しかしながら、上記従来のシステムでは、車両において情報の送信順序が設定された後、その一旦設定された送信順序が変更されることはない。このため、複数の情報の送信順序に関する柔軟性に欠けるという問題が生じている。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、車載機器から車載通信部に送信された情報の車外センタへの送信又は車外センタから車載通信部に送信された情報の車載機器への送信に関する送信順序の柔軟性を確保した車両通信システムおよび車載通信装置を提供することを目的とする。
上記の目的は、請求項1に記載する如く、車外センタと、前記車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う車載機器と、を備える車両通信システムであって、前記車載通信部は、前記車載機器から送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を前記車外センタへ送信する送信順序を予め定めたものから変更し、或いは、前記車外センタから送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を前記車載機器へ送信する送信順序を予め定めたものから変更する送信順序変更手段を有する車両通信システムにより達成される。
また、上記の目的は、請求項9に記載する如く、車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う車載機器と、を備える車載通信装置であって、前記車載通信部は、前記車載機器から送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を前記車外センタへ送信する送信順序を予め定めたものから変更し、或いは、前記車外センタから送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を前記車載機器へ送信する送信順序を予め定めたものから変更する送信順序変更手段を有する車載通信装置により達成される。
本発明において、車載機器から車載通信部に送信された複数の情報の、車外センタへの送信順序、又は、車外センタから車載通信部に送信された複数の情報の、車載機器への送信順序は、予め定められたものから変更される。このため、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができ、これにより、車載機器からの重要度の高い情報を車外センタへ迅速に送信し或いは車外センタからの重要度の高い情報を車載機器へ迅速に送信することができる。
この場合、請求項2に記載する如く、請求項1記載の車両通信システムにおいて、前記送信順序変更手段は、前記送信順序を前記車載通信部に情報が受信された順から情報の優先度の高い順へ変更することとすればよい。
上記の目的は、請求項3に記載する如く、車外センタと、前記車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う複数の車載機器と、前記車載通信部と前記複数の車載機器とを接続する複数の通信バスと、を備える車両通信システムであって、前記車載通信部は、前記車外センタから送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を前記車載機器へ送信する送信順序を優先度の高い順に設定する送信順序設定手段と、情報の送信先である前記車載機器の接続されている前記通信バスのトラフィック量が所定量を超えている場合は、該通信バスを介して接続されている前記車載機器への情報よりも、別の通信バスを介して接続されている前記車載機器への情報が優先的に送信されるように前記送信順序を変更する送信順序変更手段と、を有する車両通信システムにより達成される。
また、上記の目的は、請求項10に記載する如く、車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う複数の車載機器と、前記車載通信部と複数の車載機器とを接続する複数の通信バスと、を備える車載通信装置であって、前記車載通信部は、前記車外センタから送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を前記車載機器へ送信する送信順序を優先度の高い順に設定する送信順序設定手段と、情報の送信先である前記車載機器の接続されている前記通信バスのトラフィック量が所定量を超えている場合は、該通信バスを介して接続されている前記車載機器への情報よりも、別の通信バスを介して接続されている前記車載機器への情報が優先的に送信されるように前記送信順序を変更する送信順序変更手段と、を有する車載通信装置により達成される。
本発明において、車外センタから車載通信部に送信された複数の情報の車載機器への送信順序は、優先度の高い順に設定されるが、情報送信先の車載機器が接続されている通信バスのトラフィック量が所定量を超えているときは、別の通信バスを介して接続されている車載機器への情報送信が優先されるように変更される。このため、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができ、これにより、ある一の通信バスへのデータの集中を回避することができ、効率的な情報通信を行うことができる。
上記の目的は、請求項4に記載する如く、複数の車外センタと、前記複数の車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う車載機器と、を備える車両通信システムであって、前記車載通信部は、前記車載機器から送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を送信先の前記車外センタごとに群化するグルーピング手段と、前記グルーピング手段により前記車外センタごとに群化された情報が一つずつ連続して当該車外センタへ送信されるように、前記受信した複数の情報を前記複数の車外センタへ送信する送信順序を設定する送信順序設定手段と、を有する車両通信システムにより達成される。
また、上記の目的は、請求項11に記載する如く、複数の車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う車載機器と、を備える車載通信装置であって、前記車載通信部は、前記車載機器から送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を送信先の前記車外センタごとに群化するグルーピング手段と、前記グルーピング手段により前記車外センタごとに群化された情報が一つずつ連続して当該車外センタへ送信されるように、前記受信した複数の情報を前記複数の車外センタへ送信する送信順序を設定する送信順序設定手段と、を有する車載通信装置により達成される。
