JP2006099927A - 相変化型光記録媒体 - Google Patents

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清人 柴田
Hajime Yuzurihara
肇 譲原
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克成 花岡
Yujiro Kaneko
裕治郎 金子
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Abstract

【課題】 記録再生波長を405nm近傍の青色波長域まで短波長化した際に生じる問題点を解決した、良好な記録特性を有し、記録ピットの記録再生信号レベルが2値より多い相変化型光記録媒体の提供。
【解決手段】 (1)光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、少なくとも、グルーブ溝形状を有する基板上に、熱拡散層、第1保護層、記録層、第2保護層、反射層とをこの順に備え、熱拡散層が第1保護層よりも高い熱伝導率を有し、かつ非晶質膜である相変化型光記録媒体。
(2)光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、少なくとも、グルーブ溝形状を有する基板上に、反射層、第2保護層、記録層、第1保護層、熱拡散層をこの順に備え、熱拡散層が第1保護層よりも高い熱伝導率を有する相変化型光記録媒体。
【選択図】 図7

Description

本発明は、記録ピットの記録再生信号レベルが2値より多い相変化型光記録媒体に関する。
現在実用化されている光情報記録媒体として、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用した、いわゆる相変化型光記録媒体が知られている。
その記録材料としては、GeTe−SbTe擬似二元系組成を有するGeSbTeなどの化合物組成に代表されるGe−Sb−Te三元合金材料、及びSb70Te30共晶組成近傍の合金を主成分とするAg−In−Sb−Teに代表されるAgInSbTe系材料がある。前者のGeSbTe系材料はDVD−RAMとして、後者のAgInSbTe系材料は、CD−RW、DVD−RW及びDVD+RWとして広く実用化されている。これらの相変化型光記録媒体は、何れも螺旋状又は同心円状の溝を有するプラスチック基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層などを積層した構造を有し、記録層の結晶とアモルファスにおける光学定数変化及び前記積層構造の多重干渉を利用して反射率を制御し、2値情報の記録・再生を行うものである。
一方、近年、デジタル化の進展やブロードバンドの普及に伴って扱う情報量が増大し、高密度かつ高速でデータを記録・再生できる新たな記録システムが求められている。このような背景から、記録再生波長の短波長化や開口数NA(Numerical Aperture)の増大により、集光ビーム径を小さくして、記録マークのサイズを小さくし、高密度化及び高速化を狙った技術開発が盛んに行われている。例えば現行の記録型DVDは、記録再生波長λ=650〜660nm、開口数NA=0.65、記録容量4.7GBであるが、記録再生波長をλ=400〜420nmに短波長化し、開口数NA=0.85とした記録容量20GB以上の光記録システムが提案されている(特許文献1)。
このような高速大容量光記録システムには、現在急速に普及しているDVD−ROMや記録型DVDの記録再生、及びCD−ROM、CD−R、CD−RW等の記録再生ができること、即ち、下位互換が取れることが望まれている。しかしながら、前記システムは、高NA化のために同じピックアップを用いてCDやDVDとの記録・再生互換を確保するのが難しくなる上、指紋などの汚れから記録媒体面を防ぐために専用カートリッジを必要とし、媒体の物理形状的にも互換が取り難くなってしまうという問題を抱えていた。
これに対し、開口数NAを従来の記録型DVDシステムの0.65程度に保ったままで高密度化及び高速化を実現する技術として多値記録方式が注目されている。本発明者らは、アモルファス記録マークの周辺結晶部に対する占有率の違いにより多値情報を記録し、記録容量20GB以上を達成する方法について既に提案している(非特許文献1、特許文献2〜3)。この方法は、ワーキングディスタンスが従来のように広く取れるため、CD−RWや記録型DVDと同様に専用ケースを必要としないベアディスクが使用できる。また、光学系のNAが従来のDVDと同じなので、1つの光学系でCD及びDVDを含めた3世代の互換が取り易いというメリットもある。
このような多値記録システムでは、従来の2値記録よりも微小なマークをばらつきなく形成する必要がある。何故ならば、面積変調による多値記録方式の場合、マーク形状のばらつきがそのまま反射率差として多値レベルのばらつきとなり、そのばらつきが大きいほど信頼性の高い復調が困難になるためである。高密度のアモルファスマークを制御良く形成するためには、記録層を溶融・冷却してアモルファスマークを形成する際の冷却速度を高め、結晶とアモルファスの境界の乱れを小さくすることが重要である。そのためには、記録層の溶融温度を高めつつ、急冷構造を実現することが望ましい。図5に相変化型記録媒体の従来例を示す。従来例では、基板上に、下部保護層、相変化記録層、上部保護層、金属反射層、有機保護層が順次形成され、更に接着層を介してカバー基板が形成されている。急冷構造を実現するには、反射層への熱伝導性を高めるために、記録層と反射層の間に存在する上部保護層の膜厚を薄くすることが好ましい。しかしながら、上部保護層を薄くしすぎると記録層の溶融温度が低くなってしまい、変調度やコントラストの小さい媒体になってしまう問題があった。即ち、記録層の溶融温度を下げずに急冷構造を実現するには、上部保護層の薄膜化だけでは限界があり、良好な多値記録特性を得るためには更なる層構成の工夫が必要であった。
