以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ15は、図1に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と称する)1の上面2側の内部に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置Mに使用されるものである。この助手席用エアバッグ装置Mは、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持するケース6と、エアバッグ15をケース6に取り付けるためのリテーナ11と、折り畳まれたエアバッグ15を覆うエアバッグカバー10と、を備えて構成されている。
なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、車両の直進状態における車両の上下、前後、及び、左右の方向に一致するものである。
エアバッグカバー10は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後2枚の扉部10a・10bをエアバッグ15に押されて開くように構成されている。また、エアバッグカバー10の扉部10a・10bの周囲には、ケース6に連結される連結壁部10cが形成されている。
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース6に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
ケース6は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部6aと、底壁部6aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー10の連結壁部10cを係止する周壁部6bと、を備えて構成されている。ケース6には、底壁部6aの部位に、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
なお、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配設される円環状のリテーナ11の複数のボルト11aが、エアバッグ15、インフレーター8のフランジ部8c、及び、ケース底壁部6a、を貫通して、ナット12止めされることにより、ケース6に取り付けられている。
エアバッグ15は、図2〜5に示すように、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされて、膨張完了時に上面側となる上側壁部15aと、下面側となる下側壁部15bと、左右側面側となる左側・右側壁部15c・15dと、後面側となる後側壁部15eと、を備えて構成されている。そして、実施形態のエアバッグ15は、膨張完了時に乗員側となる後部側に配設される乗員保護部27と、膨張完了時に乗員保護部27の前方側であってインパネ1とウィンドシールド4との間に配設される前端側を閉塞された略筒状の車体側部16と、を備えて構成されており、膨張完了時のエアバッグ15における下側壁部15bの前端側となる車体側部16の左右方向の中央付近となる部位に、膨張用ガスを流入させるように円形に開口されて、周縁19をケース6に取り付けるガス流入口20を、配設させて構成されている。ガス流入口20の周縁19には、リテーナ11のボルト11aを挿通させて、流入口周縁19を、ケース6の底壁部6aに取り付けるための複数の取付孔21が、形成されている。
乗員保護部27は、左右両側に並設されて上下方向に延びるように後方側へ突出する突出部としての肩拘束部28(28L・28R)と、左右の肩拘束部28L・28R間で上部から後部にかけて凹む凹部29と、を備えて構成されている。そして、実施形態の場合、左右の肩拘束部28L・28Rの隆起した状態と、凹部29の凹んだ状態と、は、エアバッグ15の後側壁部15eから上側・下側壁部15a・15bの領域内となる前方側に延びるように、車体側部16のガス流入口20近傍となる部位にかけて連続的に延設されて、後述する第1基布32の下側パネル部33の部位で、凹凸状態が収まって平面状となっている(図2参照)。
