JP2006085929A - 燃料電池用meaおよび燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マイクロショートによる性能の低下を生じさせることを防ぎつつ、高性能且つ高耐久性を保持する触媒層を有したMEAを提供する。
【解決手段】 少なくとも、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟持する一対の触媒層とを有する燃料電池であって、前記触媒層は、カーボン粒子に触媒が担持されてなる電極触媒と、固体高分子電解質と、コイル形状をしたカーボン繊維を少なくとも含み、前記コイル形状をしたカーボン繊維は、繊維平均径が1nm〜1μm、コイル平均長またはツイスト平均長が5nm〜10μmであることを特徴とするMEA。
【選択図】 なし

Description

本発明は、MEAに関し、より詳細には固体高分子電解質型燃料電池用のMEAに関する。
燃料電池は、水素と酸素とを電気化学的に反応させることにより発電するシステムである。この反応による生成物は原理的に水であることから環境への負荷が少ない。中でも、固体高分子電解質型燃料電池は、固体酸化物型、溶融炭酸塩型、リン酸型といった他の燃料電池と比較して低温で作動可能であることから、自動車等の移動体動力源として期待され、開発が進められている。
固体高分子電解質型燃料電池は、水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜、ならびにその膜を挟持するアノードおよびカソードの2つの電極からなる。すなわち、固体高分子電解質膜の一方に水素が供給されるアノードが配置され、もう一方に酸素が供給されるカソードが配置されている基本構成であり、これを膜−電極接合体(本願では、MEAとも記載)と呼んでいる。これらの電極は、導電性カーボンに触媒を担持させた電極触媒と水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質との混合物により形成された多孔性のものであり、触媒層とも呼ばれている。
このようなMEAでは、下記化学式1に示すように、アノードでは燃料である水素含有ガスを酸化して水素イオンに変える水素の酸化反応が起こり、カソードでは酸化剤ガスに含まれる酸素を還元して固体高分子電解質膜を通ってきた水素イオンと結びついて水となる酸素の還元反応が起こる。固体高分子電解質型燃料電池は、このような化学反応により得られた反応エネルギーから電気エネルギーを直接得るものである。
Figure 2006085929
触媒層中では、カーボン粒子のつながりが“電子伝導ネットワーク”、固体高分子電解質のつながりが“水素イオン伝導ネットワーク”、空孔のつながりが“ガス拡散ネットワーク”となって、電極触媒、固体高分子電解質、および反応ガスが存在する三相界面上で反応が起こることで発電がなされる。したがって、それぞれのネットワークが適切な構造で形成され、且つ燃料電池作動中もその構造が壊れていくことなく維持される、ということが極めて重要である。
上記を実現する手法として、例えば、特許文献1に、触媒層中に繊維状物質を添加し触媒層の結合強度を高める方法が記載されている。
また、特許文献2には、リン酸型燃料電池の触媒層中に直径が15μm以下、長さが3〜8mmのコイル形状をしたカーボン繊維を添加し内部抵抗を減少させる、という方法が記載されている。
特開2003−123769号公報 特開平4−334867号公報
上述の特許文献1の方法では直線状の繊維状物質を用いているが、直線状の繊維状物質を用いた場合には触媒層から突き出た繊維状物質が固体高分子電解質膜を貫通して、対をなす触媒層と接触することにより、マイクロショートが発生するおそれがある。マイクロショート発生箇所の増大に伴い触媒層間に直接流れる電流量も増大するので、電池の出力を低下させる危険がある。
また、上述の特許文献2の方法で用いているコイル状カーボン繊維は、電池出力の関係から一般的に100μm以下の厚みの触媒層を用いる固体高分子電解質型燃料電池に適用するには大き過ぎる。その結果、固体高分子電解質型燃料電池用の触媒層の形成が困難となる可能性がある。
本発明は、マイクロショートによる電池性能の低下が生じることを防ぐことができ、かつ、適切な構造で形成された“電子伝導ネットワーク”、“水素イオン伝導ネットワーク”および“ガス拡散ネットワーク”が燃料電池作動中でもその構造が壊れることなく維持される触媒層を有する燃料電池用MEAを提供することを目的とする。
本発明者等は、燃料電池用MEAを詳細に検討した結果、触媒層に繊維平均径が1nm〜1μm、コイル平均長またはツイスト平均長が5nm〜10μmのコイル形状をしたカーボン繊維を添加することにより、上記の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によるMEAは、触媒層の構造維持に優れ、かつ、マイクロショートを起こすおそれが少ない。
上述のMEAを備えることで、耐久性の向上した燃料電池を提供することができる。
本発明の第一は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟持する一対の触媒層とを含み、前記触媒層は、カーボン粒子に触媒が担持されてなる電極触媒と、固体高分子電解質と、コイル形状をしたカーボン繊維とを含むことを特徴とする燃料電池用MEAである。
