(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
車両には、図1に示すように、内燃機関としての多気筒ガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、複数の気筒(シリンダ)12を有するシリンダブロック13と、その上側に配置されるシリンダヘッド14とを備える。各気筒12にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15は、コネクティングロッド(図示略)を介し、出力軸であるクランクシャフト16に連結されている。そのため、各ピストン15が往復動すると、その動きはコネクティングロッドによって回転運動に変換された後、クランクシャフト16に伝達される。なお、図1では、クランクシャフト16がシリンダブロック13等のほかの部材に対し、90度回転させた状態で示されている。
各気筒12内のピストン15よりも上側の空間は燃焼室17となっている。各燃焼室17には、吸気通路の一部をなす吸気ポート18が接続されており、エンジン11の外部の空気が吸気通路を通過して燃焼室17に吸入される。また、燃焼室17には排気通路の一部をなす排気ポート19が接続されており、燃焼室17で生じた燃焼ガスが同排気通路を通ってエンジン11の外部へ排出される。
上記シリンダヘッド14には、吸気ポート18を開閉する吸気バルブ21と、排気ポート19を開閉する排気バルブ22とが、機関バルブとして気筒12毎に設けられている。本実施形態では、これらの吸・排気バルブ21,22が気筒当りに一対ずつ設けられている。同一種類のバルブ21,21(又は22,22)は気筒配列方向(図1では紙面と直交する方向)に並設されている。吸・排気バルブ21,22は、いずれもバルブスプリング23によって、吸・排気ポート18,19を閉鎖する方向(閉弁方向、図1の略上方)へ付勢されている。シリンダヘッド14における吸気バルブ21の略上方には、吸気カム24を有する吸気カムシャフト25が回転可能に支持されている。同様に、シリンダヘッド14における排気バルブ22の略上方には、排気カム27を有する排気カムシャフト28が回転可能に支持されている。
吸・排気カムシャフト25,28は、タイミングチェーン、スプロケット(図示略)等によりクランクシャフト16に駆動連結されている。そして、クランクシャフト16の回転がタイミングチェーン等を介して吸・排気カムシャフト25,28に伝達される。吸・排気カム24,27の回転により、吸・排気バルブ21,22がバルブスプリング23に抗して押下げられる。この押下げにより、吸・排気ポート18,19が開放された状態(開弁状態)になる。
シリンダヘッド14には燃料噴射弁29が各気筒12に対応して取付けられている。燃料噴射弁29から噴射された燃料は、吸気ポート18を通る吸入空気と混ざり合って混合気となる。なお、吸気ポート18を介さずに燃料噴射弁29から燃焼室17へ燃料を直接噴射する構成としてもよい。
シリンダヘッド14には、点火プラグ31が各気筒12に対応して取付けられている。前記混合気は点火プラグ31の火花放電によって着火され、爆発・燃焼する。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランクシャフト16が回転されてエンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。
エンジン11には、吸気バルブ21のバルブ特性を可変とする可変動弁機構として、バルブタイミング可変機構32及び作用角可変機構33が設けられている。
バルブタイミング可変機構32は、クランクシャフト16に対する吸気カムシャフト25の相対回転位相を変化させることにより、吸気バルブ21のバルブタイミングをクランク角(クランクシャフト16の回転角)に対して連続的に変更するための機構である。吸気バルブ21のバルブタイミングは、例えば、図2に示すように吸気バルブ21の開弁時期IVO及び閉弁時期IVCで表すことができる。バルブタイミングは、吸気バルブ21の開弁期間(開弁時期IVOから閉弁時期IVCまでの期間)が一定に保持された状態で進角又は遅角させられる。なお、図2中のEVO,EVCは排気バルブ22の開弁時期及び閉弁時期である。
一方、作用角可変機構33は、吸気カム24の作用角θを連続的に変更するための機構である。ここで、図3に示すように作用角θは、吸気カム24の回転(図3ではクランク角で表現)について、吸気バルブ21の開弁時期IVOから閉弁時期IVCまでの角度範囲である。本実施形態では、作用角可変機構33により上記作用角θに加え吸気バルブ21の最大リフト量も連続的に変更される。最大リフト量は、吸気バルブ21が開弁時において最も下方まで移動(リフト)したときの同吸気バルブ21の移動量である。これらの作用角θ及び最大リフト量は、作用角可変機構33によって互いに同期して変化させられ、例えば、作用角θが小さくなるほど最大リフト量も小さくなる。作用角θが小さくなるに従い、吸気バルブ21の開弁時期IVOと閉弁時期IVCとが互いに近寄り、開弁期間が短くなり、気筒12当りの吸入空気量が少なくなる。
作用角可変機構33は、図4に示すように、気筒12毎の仲介駆動機構34を備えるほか、支持パイプ35、コントロールシャフト36及びアクチュエータ37を備えている。支持パイプ35は、気筒12の配列方向(図4では略左右方向)へ延びるように配置され、シリンダヘッド14の支持壁部26(図6参照)に固定されている。なお、この方向について、特に区別する必要のない場合には「軸方向」といい、区別する必要のある場合には矢印X方向又は矢印Y方向というものとする。矢印X方向は吸気カム24の作用角θを小さくする方向であり、矢印Y方向は同作用角θを大きくする方向である。前記固定により、支持パイプ35は軸方向への移動が不能であり、しかも回転不能である。コントロールシャフト36は支持パイプ35内に挿通されている。アクチュエータ37は電動モータと、この電動モータの回転を直線運動に変換してコントロールシャフト36に伝達する変換機構とを備えている。そして、この直線運動の伝達により、コントロールシャフト36が軸方向へ往復駆動される。
