しかしながら、地中に埋設された管には管外面からのハンマー打撃を行なうことができない。また、端部が開口している筒状の管に対し、管端部から管内へハンマー打撃用の装置を挿入して管内面からハンマー打撃を行なう場合、管端部からの装置の操作距離に制限があり、また、溶接の都度、装置を挿入して剥離処理を行なう必要があった。
一方、溶接の都度、作業者がハンマー打撃を行なう場合、管内部を観察できないため剥離状況が不明のまま適当に打撃を終了していた。このため剥離の程度にばらつきが生じ、未剥離のスラグが裏波溶接部に残置されることがあった。このような残存スラグはパイプラインの操業後に内部水流、内部ガス流等によって剥落し、パイプラインに接続された各種機器へ移動して悪影響を及ぼすことがある。
ところで、発泡樹脂、合成ゴム等を用いてなる球状、砲弾状等のピグを移動させて管内を清掃するピグクリーニングが実行されている。ピグクリーニングにおいては、例えば高圧の液体、気体等でピグの後方を加圧して走行させるため、管の長さ、管の長手方向の形状等によらず、管内を清掃することができる。
しかしながら、従来のピグクリーニングで用いられているピグは、ピグの周面が管内面を擦過しながら管内を移動し、また、裏波溶接部に付着したスラグは、擦りつけられるような外力によってはほとんど剥離しないため、従来のピグを用いて裏波溶接部に付着したスラグを剥離させることは困難であった。また、従来のピグは、管内を移動する先頭側の形状が半球状、先細り形状等の凸状であるため、管外へ押し出すべきスラグがピグの周面と管内面との間に入り込んでピグの後方へ脱離し易く、この結果、管内にスラグが残存することがあった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、スパイクピグのスパイクを裏波溶接部に衝突させることにより、裏波溶接部に付着しているスラグを確実に剥離させることができるスラグ除去方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、スパイクピグのスパイク先端部の先端面、テーパ状の面又はテーパ状の面と先端面との交差部を裏波溶接部に衝突させることにより、裏波溶接部が損傷することを抑制しつつ裏波溶接部に付着しているスラグを確実に剥離させることができるスラグ除去方法及びピグを提供することにある。
本発明の他の目的は、スパイクピグの移動後、ピグの非凸状の一端面を用いて管内のスラグを管外へ押し出すことにより、管内のスラグを確実に除去することができるスラグ除去方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、スパイクピグの移動後、管に対するハンマー打撃後等に、ピグの非凸状の一端面を用いて管内のスラグを管外へ押し出すことにより、管内のスラグを確実に除去することができるスラグ除去方法を提供することにある。
第1発明に係るスラグ除去方法は、管の周溶接部の内面側のスラグを除去するスラグ除去方法において、スパイクを突設してあるスパイクピグを、前記管の内部で前記管の長手方向に移動させることによって、前記周溶接部の裏波溶接部に前記スパイクを衝突させることを特徴とする。
第2発明に係るスラグ除去方法は、前記スパイクピグは、柱状のピグ本体を備え、前記スパイクは、前記ピグ本体の側面に立設された柱状体であり、前記スパイクの先端部は、前記ピグ本体の一端側がテーパ状であり、前記スパイクピグを、前記一端側を先頭にして、前記管の内部で前記管の長手方向に移動させることによって、前記周溶接部の裏波溶接部に、前記先端部の先端面、テーパ状の面、又は該面と前記先端面との交差部を衝突させることを特徴とする。
第3発明に係るスラグ除去方法は、前記スパイクピグの移動後、前記管の内面形状に応じた側面形状を有し、一端面が非凸状である柱状のピグを、前記一端面を先頭にして、前記管の内部で前記管の長手方向に移動させることによって、移動する前記一端面を用いて前記管の内部のスラグを前記管の外部へ押し出すことを特徴とする。
