本発明は、貼り付け型フィルムアンテナに関するものであり、特に、車両のフロントウィンドウガラスに貼り付けるフィルムアンテナの技術分野に属する。
従来より、ベースフィルムにアンテナ素子を配設したフィルムアンテナであって、車両のフロントウィンドウガラスに貼り付けることによって車両に取り付けられる貼り付け型フィルムアンテナが知られている。
例えば、特許文献1においては、図6に示すように、1枚のベースフィルムに矩形ループ形状の第1アンテナbと、該第1アンテナ側に開口するコ字形状の第2アンテナcとを並設し、この第2アンテナの下側水平アンテナ素子c3が第1アンテナの下辺アンテナ素子b4に対して所定間隔Dbを有し且つ該下辺アンテナ素子b4に沿って延びている貼り付け型フィルムアンテナAが開示されている。この特許文献1に開示された貼り付け型フィルムアンテナAは、矩形ループ形状の第1アンテナbが比較的高い周波数の信号を主に受信すると共に、コ字形状の第2アンテナcが比較的低い周波数の信号を主に受信して、1枚の貼り付け型フィルムアンテナAで広い周波数帯域の信号を受信している。
そして、第1アンテナbと第2アンテナcとを1枚のベースフィルム上にコンパクトに配設するために、比較的長いアンテナ長が必要な第2アンテナcの下側水平アンテナ素子c3を、第1アンテナbの下方において第1アンテナbの下辺アンテナ素子b4に沿って延びて配設している。このとき、第2アンテナcの下側水平アンテナ素子c3を、第1アンテナbの下辺アンテナ素子b4に対して所定距離Dbを有して配設することによって、第2アンテナcについては、第1アンテナbとの容量結合が大きくなり過ぎることを抑制して配設している。
特開2003−78317号公報
ところで、貼り付け型フィルムアンテナを車両のフロントウィンドウガラスに貼り付ける場合には、運転者の視界を十分に確保する必要があるため、この貼り付け型フィルムアンテナは、フロントウィンドウガラスの上縁近傍に貼り付けられる。
しかしながら、運転者の視界を十分に確保すべく、貼り付け型フィルムアンテナをフロントウィンドウガラスの上縁近傍に貼り付けたとしても、乗員の背が高い場合や、車高の低い車両の場合には、この貼り付け型フィルムアンテナが運転者の視界に入る可能性がある。そのため、このフロントウィンドウガラスに貼り付けられる貼り付け型フィルムアンテナは、特に上下方向について小型に形成されることが求められている。
特許文献1に開示された貼り付け型フィルムアンテナAの上下方向寸法を短縮するためには、第1アンテナbの上下方向長さを短縮することが考えられる。しかし、第1アンテナの上下方向長さは、第1アンテナが受信しようとする受信周波数帯域に影響するため、短くすると、第1アンテナbの受信周波数帯域を所望の値に設定できなくなる。また、別の方策として、第2アンテナcの下側水平アンテナ素子c3と第1アンテナbの下辺アンテナ素子b4との間隔を狭くして、第2アンテナcの下側水平アンテナ素子c3を第1アンテナbに対して上方向に近接させて配置することが考えられるが、下側水平アンテナ素子c3と下辺アンテナ素子b4との間隔は、第1アンテナbと第2アンテナcとの容量結合が大きくなり過ぎることを抑制するために所定の値に設定されており、この距離を短縮すると、第1アンテナbと第2アンテナcとの間の容量結合が大きくなり、両アンテナb、cの受信性能、特に、比較的低周波数の信号を受信すべく長いアンテナ素子長が必要な第2アンテナcの受信性能が低下する。
すなわち、特許文献1の貼り付け型フィルムアンテナAでは、アンテナ全体の上下方向寸法を短くするためには、第1アンテナb及び第2アンテナcの受信性能を落とさざるを得なかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1アンテナと第2アンテナとを有する貼り付け型フィルムアンテナにおいて、第1アンテナと第2アンテナの受信性能を維持しつつ、貼り付け型フィルムアンテナの上下方向寸法を短縮して、乗員の視界をより大きく確保することにある。
本発明は、ループ形状の第1アンテナの左右側辺アンテナ素子の少なくとも一方によってアンテナの上下方向長さを確保しつつ、第1アンテナの下辺アンテナ素子を第2アンテナの水平アンテナ素子との容量結合が大きくなり過ぎない位置に配置するものである。
具体的には、第1の発明は、車両のフロントウィンドウガラスの上縁近傍に貼り付けられる貼り付け型フィルムアンテナが対象である。
そして、第1給電点を有し且つループ形状に形成された第1アンテナと、第2給電点と上記第1アンテナの下方において水平に延びる水平アンテナ素子とを有する第2アンテナと、を備えるものとする。
また、上記第1アンテナは、第1給電点に接続され且つ上記フロントウィンドウガラスの上縁と略平行に延びる上辺アンテナ素子と、それぞれ該上辺アンテナ素子に接続され且つ下方に向かって延びる左側辺アンテナ素子及び右側辺アンテナ素子と、上記水平アンテナ素子に沿って延びると共に、該各側辺アンテナ素子に接続され且つ左側辺アンテナ素子及び右側辺アンテナ素子の少なくとも一方の下端よりも所定距離上方に位置する下辺アンテナ素子と、を有している。
上記の構成の場合、上記貼り付け型フィルムアンテナは、別々の第1給電点と第2給電点とを有する2種類の第1アンテナ及び第2アンテナを備えるため、それぞれに異なる受信周波数帯域を持たせることによって1枚の貼り付け型フィルムアンテナで広い周波数帯域の信号を受信することができる。
そして、上記第1アンテナの下辺アンテナ素子は、上記左右一対の側辺アンテナ素子の少なくとも一方の下端よりも所定距離上方に位置している。このため、上記第2アンテナの水平アンテナ素子は、下辺アンテナ素子との容量結合が大きくなり過ぎないように一定の間隔を有しつつ、第1アンテナに対して上方に近接させて配置することができる。