実施形態の場合、エアバッグ15は、図6に示すように、1枚の第1基布32と2枚の第2基布36L・36Rとから構成されている。第1基布32は、開いた蝶の形状に近似した左右対称形として、車体側部16におけるガス流入口20の周縁19を構成する略長方形状の下側パネル部33と、下側パネル部33から左右両側に延びるように配設される略三角板形状の外側パネル部34L・34Rと、を備える構成とされている。各外側パネル部34L・34Rは、膨張を完了させたエアバッグ15の左側・右側壁部15c・15dを、主に構成することとなる。また、各外側パネル部34L・34Rにおける外周縁34a近傍となる部位が、各肩拘束部28における突出頂部28aより左右方向の端部側に配設される外側壁部28bを構成することとなる。実施形態の場合、外側パネル部34L・34Rは、ガス流入口20の中心を通る線を中心線として線対称形に、形成されている。
2枚の第2基布36L・36Rは、略C字形状に湾曲した帯状(平板状)とされて、それぞれ、左右対称形状とされている。実施形態の場合、各第2基布36L・37Rは、膨張完了時のエアバッグ15において、上側・後側壁部15a・15eと、下側壁部15bの後部側の部位と、を、構成することとなる。また、各第2基布36L・36Rは、各肩拘束部28の突出頂部28aより左右方向の中央側に配設される内側部位28cを構成することとなる。実施形態の場合、各第2基布36L・36Rは、外側縁部36d側の形状を、第1基布32における外側パネル部34L・34Rの周縁部34aにおける元部側縁部34bを除いた部位の形状と略同一とするように、形成されている。そして、第2基布36の内周側に形成される内側縁部36aが、凹部29のエアバッグ15内へ凹んだ先端29aを構成するとともに、左右の肩拘束部28L・28Rを連通する連通部分としての連通孔23の周縁を構成することとなる。なお、第1・第2基布32・36L・36Rは、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されて、シリコン等のコーティング材を塗布しないノンコート布として、構成されている。
乗員保護部27における各肩拘束部28L・28R及び凹部29は、第1基布32の外側パネル部34L・34Rと、第2基布36L・36Rと、の周縁相互を縫合させて構成されている。実施形態の場合、第1基布32の周縁34aと第2基布36の外側縁部36dとを縫着させて構成される縫合部位30付近が、各肩拘束部28L・28Rの突出頂部28aを構成することとなる。そして、第2基布36L・36Rの内側縁部36a・36a相互を縫着させて構成される縫合部位31付近が、凹部29の先端29aを、構成することとなる。
そして、乗員保護部27の凹部先端29aにおけるエアバッグ15の内周側には、肩拘束部28L・28Rを左右方向で連通する連通部分(連通孔)23が、配設されている。この連通孔23は、周縁を、第2基布36L・36Rの内側縁部36a・36a相互を縫着させて構成される縫合部位31(凹部29の先端29a)と、第1基布32における下側パネル部33と、から構成されるもので、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ15における乗員保護部27の下部側から車体側部16の下部側にかけて配設されている。そして、この連通孔23は、エアバッグ15の膨張完了時において、開口面を、左右方向の略中央において前後方向に略沿うように配設されており、図4に示すごとく、膨張完了時のエアバッグ15におけるガス流入口20の略中央を通る前後方向に沿った断面でのその開口面積S1が、膨張完了時の側方側から見たエアバッグ15全体の投影面積S2の1/5以上に、設定されている。実施形態の場合、連通孔23の開口面積S1は、膨張完了時のエアバッグ15の投影面積S2の略1/2に設定されている。また、エアバッグ15における左側・右側壁部15c・15dには、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール24が、それぞれ、配設されている。なお、乗員の頭部をソフトに保護するためには、連通孔23の開口面積S1は、膨張完了時のエアバッグ15の投影面積S2の4/5未満に設定することが、望ましい。連通孔23の開口面積S1が、膨張完了時のエアバッグ15の投影面積S2の4/5以上となると、肩拘束部28L・28Rの突出量(凹部29の凹み量)が相対的に小さくなって、乗員の頭部をソフトに保護できない虞れがあるためである。
