以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
車両には、図1〜図3に示すように、内燃機関としての多気筒ガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、複数の気筒(シリンダ)12を有するシリンダブロック13と、その上に取付けられたシリンダヘッド14とを備えている。各気筒12にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15は、コネクティングロッド16を介し、出力軸であるクランクシャフト17に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16によって回転運動に変換された後、クランクシャフト17に伝達される。
気筒12内のピストン15よりも上側の空間は燃焼室18となっている。各燃焼室18には、スロットルバルブ19を有する吸気通路23が接続されており、エンジン11の外部の空気が吸気通路23を通過して燃焼室18に吸入される。スロットルバルブ19は電動モータ等からなるアクチュエータ24に駆動連結されている。アクチュエータ24は、運転者によるアクセル操作部材としてのアクセルペダル25の踏込み操作等に応じて作動し、スロットルバルブ19を回動させる。吸気通路23を流れる空気の量(吸入空気量)は、少なくともスロットルバルブ19の回動角度(スロットル開度)に応じて変化する。
また、燃焼室18には排気通路28が接続されており、燃焼室18で生じた燃焼ガスが同排気通路28を通ってエンジン11の外部へ排出される。
上記シリンダヘッド14には、吸気通路23の各燃焼室18との接続部分(吸気ポート23A)を開閉する一対の吸気バルブ31(図1及び図2では1つのみ図示)と、排気通路28の各燃焼室18との接続部分(排気ポート28A)を開閉する一対の排気バルブ32(図1及び図2では1つのみ図示)とが、機関バルブとして気筒12毎に設けられている。これらの吸・排気バルブ31,32は、いずれもバルブスプリング29によって、吸・排気ポート23A,28Aを閉鎖する方向(閉弁方向、図2の略上方)へ付勢されている。シリンダヘッド14における吸気バルブ31の略上方には、吸気カム33を有する吸気カムシャフト34が、支持壁部35(図3参照)により回転可能に支持されている。同様に、シリンダヘッド14における排気バルブ32の略上方には、排気カム36を有する排気カムシャフト37が回転可能に支持されている。
吸・排気カムシャフト34,37は、タイミングチェーン38、スプロケット(図示略)等によりクランクシャフト17に駆動連結されている。そして、クランクシャフト17の回転がタイミングチェーン38等を介して吸・排気カムシャフト34,37に伝達される。吸・排気カム33,36の回転により、吸・排気バルブ31,32がバルブスプリング29に抗して押下げられる。この押下げにより、吸・排気ポート23A,28Aが開放された状態(開弁状態)になる。このようにして、吸・排気カムシャフト34,37の回転に伴い吸・排気バルブ31,32が開弁及び閉弁される。
吸気通路23には、その下流側へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁39が各気筒12に対応して取付けられている。噴射された燃料は、吸気通路23を通る吸入空気と混ざり合って混合気となる。なお、燃料噴射弁39をシリンダブロック13に取付け、同燃料噴射弁39から燃焼室18へ燃料を直接噴射するようにしてもよい。
シリンダヘッド14には、点火プラグ41が各気筒12に対応して取付けられている。各点火プラグ41は、イグナイタ42からの点火信号に基づいて作動する。点火プラグ41には、点火コイル43から出力される高電圧が印加される。そして、前記混合気は点火プラグ41の火花放電によって着火され、爆発・燃焼する。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランクシャフト17が回転されてエンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。
エンジン11には、吸気バルブ31のバルブ特性を可変とする可変動弁機構として、バルブタイミング可変機構44及び作用角可変機構45が設けられている。
バルブタイミング可変機構44は、クランクシャフト17に対する吸気カムシャフト34の相対回転位相を変化させることにより、吸気バルブ31のバルブタイミング(開閉期間)をクランク角(クランクシャフト17の回転角)に対して連続的に変更するための機構であり、例えば油圧により駆動される。こうしたバルブタイミング可変機構44は、例えば図3に示すように、エンジン11におけるタイミングチェーン38側(図3の左側)の端部に設けられている。
吸気バルブ31のバルブタイミングは、例えば、図4に示すように吸気バルブ31の開弁時期IVO及び閉弁時期IVCで表すことができる。バルブタイミングは、吸気バルブ31の開弁期間(開弁時期IVOから閉弁時期IVCまでの期間)が一定に保持された状態で進角又は遅角させられる。なお、図4中のEVO,EVCは排気バルブ32の開弁時期及び閉弁時期を示している。そして、図4において二点鎖線で示すようにバルブタイミングが変化すると、吸・排気バルブ31,32がともに開弁している期間、すなわち吸・排気バルブ31,32の開弁期間についてのバルブオーバラップ(吸気バルブ31の開弁時期IVOから排気バルブ32の閉弁時期EVCまでの期間)O/Lが変化する。ここで、排気バルブ32のバルブタイミングを一定とすると、バルブオーバラップO/Lは吸気バルブ31のバルブタイミングを最も遅角させたときに最小となり、同バルブタイミングを進角させるほど大きくなる。