本発明において、車載機器から車載通信部に送信された複数の情報は、送信先である複数の車外センタごとに群化される。そして、それらの複数の情報の車外センタへの送信順序は、その群化された情報が一つずつ連続して対応の車外センタへ送信されるように設定される。この場合、車載通信部から同じ車外センタへ送信すべき情報は、纏めてその車外センタへ送られる。このため、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができ、これにより、車載通信部から車外センタへの全体的な通信費を削減することができる。
上記の目的は、請求項5に記載する如く、車外センタと、前記車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う複数の車載機器と、を備える車両通信システムであって、前記車載通信部は、前記車外センタから送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を送信先の前記車載機器ごとに群化するグルーピング手段と、前記グルーピング手段により前記車載機器ごとに群化された情報が一つずつ連続して当該車載機器へ送信されるように、前記受信した複数の情報を前記複数の車載機器へ送信する送信順序を設定する送信順序設定手段と、を有する車両通信システムにより達成される。
また、上記の目的は、請求項12に記載する如く、車外センタとの間で情報の送受信を行う車載通信部と、前記車載通信部との間で情報の送受信を行う複数の車載機器と、を備える車載通信装置であって、前記車載通信部は、前記車外センタから送信された複数の情報を受信した場合に該複数の情報を送信先の前記車載機器ごとに群化するグルーピング手段と、前記グルーピング手段により前記車載機器ごとに群化された情報が一つずつ連続して当該車載機器へ送信されるように、前記受信した複数の情報を前記複数の車載機器へ送信する送信順序を設定する送信順序設定手段と、を有する車載通信装置により達成される。
本発明において、車外センタから車載通信部に送信された複数の情報は、送信先である複数の車載機器ごとに群化される。そして、それらの情報の車載機器への送信順序は、その群化された情報が一つずつ連続して対応の車載機器へ送信されるように設定される。この場合、車載通信部から同じ車載機器へ送信すべき情報は、纏めてその車載機器へ送られる。このため、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができ、これにより、車載通信部から車載機器への通信効率を高めることができる。
この場合、請求項6に記載する如く、請求項4又は5記載の車両通信システムにおいて、前記送信順序設定手段は、更に、前記グルーピング手段により情報が群化されたグループのうち優先度の高い情報が含まれているグループの情報が優先的に送信されるように前記送信順序を設定することとすれば、車載機器からの重要度の高い情報を車外センタへ迅速に送信し或いは車外センタからの重要度の高い情報を車載機器へ迅速に送信することができる。
尚、請求項7に記載する如く、請求項2、3、及び6の何れか一項記載の車両通信システムにおいて、車両が衝突したことを示す情報又は車載エアバッグが作動したことを示す情報は、車両が盗難に遭ったことを示す情報又は車両のセキュリティが低下したことを示す情報よりも優先度の高い情報であり、かつ、車両が盗難に遭ったことを示す情報又は車両のセキュリティが低下したことを示す情報は、車両乗員による手動操作が可能な機器の現状を示す情報よりも優先度の高い情報であることとしてもよい。
また、請求項8に記載する如く、請求項2、3、及び6の何れか一項記載の車両通信システムにおいて、前記優先度の高い情報の一つは、前記車外センタから前記車載通信部へ送信された、車両において行われるべき指示をキャンセルする情報であることとしてもよい。
請求項1乃至12記載の発明によれば、車載機器から車載通信部に送信された情報の車外センタへの送信又は車外センタから車載通信部に送信された情報の車載機器への送信に関する送信順序の柔軟性を確保することができる。
図1は、本発明の第1実施例である車両通信システムの構成図を示す。本実施例のシステムは、車両に搭載される車載機20と、その車両の運転者や所有者などの正規の車両使用者に携帯・所持される携帯電話やパソコン,PDA等の携帯端末22と、車載機20と携帯端末22との間における情報を管理するセンタ24と、により構成されている。本実施例の車両通信システムは、特に車両使用者の降車後に、車両において車両使用者が直接的に操作可能な車載機器(例えば、ターンシグナルランプの点滅・消灯やドアのロック・アンロック,パワーウィンドウの開閉,エンジン始動・停止等)を携帯端末22を用いてセンタ24を経由して遠隔的に駆動操作(リモート操作)したり、車両の衝突などの事故情報や盗難などのセキュリティ情報をセンタ24に通報したり、或いは、車両の現状(例えば、車室内における人の有無やドアの開閉状態等)をセンタ24若しくはセンタ24を経由して携帯端末22を所持する車両使用者に知らせるためのシステムである。
車載機20は、所定の通信ネットワークを通じて上記したセンタ24と無線通信を行うことが可能なデータ通信モジュール(以下、DCMと称す)30、及び、DCM30に通信線32を介して接続するコンピュータを主体に構成されたマスタ電子制御ユニット(以下、マスタECUと称す)34を備えている。DCM30は、データ通信アンテナ30aを有し、車載機20の各種情報をデータ通信アンテナ30aから通信ネットワークを介してセンタ24へ送信する機能、及び、センタ24から通信ネットワークを介して送信される各種情報をデータ通信アンテナ30aで受信する機能を有している。
また、マスタECU34は、ROMなどの記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って動作し、DCM30との間で送信データ及び受信データの授受を行う。マスタECU34は、自車両の電話番号を含む識別情報及び上記したセンタ24の電話番号などを格納する記憶装置、及び、DCM30へ供給すべき送信データ及びDCM30から供給された受信データを一時格納するメモリを有し、また、車載のカーナビゲーション装置、オーディオ装置、外気温センサ、走行状態検知装置等からの様々な情報を表示し、またタッチパネル形式の入力を行うことのできるモニタを有している。
