JP2006093097A - 電池容器用めっき鋼板、その電池容器用めっき鋼板を用いた電池容器およびその電池容器を用いた電池 - Google Patents

電池容器用めっき鋼板、その電池容器用めっき鋼板を用いた電池容器およびその電池容器を用いた電池 Download PDF

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栄治 山根
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Abstract

【課題】 電池容器に成形加工する際に電池容器内面側のめっき層に鋼素地に達することのない微小クラックが発生し、アルカリ電池の正極合剤との密着性が向上して、長期保存後に優れた電池性能を十分に発揮することが可能であり、かつ電池容器内部のガス発生が抑制されて電解液の耐漏液性に優れた電池とすることが可能な電池容器用めっき鋼板、その電池容器用めっき鋼板を用いた電池容器およびその電池容器を用いた電池を提供する。
【解決手段】 鋼板上に鉄−ニッケル合金層、その上にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層を形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルト−錫合金層を形成するか、またはさらにその上にコバルト−スズ−銀合金層とその上層の銀層を形成して電池容器用めっき鋼板とし、それを電池容器に成形加工して電池に適用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電池容器用めっき鋼板、その電池容器用めっき鋼板を用いた電池容器およびその電池容器を用いた電池に関する。
近年、オーディオ機器やモバイル電話など、多方面において携帯用機器が用いられ、その作動電源として一次電池であるアルカリ電池、二次電池であるニッケル水素電池、リチウムイオン電池などが多用されている。これらの電池においては、高出力化および長寿命化など、高性能化が常時求められており、正極および負極活物質を充填する電池容器も電池の重要な構成要素としての性能の向上が求められている。例えば、プレス絞りしごき加工してなる缶を用いた電池において、電池の内部抵抗を減少させるために、缶内面となる側にニッケルめっきし、次いでコバルトめっきを施した後、熱処理する方法(例えば特許文献1参照)、あるいは鋼板に硬質なニッケル−コバルト合金めっきを被覆し、その上に必要に応じて銀めっきなどを被覆する方法(例えば特許文献2参照)などが提案されている。
しかし、特許文献1による方法は、熱処理によりニッケルとコバルトの拡散層が形成されてコバルトによりアルカリ電解液中の抵抗を低く維持することを目的としているものの、コバルトによる被覆率が一定せずに電池性能が不安定になりやすく、また熱処理によりめっき層が再結晶して軟質化するために電池缶に成形加工した後に充填する正極合剤との十分な密着性が得られず、長期保存後に電池性能を十分に発揮することができない。また、特許文献2による方法は、鋼板に硬質なニッケル−コバルト合金めっきを被覆しているので、電池缶に成形加工した際にクラックが生じ、クラックが鋼素地に達することがあり、鋼素地が露出してアルカリ電解液と電気化学的に反応して水素ガスが発生し、電池缶内部の圧力が上昇して電解液が漏洩するおそれがある。
特許公告公報 特公平03−017916号公報 特許公開公報 特開平09−306439号公報
本発明においては、絞り加工や絞りしごき加工を施して電池容器に成形加工する際に電池容器内面側のめっき層に鋼素地に達することのない微小クラックが発生し、アルカリ電池の正極合剤との密着性が向上して、長期保存後に優れた電池性能を十分に発揮することが可能であり、かつ電池容器内部のガス発生が抑制されて電解液の耐漏液性に優れた電池とすることが可能な電池容器用めっき鋼板、その電池容器用めっき鋼板を用いた電池容器およびその電池容器を用いた電池を提供することを目的とする。
本発明の目的を達成するため、本発明の電池容器用めっき鋼板は、鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項1)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項2)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項3)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項4)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項5)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項6)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項7)