触媒層にカーボン繊維を含むことにより、カーボン繊維が触媒層を形成する電極触媒、と固体高分子電解質との媒体となる。その結果、“電子伝導ネットワーク”、“水素イオン伝導ネットワーク”および“ガス拡散ネットワーク”が保持される。
触媒層に含まれるカーボン繊維がコイル状またはツイスト状であることから、カーボン繊維が固体高分子電解質膜へ突き刺さるおそれが少ない。その結果、カーボン繊維の固体高分子電解質膜への貫通に起因したマイクロショートを防止することができる。
また、カーボン繊維がコイル状またはツイスト状であると、電極触媒がカーボン繊維に絡み易く解離し難い。その結果、触媒層構造の維持に効果的であり、かつ電子伝道ネットワークの形成に有効である。
図を用いて本発明で用いられうる固体高分子電解質型燃料電池の構造について説明する。図1は、本発明の一実施の形態を例示した固体高分子電解質型燃料電池の断面概略図であり、本発明はこれに限定されない。図1において固体高分子型燃料電池100は、固体高分子電解質膜110の両側に、アノード側触媒層120aとカソード側触媒層120bとがそれぞれ対向して配置されてなるMEA140を有している。さらに、MEA140は、アノード側セパレーター150aおよびカソード側セパレーター150bで挟持されている。また、MEA140に供給される燃料ガスまたは酸化剤ガスは、アノード側セパレーター150aまたはカソード側セパレーター150bに設けられた燃料ガス供給溝151aまたは酸化剤ガス供給溝151bなどを介して供給される。
また、MEA140とアノード側セパレーター150aおよびカソード側セパレーター150bとの間には、アノード側ガス拡散層基材130aまたはカソード側ガス拡散層基材130bが配置されていてもよい。
さらに、MEA140とアノード側ガス拡散層基材130aまたはカソード側ガス拡散層基材130bとの間にアノード側カーボン粒子層121aまたはカソード側カーボン粒子層121bが配置されていてもよい。
[固体高分子電解質膜]
固体高分子電解質膜は、高いプロトン伝導性を有していればよい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SOH基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。例えば、化学式2に示すパーフルオロカーボンスルホン酸膜、エチレン−四フッ化エチレン共重合体膜、またはトリフルオロスチレンをベースポリマーとするフッ素含有樹脂膜などを好ましく用いることができる。
Figure 2006085929
化学式2において、kおよびmは整数、pは0〜3の整数、qは0または1、nは1〜12の整数、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
上述のパーフルオロカーボンスルホン酸のポリマーからなる膜の具体例として、デュポン株式会社製NAFIONTM、旭硝子株式会社製FLEMIONTM、旭化成ケミカルズ株式会社製ACIPLEXTM、およびザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製DOWEXTMなどが挙げられる。
固体高分子電解質膜の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。固体高分子電解質の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
[触媒層]
触媒層は、電極触媒、固体高分子電解質、およびコイル形状をしたカーボン繊維を含む。
触媒層に含まれる電極触媒は、触媒を担持したカーボン粒子からなる。
カーボン粒子に担持される触媒として、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、すず、アンチモン、テルル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛およびビスマスよりなる群から選択される1種、もしくは、この群から選択される少なくとも2種の合金を用いることができる。発電特性、耐久性、一酸化炭素などに対する耐被毒性および耐熱性などの点から、白金、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、白金−ニッケル合金、白金−モリブデン合金、または白金−ルテニウム合金が好ましい。
触媒の平均粒子径は1〜30nmが好ましい。平均粒子径が1nm以上であると比表面積に見合った触媒活性が得られる点から好ましく、30nm以下であると触媒活性の点から好ましい。本発明における触媒の平均粒子径は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径、または透過型電子顕微鏡像より得られる触媒粒子の粒子径の平均値を求めることにより得ることができる。
カーボン粒子は、触媒を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として機能する導電性を有しているものであればよい。カーボン粒子の材質として例えば、ケッチェンブラックTMまたはアセチレンブラックなどのカーボンブラック;活性炭;コークス;天然黒鉛または人造黒鉛などのグラファイト;メソカーボンマイクロビーズ;ガラス状炭素粉体;およびカーボンナノチューブなどの主成分がカーボンであるものが好ましい。
なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
カーボン粒子の平均一次粒子径は2nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5〜200nm、特に好ましくは10〜100nmである。平均一次粒子径が2nm以上であるとコイル形状をしたカーボン繊維と効果的に絡み合い有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましく、1μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
カーボン粒子への触媒の担持は公知の方法で行うことができる。
例えば、触媒金属を第一の溶媒に溶解して触媒金属水溶液を調製する。次に、カーボン粒子、触媒金属水溶液、および還元剤を第二の溶媒に加えた混合液を調製し、触媒金属を還元・析出させカーボン粒子に担持させることができる。次に、濾過により固形分を分離した後、固形分を乾燥することにより電極触媒を得ることができる。
触媒金属水溶液として、触媒として白金を用いる場合、塩化白金酸溶液またはジニトロジアミン白金錯体溶液などを用いることができる。還元剤として例えば、炭素数1〜6の有機酸類、アルコール類、炭素数1〜3のアルデヒド類、水酸化ホウ素ナトリウムおよびヒドラジンなどを用いることができる。炭素数1〜6の有機酸類としては特に限定されないが、ギ酸、酢酸、シュウ酸またはクエン酸などが挙げられる。アルコール類としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2−プロパノールまたは1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。炭素数1〜3のアルデヒド類としては特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはアクロレインなどを用いることができる。第二の溶媒として、水を用いることができる。
カーボン粒子に対する触媒の含有率は特に限定されないが、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。触媒の含有量が5質量%以上であると高い触媒活性を維持できる点で好ましく、80質量%以下であると高い耐久性を維持できる点で好ましい。触媒粒子の担持量は誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)により求めることができる。
触媒層に含まれる固体高分子電解質としては、上述の固体高分子電解質膜の項で記載した固体高分子電解質を好ましく用いることができる。
固体高分子電解質とカーボン粒子との質量比は、順番に、0.3:1〜1.3:1が好ましく、より好ましくは0.5:1〜1.1:1である。カーボン粒子質量に対して固体高分子電解質の質量比が0.3倍以上であると触媒層内の良好なイオン伝導性の点で好ましく、1.3倍以下であると触媒層内のガス拡散及び水の排出の点で好ましい。
本発明では、触媒層にコイル形状をしたカーボン繊維を含むが、コイル形状をしたカーボン繊維として、ツイスト状のものも含む。
触媒層に含まれるコイル形状をしたカーボン繊維の繊維平均径は1nm〜1μmが好ましく、より好ましくは3nm〜0.8μm、特に好ましくは5nm〜0.5μmである。繊維平均径が1nm以上であると強度の点から好ましく、1μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均長またはツイスト平均長は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは10nm〜8μm、特に好ましくは15nm〜5μmである。コイル平均長またはツイスト平均長が5nm以上であると有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましく、10μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均径は、1nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5nm〜0.8μm、特に好ましくは10nm〜0.5μmである。コイル平均径が1nm以上であると有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましく、1μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチは、1nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5nm〜0.8μm、特に好ましくは10nm〜0.5μmである。コイル平均ピッチが1nm以上1μm以下であると電極触媒とコイル形状をしたカーボン繊維とが効果的に絡み合って有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましい。