第4発明に係るスラグ除去方法は、管の内部のスラグを除去するスラグ除去方法において、前記管の内面形状に応じた側面形状を有し、一端面が非凸状である柱状のピグを、前記一端面を先頭にして、前記管の内部で前記管の長手方向に移動させることによって、移動する前記一端面を用いて前記管の内部のスラグを前記管の外部へ押し出すことを特徴とする。
第5発明に係るピグは、管の内部のスラグを剥離させて除去するためのピグであって、柱状のピグ本体と、該ピグ本体の側面に立設された柱状のスパイクとを備え、該スパイクの先端部は、前記ピグ本体の一端側がテーパ状であることを特徴とする。
第1発明にあっては、管の周溶接部の内面側のスラグを除去する場合に、角柱状又は角錐状、円柱状又は円錐状等のスパイクを突設してあるスパイクピグを用いる。スパイクピグは、例えば従来のピグクリーニングで用いられるピグと同様に、高圧の気体、液体等で加圧されることによって管の一端部から管内に送られ、管の他端部に到達するまで、管内を管の長手方向に移動する。
一般に、スパイクピグのスパイクは管内面に接触する。このため、スパイクピグの移動に伴って、スパイクが管の周溶接部内面側の裏波溶接部に衝突する。スパイクピグのスパイクが裏波溶接部に衝突することによって、裏波溶接部に付着したスラグに衝撃が与えられ、この結果、管に対し管内面/外面からハンマー打撃を行なった場合と同様に、裏波溶接部に付着しているスラグが剥離する。
第2発明及び第5発明にあっては、スパイクピグが、柱状のピグ本体と、ピグ本体の側面に立設された1又は複数のスパイクとを備える。ピグ本体は、端部が平面状、凹面状等である円柱型、角柱型、又は先頭側端部が凸状である砲弾型等である。
スパイクは柱状体であり、スパイクの先端部は、ピグ本体の一端側がテーパ状である。つまりスパイクは、スパイクの先端部に、先端面と、テーパ状の面(以下、テーパ面という)とを有する。
スパイクピグは、ピグ本体の一端側を先頭にして、管の内部で管の長手方向に移動する。つまり、スパイクピグは、スパイク先端部のテーパ面をスパイクピグの移動先に向けて、管内を長手方向に移動する。このため、移動するスパイクピグのスパイクが裏波溶接部に衝突する場合、スパイクの先端面、テーパ面、又はテーパ面と先端面との交差部が裏波溶接部に衝突する。この結果、管の裏波溶接部には、先端面又はテーパ面のような平面か、テーパ面と先端面との交差部のような鈍角状の角部が衝突するため、裏波溶接部は損傷し難い。しかも、スパイクが裏波溶接部に衝突することによってスラグに衝撃が与えられ、この結果、管に対し管内面/外面からハンマー打撃を行なった場合と同様に、裏波溶接部に付着しているスラグが剥離する。
第3発明にあっては、管の内面形状に応じた側面形状を有し、一端面が非凸状、即ち平面状又は凹面状である柱状のピグを用いる。スパイクピグを管内で移動させた場合に裏波溶接部から剥離したスラグ、及び/又は、剥離して管内に存在していたスラグは、一部がスパイクピグの移動に伴って管内から除去され、残部が管内に残留する。スパイクピグを管内移動させた後、つまりスパイクピグを用いたスラグの剥離後、本発明のピグは、非凸状の一端面を先頭にして、例えば従来のピグクリーニングで用いられるピグと同様に高圧の気体、液体等で加圧されることによって管の一端部から管内に送られ、管の他端部に到達するまで、管内を管の長手方向に移動する。
このようなピグのサイズは管の内部のサイズよりひとまわり大きく、ピグと管内面との間に空隙がない。また、ピグの先頭側である一端面が凸状ではないため、管外へ押し出すべきスラグが一端面に沿ってピグの側面と管内面との間に入り込むことが抑制される。以上のことから、非凸状の一端面がスラグを直接的に、又は管内の液体、気体等を介して管外へ押し出し、管外へ押し出すべきスラグがピグの側面と管内面との間に入り込んでピグの後方へ脱離することが抑制される。