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項8)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項9)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項10)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項11)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項12)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項13)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項14)、または
鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板(請求項15)のいずれかである。
また本発明の電池容器は、上記(請求項1〜15)のいずれかの電池容器用めっき鋼板を有底の筒型形状に成形加工してなる電池容器(請求項16)である。
そして本発明の電池は、上記(請求項16)の電池容器を用いてなる電池(請求項17)である。
本発明の電池容器用めっき鋼板は、鋼板の電池容器内面となる側に、
a)ニッケルめっきを施し、次いでその上にコバルトめっきを施し、さらにその上にスズめっきを施した後に拡散熱処理することにより、鋼板上に鉄−ニッケル合金層、その上にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層を形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルト−錫合金層を形成したもの、
b)ニッケルめっきを施し、次いでその上にコバルトめっきを施し、さらにその上にスズめっきを施し、またさらにその上に銀めっきを施した後に拡散熱処理することにより、鋼板上に鉄−ニッケル合金層、またはその上にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層を形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルトー錫合金層を形成し、またさらにその上にコバルト−スズ−銀合金層とその上層の銀層を形成したもの、
c)ニッケルめっきを施し、次いでその上にコバルトめっきを施し、さらにその上にスズめっきを施した後に拡散熱処理することにより、鋼板上に鉄−ニッケル合金層、その上にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層を形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルト−錫合金層を形成した後、その上層に銀めっきを施したもの、
のいずれかで構成される。
この電池容器用めっき鋼板は、鋼板の直上に形成する鉄−ニッケル合金層または/およびニッケル層が展延性に富み、かつその上に形成するニッケル−コバルト合金層またはニッケル−コバルト−スズ合金層との密着性に優れているので、電池容器に成形加工を施した際にこれらの硬質な合金層やさらにその上に形成したコバルト層や、硬質なコバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀層に微小クラックが生じても、クラックが鋼素地にまで達することがない。そのため鋼素地が露出せず、鋼素地とアルカリ電解液が接触しないので水素ガスが発生せず、内圧が高まることがないので、電解液が漏洩することがない。また、上記の硬質な合金層に微小クラックが生じるため、充填する正極合剤との密着性が向上して長期保存後に優れた電池性能を十分に発揮することができる。さらに、これらの硬質な合金層の上層として銀層を形成した場合は、熱処理により生成したコバルト−スズ−銀合金層またはコバルト−スズ合金層の表面に生成する不働態皮膜による接触抵抗の低下が抑制され、かつ銀層の表面の銀酸化物により、アルカリ電解液との電気化学的反応によって発生する水素ガスが水に変換されるので、電地の内圧が高まることがなく、耐漏液性を高めることができる。
以下、本発明の内容を説明する。本発明の電池容器用めっき鋼板の基板となる鋼板としては、汎用の低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01〜0.15重量%)、またはニオブやチタンを添加した非時効性の極低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01重量%未満)を用いる。これらの鋼の熱間圧延板を酸洗して表面のスケールを除去した後、冷間圧延し次いで電解洗浄、焼鈍、調質圧延したものを基板(A)として用いる。冷間圧延して電解洗浄後、焼鈍を施さずに基板(B)としてめっきを施し、その後に拡散熱処理と鋼板の軟質化を兼ねる焼鈍を行ってもよい。