一方、作用角可変機構45は、吸気カム33の作用角を連続的に可変とする機構である。ここで、図5に示すように作用角は、吸気カム33の回転(図5ではクランク角で表現)について、吸気バルブ31の開弁時期IVOから閉弁時期IVCまでの角度範囲である。本実施形態では、作用角可変機構45により吸気バルブ31の最大リフト量も連続的に変更される。最大リフト量は、吸気バルブ31が開弁時において最も下方まで移動(リフト)したときの同吸気バルブ31の移動量である。これらの作用角及び最大リフト量は、作用角可変機構45によって互いに同期して変化させられ、例えば、作用角が小さくなるほど最大リフト量も小さくなる。作用角が小さくなるに従い、吸気バルブ31の開弁時期IVOと閉弁時期IVCとが互いに近寄り、開弁期間が短くなり、気筒12当りの吸入空気量が少なくなる。このように作用角及び最大リフト量が一対一で対応していることから、作用角可変機構45によってこれらの作用角及び最大リフト量を変更する場合には、単に「作用角を変更」と表現するものとする。排気バルブ32については、こうしたバルブタイミング可変機構や作用角可変機構は設けられていない。
図3に示すように、作用角可変機構45は、気筒12毎の仲介駆動機構47を備えるほか、全部の仲介駆動機構47に共通する1本の支持パイプ48、1本のコントロールシャフト49、及び電動モータからなる1つのアクチュエータ51を備えている。
支持パイプ48は気筒12の配列方向(図3の左右方向)へ延びるように配置され、前述した支持壁部35に貫通固定されている。なお、この方向について、特に区別する必要のない場合には「軸方向」といい、区別する必要のある場合には矢印X方向又は矢印Y方向というものとする。矢印X方向は、タイミングチェーン38に近づく方向であり、本実施形態では吸気カム33の作用角を小さくする方向である。この矢印X方向は、後述するように、軸方向についてスライダ59のヘリカルスプライン59A,59B,59Cが入・出力アーム52,53,54のヘリカルスプライン52A,53B,54Cから離れる方向と同じである。また、矢印Y方向はタイミングチェーン38から遠ざかる方向であり、本実施形態では作用角を大きくする方向である。前記貫通固定により、支持パイプ48は軸方向への移動が不能であり、しかも回転不能である。コントロールシャフト49は支持パイプ48内に挿通されており、アクチュエータ51により軸方向へ往復駆動される。
各仲介駆動機構47は、気筒12毎の吸気カム33と吸気バルブ31との間に設けられている(図1及び図2参照)。各仲介駆動機構47は、図6〜図8に示すように、入力アーム52と、その軸方向についての両側に配置された一対の出力アーム53,54とを備えている。入力アーム52及び各出力アーム53,54は、それらの相対向する端部において嵌合により連結されている。仲介駆動機構47毎の入力アーム52及び両出力アーム53,54は支持壁部35,35間に配置されており、軸方向への変位が両支持壁部35,35によって規制されている(図8参照)。
入力アーム52は一対の支持片55,55を備えており、両支持片55,55間にローラ56が軸支されている。また、各出力アーム53,54は、ベース円部57と、凹状に湾曲するカム面58Aを有するノーズ58とをそれぞれ備えている。
支持パイプ48と、入力アーム52及び両出力アーム53,54との間には、動力伝達用のスライダ59が配置されている。スライダ59は、支持パイプ48上に回動可能かつ軸方向への変位可能に支持されている。スライダ59をコントロールシャフト49に動力伝達可能に連結するために、同スライダ59の内周面には、周方向に延びる周溝61が形成されている。周溝61は、スライダ59に設けられた貫通孔62によって同スライダ59の外部に連通している(図9参照)。また、支持パイプ48において、各仲介駆動機構47に対応する箇所には、軸方向へ延びる長孔63が形成されている。これらの周溝61及び長孔63には、前述した貫通孔62を通じて挿入された係止ピン64が配置され、その内端部(図8及び図9の下端部)がコントロールシャフト49に圧入固定されている。また、周溝61内に位置する係止ピン64の外端部(図8及び図9の上端部)にはブッシュ65が外嵌固定されている。
従って、前述したように支持パイプ48がシリンダヘッド14(支持壁部35)に固定されているが、コントロールシャフト49の軸方向への移動に伴い、係止ピン64が長孔63内を移動することで、ブッシュ65を介してスライダ59を軸方向へ変位させることが可能である。さらに、スライダ59自体は、周方向へ延びる周溝61にて係止ピン64及びブッシュ65に係止されていることから、係止ピン64及びブッシュ65にて軸方向の位置は決定されるが、軸周りについては回動可能である。
入力アーム52及びスライダ59間で動力を伝達するために、入力アーム52の内周面には、出力アーム53側ほど時計回り方向へねじれたヘリカルスプライン52Aが形成されている。これに対応して図7に示すように、スライダ59の外周面の軸方向における中間部分には、同方向へねじれたヘリカルスプライン59Aが形成され、これが前述したヘリカルスプライン52Aに噛合されている。