車載機20は、また、上記したマスタECU34に接続する複数のスレーブECUからなる被制御ECU群36を備えている。これらのスレーブECUは、車両の旋回挙動を制御し、エンジン駆動を制御し、車両使用者によるローカル操作が可能な車載機器を制御し、車内への侵入検知を行い、ワイヤレスブザの吹鳴を制御し、エアバッグの展開制御を行い、或いは、車両位置や走行距離を検出する各種の制御ユニット等である。マスタECU34は、被制御ECU群36の各スレーブECUに所定の処理(例えば、車両の各種データを送信するように要求する処理やドアロックやウィンドウ閉などの作動を要求する処理)を実行させることが可能であると共に、各スレーブECUから送信される車両データや作動処理結果及び異常発生情報を受信することが可能である。
被制御ECU群36は、スレーブECUとして、例えば図1に示す如く、マスタECU34に制御系バス40を介して接続する、VSC(Vehicle Stability Control System)−ECU42及びエンジンECU44等を有していると共に、更に、マスタECU34にボデー系バス50を介して接続する、ドアECU52、照合ECU54、及びエアバッグECU56等を有している。マスタECU34及び制御系バス40に接続する各スレーブECUは、その制御系バス40の状態(搬送波)を感知し、制御系バス40に他のデータが流れているか否かを判定すると共に、制御系バス40に他のデータが流れていないときに限り自己のデータの送信を開始する機能を有している。また、マスタECU34及びボデー系バス50に接続する各スレーブECUは、そのボデー系バス50の状態(搬送波)を感知し、ボデー系バス50に他のデータが流れているか否かを判定すると共に、ボデー系バス50に他のデータが流れていないときに限り自己のデータの送信を開始する機能を有している。
上記したマスタECU34は、制御系バス40側とボデー系バス50側との双方向通信を可能とするゲートウェイ機能を有している。尚、制御系バス40とボデー系バス50とは、例えば情報の送信スピードなどの通信プロトコルを異にするものであってもよい。VSC−ECU42は、車両の加速度やヨーレート、ステアリング舵角、車輪速度、ブレーキ油圧等を検出して、それらの検出値に基づいて車両の旋回挙動を制御するユニットである。また、エンジンECU44は、水温や吸気温、スロットル開度等を検出して、それらの検出値に基づいて燃料噴射量や点火時期等を制御するユニットである。
ドアECU52は、車両乗員により車両キーがキーシリンダに挿入されて操作された場合、車両乗員により車両キーに設けられた施錠・解錠ボタンが押下されて車両と車両キーとの間の無線通信による照合が行われた場合、又は車両乗員が車両キーを携帯して車両に近づき若しくはドアノブ等に設けられた所定スイッチを押下して車両と車両キーとの間の無線通信による照合が行われた場合、及び、マスタECU34からの作動要求がなされた場合に、車両ドアのロックポジションをロック(施錠)とアンロック(解錠)との間で切り替える制御を行うユニットである。
照合ECU54は、例えば車室内を撮影するカメラ、電波や超音波,赤外線などを利用して物体を検知する感知センサ、車両シートに加わる荷重を検知する荷重センサなどの侵入センサを反応検知が可能な状態に制御することができると共に、侵入センサへの駆動指令中においてその侵入センサの出力信号に基づいて車室内における人の存在有無を検知する。尚、照合ECU54は、セキュリティモードにおいて侵入センサが反応検知できる状況で車室内に人が存在することを検知すると、セキュリティアラーム警報を生じさせる。照合ECU54は、また、車両乗員の設定操作により車両キーの車室内照合が許可されている状況下、車室内における車両キーの存在有無を検知すべき際に、車室内発信機から車室内へ向けて車両乗員の携帯する車両キーの応答を要求するリクエスト信号を発信させると共に、かかる発信後、このリクエスト信号に応答して車両キーが発信するレスポンス信号の受信機での受信の有無に基づいて車室内における車両キーの存在有無を検知する。
また、エアバッグECU56は、車両に前後方向又は車幅方向に作用する衝撃の大きさを検出して、その衝撃の大きさが所定しきい値以上となる場合に車両乗員を衝突による衝撃から保護すべくエアバッグを展開作動させるために設けられたユニットである。尚、エアバッグECU56は、エアバッグを展開作動した際にその旨をマスタECU34に通知する。
尚、上記したマスタECU34は、センタ24から車載機器のリモート操作(例えば、ドアのロック・アンロックやターンシグナルランプの点灯・消灯,パワーウィンドウの開閉,エンジン始動・停止など)が要求されたことをDCM30から通知されると、制御系バス40又はボデー系バス50を介してその車載機器のリモート操作を司るスレーブECUに対してリモート操作を行うべきことを指示する。
携帯端末22は、ROMなどの記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って動作する。携帯端末22は、自携帯端末22に対応する車両の電話番号及び自携帯端末22のメールアドレスや電話番号を含む識別情報並びに上記したセンタ24の電話番号などを格納する記憶装置を有し、通信ネットワークを通じてセンタ24と無線通信を行うことが可能となっている。携帯端末22は、自己の情報を通信ネットワークを介してセンタ24へ送信する機能、及び、センタ24から通信ネットワークを介して送信される情報を受信する機能を有している。
携帯端末22は、使用者により手動入力操作されると共に、車両使用者へ向けて音声出力や表示出力を行う入出力部を有している。携帯端末22は、webブラウザを有し、センタ24の提供する情報例えば車載機器のリモート操作を要求するためのweb画面を取得可能である。携帯端末22は、入出力部への入力操作により通信ネットワークを介して外部のwebサーバに蓄積されたファイルやデータを閲覧可能であり、また、入出力部に入力された内容をwebサーバに送信可能である。
また、センタ24は、高速演算可能なホストコンピュータと、センタ24を利用する利用者である車両の正規使用者の識別情報や携帯端末22のメールアドレス,電話番号及び車両の識別情報や電話番号などの顧客情報を格納する大容量のデータベースと、を備え、ROMなどの記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って動作する。センタ24は、通信ネットワークを通じて車載機20及び携帯端末22と無線通信を行うことが可能となっており、自己の情報を通信ネットワークを介して車載機20及び携帯端末22へ送信する機能、並びに、車載機20及び携帯端末22から通信ネットワークを介して送信される情報を受信する機能を有している。また、センタ24は、各種車載機器のリモート操作を要求するためのweb画面を携帯端末22に対して提供可能である。