さらに、コイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチはカーボン粒子の平均一次粒子径に対して0.1〜50倍が好ましく、より好ましくは0.5〜30倍、特に好ましくは1〜10倍である。コイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチがカーボン粒子の平均一次粒子径に対して0.1〜50倍であると、電極触媒とコイル形状をしたカーボン繊維とが効果的に絡み合って有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましい。
コイル平均長、コイル平均径、コイル平均ピッチといった用語の定義については、財団法人日本規格協会の定める規格番号JIS B 0103 1996に基づく。
本発明では、ツイスト平均長はコイル平均長と同義であり、ツイスト平均ピッチはコイル平均ピッチと同義である。
コイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子との質量比は、順番に、0.01:1〜2:1が好ましく、より好ましくは0.03:1〜1.5:1、特に好ましくは0.05:1〜1:1である。カーボン粒子質量に対してコイル形状をしたカーボン繊維の質量比が、0.01倍以上2倍以下であると有効な導電性ネットワークの形成の点で好ましい。特に、コイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子との質量比が順番に0.1:1〜0.8:1の範囲内、にある場合には、長期間の運転による電圧低下を抑えることができる点で好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のラマン測定を行った際のラマンスペクトルから得られるGバンドの半値幅は70cm−1以下であることが好ましく、より好ましくは60cm−1以下、特に好ましくは55cm−1以下である。コイル形状をしたカーボン繊維のラマン測定を行った際のラマンスペクトルから得られるGバンドの半値幅が70cm−1以下であるとコイル形状をしたカーボン繊維の耐腐食性の点から好ましい。
上述の、化学式1に示される反応が進行している状況において、燃料が不足すると化学式3に示すカーボンの腐食が進行するといわれている。
Figure 2006085929
このような反応が進行すると、カーボンを消耗してしまうおそれがある。
上記Gバンドとは、炭素原子の6角格子内振動に由来するラマンピークであり、1580〜1590cm−1付近に出現する。Gバンドによりカーボンの結晶性を評価することができ、例えば、ピークの形状がシャープであるほど結晶性が高い。カーボン繊維は結晶性が高いほど上記反応が進行し難いため、腐食され難い。
本発明において、カーボン粒子のラマン測定は、公知のラマン分光測定装置を用いて測定されうる。ラマン分光測定装置は、Gバンドが一定の再現性をもって測定されうるのであれば、特に限定されない。ただし、ラマン分光測定装置によって、Gバンドの形状や位置が異なる場合には、表1に示す方法で測定されたラマンスペクトルが基準スペクトルとして用いられるものとする。
Figure 2006085929
半値幅とは、所定の吸収帯の分散状態を判断するために用いられる値であり、吸収帯のピークの高さの2分の1の高さにおける吸収帯の広がり幅のことをさす。
なお、Gバンド近辺に他の吸収帯が存在し、Gバンドと接合しているために半値幅スペクトルからは判断できない場合、ラマン分光測定装置に付随する解析プログラムによって半値幅が決定されうる。例えば、Gバンドのピークが含まれている領域に直線のベースラインを引き、ローレンツ波形のカーブフィットを実施し、Gバンドのピーク分離を行う処理によって、半値幅が決定されうる。
コイル形状をしたカーボン繊維は、アノード側触媒層およびカソード側触媒層の両方に含まれていてもよいし、いずれか一方に含まれていてもよい。
コイル形状をしたカーボン繊維としては、グラフェンシートからなるナノチューブで構成される、カーボンマイクロコイル、カーボンマイクロツイスト、カーボンナノコイルまたはカーボンナノツイストが好ましい。
カーボンマイクロコイル、カーボンマイクロツイスト、カーボンナノコイルまたはカーボンナノツイストは、一本のナノチューブからなってもよいし、二本以上のナノチューブからなってもよい。図2に二本のナノチューブ201からなるカーボンマイクツイスト200の概略図を例示するが、本発明は図2のカーボンマイクロコイルの形状に限定されない。複数のナノチューブからなるコイル形状をしたカーボン繊維の繊維平均径は、数平均で決定することができる。
本発明におけるカーボンマイクロコイル、カーボンナノツイスト、カーボンナノコイルおよびカーボンナノツイストの形成方法としては、表面科学 Vol.25 No.6 pp333−338 2004に記載の方法や、特開2003−213530号公報に記載の方法などの公知の方法を用いることができる。
例えば、触媒膜を積層した基板を石英管内中央付近に配置し、これを管状炉に入れる。次に、パージを行うために第一のガスを石英管内に流しながら、管状路の温度を室温から反応温度にまで上げる。昇温後に、第一のガスに第二のガスを加えて石英管内に流すことにより目的物が基板上に成長する。その後、加熱を止め、第二のガスを止めて第一のガスのみを流すようにし、冷却を行う。