基板(A)を用いる場合は、基板である鋼板の両面に、まずニッケルめっきを施す。ニッケルめっきとしては無光沢めっき、または無光沢めっき浴に有機光沢剤を含有させた浴を用いてめっきした半光沢めっきであることが好ましい。硫黄成分を含有する有機光沢剤を含有させた浴を用いる光沢めっきは、めっき後に加熱すると硫黄成分により皮膜が脆化し、耐食性が低下するので好ましくない。めっき量としては、電池容器外面となる側は5〜30g/mであることが好ましい。5g/m未満では十分な耐食性が得られず、30g/mを超えると耐食性の向上効果が飽和し、経済的に有利ではなくなる。電池容器内面となる側のめっき量としては、5〜25g/mであることが好ましい。5g/m未満では電池容器に成形加工した際に鋼素地の露出の程度が大きくなり、電池性能の劣化をもたらす。一方、25g/mを超えると電池性能の向上効果が飽和し、経済的に有利ではなくなる。
次いで、電池容器の内面となる片面にのみにコバルトめっきを施す。コバルトめっき浴としては、硫酸浴、塩化物浴、ホウフッ化浴などがあり、いずれも用いることができるが、めっき設備に与える腐食性、めっきによって発生するガスの影響などの観点から、硫酸浴を用いることが好ましい。めっき量としては、コバルトめっきの上に施すスズめっきの下記に示すめっき量である0.5〜5g/mと同量またはそれ以上のめっき量であることが好ましい。コバルトは高価な金属であるので、上記の条件を満たし、かつ経済的に不利にならない範囲でめっき量の上限を定める。
次いで、コバルトめっき上にスズめっきを施す。スズめっき浴としては、硫酸浴、ハロゲン浴、フェロスタン浴などがあり、いずれも用いることができる。めっき量としては、0.5〜5g/mであることが好ましいが、上記のように下層に施したコバルトめっきのめっき量との関係において、めっき後の拡散熱処理により、めっきしたスズの全量がコバルト−スズ合金層(金属間化合物)に変換する量であることが好ましい。本発明の検討に際して鋼板上にニッケル、コバルト、スズを下からにめっきし熱処理した場合の合金組成について調査した結果、形成されるコバルト−スズ合金は500℃以上で熱処理した場合、 CoSnの組成の金属間化合物になることが判明した。このため、原子量比でCo:Sn=2:1となるようにコバルトめっきとスズめっきの量を調整してめっきし、次いで熱処理した場合は、スズめっきの全量が CoSn金属間化合物に変換する。例えば、コバルトのめっき量が2g/mである場合、コバルトの原子量は58.9であるので2g/mのめっき量は2/59.8=0.034原子当量に相当する。CoSnを構成するにはスズはコバルトの1/2の原子当量であればよい。したがって2g/mのめっき量のコバルトに対して、原子量が118.6であるスズは、1/2×0.034×118.6=2.02g/mのめっき量であればよい。すなわち、コバルトのめっき量とスズのめっき量が同量であれば、めっきしたコバルトとスズはほぼ全量が CoSn金属間化合物に変換する。500℃未満で熱処理した場合は、スズの割合が高いCoSnやCoSn が生成し、スズの電解液中への溶解が増加するので好ましくない。また500℃未満で熱処理した場合は、ニッケルと鋼素地の鉄とが十分に拡散せず、軟質で展延性に富む鉄−ニッケル拡散層が十分に形成せず、熱拡散処理後のめっき鋼板を電池容器に成形加工した際にめっき層に生じるクラックが鋼素地に達してしまい、鋼素地が露出するようになる。
以上のようにしてニッケルめっき、コバルトめっき、スズめっきを施した後、箱型焼鈍法または連続焼鈍法を用いて保護雰囲気中で拡散熱処理を施す。この拡散熱処理により、ニッケルめっき層と鋼素地との界面に鉄−ニッケル拡散層が形成し、その上層にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層が形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルト−錫合金層が形成する。箱型焼鈍法を用いる場合は500〜650℃で4〜8時間均熱することが好ましく、連続焼鈍法を用いる場合は、600〜800℃で1〜3分間加熱することが好ましい。
このようにして、本発明の請求項1〜5の構成の電池容器用めっき鋼板を得ることができる。
本発明の請求項6〜10の構成の電池容器用めっき鋼板は、以下のようにして得られる。すなわち、上記の請求項1〜5の構成の電池容器用めっき鋼板を得る場合と同様にして鋼板上にニッケルめっき、コバルトめっき、スズめっきを施した後、さらにその上層に銀めっきを施す。電池容器内面の最表面に銀層を形成させることにより、電池容器内に充填する正極合剤との接触抵抗が低減し、かつ電池容器内部に発生する水素ガスが水に変換されるので電池の内圧が高まることがなく、耐漏液性を高めることができる。銀めっきはシアン浴、非シアン浴のいずれも用いることができるが、毒性の観点から無毒の非シアン浴を用いることが好ましい。めっき量としてはフラッシュメッキ程度の量で優れた電気伝導性の向上効果をもたらすことが可能であり、0.05〜1.0g/mであることが好ましい。0.05g/m未満では十分な電気伝導性の向上効果が得られず、1.0g/mを超えると電気伝導性の向上効果が飽和し、経済的に有利でなくなる。