また、上記ループ形状をした第1アンテナが受信しようとする受信周波数帯域は、第1給電点から見て、上記フロントウィンドウガラスの上方に位置する導体としての車両のボディルーフから離れる方向に延びるアンテナ素子の長さに依存する。従来の矩形ループ形状アンテナであれば、第1アンテナの受信周波数帯域は上辺アンテナ素子と下辺アンテナ素子との間隔によって決まる。ところが、下辺アンテナ素子よりも側辺アンテナ素子の下端部のほうが下方に延びている本発明の第1アンテナにおいては、第1アンテナが受信しようとする受信周波数帯域は、上記第1給電点が位置する上辺アンテナ素子からボディルーフと反対側である下方に延びる側辺アンテナ素子の長さによって決まる。つまり、第1アンテナの下辺アンテナ素子と、第2アンテナの水平アンテナ素子との容量結合が大きくなり過ぎることを防止すべく下辺アンテナ素子を上方に位置させても、側辺アンテナ素子の上下方向長さによって所望の受信周波数帯域の信号を受信することができる。
尚、第1アンテナを構成するアンテナ素子のうち、下辺アンテナ素子よりも下方に位置するアンテナ素子は、水平アンテナ素子と下辺アンテナ素子との間隔よりも、水平アンテナ素子に対して近接することになるが、これらアンテナ素子が水平アンテナ素子に沿って平行に長く延びる形状でない限り、第1アンテナ及び第2アンテナの受信性能にほとんど影響を与えない。
こうすることによって、第1アンテナ及び第2アンテナの受信性能を維持しつつ、第1アンテナと第2アンテナの水平アンテナ素子との上下方向寸法を短縮することができる。その結果、第1アンテナと第2アンテナとを有する貼り付け型フィルムアンテナの上下方向寸法を短縮することができる。
尚、上記第2アンテナは、第1アンテナの下方において下辺アンテナ素子に沿って延びる水平アンテナ素子を有するアンテナであればよい。また、第2アンテナの長さ及び形状等は、受信しようとする受信周波数帯域と乗員の視界を確保するために許容される配置スペースとのバランスによって決められる。ただし、第2アンテナは、第1アンテナの側方のスペースであって、第1アンテナの上辺アンテナ素子の上下方向位置を上限位置とし且つ、第2アンテナの水平アンテナ素子の上下方向位置を下限位置とするスペースに配設されることが好ましい。こうすることによって、第1アンテナと第2アンテナとの受信性能によって決まる、第1アンテナの上辺アンテナ素子から第2アンテナの水平アンテナ素子まで上下方向寸法内に第1アンテナ及び第2アンテナを配設することができる。
また、この下辺アンテナ素子は、左右一対の側辺アンテナ素子の少なくとも一方の下端よりも上方に配置されていればよく、下辺アンテナ素子が左右一対の側辺アンテナ素子に対してどのように接続されているかは問わない。すなわち、下辺アンテナ素子の両端は、側辺アンテナ素子に対して直接接続されていてもよく、また、例えば、接続用アンテナ素子を介して間接的に接続されていてもよい。
第2の発明は、第1の発明において、上記下辺アンテナ素子と上記水平アンテナ素子との間の距離は、20mm以上に設定されているものとする。
容量結合はアンテナ素子間の距離に反比例するため、第1アンテナの下辺アンテナ素子と第2アンテナの水平アンテナ素子との間隔を、該下辺アンテナ素子と水平アンテナ素子との容量結合の大きさが所定値以下となる所定距離に保つことによって、第1アンテナと第2アンテナとの容量結合が大きくなり過ぎることを防止できる。具体的には、上記所定距離は、20mm以上に設定することが好ましい。
第3の発明は、第1の発明において、上記下辺アンテナ素子は、上記側辺アンテナ素子それぞれの中間部に対して接続されると共に、上記各側辺アンテナ素子において、上記下辺アンテナ素子との接続部よりもさらに下方に延びる部分(以下、下垂部という)は、水平アンテナ素子に対して略垂直に延びているものとする。
上記の構成の場合、水平アンテナ素子と所定の間隔を有する下辺アンテナ素子よりも下方に位置する側辺アンテナ素子の下垂部は、水平アンテナ素子に近接することになる。ところが、この下垂部は水平アンテナ素子に対して垂直に延びているため、水平アンテナ素子とは容量結合を起こさない。その結果、第1アンテナと第2アンテナとの容量結合に影響を与えない。つまり、水平アンテナ素子は、側辺アンテナ素子の下垂部との容量結合を考慮することなく、主に下辺アンテナ素子との容量結合を考慮して、且つ、下垂部と接触しない範囲で第1アンテナに対して上方に近接させて配置することができる。
第4の発明は、第1の発明において、上記第1アンテナの左側辺アンテナ素子及び右側辺アンテナ素子は、いずれか一方の側辺アンテナ素子の下端が他方の側方アンテナ素子の下端よりも下方に位置し、上記第2アンテナの水平アンテナ素子は、左右方向において、上記一方の側辺アンテナ素子側の端が、左右側辺アンテナ素子の間に位置しているものとする。
上記の構成の場合、第1アンテナは、上記一方の側辺アンテナ素子の長さを所望の長さに設定することによって、所望の受信周波数帯域の信号を受信することができる。このとき、第1アンテナの下方に位置する水平アンテナ素子の上記一方の側辺アンテナ素子側の端は、左右方向において該一方の側辺アンテナ素子を超えず、左右側辺アンテナ素子間の内側に位置するため、該一方の側辺アンテナ素子の下端は、水平アンテナ素子と接触することがなく、所望の長さに設定することができる。そして、第2アンテナの水平アンテナ素子の該他方の側辺アンテナ素子側の端は、第1アンテナの他方の側辺アンテナ素子の下端が、該一方の側辺アンテナ素子の下端よりも上方に位置するため、該水平アンテナ素子を、該他方の側辺アンテナ素子の下端と接触しない範囲で第1アンテナに対して上方向に近接させて配置することができる。