また、面積変調による多値記録方式では、結晶とアモルファスの反射率差(コントラスト或いは多値記録方式におけるダイナミックレンジ)の中に、多段階に反射率を割り付け多値レベルとするので、前記反射率差が大きいほど信頼性の高いシステムが可能になる。この点に関して、記録再生波長を、記録型DVDで用いられる650nmから405nmに短波長化したとき、前記コントラストが更に小さくなってしまうという問題があった。例えば代表的なSbTe共晶系記録材料の場合、図6のように、400nm付近の波長域で、光学定数、特に吸収係数kの差が、これまでの赤色波長に比べて著しく小さくなり、結晶状態とアモルファス状態の反射率差を得難くなる。これに加えて、受光素子の量子効率が減少するため、405nmでのダイナミックレンジは赤色記録再生系のそれに比べて約半減してしまう。このため、多値記録において許容される反射率変動のマージンはより厳しくなり、アモルファスマークを制御良く形成するための媒体構造が求められている。
多値記録媒体に関する従来例としては特許文献4があるが、記録再生波長を405nm付近に短波長化した際に生じる前述の問題については全く認識されておらず、従って、これを解決するための技術的な開示や示唆は一切ない。
その他の従来例としては、基板と記録層の間の保護層に、In−Sn−OやZn−Al−Oからなる透明導電膜を用いた特許文献5〜6がある。しかし、特許文献5は基本的に透明導電膜を単層で保護層として用いるものであり本発明とは構成が異なる。DCスパッタリングによってターゲット上のパーティクルを減らし、保護膜の膜質が改善できることが示されているが、保護膜が開示された透明導電膜単体の場合、記録ビームによって記録層が十分な温度に加熱されないために、トラック幅方向にアモルファスマークが細ってしまい、多値記録に必要なコントラスト(ダイナミックレンジ)が得られない。また、特許文献6は、記録層の急冷構造実現のために、基板側保護層全体又はその一部を前記透明導電膜で構成し、その抵抗値を3×10E−3Ω・cmとしているが、多値記録媒体に必要な透明導電膜の結晶形態についての開示や、具体的なIn−Zn−O系非晶質膜についての開示はない。従って、これら従来例から、青色波長多値記録の際の前記課題を解決するために、本発明の具体的実施形態であるIn−Zn−O系非晶質膜を熱拡散層として用いることを想起することは当業者といえども困難である。
基板と記録層の間の保護層を多層化し、その熱的関係を開示した従来例としては特許文献7〜10がある。何れも基板と記録層の間の保護層を2層化ないしは3層化し、記録層に接する保護層の熱伝導性を低くし、該保護層と接して基板側に配した保護層の熱伝導性を高くした媒体構造について開示している。しかしながら、良好な多値記録特性実現のために必要な熱拡散層の結晶形態についての開示や、具体的なIn−Zn−O系非晶質膜についての開示はない。従って、これら従来例から、青色波長多値記録の際の前記課題を解決するために、本発明の具体的実施形態であるIn−Zn−O系非晶質膜を熱拡散層として用いることを想起することは当業者といえども困難である。
特開平10−326435号公報 特開2003−218700号公報 特開2004−152416号公報 特開2001−84591号公報 特開平11−322413号公報 特開平11−185295号公報 特開平5−242425号公報 特開平5−144082号公報 特開平6−155921号公報 特開2000−322770号公報 Data Detection using Pattern Recognition,International Symposium on Optical Memory 2001,Technical Digest 2001,Pd−27
本発明は、記録再生波長を405nm近傍の青色波長域まで短波長化した際に生じる前述の問題点を解決した、良好な記録特性を有し、記録ピットの記録再生信号レベルが2値より多い相変化型光記録媒体の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜11)の発明(以下、本発明1〜11という)によって解決される。
1) 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、少なくとも、グルーブ溝形状を有する基板上に、熱拡散層、第1保護層、記録層、第2保護層、反射層とをこの順に備え、熱拡散層が第1保護層よりも高い熱伝導率を有し、かつ非晶質膜であることを特徴とする相変化型光記録媒体。
2) 反射層がAgを主成分とし、その膜厚が140〜300nmであることを特徴とする1)記載の相変化型光記録媒体。
3) 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、少なくとも、グルーブ溝形状を有する基板上に、反射層、第2保護層、記録層、第1保護層、熱拡散層をこの順に備え、熱拡散層が第1保護層よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする相変化型光記録媒体。
4) 反射層がAgを主成分とし、その膜厚が50〜140nmであることを特徴とする3)記載の相変化型光記録媒体。
5) 熱拡散層がIn、Zn及び酸素を主成分とする透明導電膜からなることを特徴とする1)〜4)記載の相変化型光記録媒体。
6) InとZnの原子比x=Zn/(Zn+In)が、0.05≦x≦0.40であることを特徴とする5)記載の相変化型光記録媒体。
7) 第1保護層がZnSとSiOを主成分とする材料からなることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
8) 記録層に下記の組成式で示される材料を用いることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