以上のようにしてニッケルめっき、コバルトめっき、スズめっきを施し、さらにその上層に銀めっきを施した後、上記と同様にして箱型焼鈍法または連続焼鈍法を用いて保護雰囲気中で拡散熱処理を施す。これらの拡散熱処理において、銀は下層のスズおよびコバルと互いに拡散してコバルト−スズ−銀三元合金が生成するとともに、この三元合金上に銀として残存する。このようにして鉄−ニッケル合金層、またはその上にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層が形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルトー錫合金層が形成し、またさらにその上にコバルト−スズ−銀合金層とその上層の銀層が形成した本発明の請求項6〜10の構成の電池容器用めっき鋼板を得ることができる。
また、上記の本発明の請求項1〜5の構成の電池容器用めっき鋼板と同一のめっきおよび拡散熱処理を施して、鋼板上に鉄−ニッケル合金層、その上にニッケル層または/およびニッケル−コバルト合金層を形成し、さらにその上にニッケル−コバルト−スズ合金層またはコバルト層を介してコバルト−錫合金層を形成した後、その上層に銀めっきを施すことにより、本発明の請求項11〜15の構成の電池容器用めっき鋼板を得ることができる。
このようにして、鋼板の電池容器の外面となる片面に鉄−ニッケル合金層、または鉄−ニッケル合金層上にニッケル層が形成されてなり、電池容器の内面となる他の片面に下記のA)〜O)のいずれかの層、すなわち鋼板側から順に
A)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、
B)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、
C)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、
D)鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、
E)鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、
F)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層、
G)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層、
H)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層、
I)鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層、
J)鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層、
K)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層、
L)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層、
M)鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、銀層、
N)鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層、
O)鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、銀層、
のいずれかの層が形成されてなるめっき鋼板が得られる。このめっき鋼板を調質圧延し、本発明の電池容器用めっき鋼板とする。なお、鋼板の電池容器の外面となる片面に、鉄−ニッケル合金層、または鉄−ニッケル合金層上にニッケル層を形成させることに替えて、電池容器の内面となる他の片面に施す上記と同様のA)〜O)のいずれかのめっき層を形成させてもよい。
このようにしていずれかの拡散熱処理を行った後、ストレッチャーストレインの発生を防止するため、1.0〜1.5%の圧延率で調質圧延する。このようにして本発明の電池容器用めっき鋼板を得ることができる。
本発明の電池容器は、上記の電池容器用めっき鋼板を、絞り加工法、絞りしごき加工法(DI加工法)、絞りストレッチ加工法(DTR加工法)、または絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用する加工法を用いて、有底の筒型形状に成形加工して得られる。筒型形状としては、底面が円、楕円、または長方形や正方形などの多角形の形状であり、用途に応じて側壁の高さを適宜選択した筒型形状に成形加工する。このようにして得られる電池容器に正極合剤、負極活物質等を充填して電池とする。
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
[電池容器用めっき鋼板の作成]