本発明によれば、第1アンテナの下辺アンテナ素子を側辺アンテナ素子の下端よりも所定距離上方に位置させることによって、第1アンテナと第2アンテナとの容量結合を大きくすることなく、第2アンテナを第1アンテナに対して上方向により近接させて配置することができる。また、
第1アンテナの受信周波数帯域は第1アンテナの上下方向長さに依存するが、側辺アンテナ素子の下端部は下辺アンテナ素子よりも下方に延びているため、第1アンテナの上下方向長さは上辺アンテナ素子と下辺アンテナ素子との上下方向間隔ではなく側辺アンテナ素子の上下方向長さによって決まり、この側辺アンテナ素子の上下方向長さを所望の長さに設定することによって、所望の受信周波数帯域の信号を受信することができる。その結果、第1アンテナ及び第2アンテナの受信性能を維持しつつ、第1アンテナ及び第2アンテナを有する貼り付け型フィルムアンテナの上下方向寸法を抑えて乗員の視界をより大きく確保することができる。
上記第2の発明によれば、第1アンテナの下辺アンテナ素子と第2アンテナ素子の水平アンテナ素子との間隔を20mm以上に保つことによって、第1アンテナと第2アンテナとの容量結合が大きくなり過ぎることを確実に防止することができる。
上記第3の発明によれば、第1アンテナの下辺アンテナ素子よりも下方に位置する側辺アンテナ素子の下垂部は第2アンテナの水平アンテナ素子に対して垂直に延びているため、水平アンテナ素子を、側辺アンテナ素子の下垂部との容量結合を考慮することなく、下垂部と接触しない範囲で第1アンテナに近接させて配置することができる。その結果、第2アンテナを上下方向において第1アンテナに近接させて配置することができ、貼り付け型フィルムアンテナの上下方向寸法を短縮することができる。
上記第4の発明によれば、第1アンテナは、上記一方の側辺アンテナ素子の長さを設定することによって所望の受信周波数帯域の信号を受信可能とすると共に、上記他方の側辺アンテナの下端が一方の側辺アンテナの下端よりも上方に位置する距離だけ、第2アンテナの水平アンテナ素子を第1アンテナに対して上方向に近接させて配置することができる。その結果、貼り付け型フィルムアンテナの上下方向寸法をさらに短縮することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に本発明の実施形態に係る貼り付け型フィルムアンテナ1を示す。
この貼り付け型フィルムアンテナ(以下、単にフィルムアンテナという)1は、矩形状の非導電性物質からなるベースフィルム2と、ベースフィルム2上に配設された矩形ループ形状をなす第1アンテナ3と、この第1アンテナ3と給電線とを接続するための第1給電点4と、ベースフィルム2上に第1アンテナ3と並んで配設されたコ字形状をなす第2アンテナ5と、この第2アンテナ5と給電線とを接続するための第2給電点6とを有する。これら第1給電点4と第2給電点6とは、フロントウィンドウガラスWの上縁から配線される給電線の配線を容易にするため、ベースフィルム2の上縁近傍の中央側に所定間隔を有して水平方向に並んで配設されている。このフィルムアンテナ1は、図2に示すように、第1給電点4及び第2給電点が上に位置し且つ、第1アンテナ3と第2アンテナ5とが水平方向に並ぶようにして、車両のフロントウィンドウガラスWの上縁近傍に貼り付けられる。
上記フィルムアンテナ1は、図示は省略するが、ベースフィルム2の上に接着剤層を介して第1及び第2アンテナ3、5が固着されて、構成されている。また、第1及び第2アンテナ3、5の上には、第1及び第2アンテナ3、5の酸化を防止すると共に損傷から守るための保護膜が形成されている。さらに、この保護膜の上に粘着剤層が形成されている。そして、作業者は、この粘着剤層によってフィルムアンテナ1をフロントウィンドウガラスW上に貼付する。この場合、耐候性を考慮してフロントウィンドウガラスWの内側に貼付することが好ましい。
上記ベースフィルム2は、第1アンテナ3に囲まれた領域に第1開口部21が、コ字形状の第2アンテナ5に囲まれた領域に第2開口部22が、後述する第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34、及び下垂部35、36と第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53とに囲まれた領域に第3開口部23がそれぞれ形成されている。こうすることによって、ベースフィルム2の表面積を小さくしてコストを削減することができると共に、フィルムアンテナ1を持ち易くしてフィルムアンテナ1を貼り付ける作業性を向上させることができる。
上記第1アンテナ3は、図1に示すように、矩形ループ形状アンテナであって、主にTVの4ch〜12chに対応するVHF帯の比較的高い帯域(以下、Hi−VHF帯という)及びUHF帯といった比較的高い周波数で広い周波数帯域の無線信号を受信する。詳しくは、第1アンテナ3は、上記ベースフィルム2の左側に配設されると共に、ベースフィルム2の上縁と平行に延びる上辺アンテナ素子31と、この上辺アンテナ素子31の両端から上辺アンテナ素子31に対して垂直且つ下方に延びる左側辺アンテナ素子32及び右側辺アンテナ素子33と、上辺アンテナ素子31と平行に延び且つ左右側辺アンテナ素子32、33それぞれ中間部に対して垂直に接続される下辺アンテナ素子34とから構成される。これら左右側辺アンテナ素子32、33は、それぞれ下辺アンテナ素子34との接続部よりもさらに下方に延びる部分としての下垂部35、36を有する。この下垂部35、36は、後述する第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53に対して略垂直に延びている。そして、上辺アンテナ素子31と右側辺アンテナ素子33とによって形成される角部に上記第1給電点4が配置されている。フィルムアンテナ1は、ベースフィルム2の上縁がフロントウィンドウガラスWの上縁に対して近接して且つ平行になるように貼り付けられるため、第1アンテナ3の第1給電点4はフロントウィンドウガラスWの上縁近傍に位置すると共に、上辺アンテナ素子31はフロントウィンドウガラスWの上縁に対して略平行に配置されることになる。