次に、実施形態のエアバッグ15の製造について説明する。まず、第2基布36L・36Rを相互に重ね、内側縁部36aを縫合糸を利用して縫着させる。次いで、第2基布36L・36Rを、内側縁部36aの縫い代が露出しないように反転させ、第1基布32における下側パネル部33の前側縁部33aと、直列的に配置させた各第2基布36の前側縁部36bと、を、縫着させ、第1基布32における下側パネル部33の後側縁部33bと、直列的に配置させた各第2基布36の後側縁部36cと、を縫着させる。そして、下側パネル部33における前後の左側・右側縁部33c・33dを、それぞれ、近傍の各外側パネル部34L・34Rの周縁部34aにおける元部側縁部34bに縫着させる。その後、第1基布32における各外側パネル部34L・34Rの周縁部34aと、対応する各第2基布36L・36Rの外側縁部36dとを縫着させ、縁部の縫い代を外部に露出させないように、ガス流入口20を利用して反転させれば、エアバッグ15を製造することができる。そして、実施形態のエアバッグ15では、第2基布36L・36Rが左右対称形とされるとともに、第2基布36L・36Rが、外側縁部36d側の形状を、第1基布32における外側パネル部34L・34Rの周縁部34aにおける元部側縁部34bを除いた部位の形状と略同一とするように、形成されていることから、縫合作業時に、基布36・32相互を重ねるように配置させれば、縫着させる縁部相互の位置を一致させることができて、縫合作業が容易となる。
その後、各取付孔21からボルト11aを突出させるようにして、内部にリテーナ11を配設させた状態で、エアバッグ15を折り畳み、さらに、折り崩れしないように、折り畳んだエアバッグ15の周囲を、破断可能なラッピングシート14(図1参照)によりくるむ。そして、各ボルト11aをケース底壁部6aに挿通させつつ、折り畳んだエアバッグ15を、ケース6の底壁部6aに載置させる。次いで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部6aの下方から、ケース6内に挿入させるとともに、底壁部6aから下方に突出している各ボルト11aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト11aにナット12を締結させれば、ケース6の底壁部6aに対して、折り畳んだエアバッグ15とインフレーター8とを取り付けることができる。
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー10の連結壁部10cに、ケース6の周壁部6bを係止させ、ケース6の図示しない所定のブラケットを、ボディ側の部位に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、膨張してラッピングシート14を破断するとともに、エアバッグカバー10の扉部10a・10bを図1の二点鎖線に示すように押して開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー10の扉部10a・10bが開いて形成された開口から、上方へ突出するとともに、インパネ上面2とインパネ1の上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張して、図1の二点鎖線、及び、図7〜9に示すごとく、膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態の助手席用エアバッグ15では、ガス流入口20側における左右の突出部としての肩拘束部28L・28Rを左右方向で連通させる連通部分としての連通孔23が、膨張完了時のエアバッグ15におけるガス流入口20の中央を通る前後方向に沿った断面での開口面積S1を、膨張完了時の側方側から見たエアバッグ15全体の投影面積S2の1/5以上(実施形態の場合、略1/2)に、大きく設定させていることから、連通孔23を膨張用ガスが通過して、一方の肩拘束部28が偏って膨張することが抑えられ、左右両側の肩拘束部28L・28Rを略均等にバランスよく膨張させることができる。ちなみに、連通孔23の開口面積S1が、エアバッグ15全体の投影面積S2の1/5未満であると、エアバッグ15の膨張時、一方の肩拘束部28だけが偏って膨張する虞れが生ずる。
従って、実施形態の助手席用エアバッグ15では、乗員保護部27を構成する2つの突出部としての肩拘束部28L・28Rを均等に膨張させることができて、接近してくる乗員を的確に保護することができる。
また、実施形態のエアバッグ15では、乗員保護部27が、左右の肩拘束部28L・28Rの間に凹部29を配設させていることから、膨張完了時のエアバッグ15に乗員MPが干渉した際に、後方に突出するように配設されている左右の肩拘束部28L・28Rが、まず、乗員MPの左右の肩部MS付近と干渉することとなる(図8・9参照)。その後、両肩MSを肩拘束部28L・28Rにより拘束された乗員MPの頭部MHが、肩拘束部28L・28R間の凹部29に侵入しつつ、前方側への移動を抑えるように、拘束されることとなる。そのため、乗員MPの頭部MHを、エアバッグ15からの反力を抑えて、ソフトに受け止めることができる。