第4発明にあっては、管の内部のスラグを除去する場合に、管の内面形状に応じた側面形状を有し、一端面が非凸状、即ち平面状又は凹面状である柱状のピグを用いる。スパイクピグを管内移動させた後、管にハンマー打撃を行なった後等には、裏波溶接部から剥離したスラグが管内に存在する。管内のスラグを剥離させた後、本発明のピグは、非凸状の一端面を先頭にして、例えば従来のピグクリーニングで用いられるピグと同様に高圧の気体、液体等で加圧されることによって管の一端部から管内に送られ、管の他端部に到達するまで、管内を管の長手方向に移動する。
このようなピグはピグと管内面との間に空隙がない。また、ピグの先頭側である一端面が凸状ではないため、管外へ押し出すべきスラグが一端面に沿ってピグの側面と管内面との間に入り込むことが抑制される。以上のことから、非凸状の一端面がスラグを直接的に、又は管内の液体、気体等を介して管外へ押し出し、管外へ押し出すべきスラグがピグの側面と管内面との間に入り込んでピグの後方へ脱離することが抑制される。
第1発明のスラグ除去方法によれば、スパイクピグの移動中、スパイクピグのスパイクが裏波溶接部に衝突することによって裏波溶接部に付着しているスラグに衝撃を与える。このため、管に対してハンマー打撃を行なった場合と同様に、裏波溶接部に付着しているスラグを確実に剥離させることができる。
また、ピグクリーニングを行う場合と同様にして、スパイクピグを管内に送ることができるため、スラグ剥離のために新たな装置を準備する必要がなく、更に、管の長さ、管の長手方向の形状等によらず、スパイクピグを管内移動させることができる。この結果、管の長さ、管の長手方向の形状、管が地中に埋設されているか否か等によらず、裏波溶接部に付着しているスラグを剥離させることができる。
以上のようにして、裏波溶接部に付着しているスラグを確実に剥離させることができるため、裏波溶接部に付着しているスラグがパイプライン操業後に剥落して、パイプラインに接続された各種機器に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
第2発明のスラグ除去方法及び第5発明のピグによれば、スパイクピグの移動中、スパイクピグのスパイクが裏波溶接部に衝突することによって裏波溶接部に付着しているスラグに衝撃を与える。スパイクが裏波溶接部に衝突する場合、尖端状、鋭角状、直角状等の尖鋭部が裏波溶接部に衝突するときは、裏波溶接部に付着しているスラグを剥離させることはできても、裏波溶接部を損傷することがある。一方、スパイクが裏波溶接部を打撃する場合に、平坦な先端面若しくはテーパ面、又はテーパ面と先端面との鈍角状の交差部が裏波溶接部に衝突するときは、裏波溶接部が損傷することを抑制することができ、しかも、裏波溶接部に付着しているスラグを確実に剥離させることができる。
また、テーパ面を有するスパイクを備えるスパイクピグは、柱状のスパイクを備える一般的なスパイクピグのスパイクの先端部を面取りすることによって容易に製造することができる。
第3発明のスラグ除去方法によれば、ピグの側面と管内面との間に空隙がなく、また、ピグの先頭側の端面が平面状又は凹面状であるため、管外へ押し出すべきスラグがピグの先頭側の端面に沿ってピグの側面と管内面との間に入り込み、ピグの後方へ脱離することを抑制して、ピグの先頭側の端面がスラグを直接的に、又は管内の液体、気体等を介して、スラグを管外へ押し出し除去することができる。つまり、平面状又は凹面状の一端面を有する本発明のピグを用いて、管内のスラグを確実に除去することができる。このため、管内のスラグが、パイプラインに接続された各種機器に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
第4発明のスラグ除去方法によれば、裏波溶接部に付着したスラグを剥離させる手段によらず、第3発明のスラグ除去方法と同様に、管内のスラグを確実に除去することができる。このため、管内のスラグが、パイプラインに接続された各種機器に悪影響を及ぼすことを抑制することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態 1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスラグ除去方法を実行するためのスラグ除去装置3の構成を示す説明図である。図中2は鋼管であり、鋼管2は、複数の鋼製の管を片面裏波溶接して接合することによって形成してある。片面裏波溶接によって発生した鋼管2の周溶接部の内面側のスラグを排除する場合、本実施の形態では、鋼管2が鋼管2の長手方向を略水平にして横置され、スラグ除去装置3のピグ射出部31が一端部に、ピグ回収部32が他端部に、夫々取り付けられる。なお、鋼管2の中央部は、例えば地中に埋設されていても良い。