また、矩形ループ形状をしている第1アンテナ3は、上下方向長さが受信周波数帯域に対応し、左右方向長さが受信感度を確保できる帯域幅(帯域の広がり)に対応するようになっている。ここで、ループ形状アンテナの上下方向とは、給電点から見て近傍に位置する導体から離れる方向をいい、左右方向とは、該上下方向と直交する方向をいう。本実施形態においては、第1給電点4が、フロントウィンドウガラスWの上縁近傍するため、左右側辺アンテナ素子32、33が延びる方向が上下方向となり、上下辺アンテナ素子31、34が延びる方向が左右方向となる。そして、一般的な矩形ループ形状アンテナであれば、上辺アンテナ素子と下辺アンテナ素子との上下方向間隔がアンテナの受信周波数帯域に影響を与える上下方向長さとなるが、上記第1アンテナ3においては、左右側辺アンテナ素子32、33の下垂部35、36が下辺アンテナ素子34を超えて下方に延びているため、この左右側辺アンテナ素子32、33の上下方向長さL1yが第1アンテナ3の受信周波数帯域に影響を与える上下方向長さとなる。そこで、第1アンテナ3で受信しようとする信号の波長をλ、ガラスによる波長短縮率をαとすると、第1アンテナ3の左右側辺アンテナ素子32、33の上下方向長さL1yは、α・λ/4と一致するときに受信感度が最も良くなるため、
L1y<α・λ/4 (1)
により決定される。ここで、フィルムアンテナ1が貼り付けられるフロントウィンドウガラスWは乗員の視界を確保する必要があるため、第1アンテナ3の配置スペース又は形状は制限される。そのため、第1アンテナ3の上下方向長さL1yは、受信しようとする信号の波長λのみでなく、乗員の視界を確保するために許容されるフロントウィンドウガラスW上でのスペースも考慮して決められ、必ずしもα・λ/4とは一致しない。その結果、第1アンテナ3によって最も感度良く受信できる受信周波数は、所望の受信周波数とずれることになる。そこで、第1アンテナ3を矩形ループ形状に形成して幅方向に広がりをもたせることによって、この受信周波数のずれを補っている。つまり、第1アンテナ3を幅方向に広げることによって、第1アンテナ3の受信特性のピーク値は低下するが、感度良く受信できる帯域幅は広がる。このため、幅方向に広がりをもった第1アンテナ3は、受信特性のピーク値となる周波数が所望の受信周波数とずれていても、感度良く受信できる帯域幅が広いため、所望の受信周波数の信号についても受信することができる。つまり、第1アンテナ3の上辺アンテナ素子31の左右方向長さL1xは、幅を広げるほど帯域は広がるものの、広くなり過ぎると受信感度は下がる傾向にあるため、
L1x≦600[mm]-L1y (2)
により決定される。さらに、下辺アンテナ素子34は、左右側辺アンテナ素子32、33の下端よりも所定距離L1dだけ上方に位置している。
上記第2アンテナ5は、図1に示すように、コ字形状ポールアンテナであって、主にTVの1ch〜3chに対応するVHF帯の比較的低い帯域(以下、Lo−VHF帯という)、FMラジオ帯及びVICSといった比較的低い周波数で狭い周波数帯域の無線信号を受信する。詳しくは、第2アンテナ5は、上記第1アンテナ3と並んでベースフィルム2の右側に配設され、ベースフィルム2の上縁と平行且つ、第1アンテナ3の上辺アンテナ素子31と略一直線上に延びる上側水平アンテナ素子51と、この上側水平アンテナ素子51の右側端から上側水平アンテナ素子51に対して垂直且つ下方に延びる垂直アンテナ素子52と、この垂直アンテナ素子52の下端から垂直アンテナ素子52に対して垂直且つ第1アンテナ3側へ水平に延びる水平アンテナ素子としての下側水平アンテナ素子53とから構成され、第1アンテナ3に向かって開口するコ字形状を形成する。この下側水平アンテナ素子53は、上記第1アンテナ3の下方において上記下辺アンテナ素子34に沿って略平行に延びている。上側水平アンテナ素子51の左側端に上記第2給電点6が配置されている。
また、第2アンテナ5の全長L2は、所望の受信周波数に対応する波長λに対して、α・λ/4と一致するときが最も受信感度が良いため、
L2≦α・λ/4 (3)
により決定される。この第2アンテナ5は、比較的低い周波数帯域の信号を受信するため、比較的流いアンテナ長が必要となる。とろこが、フィルムアンテナ1が貼り付けられるフロントウィンドウガラスWは、乗員の視界を十分に確保する必要があるため、第2アンテナ5の配置スペース又は形状が制限される。そのため、第2アンテナ5の全長L2は、受信しようとする信号の波長λのみでなく、乗員の視界を確保するために許容されるフロントウィンドウガラスW上でのスペースも考慮して決められている。それと共に、第2アンテナ5を、第1アンテナ3の側方でコ字形状に形成して、コ字形状の下側の水平部分を形成する下側水平アンテナ素子53を第1アンテナ3の下方のスペースに配設することによって、1枚のベースフィルム2上に第1アンテナ3と第2アンテナ5とをコンパクトに配置している。
尚、第2アンテナ5の形状は、第1アンテナ3に向かって開口するコ字形状ポールアンテナに限られるものではない。即ち、下側水平アンテナ素子53を有する形状であれば、任意の形状のアンテナを採用することができる。ただし、第2アンテナ5は、1枚のベースフィルム2上で第1アンテナ3との関係においてコンパクトに配置できる形状であることが好ましい。
