JP2006088450A - 空隙を有する発泡成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】断熱性、軽量性及び吸音性に優れ、向上した耐薬品性と曲げ強度とを有する空隙を有する発泡成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、スチレン系樹脂成分を30〜850重量部含有し、かつ、粒子表面から少なくとも5μmまでの表層部は0.8μm以下のスチレン系樹脂粒子が分散された状態であり、かつ粒子中心部もスチレン系樹脂が粒子状に分散された状態であるスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を発泡成形することにより得られ、5〜50%の空隙率を有することを特徴とする空隙を有する発泡成形体により上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、空隙を有する発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、断熱性、軽量性及び吸音性に優れ、しかも著しく向上した耐薬品性と曲げ強度とを備えた空隙を有する発泡成形体に関する。本発明の発泡成形体は、自動車内装材のような工業部材や建設資材等として好適に利用できる。
一般に、ポリエチレン系樹脂の発泡体は、弾性が高く、耐衝撃性に優れているので、包装資材として使用されている。しかし、剛性が低く圧縮強度が弱い等という短所を有している。一方、スチレン系樹脂の発泡体は、剛性には優れているが、脆いという短所を有している。
このような欠点を改良する方法として、特公昭51−46138号公報(特許文献1)、特公昭52−10150号公報(特許文献2)、特公昭58−53003号公報(特許文献3)、特開昭62−59642号公報(特許文献4)では、ポリエチレン系樹脂にスチレンモノマーを含浸させて重合を行い、スチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡粒子を得る方法が提案されている。
また、スチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡体小片を金型内で加熱発泡させて小片相互を融着させて得られる発泡成形体として、小片間に10〜40%の空隙を有するように小片同士が融着しているスチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡成形体が特開平7−80873号公報(特許文献5)に記載されている。
特公昭51−46138号公報 特公昭52−10150号公報 特公昭58−53003号公報 特開昭62−59642号公報 特開平7−80873号公報
特公昭51−46138号公報等に記載された方法では、ポリエチレン系樹脂に無機核剤を使用していないので、得られた改質樹脂粒子は、特にその表面部付近においてポリエチレン系樹脂中にスチレン系樹脂成分を粒子状に分散させることが難しく、充分な耐薬品性を発揮できないものとなり易い。更に、ポリエチレン系樹脂に無機核剤を使用した場合でも、スチレンモノマーの重合は通常90℃前後で行われるため、その表面部付近でのポリエチレン系樹脂中に分散されたスチレン系樹脂成分は1μmを越えるような大きな粒子状となって分散され、充分な耐薬品性を発揮できないものとなり易い。
また、特開平7−80873号公報に記載された発泡成形体は、暗渠排水材としての使用を目的に、その使用に十分耐え得る圧縮強度と安定的に所望の空隙率を得ることができるとされている。このような空隙率を設けた発泡成形品は、良好な吸音性能も発揮できる。
しかしながら、この公報の発泡成形体でも、上述したとおり耐薬品性が不十分であり、更には所望の空隙率を設けた発泡成形品であるが故に、自動車内装材のような工業部材として使用するには、強度(例えば曲げ強度)が不十分であり、その使用に耐えないことが判明した。
本発明は、上記した課題を解決するためなされたもので、耐薬品性を改善し、更に所望の空隙率を設けて良好な吸音性能を発揮させ、かつ曲げ強度をも向上させた発泡成形品を提供することを目的とする。
かくして本発明によれば、無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、スチレン系樹脂成分を30〜850重量部含有し、かつ、粒子表面から少なくとも5μmまでの表層部は0.8μm以下のスチレン系樹脂粒子が分散された状態であり、かつ粒子中心部もスチレン系樹脂が粒子状に分散された状態であるスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を発泡成形することにより得られ、5〜50%の空隙率を有することを特徴とする空隙を有する発泡成形体が提供される。
本発明の発泡成形体は、以下の構成を有するスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子から得られた発泡成形体である。すなわち、無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、スチレン系樹脂成分を30〜850重量部含む改質樹脂粒子であり、その粒子表面から5μmまでの表層部は0.8μm以下のスチレン系樹脂粒子がサブミクロン分散された状態にあり、そのため粒子表面部はポリエチレン系樹脂層が形成されている。
このように粒子表面部には無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂層が形成されるので、発泡成形体の耐薬品性を改善でき、更に所望の空隙率を設けた発泡成形品であっても、粒子同士の融着強度を上げることができる。
加えて、粒子中心部もスチレン系樹脂が粒子状に分散された状態とすることができ、上記粒子表面部における効果との相乗効果によって、従来では発揮できなかった耐薬品性と高い曲げ強度とを備えた空隙を有する発泡成形体を得ることができる。
