JP2006087285A - 一次元圧電アクチュエータアレイ - Google Patents

一次元圧電アクチュエータアレイ Download PDF

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Abstract

【課題】変位量乃至変位効率を低下させることなく、電気的な短絡が生じ難い構造、無用な内部応力を発生させ難い構造、及びより簡素な構造、を実現した圧電アクチュエータを提供し、その提供により、その圧電アクチュエータが適用される製品等(光スイッチ等)の信頼性向上及び高集積化を図ること。
【解決手段】一次元圧電アクチュエータアレイ1は、全体として櫛形形状を呈し、平面的に配列された3つの櫛歯部26と、3つの櫛歯部26を連結する櫛骨部27と、を具備する。櫛歯部26は、それぞれに、先端側に備わる作用部7と、その櫛骨部側に備わる変位部6と、を備えていて、作用部7は、6つの層状の(6層の)圧電体4のみで形成され、電極(共通電極19及び個別電極18)は、一切積層されていない。一方、変位部6は、6層の圧電体4と、4つの層状の(4層の)共通電極19と、3つの層状の(3層の)個別電極18と、を有する圧電駆動体31で構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、電界誘起歪みを利用する電気/機械エネルギー変換に基づいて変位を生じる圧電アクチュエータが、平面的に配列されてなる一次元圧電アクチュエータアレイに関する。
近年、光学、精密機械、半導体製造等の分野において、サブミクロンのオーダーで光路長や位置を調整する変位制御デバイスが所望されるようになってきている。これに応え、強誘電体や反強誘電体に電界を加えたときに起こる逆圧電効果や電歪効果等に基づくところの歪みを利用したアクチュエータの開発が進められている。これら電界誘起歪みを利用する変位制御デバイスは、従来のサーボモータ等による電磁方式等に比較して、微小変位制御が容易であり、電気/機械エネルギー変換効率が高く省電力化が図れ、超精密に実装出来て、製品等の小型軽量化に寄与出来る、等の特徴を有し、応用分野は拡大の一途を辿るものと考えられている。
例えば、光通信システムにおける光交換器の重要な構成要素である光スイッチでは、入力光の伝達経路の切り替えを行うアクチュエータ部として、圧電アクチュエータが適用される。
光スイッチは、例えば特許文献1にみられるように、光伝達部と光路変更部とアクチュエータ部とからなり、その光伝達部は、光路変更部に対向する面の一部に設けられる光反射面、及び、光反射面を起点に3方向に向けて設けられる3つの光伝達経路を有し、又、光路変更部は、光伝達部の光反射面に移動可能な状態で近接され、透光性の材質からなる光導入部材、及び、光を全反射する光反射部材を有し、更には、アクチュエータ部は、外部信号により変位し、その変位を光路変更部に伝達する機構を有するものである。この光スイッチは、外部信号に応じたアクチュエータ部の変位によって、光路変更部を光伝達部の光反射面に接触、離隔させ、光伝達経路に入力した光を光伝達部の光反射面で全反射させて出力側の特定の光伝達経路に伝達する一の光路と、光伝達経路に入力した光を光導入部材に取り出し光反射部材で全反射させて出力側の特定の光伝達経路に伝達する他の光路と、を切り替えることが出来るものである。
近時、光電変換しない光ネットワークシステムの構築が一段と進んできており、今後、電気信号に代わる光のネットワークシステムが主流になっていくに従って、このような光スイッチは多用され、必然的に、光スイッチには、長期にわたる、より高い信頼性が求められることになる。又、光交換器の回線数が増していく一方で、光交換器には、より小型化が求められることから、光交換器の一構成要素としての光スイッチについても、より高集積化が要求されることになる。尚、圧電アクチュエータにかかる先行技術文献として、例えば特許文献2〜6が挙げられる。
特開2002−196265号公報 特許第3452133号公報 特許第3149902号公報 特開平7−135347号公報 特許第2809907号公報 特許第3381779号公報
上記のような事情に鑑み、光スイッチにかかる長期にわたる信頼性を向上させ、併せて高集積化を図るための具体的対策について、検討が重ねられた結果、以下の考えが想到されるに至った。
先ず、光スイッチにおいて、その長期にわたる信頼性を向上させるための一対策は、アクチュエータ部として適用される圧電アクチュエータを、電気的な短絡が生じ難い構造のものとすることである。特に、光スイッチが高集積化されると、圧電アクチュエータを、より小型化し、高密度に配設する必要が生じるため、更に、圧電アクチュエータの有する構造によって、電気的な短絡を回避することが望まれる。
次に、光スイッチの長期にわたる信頼性を向上させるための他の対策は、アクチュエータ部として適用される圧電アクチュエータを、無用な内部応力を発生させ難い構造のものとすることである。圧電アクチュエータは、アクチュエータ部として、常時、変位を生じ駆動し続けるものであるから、応力をその内部に発生させて留めていると、長期的には、それによる疲弊により構造上の強度が低下し、破壊を招来するおそれが高まる。従って、無用な内部応力を発生させ難い圧電アクチュエータを提供出来れば、より長寿命化が図れるはずであり、このことを通じて、光スイッチの長期にわたる信頼性は向上すると考えられる。
更に、光スイッチにおいて、その高集積化を図るための対策は、アクチュエータ部として適用される圧電アクチュエータを、上記した電気的な短絡が生じ難い構造のものとすることに加えて、より簡素な構造のものとすることである。特に、変位動作に関係しない配線や電極端子等の周辺構造を、より簡素にした圧電アクチュエータを提供出来れば、アクチュエータとしての基本性能である変位量や変位効率を低下させずに、即ち光スイッチとしての性能を落とさずに、その高集積化を図ることが容易になると考えられる。
ここで、先に示した先行技術について検討すると、特許文献2及び特許文献6に開示された櫛形状の圧電振動子ユニット、特許文献3に開示された櫛形状の圧電駆動体、特許文献5に開示された櫛形状の圧電アクチュエータでは、何れも、電気的な短絡が生じ難く、より簡素な構造を実現しようとする思想がみられない。特許文献4に開示された積層型圧電アクチュエータは、圧電体と電極を交互に積層しその積層方向の変位を利用する、いわゆる圧電縦効果を利用する圧電アクチュエータであり、内部電極を一層おきに外面で接続しており、電気的な短絡を生じ難くする構造を実現したものとはいえない。従って、これらの先行技術では、使用環境によっては、長期的に高い信頼性を確保することが困難な場合があると思われる。
以上の説明の通り、適用対象(光スイッチ等)の長期にわたる信頼性を向上させ得て且つ高集積化を容易に図ることが可能な圧電アクチュエータが求められているが、従来、提案されていなかった。本発明は、このような要求に応えるべくなされたものであり、本発明の目的とするところは、変位量乃至変位効率を低下させることなく、電気的な短絡が生じ難い構造、無用な内部応力を発生させ難い構造、及びより簡素な構造、を実現した圧電アクチュエータを提供し、それを通じて、適用対象(光スイッチ等)の信頼性向上及び高集積化を図ることにある。圧電アクチュエータについて、研究が重ねられた結果、以下に示す一次元圧電アクチュエータアレイにより、上記目的が達成可能なことが見いだされた。