以下、本実施例の車両通信システムの動作について説明する。
本実施例の車両通信システムにおいて、(1)車載機20は、スレーブECUからマスタECU34にセンタ24側へ送信すべき情報が受信された場合にセンタ24と通信接続して、例えばエアバッグ作動や車両衝突などの人命や安全性に関わる緊急情報、例えば車両盗難や車内侵入などの車両使用者の財産に関わるセキュリティ情報、例えば走行距離や車両位置,エアコンの作動状態などの上記した緊急情報やセキュリティ情報に関わらない車両データ、及び、車載機器のリモート操作についての操作結果(具体的には、異常なく操作が完了したか否か及び異常完了時には更にその理由)をセンタ24へ送信する。尚、センタ24へ送信された情報の全部又は一部(少なくとも車載機器のリモート操作の操作結果は含む)は、そのセンタ24から車両使用者の携帯する携帯端末22へ送信・転送される。
また、(2)センタ24は、車載機20へ情報を送信する必要が生じた場合に車載機20と通信接続して、例えば車両ドアのロック・アンロックやウィンドウの開閉などの車載機器をリモート操作すべきことを示す作動要求信号、及び、センタ24が提供するタウン情報やニュース・交通情報,天気情報などのサービス情報を車載機20へ送信する。そして、車載機20は、センタ24側からマスタECU34にスレーブECUへ送信・転送すべき情報が受信された場合にそのスレーブECUへ作動要求信号及びサービス情報を送信する。
ところで、車載機20とセンタ24とは単一の通信ネットワークを介して通信接続するため、車載機20からセンタ24へ送信すべき情報が複数のパケットとなるときにはそれらの複数の情報を順番に車載機20からセンタ24へ送信することが必要となり、また、センタ24から車載機20へ送信すべき情報が複数のパケットとなるときにはそれらの複数の情報を順番にセンタ24から車載機20へ送信することが必要となる。更に、マスタECU34からスレーブECUへ送信すべき情報が複数のパケットとなるときにはそれら複数の情報を順番にマスタECU34からスレーブECUへ送信することが必要となる。
ここで、送信すべき複数の情報が時間的に大きく離れてマスタECU34に入力・受信されれば、その受信順(受付順)にそれら複数の情報を送信先に送信することとすればよい。一方、送信すべき複数の情報が時間的にほぼ同時にマスタECU34に入力・受信されること等によって、送信すべき複数の情報が送信先に送信されずにマスタECU34のバッファメモリに格納されることがあるが、この場合にそれら複数の情報を受信順に送信先に送信することとすると、不都合が生ずるおそれがある。すなわち、先に受信された情報が送信されている間は後に受信された情報は送信待ちの状態となるが、この際、その送信待ちの情報が重要度の低い情報であればあまり問題はないが、重要度の高い情報であるとその情報の送信先での受信が遅延することとなる。また、送信すべき複数の情報がそれぞれ、接続する通信バス40,50の異なるスレーブECUへ送信すべきものである状況下において、先に受信された情報が送信すべきスレーブECUの接続する通信バス40,50が他のデータ通信に占有されていると、他の通信バス50,40が空いていても後に受信された情報は送信待ちの状態となり、情報通信の効率化が損われることとなる。
そこで、本実施例の車両通信システムは、スレーブECU又はセンタ24から送信された複数の情報をマスタECU34からセンタ24又はスレーブECUへ送信する送信順序を、予め定められたマスタECU34での受信順から変更し得る点に特徴を有している。以下、図2乃至図4を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
図2は、本実施例の車両通信システムにおいて送信順序を変更するうえでの情報の優先度を表した表を示す。本実施例において、マスタECU34の有する記憶装置には、車載機20側からセンタ24側へ送信する情報に関する送信時の優先度が記憶されていると共に、車載機20のマスタECU34からスレーブECUへ送信する情報に関する送信時の優先度が記憶されている。車載機20側からセンタ24側への送信時の優先度は、図2(A)に示す如く、その高い順に、1.人命や安全性に関わる緊急情報、2.財産に関わるセキュリティ情報、3.車載機器のリモート操作についての操作結果(操作失敗時)、4.上記の緊急情報やセキュリティ情報に関わらない車両データ、及び5.車載機器のリモート操作についての操作結果(操作成功時)、の種別となるように設定されている。また、マスタECU34からスレーブECUへの送信時の優先度は、図2(B)に示す如く、その高い順に、1.車載機器のリモート操作をキャンセルすることを要求するキャンセル情報、2.車載機器のリモート操作を行うべきことを要求する作動要求情報、及び3.ニュースや交通情報などのサービス情報、の種別となるように設定されている。
図3は、本実施例の車両通信システムにおいて車載機20側からセンタ24側へ情報を送信するうえでマスタECU34が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。本実施例において、マスタECU34は、被制御ECU群36のスレーブECUからセンタ24側へ送信・転送すべき各種情報のうち何れか一つを受信したか否かを判別する(ステップ100)。何らの情報も受信しなかった場合は、以後何ら処理を進めることなくルーチンを終了するが、何れかのスレーブECUからセンタ24側へ送信すべき情報を受信した場合は、その送信すべき情報を含めてバッファメモリにセンタ24側への送信待ち情報が複数存在するか否かを判別する(ステップ102)。
マスタECU34は、ステップ102での判別結果としてセンタ24側への送信待ち情報が一つしか存在しない場合は、その情報をDCM30を通じてセンタ24へ送信する処理を実行する(ステップ106)。一方、センタ24側への送信待ち情報が複数存在する場合は、それら複数の情報のセンタ24側への送信順序を受信順から図2(A)に示す規則に従った優先順に並び替えて変更する処理を実行する(ステップ104)。そして、それら複数の情報をその送信順序でDCM30を通じてセンタ24へ送信する処理を実行する(ステップ106)。