本発明の発泡成形体は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子(以下、改質樹脂粒子と称する)に揮発性発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を発泡成形することにより得られ、5〜50%の空隙率を有している。
改質樹脂粒子は、無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、スチレン系樹脂成分を30〜850重量部含有し、かつ、粒子表面から少なくとも5μmまでの表層部は0.8μm以下のスチレン系樹脂粒子が分散され、粒子中心部もスチレン系樹脂が粒子状に分散されている。
まず、発泡成形体製造用の改質樹脂粒子及び予備発泡粒子について説明する。
無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂(以下、単にポリエチレン系樹脂と称する)成分には、エチレンとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
α−オレフィンとしては1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン及び1−オクテン等が挙げられる。この内、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
エチレンとα−オレフィンとの構成比は、所望する物性に応じて適宜変化してもよいが、1:0.01〜0.1(重量比)の範囲であることが好ましい。なお、低密度とは、0.910〜0.925g/mlの範囲を意味する。
また、本発明の目的とする効果を阻害しない範囲で、架橋及び/又は分岐鎖を有する低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・アクリル酸共重合体、これら2種以上を併用してもよい。
無機核剤としては、例えば、タルク、二酸化珪素、マイカ、クレー、ゼオライト及び炭酸カルシウム等が挙げられる。
無機核剤の使用量は、ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、0.1〜2重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましい。0.1重量部未満では、ポリエチレン系樹脂成分中に分散されるスチレン系樹脂粒子数が少なくなり、かつその粒子中心部において、粒子状に分散し難いので好ましくない。2重量部を超える場合、発泡成形体が脆くなり、強度が低下しやすくなるので好ましくない。
更に、ポリエチレン系樹脂粒子には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加物が含まれていてもよい。
この内、着色剤としては、無機及び有機着色剤のいずれも使用できる。特に、酸化鉄及びカーボンブラック等の無機系の着色剤が好ましい。
酸化鉄としては、黄色系統のものとしてα−FeOOH(含水結晶)、赤色系統のものとしてα−Fe23、黒色系統のものとして(FeO)x(Fe23y等が挙げられる。これら酸化鉄は、Feの一部が、Zn、Mg等の他の金属で置き換えられていてもよい。更に、これら酸化鉄は、所望の色を得るために、混合して用いてもよい。この内、黒色系統の(FeO)x(Fe23yに含まれるFe34であることが好ましい。
酸化鉄は、0.1〜1μmの平均粒径を有していることが好ましく、0.2〜0.8μmがより好ましい。平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(日本電子社製ロドス)により測定できる。
酸化鉄は、ポリエチレン系樹脂粒子中、1.5〜70重量%の範囲で含まれていることが好ましく、5〜40重量%の範囲がより好ましく、10〜30重量%の範囲が更に好ましい。1.5重量%未満であれば、ポリエチレン系樹脂粒子が十分着色されない場合があるため好ましくない。70重量%より多い場合、ポリエチレン系樹脂粒子中に混合することが困難となり易く好ましくない。加えて、酸化鉄の比重がポリエチレン系樹脂成分より大きいため、ポリエチレン系樹脂粒子が重くなり、スチレン系モノマーを均一に含浸させることが困難となり易く好ましくない。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛及び炭素繊維等が挙げられる。
カーボンブラックは、ポリエチレン系樹脂粒子中、1〜50重量%の範囲で含まれていることが好ましく、2〜30重量%の範囲がより好ましい。1重量%未満であれば、ポリエチレン系樹脂粒子が十分着色されない場合があるため好ましくない。50重量%より多い場合、ポリエチレン系樹脂粒子中に混合することが困難となり易く好ましくない。
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びt−ブチルスチレン等のスチレン系モノマーに由来する樹脂が挙げられる。更に、スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、ジビニルベンゼンのような多官能性モノマーや、(メタ)アクリル酸ブチルのような構造中にベンゼン環を含まない(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示される。これら他のモノマーは、実質的にスチレン系樹脂に対して5重量%を超えない範囲で使用してもよい。
スチレン系樹脂成分の量は、ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して300〜850重量部、好ましくは100〜800重量部である。また、850重量部を超える場合、ポリエチレン系樹脂成分の弾性が高く、耐薬品性及び耐衝撃性が良好であるという特性が発現し難い。また、ポリエチレン系樹脂成分の内部にスチレン系モノマーが十分に吸収されず、スチレン系モノマー自体が単独で重合するため、多量の重合体粉末の発生を防止しにくくなるので好ましくない。
