大きくなるほどより小さくなるように設定される。これにより、筒内噴射割合Rにかかわらずサブフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生が抑制される。
本発明は上記第1実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第1実施形態においては、サブフィードバック補正係数KFisubにより筒内噴射量Fic、及びポート噴射量Fipを共に補正することでサブフィードバック制御が実行されているが、サブフィードバック補正係数KFisubにより筒内噴射量Ficのみを補正することでサブフィードバック制御が実行されてもよい。
また、サブフィードバック補正係数KFisubによりポート噴射量Fipのみを補正することでサブフィードバック制御が実行されてもよい。この場合、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfは上記値ωcut一定に維持されることが好ましい。筒内噴射割合Rにかかわらずサブフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動は発生し難く、カットオフ周波数ωlpfを変更する必要がないからである。これにより、上記制御対象外周波数帯域が完全になくなるから、触媒から排出されるエミッションの排出量をより一層安定して抑制することができる。
また、上記第1実施形態においては、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfを、筒内噴射割合Rが大きくなるほどより小さくなるように設定しているが、カットオフ周波数ωlpfを一定(例えば、上記値ωcut)に維持するとともに、ローパスフィルタA10のゲインGlpfを、筒内噴射割合Rが大きくなるほどより小さくなるように設定してもよい。これにより、筒内噴射割合Rが大きくなるほどサブフィードバック補正係数KFisubの変動幅が小さくなることで、筒内噴射割合Rにかかわらずサブフィードバック制御に起因する急激な機関のトルク変動の発生が抑制される。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る空燃比制御装置について説明する。この第2実施形態は、その機能ブロック図である図11に示したように、図5に機能ブロック図が示される上記第1実施形態に対して、LPF特性変更手段A17を省略した点、バンドパスフィルタA18、及びPIDコントローラA19を新たに加えた点で、第1実施形態と主として異なる。以下、係る相違点を中心として説明する。
この第2実施形態では、LPF特性変更手段A17が省略されていて、図12に示すように、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfが、第1実施形態におけるカットオフ周波数ωlpfの変動範囲の最小値(即ち、図6,7に示した値ω0)に固定される。また、ハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfは、図12に示すように、第1実施形態と同様、値ωcutに固定される。
一方、第2実施形態は、バンドパスフィルタA18(BPF)を備えている。バンドパスフィルタA18は、その特性をラプラス演算子sを用いて表した下記(12)式に示すように、一次のフィルタ(ソフトフィルタ、デジタルフィルタ)である。このバンドパスフィルタA18の周波数−ゲイン特性は図12に示したとおりである。図12に示したように、バンドパスフィルタA18は、入力値(入力信号)の変動における、ローパスフィルタA10のカットオフ周波数ωlpfと等しい低周波数側のカットオフ周波数ω0(=1/τlpf)以下の低周波数成分を減衰するとともにハイパスフィルタA15のカットオフ周波数ωhpfと等しい高周波数側のカットオフ周波数ωcut(=1/τhpf)以上の高周波数成分を減衰する。これにより、バンドパスフィルタA18は、上記低周波数側のカットオフ周波数ω0以上、上記高周波数側のカットオフ周波数ωcut以下の中周波数成分(即ち、第1実施形態におけるカットオフ周波数ωlpfの変動範囲内の周波数成分)のみが通過することを実質的に許容する。
1/(1+τhpf・s)+(1−1/(1+τlpf・s)) ・・・(12)
バンドパスフィルタA18は、出力偏差量算出手段A9により求められた前記出力偏差量DVoxsの値を入力するとともに、上記(12)式に従って同出力偏差量DVoxsの値をバンドパスフィルタ処理した後の値であるバンドパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxsbaを出力する。従って、バンドパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxsbaは、「下流側空燃比センサ67の出力値に基づく値であってバンドパスフィルタ処理がなされている値」であって、「下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの相違の程度に応じた値をバンドパスフィルタ処理した後の値」である。
