JP2006104587A - 高白色度化学パルプ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ISO白色度が88%以上でありながら、退色性が大幅に改善された高白色度化学パルプを提供する。
【解決手段】 漂白パルプを紫外光で処理することにより、ISO白色度が88%以上であって、下記の退色試験において白色度の低下率が1.0%以下である高白色度化学パルプを製造する。
(JIS P8209に従って手抄き紙を作成し、J.TAPPI No.21 紙及び板紙−退色度試験方法のB法(キセノンアークランプ式耐光性試験器による方法)に準じて30℃の環境下で、光量67W/m2のキセノンランプを30分間照射した後、ISO白色度を測定し、処理前のISO白色度との低下率を求める。)
【解決手段】 漂白パルプを紫外光で処理することにより、ISO白色度が88%以上であって、下記の退色試験において白色度の低下率が1.0%以下である高白色度化学パルプを製造する。
(JIS P8209に従って手抄き紙を作成し、J.TAPPI No.21 紙及び板紙−退色度試験方法のB法(キセノンアークランプ式耐光性試験器による方法)に準じて30℃の環境下で、光量67W/m2のキセノンランプを30分間照射した後、ISO白色度を測定し、処理前のISO白色度との低下率を求める。)
Description
本発明は、退色性が大幅に改善された高白色度化学パルプ、及びそれを含有する紙に関し、更に詳しくは漂白された化学パルプをさらに紫外光処理することによって得られる退色性が大幅に改善された新規な高白色度化学パルプ、及びそれを含有した紙に関する。
化学パルプを主原料とする紙製品、特にインクジェット用紙、熱転写記録用紙などの情報印刷用紙や写真用印画紙支持体などにおいては高い白色度が要求される。通常、未漂白クラフトパルプの白色度を高めるために、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、過酸化水素、オゾンなどの化学薬品で多段漂白することにより未漂白パルプに残留するリグニンや多糖類由来の着色原因物質を除去している。塩素ガスによる塩素漂白法、さらに有機塩素化合物の生成を低減した点でより環境に優しい二酸化塩素によるECF漂白法で得られたパルプのISO白色度は通常82〜86%である。白色度が通常以上に高いレベルまで漂白された高白色度パルプは蒸解及び/または漂白条件を強化する、或いはフェノール性の抽出成分含有量の少ない易蒸解および漂白性の樹種を利用するなどの方法で製造されるのが一般的である。
高白色度パルプを製造する従来の技術としては、例えば、漂白工程として、少なくとも一段以上の塩素系の漂白段を含むシーケンスによって漂白されたパルプを、キシラナーゼで処理し、更に次亜塩素酸塩段と二酸化塩素段の漂白シーケンスで漂白することを特徴とする高白色度パルプの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。また、リグノセルロース物質より得られた漂白パルプを、更に高温・高アルカリハイポ晒段と二酸化塩素晒段の連続したシーケンスからなる工程で漂白する高白色度パルプの製造方法において、該二酸化塩素晒段の工程が、二酸化塩素添加率1〜3重量%(対絶乾パルプ)で、かつ91℃以上100℃未満の高温で実施されることを特徴とする高白色度パルプの製造方法が開示されている(特許文献2参照)。また、漂白シーケンスが酸素漂白−オゾン漂白−アルカリ抽出−過酸化水素漂白−二酸化塩素漂白−過酸化水素漂白−二酸化塩素漂白であり、該オゾン漂白工程で絶乾パルプに対して0.1〜1.0重量%のオゾンを用いて漂白された化学パルプであることを特徴とする写真印画紙用支持体原紙について開示されている(特許文献3参照)。さらに、カッパー価が23以下の未晒クラフトパルプを脱リグニン度40%以上で酸素漂白し、次いでパルプ濃度25%以上でオゾン漂白した後、PN価を2.8以下とし、過酸化水素漂白と二酸化塩素漂白を含む多段漂白を行うことを特徴とする退色性の優れた感材用高白色度パルプの製造方法が開示されている(特許文献4参照)。しかし、従来の方法で得られた高白色度パルプ中には熱や紫外線で濃色化する極微量の潜在的な着色物質が残存しており、経時で白色度が低下する、いわゆる退色現象を避けるのが困難であった。
また、化学パルプの退色に関与する物質として従来のリグニン以外にヘキセンウロン酸が知られている。ヘキセンウロン酸は、蒸解時にヘミセルロース中のメチルグルクロン酸が脱メチル化することで生成する二重結合を有する化合物である。従って、退色しない高白色度パルプ製造には残留リグニンだけでなく、ヘキセンウロン酸もできる限り除去する必要がある。ヘキセンウロン酸を除去する方法として、漂白前のパルプを85〜150℃かつpH2〜5で処理することで、パルプ中のヘキセンウロン酸の約50%を除去する技術が開示されている(特許文献5参照)。
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を克服し、環境負荷が少なくかつ退色性のない優れた高白色度パルプおよびそれを含有した紙を提供することにある。