即ち、本発明によれば、平面的に配列された複数の櫛歯部と、その複数の櫛歯部を、その一端で連結する櫛骨部と、を具備し、全体として櫛形形状を呈する一次元圧電アクチュエータアレイであって、複数の櫛歯部は、それぞれ、その先端側に備わる作用部と、その櫛骨部側に備わる変位部と、を備え、複数の櫛歯部にそれぞれ備わる作用部は、少なくとも外面が圧電体のみで形成され、複数の櫛歯部にそれぞれ備わる変位部は、圧電横効果により独立して駆動する圧電駆動体で構成され、その圧電駆動体は、4以上の偶数の層状の圧電体と、複数の層状の共通電極及び層状の個別電極と、を有するとともに、層状の圧電体が、その各々の積層方向の面全体を前記層状の共通電極及び層状の個別電極で交互に挟まれ、且つ前記層状の共通電極が最外層となるように、積層をされ、同一の圧電駆動体に属する複数の個別電極が、櫛骨部の内部に設けられた個別電極導通手段で導通され、複数の共通電極が、櫛骨部に設けられた共通電極導通手段で導通され、且つ、同一の圧電駆動体に属する複数の個別電極に導通して圧電駆動体毎に設けられる個別電極端子と、全ての前記共通電極に導通する少なくとも1つの共通電極端子と、が前記櫛骨部に配設されてなる一次元圧電アクチュエータアレイが提供される。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、櫛歯部と櫛骨部からなり、更に櫛歯部は作用部と変位部とからなる。その櫛歯部が、1つの圧電アクチュエータに相当する動的部分である。櫛歯部のうち作用部は、少なくとも外面が圧電体のみで形成されるが、これは電極が一対で形成されておらず変位を生じない部分、即ち駆動体としてはたらかない部分であることを意味し、変位を生じない限りにおいて、作用部に付加物が存在する態様を排除するものではない。又、外面に現れない内部に一対ではない電極が存在してもよい。好ましくは、内部にも全く電極が存在せず圧電体のみで形成される態様である。櫛歯部のうち変位部を構成する圧電駆動体は、層状の圧電体がその各々の面全体を層状の共通電極及び層状の個別電極で交互に挟まれているものであるが、これは圧電体全てに電界が形成され、その全てが変位を発生し得る態様を表している。本明細書においてこの態様を全面電極型とよぶ。
一方、櫛骨部は複数の櫛歯部を連結する部分であって、櫛歯部の圧電駆動体と外部電源とを結ぶ配線(電極パターン)・電極端子が形成される静的部分であり、アクチュエータとしての動きとは直接的には関係がない。尚、個別電極端子及び共通電極端子は外部電源と接続される部分であり、櫛骨部に設けられるが、櫛骨部である限りその場所は限定されない。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの形状は、全体として櫛形形状であるが、個々の櫛歯部(作用部+変位部(圧電駆動体))の形状・長さは均一である必要はなく、用途に応じて異なる形状の櫛歯を組み合わせてなる櫛形形状であってもよい。平面的に配列されて隣接する櫛歯部どうしの間隔(ピッチ)は、均一であっても、不均一(バラバラ)であってもよい。より好ましい形状は、複数の櫛歯部の形状が全て同一であり、均一な間隔で配列された櫛形形状である。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイにおいては、櫛骨部が圧電体で形成され、少なくとも外面が圧電体のみで形成される作用部、及び層状の圧電体を有する圧電駆動体で構成される変位部、を備える複数の櫛歯部と、櫛骨部と、が焼成一体化されてなることが好ましい。
又、櫛骨部の内部に設けられた個別電極導通手段が、スルーホールであり、そのスルーホールを櫛骨部の表面に露出をさせて、その露出部分に個別電極端子が配設されることが好ましい。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイにおいては、櫛骨部において、複数の個別電極の各々と個別電極導通手段とを結ぶ個別電極配線が、複数の共通電極の各々と共通電極導通手段とを結ぶ共通電極配線と、積層の方向で重なっていないことが好ましい。
又、複数の個別電極の各々と個別電極導通手段とを結ぶ個別電極配線の幅が、圧電駆動体の幅の1/3以下であることが好ましい。
更に、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイにおいては、平面的に配列された複数の櫛歯部の、配列方向の片側又は両側に、櫛歯部と平行に配列され、その一端で櫛骨部と連結する支持部を具備することが好ましい。
次に、本発明によれば、上記した何れかの一次元圧電アクチュエータアレイを用いた、液滴を吐出するためのデバイスであって、一次元圧電アクチュエータアレイの櫛歯部が、液体が充填されるキャビティ(空洞の液体室)と、そのキャビティに充填された液体を、液滴として吐出するために、作用部が備わる先端側にキャビティに通じて開けられた吐出口と、を備え、一次元圧電アクチュエータアレイの櫛骨部が、キャビティと連通する液体流路と、その液体流路に(更にはキャビティへ)液体を導入するために、液体流路に通じて開けられた導入口と、を備える液滴吐出デバイスが提供される。
この液滴吐出デバイスにおいて、櫛歯部の変位部を構成する圧電駆動体に電圧を印加することにより、櫛歯部の圧電駆動体(変位部)が圧電横効果に基づく変位を生じ、その変位によって、キャビティの容積が変化する。液体がキャビティに充填された状態で、櫛歯部の圧電駆動体を変位させ、キャビティの容積を減少させることによって、液体は吐出口から外へ吐出される。即ち、液体は、導入口から液体流路を介してキャビティへ充填され、上記キャビティの容積の減少によって吐出される。
液体は導入口から液体流路を介してキャビティへ充填されるものであるため、液体を連続的に供給するために、液体流路は導入口から外部の液体供給手段と接続している必要がある。そうすると、その接続部分に変位や応力が発生すると機械的疲労等が生じて液体が漏洩するおそれがある。本発明に係る液滴吐出デバイスは、変位の発生しない(従って殆ど応力も発生しない)櫛骨部に液体流路及び導入口が配置されているため、漏洩の問題は回避出来る。
尚、空洞の液体室であるキャビティは、櫛歯部の圧電駆動体(変位部)を貫通するように設けられることになるので、液体として導電性のものを使用する場合には、圧電駆動体の内部の個別電極間に短絡が生じないように、櫛歯部のキャビティを形成する面を絶縁しておく必要がある。これは、そのキャビティを形成する面に、例えば、絶縁材料によってコーティングする等の、絶縁性を確保する手段を採用することにより実現することが出来る。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、共通電極及び個別電極で交互に挟まれて積層される層状の圧電体の数が4以上の偶数であり、共通電極が最外層となっていて、且つ、複数の個別電極は櫛骨部の内部に設けられた個別電極導通手段で導通されており、外面に現れる電極は表裏とも極性が同じ共通電極であって、個別電極に導通する部分は、櫛骨部に配設される個別電極端子及び圧電駆動体における個別電極自体の積層端面を通じて僅かに現れるだけである。更に、アクチュエータの作用対象物に対する押す、突く等の作用点にあたり、最も外力がかかる作用部には、少なくとも外面に電極が存在しない。従って、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、電気的な短絡が殆ど生じない構造となっている。