上述の反応は大気圧下で行うことができる。触媒膜としては鉄;ニッケル;亜鉛;および、これらの酸化物であるFeO、NiO、ZnOなどを用いることができる。触媒膜の膜厚は2〜10nmが好ましい。基板としてはシリコン、銅、およびITO電極薄膜を塗布したガラス板などを用いることができる。パージを行う際の第一のガスとしてはヘリウムおよびアルゴンなどの不活性ガスを用いることができる。第二のガスとしてはエチレンガスおよびアセチレンガスなどの炭化水素ガスを用いることができる。第一のガスの流量は200〜230sccmが好ましい。反応温度は600〜700℃が好ましい。第二のガスの流量は30〜90sccmが好ましい。冷却時の第一のガスの流量は400sccmが好ましい。冷却時間は60〜70分が好ましい。
上述の反応条件を変えることにより、カーボンマイクロコイル、カーボンナノツイスト、カーボンナノコイルまたはカーボンナノツイストを作製することができ、また、これらのカーボン繊維の繊維平均径、コイル平均長またはツイスト平均長、コイル平均径、および、コイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチを調節することができる。
本発明における触媒層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
例えば、固体高分子電解質、電極触媒およびコイル形状をしたカーボン繊維を溶媒に混合して、電極触媒インクとして、基材上、ガス拡散層上または固体高分子電解質膜上にスクリーンプリンター、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどを用いて塗布し、乾燥させることにより形成できる。
電極触媒インクに用いられる液体分散媒としては、水;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール;またはこれらの混合溶媒などを好ましく用いることができる。基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)製シートなどを好ましく用いることができる。ガス拡散層に関しては、後述のガス拡散層基材、ガス拡散層におけるカーボン粒子層、およびガス拡散層におけるカーボン繊維層の項に記載する。乾燥は、室温〜使用溶媒の沸点+10℃程度、10〜300分、風乾もしくは乾燥用オーブン等の機器を用いて行うことが好ましい。乾燥用オーブン等の機器を用いるときは、減圧下で行ってもよい。
上述の電極触媒インクには、さらに、撥水性高分子や、その他の各種添加剤が含まれていてもよい。撥水性高分子が含まれていることにより、得られる触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子の混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。上述の撥水性高分子として例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、もしくはこれらのモノマーの共重合体などのフッ素系の高分子材料などを用いることができる。
基材上またはガス拡散層上に電極触媒インクを塗布して触媒層を形成した場合、例えば、ホットプレスにより触媒層と固体高分子電解質膜とを接合させることができる。基材上に触媒層を形成した場合、触媒層を形成した基材を2枚用いて、触媒層が対向するように固体高分子電解質膜を挟持してホットプレスした後、基材のみを剥がせばよい。ガス拡散層上に触媒層を形成した場合、触媒層を形成したガス拡散層を2枚用いて、触媒層が対向するように固体高分子電解質膜を挟持してホットプレスすればよい。
ホットプレスは、110〜170℃、触媒層側の面に対して0.1〜10MPaのプレス圧力で行うことが好ましい。上述の範囲でホットプレスを行うことにより、固体高分子電解質膜と触媒層との接合性を高めることができる。
本発明における触媒層の厚さは特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
本発明における触媒層では、触媒をコイル形状をしたカーボン繊維に担持させたものを電極触媒として用いてもよい。この場合、触媒層には、カーボン粒子または触媒を担持したカーボン粒子を含んでいてもよい。
触媒を担持させるためのコイル形状をしたカーボン繊維の好ましい条件は、上述の触媒層の項に記載した、触媒層に含まれるコイル形状をしたカーボン繊維と同様である。
カーボン粒子を含む場合、コイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子との質量比は、順番に、1:0.01〜1:0.3が好ましい。コイル形状をしたカーボン繊維に対してカーボン粒子の質量比が0.01倍以上0.3倍以下であると有効な導電性ネットワークの形成の点で好ましい。
[ガス拡散層基材]
本発明の燃料電池において、MEAの少なくとも片面にガス拡散層を配置してもよい。
ガス拡散層を配置することにより、ガス供給溝から供給されたガスがガス拡散層に拡散する。その結果、触媒層中にガスを均一に供給することができる。
本発明で用いられるガス拡散層基材としては特に限定されず、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料などが挙げられる。