GeαXβ(SbγTe1−γ)1−α−β
(式中、XはAg、Au、Cu、Ca、Cr、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Sn、Pb、Mg、Mn、N、P、Bi、La、Ce、Cd、Tb、Dyの中から選ばれる少なくとも1種類の元素、α、β、γは原子比、0.01≦α≦0.10、0.001≦β≦0.10、0.65≦γ≦0.85)
9) 記録マークを形成する領域がビーム走査方向に互いに等しい面積に分割され(以後、この時間的に識別された仮想領域をセルと記す)、且つ前記各セルに対して1つの記録マークが形成されていて、この記録マークが前記セルに対して占有する面積の割合を情報として、多値記録を行うことができる1)〜8)の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
10) 波長405±15nm、対物レンズの開口数NA=0.65±0.3の光学系を用いて記録再生を行う光記録媒体であって、厚さ0.6±0.05mmの基板の成膜面側にグルーブ溝が設けられ、該グルーブ溝が一定の周期及び位相変調されたウォブルを有し、該グルーブ溝形状が、トラックピッチ=0.43〜0.50μm、溝幅=0.20〜0.30μmであることを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
11) セル長が0.20〜0.30μmであることを特徴とする9)又は10)記載の相変化型光記録媒体。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
まず、本発明の光記録媒体に多値記録を行う手段について説明する。
図1に、マーク占有率とRf信号の概念図を示す。記録マークは各セルの略中心に位置している。記録マークが書換え可能な相変化材料の相状態或いは基板の凹凸形状として記録された位相ピットでも同じ関係となる。記録マークが基板の凹凸形状として記録された位相ピットの場合は、Rf信号の信号利得が最大となるように位相ピットの光学的溝深さをλ/4(λは記録再生レーザの波長)とする必要がある。Rf信号値は、記録再生用の集光ビームがセルの中心に位置する場合の値で与えられ、1つのセルに占める記録マークの占有率の大小によって変化する。一般的にRf信号値は、記録マークが存在しないときに最大となり、記録マークの占有率が最も高いときに最小となる。
このような面積変調方式により、例えば、記録マークパタン数(多値レベル数)=6で多値記録を行うと、各記録マークパタンからのRf信号値は図2のような分布を示す。Rf信号値は、その最大値と最小値の幅(ダイナミックレンジ、DR)を1として正規化された数値で表記されている。記録再生は、λ=650nm、NA=0.65(集光ビーム径=約0.8μm)の光学系を用いて行い、セルの円周方向長さ(以下、セル長と記す)を約0.6μmとした。このような多値記録マークは、図3のような記録ストラテジで、記録パワー(Pw)、消去パワー(Pe)、ボトムパワー(Pb)のパワー及びその開始時間をパラメータとしてレーザ変調することにより形成できる。
上記のような多値記録方式においては、記録線密度を上げていく(=トラック方向のセル長を短くしていく)と、次第に集光ビーム径に対してセル長の方が短くなり、対象となるセルを再生するとき、集光ビームが前後のセルにはみ出すようになる。そのため対象となるセルのマーク占有率が同じでも、前後のセルのマーク占有率の組合せにより、対象となるセルから再生されるRf信号値が影響を受ける。即ち、前後のマークとの符号間干渉が起こるようになる。この影響で、図2に示すように、各パタンにおけるRf信号値は偏差を持った分布になる。即ち、対象となるセルがどの記録マークのパタンであるかを誤り無く判定するためには、各記録マークから再生されるRf信号値の間隔が、前記偏差以上に離れている必要がある。図2の場合、各パターン番号の記録マークのRf信号値の間隔と偏差はほぼ同等であり、記録マークパタンの判定ができる限界になっている。
この限界を打破する技術として、連続する3つのデータセルを用いた多値判定技術DDPR(非特許文献1参照)が提案されている。この技術は、連続する3つのデータセルの組み合わせパタン(8値記録時、8=512通り)からなる多値信号分布を学習し、そのパターンテーブルを作成するステップと、未知データの再生信号結果から3連続マークパタンを予測した後、前記パタンテーブルを参照して再生対象となる未知信号を多値判定するステップとからなる。これにより、再生時に符号間干渉が生じるような従来のセル密度或いはSDR値においても、多値信号判定のエラー率を低くすることが可能になった。ここでSDR値とは、多値階調数をnとした時の各多値信号の標準偏差σiの平均値と、多値Rf信号のダイナミックレンジDRとの比=Σσi/(n×DR)で表され、2値記録におけるジッターに相当する信号品質である。一般に、多値階調数nを一定とすると、多値信号の標準偏差σiが小さいほど、且つダイナミックレンジDRが大きいほどSDR値は小さくなり、多値信号の分別性が良くなってエラー率は低くなる。逆に、多値階調数nを大きくすると、SDR値は大きくなりエラー率は高くなる。
このような多値判定技術を用いると、例えば多値階調数を8に増やして、各Rf信号値の分布が重なり合ってしまう図4のような場合でも、エラーレート10E−5台で8値の多値判定が可能となる。
次に、本発明1〜11の構成について説明する。なお、本発明の光記録媒体は多値記録を主目的としているが、当然ながら通常の2値記録を行うこともできる。
本発明1では基板側から光を入射するが、第1保護層と基板の間に、第1保護層よりも熱伝導率の高い熱拡散層を有するため、記録層の溶融温度を高く保ったまま、記録による熱が反射層と熱拡散層内に放熱され、急冷構造を実現することができる。熱拡散層の熱伝導率は第1保護層の2倍以上とすることが好ましく、より好ましくは5〜10倍とする。例えば保護層材料として汎用されているZnSSiOを用いた場合、熱拡散層の熱伝導率は1〜10W/mK程度とすることが好ましい。