本発明は、ISO白色度が88%以上であって、退色試験において白色度の低下率が1.0%以下である高白色度化学パルプである。
本発明における退色試験は、JIS P 8209に従って手抄き紙を作成し、J.TAPPI No.21 紙及び板紙−退色度試験方法のB法(キセノンアークランプ式耐光性試験器による方法)に準じて30℃の環境下で、光量67W/m2のキセノンランプを30分間照射した後、ISO白色度を測定し、処理前のISO白色度との低下率を求めるものである。
このような高白色度で、かつ退色性の低いパルプとして、本発明者らは、前記従来技術の難点を解消すべく鋭意検討を重ねた結果、漂白パルプをさらに紫外光処理することで、上記のような白色度が高く、退色性がなく、かつ紙力の強いパルプの製造が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の新規な漂白法は従来法と比較して、高白色度でありながら、退色性のないパルプを提供することが可能となった。
本発明は、ISO白色度が88%以上であって、下記の退色試験において白色度の低下率が1.0%以下である高白色度化学パルプである。すなわち、従来紙の退色性を評価する際には熱による退色試験で評価することが一般的であったが、本発明者らの検討によれば、下記のような紫外光による退色試験で評価することが実際の紙の退色性とよく相関することが判明した。
JIS P8209に従って手抄き紙を作成し、J.TAPPI No.21 紙及び板紙−退色度試験方法のB法(キセノンアークランプ式耐光性試験器による方法)に準じて30℃の環境下で、光量67W/m2のキセノンランプを30分間照射した後、JIS P8123に従ってISO白色度を測定し、処理前のISO白色度との低下率を求める。
本発明で用いられる化学パルプとしては、針葉樹や広葉樹のような木材を原料とするものが好ましいが、ケナフ、麻、バガス、イネ等の非木本性の植物を原料とするものであってもよく、特に限定しない。本発明に使用される化学パルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率を考慮すると、クラフト蒸解法が好適である。さらにクラフト蒸解法としては修正蒸解法として、MCC、EMCC、ITC、Lo−solids法等が知られているが、特に限定することなく本発明に適用できる。木材は公知の条件でクラフト蒸解することができるが、例えば、次の条件を挙げることができる。蒸解液の硫化度は7〜75%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶乾木材重量当り5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、蒸解温度は140〜170℃である。また、蒸解方式は、連続蒸解法或いはバッチ蒸解法のどちらでもよく、また蒸解装置の方式は特に問わない。
本発明で使用する化学パルプは、公知の蒸解法により得られた未漂白化学パルプを洗浄、粗選および精選工程を経て、酸素脱リグニン処理される。酸素脱リグニンの条件は公知の方法で行うことができる。広葉樹化学パルプの場合、酸素脱リグニン後のカッパー価は5〜15の範囲が良く、好ましくは7〜15、さらに好ましくは8〜12である。この酸素脱リグニン処理は公知の中濃度法或いは高濃度法で実施される。例えば、中濃度法の一般的な反応条件としては、パルプ固形分濃度10〜18重量%、温度100〜110℃、反応時間60〜120分間、反応器内圧力3〜6kg/m2が挙げられ、水酸化ナトリウム添加率および酸素添加率は目標とするカッパー価によって調整される。
本発明の高白色度化学パルプの製造において、酸素脱リグニン処理後のパルプを引き続き酸処理を行ったものを使用することが好ましい。パルプの酸処理に使用する酸の種類は、無機酸でも有機酸でも良い。無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、亜硫酸、亜硝酸、リン酸、二酸化塩素発生装置の残留酸等の鉱酸を使用できる。好適には硫酸である。有機酸としては、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸等を使用できる。広葉樹パルプの酸処理時のpHは1.5〜6.0の範囲であることが望ましく、好ましくは1.0〜5.0、さらに好ましくは2.0〜5.0、最適には2.5〜3.5である。pHが1.0未満の場合はヘキセンウロン酸と金属イオンの除去は十分であるが、酸が過剰のためパルプ粘度が大幅に低下する。一方、pHが6.0を超えると酸濃度が低く、ヘキセンウロン酸と金属イオンの除去が不充分となる。広葉樹化学パルプの場合、酸処理時のpHを2.5〜3.5とすると、酸処理時の温度を低下させることが可能であり、酸処理コストを低減できるという効果が生じてくる。
酸処理は大気圧下、加圧下のいずれでも実施可能である。例えば、大気圧下の酸処理時の反応温度は80℃以上100℃未満の範囲である。好ましくは80〜95℃、さらに好ましくは80〜90℃である。温度が30℃以上80℃未満では金属除去の面では効果があるが、ヘキセンウロン酸の除去効果がない。