上記図3に示すルーチンによれば、マスタECU34においてスレーブECUから送信されたセンタ24側へ送信すべき情報が複数送信待ちの状態にある場合に、それら複数の情報のセンタ24側への送信順序を、マスタECU34での受信順からそれら情報の種別に基づいた優先順に並び替えて変更することができる。例えば、マスタECU34に、スレーブECU(例えばドアECU)から車載機器のリモート操作(例えばリモートドアロック)についての操作結果と、スレーブECU(例えばエアバッグECU)から緊急情報(例えばエアバッグの展開作動情報)とがその順で受信された状況において、緊急情報の受信時点でリモート操作の操作結果が未だセンタ24側へ向けて送信されていないときは、それら複数の情報のセンタ24側への送信順序を、受信順“リモート操作の操作結果→緊急情報”から優先度の高い順“緊急情報→リモート操作の操作結果”に並び替えて変更する。
このため、本実施例のシステムによれば、被制御ECU群36のスレーブECUから送信されてマスタECU34の受信した情報のセンタ24側への送信に際し、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができると共に、これにより、車載機20からの重要度の高い情報をセンタ24へ優先して迅速に送信することが可能となっている。従って、例えば車載機20において車両衝突やエアバッグ展開などの緊急情報のセンタ24への送信が要求されれば、その緊急情報は他のセキュリティ情報や車両データ等に優先して送信されるので、速やかにその緊急事態をセンタ24や携帯端末22を所持する使用者へ知らせることが可能である。
また、図4は、本実施例の車両通信システムにおいてセンタ24側から車載機20側へ情報を送信するうえでマスタECU34が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。本実施例において、マスタECU34は、センタ24からDCM30を介してスレーブECU側へ送信すべき各種情報のうち何れか一つを受信したか否かを判別する(ステップ150)。何らの情報も受信しなかった場合は、以後何ら処理を進めることなくルーチンを終了するが、センタ24側から何れかのスレーブECUへ送信すべき情報を受信した場合は、その送信すべき情報を含めてバッファメモリにスレーブECUへの送信待ち情報が複数存在するか否かを判別する(ステップ152)。
マスタECU34は、ステップ152での判別結果としてスレーブECUへの送信待ち情報が一つしか存在しない場合は、その情報をそのスレーブECUへ送信する処理を実行する(ステップ160)。一方、スレーブECUへの送信待ち情報が複数存在する場合は、それら複数の情報のスレーブECUへの送信順序を受信順から図2(B)に示す規則に従った優先順に並び替えて変更する処理を実行する(ステップ154)。次に、ステップ154で変更された送信順序について最も優先度の高い情報の流れるバス40,50がその送信時点で他のデータ通信に占有されることによってそのトラフィック量が所定量よりも多くなっているか否かを判別する(ステップ156)。
マスタECU34は、ステップ156での判別結果として優先度の高い情報の流れるバス40,50が何ら占有されていない場合は、ステップ154で変更された送信順序で複数の情報をスレーブECUへ送信する処理を実行する(ステップ160)。一方、優先度の高い情報の流れるバス40,50がその送信時点で占有されている場合は、複数の情報のスレーブECUへの送信順序を、ステップ154で変更されたものから更にその占有されているバス40,50とは別のバス50,40を流れる情報が優先的に送信されるように並び替えて変更する処理を実行する(ステップ158)。そして、それら複数の情報をその送信順序でスレーブECUへ送信する処理を実行する(ステップ160)。
上記図4に示すルーチンによれば、マスタECU34においてセンタ24側から送信されたスレーブECUへ送信すべき情報が複数送信待ちの状態にある場合に、それら複数の情報のスレーブECUへの送信順序を、マスタECU34での受信順からそれら情報の種別に基づいた優先順に並び替えて変更することができる。例えば、マスタECU34に、センタ24側から車載機器のリモート操作を要求する情報と、既に実行した他の車載機器のリモート操作をキャンセルする情報とがその順で受信された状況において、キャンセル情報の受信時点でリモート操作の要求情報が未だ当該のスレーブECUへ向けて送信されていないときは、それら複数の情報のスレーブECUへの送信順序を、受信順“車載機器のリモート操作の要求情報→別の車載機器のリモート操作のキャンセル情報”から優先度の高い順“別の車載機器のリモート操作のキャンセル情報→車載機器のリモート操作の要求情報”に並び替えて変更する。
このため、本実施例のシステムによれば、センタ24側から送信されてマスタECU34の受信した情報のスレーブECUへの送信に際し、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができると共に、これにより、センタ24からの重要度の高い情報を車載機20へ優先して迅速に送信することが可能となっている。従って、例えばリモートドアロックが要求された場合においても、その後直ちにそのドアロックのキャンセルが要求されれば、そのキャンセル情報は他の情報に優先して送信されるので、速やかにそのドアロックをキャンセルすることができ、乗員の車内への閉じ込めを回避或いは極めて短時間に抑制することが可能である。
また、上記図4に示すルーチンによれば、マスタECU34において複数の情報のスレーブECUへの送信順序が優先順に変更・設定された後、最初にスレーブECUへ送信される優先度の最も高い情報の流れるバス40,50が他のデータ通信に占有されているときは、その送信順序を、更にその占有されているバス40,50とは別のバス50,40を流れる情報が優先的に送信されるように並び替えて変更することができる。例えば、マスタECU34にセンタ24側からリモートドアロックの要求情報とリモートエンジン始動のキャンセル情報とがその順で受信された状況で、それら複数の情報のスレーブECU(具体的には、エンジンECU44及びドアECU52)への送信順序が優先順に“リモートエンジン始動のキャンセル情報→リモートドアロックの要求情報”と変更・設定された場合において、先に送信されるべきリモートエンジン始動のキャンセル情報の流れる制御系バス40が他のデータ通信に占有されているときは、それら複数の情報のスレーブECUへの送信順序を、制御系バス40とは別のボデー系バス50を流れるリモートドアロックの要求情報が優先的に送信されるように並び替えて変更する。