また、熱拡散層が非晶質膜であるため以下のような作用がある。即ち、従来から一般的な保護層材料として用いられてきたZnS・SiO混合膜やSiO、ZrO、Ta、TiO、ZnO等の誘電体膜では、熱伝導は格子振動の伝播によるものが主であり、概して熱伝導率が低く、熱拡散層として機能する膜はAlNやBeO、SiC等に限られていた。但し、これらの膜は何れも結晶性を有するため、一般的な製造方法であるスパッタ成膜では応力が高く、成膜直後又は繰り返し記録の際に膜割れが発生し易く、良好かつ安定した熱伝導特性を得るには問題があった。前記特許文献6に開示されたIn−Sn−O透明導電膜も熱拡散層として機能しうるが、In−Sn−O膜は結晶性の膜であり、上記結晶性熱拡散層と同様の問題を有していた。これに加えて、結晶性の熱拡散層では、結晶粒に伴う膜表面の凹凸を有するため、多値記録マークエッジの揺らぎの原因となり、信号ノイズを増加させてSDRやエラーレートを増大させるため、良好な多値記録特性が得られない。
また、本発明1の反射層としては、熱伝導率の高いAgを主成分(通常98原子%以上)とする材料が最適である。Agに添加する元素としては、Au、Pd、Pt、Ru、Cu、Zn、Nd、Ce、In、Bi、その他遷移金属元素、希土類元素等が適している。これらの不純物添加により、Ag膜の高温環境下で凝集や結晶粒成長を抑制できる。但し、その総含有量は、Agの良好な熱伝導率を損ねることのないように、通常2原子%以下、望ましくは1原子%以下、更に望ましくは0.5原子%以下である。
膜厚は140〜300nmが好ましく、より好ましくは、200〜260nmである。これにより、反射層の熱伝導率が十分に高く、大きい冷却能を有するため、反射層への効果的な放熱により良好な急冷構造が実現でき、信号の変調度、多値信号におけるダイナミックレンジが大きく取れ、SDRを低くすることが可能である。
本発明3では熱拡散層から反射層までの積層順を本発明1と逆順にする。光は熱拡散層側から入射させることになる。この構成では、グルーブ溝形状を有する基板上に、放熱性の高い反射層が形成されているため、特に繰り返し記録において基板の熱ダメージが発生せず、SDR増大のない良好な繰り返し特性が得られる。更に、第1保護層の上に、該保護層よりも熱伝導率の高い熱拡散層を有するため(熱拡散層の熱伝導率を第1保護層よりも高くする程度は本発明1の場合と同様である)、記録層の溶融温度を高く保ったまま、記録による熱が反射層と熱拡散層内に放熱され、急冷構造を実現することができる。また、この構成の場合には、結晶性の熱拡散層を用いることができるが、これは熱拡散層の平面性が記録層の平面性に影響せず、結晶とアモルファスの境界を乱れさせることがないため、初期のSDRが十分に低くなることによると考えられる。しかし、熱拡散層を非晶質膜とすることにより、成膜応力や繰り返し記録による膜割れが発生せず、良好かつ安定した熱伝導特性が得られるため、非晶質膜の方が好ましい。
また、本発明3の場合も本発明1と同様に、反射層にはAgを主成分とする材料が最適である。膜厚は50〜140nmであることが好ましく、より好ましくは80〜120nmである。140nm以下であれば、膜表面の平面性が良好なため信号ノイズが増加せず、良好な初期SDRが得られる。しかし、50nm未満になると、反射層の冷却能が低下するため、十分なサイズのマークを形成する上で必要な急冷構造が得られなくなる。膜厚が上記範囲にあれば、熱拡散層との組み合わせにより良好な急冷構造が実現でき、信号の変調度、多値信号におけるダイナミックレンジが大きく取れ、SDRを低くすることが可能である。
熱拡散層は、In、Zn及び酸素を主成分とする透明導電膜からなることが好ましい。ここで主成分とは、これらの元素が膜全体の95原子%以上、望ましくは98原子%以上を占めることを意味する。InにZnをドーピングしたIn−Zn−O透明導電膜は、スパッタ成膜時の広い圧力範囲で非晶質膜が得られる。このため膜表面が極めて平坦であり、良好な多値記録特性が得られる。また、膜の応力が低く、結晶膜のような繰り返し記録による割れが起こらないので、繰り返し記録の熱負荷に対しても安定して熱拡散層として機能する。
熱拡散層のInとZnの原子比x=Zn/(Zn+In)は、0.05≦x≦0.40であることが好ましい。より好ましくは0.05≦x≦0.20である。In−Zn−O透明導電膜は上記組成範囲で1E−4Ω・cm台の低抵抗値を示し、格子振動に加えて、伝導電子も熱伝導に寄与するため十分な熱伝導性を有し熱拡散層として良好に機能する。x<0.05の範囲では、In−Zn−O膜が結晶化し易く熱拡散層として好ましくない。また、0.40<xの範囲では、In−Zn−O膜の熱伝導性が悪化し熱拡散層として好ましくない。
熱拡散層材料としては、In、Sn及び酸素を主成分とする透明導電材料またはAl、Zn及び酸素を主成分とする透明導電材料を使用することもできる。但し、膜の非晶質構造と低い抵抗値を得るための成膜条件の範囲は、In−Zn−O膜の場合に比べて一般に狭くなる。
熱拡散層には、更なる特性、信頼性の向上などを目的として、他の元素や化合物を添加することができる。例えば、ドーパントとして機能するハロゲン元素や酸化物等を添加する事ができる。熱拡散層の好ましい熱伝導率は膜状態で1〜10W/mKである。例えば、x=0.10のIn−Zn−O膜で4〜5W/mKであり、AlN膜と同等、ZnS・SiO膜よりも1桁大きい程度である。これらの熱伝導率は、レーザフラッシュ法やレーザ加熱ANGSTROM法(ULVAC TECHNICAL JOURNAL、No.51、P.24−29、1999)により相対評価が可能である。また、熱拡散層は、400nmの記録再生波長に対して、消衰係数が0.1以下であることが望ましい。熱拡散層の消衰係数が0.1より大きいと、膜の吸収によってダイナミックレンジの低下が起こりSDRが増大してしまうので好ましくない。