各仲介駆動機構34は、気筒12毎の吸気カム24と吸気バルブ21の上端部との間に設けられている(図1参照)。各仲介駆動機構34は、図4〜図6に示すように、入力アーム38と、その軸方向についての両側に配置された一対の出力アーム39,40とを備えている。仲介駆動機構34毎の入・出力アーム38〜40は支持壁部26,26間に配置されており、軸方向への変位が両支持壁部26,26によって規制されている(図6参照)。
入力アーム38はカム入力部を備えている。カム入力部は、入力アーム38の外周面に設けられた一対の支持片41,41と、両支持片41,41間に軸支されたローラ42とを備えている。そして、吸気カム24の回転がローラ42及び両支持片41,41を通じて入力アーム38に伝達(入力)される。また、入力アーム38の外周面において、両支持片41,41とは異なる箇所には、突状をなす補助回転入力部56が入力アーム38と一体揺動可能に設けられている(図1参照)。さらに、各出力アーム39,40は、ベース円部43と、そのベース円部43の外周面から突出するノーズ44とを備えている。ノーズ44は、凹状に湾曲するカム面44Aを有する。
支持パイプ35と、入・出力アーム38〜40との間には、動力伝達用のスライダ45が配置されている。スライダ45は、支持パイプ35上に回動可能かつ軸方向への変位可能に支持されている。支持パイプ35の外側のスライダ45を同支持パイプ35内のコントロールシャフト36に動力伝達可能に連結するために、同スライダ45の内壁には、周方向に延びる周溝46が形成されている。周溝46は、スライダ45に設けられた貫通孔47によって同スライダ45の外部に連通している(図7参照)。また、支持パイプ35において、隣合う支持壁部26,26間には、軸方向へ延びる長孔48が形成されている。これらの周溝46及び長孔48の交わる箇所には、前述した貫通孔47を通じて挿入された係止ピン49が配置され、その内端部(図6及び図7の下端部)がコントロールシャフト36に圧入されている。また、周溝46内に位置する係止ピン49の外端部(図6及び図7の上端部)にはブッシュ51が係止されている。
従って、前述したように支持パイプ35がシリンダヘッド14(支持壁部26)に固定されているが、コントロールシャフト36の軸方向への移動に伴い、係止ピン49が長孔48内を移動することで、ブッシュ51を介してスライダ45を軸方向へ変位させることが可能である。さらに、スライダ45自体は、周方向へ延びる周溝46にて係止ピン49及びブッシュ51に係合されていることから、それらの係止ピン49及びブッシュ51にて軸方向の位置は決定されるが、軸周りについては回動可能である。
入力アーム38及びスライダ45間で動力を伝達するために、入力アーム38の内周面には、出力アーム39側ほど時計回り方向へねじれたヘリカルスプライン38Aが形成されている。これに対応して図5に示すように、スライダ45の外周面の軸方向における中間部分には、同方向へねじれたヘリカルスプライン45Aが形成され、これが前述したヘリカルスプライン38Aに噛合されている。
また、各出力アーム39,40及びスライダ45間で動力を伝達するために、各出力アーム39,40の内周面には、前記入力アーム38のヘリカルスプライン38Aとは逆方向、すなわち入力アーム38から出力アーム39側へ離れるほど反時計回り方向へねじれたヘリカルスプライン39B,40Cが形成されている。これに対応して、スライダ45の外周面の軸方向における両端部には、同方向へねじれたヘリカルスプライン45B,45Cが形成され、これらが前述したヘリカルスプライン39B,40Cに噛合されている。このように、ヘリカルスプライン38A,45Aと、ヘリカルスプライン39B,40C,45B,45Cとが逆方向へねじれている。そのため、コントロールシャフト36の軸方向の移動に連動してスライダ45が同方向へ変位しながら回動することにより、入力アーム38と各出力アーム39,40とに対し互いに逆方向のねじり力が付与され、入力アーム38及び出力アーム39,40の相対位相差が変化する。また、前記ヘリカルスプライン(38A,39B,40C),(45A,45B,45C)のねじれ方向の設定により、入・出力アーム38〜40の相対位相差は、スライダ45が矢印X方向(作用角θを小さくする方向)へ変位するに従い小さくなる。
図9に示すように、気筒12毎の吸気バルブ21と、これに対応する出力アーム39,40との間には、出力アーム39,40の揺動を吸気バルブ21に伝達する、あるいはその伝達を遮断するための伝達機構50が設けられている。
各伝達機構50は、ローラ54を有するロッカーアーム52と、油圧式のラッシュアジャスタ53とを備えている。ロッカーアーム52は、出力アーム39,40と吸気バルブ21の上端部との間に揺動可能に配置されている。ラッシュアジャスタ53は、吸気バルブ21の上端部近傍においてシリンダヘッド14に取付けられている。ラッシュアジャスタ53は、ボディ内のプランジャがプランジャスプリングの圧縮反力や油圧によって上下にスライドする構造を有している。ロッカーアーム52の一方(図9の右方)の端部52Bは吸気バルブ21の上端部に接触し、他方(図9の左方)の端部52Aはラッシュアジャスタ53のプランジャに接触している。これらの接触により、バルブスプリング23の圧縮反力が吸気バルブ21を介してロッカーアーム52の一方の端部52Bに伝達されるとともに、ラッシュアジャスタ53の押上げ力がロッカーアーム52の他方の端部52Aに伝達される。そして、両伝達によりロッカーアーム52が押上げられ、ローラ54が出力アーム39,40のベース円部43又はノーズ44に接触している。
従って、吸気カムシャフト25が回転すると、仲介駆動機構34では、ローラ42が吸気カム24に接触しながら転動することよって、入力アーム38がコントロールシャフト36を支点として上下に揺動する。この揺動はスライダ45を介して両出力アーム39,40に伝達され、同出力アーム39,40が上下に揺動する。