基板として、表1に化学組成を示す低炭素アルミキルド鋼(I)および極低炭素アルミキルド鋼(II)の冷間圧延版を用い、以下に示す1)〜6)のいずれかの工程を経て電池容器用めっき鋼板を作成した。
1)冷間圧延→電解洗浄→焼鈍(箱型焼鈍または連続焼鈍)→(調質圧延)→ニッケル めっき→コバルトめっき→スズめっき→拡散熱処理(箱型焼鈍または連続焼鈍)→ 調質圧延
2)冷間圧延→電解洗浄→焼鈍(箱型焼鈍または連続焼鈍)→(調質圧延)→ニッケル めっき→コバルトめっき→スズめっき→銀めっき→拡散熱処理(箱型焼鈍または連 続焼鈍)→調質圧延
3)冷間圧延→電解洗浄→焼鈍(箱型焼鈍または連続焼鈍)→(調質圧延)→ニッケル めっき→コバルトめっき→スズめっき→拡散熱処理(箱型焼鈍または連続焼鈍)→ 調質圧延→銀めっき
4)冷間圧延→電解洗浄→(調質圧延)→ニッケルめっき→コバルトめっき→スズめっ き→拡散熱処理(箱型焼鈍または連続焼鈍)→調質圧延
5)冷間圧延→電解洗浄→(調質圧延)→ニッケルめっき→コバルトめっき→スズめっ き→銀めっき→拡散熱処理(箱型焼鈍または連続焼鈍)→調質圧延
6)冷間圧延→電解洗浄→(調質圧延)→ニッケルめっき→コバルトめっき→スズめっ き→拡散熱処理(箱型焼鈍または連続焼鈍)→調質圧延→銀めっき
焼鈍は鋼(I)の場合は箱型焼鈍により640〜680℃で8時間均熱し、鋼(II)の場合は連続焼鈍により780℃で1分間加熱して実施した。
Figure 2006093097
上記の1)〜6)に示した工程におけるニッケルめっき、コバルトめっき、スズめっき、銀めっきは以下に示す条件で行った。
<ニッケルめっき>
浴組成 硫酸ニッケル 300g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 40g/L
ピット抑制剤(ラウリル硫酸ナトリウム) 0.5mL/L
陽極 ニッケルペレット(チタンバスケットに充填)
撹拌 空気撹拌
pH 4〜4.6
浴温 55〜60℃
電流密度 15A/dm
<コバルトめっき>
浴組成 硫酸コバルト 350g/L
塩化コバルト 45g/L
ホウ酸 30g/L
陽極 コバルト板
撹拌 空気撹拌
pH 3.5〜4.0
浴温 40〜45℃
電流密度 10A/dm
<スズめっき>
浴組成 硫酸第一スズ 30g/L
フェノールスルホン酸 60g/L
エトキシ化α−ナフトール 5g/L
陽極 スズ板
撹拌 めっき浴の循環
浴温 40〜50℃
電流密度 5A/dm
<銀めっき>
浴組成 銀含有有機酸塩(ダインシルバーNEC(大和化成研究所(株)製))
200g/L
有機酸(錯塩)(ダインシルバーAGI(大和化成研究所(株)製))
500g/L
有機添加剤(平滑剤)(ダインシルバーAGH(大和化成研究所(株)製))
25g/L
陽極 銀板
撹拌 めっき浴の循環
浴温 40℃
電流密度 1A/dm
以上のようにして表2に示す電池容器用めっき鋼板の試料(試料番号1〜15)を作成した。また、比較用にニッケルめっきのみを施した試料(試料番号16)、およびニッケルめっき上に直接銀めっきを施した試料(試料番号17)も作成した。
[電池容器の作成]
これらの試料番号1〜17の試料から57mm径でブランクを打ち抜いた後、鉄−ニッケル合金層とニッケル層のみを設けた側が容器外面となるようにして、10段の絞り加工により、外径13.8mm、高さ49.3mmの円筒形のLR6型電池(単3型電池)容器に成形加工した。
[電池の作成]
この電池容器を用いて、以下のようにしてアルカリマンガン電池を作成した。二酸化マンガンと黒鉛を10:1の比率で採取し、水酸化カリウム(10モル)を添加混合して正極合剤を作成した。次いでこの正極合剤を金型中で加圧して所定寸法のドーナツ形状の正極合剤ペレットに成形し、上記の電池容器に圧挿入した。なお、一部の電池容器は、内面に黒鉛粉末を主成分とする塗料を塗布したものを用いた。次に、負極集電棒をスポット溶接した負極板を電池容器に装着した。次いで、電池容器に圧挿入した正極合剤ペレットの内周に沿うようにしてビニロン製織布からなるセパレータを挿入し、亜鉛粒と酸化亜鉛を飽和させた水酸化カリウムからなる負極ゲルを電池容器内に充填した。さらに、負極板に絶縁体のガスケットを装着して電池容器内に挿入した後、カシメ加工してアルカリマンガン電池を作成した。
[特性評価]
以上のようにして試料番号1〜17の試料から作成した電池容器を用いて作成した電池の特性を、以下のようにして評価した。
<短絡電流>
電池を80℃で3日間放置した後、電池に電流計を接続して閉回路を設けて電流値を測定し、これを短絡電流とした。短絡電流が大であるほど特性が良好であることを示す。
<放電特性>
電池を80℃で3日間放置した後、電池を1.5Aの一定電流に放電し、電圧が0.9Vに到達するまでの時間を放電時間として測定した。放電時間が長いほど放電特性が良好であることを示す。
<間歇放電特性>
間歇放電の評価として、2Aで0.5秒放電した後に0.25Aで29.5秒放電する操作を1サイクルとして、このサイクルを繰り返し、電圧が1.0Vに到達するまでのサイクル数を測定した。サイクル数が多いほど間歇放電特性が良好であることを示す。