熱拡散層の好ましい膜厚は5〜30nmである。5nmよりも薄いと、十分な放熱効果が得られなくなり好ましくない。また、30nmよりも厚くなると、第2保護層膜厚を薄くし過ぎた場合と同様に、変調度やダイナミックレンジが小さくなり、感度が低く、パワーマージンのない非実用的な媒体になってしまう。
第1保護層には、金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物等の透明性が高い高融点材料を用いることができる。具体的には、SiOx、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrO、Ta等の金属酸化物;Si、AlN、TiN、BN、ZrN等の窒化物;ZnS、TaS等の硫化物;SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrC等の炭化物が挙げられ、単体で又は混合物として用いることができる。保護層に最適な材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。中でも、ZnSとSiOを主成分とする材料が望ましい。ここで、主成分とは、材料全体の95モル%以上を占めることを意味する。この材料は、化学的安定性や機械的強度に優れている点や、熱伝導率が0.5W/mK程度と低いため、記録層の溶融ピーク温度を高く保ち、変調度の高いアモルファスマークを形成するのに有利である点などから、記録層に接する誘電体膜として最も適しており、安定して良好な記録特性を有する媒体が得られる。特にZnSを60〜90モル%含むSiOとの混合物は、繰り返し記録、高温環境下での膜自身の結晶化や化学変化、膜変形がないため望ましい。
第一保護層の膜厚は、熱伝導層及び基板側保護層又はカバー側保護層の膜厚と記録再生波長を加味して決められる。第一保護層、基板側保護層及びカバー側保護層がZnSとSiOを主成分とする材料で、熱伝導層がIn、Zn及び酸素を主成分とする材料の場合、これらの膜の波長405nmにおける屈折率は何れも2.0〜2.3なので、第一保護層、熱伝導層及び基板側保護層又はカバー側保護層の合計膜厚は30〜60nm又は130〜160nmである。このうち、第一保護層の膜厚は、記録層の溶融温度を下げずに急冷構造が得られるよう5〜25nmとすることが望ましい。
記録層には下記の組成式で示される材料を用いることが望ましい。
GeαXβ(SbγTe1−γ)1−α−β
(式中、XはAg、Au、Cu、Ca、Cr、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Sn、Pb、Mg、Mn、N、P、Bi、La、Ce、Cd、Tb、Dyの中から選ばれる少なくとも1種類の元素、α、β、γは原子比、0.01≦α≦0.10、0.001≦β≦0.10、0.65≦γ≦0.85)
Sb70Te30共晶組成近傍のSb及びTeを主成分とする記録材料は、繰り返し記録特性に優れており、SbとTeの原子数比を変えることにより結晶化速度を調整することが可能である。一般に、Sbの比率を高くすると結晶化速度を速くすることができるが、Sbが85原子%を越えると、結晶化速度が急激に上昇して非晶質マークの形成が困難になり、アモルファスマークの保存安定性も著しく劣化してしまう。逆に、Sbが65原子%よりも少ないと、繰り返し記録によるジッターの上昇が大きくなり、かつ記録線速が1〜2m/s程度に遅くなって実用的でなくなる。従って、γは、0.65〜0.85とするのが好ましい。
また、記録層には、保存安定性改善のためGeを含むことが望ましい。Sb−Teの二元系だけでは、例えば、70〜80℃程度の高温環境下に置かれた場合、数10時間で非晶質マークが消失(結晶化)してしまう。非晶質マークの安定性を確保するために好適なGeの含有量は、1〜10原子%(α=0.01〜0.10)、好ましくは3〜8原子%、更に好ましくは5〜8原子%である。Ge量が10原子%を超えると、繰り返し記録において相分離が起こり易くなる。またGeは結晶化速度を遅くするので、結晶化速度調整のためにGeの添加に伴いSb比を高くする必要があるが、Sb比が高くなると記録感度が低下し好ましくないため、前述のようにGe量は5〜8原子%が最適である。
また、記録層には、記録速度や感度、繰り返し特性、保存安定性等の調整のため、Ag、Au、Cu、Ca、Cr、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Sn、Pb、Mg、Mn、N、P、Bi、La、Ce、Cd、Tb、Dy等から選ばれる少なくとも1種類の元素を添加してもよい。これらの添加元素の総量は0.1〜10原子%、好ましくは0.1〜5原子%である。Sb及びTeを主成分とする共晶系記録材料において、添加元素の総量が10原子%を大きく越えると、初期特性ならびに繰り返し記録特性が悪化するため、Geと上記添加元素の総量は、15原子%以下、好ましくは10原子%以下である。
相変化記録層の望ましい膜厚は5〜20nmである。5nm未満では反射率が低くなり過ぎ、また膜成長初期の不均一な組成、疎な膜の影響が現れ易いので好ましくない。一方、20nmよりも厚いと熱容量が大きくなり記録感度が悪くなるし、結晶成長が3次元的になるため、非晶質マークのエッジが乱れ、ジッタが高くなる傾向にある。
本発明では、成膜面側にトラックピッチ=0.43〜0.50μm、溝幅=0.20〜0.30μmのグルーブ溝を有する厚さ0.6mmの基板を用いることが良好な多値記録特性を得る上で好ましい。ここで、グルーブの溝幅とは、溝底面の最も深い部分の寸法をいう。また、基板厚さは、望ましくは0.6±0.05mm、より望ましくは0.6±0.02mm、最も望ましくは0.6±0.01mmである。この範囲ならば、記録型DVDと同じNA=0.65±0.3のピックアップを用い、波長405±15nmのレーザを用いて、良好な多値記録・再生が可能となり、一つの光学系でDVDとの互換が取り易くなる。