また、ガス拡散層の撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐために、ガス拡散層基材に撥水性高分子を含むことが好ましい。撥水性高分子としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、PVDF、ポリヘキサフルオロプロピレン、もしくはこれらのモノマーの共重合体などのフッ素系の高分子材料よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
フラッディングとは、触媒層中の細孔などのガス拡散流路に水が溜まりガスの拡散を阻害する現象である。
本発明におけるガス拡散層基材の撥水処理方法としては、公知の方法を用いることができる。
例えば、撥水性高分子の分散液にガス拡散層基材を含浸した後、ガス拡散層基材を加熱乾燥することにより撥水処理できる。
撥水性高分子およびガス拡散層基材としては、上述のものを用いることが好ましい。ガス拡散層基材としては、上述の材料を用いることが好ましい。加熱乾燥は、50〜150℃、10分〜5時間、オーブンを用いて行うことが好ましい。
本発明におけるガス拡散層基材の厚みは特に限定されないが、50〜500μmが好ましく、より好ましくは100〜400μmである。ガス拡散層基材の厚みが50μm以上であるとガスの拡散性の点で好ましく、500μm以下であると電気的抵抗低減の点で好ましい。
[ガス拡散層におけるカーボン粒子層]
ガス拡散層には、撥水性高分子を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層をガス拡散層基材上に積層することが好ましい。撥水性高分子を含むカーボン粒子層を積層することにより、撥水性をより向上させることができる。
撥水剤性高分子としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、PVDF、ポリヘキサフルオロプロピレン、もしくはこれらのモノマーの共重合体などのフッ素系の高分子材料よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられる。
カーボン粒子の粒子径は、10〜100nmが好ましい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水性高分子としては、上述の基材に用いられる撥水性高分子と同様のものを用いることができる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水性高分子との質量比は、順番に、1:0.1〜1:2.0が好ましく、より好ましくは1:0.2〜1:1.8、特に好ましくは1:0.3〜1:1.5である。カーボン粒子に対して撥水性高分子の質量比が0.1倍以上であると撥水性の点で好ましく、2.0倍以下であると導電性の点で好ましい。
図1に示すように、カーボン粒子層を積層したガス拡散層の配置は、ガス拡散層基材、カーボン粒子層および触媒層の順番となるように、カーボン粒子層を積層したガス拡散層をMEAの少なくとも片面に配置することが好ましく、より好ましくは両面である。
本発明におけるカーボン粒子層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、カーボン粒子と撥水性高分子とを液体分散媒に分散させ、スラリーを作製する。次に、スラリーをガス拡散層上に塗布し、乾燥させて熱処理してもよい。
液体分散媒としては、水もしくは水に界面活性剤等の分散剤を添加したもの;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類;またはこれらの混合液体を好ましく用いることができる。撥水性高分子としては上述のものを用いることができる。乾燥は、60〜120℃で10分〜3時間、乾燥用オーブン等の機器を用いて行うことが好ましい。その後の熱処理は300〜400℃で10分〜2時間、マッフル炉や焼成炉を用いて行うことが好ましい。
また、他の方法として、上述のスラリーを乾燥させた後に粉砕することで粉体にし、粉体を乾燥状態でガス拡散層上に配置し、熱処理を行ってもよい。この場合、熱処理は、300〜400℃で10分〜2時間、マッフル炉や焼成炉を用いて行うことが好ましい。
本発明におけるカーボン粒子層の厚みは、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜70μmである。カーボン粒子層の膜厚が10μm以上であると水の排出性の点で好ましく、100μm以下であると電気的抵抗低減の点で好ましい。
[ガス拡散層におけるコイル形状をしたカーボン繊維含有層]
ガス拡散層にはカーボン粒子層の代わりに、撥水性高分子を含むコイル形状をしたカーボン繊維含有層を基材上に積層してもよい。MEAに隣接するようにコイル形状をしたカーボン繊維含有層を積層することにより、ガス拡散層と触媒層との接触が安定する。さらに、カーボン繊維がコイル状またはツイスト状をしていることから、適切な空孔を維持することができ、ガス拡散性、水の拡散性および導電性をより向上させることができる。
撥水性高分子としては、上述のカーボン粒子層の項に記載したものを用いることができる。