この際、下方への揺動に伴い出力アーム39,40がロッカーアーム52のローラ54と接触する箇所(ベース円部43、ノーズ44)が変化する。出力アーム39,40がベース円部43においてローラ54に接触しているとき(図8参照)には、出力アーム39,40が揺動してもロッカーアーム52は揺動せず吸気バルブ21がリフトしない。すなわち、出力アーム39,40の揺動が吸気バルブ21に伝達されない。これに対し、出力アーム39,40がノーズ44においてローラ54に接触しているとき(図9参照)には、出力アーム39,40の揺動に伴いロッカーアーム52も揺動し、吸気バルブ21がバルブスプリング23に抗してリフトして開弁する。すなわち、出力アーム39,40の揺動が吸気バルブ21に伝達される。ローラ54のノーズ44との接触箇所がそのノーズ44の先端に近づくに従い、吸気バルブ21が大きくリフトする。
また、アクチュエータ37によってコントロールシャフト36が軸方向へ移動させられることで、スライダ45が回動を伴いながら軸方向へ変位し、入・出力アーム38〜40の揺動方向について、入力アーム38と各出力アーム39,40との相対位相差が変更される。この変更に伴い、ベース円部43及びノーズ44において、ローラ54と接触する区間が変化する。この接触区間においてベース円部43が占める部分(吸気バルブ21の開弁に関わらない部分)は、相対位相差が大きいときに短く、相対位相差が小さくなるに従い長くなる。また、上記接触区間において、ノーズ44の占める部分(吸気バルブ21の開弁に関わる部分)は、相対位相差が小さいときに短く、相対位相差が大きくなるに従って長くなる。そして、この部分が長くなるに従い吸気カム24の作用角θ及び吸気バルブ21の最大リフト量が多くなる。
このようにして、アクチュエータ37によってコントロールシャフト36を軸方向へ移動させ、その移動に伴うスライダ45の変位により入・出力アーム38〜40の相対位相差を変更させることで、上述した図3に示すように、吸気カム24の作用角θ及び吸気バルブ21の最大リフト量を連続的に変化させることが可能である。
作用角可変機構33では、図9に示すようにローラ54がノーズ44に接触しているとき、バルブスプリング23の圧縮反力やラッシュアジャスタ53の押上げ力により、ノーズ44には、出力アーム39,40を図9の反時計回り方向へ回転させようとする回転付勢力が作用する。なお、上記バルブスプリング23の圧縮反力及びラッシュアジャスタ53の押上げ力による回転付勢力を、後述するロストモーション装置55による回転付勢力と区別するために、以下、「バルブスプリング23等による回転付勢力」という。この回転付勢力の作用する方向は、カム入力部のローラ42を吸気カム24に接近させる方向と同じである。また、出力アーム39,40の揺動はスライダ45を通じて入力アーム38に伝達される。そのため、上記回転付勢力により、ローラ42が吸気カム24に押付けられる。これに対し、図8に示すように、ローラ54がベース円部43に接触しているとき、上記バルブスプリング23等による上記回転付勢力は非常に小さくなる。この回転付勢力が、ローラ42を吸気カム24に押付けるために必要な回転付勢力の最小値(以下、要求値という)に満たない場合には、ローラ42が吸気カム24から離れるおそれがある。
この不具合に対処すべく、可変動弁機構にはロストモーション装置55が設けられている。ロストモーション装置55は、スプリング収容室57、ロストリフタ62及びロストモーションスプリング63を備えている。スプリング収容室57は、入力アーム38の揺動に伴う補助回転入力部56の可動範囲近傍に設けられている。ロストリフタ62は、スプリング収容室57内に出没可能に収容され、上記補助回転入力部56に接触している。ロストモーションスプリング63はスプリング収容室57内に圧縮状態で配設されている。ロストモーションスプリング63は、ロストリフタ62をスプリング収容室57から突出させる側、すなわち吸気カム24の押下げによる入力アーム38の揺動方向とは逆方向(図8の反時計回り方向)へ付勢する。この方向は、上述したバルブスプリング23等による回転付勢力の作用する方向と同じである。従って、入力アーム38には、バルブスプリング23等による上記回転付勢力に加え、ロストモーション装置55による上記回転付勢力が作用する。そして、上記両回転付勢力の総和が上記要求値以上になると、ローラ42が吸気カム24に確実に押付けられる。
そのため、上述したように作用角θが小さくて、バルブスプリング23等による回転付勢力が上記要求値に満たない場合であっても、その不足分をロストモーション装置55による回転付勢力によって補うことで、ローラ42を吸気カム24に押付け、同ローラ42が吸気カム24から離れる不具合を抑制することが可能である。なお、以降において、ロストモーション装置55による回転付勢力という場合には、ロストモーションスプリング63による回転付勢力を指すものとする。
一方、入・出力アーム38〜40が揺動すると、カム入力部のローラ42と吸気カム24との接触部分や、補助回転入力部56とロストモーション装置55,より詳しくはロストリフタ62との接触部分でフリクションが生ずる。これらのフリクションは、上記両回転付勢力の総和が大きくなるに伴い大きくなる。従って、ローラ42が吸気カム24から離れないようにし、かつ、フリクションをできるだけ小さくする観点からは、両回転付勢力の総和は、上記要求値に近い値であることが望ましい。
ところで、上述したように、ローラ54と出力アーム39,40との接触区間においてベース円部43の占める部分は作用角θが小さくなるに従い長くなる。出力アーム39,40がベース円部43においてローラ54に接触するときには、上記バルブスプリング23等による回転付勢力は非常に小さい。そのため、上記ローラ42が吸気カム24から離れる現象は、こうした作用角θの小さなときに特に問題となる。
これに対し、ロストモーション装置55による回転付勢力を作用角θに拘らず一定とすると、背景技術で説明したように、非小作用角時には、バルブスプリング96等による回転付勢力と、ロストモーション装置98による回転付勢力との総和が上記要求値よりも過大となる。必要以上に大きな力でもって、ローラ42が吸気カム24に押付けられるとともに、ロストリフタ62が補助回転入力部56に押付けられ、フリクションがいたずらに大きくなる。これは、小作用角時を基準とし、上記要求値に対する不足分を補うために必要なロストモーション装置55による回転付勢力を設定することになるからである。
そこで、本実施形態では、吸気カム24の作用角θに応じて上記ロストモーション装置55による回転付勢力を変更するための手段(付勢力変更手段)を設けることで、上記の不具合に対処するようにしている。