上記本発明の光記録媒体に対し、波長405nmのレーザとNA=0.65の光学系を用いた場合、トラックピッチがレーザビームの収束直径に相当する0.50μm以下とすることが望ましい。これよりもトラックピッチが広いと、例えば、デジタルハイビジョン放送の2時間録画に必要な20GB以上の記憶容量を得るために、多値記録のセル密度を上げなくてはならず、符号間干渉が大きくなって良好な再生信号品質が得られなくなってしまう。望ましいセル長は0.20〜0.30μmである。セル長が0.20μm未満の場合、前後マークの符号間干渉が大きくなり好ましくない。トラックピッチが0.43μm未満になると、隣接トラック間でのクロスイレースやクロストークが顕著になり、同様に信号品質を落としてしまう。また、トラッキングにプッシュプル法を用いる場合、グルーブ記録に適した溝深さ18〜30nmにおいて、プッシュプル信号の信号振幅が小さくなるため、安定したトラッキングサーボが困難になる。このような理由から、トラックピッチは0.43〜0.50μmであることが望ましい。
グルーブの溝幅は0.20〜0.30μmであることが望ましい。前記トラックピッチの範囲で0.30μmよりも溝幅が広くなると、溝形状のランド部分が狭くなり過ぎ、プッシュプル信号振幅が小さくなってしまうと共に、十分な振幅のウォブル信号を得るのが困難になってしまう。また、狭いランド部の形状を均一に形成するために、基板成形やスタンパの原盤作製が非常に困難になる。逆に、溝幅を0.20μm未満にすると、記録マークがランド部にはみ出し易くなるので、クロスイレースにより信号品質が劣化してしまう。また、グルーブ溝深さ18〜30nmにおいて、反射率及びダイナミックレンジは溝幅が広いほど高くなるため、SDRを十分に低くするためには、溝幅は0.25〜0.30μmであることがより望ましい。
本発明の相変化型光記録媒体の一例を図7及び図8に示す。
図7は、透明基板上に、基板側保護層、非晶質熱拡散層、第1保護層、相変化記録層、第2保護層、反射層を順に積層し、有機保護層を形成した後に、接着層を介して同じ厚さのカバー基板を貼り合わせた例である。記録再生用のレーザビームは、図の下側から入射する構造をとる。
図8は、透明基板上に、反射層、第2保護層、相変化記録層、第1保護層、熱拡散層、カバー側保護層を順に積層し、接着層を介して同じ厚さのカバー基板を貼り合わせた例である。記録再生用のレーザビームは、図の上側から入射する構造をとる。
基板の材料には、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの透明樹脂を用いることができる。中でもポリカーボネート樹脂は、CDやDVDにおいて実績があり安価な上に、波長400nm付近でも高い透過率を示すため最も好ましい。基板にはグルーブ溝が形成されており、その深さは18〜30nm程度である。
第2保護層には、第1保護層と同様の材料を用いることができる。
膜厚は、8〜20nmであることが望ましい。8nmより薄いと、機械的強度が低下し、繰り返し記録特性上好ましくない。また、レーザーエネルギーの大部分が反射層に伝熱してしまい、溶融領域が小さくなるに伴ってマーク幅が小さくなり、変調度やダイナミックレンジが取れなくなってしまうし、感度が低くパワーマージンのない非実用的な媒体になってしまう。逆に20nmより厚いと、放熱効果が薄れ急冷構造が得られなくなって、同様に変調度やダイナミックレンジが取れなくなってしまう。また、隣接トラック間のクロスイレースや前後マーク間の熱干渉が増大してしまう。特に、膜厚が30nm程度以上に厚くなると、アモルファスマークの形成すら困難になってしまう。このため、結晶化速度の遅い記録材料しか使えなくなり、記録線速が上げられなくなる。
媒体の感度調整のため、熱拡散層に接し、第1保護層と反対側に基板側保護層あるいはカバー側保護層を設けても良い。基板側保護層及びカバー側保護層には、第1保護層あるいは第2保護層と同様の材料を用いることができる。媒体の感度調整のためには、熱拡散層よりも熱伝導率の低い材料であることが好ましい。中でも、ZnSを60〜90モル%含むSiOとの混合膜が好ましい。
反射層がAgを主成分とし、かつ第2保護層が硫黄を含む材料の場合、両者の境界にAgの硫化を防ぐためのバリア層を設けても良い。この場合、第2保護層の一部を硫黄を含まない誘電体材料で置換する。バリア層としては、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrO、Ta等の金属酸化物;Si、AlN、TiN、BN、ZrN等の窒化物;SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrC等の炭化物;及びこれらの混合物が用いられる。中でも、TiCとTiOを主成分とした混合膜、NbとSiOを主成分とした混合膜が適している。バリア層の膜厚は、2〜5nm程度が好ましい。
本発明によれば、面積変調方式による多値記録において、記録再生波長が405nm付近の青色レーザの場合でも、実用に適した低いSDRと良好な繰り返し記録特性を両立できる相変化型光記録媒体を提供できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明する。以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
実施例1〜7、比較例1〜7