Figure 2006093097
<ガス発生量>
電池を一部放電(3.9Ω、1.5時間)し、次いで70℃で2週間放置した後、電池を水中に浸漬したまま開封し、電池内部に発生して滞留していたガスを目盛り付きビュレットに捕集し、ガス発生量を測定した。
これらの評価結果を表3に示す。
Figure 2006093097
表3に示すように、本発明の電池容器用めっき鋼板は、ニッケルめっきのみを施した電池容器用めっき鋼板、およびニッケルめっき上に直接銀めっきを施した電池容器用めっき鋼板に比べて短絡電流、放電特性、間歇放電特性、ガス発生量のいずれにも優れている。また本発明の電池容器用めっき鋼板を用いた電池容器内面に黒鉛塗料を塗布した場合は、さらに短絡電流、放電特性、間歇放電特性が向上した。
鋼板上に鉄−ニッケル合金層、その上にニッケル層または/およびアルカリ溶液に対する耐食性に優れたコバルト−ニッケル合金層または/およびコバルト−ニッケル−スズ合金層を形成させ、さらにその上にコバルト−スズ合金層を形成させ、またはさらにその上にコバルト−スズ−銀合金層を介してまたはコバルト−スズ−銀合金層を形成させずに導電性に優れた銀層を形成してなる本発明の電池容器用めっき鋼板は、電池容器に成形加工した場合、電池容器内面側表面の硬質のコバルト−ニッケル合金層、コバルト−ニッケル−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層に微小クラックが生成してアルカリ電池の正極合剤との密着性が高まるとともに、銀層を形成させることによる導電性の向上と相俟って、長期保存後の放電特性に優れた高性能の電池容器用材料として好適に適用することができる。また、最表面に形成されている銀酸化物により、アルカリ電解液との電気化学的反応によって発生する水素ガスが水に変換されるので、電地の内圧が高まることがなく、耐漏液性を高めることができる。さらに、従来の容器内面に黒鉛塗料を塗布した容器よりも優れた電池特性を示すので、黒鉛塗料を塗布し乾燥させる工程を省略することが可能となり、低コストで高性能電池を製造することができる。

Claims (17)

  1. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  2. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  3. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  4. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  5. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  6. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  7. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  8. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  9. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  10. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ−銀合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  11. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  12. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  13. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  14. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、ニッケル−コバルト−スズ合金層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  15. 鋼板の電池容器内面となる側の鋼板上に下から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケル−コバルト合金層、コバルト層、コバルト−スズ合金層、銀層が形成されてなることを特徴とする電池容器用めっき鋼板。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の電池容器用めっき鋼板を有底の筒型形状に成形加工してなる電池容器。
  17. 請求項16に記載の電池容器を用いてなる電池。

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