予備発泡粒子は、改質樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とし、発泡性樹脂粒子を発泡させることで得られる。
揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン及びヘキサン等の炭化水素を単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
揮発性発泡剤の含有量は、発泡性樹脂粒子を構成する樹脂成分(ポリエチレン系樹脂成分及びスチレン系樹脂成分の合計)100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。
改質樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6〜1.6である円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒径が0.3〜3.0mmであることが好ましい。
L/Dが0.6より小さくないしは1.6より大きく扁平度が大きい場合は、改質樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子から得られる予備発泡粒子を、金型に充填して発泡成形体を得る際に、金型への充填性が悪くなるため好ましくない。
また形状は、充填性をよくするには略球状ないしは球状がより好ましい。
平均粒径は0.3mm未満の場合、発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となり易く好ましくない。3.0mmを超える場合、充填性が悪くなり易く、発泡成形体の薄肉化も困難となり易いので好ましくない。
特に、それらの断面において、ポリエチレン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分が、以下に記載するように、特徴的な状態で分散した改質樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を提供することができる。
すなわち、両粒子は、その表面から少なくとも5μmまでの表層部にスチレン系樹脂成分が、ポリエチレン系樹脂成分中に0.8μm以下の粒径で粒子状に分散された状態を有している。スチレン系樹脂成分の粒径の下限は、0.01μm程度である。粒径が0.8μmより大きい、特に1μmより大きい場合、発泡成形体の耐衝撃性及び耐薬品性が低下する。
一方、粒子の中心から半径約5μmまでの中心部においても、スチレン系樹脂成分が、ポリエチレン系樹脂成分中に粒子状に分散された状態を有している。中心部のスチレン系樹脂粒子の粒径は、例えば、0.1〜0.8μmである。粒子状に分散していない場合、耐衝撃性が低下する。
次に、改質樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子の製造方法を説明する。
まず、分散剤を含む水性懸濁液中に、無機核剤を含むポリエチレン系樹脂粒子100重量部と、重合開始剤を含むスチレン系モノマー30〜850重量部とを分散させる。なお、スチレン系モノマーと重合開始剤とは、別々に添加しても、予め混合して添加してもよい。
水性懸濁液を構成する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
分散剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用することができる。具体的には、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム及びピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機物が挙げられる。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダのような界面活性剤を使用してもよい。
ポリエチレン系樹脂粒子は、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリエチレン系樹脂成分を、無機核剤と必要に応じて添加剤と共に、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂粒子は、粒子の長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.6〜1.6である円筒状、略球状ないしは球状であり、平均粒径が0.2〜1.5mmであることが好ましい。L/Dが0.6より小さくないしは1.6より大きく扁平度が大きい場合は、発泡性樹脂粒子として予備発泡させ、金型に充填して発泡成形体を得る際に、金型への充填性が悪くなり易く好ましくない。また形状は、充填性をよくするには略球状ないしは球状がより好ましい。平均粒径は0.2mm未満の場合、発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となり易いので好ましくない。1.5mmを超える場合、充填性が悪くなるだけでなく発泡成形体の薄肉化も困難となり易く好ましくない。
重合開始剤としては、一般にスチレン系モノマーの懸濁重合用の開始剤として用いられているものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート及びt−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物である。これらの重合開始剤は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、スチレン系モノマー100重量部に対して、0.1〜0.9重量部が好ましく、0.2〜0.8重量部がより好ましい。0.1重量部未満ではスチレン系モノマーの重合に時間がかかり過ぎ好ましくない。0.9重量部を超える重合開始剤の使用は、スチレン系樹脂成分の分子量を低くするため好ましくない。
