JP2006095733A - インシュレーション用多層シート材 - Google Patents
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Abstract
【課題】
固体ロケットモータの高性能化の観点から、モーターケースの内側に断熱材として使用されるインシュレーション材の気密性、機械的物性とアブレーション特性の向上。
【解決手段】
少なくとも加硫可能なエラストマー及びフィラーを含むシート状エラストマー組成物をを複数枚積層したことを特徴とする、インシュレーション用多層シート材を提供する。
【選択図】
図2
固体ロケットモータの高性能化の観点から、モーターケースの内側に断熱材として使用されるインシュレーション材の気密性、機械的物性とアブレーション特性の向上。
【解決手段】
少なくとも加硫可能なエラストマー及びフィラーを含むシート状エラストマー組成物をを複数枚積層したことを特徴とする、インシュレーション用多層シート材を提供する。
【選択図】
図2
Description
本発明は、固体ロケットモータのモーターケース内面に設けられるインシュレーション材に関するものである。
固体ロケットモータは、固体燃料(固体推進薬ともいう)によって推進力を発生するロケットエンジンであって、防衛用ロケット弾、ミサイル、あるいは人工衛星打ち上げ用ロケットの推進機関、観測用ロケット、あるいは姿勢制御用ロケット等として広く利用されている。
固体ロケットは、モーターケース、固体推進薬、ノズル、点火器、そして断熱材から構成され、点火器によってモーターケースの内部に充填された固体推進薬が点火されると、モーターケース内部に高温、高圧の燃焼ガスが発生し、この燃焼ガスがノズルから高速で流出することにより推進力が発生する。この高温、高圧、高速の燃焼ガスからモーターケースを熱的に保護する目的で使用されるのが断熱材であり、この断熱材のことを一般的にインシュレーション材と呼んでいる。
固体ロケットモータのモーターケースの内面に設けられるインシュレーション材は、固体推進薬の燃焼中に発生する高温、高圧、高速の燃焼ガスからモーターケースを熱的に保護するために使用されるものである。このインシュレーション材は固体ロケットモータの推進力の発生に寄与するものではないため、固体ロケットモータの高性能化を図るためには、極限までその軽量化を図る必要がある。また、インシュレーション材はモーターケースと固体推進薬の間に存在して、固体推進薬をモーターケース内に保持するための仲介材としての機能をも果たすものであるため、適切な強度、伸びを有していることが求められると共に、モーターケースとインシュレーション、インシュレーションと固体推進薬の間において十分な強度を有する接着層を形成できるもの、気密性が高いものが求められている。
従って、インシュレーション材として要求される特性としては、断熱性に優れていること、焼失しにくいものであること、強度・伸びが高いこと、低密度であること、アブレーション速度が低くアブレーション特性に優れることが挙げられる。また、モーターケースへインシュレーション材を加硫接着する際の施工性の観点から、シーティング性が良好であること、貼り付け作業性が良好であることが挙げられる。更に、モーターケースと推進薬との間での接着性が良好であること、気密性に優れたものであることが求められる。
ここで、アブレーションとは、高温、高圧、高速の燃焼ガスにインシュレーションが晒された際に、この燃焼ガスによってインシュレーション材が熱分解され、この熱分解された比較的低温の分解ガスがインシュレーション材の表面に低温の境界層を形成すること、インシュレーション材がもともと有する断熱特性との相乗効果によってモーターケース等を熱保護するメカニズムをいう。また、アブレーション速度とは、高温、高圧、高速の燃焼ガスにインシュレーション材が晒されたときに、インシュレーション材が焼損して侵食される単位時間当たりの厚さと、熱分解を起して炭化する単位時間当たりの厚さを加え合わせた単位時間当たりの厚さのことを言う。
従来、固体ロケットモータのインシュレーション材には、耐熱性、アブレーション特性を高め、補強効果を得るためにフィラーを混入させるのが一般的であり、このフィラーとしては、無機質繊維であってブレーキライニングやパッキンシート、あるいは耐火被覆や吸音・断熱用建材として使用されてきたアスベスト(石綿; クリソタイル Mg3Si2(OH)4O5)繊維が使用されていた。