また、第2実施形態は、PIDコントローラA19を備えている。PIDコントローラA19は、バンドパスフィルタA18の出力値であるバンドパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxsbaを比例・積分・微分処理(PID処理)することで、上記(7)式と同じ式に基づいてバンドパスフィルタ処理後下流側フィードバック補正量としてのバンドパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisubba(>0)を求める。なお、上記第1実施形態では、PIDコントローラA11の出力値を単に「サブフィードバック補正係数KFisub」と呼んでいたが、この第2実施形態では、PIDコントローラA11の出力値を、上記「バンドパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisubba」と区別するため、「ローパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisublow」と呼ぶことにする。
更に、上記第1実施形態では、ローパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisublowにより筒内噴射量Fic(正確には、基本筒内噴射量Fbasec)及びポート噴射量Fip(正確には、基本ポート噴射量Fbasep)が共に補正されているが、この第2実施形態では、図11に示すように、ローパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisublowにより筒内噴射量Fic(正確には、基本筒内噴射量Fbasec)のみが補正され、バンドパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisubbaによりポート噴射量Fic(正確には、基本ポート噴射量Fbasep)のみが補正される。
また、この第2実施形態では、図11に示すように、第1実施形態と同様、メインフィードバック補正係数KFimainによりポート噴射量Fip(正確には、基本ポート噴射量Fbasep)のみが補正される。
即ち、第2実施形態では、図12に示すように、サブフィードバック制御の制御周波数帯域(ωcut以下)が、ポート噴射量Fipの補正に係わる高周波数側の帯域(ω0以上ωcut以下。BPF分担帯域)と筒内噴射量Ficの補正に係わる低周波数側の帯域(ω0以下。LPF分担帯域)とに分けられている。
そして、メインフィードバック制御の制御周波数帯域であるωcut以上の全帯域(HPF分担帯域)とサブフィードバック制御における上記BPF分担帯域(即ち、ω0以上の周波数帯域)がポート噴射量Fipの補正に係わり、サブフィードバック制御における上記LPF分担帯域のみ(即ち、ω0以下の周波数帯域)が筒内噴射量Ficの補正に係わる。
この相違点に基づき、第2実施形態のCPU71は、第1実施形態のCPU71が実行する図8〜図10に示したルーチンのうち、図9に示したメインフィードバック補正係数KFimainを計算するルーチンのみを実行するとともに、図8のルーチンに代えて図8のルーチンに対応する図13にフローチャートにより示した筒内噴射量Fic及びポート噴射量Fipを計算するルーチン、図10のルーチンに代えて図10のルーチンに対応する図14にフローチャートにより示したローパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisublowを計算するルーチンをそれぞれ実行する。更には、第2実施形態のCPU71は、図15にフローチャートにより示したバンドパスフィルタ処理後サブフィードバック補正係数KFisubbaを計算するルーチンを追加的に実行する。
図13に示したルーチンに含まれるステップのうち、図8に示したルーチンと同一のステップについては図8におけるステップ番号と同一のステップ番号が付されている。同様に、図14、及び図15に示したルーチンに含まれるステップのうち、図10に示したルーチンと同一のステップについては図10におけるステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
図13、及び図14に示したルーチンは、図8、及び図10に示したルーチンとそれぞれ酷似し、また、図15に示したルーチンは、図14に示したルーチンと酷似しているから、図13〜図15に示したそれぞれのルーチンの詳細についての説明は省略する。
以上、第2実施形態によれば、ポート噴射量Fipの補正に係わる制御周波数帯域である、図12に示したHPF分担帯域とBPF分担帯域(即ち、ω0以上の周波数帯域)の空燃比変動は、ポート噴射量Fipの変動として現れる。従って、急激な空燃比変動によりポート噴射量Fipが急激に変動しても、上述したように、燃料の吸気ポート等への付着に起因して前記筒内吸入燃料量の変動は減衰され、この結果、機関に急激なトルク変動が発生し難い。
更には、筒内噴射量Ficの補正に係わる制御周波数帯域である、図12に示したLPF分担帯域(即ち、ω0以下の周波数帯域)の空燃比変動は、その変化速度が十分に小さいから急激に変動し得ない。従って、LPF分担帯域の空燃比変動に起因して機関に急激なトルク変動が発生することはない。以上のことから、急激な機関のトルク変動の発生を確実に抑制することができる。