又、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、変位を発生させる圧電駆動体が全面電極型であるため、全ての圧電体を有効に変位に使用出来、且つ変位を妨げるような拘束部分が存在しない。従って、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、変位効率の観点から優れた構造であるといえる。
更に、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、好ましい態様において、(櫛骨部において)個別電極配線が共通電極配線と積層の方向で重なっていない。従って、櫛骨部が圧電体ではない場合は勿論のこと、圧電体で形成した場合であっても、櫛骨部において無用な内部応力を発生させ難い構造となっている。尚、作用部には、少なくとも一対で圧電体に電圧をかけ得る態様で電極が存在しないから、作用部で無用な内部応力が発生することはない。
個別電極配線が共通電極配線と積層の方向で重なっている場合でも、好ましい態様では、その個別電極配線の幅が圧電駆動体の幅の1/3以下であるため、櫛骨部における無用な内部応力の発生を、極小さく抑制し得る構造となっている。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイでは、外部電源と接続する共通電極端子は、全ての共通電極に導通し少なくとも1つあればよく、外部電源と接続する個別電極端子を、同一の圧電駆動体に属する複数の個別電極に導通して圧電駆動体毎に設けることによって、圧電駆動体を、複数の櫛歯部の変位部毎に、各々独立して駆動可能としている。更に、好ましい態様によれば、個別電極を導通する個別電極導通手段として、原則としては櫛骨部の内部に設けられるスルーホールを用い、そのスルーホールを露出させ、その露出部分に、個別電極端子を配設している。従って、電極と端子を結ぶ配線が、櫛骨部の内部に埋め込まれ、その長さが極短くなり、又、共通電極端子を個別電極と同様に同一の圧電駆動体毎に設けたり、櫛歯部の変位部(圧電駆動体)の積層端面や櫛歯部の作用部乃至櫛骨部の側面等に配線(電極パターン)を施す態様に比較して、極簡素な配線系となっている。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの好ましい態様は、櫛歯部の配列方向の片側又は両側に支持部を具備する。この支持部は、一次元圧電アクチュエータアレイを適用対象(製品)等に取り付ける際に用いることが出来る他、マーカー等により位置決め手段として採用することが可能な点で有用である。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの好ましい態様は、櫛骨部と櫛歯部(作用部及び変位部)が、主材料を圧電材料(圧電体)として焼成一体化されてなるものであるため、構造強度が大きく、アクチュエータとして、常時、変位を生じ駆動し続けていても、長期にわたり、その連続動作に起因した疲弊等により破壊を招来するおそれは極小さい。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、上記効果を発現するものであるから、例えば光スイッチや液滴吐出デバイスに適用すれば、その長期にわたる信頼性を向上させ、その高集積化を容易にすることが出来る。尚、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの適用対象は、光スイッチや液滴吐出デバイスに限定されない。圧電アクチュエータを変位制御手段等として利用可能なあらゆる機器・装置に、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを適用することが可能である。
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
又、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、圧電と表現されているが、電界によって誘起される歪みを利用するアレイ状アクチュエータであって、狭義の意味での、印加電界に概ね比例した歪み量を発生する圧電効果を利用する圧電アクチュエータに限定されず、印加電界の二乗に概ね比例した歪み量を発生する電歪効果、強誘電体材料全般にみられる分極反転、反強誘電体材料にみられる反強誘電相−強誘電相間の相転移、等の現象を利用するアクチュエータも含まれる。分極処理が行われるか否かについても、一次元圧電アクチュエータの主構成要素である圧電体にかかる材料の性質に基づいて適宜決定される。尚、圧電体とは圧電材料(同様に狭義ではない)が一定の形状をしたものをいう。又、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイは、圧電横効果を用いるものである。
図1(a)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイを切断線101で切断したときの断面図である。これらの図で明示されるように一次元圧電アクチュエータアレイ1は、全体として櫛形形状を呈し、平面的に配列された3つの櫛歯部26と、3つの櫛歯部26を連結する櫛骨部27と、を具備するものである。櫛歯部26は、それぞれに、先端側に備わる作用部7と、その櫛骨部側に備わる変位部6と、を備えていて、作用部7は、6つの層状の(6層の)圧電体4のみで形成され、電極(共通電極19及び個別電極18)は、一切積層されていない。一方、変位部6は、6層の圧電体4と、4つの層状の(4層の)共通電極19と、3つの層状の(3層の)個別電極18と、を有する圧電駆動体31で構成される。圧電駆動体31(変位部6)のそれぞれにおいて、6層の圧電体4は、各々の面全体を共通電極19及び個別電極18で交互に挟まれて積層をされていて、電極の最外層は、(図中において)表面(上面)も裏面(下面)も共通電極19である。
一次元圧電アクチュエータアレイ1において、個別電極18は、同一の圧電駆動体31に属するものどうしが、個別電極導通手段である3つのスルーホール24で導通されている(図1(b)参照)。個別電極18は、電極の最外層にあたらず、外面に露出しないものであるから、スルーホール24は、原則としては、櫛骨部27の内部に設けられ外面には現れない個別電極導通手段である。しかし、一次元圧電アクチュエータアレイ1では、3つのスルーホール24を、それぞれ(図中において)表面方向に延長させ、櫛骨部26の表面まで露出をさせて、その露出部分に、同一の圧電駆動体31毎に、それぞれ独立した3つの個別電極端子20を配設して、電極と端子とを結ぶ配線距離の短縮化を図っている。