上記のように配置された第1アンテナ3及び第2アンテナ5においては、上記第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34と、該下辺アンテナ素子34に沿って配設される第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53との容量結合が、第1アンテナ3及び第2アンテナ5の受信性能に大きく影響を与えるため、該下辺アンテナ素子34と下側水平アンテナ素子53との間隔が問題となる。そこで、下側水平アンテナ素子53と第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34との間には、所定の間隔D1が設けられている。この間隔D1は、20mm以上の間隔であることが好ましい。間隔D1を20mm以上とすることによって、下側水平アンテナ素子53と下辺アンテナ素子34との容量結合が大きくなり過ぎることを防止することができる。
つまり、第1アンテナ3の上辺アンテナ素子31から第2アンテナの下側水平アンテナ素子53までの上下方向長さは、第1アンテナ3の受信周波数帯域及び第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34と第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子との間の容量結合の大きさ、即ち、第1アンテナ3及び第2アンテナ5に求める受信性能によって決まる。一方、第2アンテナ5の上下方向寸法である垂直アンテナ素子52の上下方向長さL2yは、第2アンテナ5の全長が長さL2となる範囲で、柔軟に設定することができるため、上辺アンテナ素子31から下側水平アンテナ素子53までの上下方向長さに合わせることができる。したがって、フィルムアンテナ1としての上下方向寸法は、上辺アンテナ素子31から下側水平アンテナ素子53までの上下方向長さによって決まる。
ここで、この下辺アンテナ素子34は、左右側辺アンテナ素子32、33の下端(即ち、下垂部35、36の下端)よりも距離L1dだけ上方に配置している。その結果、これに併せて下側水平アンテナ素子53を、下辺アンテナ素子34との間隔を上記間隔D1を維持しつつ、第1アンテナ3に対して上方向に近接させて配置することができる。つまり、下辺アンテナ素子34と下側水平アンテナ素子53との間の容量結合が大きくなり過ぎることを防止しつつ、第1アンテナ3の上辺アンテナ素子31と第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53との上下方向長さを短縮することができる。
そして、第1アンテナ3の左右側辺アンテナ素子32、33は、下辺アンテナ素子34よりも下方に延びる下垂部35、36を有しているため、下辺アンテナ素子34の上下位置にかかわらず、第1アンテナ3の受信周波数帯域は、左右側辺アンテナ素子32、33の上下方向長さL1yによって決まる。すなわち、第1アンテナ3の上辺アンテナ素子31と第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53との上下方向長さを短縮すべく、下辺アンテナ素子34を上方に配置したとしても、下垂部35、36の長さを所望の長さに設定することによって第1アンテナ3は所望の周波数帯域の信号を受信することができる。このとき、下垂部35、36は下側水平アンテナ素子53と近接することになるが、下垂部35、36は、下側水平アンテナ素子53に対して垂直に延びているため、下垂部35、36と下側水平アンテナ素子53との間で容量結合は起こらず、第1アンテナ3及び第2アンテナ5それぞれの受信性能に影響を与えることはない。
したがって、上記の実施形態によれば、第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34を左右側辺アンテナ素子32、33の下端よりも所定距離L1dだけ上方に位置させることによって、第1アンテナ3と第2アンテナ5との容量結合を大きくすることなく、第2アンテナ5を第1アンテナ3に対して上方向により近接させて配置することができる。また、下辺アンテナ素子34を上方に配置したとしても、第1アンテナ3は、左右側辺アンテナ素子32、33の上下方向長さL1yを下垂部35、36の長さL1dを調整して所望の長さに設定することによって、所望の受信周波数帯域の信号を受信することができる。こうすることによって、第1アンテナ3及び第2アンテナ5それぞれの受信特性を維持しつつ、第1アンテナ3及び第2アンテナ5を上下方向にコンパクトに配置することができる。その結果、フィルムアンテナ1の上下方向寸法がコンパクトになり、乗員の視界をより大きく確保することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記の実施形態において、第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34の両端は、左右側辺アンテナ素子32、33の中間部に対して垂直に且つ直接接続されているが、これに限られるものではない。すなわち、図3に示すように、左右側辺アンテナ素子32a、33aの下端と下辺アンテナ素子34aの両端を接続用アンテナ素子37a、38aによって接続する構成としてもよい。かかる場合、接続用アンテナ素子37a、38aが第2アンテナ5aの下側水平アンテナ素子53aと近接することになるが、接続用アンテナ素子37a、38aは下側水平アンテナ素子53aに対して平行ではなく且つ、アンテナ長も短いため、下側水平アンテナ素子53aとの容量結合は小さく、第1アンテナ3a及び第2アンテナ5aの受信性能にほとんど影響を与えない。また、第1アンテナ3aの受信周波数帯域は左右側辺アンテナ素子32a、33aの上下方向長さにより設定することができると共に、下辺アンテナ素子34aが上方に位置することによって第2アンテナ5aの下側水平アンテナ素子53aも第1アンテナ3aに対して上方に近接させることができる。その結果、図3に示すフィルムアンテナ1aであっても、上記フィルムアンテナ1と同様の作用・効果を奏することができる。