詳しくは、スプリング収容室57を挟んで補助回転入力部56の反対側(図8の上側)には、油圧室58がそのスプリング収容室57に連続して設けられている。油圧室58内にはピストン61が摺動可能に収容されており、ロストモーションスプリング63について、ロストリフタ62とは反対側の端部(図8の上端部)がこのピストン61に当接している。油圧室58内において、ピストン61を境としてロストリフタ62とは反対側の空間にはオイル59が貯留されている。
ロストモーションスプリング63による回転付勢力は、油圧室58内におけるピストン61の位置に応じて変化する。また、このピストン61の位置は油圧室58内の作動油の油圧に応じて変化する。この油圧の調整を目的として油圧室58に対するオイル59の供給及び排出を行うために、同油圧室58には給排通路64が接続されている。また、給排通路64は、電磁駆動式の流路切替え弁であるオイルスイッチングバルブ(OSV)65、供給通路66及びオイルポンプ69を介して、エンジン11のオイルパン68に繋がっている。また、給排通路64は、OSV65及び排出通路67を介してオイルパン68に繋がっている。
OSV65は、互いに逆方向に働くコイルスプリングと電磁ソレノイドの付勢力によって切替え動作し、給排通路64に対する供給通路66と排出通路67との接続状態を変更する。OSV65の駆動制御は、電子制御装置71を通じて、電磁ソレノイドに対する通電を制御することによって行われる。
OSV65は、電磁ソレノイドの消磁状態においては、給排通路64と排出通路67とを連通させる。この場合、油圧室58内のオイル59の一部が、給排通路64、OSV65及び排出通路67を通じてオイルパン68内へ戻される。これに伴い油圧室58内の油圧が低下し、ピストン61がスプリング収容室57から遠ざかる。ロストモーションスプリング63が伸長して補助回転入力部56に対する付勢力、すなわちロストモーション装置55による回転付勢力が小さくなる。これとは逆に、電磁ソレノイドが励磁されたときには、給排通路64と供給通路66とが連通される。この場合、オイルパン68内のオイル59がオイルポンプ69により油圧室58へ送り出される。これに伴い油圧室58内の油圧が上昇し、ピストン61がスプリング収容室57に近づく。ロストモーションスプリング63が収縮されてロストモーション装置55による回転付勢力が大きくなる。
上記電磁ソレノイドに対する通電形態(励磁・消磁)を制御するために、エンジン11には電子制御装置71に加えストロークセンサ72が設けられている。ストロークセンサ72は、作用角可変機構33におけるコントロールシャフト36の基準位置からの移動量を検出する。上述したように、コントロールシャフト36の移動に伴いスライダ45が回動しながら変位し、入・出力アーム38〜40が相対回転して作用角θが変更される。従って、コントロールシャフト36の基準位置からの移動量に基づき吸気カム24の作用角θを算出することが可能である。
このことから、電子制御装置71は、ストロークセンサ72によって検出された移動量に基づき、その移動量に対応する吸気カム24の作用角θを算出する。そして、電子制御装置71は作用角θに基づきOSV65の電磁ソレノイドを励磁又は消磁する。電子制御装置71は、例えば図12に示すように、作用角θが所定値θ1以下の場合には電磁ソレノイドを励磁させる。所定値θ1は、作用角θが採り得る範囲の中間の値である。また、電子制御装置71は、作用角θが所定値θ1よりも大きい場合には電磁ソレノイドを消磁させる。このようにして、電子制御装置71はロストモーション装置55による回転付勢力を作用角θに応じて変更する処理(付勢力変更処理)を行う。
次に、上記のように構成された第1実施形態の可変動弁機構の作用及び効果について説明する。
図8及び図9は、アクチュエータ37によってコントロールシャフト36を図4の矢印X方向へ大きく移動させたときの仲介駆動機構34の状態を示している。このときには、入力アーム38と各出力アーム39,40との相対位相差が小さくなり、吸気カム24の作用角θが上記所定値θ1よりも小さくなっている。
特に、図8は、吸気カム24がベース円部24Aにおいて、カム入力部のローラ42に接触した状態を示している。両出力アーム39,40はベース円部43において、ノーズ44から比較的離れた部分でロッカーアーム52のローラ54に接触している。このようにローラ54がベース円部43に接触している状態では、吸気バルブ21はリフトせず閉弁状態となる。
吸気カムシャフト25が回転すると、吸気カム24のノーズ24Bによってローラ42が押下げられて、入力アーム38が下方へ揺動する。この揺動がスライダ45を介して各出力アーム39,40に伝達されて、同出力アーム39,40が下方へ揺動する。出力アーム39,40が揺動してもしばらくはローラ54は、ノーズ44のカム面44Aに接触することなくベース円部43に接触し続ける。そのため、吸気バルブ21はリフトせず閉弁し続ける。
図9に示すように吸気カムシャフト25がさらに回転して、入・出力アーム38〜40がさらに揺動すると、出力アーム39,40のローラ54との接触箇所が、ベース円部43からノーズ44に移る。ノーズ44によってローラ54が押下げられ、ロッカーアーム52が端部52Aを支点として下方へ揺動する。この揺動に伴い、ロッカーアーム52の端部52Bによって吸気バルブ21がリフトさせられ、同吸気バルブ21が開弁される。
ノーズ44のカム面44Aについてローラ54との接触箇所が、同ノーズ44の根本部分から先端部に移るに従いロッカーアーム52の揺動角度が大きくなる。しかし、出力アーム39,40のローラ54との接触区間においてカム面44Aの占める部分が短いため、ロッカーアーム52はさほど揺動しない。そのため、吸気バルブ21は小さな作用角θにて吸気ポート18を開放状態にする。吸気バルブ21の開弁に伴い吸気ポート18から燃焼室17に流入する空気量は少ない。
上記の状況では、作用角θが所定値θ1よりも小さくなることから、電子制御装置71はOSV65の電磁ソレノイドを励磁させる。この励磁により、油圧室58内にオイル59が供給されて、同油圧室58内の油圧が上昇する。ピストン15が可動範囲についてスプリング収容室57に近い箇所へ移動させられる。ロストモーションスプリング63が圧縮されて補助回転入力部56に対する回転付勢力が増大する。この増大した回転付勢力に応じ、吸気カム24の押下げによる入力アーム38の揺動方向とは逆方向(図8の反時計回り方向)へ入力アーム38が付勢される。