一次元圧電アクチュエータアレイ1において、共通電極19は、3つの圧電駆動体31に属する全てが導通している。共通電極19は、先ず、3つの圧電駆動体31に積層されている3つの共通電極19が、櫛骨部27において各層毎に共通電極配線29(電極パターン)で接続され、次いで、2箇所で共通電極導通手段であるスルーホール(図示しない)で各層が導通されている。個別電極18と同様に、2箇所のスルーホールを、それぞれ表面方向に延長させて、櫛骨部26の表面に露出をさせて、その露出部分に、共通電極端子21を配設している。このような櫛骨部の表面上に端子(個別電極端子20、共通電極端子21)を配置する態様により、端子と外部電源との接続を、より容易に行うことが可能になる。尚、端子(個別電極端子20、共通電極端子21)は、一直線上に配置してもよいが、例えば千鳥状に配置する等、櫛骨部の面上で自由に配置することが出来る。
外部電源が、個別電極端子20、共通電極端子21に接続され供給されると、スルーホールを介して、各層の両面に形成された個別電極18と共通電極19との間に電圧が印加される。個別電極端子20は、圧電駆動体31毎に独立している(絶縁されている)から、各圧電駆動体31(各変位部6)は、それぞれ独立して駆動させることが出来る。個別電極18と共通電極19とは圧電体4を挟んで積層されていて、その間に電界がかけられて生ずる変位の方向は、図1(a)及び図1(b)中の矢印の示す方向であり、一次元圧電アクチュエータアレイ1は圧電横効果を利用するアクチュエータである。尚、本発明に係る一次元圧電アクチュエータアレイにおいて、個別電極端子は、一次元圧電アクチュエータアレイ1の如く、原則として、櫛歯部のそれぞれに(圧電駆動体毎に)、独立して設けられるものであるが、複数の櫛歯部が同時に駆動されるような使用形態においては、複数の櫛歯部の個別電極を接続した共通の電極端子を設けることも望ましい。
一次元圧電アクチュエータアレイ1では、個別電極配線28は、個別電極18を櫛骨部27側に延長した電極パターンになっており、櫛骨部27では、個別電極配線28が共通電極配線29と積層の方向で一部分が重なりあって、重なり部8を形成している。この重なり部8は、周囲から拘束されて変位を生じようとする部分であるが、個別電極配線28の幅は圧電駆動体31の幅の1/3以下になっており(図示しない)、発生する内部応力は極小さく抑えられる。
一次元圧電アクチュエータアレイ1は、3つの櫛歯部26の両側に、櫛歯部26と同様に一端で櫛骨部27と連結した支持部23を具備し、この支持部23を用いて、位置決めされ適用製品に取り付けられる。
又、一次元圧電アクチュエータアレイ1は、図1(a)及び図1(b)から理解されるように、6層の圧電体4のうち1層の圧電体4は、櫛歯部26の作用部7、櫛歯部26の変位部6、及び櫛骨部27の間で連続した1枚のシート状の圧電体になっている。シート状の圧電体を櫛形形状に加工し、それを6層に重ね、焼成一体化したものが一次元圧電アクチュエータアレイ1であり、櫛形でシート状の圧電体を重ねる際に、櫛歯部の先端側(作用部7相当)には電極を全く挟まず、櫛歯部の櫛骨部側(変位部6相当)には圧電体の全面に重なるように個別電極及び共通電極を挟み、櫛骨部には互いに重ならないように個別電極に導通する個別電極配線(電極パターン)、及び共通電極に導通する共通電極配線(電極パターン)を挟んで得られたものである。尚、シート状の圧電体を櫛形形状に加工するのではなく、所定の電極を挟んで6層に重ねて積層し、焼成一体化してから櫛形形状に加工しても得ることは可能である(製造方法については後述する)。
図2(a)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの他の実施形態を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの、個別電極配線及び個別電極端子の態様を表す平面図であり、図2(c)は、同様に、共通電極配線及び共通電極端子の態様を表す平面図である。これらの図で明示されるように、一次元圧電アクチュエータアレイ200は、櫛骨部27における電極配線及び電極端子の態様が異なること以外は上記した一次元圧電アクチュエータアレイ1と同様の一次元圧電アクチュエータアレイである。
即ち、一次元圧電アクチュエータアレイ200は、一次元圧電アクチュエータアレイ1と同様に、全体として櫛形形状を呈し、平面的に配列された3つの櫛歯部26及び2つの支持部23と、その3つの櫛歯部26及び2つの支持部23を連結する櫛骨部27と、を具備するものである。櫛歯部26は、それぞれに、先端側に備わる作用部7と、その櫛骨部側に備わる変位部6と、を備えていて、作用部7は、6つの層状の(6層の)圧電体4のみで形成され、電極(共通電極19及び個別電極18)は、一切積層されていない。一方、変位部6は、6層の圧電体4と、4層の共通電極19と、3層の個別電極18と、を有する圧電駆動体31で構成される。圧電駆動体31(変位部6)のそれぞれにおいて、6層の圧電体4は、各々の面全体を共通電極19及び個別電極18で交互に挟まれて積層をされていて、電極の最外層は、(図中において)表面(上面)も裏面(下面)も共通電極19である。
但し、一次元圧電アクチュエータアレイ200は、一次元圧電アクチュエータアレイ1と異なり、個別電極配線28及び共通電極配線29が、それぞれ図2(b)及び図2(c)に示される形状であるため、櫛骨部27において、個別電極配線28が共通電極配線29と積層の方向で全く重なることがない(重なり部が存在しない)。従って、一次元圧電アクチュエータアレイ200では、圧電駆動体31以外には変位を発生するする部分はなく、無用な内部応力が発生しない。
図3(b)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態にかかる個別電極配線及び個別電極端子の態様を示す(櫛形に加工する前の)平面図であり、図3(c)は、同様に、共通電極配線及び共通電極端子の態様を示す(櫛形に加工する前の)平面図である。そして、図3(a)は、それぞれを櫛形に加工し、積層の方向で、図3(c)に示される共通電極配線及び共通電極端子の上に、図3(b)に示される個別電極配線及び個別電極端子を重ね、圧電体4を透視して表した平面図である。
この一次元圧電アクチュエータアレイでは、一次元圧電アクチュエータアレイ1と同様に、個別電極配線28は、個別電極18を櫛骨部27側に延長した電極パターンになっており、櫛骨部27において、個別電極配線28が共通電極配線29と積層の方向で一部分が重なりあって、重なり部8を形成している。この重なり部8は、周囲から拘束されて変位を生じようとする部分であるが、個別電極配線28の幅は圧電駆動体31の幅の概ね1/3以下になっており(図3(a)参照、)、発生する内部応力は極小さく抑えられる。尚、図3(a)において圧電駆動体31の幅は直接に示されていないが、個別電極18乃至共通電極19の幅に相当する。それぞれの幅とは図3(a)におけるそれぞれの横方向の一の端から他の端までの距離である。