コイル形状をしたカーボン繊維含有層に含有するコイル形状をしたカーボン繊維の繊維平均径は1nm〜1μmが好ましく、より好ましくは3nm〜0.8μm、特に好ましくは5nm〜0.5μmである。繊維平均径が1nm以上であると強度の点から好ましく、1μm以下であるとコイル形状をしたカーボン繊維含有層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均長またはツイスト平均長は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは10nm〜8μm、特に好ましくは15nm〜5μmである。コイル平均長またはツイスト平均長が5nm以上であるとガス拡散性または水の拡散性に効果的な空孔構造を形成できる点から好ましく、10μm以下であるとコイル形状をしたカーボン繊維含有層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均径は、1nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5nm〜0.8μm、特に好ましくは10nm〜0.5μmである。コイル平均径が1nm以上であるとガス拡散性または水の拡散性に効果的な空孔構造を形成できるという点から好ましく、1μm以下であるとコイル形状をしたカーボン繊維含有層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチは、1nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5nm〜0.8μm、特に好ましくは10nm〜0.5μmである。コイル平均ピッチが1nm以上1μm以下であるとガス拡散性または水の拡散性に効果的な空孔構造を形成できるという点から好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維含有層にはカーボン粒子を含んでいてもよい。カーボン粒子の好ましい条件は、上述のカーボン粒子層の項に記載したカーボン粒子と同様である。
コイル形状をしたカーボン繊維含有層にカーボン粒子を含む場合、コイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチはカーボン粒子の平均一次粒子径に対して0.1〜50倍が好ましく、より好ましくは0.5〜30倍、特に好ましくは1〜10倍である。コイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチがカーボン粒子の平均一次粒子径に対して0.1〜50倍であると、カーボン粒子とコイル形状をしたカーボン繊維とが効果的に絡み合って有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましい。
カーボン繊維層にカーボン粒子を含む場合、コイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子との質量比は、順番に、1:0.01〜1:99が好ましく、より好ましくは1:0.05〜1:90、特に好ましくは1:0.1〜80である。コイル形状をしたカーボン繊維に対してカーボン粒子の質量比が0.01倍以上99倍以下であるとコイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子が効果的に絡み合い優れた導電性を発現し、ガス及び水の拡散に効果的な空孔構造を形成するという点で好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維含有層におけるコイル形状をしたカーボン繊維の質量、もしくはコイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子を合わせた質量と撥水性高分子との質量比は、順番に、1:0.1〜1:2.0が好ましく、より好ましくは1:0.2〜1:1.8、特に好ましくは1:0.3〜1:1.5である。コイル形状をしたカーボン繊維の質量、もしくはコイル形状をしたカーボン繊維とカーボン粒子を合わせた質量に対して撥水性高分子の質量比が0.1倍以上であると撥水性の点で好ましく、2.0倍以下であると導電性の点で好ましい。
コイル形状をしたカーボン繊維含有層は、MEAの少なくとも片面に配置することが好ましく、より好ましくは両面である。片面に設けた場合、一方の面にカーボン粒子層を配置してもよい。また、コイル形状をしたカーボン繊維含有層と上述のカーボン粒子層が同時に積層されていてもよく、この場合、ガス拡散層基材、コイル形状をしたカーボン繊維含有層、カーボン粒子層および触媒層の順番、もしくは、ガス拡散層基材、カーボン粒子層、コイル形状をしたカーボン繊維含有層および触媒層の順番となるように、コイル形状をしたカーボン繊維含有層とカーボン粒子層を積層したガス拡散層をMEAの両面もしくは片面に配置することが望ましい。
本発明におけるコイル形状をしたカーボン繊維含有層の形成方法としては、例えば、コイル形状をしたカーボン繊維と撥水性高分子とを液体分散媒に分散させ、スラリーを作製する。次に、スラリーをガス拡散層上に塗布し、乾燥させてもよい。
液体分散媒としては、水もしくは水に界面活性剤等の分散剤を添加したもの;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類;またはこれらの混合液体を好ましく用いることができる。撥水性高分子としては上述のものを用いることができる。乾燥は、60〜120℃で10分〜3時間、乾燥用オーブン等の機器を用いて行うことが好ましい。その後の熱処理は300〜400℃で10分〜2時間、マッフル炉や焼成炉を用いて行うことが好ましい。