ピグ射出部31は、スパイク10,10,…を突設してあるスパイクピグ1(図2参照)と、ピグ41(図4(a)参照)とを個別に鋼管2内へ射出し、ピグ回収部32は、鋼管2内へ射出されたスパイクピグ1とピグ41とを回収する。ただし、図1にはスパイクピグ1のみが例示してある。
スラグ除去装置3は、ピグ射出部31及びピグ回収部32の他、コンプレッサ34を備える。コンプレッサ34は、スパイクピグ1(又はピグ41)を射出すべくピグ射出部31へ、エアホース341を介して圧縮空気を送る。鋼管2内から除去されたスラグは、ピグ回収部32に捕集される。また、ピグ射出部31から鋼管2内へ圧縮空気が送られた場合、鋼管2内の空気はピグ回収部32へ移動し、エアホース351を介して外部へ排出される。なお、各種ピグの射出に、圧縮空気以外の気体を用いる構成、液体(例えば水)を用いる構成等でも良い。
図2は、スパイクピグ1の構成を示す斜視図であり、図3(a)は、スパイクピグ1が備えるスパイク10の構成を示す斜視図である。また、図4(a)は、ピグ41の構成を示す斜視図である。図2〜図4に夫々含まれる白抜矢符は、図1に含まれる白抜矢符と同一方向を示している。
本実施の形態においては、鋼管2の周溶接部内面側の裏波溶接部に付着しているスラグを、鋼管2内部で鋼管2の長手方向に移動するスパイクピグ1を用いて剥離させ、スパイクピグ1を用いて剥離されたスラグを含む鋼管2内のスラグを、鋼管2内部で鋼管2の長手方向に移動するピグ41を用いて管外へ押し出すことによって、鋼管2内のスラグを除去する。
スパイクピグ1は、円柱状のピグ本体11と、ピグ本体11の両端に設けられ、ピグ本体11よりも外径が大きい各円柱状の先頭部12及び後尾部13とを、夫々の軸が一致するように一体成型してなる発泡ウレタン樹脂体である。先頭部12は一端部側(スパイクピグ1の最先端)が先細りの凸状に形成してあり、後尾部13は他端部側(スパイクピグ1の端面)が平面状である。このためスパイクピグ1は略砲弾型である。
先頭部12及び後尾部13夫々の外径は、鋼管2の内径よりやや大きい。先頭部12及び後尾部13は、柔軟な発泡ウレタン樹脂体であるため、スパイクピグ1が先頭部12を先頭にして鋼管2の内部へ送られた場合に、鋼管2の内面に接触して径方向に圧縮される。この結果、先頭部12及び後尾部13夫々の周面は鋼管2内面に密着し、先頭部12及び後尾部13夫々の周面と鋼管2内面との間に空隙は生じない。一方、ピグ本体11の周面11aと鋼管2の内面との間には空隙が生じる。
各スパイク10は鋼製の四角柱であり、一端部がピグ本体11に埋設されることによってピグ本体11の周面11aに略垂直に立設してある。各スパイク10の他端部(以下、先端部という)は、ピグ本体11の先頭部12側がテーパ状である。具体的には、スパイク10の先端部に、スパイク10が立設してある周面11aに対して傾斜するテーパ面10aと、周面11aに対して略平行な先端面10bとが、ピグ本体11の軸方向に並置して形成してある。先端面10bは、周面11aからの離隔距離が略一定の平坦面であり、テーパ面10aは、先端面10bとの交差部を有し、交差部から先頭部12側へスパイク10の突出長が減少するように形成してある。つまり、スパイク10の先端部は、四角柱の端面と側面とが交差する交差部を切り落としたような形状である。