このため、本実施例のシステムによれば、センタ24側から送信されてマスタECU34の受信した情報のスレーブECUへの送信に際し、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することができると共に、これにより、一の通信バス40,50へのデータの集中を回避して、効率的な情報通信を実現することが可能となっている。
ところで、上記の第1実施例においては、車載機20が特許請求の範囲に記載した「車載通信装置」に、センタ24が特許請求の範囲に記載した「車外センタ」に、マスタECU34及びDCM30が特許請求の範囲に記載した「車載通信部」に、被制御ECU群36の各スレーブECUが特許請求の範囲に記載した「車載機器」に、制御系バス40及びボデー系バス50が特許請求の範囲に記載した「通信バス」に、それぞれ相当している。
また、マスタECU34が、図3に示すルーチン中ステップ104の処理並びに図4に示すルーチン中ステップ154の処理及びステップ158の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「送信順序変更手段」が、ステップ154の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「送信順序設定手段」が、それぞれ実現されている。
図5は、本発明の第2実施例である車両通信システムの構成図を示す。尚、図5において、上記図1に示す構成部分と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。本実施例のシステムは、車両に搭載される車載機80と、その車両の運転者や所有者などの正規の車両使用者に携帯・所持される携帯電話やパソコン,PDA等の携帯端末82と、車載機80と携帯端末82との間における情報を管理する情報提供センタ84と、車載機80からの緊急情報を管理する緊急情報センタ86と、緊急情報センタ86と通信接続し得る警察署88及び消防署90と、により構成されている。
本実施例の車両通信システムは、特に車両使用者の降車後に、車両において車両使用者が直接的に操作可能な車載機器(例えば、ターンシグナルランプの点滅・消灯やドアのロック・アンロック,パワーウィンドウの開閉,エンジン始動・停止等)を携帯端末82を用いて情報提供センタ84を経由して遠隔的に駆動操作(リモート操作)したり、車両の衝突などの事故情報を緊急情報センタ86に通報したり、車両の盗難などのセキュリティ情報を情報提供センタ84に通報したり、或いは、車両の現状(例えば、車室内における人の有無やドアの開閉状態等)を情報提供センタ84若しくはそのセンタ84を経由して携帯端末82を所持する車両使用者に知らせるためのシステムである。
車載機80は、DCM30、及び、DCM30に通信線32を介して接続するコンピュータを主体に構成されたマスタECU92を備えている。マスタECU92は、上記第1実施例のマスタECU34とほぼ同様の機能を有し、ROMなどの記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って動作し、DCM30との間で送信データ及び受信データの授受を行う。マスタECU92は、自車両の電話番号を含む識別情報及び上記した情報提供センタ84及び緊急情報センタ86の各電話番号などを格納する記憶装置、及び、DCM30へ供給すべき送信データ及びDCM30から供給された受信データを一時格納するメモリを有し、また、車載のカーナビゲーション装置、オーディオ装置、外気温センサ、走行状態検知装置等からの様々な情報を表示し、またタッチパネル形式の入力を行うことのできるモニタを有している。
また、マスタECU92は、被制御ECU群36の各スレーブECUに所定の処理(例えば、車両の各種データを送信するように要求する処理やドアロックやウィンドウ閉などの作動を要求する処理)を実行させることが可能であると共に、各スレーブECUから送信される車両データや作動処理結果及び異常発生情報を受信することが可能である。更に、制御系バス40側とボデー系バス50側との双方向通信を可能とするゲートウェイ機能を有している。
携帯端末82は、上記第1実施例の携帯端末22と同様の機能を有している。具体的には、自携帯端末82に対応する車両の電話番号及び自携帯端末82のメールアドレスや電話番号を含む識別情報並びに上記した情報提供センタ84の電話番号などを格納する記憶装置を有し、通信ネットワークを通じて情報提供センタ84と無線通信を行うことが可能となっている。また、自己の情報を通信ネットワークを介して情報提供センタ84へ送信する機能、及び、情報提供センタ84から通信ネットワークを介して送信される情報を受信する機能を有している。携帯端末82は、使用者により手動入力操作されると共に、車両使用者へ向けて音声出力や表示出力を行う入出力部を有し、情報提供センタ84の提供する情報例えば車載機器のリモート操作を要求するためのweb画面を取得可能である。携帯端末82は、入出力部への入力操作により通信ネットワークを介して外部のwebサーバに蓄積されたファイルやデータを閲覧可能であり、また、入出力部に入力された内容をwebサーバに送信可能である。
情報提供センタ84は、上記第1実施例のセンタ24とほぼ同様の機能を有している。具体的には、高速演算可能なホストコンピュータと、このセンタ84の利用者である車両の正規使用者の識別情報や携帯端末82のメールアドレス,電話番号及び車両の識別情報や電話番号などの顧客情報を格納する大容量のデータベースと、を備え、ROMなどの記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って動作する。情報提供センタ84は、通信ネットワークを通じて車載機80及び携帯端末82と無線通信を行うことが可能となっており、自己の情報を通信ネットワークを介して車載機80及び携帯端末82へ送信する機能、並びに、車載機80及び携帯端末82から通信ネットワークを介して送信される情報を受信する機能を有している。また、情報提供センタ84は、各種車載機器のリモート操作を要求するためのweb画面を携帯端末82に対して提供可能である。
また、緊急情報センタ86は、このセンタ86の利用者である車両の正規使用者の識別情報を格納するデータベースを備え、ROMなどの記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って動作する。緊急情報センタ86は、通信ネットワークを通じて車載機80と無線通信を行うことが可能となっており、車載機80から通信ネットワークを介して送信される情報を受信する機能を有していると共に、通信ネットワーク又は専用回線を通じて警察署90及び消防署92と通信を行うことが可能となっており、警察署90及び消防署92へ向けて情報を送信する機能を有している。尚、緊急情報センタ86は、警察署90及び消防署92などの救援機関と通話できるようにしてもよい。