また、上記実施形態において、第1アンテナ3の左右側辺アンテナ素子32、33は、共に同じ長さであるが、これに限られるものではない。すなわち、図4に示すように、左右側辺アンテナ素子32b、33bのうちどちらか一方の下端が他方の下端よりも下方に位置する構成としてもよい。図4においては、左側辺アンテナ素子32bの下端の方が右側辺アンテナ素子33bの下端よりも下方に位置している。そして、第2アンテナ5bの下側水平アンテナ素子53bは、左右方向において、左側端が左側辺アンテナ素子32bを超えずに左右側辺アンテナ素子32b、33b間の内側に位置する一方、右側端が右側辺アンテナ素子33bを超えて左右側辺アンテナ素子32b、33b間の外側まで延びている。上記実施形態に係るフィルムアンテナ1においては、下側水平アンテナ素子53が左右側辺アンテナ素子32、33の下端と接触しない範囲で、該下側水平アンテナ素子53を第1アンテナ3に対して上方向に近接させることができる。すなわち、第1アンテナ3の上辺アンテナ素子31から第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53までの上下方向長さは、第1アンテナ3の受信周波数帯域によって決まる側辺アンテナ素子32(又は33)の長さより短くすることはできない。ところが、図4に示すフィルムアンテナ1bにおいては、第1アンテナ3bの左側辺アンテナ素子32bによって第1アンテナ3bの受信周波数帯域を決定できる。そして、第2アンテナ5bの下側水平アンテナ素子53bは、該左側辺アンテナ素子32bよりも内側に位置すると共に、右側辺アンテナ素子33bの下端は左側辺アンテナ素子32bの下端よりも上方に位置するため、下側水平アンテナ素子53bは、右側辺アンテナ素子33bの下端と接触しない範囲で、該下側水平アンテナ素子53bを第1アンテナ3bに対して上方向に近接させることができる。すなわち、第1アンテナ3bの上辺アンテナ素子31bから第2アンテナ5bの下側水平アンテナ素子53bまでの上下方向長さは、第1アンテナ3bの受信周波数帯域によって決まる左側辺アンテナ素子32bの長さより短くすることができる。その結果、第1アンテナ3b及び第2アンテナ5bの上下方向長さを、左側辺アンテナ素子32bの上下方向長さまで短縮することができ、フィルムアンテナ1bの上下方向寸法をさらに短縮することができる。尚、図4では、右側辺アンテナ素子33bは下垂部を有さないが、下垂部の下端が左側辺アンテナ素子32bの下垂部35bの下端よりも上方に位置する場合であれば、下垂部を有する構成であってもよい。
次に、本発明によるフィルムアンテナの実施例について、その受信性能を、従来のアンテナと比較して説明する。
フィルムアンテナ1の各寸法は、図1に示す通りである(図中の()内の数字が寸法を表す。単位はmm。以下、図6、7においても同じ)。詳しくは、第1アンテナ3の左右側辺アンテナ素子32、33の上下方向長さL1yは、式(1)により決定され、約690MHzを狙って65mmに設定している。上下辺アンテナ素子31、34の左右方向長さL1xは、式(2)により決定され、150mmに設定している。また、下垂部35、36の上下方向長さL1dは、15mmに設定している。一方、第2アンテナ5は、式(3)により決定され、約106MHzを狙って425mmに設定している。そして、第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34と第2アンテナ5の下側水平アンテナ素子53との間隔D1が30mmとなるように、第2アンテナの垂直アンテナ素子52の上下方向長さL2yは80mmに設定している。
本発明によるフィルムアンテナ1を、図2に示すように車両のフロントウィンドウガラスWに貼り付けた場合の受信特性を図5(a)〜(c)に示す。図5に示す受信特性は、第1アンテナ3のみの受信利得(図中のant1)、第2アンテナ5のみの受信利得(図中のant2)および第1アンテナ3及び第2アンテナ5の受信信号をダイバーシティ処理したときの受信利得(図中のdiv)であって、(a)〜(c)は、それぞれ88MHz〜108MHz(FMラジオ帯又はLo−VHF帯)、170MHz〜225MHz(Hi−VHF帯)、47OMHz〜770MHz(UHF帯)の帯域での受信利得Gの測定結果である。尚、受信利得Gは、標準のダイポールアンテナの受信利得を0dBとしたときの利得差であり、以下も同様である。
また、受信性能比較のため、車両のフロントウィンドウガラスWに、図6、7に示すように、第1及び第2の従来例によるフィルムアンテナA、Dを貼り付けた場合の受信特性を、それぞれ図8(a)〜(c)、9(a)〜(c)に示す。図8、9に示す受信特性は、第1アンテナb又はeのみの受信利得(図中のant1)、第2アンテナc又はfのみの受信利得(図中のant2)および第1アンテナb又はe並びに第2アンテナc又はfの受信信号をダイバーシティ処理したときの受信利得(図中のdiv)であって、(a)〜(c)は、図5と同様に、それぞれ88MHz〜108MHz(FMラジオ帯又はLo−VHF帯)、170MHz〜225MHz(Hi−VHF帯)、47OMHz〜770MHz(UHF帯)の帯域での受信利得G、Ga、Gdの測定結果である。