また、各出力アーム53,54及びスライダ59間で動力を伝達するために、各出力アーム53,54の内周面には、前記入力アーム52のヘリカルスプライン52Aとは逆方向、すなわち入力アーム52から出力アーム53側へ離れるほど反時計回り方向へねじれたヘリカルスプライン53B,54Cが形成されている。これに対応して、スライダ59の外周面の軸方向における両端部には同方向へねじれたヘリカルスプライン59B,59Cが形成され、これらが前述したヘリカルスプライン53B,54Cに噛合されている。このように、ヘリカルスプライン52A,59Aと、ヘリカルスプライン53B,54C,59B,59Cとは逆方向へねじれている。そのため、コントロールシャフト49の軸方向の移動に連動してスライダ59が同方向へ変位しながら回転することにより、入力アーム52と各出力アーム53,54とに対し互いに逆方向のねじり力が付与され、入力アーム52及び出力アーム53,54の相対位相差が変化する。また、前記ヘリカルスプライン(52A,53B,54C),(59A,59B,59C)のねじれ方向の設定により、入・出力アーム52〜54の相対位相差は、スライダ59が矢印X方向(作用角を小さくする方向)へ変位するに従い小さくなる。
図2に示すように、各仲介駆動機構47のローラ56は、吸気カムシャフト34の吸気カム33に接触しており、同吸気カムシャフト34の回転に伴い吸気カム33による略下向きの力がローラ56に加えられる。また、支持片55及びシリンダヘッド14間にはスプリング66が圧縮状態で配置されており、このスプリング66によりローラ56が常に吸気カム33に押付けられている。そして、吸気カム33のカムプロフィールに応じて変化する略下向きの力と、スプリング66による上向きの力とがつり合うように入力アーム52がコントロールシャフト49を支点として上下に揺動する。
一方、吸気バルブ31及び出力アーム53,54間にはロッカーアーム67が配置され、同ロッカーアーム67を介して出力アーム53,54の揺動が吸気バルブ31に伝達される。すなわち、各ロッカーアーム67は、その基端部(図2の左端部)67Aにおいてアジャスタ68にて揺動可能に支持され、先端部(図2の右端部)67Bにおいて吸気バルブ31に接触している。そして、バルブスプリング29の付勢力が吸気バルブ31を通じてロッカーアーム67の先端部67Bに加わり、同ロッカーアーム67のローラ69が出力アーム53(又は54)のベース円部57又はノーズ58に接触している。
従って、吸気カムシャフト34が回転すると、仲介駆動機構47では、吸気カム33によって入力アーム52がコントロールシャフト49を支点として上下に揺動する。この揺動はスライダ59を介して両出力アーム53,54に伝達され、同出力アーム53,54が上下に揺動する。これらの揺動する出力アーム53,54によって、対応する吸気バルブ31が駆動されて開弁する。この開弁に伴い吸気ポート23Aから燃焼室18へ、空気及び燃料の混合気が吸入される。
また、アクチュエータ51によってコントロールシャフト49が軸方向へ変位させられることで、スライダ59が回転を伴いながら軸方向へ変位し、入・出力アーム52〜54の揺動方向について、入力アーム52と各出力アーム53,54との相対位相差が変更される。この変更に伴い吸気カム33の作用角が連続的に変化する。スライダ59が矢印X方向へ最大量変位して相対位相差が最小のときには作用角が小さく、気筒12当りの吸入空気量が少ない。そして、スライダ59の矢印Y方向への変位に伴って相対位相差が増大すると、作用角が大きくなって吸入空気量が多くなる。
図10(A)及び図10(B)は、アクチュエータ51によってコントロールシャフト49を図3の矢印Y方向へ最大量移動させたときの仲介駆動機構47の状態を示している。スライダ59が可動範囲における矢印Y方向の端に位置している。このときには、入力アーム52と各出力アーム53,54との相対位相差が最大となっている。また、吸気カム33の作用角も最大となっている。
特に、図10(A)は、吸気カム33がそのベース円部33Aにおいて、仲介駆動機構47のローラ56に接触した状態を示している。この状態では、両出力アーム53,54のベース円部57においてノーズ58に近い部分がロッカーアーム67のローラ69に接触している。このため、吸気バルブ31は閉弁状態(リフト量が「0」)となる。
吸気カムシャフト34が回転すると、吸気カム33のノーズ33Bによってローラ56が押下げられて、入力アーム52が下方へ揺動する。この揺動がスライダ59を介して各出力アーム53,54に伝達されて、同出力アーム53,54が下方へ揺動する。これらの揺動により、ノーズ58のカム面58Aが直ちにロッカーアーム67のローラ69に接触して、図10(B)に示すように、カム面58Aの略全範囲を使用してローラ69を押下げる。この押下げにより、ロッカーアーム67が基端部67Aを支点として下方へ揺動し、ロッカーアーム67の先端部67Bが大きく吸気バルブ31を押下げ、同吸気バルブ31を大きく開弁させる。リフト量が最大となり、吸気ポート23Aから燃焼室18に流入する空気の量が最大となる。