良好な物性を得るためにはスチレン系樹脂成分の分子量は20万〜50万程度が好ましいが、0.9重量部を超える量ではこれを下回るものしか得られない場合がある。
次に、得られた分散液中、前記ポリエチレン系樹脂粒子に前記スチレン系モノマーを、前記スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度で含浸させる。
ポリエチレン系樹脂粒子内部にスチレン系モノマーを含浸させる時間は、30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行するとスチレン系樹脂の重合体粉末を生成してしまうからである。前記モノマーが実質的に重合しない温度とは、高い方が含浸速度を速めるには有利であるが、重合開始剤の分解温度を考慮して決定する必要がある。
次いで、ポリエチレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T)〜(T+25)℃の温度で、前記スチレン系モノマーの重合を行う。
重合温度が(T)℃未満では、改質樹脂粒子の表層部において、スチレン系樹脂粒子を0.8μm以下の粒子状に、中心部において粒子状に分散させることができないため好ましくない。更に、(T+25)℃を超える温度では粒子同士が合着した凝集粒子が発生するため好ましくない。好ましい重合温度は、(T)〜(T+20)℃である。
なお、ポリエチレン系樹脂粒子の融点は120℃程度であるから、重合はこの温度以上で行われることとなる。そのため、重合は、加圧可能な密閉容器中で行うことが好ましい。
上記工程により改質樹脂粒子を得ることができる。また、発泡性樹脂粒子は、上記重合中もしくは重合終了後の改質樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸することで得ることができる。この含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に揮発性発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉式の容器中で、揮発性発泡剤を圧入することにより行われる。
上記方法により良好な特性の改質樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を得ることができるが、スチレン系モノマー量が多くなると、スチレン系樹脂の重合体粉末が多くなる傾向にある。
より多くのスチレン系モノマーを含浸及び重合させることを所望する場合、重合体粉末の発生を極力少なくするためには、以下のようにスチレン系モノマーを2段階に分けてポリエチレン系樹脂粒子に含浸させることが好ましい。なお、1段での重合は、スチレン系モノマー量が30〜300重量部の場合に特に好適に使用できる。
まず、分散剤を含む水性懸濁液中に、無機核剤を含むポリエチレン系樹脂粒子100重量部と、スチレン系モノマー20〜300重量部と、重合開始剤とを分散させる。なお、予めスチレン系モノマーと重合開始剤とを混合して用いてもよい。
次に、得られた分散液中、前記ポリエチレン系樹脂粒子に前記スチレン系モノマーを、前記スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度で含浸させる。
更に、前記ポリエチレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T)〜(T+25)℃の温度で、前記スチレン系モノマーの第1の重合を行う。好ましい第1の重合温度は、(T)〜(T+20)℃である。
次に、上記工程に続いて、第1の重合の反応液に、スチレン系モノマーと、重合開始剤とを加え、かつ前記ポリエチレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T)〜(T+25)℃の温度とすることで、前記ポリエチレン系樹脂粒子への前記スチレン系モノマーの含浸と第2の重合を行う。好ましい第2の重合温度は、(T)〜(T+20)℃である。なお、予めスチレン系モノマーと重合開始剤とを混合して用いてもよい。
但し、ポリエチレン樹脂粒子100重量部に対し、第1の重合と第2の重合で使用するスチレン系モノマーの合計は30〜850重量部である。
2回目のスチレン系モノマーと重合開始剤の添加方法は、連続的でも断続的でもよいが、重合体粉末の生成をより効果的に防ぐためには、ポリエチレン系樹脂粒子内部への含浸と重合を、ほぼ同時に行うことが好ましい。高い温度での重合であるため、あまり添加速度が速いと含浸される前に重合が進んでしまうため好ましくない。例えば、添加速度は、30〜100重量部/時間が好ましい。
2回目の重合開始剤の使用量は、1回目の重合開始剤と同様、スチレン系モノマー100重量部に対して、0.1〜0.9重量部が好ましく、0.2〜0.8重量部がより好ましい。
上記工程により改質樹脂粒子を得ることができる。また、発泡性樹脂粒子は、上記1段の重合と同様にして改質樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸することで得ることができる。
更に、発泡性樹脂粒子は、公知の方法で所定の嵩密度(例えば、10〜200kg/m3、より好ましくは10〜60kg/m3)に予備発泡させることで予備発泡粒子とすることができる。嵩密度の測定法は、実施例に記載する。
更に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることで、5〜50%の空隙率を有する発泡成形体を得ることができる。空隙率が5%未満の場合、十分な吸音性を持たない発泡成形体となる。一方、50%より大きい場合、曲げ強度が不十分であり、音波が通過するため吸音性も得られない。好ましい空隙率は、5〜30%の範囲である。