更には、図12に示したように、HPF分担帯域とBPF分担帯域とLPF分担帯域とがそれぞれ連続することになり、制御対象外周波数帯域が完全になくなる。即ち、あらゆる周波数の空燃比変動に対して何れかの空燃比フィードバック制御により確実に空燃比制御が実行され得るようになり、この結果、触媒から排出されるエミッションの排出量をより一層安定して抑制することができる。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態においては、「上流側空燃比センサの出力値に基づく値」である「上流側空燃比センサの出力値と上流側目標値との相違の程度に応じた値」として、上流側空燃比センサ66の検出空燃比abyfsと上流側目標空燃比abyfrとの差が使用されているが、上流側空燃比センサ出力値vabyfsそのものと上流側目標空燃比abyfrに対応する上流側目標値との差、或いは、筒内吸入空気量Mcを検出空燃比abyfsで除した値である実際の筒内燃料供給量と同筒内吸入空気量Mcを目標空燃比abyfrで除した値である目標筒内燃料供給量との差を使用してもよい。
同様に、上記各実施形態においては、「下流側空燃比センサの出力値に基づく値」である「下流側空燃比センサの出力値と下流側目標値との相違の程度に応じた値」として、下流側空燃比センサ出力値Voxsそのものと下流側目標値Voxsrefとの差が使用されているが、下流側空燃比センサ67の検出空燃比(図4を参照。)と目標空燃比abyfrとの差を使用してもよい。
また、上記各実施形態においては、上流側フィードバック補正量としてのメインフィードバック補正係数KFimain(>0)を基本ポート噴射量Fbasepに乗じることでメインフィードバック制御を実行しているが、同メインフィードバック補正係数KFimainに相当する正負の値を採りえるメインフィードバック補正量を基本ポート噴射量Fbasepに加算することによりメインフィードバック制御を実行してもよい。
同様に、上記各実施形態においては、下流側フィードバック補正量としてのサブフィードバック補正係数KFisub(或いは、KFisublow,KFisubba)(>0)を基本筒内噴射量Fbasec、或いは基本ポート噴射量Fbasepに乗じることでサブフィードバック制御を実行しているが、同サブフィードバック補正係数KFisubに相当する正負の値を採りえるサブフィードバック補正量を基本筒内噴射量Fbasec、或いは基本ポート噴射量Fbasepに加算することによりサブフィードバック制御を実行してもよい。
また、上記各実施形態においては、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsと下流側目標値Voxsrefとの差DVoxsをローパスフィルタ処理した後の値DVoxslowに基づいてサブフィードバック補正係数KFisub(或いは、KFisublow,KFisubba)を算出しているが、同下流側空燃比センサ67の出力値Voxsをローパスフィルタ処理した後の値と同下流側目標値Voxsrefとの差に基づいて同サブフィードバック補正係数KFisub(或いは、KFisublow,KFisubba)を算出するように構成してもよい。
また、上記各実施形態においては、フィルタ(ハイパスフィルタA15、ローパスフィルタA10)として、1次フィルタを使用しているが、各フィルタが分担するそれぞれの帯域をさらに明白に分ける必要がある場合、これらのフィルタとして2次以上のフィルタを使用してもよい。
また、上記各実施形態においては、「上流側空燃比センサの出力値と上流側目標値との相違の程度に応じた値」としての上流側空燃比偏差DabyfをハイパスフィルタA15に入力してメインフィードバック補正係数KFimainを算出するようになっているが(図5、及び図11を参照)、前記上流側空燃比偏差Dabyfの代わりに上流空燃比センサ66の検出空燃比abyfsを直接ハイパスフィルタA15に入力してメインフィードバック補正係数KFimainを算出するように構成してもよい。
上記各実施形態においてハイパスフィルタA15に入力される上流側空燃比偏差Dabyfは、上流空燃比センサ66の検出空燃比abyfsから上流側目標空燃比abyfr(原則的に、理論空燃比で一定)を減じた値である。従って、上流側空燃比偏差Dabyfを示す信号は、検出空燃比abyfsを示す信号と、変動の中心値が異なる一方で同じタイミング、同じ振幅で増減する同一の波形を有する信号となる。
よって、ハイパスフィルタA15を通過した後のカットオフ周波数ωhpf以上の高周波数成分からなる上記ハイパスフィルタ通過後上流側空燃比偏差Dabyfhiを示す信号は、検出空燃比abyfsをハイパスフィルタA15に入力した場合の同ハイパスフィルタA15の出力値を示す信号と、全く同一の値をとる信号となる。以上のことから、これによっても、上記各実施形態と全く同一の作用・効果が得られる。
10…内燃機関、25…燃焼室、39C…筒内噴射弁、39P…ポート噴射弁、52…エキゾーストパイプ(排気管)、53…三元触媒(第1触媒)、66…上流側空燃比センサ、67…下流側空燃比センサ、70…電気制御装置、71…CPU、A10…ローパスフィルタ、A15…ハイパスフィルタ、A17…LPF特性変更手段、A18…バンドパスフィルタ