前記の状態から、アクチュエータ51によってコントロールシャフト49を図3の矢印X方向へ移動させると、それに連動してスライダ59が回転しながら同方向へ変位する。スライダ59の回転により入力アーム52及び各出力アーム53,54に対し互いに逆方向のねじり力が付与され、入力アーム52及び各出力アーム53,54の相対位相差が変化する。この相対位相差は、スライダ59の変位量が大きくなるほど小さくなる。
吸気カム33のベース円部33Aが、仲介駆動機構47のローラ56に接触するときに、出力アーム53,54のベース円部57についてロッカーアーム67のローラ69との接触箇所がノーズ58から遠ざかる。このため、出力アーム53,54が揺動しても、しばらくはロッカーアーム67のローラ69はノーズ58のカム面58Aに接触することなくベース円部57に接触し続ける。
その後、カム面58Aがローラ69を押下げて、基端部67Aを支点としてロッカーアーム67を下方へ揺動させるが、ローラ69が当初、ノーズ58から離れている分、カム面58Aの使用範囲が少なくなる。その結果、ロッカーアーム67の揺動角度が小さくなり、作用角が小さくなる。こうして、吸気バルブ31は最大時よりも小さな作用角にて吸気通路23を開放状態にする。吸気バルブ31の開弁に伴い吸気ポート23Aから燃焼室18に流入する空気量は、スライダ59の矢印X方向への変位量に応じて少なくなる。
このように、アクチュエータ51によってコントロールシャフト49を通じてスライダ59の位置を調整することにより、上記図5に示すリフト量パターンの間で、吸気カム33の作用角、及び吸気バルブ31の最大リフト量を連続的に調整することが可能である。
ところで、車両には、図1に示すように、各部の状態を検出するセンサが種々取付けられている。これらのセンサとしては、例えばクランク角センサ71、カム角センサ72、回転角センサ73、エアフロメータ74、スロットルセンサ75、アクセルセンサ76等が用いられている。
クランク角センサ71は、クランクシャフト17が一定角度回転する毎にパルス状の信号を発生する。この信号は、クランクシャフト17の回転角度であるクランク角や、単位時間当りのクランクシャフト17の回転速度であるエンジン回転速度(機関回転速度)の算出等に用いられる。カム角センサ72は、吸気カムシャフト34の近傍に設けられて同カムシャフト34の回転角度(カム角)を検出する。回転角センサ73は、吸気バルブ31のバルブ特性(作用角及び最大リフト量)を検出すべく、アクチュエータ51の回転角度を検出する。エアフロメータ74は、吸気通路23を流れる空気の量(吸入空気量)を検出し、スロットルセンサ75はスロットル開度を検出し、アクセルセンサ76は運転者によるアクセルペダル25の踏込み量を検出する。
車両には、前記各種信号に基づいて、エンジン11等の各部を制御する電子制御装置77が設けられている。電子制御装置77はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
電子制御装置77が行う制御の一部として、スロットル開度制御、吸気バルブ31のバルブ特性に関する制御(バルブタイミング制御及び作用角制御)等が挙げられる。
スロットル開度制御では、基本的にはエンジン11に対する運転者の出力要求を表すアクセル踏込み量が大となるほどスロットルバルブ19が開き側となるようにアクチュエータ24が駆動制御される。ここで、スロットル開度が大となるほどエンジン11の吸入空気量が多くなり、それに応じて燃料噴射量も大とされるため、燃焼室18に充填される混合気の量が増加してエンジン出力が大となる。そのため、エンジン11に対する運転者の出力要求に対応したエンジン出力が得られる。こうした基本的な制御は、後述する作用角制御において、エンジン11のレーシング時に目標作用角が保持される際にも同様に行われる。
バルブタイミング制御では、エンジン11の運転状況、例えばエンジン回転速度、エンジン負荷等に基づいて、吸気バルブ31の目標バルブタイミングが算出される。そして、クランク角センサ71及びカム角センサ72の検出結果に基づき把握される吸気バルブ31の実際のバルブタイミングが上記目標バルブタイミングとなるように、バルブタイミング可変機構44が制御される。この制御により、吸気バルブ31のバルブタイミングが、エンジン11の運転状況に応じた適切なタイミングに制御される。
作用角制御では、エンジン回転速度、エンジン負荷等のエンジン11の運転状況に関するパラメータに基づいて、吸気カム33の目標作用角が算出される。一方で、回転角センサ73によって検出された回転角に基づき、その回転角に対応する吸気カム33の実際の作用角が算出される。そして、この実際の作用角が上記目標作用角となるようにアクチュエータ51に対する通電が制御される。こうした通電制御により、吸気バルブ31の作用角がエンジン11の運転状況に適した値に調整される。
例えば、エンジン回転速度一定のもと、エンジン負荷が大となるほどエンジン11の吸入空気量を確保しやすくすべく、吸気カム33の目標作用角が大きくされる。これは、エンジン負荷が大となるほど大きなエンジン出力が要求されていることになり、その出力を得るために必要な吸入空気量も多くなるからである。
また、エンジン負荷が小さくなるほど必要な空気量が少なくなることから、吸気カム33の作用角が小さくされて吸入空気量が低減される。そのため、スロットルバルブ19を閉じ側に制御して吸入空気量を低減しなくてもよくなり、スロットルバルブ19を開き側の所定開度に保持することが可能となる。このため、上記のようにスロットルバルブ19を閉じ側に制御することに伴う不具合、例えばポンピング損失の増大や燃費の低下等が抑制される。