以下、本実施例の車両通信システムの動作について説明する。
本実施例の車両通信システムにおいて、車載機80は、(1)スレーブECUからマスタECU92に緊急情報センタ86側へ送信すべき情報が受信された場合に緊急情報センタ86と通信接続して、例えばエアバッグ作動や車両衝突などの人命や安全性に関わる緊急情報をその緊急情報センタ86へ送信する。また、(2)スレーブECUからマスタECU92に情報提供センタ84側へ送信すべき情報が受信された場合に情報提供センタ84と通信接続して、例えば車両盗難や車内侵入などの車両使用者の財産に関わるセキュリティ情報、例えば走行距離や車両位置,エアコンの作動状態などの上記した緊急情報やセキュリティ情報に関わらない車両データ、及び、車載機器のリモート操作についての操作結果(具体的には、異常なく操作が完了したか否か及び異常完了時には更にその理由)を情報提供センタ84へ送信する。
ところで、車載機80は、単一のDCM30を介して情報提供センタ84と緊急情報センタ86との2つのセンタに通信接続し得るが、車載機80からセンタ84,86へ送信すべき複数の情報が時間的に大きく離れてマスタECU92に入力・受信されれば、その受信順(受付順)にそれら複数の情報を送信先に送信することとすればよい。一方、送信すべき複数の情報が時間的にほぼ同時にマスタECU92に入力・受信されること等により、送信すべき複数の情報が送信されずにマスタECU92のバッファメモリに格納された場合にそれら複数の情報を受信順に送信先に送信することとすると、上記第1実施例で示したのと同様の不都合が生ずると共に、更に別の不都合が生ずるおそれがある。
すなわち、マスタECU92に最初に受信された情報が一方のセンタ84,86(例えば情報提供センタ84)へ送信すべきものであり、次に受信された情報が他方のセンタ86,84(例えば緊急情報センタ86)へ送信すべきものであり、更にその後に受信された情報が一方のセンタ84,86(例えば情報提供センタ84)へ送信すべきものである状況下においては、それらの複数の情報を受信順に送信先に送信することとすると、車載機80の通信接続するセンタ84,86の切り替えが複数回にわたって行われることとなり、効率的な情報通信が妨げられ、また、車載機80側の支払うべき通信費が全体として上昇することとなってしまう。
そこで、本実施例の車両通信システムは、スレーブECUから送信された複数の情報をマスタECU92からセンタ84,86へ送信する送信順序を、予め定められたマスタECU92での受信順から変更し得る点に特徴を有している。以下、図6を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
図6は、本実施例の車両通信システムにおいて車載機80側からセンタ84,86側へ情報を送信するうえでマスタECU92が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。本実施例において、マスタECU92は、被制御ECU群36のスレーブECUからセンタ84,86側へ送信・転送すべき各種情報のうち何れか一つを受信したか否かを判別する(ステップ200)。何らの情報も受信しなかった場合は、以後何ら処理を進めることなくルーチンを終了するが、何れかのスレーブECUからセンタ84,86側へ送信すべき情報を受信した場合は、その送信すべき情報を含めてバッファメモリにセンタ84,86側への送信待ち情報が複数存在するか否かを判別する(ステップ202)。
マスタECU92は、ステップ202での判別結果としてセンタ84,86側への送信待ち情報が一つしか存在しない場合は、その情報をDCM30を通じて情報提供センタ84又は緊急情報センタ86へ送信する処理を実行する(ステップ208)。一方、センタ84,86側への送信待ち情報が複数存在する場合は、それら複数の情報を送信先のセンタ84,86ごとにすなわち情報提供センタ84と緊急情報センタ86とに分けてグルーピングする処理を実行する(ステップ204)。
そして、上記図2(A)に示す規則に従って優先度のより高い情報が含まれるグループの情報が優先度のより低いグループの情報よりも優先されて送信されるように、かつ、各グループ内の情報については図2(A)に示す規則に従って優先度の高い情報が優先されて一つずつ連続して送信されるように、送信待ちの複数の情報のセンタ84,86側への送信順序を設定し、受信順から変更する処理を実行する(ステップ206)。具体的には、緊急情報センタ86へ送信される情報は優先度の最も高い人命や安全性に関わる緊急情報のみであるので、送信待ちの複数の情報が情報提供センタ84へ送信されるものと緊急情報センタ86へ送信されるものとに分かれる場合は、緊急情報センタ86へ送信されるべき緊急情報が情報提供センタ84へ送信されるべき情報よりも優先されて送信されるように、更に、情報提供センタ84へ送信されるべき情報については図2(A)に示す規則に従って優先度の高い情報が優先されて一つずつ連続して送信されるように、送信待ちの複数の情報のセンタ84,86側への送信順序を設定する。そして、それらの複数の情報をその送信順序でDCM30を通じてセンタ84,86へ送信する処理を実行する(ステップ208)。
上記図6に示すルーチンによれば、マスタECU92においてスレーブECUから送信されたセンタ84,86側へ送信すべき情報が複数送信待ちの状態にある場合に、それら複数の情報を送信先のセンタ84,86ごとにグルーピングすると共に、複数の情報のセンタ84,86側への送信順序を、マスタECU92での受信順から、そのグルーピングされた情報が一つずつ連続して対応のセンタ84,86へ送信されるように、かつ、優先度のより高い情報が含まれるグループの情報が優先度のより低い情報が含まれるグループの情報よりも優先されて送信されるように変更することができる。このため、本実施例のシステムにおいては、被制御ECU群36のスレーブECUから送信されてマスタECU92の受信した情報のセンタ84,86側への送信に際し、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することが可能となっている。
送信先のセンタ84,86ごとにグルーピングされた情報が一つずつ連続して送信されれば、同一のセンタ84,86に送信されるべき複数の情報は纏めてそのセンタ84,86に送信されることとなる。このため、本実施例のシステムによれば、同一のセンタ84,86に送信されるべき複数の情報が時間的に離れて送られる構成と比較して、車載機80からセンタ84,86へ情報を送信する際における全体的な通信費を削減することが可能となっている。