酸処理後、パルプは引き続き多段漂白工程で漂白される。使用される薬品としては、原子状塩素(C)、苛性ソーダ(E)、次亜塩素酸塩(H)、二酸化塩素(D)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、硫酸(A)、有機過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤からなる薬品を挙げることができ、これらの中から適宜選択されて漂白薬品として用いられる。漂白シーケンスとしては、特に限定はないが、例えば、C/D−E/O−H−Dのように原子状塩素と塩素系漂白薬品を含むシーケンス、D−E−D、Z−E/O−Dのような原子状塩素を含まないECF漂白シーケンス、Z−E−P、A−Z−E/O−Pのように塩素系薬品を全く使用しないTCF漂白シーケンスを用いることができる。
本発明の高白色度化学パルプを製造する方法としては、上述した方法で得られた漂白化学パルプをさらに紫外光処理にすることが好ましい。また、紫外光処理前の漂白化学パルプは、ISO白色度80%以上、好ましくは86%以上となるように漂白されていることが好ましい。例えば、紫外光処理前後にP段を導入すれば非常に白色度の高いパルプを容易に得ることができる。
紫外光照射処理はアルカリ性条件下で行うことが好ましい。アルカリ性条件としては、pH10〜13の範囲が好ましい。なお、このpH調整のために使用するアルカリとしては、通常のアルカリ性薬剤が使用可能であるが、アルカリとして水酸化ナトリウムが好適である。また、pH調整のために使用する酸としては、通常の酸性薬剤が使用可能であるが、硫酸が好適である。
紫外光処理時におけるパルプ濃度は0.1〜12重量%が好ましい。0.1重量%未満では漂白反応効率は高くなるものの、エネルギー効率が低下するため好ましくない。12重量%を超える場合には、漂白装置内でのパルプスラリーの流動性が悪くなり、漂白反応効率が低下するため好ましくない。
紫外光照射処理時の温度にも特に制限はないが、20〜95℃が好ましい。20℃未満では漂白反応効率が低く、95℃を超える場合には、パルプ品質の悪化の可能性が生じることや、或いは反応装置内圧力が大気圧を超える可能性も生じるため、耐圧性を考慮した装置設計が必要となる点で、いずれも好ましくない。
紫外光の照射時間は、原料パルプに含まれる潜在的着色物質の構造やその濃度を考慮することにより適宜定められる。
本発明において使用する紫外光としては、特別な制約はないが、波長が100〜400nm、好ましくは200〜360nm程度の紫外光を用いることが望ましい。波長が100nm未満の紫外光ではセルロースの光分解が促進されるためパルプ強度および白色度が著しく低下し、また、波長が400nmを超える紫外光では、着色物質の光励起が不充分であるため光漂白性が大幅に低下するので、いずれも好ましくない。
照射する光源としては低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノン灯等の通常の光源や、各種エキシマランプや各種レーザー等も用いることができるが、大量のパルプを処理する場合、高出力かつオゾンを発生する低圧水銀ランプを用いることが望ましい。オゾン発生用紫外線ランプは主に波長254nmの紫外光を放射しており、その他に波長185nmの紫外光と可視光が含まれる。波長185nmの紫外光の照射強度は温度に影響されないが、波長254nmの紫外光の強度には温度依存性があり、20〜40℃で最大となる。従って、ランプ表面温度が高くなる高出力オゾン発生用ランプではランプ冷却に空気を使用し、冷却と同時に空気中の酸素から波長185nmの紫外光によりオゾンガスを発生させている。排水処理ではこのオゾンガスが波長254nmの紫外光で分解され、その結果、強力な活性酸素種が生成し、着色成分の分解が顕著に促進する。排水処理ではオゾン濃度が高いほど処理効率が向上するが、パルプ漂白では波長254nmの紫外光が最も漂白に有効な紫外線であるため、オゾンを過剰に供給するとオゾンにより波長254nmの紫外光が遮蔽され、漂白効率が低下するのみならず、高濃度オゾンから発生した多量の活性酸素種でセルロース繊維の損傷が進み、顕著な紙力低下を招く。従って、供給するオゾンには最適量があり、その量はパルプ中の着色物質の構造やその量によって適宜調整される。
本発明では光漂白促進剤として、従来公知の還元剤、酸化剤および水素供与性有機化合物が全て使用できる。このような還元剤としては、例えば、ハイドロサルファイト、水素化ホウ素化合物等を、酸化剤としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酢酸等を、水素供与性有機化合物としては、エタノールに代表される一級アルコール等を挙げることができる。また、本発明における添加剤は溶媒を使用せず、単独で用いても良いが、紫外・可視光を透過する溶媒に分散もしくは溶解させて使用することが望ましい。また、異種添加剤を混合して使用することもできる。このような溶媒としては、水、アルコール類、鎖状または環状のアルカン類、エーテル類等の単独溶媒あるいはこれらの混合溶媒が挙げられるが、水が好ましく使用される。添加剤の使用量は、溶媒に対する添加剤の飽和濃度以下であれば特に制限はないが、好ましくは溶媒に対して、0.01〜40重量%、より好ましくは0.1〜20重量%とするのが適当である。