発泡成形機は、特に限定されず、公知の発泡成形機をいずれも使用できる。図13は発泡成形機の一例である。この発泡成形機は、雌金型2と雄金型3を有し、両金型2と3が合わさることによりキャビティ1aが形成される。各金型2と3にはそれぞれ蒸気室2aと3aが内蔵されると共に、各蒸気室2a及び3aとキャビティ1aとをそれぞれ連通する蒸気噴出用スリット孔2bと3bが複数それぞれ穿設されている。一方、各蒸気室2aと3aに蒸気を供給する蒸気供給管2cと3c、及びその蒸気を排出する蒸気排出管2dと3dが配置されている。また、各蒸気供給管2cと3cにはそれぞれ蒸気制御器4が、また各蒸気排出管2dと3dにはそれぞれドレイン弁5が配置されている。
更に、雌金型2には、キャビティ1a内に予備発泡粒子6を充填する充填器7が設けられており、加えて、キャビティ1a内での予備発泡粒子6の発泡圧力を検出する圧力検知装置9が設置されている。そして、圧力検知装置9、各蒸気制御器4及びドレイン弁5等を制御する制御手段10が設けられている。
予備発泡粒子を用いた発泡成形方法は大別して加熱工程と冷却工程に分けることができ、加熱工程は、通常、(1)金型加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程、(4)両面加熱工程のように細分化して行われることが多く、加熱工程の後に冷却工程が行われ成形品が取り出される。図13を用いてその一例を説明する。
(1)金型加熱工程において、金型2と3の昇温を主として行う。具体的には、金型間のキャビティ1a内に充填器7により予備発泡粒子6を充填した後に、雌型2、雄型3の双方の金型の蒸気室2aと3aにそれぞれの蒸気供給管2cと3cから蒸気を導入し、かつそれぞれの蒸気排出管2dと3dに設けたドレイン弁5から蒸気室に存在する空気を排出する。
(2)一方加熱工程は、予備発泡粒子6を再発泡させるための前加熱やキャビティ1a内の空気の排除の目的で行われるものであり、蒸気を一方の金型、例えば雄金型3の蒸気室3aからキャビティ1a内に充填された予備発泡粒子6の間隙に流し、これを他方の金型(雌金型2)の蒸気室2aを通して系外に排出する工程である。通常この工程の終点は導入する蒸気の圧力とキャビティ内の発泡圧力とが同等になった時点とされる。
(3)逆一方加熱工程は、前の一方加熱工程により生じた予備発泡粒子6の温度勾配を平衡させるための工程であり、蒸気を逆のルートですなわち雌金型2の蒸気室2aからキャビティ1a内に導入して予備発泡粒子6を加熱し、蒸気は雄金型3の蒸気室3a側から排出される。
(4)両面加熱工程は、予備発泡粒子6を二次発泡させて最終的に発泡粒同志を融着させる工程であり、両金型2と3の蒸気室2aと3aに蒸気を送入し昇圧することによって行われる。
(1)〜(4)の加熱工程にそって成形を進めれば粒子間に空隙のない、発泡粒同士が面で融着された発泡成形体が得られるが、本発明の発泡成形体は空隙を有しており、発泡成形時に粒子間に空間を残すことが要求される。そのため下記のような方法で発泡成形を行うことが好ましい。
(A)金型加熱工程は、上記通常の発泡成形方法と同様にできる。なお、この工程は、3〜12秒程度行うことが好ましい。
(B)一方加熱工程により発泡粒子間の空気を排除する。この工程では、導入する蒸気圧力とキャビティ内の発泡圧力とが同等になるまで加熱を続け、更に加熱し続けることにより、発泡粒子間の空間を適宜埋めることができる。そのため、この工程は、5〜25秒間行うことが好ましい。
なお、逆一方加熱工程は、空隙率を所定の範囲に維持できれば、予備発泡粒子6の温度勾配を平衡させるために行ってもよい。具体的には、0〜1秒程度行うことが好ましい。逆一方加熱工程は、一方加熱工程の前に行ってもよい。
(C)両面加熱は、急激に発泡粒子間の空間を埋める効果があるため、実施しないか、もしくは両面加熱を3秒以下の短い時間実施してもよい。
以上のような成形方法により、発泡粒子同士の点での接着を強固とすることが可能であるため強度を向上させた空隙を有する発泡成形体を得ることができる。
得られた発泡成形体は、耐薬品性に優れ、強靭であり、曲げ強度に優れたものである。また、スチレン系樹脂成分で改質されているため剛性も高い。更に、特定の空隙率を有するので、断熱性、軽量性及び吸音性に優れている。
本発明の発泡成形体は、種々の用途に使用できるが、特に自動車内装材、バンパー内部に装着されるエネルギー吸収材、重量物の梱包材等に好適に使用できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における嵩密度、空隙率、曲げ強度、吸音率、耐薬品性の測定法を下記する。
(嵩密度)
予備発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法で測定した。具体的には、規定の嵩密度測定器により予備発泡粒子をメスシリンダー内に自然落下させ、その重量を測定し、次式により嵩密度を算出する。
嵩密度(kg/m3)=予備発泡粒子重量(kg)/メスシリンダー中の予備発泡粒子容積(m3
(空隙率)
見かけのかさ容積(V1)の発泡成形体を一定量の水を張ったメスシリンダー中に浸漬し、その時の増加容積(V2)を測定し、次式により空隙率を求める。
空隙率={(V1−V2)/V1}×100
(曲げ強度)
最大曲げ強さはJIS K9511:1999「発泡プラスチック保温材」記載の方法に準じて測定する。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用いて、試験体サイズは75×300×15mmとし、圧縮速度を10mm/分、先端治具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離は200mmとして測定する。
(吸音率)
吸音率はJIS A 1405:1998「音響−インピーダンス管による吸音率及びインピーダンスの測定−定在波比法」記載の方法により測定する。すなわち、電子測器社製の垂直入射吸音率測定器TYPE10041(フプローブチューブマイクロホン)を用いて1kHzの周波数での吸音率を測定する。試料は、30mm厚とし、試料ホルダーの背面板に密着させて測定する。
(耐薬品性)