上記バルブタイミング制御及び作用角制御を行うことで、吸気バルブ31の開弁時期IVOや閉弁時期IVCを互いに独立して変更することが可能である。例えば、閉弁時期IVC(又は開弁時期IVO)を保持した状態で開弁時期IVO(又は閉弁時期IVC)を進角させたり遅角させたりすることができる。また、開弁時期IVO及び閉弁時期IVCをそれぞれ進角させたり遅角させたりすることができる。
ところで、上記作用角可変機構45では、入力アーム52及び出力アーム53,54の相対位相差を変更するために、スライダ59と、入・出力アーム52〜54とをヘリカルスプライン(59A,52A)、(59B,53B)、(59C,54C)によって噛合させている。こうした構造を採っていることから、スライダ59が軸方向に変位した場合には、その変位方向及び変位速度によっては、スライダ59のヘリカルスプライン59A〜59Cが入・出力アーム52〜54のヘリカルスプライン52A,53B,54Cから一時的に離れて、再び接触する。すなわち、スライダ59の変位方向には、そのヘリカルスプライン59A〜59Cがヘリカルスプライン52A,53B,54Cから離れる方向と、近づく方向とがある。
例えば、入力アーム52のローラ56に対しては、吸気カム33による略下向きの力が加わる。この力は、図11(A)に示すようにヘリカルスプライン52A,59Aを通じてスライダ59に伝達される。前述したように、両ヘリカルスプライン52A,59Aが出力アーム53側(図11の左側)ほど時計回り方向へねじれている。上記略下向きの力が入力アーム52に加わっている状況下では、矢印X方向(作用角を小さくする方向)は、図11(B)に示すように、そのスライダ59のヘリカルスプライン59Aが入力アーム52のヘリカルスプライン52Aから離れる方向である。なお、図11(B)は、スライダ59のみが矢印X方向へ若干変位した状態を示している。これとは逆に、矢印Y方向(作用角を大きくする方向)は、スライダ59のヘリカルスプライン59Aが入力アーム52のヘリカルスプライン52Aに近づく方向である。
また、両出力アーム53,54に対しては、バルブスプリング29により、吸気バルブ31、ロッカーアーム67等を介して略上向きの力が加わる。この力は、図12(A)に示すように、ヘリカルスプライン53B,54C及び59B,59Cを通じてスライダ59に伝達される。前述したように、これらのヘリカルスプライン53B,54C及び59B,59Cが前記ヘリカルスプライン52A,59Aとは逆方向へねじれている。上記略上向きの力が出力アーム53,54に加わっている状況下では、矢印X方向(作用角を小さくする方向)は、図12(B)に示すように、スライダ59のヘリカルスプライン59B,59Cが、出力アーム53,54のヘリカルスプライン53B,54Cから離れる方向である。なお、図12(B)は、スライダ59のみが矢印X方向へ若干変位した状態を示している。これとは逆に、矢印Y方向(作用角を大きくする方向)は、ヘリカルスプライン59B,59Cがヘリカルスプライン53B,54Cに近づく方向である。
スライダ59が矢印Y方向へ変位する場合には、その変位の速度に拘らず(遅く変位しても速く変位しても)、入・出力アーム52〜54のヘリカルスプライン52A,53B,54Cはスライダ59のヘリカルスプライン59A〜59Cに対し接触した状態を維持する。ヘリカルスプライン52A,53B,54Cがヘリカルスプライン59A〜59Cから離れることはない。
これに対し、スライダ59が矢印X方向へ変位する場合には、その変位の速度が比較的ゆっくりであれば、ヘリカルスプライン52A,53B,54Cはヘリカルスプライン59A〜59Cに対し接触した状態を維持する。しかし、スライダ59が同方向へ速く変位すると、ヘリカルスプライン59A〜59Cがヘリカルスプライン52A,53B,54Cから一時的に離れるおそれがある。この場合、再び両ヘリカルスプライン59A〜59Cとヘリカルスプライン52A,53B,54Cとが接触する際に歯打ち音と呼ばれる異音を発生する。
こうした状況の起る場面の1つとして、エンジン11がレーシング状態となったときが挙げられる。レーシング状態では、エンジン11に負荷がかからない状態でアクセルペダル25が運転者によって急激に踏込まれる。その後は、通常は、アクセルペダル25は急激に戻される。このときのアクセルペダル25の動きに応じてエンジン回転速度が上昇・下降し、それに伴って目標作用角が急激に変化する。
すなわち、レーシングのためのアクセルペダル25の急激な踏込み操作に応じてエンジン回転速度が急激に上昇すると、それに応じて目標作用角として大きな値が設定される。この目標作用角に基づくアクチュエータ51の制御により、スライダ59が回転しながら矢印Y方向へ変位する。この方向は、ヘリカルスプライン59A〜59Cがヘリカルスプライン52A,53B,54Cに近づく方向であるため、歯打ち音が発生するおそれはない。