ピグ本体11の外径とスパイク10の突出長との和は、先頭部12及び後尾部13夫々の外径に略等しく、具体的には鋼管2の内径より3%〜5%大きい外径である。ピグ本体11は柔軟な発泡ウレタン樹脂体であるため、スパイクピグ1が鋼管2の内部へ送られた場合に、スパイク10,10,…が鋼管2の内面に接触してピグ本体11が圧縮される。このため、スパイク10,10,…の先端面10b,10b,…と鋼管2内面とが接触する。
ピグ41は、鋼管2の内径よりやや大きい外径を有する円柱状の柔軟な発泡ウレタン樹脂体であり、少なくとも一端面41aが平面状である。なお、他端面は平面状でなくても良いが、鋼管2内への射出時に、ピグ41は平面状の端面を先頭に射出されるため、両方の端面が平面状であることが好ましい。
ピグ41は、柔軟な発泡ウレタン樹脂体であるため、ピグ41が一端面41aを先頭にして鋼管2の内部へ送られた場合に、鋼管2の内面に接触して径方向に圧縮される。この結果、ピグ41の周面は鋼管2内面に密着し、ピグ41の周面と鋼管2内面との間に空隙は生じない。
以上のようなスラグ除去装置3を用いて鋼管2内部のスラグを除去する場合、スパイクピグ1及びピグ41は、夫々ピグ射出部31から射出されて、ピグ回収部32に到着するまで鋼管2内を移動する。更に詳細には、片面裏波溶接完了後、つまり複数の鋼製の管を接合することによる鋼管2の形成後、まず、スラグ除去装置3のオペレータが、スパイクピグ1を、先頭部12を鋼管2側に向けてピグ射出部31に装填し、コンプレッサ34を運転する。
ピグ射出部31内にセットされたスパイクピグ1は、コンプレッサ34がエアホース341を介してピグ射出部31内へ圧送した圧縮空気によって後尾部13側から加圧され、鋼管2へ白抜矢符方向に射出される。この後、スパイクピグ1は、先頭部12及び後尾部13夫々の周面とスパイク10,10,…の先端面10b,10b,…とが常に鋼管2の内面に接触した状態で鋼管2内を白抜矢符方向に、つまり鋼管2の長手方向に、ピグ回収部32まで移動する。
スパイクピグ1の移動に伴い、スパイクピグ1のスパイク10,10,…、更に詳細にはスパイク10のテーパ面10a、先端面10b、又はテーパ面10aと先端面10bとの交差部は、鋼管2内面の裏波溶接部に衝突する。このことによって、鋼管2内面の裏波溶接部に付着しているスラグに衝撃が与えられ、この結果、付着しているスラグが剥離する。剥離されたスラグの一部は、スパイクピグ1と共に移動するか、又は、鋼管2の底部に残留する。スパイクピグ1と共に移動したスラグは、ピグ回収部32に捕集される。
スパイクピグ1の射出後、スパイクピグ1がピグ回収部32に到着した場合にコンプレッサ34による圧送が停止される。この場合、スラグ除去装置3のオペレータは、例えばスパイクピグ1がピグ回収部32に到着しピグ回収部32の内壁に衝突した衝突音が生じたときに、スパイクピグ1がピグ回収部32に到着したと判定し、コンプレッサ34の運転を停止させる。
スパイクピグ1がピグ回収部32に到着した後、つまりスパイクピグ1の移動後、スパイクピグ1と同様にピグ41が、一端面41aを鋼管2側に向けてピグ射出部31に装填され、コンプレッサ34が運転されて圧縮空気で射出される。ピグ41は、ピグ41の周面が常に鋼管2の内面に接触した状態で鋼管2内を白抜矢符方向に、つまり鋼管2の長手方向に、ピグ回収部32まで移動する。この場合、ピグ41は移動しつつ鋼管2内のスラグ、具体的には裏波溶接部から剥離されて鋼管2底部に残留していたスラグを一端面41aで白抜矢符方向に押し出して鋼管2内から除去する。鋼管2内から除去されたスラグは、ピグ回収部32に捕集される。
ここで、スパイクピグ1が鋼管2内を移動した場合と、スパイクを備えない砲弾型のピグ、及びスパイク10,10,…の形状とは異なる一般的な形状のスパイクを備えるスパイクピグ(以下、一般的なスパイクピグという)が鋼管2内を移動した場合との違いについて述べる。
スパイクを備えない砲弾型のピグとしては、砲弾状のウレタン発泡体の表面にウレタン樹脂を塗布して耐磨耗性を向上させたピグ(以下、クリスクロスという)、砲弾状のウレタン発泡体の表面にワイヤブラシを貼ったワイヤピグ等が用いられている。パイプライン敷設完了後、ピグによる管内の清掃を行なう場合は、一般にクリスクロスが使用される。しかしながら、クリスクロスが鋼管2内を同一方向に10回移動した場合でも、スラグの剥離量は付着しているスラグの量の50%程度である。また、ワイヤピグが鋼管2内を移動した場合、スラグの剥離量は付着しているスラグの量の60%程度である。
