JP2010255146A - クラフト紙 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パルプスラリーのpH調整に硫酸アルミニウムと鉱酸を使用し、ロジン系サイズ剤を内添することにより、JISP8140で規定されるコッブ吸水度(接触時間120秒)が30g/m2以下とされ、温度105℃で24時間加熱したときの白色度低下が3.5%以下であることを特徴とするクラフト紙。さらに好ましくは、硫酸アルミニウムの添加量が、絶乾パルプあたり0.5〜3.0重量%の範囲に限定する。
【選択図】なし
Description
このうち塩素漂白は元素状塩素をメインに用いる方法で、コストパフォーマンスが良好なため長らく使用されてきたが、AOx(Absorbable Organic Halogens、吸着性有機ハロゲン物質)の環境問題が発生する可能性があるため米国環境保護庁をはじめとする規制で、使用が見られなくなっている。
またTCF漂白は主にオゾン、過酸化水素、過酢酸、キレート剤等を用いた漂白シークエンスであるが、漂白に必要なエネルギー、収率の点から劣るといわれている点がある。このため現状のところ主にオゾン、二酸化塩素、過酸化水素、アルカリ等を用いたECF漂白が主流になっている。
退色性の悪化しないパルプを提供するために、パルプ中のヘキセンウロン酸の量をパルプ絶乾1kg当たり15mmol以下に限定することを提案するもの(特許文献1)、アルカリ酸素漂白と漂白工程の間で無機ペルオキシ酸及び/無機ペルオキシ酸および/またはその塩で処理するもの(特許文献2)があるが、いずれもパルプ強度が低下するおそれがある。
モノ過硫酸処理に関する出願で、退色の原因の一つが抄紙工程で使用される硫酸バンドにあると考えられるとの記載があるもの(特許文献3)もあるが、硫酸バンドの操作については具体的な記載はされてはいない。
パルプの熱退色の数値に関し、パルプ漂白後のカッパー値と加熱前後の熱退色の差異を限定しているもの(特許文献4)があるが、パルプの漂白工程に関するものであり、抄紙工程での対策を記載したものではない。
またヘキセンウロン酸を多量に含む漂白パルプを使用して製造される酸性紙で、退色を改善するため、カルボン酸化合物の重合体、それらの塩類を添加する方法が提案(特許文献7)されている。これはポリカルボン酸等の存在下では、ヘキセンウロン酸が加水分解されにくいという性質を利用したものであるが、特殊な酸が必要である。
を含むパルプスラリーを抄紙して得られるクラフト紙であって、パルプスラリーのpH調整に 硫酸バンド(硫酸アルミニウム)と鉱酸を使用し、ロジン系サイズ剤を内添することにより、JISP8140で規定されるコッブ吸水度
(接触時間120秒)が30g/m2以下とされ、温度105℃で24時間加熱したときの白色度低下が3.5%以下であることを特徴とするクラフト紙。
Penta Methylene Phosphonic Acid、DTPMP)等を含む漂白助剤を挙げることができる。また、本発明の多段漂白処理工程で使用される漂白段は、初段は二酸化塩素漂白段(D)、あるいはオゾン漂白段(Z)、あるいはオゾン漂白と二酸化塩素漂白を連続して組み合わせた漂白段(Z/D)等が好適に用いられ、二段目にはアルカリ抽出段(E)、あるいは酸素添加アルカリ抽出段(E/O)、あるいは過酸化水素添加アルカリ抽出段(E/P)、あるいは酸素、過酸化水素添加アルカリ抽出段(E/OP)が用いられ、三段目以降には、二酸化塩素、過酸化水素等の塩素を使用しない組み合わせが好適に用いられる。本発明の多段漂白処理工程で使用される各漂白段の漂白薬品添加率、処理時間、温度、パルプ濃度、pH等の漂白条件は特に限定されるものではなく、公知の条件を使用することができる。
鉱酸としては塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられるが、硫酸が操業性、コストの面から望ましい。硫酸バンドについては特に限定されるものではないが、できるだけ不純物を含まないものが好ましい。また硫酸バンド添加量は、絶乾パルプあたり0.5〜3.0質量%が好ましい。0.5質量%未満では硫酸バンドのサイズ定着効果が低く発現効果が不十分となり、3.0質量%を超えて添加すると、硫酸バンドの凝集効果が高くなり紙の地合が悪くなるうえ、紙面pHが低くなり退色性が劣るため好ましくない。
硫酸バンドと鉱酸を併用することによりクラフト紙の退色性が改善される理由は、紙中に残留しやすい硫酸バンドの絶対量が減少することで、パルプ中のヘキセンウロン酸が酸加水分解されにくく、酸加水分解に由来する退色反応が抑えられる結果、退色性が改善されているものと考えられる。このようにして得られるクラフト紙は、JISP8140で規定されるコッブ吸水度(接触時間120秒)が30g/m2以下、温度105℃で24時間加熱したときの白色度低下が3.5%以下となり、耐水性と退色性に優れている。
以下の(3)〜(6)記載の漂白のシークエンスはO−Z/E−D1−D2である。(横棒の−は洗浄段を表す。)
(1) 使用チップ
ユーカリ材グロビュラス絶乾質量500gを使用した。
(2) 蒸解方法
絶乾チップ質量当たり有効アルカリ16%、液比3.9、蒸解温度165℃、蒸解時間90分の条件下で実験用間接加熱用オートクレーブを用いてクラフト蒸解し、その後廃液とパルプを分離し、パルプを10カットのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで精選してハンター白色度32.6%、カッパー価12.5の広葉樹未晒クラフトパルプを絶乾質量で270gを得た。