これに対し、アクセルペダル25の急激な戻し操作に応じてエンジン回転速度が急激に降下すると、それに応じて目標作用角として小さな値が設定される。この目標作用角に基づくアクチュエータ51の制御により、スライダ59が前記とは逆方向へ回転しながら矢印X方向へ変位する。この方向は、スライダ59のヘリカルスプライン59A〜59Cが入・出力アーム52〜54のヘリカルスプライン52A,53B,54Cから離れる方向である。そのため、スライダ59がこの矢印X方向へ急激に変位された場合には、ヘリカルスプライン59A〜59Cがヘリカルスプライン52A,53B,54Cから一時的に離れた後に接触し、歯打ち音が発生するおそれがある。
また、レーシングのための上記アクセルペダル25の踏込み操作及び戻し操作は、周囲が静かな状況下、例えば車両が停車されていて、ボンネットが開かれているときに行われることが多く、通常の走行時に比べて上記歯打ち音が聞えやすい。
そこで、本実施形態では、上記作用角制御に際し、レーシング時に目標作用角を保持することでスライダ59の変位を規制し、歯打ち音の発生を抑制するようにしている。図13のフローチャートは、電子制御装置77によって行われる作用角制御ルーチンを示しており、所定のタイミングで繰返し実行される。この作用角制御ルーチンの各処理は保持フラグFに基づいて実行される。保持フラグFは、保持作用角が設定されているかどうかを判定する際に用いられるものであり、その初期値(エンジン始動時の値)は「0」である。
作用角制御ルーチンでは、まずステップ100において、上述したようにエンジン回転速度、エンジン負荷等のエンジン11の運転状況に関するパラメータに基づいて、目標作用角を算出する。
続いて、ステップ110において、予め設定されたレーシング判定条件が満たされているかどうかを判定する。レーシング判定条件は、エンジン11の負荷状態についての条件(i)、エンジン回転速度についての条件(ii)、及びエンジン回転速度の上昇度合いについての条件(iii )からなる。そして、これらの条件(i)〜(iii )が全て満たされた場合にレーシング判定条件が満たされる。各条件(i)〜(iii )の内容は次の通りである。
<条件(i)について>
エンジン11が無負荷状態であること。例えば、エンジン11から駆動輪への動力伝達を断続するクラッチによって、エンジン11から駆動輪への動力伝達が遮断されているかどうかを判定する。この場合、動力伝達が遮断されているときには無負荷状態であると判定し、遮断されていないときには無負荷状態でないと判定する。
これに代えて、エンジン回転速度と駆動輪の回転速度との比を変更するための変速機がニュートラルに設定されているかどうかを判定してもよい。この場合、変速機がニュートラルに設定されているときには無負荷状態であると判定し、設定されていないときに無負荷状態でないと判定する。
さらには、車速に基づいて無負荷状態であるかどうかを判定してもよい。この場合、車速が「0」であるときに無負荷状態であると判定し、車速が「0」でないときに無負荷状態でないと判定する。
なお、上述したクラッチによる動力伝達の遮断状況と、変速機におけるニュートラルの設定状況と、車速とを適宜組合わせ、その組合わせにかかる条件が全て満たされている場合に無負荷状態であると判定してもよい。
<条件(ii)について>
エンジン回転速度が高くなっていること。この場合、エンジン回転速度が所定値以上であるかどうかを判定する。この条件が満たされている場合には、レーシングのためのアクセルペダル25の踏込み操作により、エンジン回転速度が高くなっていると判定する。なお、所定値としては、例えば1000rpm以上の値を設定することができるが、これは一例に過ぎず、適宜に変更してもよい。
<条件(iii )について>
エンジン回転速度が急激に上昇していること(上昇度合いが大であること)。この場合、単位時間当りのエンジン回転速度の上昇量を求め、これを上昇度合いとする。そして、この上昇度合いが所定値以上であるかどうかを判定する。この条件が満たされている場合には、レーシングのためにアクセルペダル25が急激に踏込まれ、エンジン回転速度が急激に上昇していると判定する。なお、所定値としては、例えば1000rpm/秒以上の値を設定することができるが、これは一例に過ぎず、適宜変更してもよい。
ここで、上記ステップ110の判定条件が満たされている(レーシング状態である)と、ステップ120において、前回の作用角制御ルーチン実行時に非レーシング状態であったかどうか(レーシング判定条件が成立していないかどうか)を判定する。この判定条件が満たされていると、すなわち、今回のルーチンで初めてレーシング状態である(レーシング状態が開始された)と判定されると、ステップ130において、前記ステップ100での目標作用角を保持作用角として設定(記憶)する。
次に、ステップ140において保持フラグFを「0」から「1」に切替え、ステップ150において保持作用角を作用角の指令値とし、この指令値に基づきアクチュエータ51を制御する。この制御により、実際の作用角が保持作用角に近づけられる。そして、ステップ150の処理を経た後に作用角制御ルーチンを終了する。