しかしながら、チョップ状アスベスト繊維とゴムは混練及び層形成作業に長時間を要するという問題点があり、またアスベスト繊維は約600℃以上になると結晶水が飛散してしまい、Mg3Si2粉となるため、ロケットモータの燃焼ガスによって大気汚染を引き起こすという問題は生じないものの、作業時にはアスベスト繊維が飛散して作業環境を悪化させるおそれがあり、フィラーとしてアスベスト繊維を使用することが困難になってきた。
そこで、アスベスト繊維の代替品として、有機質繊維であってアブレーション特性に優れた芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維と略称されているもの)をフィラーとして使用したインシュレーション材が開発されている(例えば、特開平3-21596参照)。
特開平3−21596
特開平2−33457
特開平5−125994
特開平3−202664
ところが、有機質繊維であるアラミド繊維は、ゴムとの結合力が弱く、インシュレーション材としてのアブレーション特性を向上させるためにはゴムに対するフィラー(アラミド繊維)の含有量を高める必要がある一方、フィラーのベースゴムへの混錬性(混合性、分散性)が悪く、そのため、フィラーの含有量を高めていくとインシュレーション材として必要な強度及び気密性を得ることができなくなっていた。しかし、この混錬性を改善し、適切な強度を確保しつつフィラーの含有量を高めたとしても、十分なアブレーション特性及び気密性は得られておらず、更なる性能の向上が求められていた。
混練、圧延後のインシュレーションの表面には、気密膜が生じるため、従来、単層のインシュレーション用生ゴムシートをモーターケース内に貼り付け、加圧キュアして成形していた。しかしながら、インシュレーション材の気密膜は成形後表面を機械加工すると気密性が失われやすくなり、インシュレーションとは別に気密層を別途設ける必要が生じ、重量増、コスト増を招いていた。
また、モーターケースの耐圧試験時に気密膜がうまく形成していないと、内部に水分が浸透する恐れがある。かかる水分は推進薬と相互作用して悪影響を及ぼしたり、ロケットの性能自体に重大な欠陥を生じる可能性があり、確実な気密性を有するインシュレーション材の開発が求められていた。
本発明は、少なくとも加硫可能なエラストマーとフィラーを含むエラストマー組成物をシート状に圧延したものであって、当該シート状エラストマー組成物を複数枚積層したことを特徴とするインシュレーション用多層シート材を提供する。
また、前記加硫可能なエラストマーがエチレン-プロピレンジエンモノマー、イソプロピレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムから選択される1種または2種以上の混合物であり、前記フィラーがアラミド繊維、パルプ状アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、カーボンブラック、アスベスト、粒状シリカから選択される1種または2種以上の混合物である。
全体重量に対して前記エラストマーの配合比は30〜90重量%であり、前記フィラーの配合比は10〜45重量%である。
本発明によると、シート状エラストマー組成物の多層構造であるため成形後表面を機械加工しても、内部にゴムシートの積層面が存在し、気密性を維持することができる。すなわち、シート表面の気密性が機械加工により低下した場合であっても内部に気密性膜を複数有するため、シート全体として気密性を確保することができる。その結果、インシュレーションとは別に気密層を別途設ける必要が無くなる。本発明のインシュレーション材は気密性確保と同時に、物性、アブレーション特性を向上し、製造性を高め、重量の問題及びコスト負担を軽減するという利点を有するものである。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
固体ロケットモータ用のインシュレーション材は、バインダーとしての機能を果たすエラストマーと、強度等の機械的な物性とアブレーション特性を向上させるフィラーと、種々の機能を果たす添加物とから構成されるのが一般的である。本発明ではインシュレーション材は少なくとも加硫可能なエラストマー及びフィラーを含む。