本発明で得られた高白色度化学パルプが退色が極めて少ない理由は明らかではないが、254nmの非常に強い紫外光でパルプ中に残存する退色に関与する着色原因物質が予め分解、除去されることで、退色試験に使用されるランプから放射される比較的弱い紫外光では退色しないものと推察される。
本発明の高白色度化学パルプを含有する紙の用途としては、書籍用紙の他、オフセット印刷用紙、凸版印刷用紙、グラビア印刷用紙、新聞印刷用紙、電子写真用紙、あるいは塗工紙、インクジェット記録用紙、感熱記録紙、感圧記録紙等の原紙として使用することができる。
本発明の高白色度化学パルプを含有する紙は、本発明の高白色度化学パルプ以外に原料パルプとして化学パルプ、機械パルプ、脱墨パルプを単独または任意の割合で混合して使用してもよい。抄紙時のpHは酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。
本発明の高白色度パルプを含有する紙には、紙力増強剤を含有させることができる。紙力増強剤としては、デンプン、加工デンプン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素・ホルマリン系樹脂、メラミン・ホルマリン系樹脂、ポリエチレンイミンなどが例示される。紙力増強剤の含有量としては、パルプ絶乾重量当り0.1重量%以上、2重量%以下が好ましい。
また、本発明の高白色度パルプを含有する紙は填料を含有してもよい。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。
さらに、本発明の高白色度パルプを含有する紙は、必要に応じて硫酸バンド、サイズ剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、消泡剤、嵩高剤、蛍光増白剤等を含有してもよい。
本発明の高白色度パルプを含有する紙は、全く塗工処理をしていないか、あるいは顔料を含まない表面処理剤を塗工してもよい。非塗工用紙の場合、表面強度やサイズ性向上の目的で、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤を塗工することが望ましい。水溶性高分子としては、デンプン、加工デンプン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子の他に耐水性、表面強度向上を目的とした紙力増強剤やサイズ性付与を目的とした外添サイズ剤を添加することができる。表面処理剤の塗布量としては、表面処理剤は、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター等の塗工機によって塗布することができる。表面処理剤の塗布量としては、片面当り0.1g/m2以上3g/m2以下が好ましい。
以下に実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
日本製紙株式会社A工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度85.6%)を200g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を1%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーを図1の実験装置に注入し、撹拌しながら、温度25℃、処理時間120分で紫外光漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。これらの測定方法は下記に示した通りであり、結果を表1に示した。
日本製紙株式会社A工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度85.6%)を200g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を1%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーを図1の実験装置に注入し、撹拌しながら、温度25℃、処理時間120分で紫外光漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。これらの測定方法は下記に示した通りであり、結果を表1に示した。
・フリーネスの測定:濃度10%のパルプスラリーをPFIミルで6000 rev処理した後、JIS P 8121に準じてフリーネス(CSF)を測定した。
・パルプの白色度測定:パルプを離解した後、JIS P 8209に従って坪量60g/m2の手抄きシートを作製し、JIS P 8148に準じてパルプのISO白色度を測定した。
・裂断長の測定:パルプを離解した後、JIS P 8209に従って坪量60g/m2のシートを作製し、JIS P 8113に準じて裂断長を測定した。