(3) アルカリ酸素脱リグニン処理(O段)
前記広葉樹未晒クラフトパルプの絶乾質量100gを採取し、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを2.0%添加し、次いで水道水で希釈してパルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧力が0.8MPaとなるように純度が99%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、温度95℃で60分間加熱し、中濃度アルカリ酸素脱リグニンを行った。このときの酸素添加量は絶乾パルプ質量当たり1.5%であった。水道水を用い得られたパルプを洗浄、脱水してパルプを得た。
(4) 中濃度オゾン処理、アルカリ抽出処理(Z/E段)
続いて硫酸を用いパルプのpHを約2.8に調整した。このパルプをフラスコに入れ、ここに濃度約12重量%のオゾンガスを注入しパルプと反応させた。(オゾン添加率0.5%)。処理は60℃の恒温槽を用いて行ない、処理時間は3分で処理後のパルプは洗浄しなかった。Z段後の濃度10%のパルプに苛性ソーダを1.2%添加し、75℃で60分保持した。抽出したパルプは、水道水(1リットル)で洗浄し、パルプ濃度10%に脱水濃縮した。
(5) 二酸化塩素漂白処理(D1段)
E段後のパルプに硫酸を添加しpHを約4に調整した。このパルプに二酸化塩素を0.17%添加し、80℃で80分間二酸化塩素処理を行った。得られたパルプは、水道水(2リットル)で洗浄し、パルプ濃度10%に脱水した。
(6) 二酸化塩素漂白処理(D2段)
D1段後のパルプに硫酸を添加しpHを約4に調整した。このパルプに二酸化塩素を0.1%添加し、80℃で80分間二酸化塩素処理を行った。得られたパルプは、水道水(1リットル)で洗浄し、パルプ濃度10%に脱水した。
以上の処理により94.1g、ヘキセンウロン酸含有量が絶乾質量1kgあたり16.2mmolの完成パルプを得た後、PFIミルで叩解し400mlCSFに調整し、水道水で濃度3%に希釈した。
(1) 使用チップ
ダグラスファーとラジアータパインを重量比1:1で混合し、絶乾質量500gを使用した。
(2) 蒸解方法
絶乾チップ質量当たり有効アルカリ17.5%、液比4.8、蒸解温度175℃、蒸解時間120分の条件下で実験用間接加熱用オートクレーブを用いてクラフト蒸解し、その後廃液とパルプを分離し、パルプを10カットのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで精選してハンター白色度22.4%、カッパー価29.7の針葉樹未晒クラフトパルプを絶乾質量で223gを得た。
(3) アルカリ酸素脱リグニン処理(O段)
前記針葉樹未晒クラフトパルプの絶乾質量100gを採取し、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを2.5%添加し、次いで水道水で希釈してパルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧力が0.8MPaとなるように純度が99%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、温度95℃で60分間加熱し、中濃度アルカリ酸素脱リグニンを行った。このときの酸素添加量は絶乾パルプ質量当たり2.5%であった。
水道水を用い得られたパルプを洗浄、脱水しパルプを得た。
(4) 中濃度オゾン処理、アルカリ抽出処理(Z/E段)
続いて硫酸を用いパルプのpHを約2.8に調整した。このパルプをフラスコに入れ、ここに濃度約12重量%のオゾンガスを注入しパルプと反応させた。(オゾン添加率0.5%)。処理は60℃の恒温槽を用いて行ない、処理時間は3分で処理後のパルプは洗浄しなかった。Z段後の濃度10.3%のパルプに苛性ソーダを1.5%添加し、75℃で80分保持した。抽出したパルプは、水道水(1リットル/100g絶乾パルプ)で洗浄し、パルプ濃度10%に脱水濃縮した。
(5) 二酸化塩素漂白処理(D1段)
E段後のパルプに硫酸を添加しpHを約4に調整した。このパルプに二酸化塩素を0.22%添加し、80℃で100分間二酸化塩素処理を行った。得られたパルプは、水道水(1リットル/100g絶乾パルプ)で洗浄し、パルプ濃度10%に脱水した。
(6) 二酸化塩素漂白処理(D2段)
D1段後のパルプに硫酸を添加しpHを約4に調整した。このパルプに二酸化塩素を0.15%添加し、80℃で100分間二酸化塩素処理を行った。得られたパルプは、水道水(1リットル/100g絶乾パルプ)で洗浄し、パルプ濃度10%に脱水した。
以上の処理により92.5g、ヘキセンウロン酸含有量が絶乾質量1kgあたり3.5mmolの完成パルプを得た後、PFIミルで叩解し550mlCSFに調整し、水道水で濃度3%に希釈した。
(実施例1)
グロビュラスを用いた広葉樹クラフトパルプ60%、ダグラスファーとラジアータパインを用いた針葉樹クラフトパルプを40%の割合で配合したパルプ原料に対し、乾燥紙力増強剤(製品名 DS4348/星光PMC株式会社製)を0.15%添加した。次に水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.0になるように硫酸バンド有姿0.8%(丸住エンジニアリング株式会社製、酸化アルミニウム換算で8%)と硫酸0.24%を加え、希釈を行なった。これにロジン系エマルション内添サイズ剤(製品名 AL1203/星光PMC株式会社製)0.2%添加し、坪量64g/m2でシートを手抄した。