発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚み20mmの平面長方形状の板状試験片を3枚切り出し、23℃、湿度50%の条件で24時間放置する。なお、発泡成形体の成形面を使用して下記試験を行う。
次に、3枚の試験片の成形面毎に別々の薬品(ガソリン、灯油、ジブチルフタレート(DBP))1gを均一に塗布し、23℃、湿度50%の条件で60分放置する。その後、試験片の成形面から薬品を拭き取り、試験片の成形面を目視観察して下記基準に基づいて判断する。
○:良好 変化なし
△:やや悪い 表面軟化
×:悪い 表面陥没(収縮)
実施例1
(ポリエチレン系樹脂粒子の作製)
無架橋直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと称する)(日本ユニカー社製 商品名「TUF−2032」(メルトフローレート0.9g/10分、密度0.923g/cm3、融点126℃)を押出機にて造粒し、L/D=0.9、平均粒径が0.8mmの略球状のLLDPE粒子を得た。なお、造粒時に無機核剤として、前記LLDPE100重量部に対して0.5重量部のタルクを添加した。
(改質樹脂粒子の作製)
オートクレーブに純水100重量部に対して、分散剤としてピロリン酸マグネシウム0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を加えて水性懸濁液を作成した。次に、この水性懸濁液中に前記LLDPE粒子100.5重量部を加えて、回転数150rpmで撹拌し懸濁させた。
この水性懸濁液にスチレンモノマーをLLDPE粒子100.5重量部に対して185重量部と重合開始剤としてジクミルパーオキサイドをスチレンモノマー100重量部に対して0.19重量部を含んだ混合液を加え、60℃の温度で60分間放置し、LLDPE粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
その後、135℃(LLDPEの融点126℃より9℃高い温度)に昇温し4時間重合させた。更に、140℃の温度に昇温して2時間維持し、残存モノマーを強制重合させて減少させた後、冷却して改質樹脂粒子を得た。
得られた改質樹脂粒子中のポリスチレン成分の分散状態をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、表層部(12800倍)(表面から約5μmまでの領域)に0.15〜0.4μmのポリスチレン粒子が分散し、中心部(12800倍)(粒子の中心から半径約5μmまでの領域)に0.3〜0.8μmのポリスチレン粒子が分散し、表層部及び中心部のいずれもLLDPE中にポリスチレンが粒子状に分散されていることが確認された。なお、表層部及び中心部の断面顕微鏡写真を図1及び図2に示す。
(発泡性樹脂粒子の作製及びその発泡・成形評価)
続いて、内容積が50リットルの密閉式耐圧V型回転混合機に、改質樹脂粒子100重量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15重量部及びジイソブチルアジペート0.5重量部を供給して回転させながら常温でブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部を圧入した。そして、回転混合機内を70℃に昇温して4時間保持しブタンを含浸させた後に25℃まで冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩密度33kg/m3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、蒸気圧力0.10MPaの蒸気を使用して、加熱時間:(1)金型加熱7秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱0.5秒、(4)両面加熱2秒を順次行い、その後水冷して発泡成形体を取り出した。
なお、発泡成形には、下記の発泡成形機を使用した。
使用成形機:ACE−3SP(積水工機社製)
金型サイズ:300×400×30mm
得られた発泡成形体は空隙を有する発泡成形体であった。得られた発泡成形体の空隙率、曲げ強度、吸音率及び耐薬品性を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
オートクレーブに純水100重量部に対して、分散剤としてピロリン酸マグネシウム0.8重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を加えて水性懸濁液を作成した。
次に、この水性懸濁液中に実施例1と同様にして得たLLDPE粒子100.5重量部を加えて、回転数150rpmで撹拌し懸濁させた。
この水性懸濁液に、スチレンモノマーをLLDPE100.5重量部に対して80重量部と重合開始剤としてジクミルパーオキサイドをスチレンモノマー100重量部に対して0.3重量部を含んだ混合液を加え、60℃の温度で60分間放置し、LLDPE粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
次にこの分散液の温度を143℃(LLDPEの融点126℃より17℃高い温度)に昇温し2時間重合(第1の重合)させた。
続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドをスチレンモノマー100重量部に対して0.3重量部を含んだ混合液720重量部を先の分散液に1時間あたり80重量部の割合で約9時間かけて連続的に滴下して、含浸させながら重合(第2の重合)させてスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を得た。
得られた改質樹脂粒子中のポリスチレン成分の分散状態をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、表層部(12800倍)(表面から約5μmまでの領域)に0.1〜0.4μmのポリスチレン粒子が分散し、中心部(12800倍)(粒子の中心から半径約5μmまでの領域)に0.2〜1.2μmのポリスチレン粒子が分散し、表層部及び中心部のいずれもLLDPE中にポリスチレンが粒子状に分散されていることが確認された。なお、表層部及び中心部の断面顕微鏡写真を図3及び図4に示す。