さらに、各フィルムアンテナ1、A、Dの受信特性を比較したものが、表1〜3である。表1〜3は、それぞれLo−VHF帯、Hi−VHF帯及びUHF帯の受信特性を示す。受信特性比較のため、本発明に係るフィルムアンテナ1による受信利得Gと、第1の従来例に係るフィルムアンテナAによる受信利得Gaとの利得差G−Ga[dB]を中段に、本発明に係るフィルムアンテナ1による受信利得Gと、第2の従来例に係るフィルムアンテナDによる受信利得Gdとの利得差G−Gd[dB]を下段に、それぞれ示す。この各フィルムアンテナ1、A、及びDの受信利得G、Ga及びGdは、それぞれ第1アンテナ3及び第2アンテナ5、後述する第1アンテナb及び第2アンテナc並びに後述する第1アンテナf及び第2アンテナgの受信信号をダイバーシティ処理したものである。
ここで、第1の従来例であるフィルムアンテナAは、矩形ループ形状アンテナである第1アンテナbと、コ字形状ポールアンテナである第2アンテナcとを左右に並列したフィルムアンテナであって、各部の寸法は図6に示す通りである。第1の従来例の、本発明に係るフィルムアンテナ1及び第2の従来例と比較した特徴的な点は、第1の従来例の第1アンテナbは、フィルムアンテナ1の下垂部35、36に対応するアンテナ素子を有さず、下辺アンテナ素子b4が、左右側辺アンテナ素子b2、b3の下端に接続されている点、下辺アンテナ素子b4と第2アンテナcの下側水平アンテナ素子c3とが、両アンテナ素子b4、c3間の容量結合が大きくなり過ぎることを防止すべく、所定距離Db(=25mm)だけ離れて配置されている点、および第1アンテナb及び第2アンテナcの最大上下方向長さが第2アンテナcの垂直アンテナ素子c2の長さLcy(=90mm)である点、である。
また、第2の従来例であるフィルムアンテナDは、矩形ループ形状アンテナである第1アンテナeと、コ字形状ポールアンテナである第2アンテナfとを左右に並列したフィルムアンテナであって、各部の寸法は図7に示すと通りである。第2の従来例の、本発明に係るフィルムアンテナ1及び第1の従来例と比較した特徴的な点は、第2の従来例の第1アンテナeは、フィルムアンテナ1の下垂部35、36に対応するアンテナ素子を有さず、下辺アンテナ素子e4が、左右側辺アンテナ素子e2、e3の下端と接続している点、下辺アンテナ素子e4と第2アンテナfの下側水平アンテナ素子f3とが、第1アンテナeと第2アンテナfとを近接させて配置すべく、所定距離De(=15mm)だけ離れて配置されている点、および第1アンテナe及び第2アンテナfの最大上下方向長さが第2アンテナfの垂直アンテナ素子f2の長さLey(=80mm)である点、である。即ち、第2の従来例は、第1の従来例と同じ第1アンテナeを採用し、第2アンテナfの下側水平アンテナ素子f3を第1アンテナeに対して第1の従来例よりも近接させて配置したものである。
まず、上記第1の従来例(図8)と第2の従来例(図9)とを比較すると、第2アンテナfの垂直アンテナ素子f2の上下方向長さを短縮して、下側水平アンテナ素子f3を第1アンテナeの下辺アンテナ素子e4に接近させることによって、Lo−VHF帯において第2アンテナfの受信性能が低下していることがわかる。これは、下側水平アンテナ素子f3と下辺アンテナ素子e4との容量結合が大きくなったために、主に低周波数帯域の信号を受信すべく比較的長いアンテナ長が必要な第2アンテナfの受信性能が低下したものと考えられる。また、Hi−VHF帯およびUHF帯においては、下側水平アンテナ素子f3と下辺アンテナ素子e4とを接近させても、第1アンテナeと第2アンテナfとの受信性能にはほとんど影響を与えていない。
したがって、従来の第1アンテナb(e)及び第2アンテナc(f)において、単純に、下側水平アンテナ素子c3(f3)を下辺アンテナ素子b4(e4)に対して上方向に近接させただけでは、第1アンテナb(e)と第2アンテナc(f)との間の容量結合が大きくなり過ぎて、主に比較的低い周波数帯域の信号を受信する第2アンテナc(f)の受信性能が低下する。
次に、上記第1の従来例(図8)及び第2の従来例(図9)と、本発明に係るフィルムアンテナ1(図5)とを比較する。
まず、Lo−VHF帯の受信性能についてみてみると、フィルムアンテナ1は、下側水平アンテナ素子53を第1アンテナ3に対して上方向に接近させているにもかかわらず、第2アンテナ5の受信性能が第1の従来例と略同じに維持されていることがわかる。これは、下側水平アンテナ素子53を上方向に配置させると共に、下辺アンテナ素子34を上方に配置することによって、下辺アンテナ素子34と下側水平アンテナ素子53との間に一定の間隔D1を確保して、両アンテナ素子34、53間での容量結合が大きくなり過ぎることを防止しているからであると考えられる。また、下垂部35、36はその下端から下側水平アンテナ素子53までの距離が15mmであって、第2の従来例の下辺アンテナ素子e4と下側水平アンテナ素子f3との間隔と同じであるが、図5(a)の結果より、下垂部35、36は第1アンテナ3と第2アンテナ5との間の容量結合にはほとんど影響を与えていないことがわかる。一方、第1アンテナ3の受信性能についても、第1の従来例と本発明に係るフィルムアンテナ1とではほとんど変わらないことがわかる。図1、6に示すように、フィルムアンテナ1とフィルムアンテナAとでは、第1アンテナ3、bの形状は異なる。ところが、上述の如く、矩形ループ形状アンテナにおける上下方向長さは受信周波数帯域に対応し且つ、左右方向の長さは受信感度を確保できる帯域幅に対応していおり、第1アンテナ3、bは、その上下方向長さが共に65mm(フィルムアンテナ1は下垂部35、36を有するため)であると共に、左右方向長さが共に150mmであるため、受信周波数帯域や帯域幅等の受信性能は第1アンテナ3と第1アンテナbとではほとんど変わらないものと考えられる。