溝深さ20nm、溝幅0.28μm、トラックピッチ0.46μm、周期900kHz・振幅15nmのウォブルが入ったグルーブ溝を有する厚さ0.6mm、直径120mmのポリカーボネート基板(製品名ST3000、帝人バイエルポリテック社製)を用意し、その上に、表1に示す材料組成及び膜厚からなる、図7における基板側保護層から金属反射層までの各層をスパッタリング法により積層した。なお、表1には示していないが、硫化バリア層として、Nb−20モル%SiO膜を膜厚3nmで形成した。表中の熱拡散層材料及び第1保護層材料の熱伝導率(レーザ加熱ANGSTROM法による測定値)は、IZO(In・ZnO)=4.7W/mK(ZnOの割合が2.5wt%又は30wt%のときはやや低くなる)、AlN=5.6W/mK、ITO(In・SnO)=4.5W/mK、Al=2.8W/mK、SiC=9.6W/mKであり、ZnSSiO(70:30及び80:20)は測定限界の0.5W/mK以下であった。
次いで、紫外線硬化樹脂(大日本インキ製SD318)を、スピンコート法により厚さ7μm塗布して有機保護層とした後、紫外線硬化型樹脂(日本化薬DVD003)を用いて厚さ0.6mmのカバー基板を貼り合わせ、図7に示す層構造の厚さ1.2mmの実施例1〜7及び比較例1〜5の各光記録媒体を得た。
続いて、各記録媒体の記録層を初期化(結晶化)した。初期化は、波長780nm、ビーム径200μm×1μm(半径方向×トラック方向)の大口径LDを用いた初期化装置を用いて、記録媒体を線速3.0m/sで回転させながら、送りピッチ36μm/回転で、大口径LDを半径方向に送りながら行った。
次に、波長405nmのLD(レーザダイオード)、NA0.65の対物レンズからなるピックアップヘッドが搭載された記録再生装置を用い、各記録媒体の多値記録特性を評価した。多値記録方法としては、記録線速6.0m/s、基本セル長を0.24μm(記録周波数25MHz)とし、この中に8値の多値記録を行なった。即ち、反射率の最も高い未記録部をM0とし、マークをM1〜M7の7段階に変化させて8値とした。記録マークは、図9に示す発光波形を発生させて記録した。即ち、記録パワー(Pw)を最大12mW、消去パワー(Pe)を記録パワーの62%、ボトムパワー(Pb)を0.1mWとした。また、記録パワー照射時間Tmpを一定とし、セル中心に対称にマークを記録するため、記録パワーを照射するための開始時間を基準クロックからTmsシフトさせた。マークの長さはボトムパワー(Pb)の照射時間Tclで調整した。小さいマークほど、Tmsを長くしTclを短くした。記録は、Tmpを3.75nsに固定し、Tms=6.0〜17.5ns、Tcl=3.5〜22.5nsで調整して行った。代表的な発光波形を表3に示す。再生パワーは全て0.5mWで行った。
次に、M0からM7信号のランダム記録を行い、各レベルの反射信号の変動の揺らぎ、即ち前述のSDRを測定した。SDRの測定は、まずサンプリング周波数1GHzで80sector(1sector当り1221個のセル数)のデータを取り込んだ。ランダムデータ記録時、1sectorの先頭にM0、M7各5bitの連続データからなる同期信号を記録した。再生した信号は、図10のような流れにより、フィルターを通して、トラック1周に存在する数kHzレベル以下の大きな反射信号の変動を除去した後に、同期信号を用いてAGC処理を行なった。このAGC処理とはM0、M7連続信号の振幅を基準に、その後に記録されているランダム信号の振幅変動差をなくし、一定レベルの振幅を持った信号に加工することである。更にその後、波形等価回路(EQ)を通して、特にM1、M2マークのように振幅の小さな信号を増幅させる。この信号を取りこんで各レベルの反射電位の標準偏差を求め、SDR値を求めた。
このようにして求めたSDRについて、実用システムとして十分なマージンがとれるSDR≦2.8%の場合を○、駆動装置側とのマージン再配分により、実用システムとして許容できる2.8<SDR≦3.0%の場合を△、3.0%<SDRで実用媒体として不可能な場合を×として評価した。繰り返し記録特性については、1000回記録後のSDRについて同様の評価基準で○、△及び×を評価した。
表1の結果から、実施例1〜7の媒体は、何れも熱拡散層がIn−Zn−O透明導電膜であり、良好なSDRが得られていることが分る。実施例1〜3は、基板側保護層の膜厚が15〜20nmと薄いため、繰り返し1000回後のSDRがやや上昇してしまったが、実用システムとしては許容できる範囲であった。これに対し、実施例4〜6は、基板側保護層の膜厚が105〜110nmと厚いため、繰り返し記録特性も全く問題がなかった。実施例7は、実施例5に比較して反射層膜厚がやや薄いため、初期及び繰り返し1000回後のSDRがやや高いが、実用システムとしては許容できる範囲であった。
一方、熱拡散層が結晶膜の比較例1〜4では、初期及び繰り返し1000回後のSDRを両方とも満足する媒体は得られなかった。比較例1〜3において、初期のSDRが十分に低くならないのは、熱拡散層が結晶性を示すため、平面性が損なわれて、多値マークに乱れが生じたためと考えられる。また、1000回記録後に、何れもSDRが著しく悪化するのは、膜に発生したマイクロクラックによる熱伝導性の低下が原因と考えられる。比較例4のSiC膜の初期SDRが高いのは、青波長での吸収が高いために、ダイナミックレンジが小さくなってしまったためである。また、熱拡散層を有しない図5の従来構造である比較例5は、初期特性において、既にSDRが3.0%を越えていた。また、比較例6及び7は、実施例6と比較して、In−Zn−O膜の組成が好ましい範囲にないため、良好な記録特性が得られない。即ち、比較例6では、原子数比x=Zn/(Zn+In)の範囲がx<0.05なので、熱伝導層が結晶化してしまい、比較例2及び3と同様の結果であった。比較例7では、x>0.40なので、熱伝導層の比抵抗が高く、従って熱伝導層として十分に機能しないため、比較例5と同様の結果であった。
実施例8〜13
実施例1〜7と同じ基板を用い、表2に示す材料組成及び膜厚からなる図8における金属反射層から熱拡散層までの各層をスパッタリング法により積層した。なお、表2には示していないが、硫化バリア層としてNb−20モル%SiO膜を膜厚3nmで形成した点も同様である。