図5(a)〜図5(c)は、図3(a)〜図3(c)に表された一次元圧電アクチュエータアレイから重なり部をなくすように、共通電極配線の形状を変更した一次元圧電アクチュエータアレイを表した図である。図5(b)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態にかかる個別電極配線及び個別電極端子の態様を示す(櫛形に加工する前の)平面図であり、図5(c)は、同様に、共通電極配線及び共通電極端子の態様を示す(櫛形に加工する前の)平面図である。そして、図5(a)は、それぞれを櫛形に加工し、積層の方向で、図5(c)に示される共通電極配線及び共通電極端子の上に、図5(b)に示される個別電極配線及び個別電極端子を重ね、圧電体4を透視して表した平面図である。
この一次元圧電アクチュエータアレイでは、個別電極配線28は、個別電極18を櫛骨部27側に延長した電極パターンになっているが、共通電極配線29は、積層の方向で個別電極配線28と重ならないように、共通電極19を接続する形状になっており、櫛骨部27において、重なり部8が存在しない。従って、櫛骨部27における無用な内部応力は発生しない。
図4(a)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの、個別電極配線及び個別電極端子の態様を表す平面図であり、図4(c)は、同様に、共通電極配線及び共通電極端子の態様を表す平面図であり、図4(d)は、図4(a)のP視図である。これらの図で明示されるように、一次元圧電アクチュエータアレイ240は、個別電極端子20が櫛骨部27における圧電体4の積層端面に配設され、個別電極導通手段であるスルーホール24が作用部7の内部(図4(c)参照)に設けられること以外は上記した一次元圧電アクチュエータアレイ1と同様の一次元圧電アクチュエータアレイである。
一次元圧電アクチュエータアレイ240は、全体として櫛形形状を呈し、平面的に配列された3つの櫛歯部26及び2つの支持部23と、その3つの櫛歯部26及び2つの支持部23を連結する櫛骨部27と、を具備するものである。櫛歯部26は、それぞれに、先端側に備わる作用部7と、その櫛骨部側に備わる変位部6と、を備えていて、作用部7は、少なくとも外面は6層の圧電体4で形成されているが、内部に個別電極18のみが積層されるとともに、積層された個別電極18を導通させるスルーホール24が設けられている。変位部6は、6層の圧電体4と、4層の共通電極19と、3層の個別電極18と、を有する圧電駆動体31で構成される。圧電駆動体31(変位部6)のそれぞれにおいて、6層の圧電体4は、各々の面全体を共通電極19及び個別電極18で交互に挟まれて積層をされていて、電極の最外層は、(図中において)表面(上面)も裏面(下面)も共通電極19である。
一次元圧電アクチュエータアレイ240において、個別電極18は、同一の圧電駆動体31に属するものどうしが、個別電極導通手段である3つのスルーホール24で導通されている。個別電極18は電極の最外層にあたらず、外面に露出しないものであるから、スルーホール24は、作用部7の内部に設けられ外面には現れない。又、個別電極端子20は、櫛骨部27の(図中における)表面に設けられず、個別電極18が櫛骨部27における圧電体4の積層端面に露出した部分に、圧電駆動体31毎に3つ設けられる。上記したように、個別電極18は、同一の圧電駆動体31に属するものどうしがスルーホール24で導通されているから、圧電駆動体31毎に設けられる3つのうち何れかの個別電極端子20に外部電源を接続すればよい。共通電極19、共通電極端子21、共通電極導通手段については、一次元圧電アクチュエータアレイ1に準じる。
尚、一次元圧電アクチュエータアレイ240では、一次元圧電アクチュエータアレイ1と概ね同様の形状の個別電極配線28及び共通電極配線29を有するため(図4(b)及び図4(c)参照)、櫛骨部27において、個別電極配線28が共通電極配線29と積層の方向で一部が重なり、重なり部が存在する(図示しない)。
以上、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイについて、その実施形態を説明したが、以下に本発明に属しないものの例を掲げて説明し、間接的に本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの特徴を示すこととする。
図7は、従来の櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの典型を示す斜視図である(例えば、特許文献2の図1参照)。図7に示される圧電アクチュエータアレイ70では、電極の最外層が、場所によって(図中において)表面(上面)も裏面(下面)も、個別電極118及び共通電極119の両方であり、外面に個別電極118と共通電極119の両方が露出しているところ、及び作用部の(圧電体の)積層端面においても電極が設けられているところが、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイと異なる。
図8は、本発明に属しない櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの一例を示す斜視図である。図8に示される圧電アクチュエータアレイ80では、電極の最外層が、少なくとも(図中において)表面(上面)において個別電極118であり、外面に個別電極118が露出しているところが、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイと異なる。
図9は、本発明に属しない櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの他の例を示す斜視図である。図9に示される圧電アクチュエータアレイ90では、変位部6における電極の最外層は共通電極119であるが、変位部6以外の作用部7において、外面に個別電極端子120が露出しているところが、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイと異なる。尚、例えば、個別電極端子が櫛骨部に、別途、設けられていても、作用部において個別電極導通手段であるスルーホールが表面(外面)に露出していれば、作用部において少なくとも外面が圧電体のみで形成される本発明の一次元圧電アクチュエータアレイとは異なる。
図10(a)、図10(b)、図10(c)は、本発明に属しない櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの更に他の例を示す図であり、図10(a)は一の面(表面)を表した斜視図であり、図10(b)は他の面(裏面)を表した斜視図であり、図10(c)は、図10(a)に示される圧電アクチュエータアレイを切断線102で切断したときの断面図である。図10(a)、図10(b)、図10(c)に示される圧電アクチュエータアレイ100では、表面においては、変位部6における電極の最外層は共通電極119であるが、積層される圧電体104の数が奇数の5(層)であり、裏面において変位部6における電極の最外層は個別電極118となってしまい、外面に個別電極118が露出するところが、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイと異なる。又、共通電極端子121が圧電駆動体131(変位部6)毎に3つ設けられているところ、及び作用部7における圧電体104の積層端面に、個別電極118を導通する個別電極導通手段として端面電極124が形成されているところが、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイと異なる。