・退色試験:キセノンランプウェザーメーターを用いて行った。キセノンランプから発生する紫外線を30分間サンプルに照射した後、ISO白色度(JIS P 8148)を測定した。退色試験は温度30℃、光量67W/m2で実施した。なお、表1中のΔ白色度、白色度低下率は下記のように定義される。
Δ白色度=退色試験後のISO白色度−退色試験前のISO白色度
白色度低下率=Δ白色度/退色試験前のISO白色度
・紫外光漂白実験装置:実施例で用いた実験装置を図1に示した。72.1nm(φ)×1180mm(H)のガラス製円筒形の紫外光照射反応槽(有効容積2.64L)の中央部にオゾン発生用低圧紫外線ランプ(95W、18mm(φ)×1100mm(H)、セン特殊光源社製SUV110D)を固定し、発生したオゾンガス(540mg/h)は反応漕低部から導入され、パルプスラリーとともに反応漕内をアップフローで移動する。光漂白後のパルプスラリーはストックタンク(容量30L)を経由した後、ポンプで反応槽に繰り返し送液循環できるようにした。
・パルプの白色度測定:パルプを離解した後、JIS P 8209に従って坪量60g/m2の手抄きシートを作製し、JIS P 8148に準じてパルプのISO白色度を測定した。
・裂断長の測定:パルプを離解した後、JIS P 8209に従って坪量60g/m2のシートを作製し、JIS P 8113に準じて裂断長を測定した。
・退色試験:キセノンランプウェザーメーターを用いて行った。キセノンランプから発生する紫外線を30分間サンプルに照射した後、ISO白色度(JIS P 8148)を測定した。退色試験は温度30℃、光量67W/m2で実施した。なお、表1中のΔ白色度、白色度低下率は下記のように定義される。
Δ白色度=退色試験後のISO白色度−退色試験前のISO白色度
白色度低下率=Δ白色度/退色試験前のISO白色度
・紫外光漂白実験装置:実施例で用いた実験装置を図1に示した。72.1nm(φ)×1180mm(H)のガラス製円筒形の紫外光照射反応槽(有効容積2.64L)の中央部にオゾン発生用低圧紫外線ランプ(95W、18mm(φ)×1100mm(H)、セン特殊光源社製SUV110D)を固定し、発生したオゾンガス(540mg/h)は反応漕低部から導入され、パルプスラリーとともに反応漕内をアップフローで移動する。光漂白後のパルプスラリーはストックタンク(容量30L)を経由した後、ポンプで反応槽に繰り返し送液循環できるようにした。
[実施例2]
日本製紙株式会社B工場のオゾンECF漂白法[酸処理(酸素脱リグニンパルプ濃度10重量%、pH3(硫酸添加)、温度85℃、処理時間180分)、オゾン処理(パルプ濃度10重量%、pH2.5(硫酸添加)、オゾン添加量7kg/風乾パルプ1t、温度55℃、処理時間30秒)]により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度84.9%)200g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を1%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーを図1の実験装置に注入し、撹拌しながら、温度25℃、処理時間120分で紫外光漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
日本製紙株式会社B工場のオゾンECF漂白法[酸処理(酸素脱リグニンパルプ濃度10重量%、pH3(硫酸添加)、温度85℃、処理時間180分)、オゾン処理(パルプ濃度10重量%、pH2.5(硫酸添加)、オゾン添加量7kg/風乾パルプ1t、温度55℃、処理時間30秒)]により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度84.9%)200g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を1%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーを図1の実験装置に注入し、撹拌しながら、温度25℃、処理時間120分で紫外光漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
[実施例3]
日本製紙株式会社C工場のECF漂白法(二酸化塩素処理−過酸化水素処理−二酸化塩素処理)により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度84.3%)を200g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を1%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーを図1の実験装置に注入し、撹拌しながら、温度25℃、処理時間120分で、紫外光漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