続いて、内容積が50リットルの密閉式耐圧V型回転混合機に、改質樹脂粒子100重量部及びジイソブチルアジペート0.1重量部を供給して回転させながら常温でブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部を圧入した。そして、回転混合機内を70℃に昇温して4時間保持しブタンを含浸させた後に25℃まで冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩密度20kg/m3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、蒸気圧力0.10MPaの蒸気を使用して、加熱時間:(1)金型加熱5秒、(2)一方加熱12秒、(3)逆一方加熱0.5秒、(4)両面加熱0.5秒を順次行い、その後水冷して発泡成形体を取り出した。
なお、発泡成形には実施例1と同様の発泡成形機を使用した。
得られた発泡成形体は空隙を有する発泡成形体であった。得られた発泡成形体の空隙率、曲げ強度、吸音率及び耐薬品性を測定した。結果を表1に示す。
実施例3
水性懸濁液に加えるスチレンモノマー量をLLDPE100.5重量部に対して100重量部とし、重合時間を3時間としたこと以外は実施例1と同様の方法で、改質樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体(密度33kg/m3)を得た。
得られた改質樹脂粒子中のポリスチレン成分の分散状態をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、表層部(12800倍)(表面から約5μmまでの領域)に約0.05〜0.15μmのポリスチレン粒子が分散し、中心部(12800倍)(粒子の中心から半径約5μmまでの領域)に0.15〜0.6μmのポリスチレン粒子が分散し、表層部及び中心部のいずれもLLDPE中にポリスチレンが粒子状に分散されていることが確認された。なお、表層部及び中心部の断面顕微鏡写真を図5及び図6に示す。
続いて、内容積が50リットルの密閉式耐圧V型回転混合機に、改質樹脂粒子100重量部及びジイソブチルアジペート0.1重量部を供給して回転させながら常温でブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15重量部を圧入した。そして、回転混合機内を70℃に昇温して4時間保持しブタンを含浸させた後に25℃まで冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩密度33kg/m3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、蒸気圧力0.10MPaの蒸気を使用して、加熱時間:(1)金型加熱7秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱0.5秒、(4)両面加熱0.5秒を順次行い、その後水冷して発泡成形体を取り出した。
なお、発泡成形には実施例1と同様の発泡成形機を使用した。
得られた発泡成形体は空隙を有する発泡成形体であった。得られた発泡成形体の空隙率、曲げ強度、吸音率及び耐薬品性を測定した。結果を表1に示す。
比較例1
スチレンモノマーを重合する温度を119℃(LLDPEの融点126℃より7℃低い温度)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、改質樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子(嵩密度33kg/m3)及び発泡成形体を得た。
得られた改質樹脂粒子中のポリスチレン成分の分散状態をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、表層部(12800倍)(表面から約5μmまでの領域)に約0.05〜0.2μmであったが、中心部(12800倍)(粒子の中心から半径約5μmまでの領域)でポリスチレンは、連続相をなし粒子状に分散されていないことが確認された。なお、表層部及び中心部の断面顕微鏡写真を図7及び図8に示す。
得られた発泡成形体は空隙を有する発泡成形体であった。得られた発泡成形体の空隙率、曲げ強度、吸音率及び耐薬品性を測定した。結果を表1に示す。
比較例2
水性懸濁液に加えるスチレンモノマー量をLLDPE100.5重量部に対して900重量部とし、第2の重合時のスチレンモノマー添加量をLLDPE100.5重量部に対して820重量部とし、第2の重合時間を10時間としたこと以外は実施例2と同様の方法で、改質樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子(嵩密度20kg/m3)及び発泡成形体を得た。
得られた改質樹脂粒子中のポリスチレン成分の分散状態をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、表層部(12800倍)(表面から約5μmまでの領域)に約0.2〜1.3μmと1μmを越える大きなポリスチレン粒子が見られ、中心部(12800倍)(粒子の中心から半径約5μmまでの領域)でポリスチレンは、連続相をなし粒子状に分散されていないことが確認された。なお、表層部及び中心部の断面顕微鏡写真を図9及び図10に示す。
得られた発泡成形体は空隙を有する発泡成形体であった。得られた発泡成形体の空隙率、曲げ強度、吸音率及び耐薬品性を測定した。結果を表1に示す。