これに対し、上記ステップ110の判定条件が満たされていない(今回、レーシング状態でない)場合、及びステップ120の判定条件が満たされていない(少なくとも前回の作用角制御ルーチン実行時には既にレーシング状態になっていた)場合には、ステップ160へ移行し、上記保持フラグFが「1」であるかどうかを判定する。この判定条件が満たされている(F=1)と、すなわち保持作用角が設定されていると、ステップ170において、予め定められた作用角復帰条件が成立していない(未成立)かどうかを判定する。作用角復帰条件は、上記保持作用角に基づくアクチュエータ51の制御を終了して、目標作用角に基づくアクチュエータ51の制御に復帰させるための条件である。ここでは、エンジン回転速度の低い状態がある程度の時間にわたって継続していることが、作用角復帰条件とされている。より詳しくは、エンジン回転速度が所定値以下であり、かつその状態が所定時間継続していることが、作用角復帰条件とされている。所定値としては、例えば1000rpmを設定し、また、所定時間としては例えば5秒を設定することができるが、これらは一例に過ぎず適宜変更してもよい。
ステップ170の判定条件が満たされている(作用角復帰条件が未成立である)と、前述したステップ150へ移行し、保持作用角に基づくアクチュエータ51の制御を引続き行う。このようにして、レーシング状態が開始されて、一旦保持作用角が設定されると、作用角復帰条件が満たされるまで、すなわち、レーシングのための一連の操作が終了するまで、実際の作用角が保持作用角となるようにアクチュエータ51が制御される。
これに対し、ステップ170の判定条件が満たされていない(作用角復帰条件が成立している)と、アクセルペダル25の急激な踏込み操作及び戻し操作が行われる可能性が低く、レーシングのための一連の操作が終了したと考えられる。このことから、ステップ180において保持フラグFを「1」から「0」に切替え、その後にステップ190へ移行する。また、上記ステップ160の判定条件が満たされていない場合(F=0)にもステップ190へ移行する。例えば、作用角復帰条件が成立した後、再びレーシング判定条件が成立するまでの期間が、こうした状況(F=0)に該当する。ステップ160又は180から移行したステップ190では、上記ステップ100での目標作用角を作用角の指令値として設定し、この指令値に基づきアクチュエータ51を制御する。この制御により、実際の作用角がエンジン11の運転状態に応じた目標作用角に近づけられる。そして、ステップ190の処理を経た後に、作用角制御ルーチンを終了する。
上述した作用角制御ルーチンでは、ステップ190の処理が制御手段に相当し、ステップ110,120の処理がレーシング判定手段に相当し、ステップ130〜170の処理が変位規制手段に相当する。
上記作用角制御ルーチンによると、保持フラグF及び作用角の指令値が例えば図14に示すように変化する。タイミングt0において、レーシングのためのアクセルペダル25の急激な踏込み操作が開始され、タイミングt1で初めてレーシング判定条件が成立すると、ステップ100→110→120→130→140→150の順に処理が行われる。そのときの目標作用角が保持作用角として設定され(ステップ130)、この保持作用角を作用角の指令値としたアクチュエータ51の制御が行われる(ステップ150)。また、保持フラグFが「0」から「1」に切替えられる(ステップ140)。
タイミングt1よりも後にはステップ160の判定条件が満たされることから、作用角復帰条件が成立しない限り(ステップ170:YES)、ステップ100→110(又は120)→160→170→150の順に処理が行われる。
保持フラグFは、作用角復帰条件が成立すると「0」に切替えられる(ステップ180)。表現を変えると、保持フラグFは作用角復帰条件が成立しない限り「1」に保持される。
従って、レーシングに際し、運転者によるアクセルペダル25の急激な踏込み操作、及び急激な戻し操作が繰返されると、本来ならば、タイミングt1〜t2の期間には、図14において二点鎖線で示すように目標作用角が急激に上昇及び下降を繰返す。しかし、本実施形態では、同期間において実線で示すようにタイミングt1で設定された保持作用角が、タイミングt1後も作用角の指令値として設定される。
そして、タイミングt2で作用角復帰条件が成立すると、ステップ100→110→160→170→180→190の順に処理が行われる。保持フラグFが「1」から「0」に切替えられ、保持作用角を作用角の指令値としたアクチュエータ51の制御から、目標作用角を作用角の指令値としたアクチュエータ51の制御に切替えられる。
タイミングt2よりも後には、保持フラグFが「0」であることから、ステップ100→110→160→190の順に処理が行われ、目標作用角を作用角の指令値としたアクチュエータ51の制御が継続される。
なお、保持作用角を指令値としたアクチュエータ51の制御時(タイミングt1〜t2の期間)には、スロットル開度がアクセルペダル25の踏込み量に応じたものとなるようにアクチュエータ24が制御される。この制御によりアクセルペダル25の戻し時にはスロットルバルブ19が閉じ側に制御されて吸入空気量が減少し、それに伴いエンジン回転速度も降下する。また、アクセルペダル25の踏込み操作時にはスロットルバルブ19が開き側に制御されて吸入空気量が増加し、それに伴いエンジン回転速度も上昇する。この際、仮に目標作用角が小さな値に保持されていると、吸気バルブ31が小さな最大リフト量でしかリフトしないため、吸気バルブ31によって吸入空気量が大きく制限されてしまう。この点、本実施形態では、上述したように、目標作用角が大きな値に保持されて、吸気バルブ31が大きな最大リフト量にてリフトするため、同吸気バルブ31による吸入空気量の制限は少ない。そのため、目標作用角が保持されるものの、アクセルペダル25の踏込み操作及び戻し操作に応じてスロットルバルブ19が作動して吸入空気量が変化し、エンジン回転速度が昇降する。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)軸方向について、スライダ59のヘリカルスプライン59A〜59Cが入・出力アーム52〜54のヘリカルスプライン52A,53B,54Cから離れる方向と、同スライダ59が作用角を小さくする際に変位する方向とを同一に設定している。また、エンジン11の運転状態に基づき目標作用角を算出し、レーシング状態の開始によりレーシング判定条件が成立すると、そのときの目標作用角を保持作用角として設定し、作用角復帰条件が成立するまで保持するようにしている。