日本製紙株式会社C工場のECF漂白法(二酸化塩素処理−過酸化水素処理−二酸化塩素処理)により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度84.3%)を200g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を1%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーを図1の実験装置に注入し、撹拌しながら、温度25℃、処理時間120分で、紫外光漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
[比較例1]
日本製紙株式会社A工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度86%)を100g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を10%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーに過酸化水素を3.0kg/風乾パルプ1t添加し、温度50℃、処理時間180分で、漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
日本製紙株式会社A工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度86%)を100g(絶乾重量)採り、パルプ濃度を10%とした後、水酸化ナトリウムを用いてpH11.5に調整した。このスラリーに過酸化水素を3.0kg/風乾パルプ1t添加し、温度50℃、処理時間180分で、漂白処理を行った。処理が終了したパルプは洗浄した後、シートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
[比較例2]
市販の二酸化塩素ECF漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度89.3%)を用いてシートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
市販の二酸化塩素ECF漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度89.3%)を用いてシートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
[比較例3]
日本製紙株式会社A工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度85.6%)を用いてシートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
日本製紙株式会社A工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度85.6%)を用いてシートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
[比較例4]
日本製紙株式会社B工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度84.9%)を用いてシートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
日本製紙株式会社B工場の塩素漂白法により得られた広葉樹漂白パルプ(ISO白色度84.9%)を用いてシートを作成し白色度を測定した。退色試験には前記白色度測定後のシートを用いた。また、叩解処理後のパルプからシートを作成し、裂断長を測定した。結果を表1に示した。
表1に示されるように、漂白パルプを紫外光処理で得られた高白色度パルプ(実施例1、2、3)は退色試験による白色度低下が0.5%程度と退色性がほとんどなかった。一方、完全漂白パルプの過酸化水素漂白で得られた高白色度パルプ(比較例1)、あるいは市販の高白色度パルプ(比較例2)は白色度が約3%低下した。また、漂白パルプの紫外光処理で得られた高白色度パルプ(実施例1、2、3)の裂断長は通常の漂白パルプ(比較例3、4)と大差なく、紫外光処理による紙力低下は見られなかった。
Claims (5)
- ISO白色度が88%以上であって、下記の退色試験において白色度の低下率が1.0%以下である高白色度化学パルプ。
(JIS P 8209に従って手抄き紙を作成し、J.TAPPI No.21 紙及び板紙−退色度試験方法のB法(キセノンアークランプ式耐光性試験器による方法)に準じて30℃の環境下で、光量67W/m2のキセノンランプを30分間照射した後、ISO白色度を測定し、処理前のISO白色度との低下率を求める。) - 紫外光で処理された化学パルプであって、ISO白色度が88%以上である請求項1記載の高白色度化学パルプ。
- 請求項1ないし2記載の高白色度化学パルプを含有する紙。
- 漂白化学パルプを紫外光で処理することを特徴とする高白色度化学パルプの製造方法。
- ISO白色度が80%以上である漂白化学パルプを紫外光で処理し、ISO白色度が88%以上となるように漂白することを特徴とする高白色度化学パルプの製造方法。
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