また、第1アンテナ3及び第2アンテナ5の受信信号をダイバーシティ処理したときの受信利得によって、各フィルムアンテナ1、A、Dの受信特性を比較すると、表1に示すように、Lo−VHF帯においては、フィルムアンテナ1の受信利得Gは、フィルムアンテナAの受信利得Gaよりも平均値で0.8dBの利得低下となっている。しかし、この低下量はごく僅かであり、実際の使用上、問題となる程度ではない。また、フィルムアンテナ1の受信利得Gは、フィルムアンテナDの受信利得Gdよりも平均値で9.9dBの利得向上となっている。
続いて、Hi−VHF帯において、フィルムアンテナ1(図5(b))と第1の従来例(図8(b))や第2の従来例(図9(b))とを比較する。フィルムアンテナ1は、170MHz〜200MHzにおいて、第1アンテナ3の受信利得が低下している一方、第2アンテナ5の受信利得が向上している。これは、フィルムアンテナA、Dと比較して、フィルムアンテナ1の下辺アンテナ素子34と下側水平アンテナ素子53との間隔D1が大きくなり、第1アンテナ3と第2アンテナ5との間の容量結合の大きさが変化したことに起因すると考えられる。ただし、結果としては、表2に示すように、フィルムアンテナ1による受信利得Gは、フィルムアンテナAによる受信利得Gaよりも平均値で2.4dBの利得向上となっている。また、フィルムアンテナ1による受信利得Gは、フィルムアンテナDによる受信利得Gdよりも平均値で2.1dBの利得向上となっている。これらは、低下した第1アンテナ3の受信利得を、向上した第2アンテナ5の受信利得によって補っているためである。
次にUHF帯において、フィルムアンテナ1(図5(c))と第1の従来例(図8(c))や第2の従来例(図9(c))とを比較すると、フィルムアンテナ1とフィルムアンテナA、Dとの違いは、第2アンテナ5の受信利得が最低となる周波数が(650MHz)が、従来例と比較して高い周波数側に推移したくらいで、その他はほとんど変わらない。フィルムアンテナ1、A、DのUHF帯の受信特性をみても、フィルムアンテナ1の受信利得Gは、フィルムアンテナAの受信利得Gaとほとんど変わらない。また、フィルムアンテナ1の受信利得Gは、フィルムアンテナDによる受信利得Gdよりも平均値で0.8dBの利得低下となっているが、この低下量はごく僅かであって、実際の使用上、問題となる程度ではない。
上記の結果より、従来のフィルムアンテナA、Dによれば、フィルムアンテナの上下方向寸法を短縮するために、単純に、第2アンテナcの下側水平アンテナ素子c3を第1アンテナbの下辺アンテナ素子b4に対して上方向に近接させるだけでは、特にLo−VHF帯においてフィルムアンテナの受信性能を悪化させざるを得ないことがわかる。そこで、第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34を左右側辺アンテナ素子32、33の下端よりも所定距離L1d(=15mm)だけ上方に位置させることによって、第1アンテナ3と第2アンテナ5との容量結合を大きくし過ぎることなく、フィルムアンテナ1の上下方向寸法を短縮することができる。本実施例においては、フィルムアンテナ1の上下方向寸法を第1の従来例と比較して約10%短縮させたにもかかわらず、Lo−VHF帯、Hi−VHF帯及びUHF帯にフィルムアンテナとしての受信性能はほとんど変わらないことがわかる。また、第1アンテナeは第1の従来例と同じまま、第2アンテナの下側水平アンテナ素子f3を第1アンテナeに対して上下方向に近接させた第2の従来例と比較すると、特にLo−VHF帯において受信性能が向上していることがわかる。
以上のことから、第1アンテナ3の下辺アンテナ素子34を左右側辺アンテナ素子32、33の下端よりも所定距離L1dだけ上方に位置させることによって、第1アンテナ3及び第2アンテナ5それぞれの受信特性を維持しつつ、第1アンテナ3及び第2アンテナ5を上下方向にコンパクトに配置することができることがわかる。
本発明の実施形態に係る貼り付け型フィルムアンテナを示した正面図である。
貼り付け型フィルムアンテナが貼り付けられたフロントウィンドウガラスを車両前方から見たときの図である。
その他の実施形態に係る貼り付け型フィルムアンテナを示した正面図である。
その他の実施形態に係る貼り付け型フィルムアンテナを示した正面図である。
本発明の実施形態に係る貼り付け型フィルムアンテナの受信特性を示す図であって、(a)は88MHz〜108MHz帯の受信特性、(b)は170MHz〜225MHz帯の受信特性及び(c)は470MHz〜770MHz帯の受信特性をそれぞれ示す。
第1の従来例に係る貼り付け型フィルムアンテナの示した正面図である。
第2の従来例に係る貼り付け型フィルムアンテナの示した正面図である。
第1の従来例に係る貼り付け型フィルムアンテナの受信特性を示す図であって、(a)は88MHz〜108MHz帯の受信特性、(b)は170MHz〜225MHz帯の受信特性及び(c)は470MHz〜770MHz帯の受信特性をそれぞれ示す。
第2の従来例に係る貼り付け型フィルムアンテナの受信特性を示す図であって、(a)は88MHz〜108MHz帯の受信特性、(b)は170MHz〜225MHz帯の受信特性及び(c)は470MHz〜770MHz帯の受信特性をそれぞれ示す。
符号の説明
1 フィルムアンテナ
3 第1アンテナ
31 上辺アンテナ素子
32 左側辺アンテナ素子
33 右側辺アンテナ素子
34 下辺アンテナ素子
35、36 下垂部
4 第1給電点
5 第2アンテナ
53 下側水平アンテナ素子(水平アンテナ素子)
6 第2給電点
W フロントウィンドウガラス