また、実施形態のエアバッグ15では、凹部29を構成することとなる連通孔23が、開口面積S1を、膨張完了時の側方側から見たエアバッグ15全体の投影面積S2の1/5以上(実施形態の場合、略1/2)に、大きく設定させていることから、乗員保護部27における凹部29を構成する部位のクッション性も良好である。そのため、仮に、乗員MPの頭部MHが、乗員保護部27における凹部29を構成する部位と干渉することとなっても、乗員MPの頭部MHを、乗員保護部27における凹部29を構成する部位により、的確に保護することができる。さらに、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時において、凹部29が、図7に示すごとく、各肩拘束部28L・28R間の上部から後部にかけて配設されていることから、乗員MPの体格や着座姿勢により、膨張したエアバッグ15に干渉する乗員MPの頭部MHの位置が上下方向に移動しても、乗員MPの頭部MHを、エアバッグ15からの反力を抑えて、ソフトに受け止めることができる。
さらに、実施形態のエアバッグ15では、凹部29を、肩拘束部28L・28Rの内側壁部28cを構成する第2基布36L・36Rの周縁を縫合した縫合部位31により、構成している。そのため、この縫合部位31の長さ寸法(各第2基布36L・36Rにおける内側縁部36aの長さ寸法、換言すれば、内側縁部36aの略内径寸法ともいえる)を変更することにより、左右の肩拘束部28L・28Rの間の凹部29の形状を深く、あるいは、浅くすることができ、同時に、左右の肩拘束部28L・28Rを連通させる連通孔23の開口面積も変更することができる。すなわち、エアバッグ15の外形形状を変更しなくとも、左右の肩拘束部28L・28Rの間の凹部29の形状を、容易に変更することができる。
また、エアバッグ40として、図10〜12に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ40は、前述のエアバッグ15と同様に、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされて、膨張完了時に上面側となる上側壁部40aと、下面側となる下側壁部40bと、左右側面側となる左側・右側壁部40c・40dと、後面側となる後側壁部40eと、を備えて構成されている。そして、実施形態のエアバッグ40は、前述のエアバッグ15と同様に、膨張完了時に乗員側となる後部側に配設される乗員保護部49と、膨張完了時に乗員保護部49の前部側であってインパネ1とウィンドシールド4との間に配設される車体側部41と、を備える構成とされており、膨張完了時のエアバッグ40における下側壁部40bの前端側となる車体側部41の左右方向の中央付近となる部位に、膨張用ガスを流入させるガス流入口43を、有した構成とされている。ガス流入口43の周縁には、前述のエアバッグ15と同様に、複数の取付孔44が、形成されている。また、実施形態のエアバッグ40には、図12に示すごとく、膨張完了時の形状を規制するテザー57が、配設されている。
乗員保護部49は、左右両側に並設されて上下方向に延びるように後方側へ突出する肩拘束部50(50L・50R)と、左右の肩拘束部50L・50R間で上部から後部にかけて凹む凹部52と、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ40の膨張完了時において、肩拘束部50L・50Rは、下端側の後面側を略平面状とするように連結されて、車両後方側から見て略V字形状に、形成されている(図14参照)。そして、実施形態の場合、左右の肩拘束部50L・50Rの隆起した状態と凹部52の凹んだ状態と、は、エアバッグ40の後側壁部40eから上側壁部40aの領域内となる前方側に延びるように、車体側部41のガス流入口43近傍となる部位にかけて連続的に延設されている。
実施形態のエアバッグ40は、図13に示すように、2枚の第1基布59L・59Rと、1枚の第2基布64と、帯状の2枚のテザー用基布66と、から構成されている。各第1基布59L・59Rは、それぞれ、上部側パネル部60L・60Rと後部側パネル部61L・61Rとを備える構成とされている。各上部側パネル部60L・60Rは、膨張を完了させたエアバッグ40の上側壁部40aと、左側・右側壁部40c・40dの上部側となる部位と、を主に構成している。各後部側パネル部61L・61Rは、膨張を完了させたエアバッグ40の後側壁部40eを、主に構成している。各第1基布59L・59Rは、上部側パネル部60と後部側パネル部61とを、膨張完了時における上端付近となる位置で連結させた長尺状とされ、それぞれ、左右対称形とされている。第2基布64は、膨張を完了させたエアバッグの下側壁部40bと、左側・右側壁部40c・40dの下部側となる部位と、を構成するもので、前端付近にガス流入口43を備えた略六角形状とされている。なお、第1・第2基布59L・59R・64及びテザー用基布66は、前述のエアバッグ15と同様に、ポリエステルやポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されて、シリコン等のコーティング材を塗布しないノンコート布として、構成されている。