図11(a)は、本発明に属しない圧電アクチュエータアレイの更に他の例を示す斜視図であり、図11(b)は、図11(a)に示される圧電アクチュエータアレイの、個別電極配線及び個別電極端子の態様を表す平面図であり、図11(c)は、同様に、共通電極配線及び共通電極端子の態様を表す平面図である。図11(a)に示される圧電アクチュエータアレイ110では、外面に個別電極118が露出するところ、及び圧電駆動体131(変位部6)毎に個別電極118に導通し3つ設けられる個別電極端子120のみならず、共通電極端子121も圧電駆動体131(変位部6)毎に3つ設けられているところが、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイと異なる。
次に、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを用いた液滴吐出デバイスについて説明する。図12は、既述の一次元圧電アクチュエータアレイ1(図1参照)と同態様の一次元圧電アクチュエータアレイを用いた液滴吐出デバイスを示す斜視図である。又、図13(a)及び図13(b)は、図12に示される液滴吐出デバイス50を切断線103で切断したときの断面図であり、図13(a)は圧電駆動体が変位を生じていない場合(OFF)、図13(b)は圧電駆動体が収縮の変位を生じた場合(ON)の状態を表している。
液滴吐出デバイス50は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを用いたものであるから、櫛歯部26、櫛骨部27、支持部23、変位部6、圧電駆動体31、作用部7、個別電極、共通電極19、個別電極端子20、共通電極端子21、個別電極配線、共通電極配線29については、一次元圧電アクチュエータアレイ1(図1参照)に準じた構造・形態・配置になっている(説明は省略する)。
液滴吐出デバイス50は、液滴を吐出するための構造を有するデバイスである。即ち、櫛歯部26が、液体53が充填されるキャビティ55と、そのキャビティ55に充填された液体53を吐出するための吐出口59と、を備える。吐出口59は、液体53を、液滴52(図13(b)参照)として吐出するための開口であり、作用部7が備わる先端側に、キャビティ55に通じて開けられたものである。更に、液滴吐出デバイス50は、櫛骨部27が、キャビティ55と(吐出口59とは反対側で)連通する液体流路57と、その液体流路57に通じて開けられた導入口58と、を備える。導入口58は、液体53を液体流路57へ、更にはキャビティ55へ、導入するための開口であり、変位が生じない櫛骨部27に設けられている。
この液滴吐出デバイス50において、櫛歯部26の変位部6を構成する圧電駆動体31に電圧が印加されると、その圧電駆動体31(変位部6)に、圧電横効果に基づいて、図12中の矢印方向、即ち、櫛歯部26の先端側と櫛骨部27側とを結ぶ方向、に変位が生じる。そして、電圧が印加されなくなると、(変位が)元へ戻る。この一連の動作によって、キャビティの容積が減少し、キャビティ内に充填された液体が吐出口から吐出され、その後、吐出した量の液体が、導入口からキャビティ内に供給される。
次に、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの製造方法について説明する。本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの製造方法は、その一例として、セラミック圧電材料をシート状に成形してセラミックグリーンシートを作製する第一の工程と、セラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に所定の電極パターンを形成するとともに、セラミックグリーンシートに、のちにスルーホールになる小孔を設け、その内壁に導電性材料を塗布する第二の工程と、電極パターンを形成し内壁に導電性材料が塗布された小孔を有するセラミックグリーンシートの積層をしてセラミックグリーン積層体を得る第三の工程と、そのセラミックグリーン積層体を焼成し積層焼成体を得る第四の工程と、その積層焼成体を櫛形形状となるように加工する第五の工程と、を含むものを挙げることが出来る。尚、第二の工程では、セラミックグリーンシートに設けた小孔の内壁に導電性材料を塗布するのではなく、その小孔に導電性材料を詰め込むことが、より望ましい。
上記第一の工程〜第五の工程に従い、そのままの順序で作製することは、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを製造する方法として好ましい手段であるが、工程の順序は限定されるわけではない。適宜順序を入れ替えたり、同時に行うことが可能である。例えば、電極を形成し、積層し、焼成し、櫛形加工する順序ではなく、先ずセラミックグリーンシートを櫛形加工し、電極を形成し、積層し、焼成する順序でもよく、あるいは電極を形成し、櫛形加工し、積層し、焼成する順序でもよい。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの製造方法の概略工程の一例を、図6(a)〜図6(d)に示す。この例は、図1(a)、図1(b)に示される一次元圧電アクチュエータアレイ1を作製する一方法として示されている。
先ず、セラミック圧電材料を主成分とするセラミックグリーンシート(以下、単にシートともいう)を用意する(第一の工程)。セラミックグリーンシートは、従来知られたセラミックス製造方法により作製出来る。例えば、後述するセラミック圧電材料粉末を用意し、これにバインダ、溶剤、分散剤、可塑剤等を望む組成に調合してスラリーを作製し、これを脱泡処理後、ドクターブレード法、リバースロールコーター法等のシート成形法によって、セラミックグリーンシートを得ることが出来る。セラミックグリーンシートは、のちに圧電駆動体(変位部)の圧電体を構成するものであり、シートの厚さは任意に選択出来、その厚さに応じ、アクチュエータとしての機械強度、圧電駆動体の駆動電圧と変位の関係、あるいは応答速度等の特性を必要に応じて調整することが可能である。