クリスクロス、ワイヤピグのようなピグは、ピグ周面が鋼管2内部を擦過するようにして移動する。しかしながら、スラグはガラス質であり、鋼管2内部に付着しているスラグの表面は一般に滑らかである。このため、ピグ周面をスラグに擦りつけるような作用ではスラグを剥離させることができないと考えられる。
図3(c),(d)は、他のスパイクの構成の例を示す斜視図である。一般的なスパイクピグとしては、図3(b)に示すような角柱のスパイク101、図3(c)に示すような円柱のスパイク102、円錐のスパイク、角錐のスパイク等を周面に備えるスパイクピグが用いられている。このようなスパイクピグが鋼管2内を移動した場合、スラグの剥離量は付着しているスラグの量の略100%である。
鋼管2内部に付着しているスラグは、ハンマリングのような衝撃に対しては容易に剥離する。スパイクピグは、鋼管2内を移動中に、スパイクピグに備えられているスパイクが鋼管2の周溶接部内面側の裏波溶接部に衝突することによって裏波溶接部にハンマリングのような衝撃が与えられるため、スラグの剥離性能が高いと考えられる。
しかしながら、スパイク101、スパイク102、円錐のスパイク、角錐のスパイク等は、先端部に尖端状、直角状又は鋭角状の尖鋭部を有し、この尖鋭部が裏波溶接部に衝突する。このため、裏波溶接部が損傷し、又は、鋼管2内面に塗布してある塗料を剥離することがある。
スパイクピグ1が鋼管2内を移動した場合、一般的なスパイクピグと同様に、スパイク10,10,…の裏波溶接部に対する衝突によって裏波溶接部に付着しているスラグに衝撃が与えられるため、スラグの剥離量は、付着しているスラグの量の略100%である。更に、テーパ面10a、先端面10b、又はテーパ面10aと先端面10bとの交差部が裏波溶接部に衝突し、尖鋭部は衝突しない。この結果、裏波溶接部が損傷すること、又は鋼管2内面に塗布してある塗料を剥離することが抑制される。
さて、スパイクピグ1によって剥離され鋼管2内に残留しているスラグを除去する場合、例えば、先端部が先細り形状であるクリスクロスに鋼管2を移動させることによって、残留スラグの約60%がピグ回収部32に排出される。このため、クリスクロスを用いる場合はクリスクロスに複数回鋼管2を移動させる必要がある。
一方、平面状の一端面41aを有する円柱状のピグ41に鋼管2を移動させた場合、残留スラグの略100%(99.3%)がピグ回収部32に排出される。ピグ41はスパイクを備えず、ピグ41周面と鋼管2内面との間の離間距離に空隙がない。また、一端面41aがスラグを直接的に鋼管2外へ押し出す。この場合、鋼管2内を移動するピグ41の先頭側の形状が平面状であり、凸状ではないため、鋼管2外へ押し出すべきスラグが、一端面41aに沿ってピグ41周面と鋼管2内面との間に入り込んでピグ41の後方へ脱離することが抑制される。つまり、スパイクピグ1とピグ41とを併用することによって、スラグの剥離性及び排出性が向上される。
以上の結果、本実施の形態のスラグ除去方法及びスパイクピグ1によれば、鋼管2の周溶接部内面側の裏波溶接部の裏波溶接部に付着したスラグを、裏波溶接部を損傷させることなく確実に剥離させ、鋼管2内のスラグを、確実に除去することができる。このため、鋼管2内のスラグが、パイプラインに接続された各種機器に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
なお、スパイクピグ1が備えるスパイクの形状は、スパイク10のように角柱の一部が切り落とされたような形状に限るものではない。図3(b)は、スパイクピグ1が備える他のスパイクの構成の例を示す斜視図である。