そして、乗員保護部49における凹部52の下方となるエアバッグ40の内周側には、肩拘束部50L・50Rを左右方向で連通する連通部分(連通孔)46が、配設されている。この連通孔46は、開口面の周縁を、各第1基布59L・59Rの上部側パネル部60L・60Rと後部側パネル部61L・61Rとの左右で対応する部位相互を縫着させて構成される縫合部位と、第2基布64と、から、構成されている。実施形態の場合、連通孔46は、開口面における前部側の上側周縁46aが、第1基布59L・59Rにおける上部側パネル部60L・60Rの下部側内周縁60b相互を縫合させて形成される縫合部位54により、構成され、開口面における後部側の上側周縁46bが、第1基布59L・59Rにおける後部側パネル部61L・61Rの下部側内周縁部61b相互を縫合させて構成される縫合部位55により、構成されており、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ40における乗員保護部49の下部側から車体側部41の下部側にかけて、配設されている。そして、この連通孔46は、エアバッグ40の膨張完了時において、開口面を、左右方向の略中央において前後方向に略沿うように配設されており、前述のエアバッグ15と同様に、図12に示すごとく、膨張完了時のエアバッグ40におけるガス流入口43の略中央を通る前後方向に沿った断面でのその開口面積S3が、膨張完了時の側方側から見たエアバッグ40全体の投影面積S4の1/5以上に、設定されている。実施形態の場合、連通孔46の開口面積S3は、膨張完了時のエアバッグ40の投影面積S4の略1/2に設定されている。勿論、実施形態のエアバッグ40においても、乗員の頭部をソフトに保護する見地から、連通孔46の開口面積S3を、膨張完了時のエアバッグ40の投影面積S4の4/5未満に設定することが、望ましい。
また、エアバッグ40の左側・右側壁部40c・40dには、ベントホール47・47が、形成されている。そして、膨張完了時のエアバッグ40内に配設されるテザー57は、実施形態の場合、略帯状とされて、一端側をエアバッグ40における下側壁部40bの前後左右の略中央付近となる位置に結合され、他端側を凹部52のエアバッグ40の内周側における上端側近傍に結合されるようにして、前後方向に略沿うように、膨張完了時のエアバッグ40内に配設されている。
次に、実施形態のエアバッグ40の製造について説明する。まず、第1基布59L・59Rを相互に重ね、後部側パネル部61L・61Rの下部側内周縁部61b相互を、縫合糸を利用して縫着させる。同時に、一方のテザー用基布66の一端も、下部側内周縁部61bの上端近傍となる位置に、縫着させる。なお、他方のテザー用基布66は、一端を、第2基布64の中央付近に、縫合糸を利用して縫着させておく。次いで、第1基布59L・59Rにおける上部側パネル部60L・60Rの下部側内周縁部60b相互を、縫合糸を利用して縫着させる。その後、重ねられていた第1基布59L・59Rを、外周縁相互を反すように開き、上部側パネル部60と後部側パネル部61との連結部位付近で、上部側パネル部60と後部側パネル部61とを重ねるように、折り返す。そして、後部側パネル部61L・61Rの上部側内周縁部61aと、上部側パネル部60L・60Rの上部側内周縁部60aと、を、それぞれ、縫合糸を利用して縫着させる。また、上部側パネル部60L・60Rの左右両縁側に形成される上部側外周縁部60cと、隣接した後部側パネル部61L・61Rの左右両縁側に形成される上部側外周縁部61cと、を、それぞれ、縫合糸を利用して縫着させる。
その後、第1基布59L・59Rを、縫合していない残部周縁60d・60e・61dを相互に離隔させるように開き、第1基布59L・59R上に第2基布64を重ねる。なお、この残部周縁60d・60e・61dを開いた第1基布59L・59Rの形状は、第2基布64の展開形状と一致している。次いで、第1基布59L・59Rにおける後部側パネル部61L・61Rの下部側外周縁部61d・61dを、第2基布64の後縁部64aに、縫合糸を利用して縫着させ、第1基布59L・59Rにおける上部側パネル部60・60の下部側外周縁部60d・60dを、それぞれ、第2基布64の左・右縁部64b・64cに、縫合糸を利用して縫着させる。その後、第1基布59L・59Rの上部側パネル部60L・60Rにおける前縁部60e・60eと、第2基布64の前縁部64dと、を、縫合糸を利用して縫着させ、第1基布59L・59Rと第2基布64とを、ガス流入口43を利用して、縁部の縫い代が外部に露出しないように反転させる。そして、ガス流入口43からテザー用基布66・66の他端側を引き出して、縁部相互を縫着させれば、エアバッグ40を製造することができる。