次に、得られたセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に所定の電極パターンを導電性材料(電極材料)で形成するとともに、のちにスルーホールになる小孔を設け、その小孔の内壁に導電性材料を塗布する(第二の工程、図6(a)参照)。電極パターンは、のちに個別電極18と個別電極配線28になる電極パターン318と、のちに共通電極19と共通電極配線29になる電極パターン319である。小孔は、のちに同一の圧電駆動体に属する個別電極18どうしを導通するためのスルーホール24になる小孔320と、のちに共通電極19どうしを導通するスルーホールになる小孔321である。のちにスルーホールとなる小孔の少なくとも内壁に導電性材料を塗布しておくことにより、後述する積層及び焼成一体化を行った後に、個別電極18及び共通電極19を、積層方向に導通させることが出来る。図6(a)に示されるように、この第二の工程で、電極パターン318が形成され小孔320,321が設けられたセラミックグリーンシート315と、電極パターン319が形成され小孔320,321が設けられたセラミックグリーンシート316を得る。尚、最下層になるセラミックグリーンシートには、裏面に電極パターン318が形成され、一方、小孔320は設けられない(これをセラミックグリーンシート312とよぶ)。
セラミックグリーンシートに電極パターンを形成する方法としては、スパッタリング、真空蒸着、CVD、メッキ、塗布、スプレー、スクリーン印刷等の方法を挙げることが出来る。又、セラミックグリーンシートの小孔の内壁に導電性材料を塗布したり、小孔に導電性材料を詰め込むのではなく、導電性材料を用い、スパッタリング、真空蒸着、CVD、メッキ、スプレー等の方法で、小孔に電極導通能力を付与することも可能である。
次に、セラミックグリーンシート315,316,312の積層をしてセラミックグリーン積層体301を得る(第三の工程、図6(b)参照)。積層にあたっては、図示しないが、セラミックグリーンシート315,316,312のそれぞれにおいて、のちに支持部となる部分にホールを設けて1つのガイドピンに通す方法やマーカー(目印)を付ける方法で位置決めを行うことにより、積層の位置精度を向上させることが出来る。
そして、セラミックグリーン積層体301を焼成し積層焼成体302を得て(第四の工程)、その後、積層焼成体302を櫛形形状となるように加工する(第五の工程、図6(c)参照)ことにより、一次元圧電アクチュエータアレイ1が得られる(図6(d)参照)。
以上、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイ、及びその製造方法について説明したが、この本発明の、圧電アクチュエータ(櫛歯部)が平面的に配列をされた一次元圧電アクチュエータアレイを基に、二次元の圧電アクチュエータアレイを作製することが可能である。例えば、櫛骨部にスペーサー等を挟んで、櫛歯部が所定の間隔となるように、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを重ねて組み立てることにより、圧電アクチュエータ(櫛歯部)が二次元に配列されたマトリクス型圧電アクチュエータアレイを得ることが出来る。尚、このマトリクス型圧電アクチュエータアレイでは、個別電極端子及び共通電極端子は、櫛骨部の端面から取り出すことが望ましい。ここでいう櫛骨部の端面とは、二次元のマトリクス型アクチュエータアレイを、その櫛歯部を天井面(上面)に向けたときの底面(下面)である。
続いて、以下に、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイに用いられる材料について説明する。先ず、圧電体の材料、即ち、圧電材料について説明する。圧電材料としては、圧電効果又は電歪効果等の電界誘起歪みを起こす材料であれば、その種類は問われるものではない。結晶質でも非晶質でもよく、半導体セラミックスや強誘電体セラミックス、あるいは反強誘電体セラミックスを含むセラミック圧電材料を用いることが可能である。用途に応じて適宜選択し採用すればよい。又、分極処理が必要な材料であっても必要がない材料であってもよい。更には、(上記製造方法の説明ではセラミック圧電材料を用いているが)セラミック圧電材料に限定されず、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子からなる圧電材料、又は、これら高分子とセラミック圧電材料の複合体であってもよい。但し、この場合は、高分子材料の耐熱性の点から、焼成して素子を形成するというものではなく、高分子材料の熱硬化程度の熱処理を施すことにより素子を形成する。より好ましくは、材料強度面に優れるセラミック圧電材料を採用する。積層数の多い、高アスペクト比な構成を、より有利に実施出来、低電圧駆動で高特性な圧電アクチュエータにすることが出来るからである。
具体的なセラミック圧電材料としては、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、チタン酸ビスマスネオジウム(BNT系)、ニオブ酸カリウムナトリウム、若しくはタンタル酸ストロンチウムビスマス等を単独で、又は混合物若しくは固溶体として含有するセラミックスが挙げられる。
次に、電極の材料について説明する。電極の材料は、常温で固体であれば特に規制されるものではなく、例えば金属単体であっても、合金であってもよく、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化セリウム等の絶縁性セラミックスと金属単体又はその合金との混合物であっても、何ら差し支えない。電極形成前に焼成する場合には、白金、パラジウム、ロジウム等の高融点貴金属類、若しくは銀−パラジウム、銀−白金、白金−パラジウム等の合金を主成分とする電極材料、白金と基体材料若しくは圧電材料との混合物、又はそのサーメット材料が好適に用いられる。
本発明の一次元圧電アクチュエータアレイ、及び本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを重ねて組み立てたマトリクス型圧電アクチュエータアレイは、光スイッチ、光シャッター、ミラーアレイ、可変形状鏡(デフォーマブルミラー)等の光学系マイクロデバイスや、画像表示装置、高周波フィルタ、マイクロポンプ、液滴吐出装置(デバイス)、インクジェットヘッド等に好ましく適用することが可能である。又、圧電効果に基づくという観点から、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを加速度センサ、圧力センサ等の各種センサとして利用することも可能である。