加硫可能なエラストマーとしては、不飽和結合を有し、硫黄架橋を可能としたエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(以下EPDMという)、ポリイソプレン構造をもつ天然ゴム(以下NRという)、天然ゴムと同じポリイソプレン構造を有し、化学合成されたイソプレンゴム(以下IRという)や、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体であるアクリロニトリルブタジエンゴム(以下NBRという) 、液状ブタジエンゴム(以下BRという)(1,2−BR、1,4−BR)、液状イソプレンゴム(1,4−イソプレンゴム)、液状NBRゴム、液状SBRゴム、液状ポリブテン、液状ウレタンゴムなどが使用される。これらのエラストマーは、一種類のゴムを単独で使用することも、各ゴムの持つ利点をそれぞれ利用するためにこれらのゴムをブレンドして使用することもできる。
フィラーとしては、芳香族ポリアミド繊維(以下アラミド繊維という)、芳香族ポリアミド系パルプ状繊維(以下パルプ状アラミド繊維という)、炭素繊維、ガラス繊維、カーボンブラック、アスベスト、粒状シリカなどが使用される。これらは単独で使用することも、2種以上をブレンドして使用することもできる。
ここで、パルプ状アラミド繊維とは、非常に短くかつ高度にフィブリル化された繊維のことをいい、繊維が細かく開裂され極細繊維が集合した状態となり、通常の繊維に比べ、繊維表面が活性化され表面積が飛躍的に増大するという特徴を有している。従って、このようなパルプ状アラミド繊維をインシュレーション材のフィラーとして使用することにより、フィラーとエラストマーとの結合力が高まり強度等の機械的な物性とアブレーション特性を大幅に改善することができる。このようなパルプ状アラミド繊維は、例えばKEVLARドライパルプ(東レ・デュポン社の商標名)、TWARONパルプ(TEIJIN社の商標名)等として市販されている。
インシュレーション材に添加する添加物には、鎖状ゴム分子を三次元構造に形成させるための加硫用または架橋用配合剤、ゴム製品の硬度を調整し混錬性、加工性を改善するための軟化剤や可塑剤、ゴムの劣化を防止するための老化防止剤、ゴムの混錬、圧延時等の加工性を改善し、適切な粘着性を得るための加工助剤や粘着付与剤があるが、これらは使用されるエラストマーやフィラーとゴムの製造方法に合った添加物の組み合わせが選択される。
軟化剤及び可塑剤としては、鉱物油系軟化剤及び植物油系軟化剤が使用できる。鉱物油系軟化剤はパラフィン系軟化剤、芳香族系軟化剤、ナフテン系軟化剤を含み、植物油系軟化剤としてはステアリン酸などの脂肪酸またはその塩、菜種油、パーム油、ヤシ油などの脂肪油、パインオイル、ロジン、ファクチス(サブ)が挙げられる。老化防止剤としては、アミン系、フェノール系老化防止剤及び硫黄化合物やホスファイト類が二次老化防止剤として使用できる。加工助剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸の金属塩、ステアリルアミン、高融点ワックス、低分子量ポリエチレングリコールなどが使用できる。また、粘着付与剤としては、クマロン樹脂、フェノール、テルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、ロジン誘導体などが使用できる。
断熱特性、焼失特性、密度、アブレーション特性、加工性、施工性、接着性等のインシュレーション材として要求される特性の観点から、加硫可能な固形状エラストマー、液状添加物、及びフィラーの配合比を決定する必要がある。
加硫可能なエラストマーの配合比はインシュレーション材の全重量に基づいて、好ましくは30〜75重量%であり、より好ましくは40〜70重量%である。さらに、フィラーの配合比はインシュレーション材の全重量に基づいて、好ましくは10〜45重量%であり、より好ましくは15〜40重量%である。
また、本発明のインシュレーション材はゴムシートを複数層に積層して圧延したものである。積層構造とすることで、機械加工によりインシュレーション材表面の気密性が低下しても、内部にゴムシートの積層面が存在するため、単層シートに比べて著しく気密性を高めることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
比較例1
加硫可能なエラストマー成分、フィラーと添加物を混合し、バーバリ型混合機を用いて高温素練りした。そして、加硫剤を加えて、オープンロールを用いて混練りする。得られたゴム生成物をカレンダーロール機によりシーティングした。3mm板厚で成形したシート材(図1参照)を使用して、加硫硬化させた後に、機械加工し2mmのインシュレーション材に仕上げた。
加硫可能なエラストマー成分、フィラーと添加物を混合し、バーバリ型混合機を用いて高温素練りした。そして、加硫剤を加えて、オープンロールを用いて混練りする。得られたゴム生成物をカレンダーロール機によりシーティングした。3mm板厚で成形したシート材(図1参照)を使用して、加硫硬化させた後に、機械加工し2mmのインシュレーション材に仕上げた。