上記構成のエアバッグ40においても、車両搭載時の展開膨張時には、前述のエアバッグ15と同様に、肩拘束部50L・50Rを左右方向で連通させる連通孔46が、開口面積S3を、膨張完了時のエアバッグ40の投影面積S4の1/5以上(実施形態の場合、略1/2)に、大きく設定させていることから、左右両側の肩拘束部50L・50Rを略均等にバランスよく膨張させることができて、接近してくる乗員を的確に保護することができる。
また、上記構成のエアバッグ40においても、乗員保護部49が、左右の肩拘束部50L・50Rの間に凹部52を配設させていることから、膨張完了時のエアバッグ40に乗員MPが干渉した際に、後方に突出するように配設されている左右の肩拘束部50L・50Rが、まず、乗員MPの左右の肩部MS付近と干渉することとなる(図15参照)。その後、両肩MSを肩拘束部50L・50Rにより拘束された乗員MPの頭部MHが、肩拘束部50L・50R間の凹部52に侵入しつつ、前方側への移動を抑えるように、拘束されることとなる。そのため、乗員MPの頭部MHを、エアバッグ40からの反力を抑えて、ソフトに受け止めることができる。また、実施形態のエアバッグ40においても、凹部52を構成する(凹部52の下部側に位置する)連通孔46が、開口面積S3を、膨張完了時のエアバッグ40の投影面積S4の1/5以上(実施形態の場合、略1/2)に、設定させていることから、乗員保護部49における凹部52の下部側に配設される部位のクッション性も良好である。そのため、仮に、乗員MPの頭部MHが、移動して、乗員保護部49における凹部52の下部側に配設される部位と干渉することとなっても、乗員MPの頭部MHを、この凹部52の下部側の部位により、的確に保護することができる。さらに、実施形態のエアバッグ40においても、膨張完了時において、肩拘束部50L・50R間の凹部52が、乗員保護部49の上端側から、上下方向に略沿って連続して配設されることとなる(図14参照)。そのため、乗員MPの体格や着座姿勢により、膨張したエアバッグ40に干渉する乗員MPの頭部MHの位置が上下方向に移動しても、乗員MPの頭部MHを、この凹部52に侵入させるようにして拘束することができ、エアバッグ40からの反力を抑えて、ソフトに受け止めることができる。
さらに、実施形態のエアバッグ40においても、乗員保護部49における連通孔46が、開口面の周縁(上側周縁46a・46b)を、第1基布59・59の周縁を縫合した縫合部位54・55により、構成されている。そのため、これらの縫合部位54・55の長さ寸法(第1基布59における上部側・後部側パネル部60・61の内周縁部の上部側部位60a・61aと下部側部位60b・61bとの長さ寸法の比や、長さ寸法自体、換言すれば、下部側部位60b・61bの凹み程度)を変更することにより、左右の肩拘束部50L・50Rを連通させる連通孔46の開口面積を容易に変更することができる。その結果、左右の肩拘束部50L・50Rの間の凹部52の形状を深く、あるいは、浅く設定することができて、エアバッグ40の外形形状を変更しなくとも、左右の肩拘束部50L・50Rの間の凹部52の形状を、容易に変更することができる。
さらに、エアバッグ69として、図16〜18に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ69は、前述のエアバッグ15・40と同様に、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされて、膨張完了時に上面側となる上側壁部69aと、下面側となる下側壁部69bと、左右側面側となる左側・右側壁部69c・69dと、後面側となる後側壁部69eと、を備えて構成されている。そして、エアバッグ69は、前述のエアバッグ15・40と同様に、膨張完了時に乗員側となる後部側に配設される乗員保護部77と、膨張完了時に乗員保護部77の前部側であってインパネ1とウィンドシールド4との間に配設される車体側部70と、を備える構成とされており、膨張完了時のエアバッグ69における下側壁部69bの前端側となる車体側部70の左右方向の中央付近となる部位に、膨張用ガスを流入させるガス流入口72を、有した構成とされている。ガス流入口72の周縁には、前述のエアバッグ15・40と同様に、複数の取付孔73が、形成されている。また、実施形態のエアバッグ69にも、前述のエアバッグ40と同様に、図18に示すごとく、膨張完了時の形状を規制するテザー84が、配設されている。