スパイク100は鋼製の円柱であり、一端部がピグ本体11に埋設されることによってピグ本体11の周面11aに略垂直に立設してある。各スパイク100の他端部(以下、先端部という)は、ピグ本体11の先頭部12側がテーパ状である。具体的には、スパイク100の先端部に、スパイク100が立設してある周面11aに対して傾斜するテーパ面100aと、周面11aに対して略平行な先端面100bとが、ピグ本体11の軸方向に並置して形成してある。先端面100bは、周面11aからの離隔距離が略一定の平坦面であり、テーパ面100aは、先端面100bとの交差部を有し、交差部から先頭部12側へスパイク100の突出長が減少するように形成してある。つまり、スパイク100の先端部は、円柱の端面と側面とが交差する交差部の一部を切り落としたような形状である。
スパイク100,100,…を備えるスパイクピグ1が鋼管2内を移動した場合、スパイク10,10,…を備えるスパイクピグ1と同様に、スパイク100,100,…の裏波溶接部に対する衝突によって裏波溶接部に付着しているスラグに衝撃が与えられるため、スラグの剥離量は、付着しているスラグの量の略100%である。更に、テーパ面100a、先端面100b、又はテーパ面100aと先端面100bとの交差部が裏波溶接部に衝突し、尖鋭部は衝突しない。この結果、裏波溶接部が損傷すること、又は鋼管2内面に塗布してある塗料を剥離することが抑制される。
なお、スパイクピグ1が備えるスパイクの先端部の形状は、例えば略半球の凸状でも良い。この場合、裏波溶接部の損傷は更に抑制される。ただし、テーパ面10,100を有するスパイクを備えるスパイクピグは、四角柱又は円柱のスパイクを備える一般的なスパイクピグのスパイクの先端部を面取りすることによって容易に製造することができる。
また、スパイクピグ1を、高圧の液体で鋼管22内へ射出する場合、スパイクピグ1は、先頭部12及び後尾部13を除くピグ本体11及びスパイク10,10,…のみで構成されても良い。このとき、ピグ本体11の先頭側を先細りの凸状となし、ピグ本体11を砲弾型とすることが好ましい。
実施の形態 2.
図4(b)は、本発明の実施の形態2に係るスラグ除去方法を実行するためのピグ42の構成を示す斜視図である。
実施の形態1においては、スラグ除去装置3を用いてスパイクピグ1に鋼管2内を移動させた後、つまりスパイクピグ1を用いてスラグを剥離させた後、スラグ除去装置3を用いて、円柱状のピグ41に鋼管2内を移動させることによって、鋼管2内のスラグを除去していた。本実施の形態においては、スパイクピグ1を用いてスラグを剥離させた後、又は、鋼管2をハンマーで打撃するような従来のスラグ剥離方法の実行後、スラグ除去装置3を用いて、円柱状のピグ42に鋼管2内を移動させることによって、鋼管2内のスラグを除去する。その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
ピグ42は、鋼管2の内径に略等しい外径を有する円柱状の柔軟な発泡ウレタン樹脂体であり、少なくとも一端面42aが凹面状である。なお、他端面は凹面状でなくても良いが、鋼管2内への射出時に、ピグ42は凹面状の端面を先頭に射出されるため、両方の端面が凹面状であることが好ましい。
以上のようなピグ42は、ピグ41と同様に、一端面42aを鋼管2側に向けてピグ射出部31に装填され、コンプレッサ34によって圧縮空気で鋼管2内へ射出される。ピグ42は、ピグ42の周面が常に鋼管2の内面に接触した状態で鋼管2内を白抜矢符方向に、つまり鋼管2の長手方向に、ピグ回収部32まで移動する。この場合、ピグ42は移動しつつ鋼管2内のスラグを一端面42aで白抜矢符方向に押し出して鋼管2内から除去する。ピグ42が鋼管2を移動した場合、ピグ41が鋼管2を移動した場合と同様に、残留スラグの略100%がピグ回収部32に捕集される。
以上の結果、本実施の形態のスラグ除去方法によれば、裏波溶接部に付着したスラグを剥離させる手段によらず、鋼管2内のスラグを、確実に除去することができる。このため、鋼管2内のスラグが、パイプラインに接続された各種機器に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。