図1(a)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの断面図である。 図2(a)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの他の実施形態を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの個別電極配線及び個別電極端子の態様を表す平面図であり、図2(c)は、図2(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの共通電極配線及び共通電極端子の態様を表す平面図である。 図3(a)は、図3(c)に示される共通電極配線及び共通電極端子の上に、図3(b)に示される個別電極配線及び個別電極端子を重ねて表した平面図である。図3(b)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態にかかる個別電極配線及び個別電極端子の態様を示す平面図であり、図3(c)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態にかかる共通電極配線及び共通電極端子の態様を示す平面図である。 図4(a)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの個別電極配線及び個別電極端子の態様を表す平面図であり、図4(c)は、図4(a)に示される一次元圧電アクチュエータアレイの共通電極配線及び共通電極端子の態様を表す平面図であり、図4(d)は、図4(a)のP視図である。 図5(a)は、図5(c)に示される共通電極配線及び共通電極端子の上に、図5(b)に示される個別電極配線及び個別電極端子を重ねて表した平面図である。図5(b)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態にかかる個別電極配線及び個別電極端子の態様を示す平面図であり、図5(c)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの更に他の実施形態にかかる共通電極配線及び共通電極端子の態様を示す平面図である。 図6(a)〜図6(d)は、本発明の一次元圧電アクチュエータアレイの製造方法の概略工程の一例を示す説明図である。 従来の櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの典型を示す斜視図である。 本発明に属しない櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの一例を示す斜視図である。 本発明に属しない櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの他の例を示す斜視図である。 本発明に属しない櫛形形状の圧電アクチュエータアレイの更に他の例を示す図であり、図10(a)は一の面(表面)を表した斜視図であり、図10(b)は他の面(裏面)を表した斜視図であり、図10(c)は、図10(a)に示される圧電アクチュエータアレイの断面図である。 図11(a)は、本発明に属しない圧電アクチュエータアレイの更に他の例を示す斜視図であり、図11(b)は、図11(a)に示される圧電アクチュエータアレイの個別電極配線及び個別電極端子の態様を表す平面図であり、図11(c)は、図11(a)に示される圧電アクチュエータアレイの共通電極配線及び共通電極端子の態様を表す平面図である。 本発明の一次元圧電アクチュエータアレイを用いた液滴吐出デバイスの一例を示す斜視図である。 図13(a)及び図13(b)は、図12に示される液滴吐出デバイスを図12に示される所定の切断線で切断したときの断面図である。
符号の説明
1,200,240…一次元圧電アクチュエータアレイ、4,104…圧電体、6…変位部、7…作用部、8…重なり部、18,118…個別電極、19,119…共通電極、20,120…個別電極端子、21,121…共通電極端子、23…支持部、24…スルーホール、26…櫛歯部、27…櫛骨部、28…個別電極配線、29…共通電極配線、31,131…圧電駆動体、50…液滴吐出デバイス、52…液滴、53…液体、55…キャビティ、57…液体流路、58…導入口、59…吐出口、70,80,90,100,110…(従来の、又は本発明に属しない)圧電アクチュエータアレイ、124…端面電極。

Claims (7)

  1. 平面的に配列された複数の櫛歯部と、前記複数の櫛歯部をその一端で連結する櫛骨部と、を具備し、全体として櫛形形状を呈する一次元圧電アクチュエータアレイであって、
    前記複数の櫛歯部は、それぞれ、その先端側に備わる作用部と、その櫛骨部側に備わる変位部と、を備え、
    前記複数の櫛歯部にそれぞれ備わる作用部は、少なくとも外面が圧電体のみで形成され、
    前記複数の櫛歯部にそれぞれ備わる変位部は、圧電横効果により独立して駆動する圧電駆動体で構成され、
    その圧電駆動体は、4以上の偶数の層状の圧電体と、複数の層状の共通電極及び層状の個別電極と、を有するとともに、前記層状の圧電体が、その各々の積層方向の面全体を前記層状の共通電極及び層状の個別電極で交互に挟まれ、且つ前記層状の共通電極が最外層となるように、積層をされ、
    同一の圧電駆動体に属する複数の個別電極が、前記櫛骨部の内部に設けられた個別電極導通手段で導通され、前記複数の共通電極が、前記櫛骨部に設けられた共通電極導通手段で導通され、且つ、同一の圧電駆動体に属する複数の個別電極に導通して圧電駆動体毎に設けられる個別電極端子と、全ての前記共通電極に導通する少なくとも1つの共通電極端子と、が前記櫛骨部に配設されてなる一次元圧電アクチュエータアレイ。
  2. 前記櫛骨部が圧電体で形成され、
    少なくとも外面が圧電体のみで形成される作用部、及び層状の圧電体を有する圧電駆動体で構成される変位部、を備える前記複数の櫛歯部と、前記櫛骨部と、が焼成一体化されてなる請求項1に記載の一次元圧電アクチュエータアレイ。
  3. 前記櫛骨部の内部に設けられた個別電極導通手段が、スルーホールであり、
    そのスルーホールを櫛骨部の表面に露出をさせて、その露出部分に前記個別電極端子が配設される請求項1又は2に記載の一次元圧電アクチュエータアレイ。
  4. 前記櫛骨部において、前記複数の個別電極の各々と、前記個別電極導通手段と、を結ぶ個別電極配線が、前記複数の共通電極の各々と、前記共通電極導通手段と、を結ぶ共通電極配線と、前記積層の方向で重なっていない請求項1〜3の何れか一項に記載の一次元圧電アクチュエータアレイ。
  5. 前記複数の個別電極の各々と、前記個別電極導通手段と、を結ぶ個別電極配線の幅が、圧電駆動体の幅の1/3以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の一次元圧電アクチュエータアレイ。
  6. 前記平面的に配列された複数の櫛歯部の、配列方向の片側又は両側に、前記櫛歯部と平行に配列され、その一端で櫛骨部と連結する支持部を具備する請求項1〜5の何れか一項に記載の一次元圧電アクチュエータアレイ。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の一次元圧電アクチュエータアレイを用いた、液滴を吐出するためのデバイスであって、
    一次元圧電アクチュエータアレイの前記櫛歯部が、液体が充填されるキャビティと、そのキャビティに充填された液体を滴として吐出するために前記作用部が備わる先端側に前記キャビティに通じて開けられた吐出口と、を備え、
    一次元圧電アクチュエータアレイの前記櫛骨部が、前記キャビティと連通する液体流路と、その液体流路に液体を導入するために前記液体流路に通じて開けられた導入口と、を備える液滴吐出デバイス。
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