従って、作用角θが小さいときには、出力アーム39,40のローラ54との接触区間においてベース円部43が占める部分が長く、バルブスプリング23等による回転付勢力が非常に小さくなって上記要求値(ローラ42を吸気カム24に押付けるために必要な回転付勢力の最小値)に満たなくなる。しかし、バルブスプリング23等による回転付勢力の要求値に対する不足分は、ロストモーション装置55による回転付勢力によって補われ、両回転付勢力の総和は上記要求値に近い値となる。そのため、カム入力部のローラ42が吸気カム24から離れない程度の適度な強さで同吸気カム24に押付けられ、両者42,24の接触部分や、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で発生するフリクションが小さくなる。
ところで、前記の状態から、アクチュエータ37によってコントロールシャフト36を図4の矢印Y方向へ移動させると、それに連動してスライダ45が回動しながら同方向へ変位する。スライダ45の回動により入力アーム38及び各出力アーム39,40に対し互いに逆方向のねじり力が付与され、図10及び図11で示すように、入力アーム38及び各出力アーム39,40の相対位相差が大きくなる。この相対位相差は、スライダ45の矢印Y方向への変位量が大きくなるほど大きくなる。
図10に示すように、吸気カム24のベース円部24Aが、カム入力部のローラ42に接触するときに、出力アーム39,40のベース円部43についてロッカーアーム52のローラ54と接触する箇所がノーズ44に近づく。このため、出力アーム39,40が揺動すると、比較的早い時期から、出力アーム39,40においてローラ54との接触箇所が、ベース円部43からノーズ44のカム面44Aに移る。出力アーム39,40のローラ54との接触区間においてカム面44Aの占める部分が長くなる。そのため、出力アーム39,40の揺動により、カム面44Aが直ちにローラ54に接触して、図11に示すように、カム面44Aの略全範囲を使用してローラ54を押下げる。この押下げにより、ロッカーアーム52が端部52Aを支点として下方へ揺動し、ロッカーアーム52の端部52Bが吸気バルブ21を大きくリフトさせ、同吸気バルブ21を大きく開弁させる。作用角θ及び最大リフト量がともに大きくなり、吸気ポート18から燃焼室17に流入する空気の量が多くなる。
上記のように作用角θが大きいときには、入力アーム38のローラ54との接触区間についてノーズ44の占める部分が長い。ローラ54がノーズ44に接触しているときには、バルブスプリング23等による回転付勢力が作用する。
この状況下で、ロストモーション装置55によって大きな回転付勢力でもって、例えば前述した小作用角時と同じ回転付勢力でもって補助回転入力部56が付勢されると、その回転付勢力とバルブスプリング23等による回転付勢力との総和が、上記要求値よりも過大となる。その結果、ローラ42と吸気カム24との接触部分で生ずるフリクションや、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で生ずるフリクションが増大する。
しかし、上述したように作用角θが上記所定値θ1よりも大きいと、電子制御装置71はOSV65の電磁ソレノイドを消磁させる。この消磁により、油圧室58からオイル59が排出されて同油圧室58内の油圧が低下し、ピストン15が可動範囲についてスプリング収容室57から最も遠ざかった箇所へ移動させられる。ロストモーションスプリング63が伸長されて補助回転入力部56に対する回転付勢力が小さくなる。バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力の総和が、上記要求値に近い値となる。そのため、上記作用角θが所定値θ1以下の場合と同様に、カム入力部のローラ42が適度な強さで同吸気カム24に押付けられる。その結果、ローラ42と吸気カム24との接触部分や、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で発生するフリクションは小さくなる。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)吸気カム24の作用角θが所定値θ1以下のときには、OSV65の電磁ソレノイドを励磁することにより、ロストモーション装置55による回転付勢力を大きくしている。そのため、作用角θについての上記状況下では、バルブスプリング23等による回転付勢力が小さくなって要求値に満たなくなるが、その要求値に対する不足分を上記回転付勢力の増大によって補い、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力を要求値に近い値にすることができる。
(2)吸気カム24の作用角θが所定値θ1よりも大きいときには、OSV65の電磁ソレノイドを消磁することにより、ロストモーション装置55による回転付勢力を小さくしている。そのため、作用角θについての上記状況下では、バルブスプリング23等による回転付勢力が大きくなるが、上記回転付勢力の減少により、両回転付勢力の総和を要求値に近い値にすることができる。
(3)上記(1)及び(2)のように、ロストモーション装置55による回転付勢力を吸気カム24の作用角θに応じて変更することで、作用角θの大きな領域でも小さな領域でも、両回転付勢力の総和を要求値に近い値とすることができる。そのため、吸気カム24の作用角θの大小に拘らず、カム入力部のローラ42を吸気カム24に押付けて同吸気カム24から離れないようにすることができる。また、ロストモーション装置55による回転付勢力を一定とした場合よりもフリクションを小さくすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、電子制御装置71が行う付勢力変更処理として、作用角θに代え、吸気カム24の回転速度に応じて、OSV65の電磁ソレノイドに対する通電形態(消磁・励磁)を切替えることで、ロストモーション装置55による回転付勢力を変更するようにしている。この点において第2実施形態は第1実施形態と異なっている。