乗員保護部77は、前述のエアバッグ40における乗員保護部49と同様に、2つの肩拘束部78L・78Rと、肩拘束部78L・78R間の凹部80と、を備えて構成されている。実施形態の場合、肩拘束部78L・78Rは、前述のエアバッグ40と同様に、下端側の後面側を略平面状とするように連結されて、車両後方側から見て略V字形状に、形成されている。そして、実施形態の乗員保護部77においても、左右の肩拘束部78L・78Rの隆起した状態と凹部80の凹んだ状態とは、エアバッグ69の後側壁部69eから上側壁部69aの領域内となる前方側に延びるように、車体側部70のガス流入口72近傍となる部位にかけて、連続的に延設されている。
実施形態のエアバッグ69は、図19に示すように、1枚の第1基布86と、2枚の第2基布89L・89Rと、帯状の2枚のテザー用基布90・90と、から構成されている。第1基布86は、上部側パネル部87と下部側パネル部88とを備える構成とされている。上部側パネル部87は、膨張を完了させたエアバッグ69の上側壁部69aと、左側・右側壁部69c・69dの上部側となる部位と、を主に構成するもので、ガス流入口72側を狭幅とした略扇形状に形成されている。また、上部側パネル部87は、膨張完了時における上端側であって後縁側となる上縁部87cを、左右両端側を後方側に突出させるように、湾曲させた形状とされている。下部側パネル部88は、膨張を完了させたエアバッグ69の下側壁部69bと、左側・右側壁部69c・69dの下部側となる部位と、を主に構成するもので、ガス流入口72側となる前端側を狭幅とした略扇形状に形成されている。そして、第1基布86は、上部側パネル部87と乗員側パネル部88とを、膨張完了時における前端付近で連結させた形状とされている。第2基布89L・89Rは、膨張を完了させたエアバッグ69の後側壁部69eを構成するもので、上縁部89b側において左右方向の中心を上方に突出させ、内側縁部89a側を凹ませるように、湾曲させた形状とされて、それぞれ、左右対称形に、形成されている。なお、第1・第2基布86・89L・89R及びテザー用基布90は、前述のエアバッグ15・40と同様に、ポリエステルやポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されて、シリコン等のコーティング材を塗布しないノンコート布として、構成されている。
そして、乗員保護部77における凹部80の下方となるエアバッグ69の内周側には、肩拘束部78L・78Rを左右方向で連通する連通部分(連通孔)74が、配設されている。この連通孔74は、開口面の上側周縁が、第1基布86における上部側パネル部87の部位と、第2基布89L・89Rの内周縁部89a相互を縫合させて形成される縫合部位82と、から、構成され、開口面の下側周縁が、下部側パネル部88から構成されるもので、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ69における乗員保護部77の下部側前端から車体側部70にかけて、配設されている。そして、この連通孔74は、エアバッグ69の膨張完了時において、開口面を、左右方向の略中央において前後方向に略沿うように配設されており、前述のエアバッグ15・40と同様に、図18に示すごとく、膨張完了時のエアバッグ69におけるガス流入口72の略中央を通る前後方向に沿った断面でのその開口面積S5を、膨張完了時の側方側から見たエアバッグ69全体の投影面積S6の1/5以上に、設定されている。実施形態の場合、連通孔74の開口面積S5は、膨張完了時のエアバッグ69の投影面積S6の略1/2に設定されている。勿論、実施形態のエアバッグ69においても、乗員の頭部をソフトに保護する見地から、連通孔74の開口面積S5を、膨張完了時のエアバッグ69の投影面積S6の4/5未満に設定することが、望ましい。
また、エアバッグ69の左側・右側壁部69c・69dには、ベントホール75・75が、形成されている。さらに、膨張完了時のエアバッグ69内に配設されるテザー84は、実施形態の場合、略帯状とされて、一端側を後側壁部69eにおける左右方向の略中央付近の上端近傍となる部位に結合され、他端側を下側壁部40bの前後左右の略中央付近となる位置に結合されるようにして、前後方向に略沿うように、膨張完了時のエアバッグ69内に配設されている。