そのため、レーシングのためにアクセルペダル25が急激に踏込み操作された後に、そのアクセルペダル25が急激に戻されても、スライダ59が保持され、軸方向への変位が規制される。ヘリカルスプライン59A〜59Cがヘリカルスプライン52A,53B,54Cから離れる現象が起りにくくなる。同様の状況下で、ヘリカルスプライン59A〜59Cがヘリカルスプライン52A,53B,54Cから離れると、それらが次に接触するときに歯打ち音が発生するが、本実施形態では上記のように離れる現象が起りにくいため、こうした歯打ち音を抑制することができる。
(2)一般に、レーシングのためにアクセルペダル25が急激に踏込まれた直後には、そのアクセルペダル25が急激に戻される傾向にある。従って、アクセルペダル25の急激な踏込み操作がなされたことを把握できれば、その踏込み操作の直後には打ち音が発生するであろうことを予測可能である。このため、歯打ち音の抑制には、アクセルペダル25の急激な踏込み操作を如何に精度よく判定するかが重要となってくる。
この点、本実施形態では、少なくともエンジン11の負荷状態、エンジン回転速度、及びエンジン回転速度の上昇度合いに基づいてレーシング状態の有無を判定するようにしている。このように、エンジン回転速度の上昇度合いをレーシング状態の判定に用いることで、用いない場合に比べ、アクセルペダル25が急激に踏込まれたかどうかを精度よく判定することができる。また、その後にアクセルペダル25が急激に戻されて歯打ち音が発生するであろうことを予測することができる。この予測に基づいて目標作用角を保持することで、歯打ち音の発生を、より確実に抑制することができるようになる。
(3)レーシング状態が開始された旨の判定がなされた場合には、目標作用角が保持されて変更されなくなる。しかし、本実施形態では、こうした目標作用角の保持時には、スロットルバルブ19の開度制御により吸入空気量を調整するようにしている。この調整により、レーシングのための操作に続く戻し操作が行われる際には吸入空気量を少なくして、レーシングによって上昇したエンジン回転速度を速やかに降下させることができる。また、目標作用角の保持中にレーシングのための操作及び戻し操作が繰返し行われる際には、それらの操作に応じて吸入空気量を調整して、エンジン回転速度を速やかに昇降させることができる。その結果、運転者の意図に即したエンジン回転速度の昇降を実現できる。
(4)「エンジン回転速度が所定値以下であり、かつその状態が所定時間継続すること」を、作用角復帰条件として設定している。従って、レーシング状態の開始後にレーシングのための操作が繰返して行われても、上記の作用角復帰条件を用いることで、上記レーシングのための一連の操作が終ったかどうかを正確に把握し、そのうえでエンジン11の運転状態に応じた目標作用角に基づく制御に復帰することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・作用角可変機構45において、前記電動モータとは異なるタイプのアクチュエータを用いて、コントロールシャフト49を軸方向へ変位させるようにしてもよい。
・レーシング判定条件として、前記実施形態の内容に別の条件を加えてもよい。また、作用角復帰条件の内容を前記実施形態とは異なるものに変更してもよい。
・作用角可変機構45を、吸気カム33及び吸気バルブ31間だけでなく、排気カム36及び排気バルブ32間に設け、吸気カム33に加え、排気カム36の作用角を可変としてもよい。
・上記実施形態における作用角可変機構45の構成を適宜変更してもよい。
例えば、支持パイプ48を省略し、コントロールシャフト49に支持パイプ48の機能を兼ねさせてもよい。
また、ヘリカルスプライン53B,59B及びヘリカルスプライン54C,59Cのねじれ角を互いに同一にしてもよい。この場合には、気筒12毎の一対の吸気バルブ31が同じ最大リフト量にて往復動する。
また、上記ねじれ角を互いに異ならせてもよい。こうすると、同一の気筒12であっても、2つの吸気バルブ31が異なる最大リフト量で往復動することとなる。2つの吸気バルブ31から異なる流量、あるいは異なるタイミングで燃焼室18内に空気を吸入させることにより、燃焼室18内にスワール等の旋回流を生じさせ、もって燃焼性を改良してエンジン11の性能を向上させることが可能となる。
11…エンジン(内燃機関)、19…スロットルバルブ、23…吸気通路、31…吸気バルブ、33…吸気カム、34…吸気カムシャフト、45…作用角可変機構(可変動弁機構)、51…アクチュエータ、52…入力アーム、52A,53B,54C,59A,59B,59C…ヘリカルスプライン、53,54…出力アーム、59…スライダ、77…電子制御装置(制御手段、レーシング判定手段、変位規制手段)。