ここで、吸気カムシャフト25は、上述したようにタイミングチェーン、スプロケット等によりクランクシャフト16に駆動連結されていて、同クランクシャフト16と連動して回転する。吸気カムシャフト25の回転速度とクランクシャフト16の回転速度(エンジン回転速度NE)とは対応関係にある。一方、図1において二点鎖線で示すようにエンジン11には、クランクシャフト16の回転角(クランク角)やエンジン回転速度を検出するために、同クランクシャフト16が一定角度回転する毎にパルス状の信号を発生するクランク角センサ73がもともと設けられている。そのため、ここでは、上述した既存のクランク角センサ73の信号を利用し、その信号に基づき算出したエンジン回転速度NEを吸気カムシャフト25の回転速度相当値として用いるようにしている。
そして、電子制御装置71はこのエンジン回転速度NEに基づきOSV65の電磁ソレノイドを励磁又は消磁する。電子制御装置71は、例えば図13に示すように、エンジン回転速度NEが所定値NE1よりも高い場合には電磁ソレノイドを励磁させる。所定値NE1は、エンジン回転速度NEが採り得る範囲の中間の値である。また、電子制御装置71は、エンジン回転速度NEが所定値NE1以下の場合には電磁ソレノイドを消磁させる。こうした電磁ソレノイドに対する通電形態を変更することにより、吸気カム24の回転速度の低い領域では高い領域よりも、ロストモーション装置55による回転付勢力を小さくするようにしている。このようにしたのは次の理由による。
作用角可変機構33では、入・出力アーム38〜40の揺動に伴い慣性力が発生する。カム入力部のローラ42が吸気カム24による下降から上昇に転ずる際には、上記慣性力によりローラ42が下降し続けようとする。ローラ42が吸気カム24から離れようとし、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力が弱められる。この慣性力は、吸気カム24(吸気カムシャフト25)の回転速度が低いときには小さいが、同回転速度が上昇するに従って増大する。従って、吸気カム24の高回転速度時には、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力を弱める程度が大きくなる。そのため、上記ローラ42が吸気カム24から離れる現象は、こうした吸気カム24の回転速度が高いときに特に問題となる。
こうした状況でも、回転付勢力の総和を上記要求値(ローラ42を吸気カム24に押付けるために必要な回転付勢力の最小値)に近い値にしようとすると、ロストモーション装置55による回転付勢力を一定とした場合、その回転付勢力を、吸気カム24の回転速度の高い領域を基準に設定することになる。しかし、上記以外の領域、例えば、回転速度の低い領域では、回転付勢力の総和が上記要求値よりも大きくなる。その結果、必要以上に大きな力でもって、ローラ42が吸気カム24に押付けられるとともに、ロストリフタ62が補助回転入力部56に押付けられる。そこで、上述したように、吸気カム24の回転速度に応じてロストモーション装置55による回転付勢力を変更するようにしている。
第2実施形態によると、エンジン回転速度NEが所定値NE1よりも高い場合、電子制御装置71はOSV65の電磁ソレノイドを励磁させる。この励磁により、オイル59が油圧室58に供給されて同油圧室58内の油圧が上昇し、ピストン15が可動範囲についてスプリング収容室57に最も近い箇所へ移動させられる。ロストモーションスプリング63が圧縮されて補助回転入力部56に対する回転付勢力が増大する。
従って、エンジン回転速度NEが高いときには、入・出力アーム38〜40の揺動に伴う慣性力が増大し、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力を弱める程度が大きくなる。しかし、上記ロストモーション装置55による回転付勢力の増大により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力の総和が、上記要求値に近い値になる。そのため、カム入力部のローラ42が吸気カム24から離れない程度の適度な強さで同吸気カム24に押付けられ、両者42,24の接触部分や、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で発生するフリクションが小さくなる。
また、エンジン回転速度NEが所定値NE1以下であると、電子制御装置71はOSV65の電磁ソレノイドを消磁させる。この消磁により、油圧室58からオイル59が排出されて同油圧室58内の油圧が低下し、ピストン15が可動範囲についてスプリング収容室57から最も遠ざかった箇所へ移動させられる。ロストモーションスプリング63が伸長されて補助回転入力部56に対する回転付勢力が減少する。
従って、エンジン回転速度NEが低いときには、入・出力アーム38〜40の揺動に伴う慣性力が減少し、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力を弱める程度が小さくなる。しかし、上記ロストモーション装置55による回転付勢力の減少により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力の総和が、上記要求値に近い値となる。そのため、上記エンジン回転速度NEが所定値NE1よりも高い場合と同様にして、カム入力部のローラ42が適度な強さで吸気カム24に押付けられる。その結果、ローラ42と吸気カム24との接触部分や、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で発生するフリクションは小さくなる。
従って、第2実施形態によれば次の効果が得られる。
(4)エンジン回転速度NEが所定値NE1よりも高いときには、OSV65の電磁ソレノイドを励磁することにより、ロストモーション装置55による回転付勢力を大きくしている。そのため、エンジン回転速度NEについての上記状況下では、入・出力アーム38〜40の揺動に伴う慣性力が大きくなり、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力を弱める程度が大きくなるが、上記回転付勢力の増大により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による回転付勢力の総和を要求値に近い値にすることができる。