また、優先度のより高い情報が含まれるグループの情報が優先度のより低い情報が含まれるグループの情報よりも優先されて送信されれば、優先度の高い情報が速やかに送信先に到達することとなる。従って、本実施例のシステムによれば、車載機80からの重要度の高い情報をセンタ84,86へ優先して迅速に送信することが可能となっている。この点、例えば車載機80において車両衝突やエアバッグ展開などの緊急情報の緊急情報センタ86への送信が要求されれば、その緊急情報は他のセキュリティ情報や車両データ等に優先して送信されるので、速やかにその緊急事態を緊急情報センタ86へ知らせることが可能となる。
ところで、上記の第2実施例においては、車載機80が特許請求の範囲に記載した「車載通信装置」に、情報提供センタ84及び緊急情報センタ86が特許請求の範囲に記載した「車外センタ」に、マスタECU92及びDCM30が特許請求の範囲に記載した「車載通信部」に、被制御ECU群36の各スレーブECUが特許請求の範囲に記載した「車載機器」に、それぞれ相当している。また、マスタECU92が、図6に示すルーチン中ステップ204の処理を実行することにより特許請求の範囲の請求項4、6、及び11に記載した「グルーピング手段」が、ステップ206の処理を実行することにより特許請求の範囲の請求項4、6、及び11に記載した「送信順序設定手段」が、それぞれ実現されている。
尚、上記の第2実施例は、車載機80の通信接続するセンタ84,86が2つ存在するシステムの例であるが、車載機80の通信接続するセンタ3つ以上存在するシステムに適用することも可能である。
また、上記の第2実施例は、複数のセンタ84,86が存在するシステムにおいて、スレーブECUから送信された複数の情報の、車載機80からそれら複数のセンタ84,86への送信順序を変更するシステムの例であるが、逆に、複数のスレーブECUが存在するシステムにおいて、単一又は複数のセンタから送信された複数の情報の、マスタECUからそれら複数のスレーブECUへの送信順序を変更するシステムに適用することも可能である。
かかるシステムによれば、マスタECUにおいてセンタ側から送信された複数のスレーブECUへ送信すべき情報が複数送信待ちの状態にある場合に、それら複数の情報を送信先のスレーブECUごとにグルーピングすると共に、複数の情報のスレーブECUへの送信順序を、マスタECU92での受信順から、そのグルーピングされた情報が一つずつ連続して対応のスレーブECUへ送信されるように、かつ、優先度のより高い情報が含まれるグループの情報が優先度のより低い情報が含まれるグループの情報よりも優先されて送信されるように変更することができる。この場合は、マスタECUから同じスレーブECUへ送信すべき複数の情報は纏めてそのスレーブECUへ送られるため、センタ側から送信されてマスタECUの受信した情報の、被制御ECU群36のスレーブECUへの送信に際し、複数の情報の送信順序に関する柔軟性を確保することが可能となり、マスタECUからスレーブECUへの通信効率を高めることが可能となる。
尚、かかるシステムにおいて、マスタECUが、複数の情報を送信先のスレーブECUごとにグルーピングすることにより特許請求の範囲の請求項5、6、及び12に記載した「グルーピング手段」が、複数の情報のスレーブECUへの送信順序を、グルーピングされた情報が一つずつ連続して対応のスレーブECUへ送信されるように、かつ、優先度のより高い情報が含まれるグループの情報が優先度のより低い情報が含まれるグループの情報よりも優先されて送信されるように設定することにより特許請求の範囲の請求項5、6、及び12に記載した「送信順序設定手段」が、それぞれ実現される。
ところで、上記の第1及び第2実施例においては、ターンシグナルランプの点滅・消灯、車両ドアロック・アンロック、パワーウィンドウの開閉、及びエンジンの始動・停止を、車載機器のリモート操作の一例としたが、その他に車両使用者により手動操作可能な、スライドルーフ,トランク,バックドアなどの開閉や、エアコンのオン・オフ、灯火類であるヘッドランプ,フォグランプ,スモールランプ,ルームランプなどの点灯・消灯などをリモート操作の対象とするものであってもよい。
また、上記の第1及び第2実施例においては、車載機20,80においてセンタ24,84,86との情報通信を行うDCM30と、各スレーブECUとバス40,50を介して通信接続するマスタECU34,92と、を別体としているが、両者を一体化して組み込むこととしてもよい。また、マスタECU34,92に制御系バス40側とボデー系バス50側とを双方向通信を可能とするゲートウェイ機能を持たせることとしたが、そのゲートウェイ機能を他の或いは新たなECUに持たせることとしてもよい。
また、上記の第1及び第2実施例においては、スレーブECUからマスタECU34,92に送信されてそのマスタECU34,92からセンタ24,84,86へ送信される情報として、1.人命や安全性に関わる緊急情報、2.財産に関わるセキュリティ情報、3.車載機器のリモート操作についての操作結果(操作失敗時)、4.上記の緊急情報やセキュリティ情報に関わらない車両データ、及び5.車載機器のリモート操作についての操作結果(操作成功時)を用いることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの一部を用いるものであってもよいし、また、他のものを追加するものであってもよい。また、それらの情報の送信順序を図2(A)に示す如く設定することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の順序に設定することとしてもよい。
また、これに関連して、上記の第1実施例においては、センタ24からマスタECU34に送信されてそのマスタECU34からスレーブECUへ送信される情報として、1.車載機器のリモート操作をキャンセルすることを要求するキャンセル情報、2.車載機器のリモート操作を行うべきことを要求する作動要求情報、及び3.ニュースや交通情報などのサービス情報を用いることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの一部を用いるものであってもよいし、また、他のものを追加するものであってもよい。また、それらの情報の送信順序を図2(B)に示す如く設定することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の順序に設定することとしてもよい。