比較例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと称す)(日本ユニカー社製 商品名「NUC−3221」、酢酸ビニル含有量:5重量%、融点:107℃、メルトフローレート:0.2g/10分、密度:0.92g/cm3)100重量部及び合成含水二酸化珪素0.5重量部を押出機に供給して溶融混連して水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)のEVA樹脂粒子を得た。EVA樹脂粒子の平均重量は0.6mgであった。
次に、ピロリン酸マグネシウム0.8重量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02重量部を水100重量部に分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に上記合成含水二酸化珪素含有のEVA樹脂粒子100.5重量部を分散させて懸濁液を得た。
更に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.19重量部をスチレンモノマー40重量部に溶解させて第1のスチレン系モノマーを作製した。
EVA樹脂粒子を含む水系媒体の温度60℃に調節し、上記スチレン系モノマーを30分かけて定量で添加したのち、1時間攪拌することでEVA樹脂粒子中に第1のスチレン系モノマーを含浸させた。
次に反応系を85℃に昇温して2時間保持し、スチレンモノマーをEVA樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
次いで、第1の重合の反応液に、更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.19重量部をスチレンモノマー240重量部に溶解させた第2のスチレン系モノマーを1時間あたり50重量部の割合で連続的に滴下することで、第2のスチレン系モノマーをEVA樹脂粒子に含浸させながら重合(第2の重合)させた。
得られた改質樹脂粒子中のポリスチレン成分の分散状態をTEM(表層部22500倍、中心部12800倍)にて観察したところ、表層部(表面から約5μmまでの領域)には1μmを越える粒子径でポリスチレン粒子が分散していた。また、中心部(中心から半径約5μmまでの領域)ではポリスチレン成分は粒子状で存在せず、連続した状態であった。なお、表層部の断面写真を図11に、中心部の断面写真を図12に示す。
この改質樹脂粒子を使用して、実施例1と同様の方法で発泡性樹脂粒子を製造した。得られた発泡性樹脂粒子を直ちに水蒸気で嵩密度30kg/m3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、蒸気圧力0.08MPaの蒸気を使用して、加熱時間:(1)金型加熱7秒、(2)一方加熱15秒、(3)逆一方加熱0.5秒、(4)両面加熱0.5秒を順次行い、その後水冷して発泡成形体を取り出した。
得られた発泡成形体の空隙率、曲げ強度、吸音率及び耐薬品性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2006088450
表1から、以下のことがわかる。
実施例1と2及び比較例1から、重合温度をポリエチレン系樹脂粒子の融点より高くすることで、曲げ強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
実施例1〜3及び比較例2から、スチレン系モノマーを30〜850重量部の範囲で使用することで、改質樹脂粒子表層部においてポリスチレン成分を特定の大きさの粒子状に、中心部において粒子状に分散させることができるので、曲げ強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
実施例1の改質樹脂粒子の表層部断面のTEM写真である。 実施例1の改質樹脂粒子の中心部断面のTEM写真である。 実施例2の改質樹脂粒子の表層部断面のTEM写真である。 実施例2の改質樹脂粒子の中心部断面のTEM写真である。 実施例3の改質樹脂粒子の表層部断面のTEM写真である。 実施例3の改質樹脂粒子の中心部断面のTEM写真である。 比較例1の改質樹脂粒子の表層部断面のTEM写真である。 比較例1の改質樹脂粒子の中心部断面のTEM写真である。 比較例2の改質樹脂粒子の表層部断面のTEM写真である。 比較例2の改質樹脂粒子の中心部断面のTEM写真である。 比較例3の改質樹脂粒子の表層部断面のTEM写真である。 比較例3の改質樹脂粒子の中心部断面のTEM写真である。 発泡成形機の概略図である。
符号の説明
1a キャビティ
2 雌金型
2a、3a 蒸気室
2b、3b 蒸気噴出用スリット孔
2c、3c 蒸気供給管
2d、3d 蒸気排出管
3 雄金型
4 蒸気制御器
5 ドレイン弁
6 予備発泡粒子
7 充填器
9 圧力検知装置
10 制御手段

Claims (1)

  1. 無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂成分100重量部に対して、スチレン系樹脂成分を30〜850重量部含有し、かつ、粒子表面から少なくとも5μmまでの表層部は0.8μm以下のスチレン系樹脂粒子が分散された状態であり、かつ粒子中心部もスチレン系樹脂が粒子状に分散された状態であるスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を発泡成形することにより得られ、5〜50%の空隙率を有することを特徴とする空隙を有する発泡成形体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011012136A (ja) * 2009-06-30 2011-01-20 Sekisui Plastics Co Ltd 発泡成形体及び発泡成形体からなる車両用ラゲージボックス
JP2012102201A (ja) * 2010-11-09 2012-05-31 Jsp Corp 複合熱可塑性樹脂粒子の製造方法、発泡性複合熱可塑性樹脂粒子、複合熱可塑性樹脂発泡粒子、及び複合熱可塑性樹脂発泡粒子成形体

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