シートを4.4kgf/cm2 の圧力で2分間プレスし、表面温度85℃に加熱した回転ドライヤーで90秒間乾燥を行い、手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸の添加率を0.18%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが5.0になるように硫酸の添加率を0.12%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿0.6%、硫酸の添加率を0.19%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿1.0%、硫酸の添加率を0.17%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿2.7%、硫酸の添加率を0.12%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
グロビュラスを用いた広葉樹クラフトパルプを100%配合したパルプ原料を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.0になるように硫酸バンドの添加率を有姿0.4%、硫酸の添加率を0.26%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿0.4%、硫酸の添加率を0.20%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが5.0になるように硫酸バンドの添加率を有姿0.4%、硫酸の添加率を0.13%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが6.0になるように硫酸バンドの添加率を有姿0.8%、硫酸の添加率を0%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿3.1%、硫酸の添加率を0.10%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿6.0%、硫酸の添加率を0.06%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
水道水で0.4%に希釈したときのスラリーのpHが4.5になるように硫酸バンドの添加率を有姿8.0%、硫酸の添加率を0%にした以外は、実施例1と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
グロビュラスを用いた広葉樹クラフトパルプ100%配合したパルプ原料を用いた以外は、比較例7と同じ操作を行ない手抄シートを作製した。
(ヘキセンウロン酸の測定方法)
手抄シートのサンプル1BDgをミキサーで粉砕後、フラスコに入れ、これに緩衝液として蟻酸と蟻酸ナトリウム溶液を重量比50対50に混合したものを100ml加え、湯浴(90℃)で5時間抽出する。その後No.2ろ紙で繊維分を除去し、温水200mlで洗浄し、純水で液量を500mlにした溶液の吸光度を245nmで測定・定量した。
(抄造時pHの測定方法)
手抄シート作成前のパルプスラリー濃度0.4%の状態でガラス電極式pH計を用い測定した。
(紙面pHの測定方法)
JAPAN TAPPI No.49−1:2000に準じて手抄シートを純水で濡らせて、余剰な水を拭き取った後、ガラス電極式pH計で測定した。
(退色の条件)
手抄シートを市販の熱風乾燥機の中に入れ、105℃で24時間の条件で退色試験を行なった。
(白色度の測定方法)
退色前:JISP8148に準じて手抄シートの白色度を測定した。
退色後:退色試験後の紙をJISP8148に準じて手抄シートの白色度を測定した。
(退色性の評価)
退色後の手抄シートを5人で官能評価し、○良い、×悪い、 の2段階で退色性を評価した。
(紙のb*値の測定方法)
白色度測定と同じタイミングでの測定に用いた手抄シートをJISP8150に準じて手抄シートのb*値を測定した。
(吸水度の測定方法)
JISP8140:1998に準じ手抄シートのコッブ法による吸水度を測定した。吸取りを開始するまでの時間は120秒とした。
(PC値の算出)
退色前後の手抄シートの白色度から下記の式に従いPC(ポストカラー)値を算出した。
実施例1〜7、比較例1〜8で作製した手抄シートを風乾後、シートのヘキセンウロン酸測定、紙面pH測定、退色試験前後の白色度測定・色度測定、コッブ吸水度測定を行なった。その結果を表1および表2に示す。
Claims (3)
- 元素状の塩素を使用しないECF漂白のクラフトパルプを含むパルプスラリーを抄紙して得られるクラフト紙であって、パルプスラリーのpH調整に硫酸バンド(硫酸アルミニウム)と鉱酸を使用し、ロジン系サイズ剤を内添することにより、JISP8140で規定されるコッブ吸水度(接触時間120秒)が30g/m2以下とされ、温度105℃で24時間加熱したときの白色度低下が3.5%以下であることを特徴とするクラフト紙。
- 硫酸バンドの添加量が、絶乾パルプあたり0.5〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のクラフト紙。
- 紙面pHが4.7〜6.0であることを特徴とする請求項1または2記載のクラフト紙。
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