実施例1
比較例1と同様の手順によりゴム生成物を製造し、得られた生ゴムシートを薄肉化して1mm板厚に成形した。これを3枚に積層して圧延することにより多層構成のシート材を形成し(図2参照)、これを使用して加硫硬化させた後に機械加工を施し、2mmの多層インシュレーション材を形成した。
比較例1と同様の手順によりゴム生成物を製造し、得られた生ゴムシートを薄肉化して1mm板厚に成形した。これを3枚に積層して圧延することにより多層構成のシート材を形成し(図2参照)、これを使用して加硫硬化させた後に機械加工を施し、2mmの多層インシュレーション材を形成した。
インシュレーション材の配合比
固形ゴム(EPDM) 41
固形ゴム(IR) 20
液状ゴム(NBR) 6
フィラー
アラミド繊維 18
カーボンブラック 6
添加物
硫黄 1.3
メルカプトベンゾチアゾール 0.7
ZnO 3.1
ステアリン酸 0.7
フェノール系樹脂 2.5
アミン系老化防止剤 0.7
(数値は重量%を示す)
(気密性試験)本発明の実施例1にかかる多層インシュレーション材と比較例1にかかる単層インシュレーション材との気密性試験を行った。図3は気密性試験を行う際に使用した試験装置の概略図である。単層及び多層インシュレーション材を用意し、両者共、3mm板厚で成形した後に機械加工で2mmの板厚として仕上げたものを使用した。ゴム直径100mm、ゴム板厚2mmのインシュレーション材を図3の装置に設置し、空気を透過ガスとして圧力約9.81MPa(100kgf/cm2)をかけ、単位時間当たりに漏れる空気の量を水中回収して評価した(ml/hr)。結果を図4に示す。
固形ゴム(EPDM) 41
固形ゴム(IR) 20
液状ゴム(NBR) 6
フィラー
アラミド繊維 18
カーボンブラック 6
添加物
硫黄 1.3
メルカプトベンゾチアゾール 0.7
ZnO 3.1
ステアリン酸 0.7
フェノール系樹脂 2.5
アミン系老化防止剤 0.7
(数値は重量%を示す)
(気密性試験)本発明の実施例1にかかる多層インシュレーション材と比較例1にかかる単層インシュレーション材との気密性試験を行った。図3は気密性試験を行う際に使用した試験装置の概略図である。単層及び多層インシュレーション材を用意し、両者共、3mm板厚で成形した後に機械加工で2mmの板厚として仕上げたものを使用した。ゴム直径100mm、ゴム板厚2mmのインシュレーション材を図3の装置に設置し、空気を透過ガスとして圧力約9.81MPa(100kgf/cm2)をかけ、単位時間当たりに漏れる空気の量を水中回収して評価した(ml/hr)。結果を図4に示す。
気密性(ガス透過量)ml/hr
比較例 1(単層インシュレーション材) 4
実施例 1(多層インシュレーション材) 0.15
図4で表されるように、本発明の多層シートは従来の単層シートと比較して、ガス透過量が低く、気密性が向上されていることがわかる。
以上説明したように、本発明に係るインシュレーション材は気密性において従来品を大きく上回る性能を有しており、固体ロケットモータのインシュレーション材として使用することにより、固体ロケットモータの高性能化に貢献することができる。
Claims (3)
- 少なくとも加硫可能なエラストマー及びフィラーを含有するシート状エラストマー組成物を複数枚積層したことを特徴とする、インシュレーション用多層シート材。
- 加硫可能なエラストマーがエチレン-プロピレンジエンモノマー、イソプロピレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプロピレンゴムラテックス、天然ゴムラテックス、アクリロニトリルブタジエンゴムラテックスから選択される1種または2種以上の混合物であり、フィラーがアラミド繊維、パルプ状アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、カーボンブラック、アスベスト、粒状シリカから選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のインシュレーション用多層シート材。
- 全体重量に対して前記エラストマーの配合比が30〜90重量%であり、前記フィラーの配合比が10〜45重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインシュレーション用多層シート材。
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