次に、実施形態のエアバッグ69の製造について説明する。まず、第2基布89L・89Rを相互に重ね、内周縁部89a・89aを、縫合糸を利用して縫着させる。同時に、一方のテザー用基布90の一端も、内周縁部89aの上端近傍となる位置に、縫着させる。なお、他方のテザー用基布90は、一端を、第1基布86における下部側パネル部88の中央付近に、縫合糸を利用して縫着させておく。次いで、第1基布86を、膨張完了時における前端付近で折り返し、隣接する上部・下部側パネル部87・88の左側縁部87a・88a相互と、右側縁部87b・88b相互と、を、それぞれ、縫合糸を利用して縫着させる。その後、第1基布86を、縫合していない残部周縁87c・88cを相互に離隔させるように開き、第1基布86上に、第2基布89L・89Rを、外周縁相互を離すように開いた状態で重ねる。なお、この残部周縁87c・88cを開いた第1基布86の形状は、第2基布89L・89Rを開いて展開させた形状と一致している。次いで、第1基布86における上部側パネル部87の上縁部87cを、第2基布89L・89Rの上縁部89b・89bに、縫合糸を利用して縫着させる。その後、第1基布86における下部側パネル部88の後縁部88cを、第2基布89L・89Rの下縁部89c・89cに、縫合糸を利用して縫着させ、第1基布86と第2基布89L・89Rとを、ガス流入口72を利用して、縁部の縫い代が外部に露出しないように反転させる。そして、ガス流入口72からテザー用基布90・90の他端側を引き出して、縁部相互を縫着させれば、エアバッグ69を製造することができる。
上記構成のエアバッグ69においても、車両搭載時の展開膨張時には、前述のエアバッグ15・40と同様に、肩拘束部78L・78Rを左右方向で連通させる連通孔74が、開口面積S5を、膨張完了時のエアバッグ69の投影面積S6の1/5以上(実施形態の場合、略1/2)に、大きく設定させていることから、左右両側の肩拘束部78L・78Rを略均等にバランスよく膨張させることができて、接近してくる乗員を的確に保護することができる。
また、上記構成のエアバッグ69においても、乗員保護部77が、左右の肩拘束部78L・78Rの間に凹部80を配設させていることから、膨張完了時のエアバッグ69に乗員MPが干渉した際に、後方に突出するように配設されている左右の肩拘束部78L・78Rが、まず、乗員MPの左右の肩部MS付近と干渉することとなる(図21参照)。その後、両肩MSを肩拘束部78L・78Rにより拘束された乗員MPの頭部MHが、肩拘束部78L・78R間の凹部80に侵入しつつ、前方側への移動を抑えるように、拘束されることとなる。そのため、乗員MPの頭部MHを、エアバッグ69からの反力を抑えて、ソフトに受け止めることができる。また、実施形態のエアバッグ69においても、凹部80を構成する(凹部80の下部側に位置する)連通孔74が、開口面積S5を、膨張完了時のエアバッグ69の投影面積S6の1/5以上(実施形態の場合、略1/2)に、設定させていることから、乗員保護部77における凹部80の下部側に配設される部位のクッション性も良好である。そのため、仮に、乗員MPの頭部MHが、移動して、乗員保護部77における凹部80の下部側に配設される部位と干渉することとなっても、乗員MPの頭部MHを、この凹部80の下部側の部位により、的確に保護することができる。さらに、実施形態のエアバッグ69においても、膨張完了時において、肩拘束部78L・78R間の凹部80が、乗員保護部77の上端側から、上下方向に略沿って連続して配設されることとなる(図22参照)。そのため、乗員MPの体格や着座姿勢により、膨張したエアバッグ69に干渉する乗員MPの頭部MHの位置が上下方向に移動しても、乗員MPの頭部MHを、この凹部80に侵入させるようにして拘束することができ、エアバッグ69からの反力を抑えて、ソフトに受け止めることができる。
さらに、実施形態のエアバッグ69においても、乗員保護部77における連通孔74は、開口面の上側周縁における後縁74a側が、第2基布89L・89Rの周縁を縫合した縫合部位82により、構成されている。そのため、この縫合部位82の長さ寸法(各第2基布89L・89Rにおける内周縁部89aの長さ寸法)を変更することにより、左右の肩拘束部78L・78Rを連通させる連通孔74の開口面積を容易に変更することができる。その結果、左右の肩拘束部78L・78Rの間の凹部80の形状を深く、あるいは、浅く設定することができで、エアバッグ69の外形形状を変更しなくとも、左右の肩拘束部78L・78Rの間の凹部80の形状を、容易に変更することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、第2基布89L・89Rを一体として、1枚の基布から構成してもよい。