(5)エンジン回転速度NEが所定値NE1以下のときには、OSV65の電磁ソレノイドを消磁することにより、ロストモーション装置55による回転付勢力を小さくしている。そのため、エンジン回転速度NEについての上記状況下では、入・出力アーム38〜40の揺動に伴う慣性力が小さくなり、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力を弱める程度が小さくなるが、上記回転付勢力の減少により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による回転付勢力の総和を要求値に近い値にすることができる。
(6)上記(4)及び(5)のように、ロストモーション装置55による回転付勢力をエンジン回転速度NE(吸気カム24の回転速度)に応じて変更することで、回転速度の高い領域でも低い領域でも、両回転付勢力の総和を要求値に近い値にすることができる。そのため、吸気カム24の回転速度の高低に拘らず、カム入力部のローラ42を吸気カム24に押付けて同吸気カム24から離れないようにすることができる。また、ロストモーション装置55による回転付勢力を一定とした場合よりもフリクションを小さくすることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、電子制御装置71が行う付勢力変更処理として、吸気カム24の作用角θ及び回転速度(エンジン回転速度NE)に基づいて、OSV65の電磁ソレノイドに対する通電形態(消磁・励磁)を切替えることで、ロストモーション装置55による回転付勢力を変更するようにしている。この点において、第3実施形態は第1及び第2実施形態と異なっている。
電子制御装置71は、例えば図14に示すように、作用角θ及びエンジン回転速度NEによって規定される領域について、作用角θが所定値θ2以下であり、かつエンジン回転速度NEが所定値NE2よりも高い領域Z2にある場合には、電磁ソレノイドを励磁させる。作用角θ及びエンジン回転速度NEが上記領域Z2以外の領域(領域Z1)にある場合、すなわち、作用角θが所定値θ2よりも大きい領域にある場合、及びエンジン回転速度NEが所定値NE2以下の領域にある場合、には電磁ソレノイドを消磁させる。この領域Z2には、作用角θが所定値θ2よりも大きく、かつエンジン回転速度NEが所定値NE2以下である領域が含まれる。
所定値θ2は、作用角θが採り得る範囲の中間の値であり、第1実施形態での所定値θ1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。同様に、所定値NE2は、エンジン回転速度NEが採り得る範囲の中間の値であり、第2実施形態における所定値NE1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。なお、上記のようにロストモーション装置55による回転付勢力を変更するようにしたのは以下の理由による。
作用角可変機構33では、上述したようにバルブスプリング23等による回転付勢力が入力アーム38に作用するところ、この回転付勢力は作用角θが小さくなるほど小さくなって、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力が減少する。また、作用角可変機構33において、入・出力アーム38〜40の揺動に伴い発生する慣性力は、吸気カム24の回転速度が低いときには小さいが、同回転速度が上昇するに従って増大する。吸気カム24の回転速度が高くなるほど、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力を弱める程度が大きくなる。従って、作用角θの小さなときに吸気カム24が高速で回転すると、もともと小さな押付け力が、大きな慣性力によってさらに弱められる。その結果、押付け力は非常に小さくなる。
こうした状況でも、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力の総和を上記要求値に近い値にしようとすると、ロストモーション装置55による回転付勢力を一定とした場合、その回転付勢力を、作用角θが小さくかつ吸気カム24の回転速度の高い領域(領域Z2)を基準に設定することになる。要求値は、第1実施形態及び第2実施形態と同様、ローラ42を吸気カム24に押付けるために必要な回転付勢力の最小値である。しかし、上記以外の領域(領域Z1)では、回転付勢力の総和が上記要求値よりも大きくなる。その結果、必要以上に大きな力でもって、ローラ42が吸気カム24に押付けられるとともに、ロストリフタ62が補助回転入力部56に押付けられる。そこで、上述したように、吸気カム24の作用角θ及び回転速度に応じてロストモーション装置55による回転付勢力を変更するようにしている。
第3実施形態によると、作用角θ及びエンジン回転速度NEが領域Z2に属している場合、電子制御装置71はOSV65の電磁ソレノイドを励磁させる。この励磁により、オイル59が油圧室58に供給されて同油圧室58内の油圧が上昇し、ピストン15が可動範囲についてスプリング収容室57に最も近い箇所へ移動させられる。ロストモーションスプリング63が圧縮されて補助回転入力部56に対する回転付勢力が上昇する。この回転付勢力により、吸気カム24の押下げによる入力アーム38の揺動方向とは逆方向へ入力アーム38が付勢される。
従って、領域Z2では上述したようにローラ42の吸気カム24に対する押付け力が非常に小さくなる。しかし、上記ロストモーション装置55による回転付勢力の増大により、上記要求値に対する回転付勢力の不足分が補われ、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力の総和が、要求値に近い値になる。そのため、カム入力部のローラ42が吸気カム24から離れない程度の強さで同吸気カム24に押付けられ、両者42,24の接触部分や、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で発生するフリクションが小さくなる。