次いで、紫外線硬化型樹脂(日本化薬DVD003)を用いて厚さ0.6mmのカバー基板を貼り合わせ、図8に示す層構造の厚さ1.2mmの実施例8〜13の各光記録媒体を得た。これらの記録媒体は、基板に対し実施例1〜7と逆順の構成であり、カバー基板側から記録再生を行う例である。
これらの記録媒体に対し、実施例1〜7と同様の評価を行った結果を表2に示した。
表3から分るように、実施例8〜10は、何れも熱拡散層がIn−Zn−O透明導電膜であり、良好な初期SDRが得られている。また、基板状に反射膜が形成された構成のため、繰り返し記録特性にも全く問題がなかった。即ち、実施例8〜10の構成では、実施例4〜7のように、光入射側の保護層を厚くする必要がないことが分かる。実施例11は、反射層の膜厚が145nmとやや厚いため、初期及び繰り返し1000回後のSDRがやや高いが、実用システムとしては許容できる範囲であった。
熱拡散層が結晶膜である実施例12及び13は、初期のSDRが良好で、繰り返し1000回後のSDRがやや高くなったものの、実用システムとしては許容できる範囲であった。逆順構成の場合に結晶性の熱拡散層が使える理由は、前述した通りと考えられるが、繰り返し記録によってマイクロクラックが発生し膜の熱伝導性が低下するため、1000回記録後のSDRがやや高くなったものと考えられる。
Figure 2006099927
Figure 2006099927
Figure 2006099927
マーク占有率とRf信号の概念図。 非特許文献1の面積変調方式により、記録マークパタン数(多値レベル数)=6で多値記録を行った場合の、各記録マークパタンからのRf信号値の分布を示す図。 図2の多値記録を行うための記録ストラテジを示す図。 多値階調数を8に増やすことにより、各Rf信号値の分布が重なり合ってしまう例を示す図。 相変化型光記録媒体の従来例を示す図。 SbTe共晶系記録材料の結晶状態とアモルファス状態における、光学定数(屈折率n、吸収係数k)の変化を示す図。 本発明の相変化型光光記録媒体の一例を示す図。 本発明の相変化型光光記録媒体の他の一例を示す図。 実施例で用いた記録光波形を示す図。 再生信号からSDR値を求める流れを説明するための図。
符号の説明
Pw 記録パワー
Pe 消去パワー
Pb ボトムパワー
RF信号 再生信号
HPF ハイパスフィルター
LPF ローパスフィルター
AGC AGC処理
EQ 波形等価回路
SDR 多値階調数をnとした時の各多値信号の標準偏差σiの平均値と、多値Rf信号のダイナミックレンジDRとの比=Σσi/(n×DR)

Claims (11)

  1. 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、少なくとも、グルーブ溝形状を有する基板上に、熱拡散層、第1保護層、記録層、第2保護層、反射層とをこの順に備え、熱拡散層が第1保護層よりも高い熱伝導率を有し、かつ非晶質膜であることを特徴とする相変化型光記録媒体。
  2. 反射層がAgを主成分とし、その膜厚が140〜300nmであることを特徴とする請求項1記載の相変化型光記録媒体。
  3. 光照射による結晶とアモルファスの相転移現象を利用した光記録媒体であって、少なくとも、グルーブ溝形状を有する基板上に、反射層、第2保護層、記録層、第1保護層、熱拡散層をこの順に備え、熱拡散層が第1保護層よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする相変化型光記録媒体。
  4. 反射層がAgを主成分とし、その膜厚が50〜140nmであることを特徴とする請求項3記載の相変化型光記録媒体。
  5. 熱拡散層がIn、Zn及び酸素を主成分とする透明導電膜からなることを特徴とする請求項1〜4記載の相変化型光記録媒体。
  6. InとZnの原子比x=Zn/(Zn+In)が、0.05≦x≦0.40であることを特徴とする請求項5記載の相変化型光記録媒体。
  7. 第1保護層がZnSとSiOを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
  8. 記録層に下記の組成式で示される材料を用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
    GeαXβ(SbγTe1−γ)1−α−β
    (式中、XはAg、Au、Cu、Ca、Cr、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Sn、Pb、Mg、Mn、N、P、Bi、La、Ce、Cd、Tb、Dyの中から選ばれる少なくとも1種類の元素、α、β、γは原子比、0.01≦α≦0.10、0.001≦β≦0.10、0.65≦γ≦0.85)
  9. 記録マークを形成する領域がビーム走査方向に互いに等しい面積に分割され(以後、この時間的に識別された仮想領域をセルと記す)、且つ前記各セルに対して1つの記録マークが形成されていて、この記録マークが前記セルに対して占有する面積の割合を情報として、多値記録を行うことができる請求項1〜8の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
  10. 波長405±15nm、対物レンズの開口数NA=0.65±0.3の光学系を用いて記録再生を行う光記録媒体であって、厚さ0.6±0.05mmの基板の成膜面側にグルーブ溝が設けられ、該グルーブ溝が一定の周期及び位相変調されたウォブルを有し、該グルーブ溝形状が、トラックピッチ=0.43〜0.50μm、溝幅=0.20〜0.30μmであることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の相変化型光記録媒体。
  11. セル長が0.20〜0.30μmであることを特徴とする請求項9又は10記載の相変化型光記録媒体。
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