一方、作用角θ及びエンジン回転速度NEが領域Z1に属している場合、電子制御装置71はOSV65の電磁ソレノイドを消磁させる。この消磁により、油圧室58からオイル59が排出されて同油圧室58内の油圧が低下し、ピストン15が可動範囲についてスプリング収容室57から最も遠ざかった箇所へ移動させられる。ロストモーションスプリング63が伸長されて補助回転入力部56に対する回転付勢力が減少する。
従って、領域Z1では、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力が、上記領域Z2ほど小さくならない。しかし、上記ロストモーション装置55による回転付勢力の減少により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による両回転付勢力の総和が、上記要求値に近い値になる。そのため、領域Z1でも上記領域Z2と同様にして、カム入力部のローラ42が適度な強さで吸気カム24に押付けられる。その結果、ローラ42と吸気カム24との接触部分や、補助回転入力部56とロストリフタ62との接触部分で発生するフリクションは小さくなる。
上記第3実施形態によれば次の効果が得られる。
(7)作用角θ及びエンジン回転速度NEが領域Z2に属している場合、OSV65の電磁ソレノイドを励磁することにより、ロストモーション装置55による回転付勢力を大きくしている。そのため、上記領域Z2では、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力が非常に小さくなるが、上記回転付勢力の増大により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による回転付勢力の総和を要求値に近い値にすることができる。
(8)作用角θ及びエンジン回転速度NEが領域Z1に属している場合、OSV65の電磁ソレノイドを消磁することにより、ロストモーション装置55の回転付勢力を小さくしている。そのため、上記領域Z1では、ローラ42の吸気カム24に対する押付け力が領域Z2よりも大きくなるが、上記回転付勢力の減少により、バルブスプリング23等及びロストモーション装置55による回転付勢力の総和を要求値に近い値にすることができる。
(9)上記(7)及び(8)のように、吸気カム24の作用角θ及び回転速度に応じてロストモーション装置55による回転付勢力を変更することで、領域Z1でも領域Z2でも回転付勢力の総和を上記要求値に近い値にすることができる。そのため、吸気カム24の作用角θの大小、及び吸気カム24の回転速度の高低に拘らず、カム入力部のローラ42を吸気カム24に押付けて同吸気カム24から離れないようにすることができる。また、ロストモーション装置55による回転付勢力を一定とした場合よりもフリクションを小さくすることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・第1実施形態において、ロストモーション装置55による回転付勢力を3つ以上設定し、これらの回転付勢力を吸気カム24の作用角θに応じて切替えるようにしてもよい。この場合、作用角θによって規定される領域について、同作用角θの大きな領域では小さな領域よりも、ロストモーション装置55による回転付勢力が小さくなるようにする。
また、図12において二点鎖線で示すように、作用角θが大きくなるに従いロストモーション装置55による回転付勢力を小さくするような設定にしてもよい。
・第2実施形態において、ロストモーション装置55による回転付勢力を3つ以上設定し、こられらの回転付勢力をエンジン回転速度NEに応じて切替えるようにしてもよい。この場合、エンジン回転速度NEによって規定される領域について、同エンジン回転速度NEの低い領域では高い領域よりも、ロストモーション装置55による回転付勢力が小さくなるようにする。
また、図13において二点鎖線で示すように、エンジン回転速度NEが低くなるに従いロストモーション装置55による回転付勢力を小さくするような設定にしてもよい。
・図14において、ロストモーション装置55による回転付勢力を小さくする領域Z1を、第3実施形態とは異なる領域に設定してもよい。ただし、この設定に際しては、少なくとも作用角θが大きくかつエンジン回転速度NEが低い領域(例えば、図14において二点鎖線で示す領域)が、領域Z1に含まれるようにする。
・第2及び第3実施形態において、エンジン回転速度NEに代えて、吸・排気カムシャフト25,28又は吸・排気カム24,27の回転速度に基づいてロストモーション装置55による回転付勢力を変更するようにしてもよい。
・補助回転入力部56を入力アーム38に代えて出力アーム39,40に設けてもよい。
・カム入力部は吸気カム24の回転を入力アーム38に伝達できるものであればよい。従って、カム入力部の形態は支持片41及びローラ42からなるものに限られず、上記条件を満たす範囲内で適宜に変更可能である。
・作用角可変機構33において、前記電動モータとは異なるタイプのアクチュエータ37を用いて、コントロールシャフト36を軸方向へ変位させるようにしてもよい。
・作用角可変機構33を、排気カムシャフト28及び排気バルブ22間に設け、吸気カム24に代えて、又は加えて排気カム27の作用角を可変としてもよい。
・上記実施形態における作用角可変機構33の構成を適宜変更してもよい。
例えば、支持パイプ35を省略し、コントロールシャフト36に支持パイプ35の機能を兼ねさせてもよい。また、ヘリカルスプライン39B,45B及びヘリカルスプライン40C,45Cのねじれ角は互いに同一であっても異なっていてもよい。
・本発明は、内燃機関に限らず、作用角可変機構及びロストモーション装置を備えた可変動弁機構を有するものに広く適用可能である。
21…吸気バルブ、23…バルブスプリング、24…吸気カム、33…作用角可変機構、38…入力アーム、38A,39B,40C,45A,45B,45C…ヘリカルスプライン、39,40…出力アーム、41…支持片(カム入力部の一部を構成)、42…ローラ(カム入力部の一部を構成)、43…ベース円部、44…ノーズ、45…スライダ、50…伝達機構、55…ロストモーション装置、θ…作用角、Z1,Z2…領域。