また、他の方法として、上述のスラリーを乾燥させた後に粉砕することで粉体にし、粉体を乾燥状態でガス拡散層上に配置し、熱処理を行ってもよい。この場合、熱処理は、300〜400℃で10分〜2時間、マッフル炉や焼成炉を用いて行うことが好ましい。
本発明におけるカーボン繊維層の厚みは、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜70μmである。カーボン粒子層の膜厚が10μm以上であると水の排出性の点で好ましく、100μm以下であると電気的抵抗低減の点で好ましい。
[燃料電池の構造]
燃料電池の構造としては特に限定されず、公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAまたは少なくとも片面にガス拡散層を備えたMEAを、セパレーターで挟持した構造を有する。MEAを挟持するセパレーターとしてはとくに限定されず、公知のものを用いることができる。セパレーターは、酸化ガスと燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するためのガス供給溝が形成されてもよい。セパレーターの厚さ、大きさ、およびガス供給溝の形状などについては、特に限定されず、燃料電池の出力特性などを考慮して、適宜決定すればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレーターを介して、MEAまたは少なくとも片面にガス拡散層を備えたMEAを、複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
<実施例1>
(1)MEAの作製:
(1−1)電極触媒インクの調整
カーボン粒子(ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製ケッチェンブラックTMEC;平均一次粒子径30nm)に、触媒として白金を担持させた電極触媒(白金含有率46質量%)5gと、コイル形状をしたカーボン繊維(繊維平均径100nm、コイル平均長1μm、コイル平均径250nm、コイル平均ピッチ250nm、Gバンド半値幅66cm−1)0.27g(触媒担持カーボンにおけるカーボン粒子質量1に対して0.1)と、固体高分子電解質分散液(デュポン株式会社製NAFIONTM DE−520;電解質含量5質量%)49.5gと、純水12.5gと、2−プロパノール(和光純薬工業社製特級試薬)5gとを、25℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にて、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散することで、電極触媒インクとした。
(1−2)触媒層の形成
厚さ200μmのPTFE製シート(ニチアス株式会社製ナフロンTMシート)の片面上に、スクリーンプリンターを用いて先に調製した電極触媒インクを塗布し、室温で30分間乾燥し、得られた薄膜を一辺5cmの正方形に切り出し、アノード及びカソード側触媒層とした。
(1−3)MEA化
一辺8cmの正方形で厚さ25μmの固体高分子電解質膜(デュポン株式会社製NAFIONTM NR−111)の両側に、先に作製したアノード及びカソード側触媒層を対向するように配置し、片側PTFE製シート面積あたり2.5MPaの圧力で、130℃、10分間ホットプレスし、冷却後PTFE製シートのみを剥がすことで、固体高分子電解質膜に触媒層を転写させMEAとした。転写後の電解質膜上の触媒層面積1cmあたりの白金重量は、アノード側、カソード側とも0.40mgであった。
(2)ガス拡散層の作製
(2−1)カーボンペーパーの撥水処理
厚さ270μmのカーボンペーパー(東レ株式会社製TGP−H−090)を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(ダイキン工業株式会社製ポリフロンTMD−1E、60質量%)に浸漬後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させることにより、カーボンペーパー中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は25質量%であった。
(2−2)カーボン粒子層の形成
カーボン粒子としてVULCANTM XC−72R(キャボット株式会社製)5.4gと、PTFE分散液(ダイキン工業株式会社製ポリフロンTMD−1E、60質量%)1.0gと、水29.6gとを混合し、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散し、スラリー化した。このスラリーを先に撥水処理化したカーボンペーパーの片面上にバーコーターを用いて塗布後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させ、さらにマッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行い、カーボン粒子層を積層したガス拡散層を得た。その結果、カーボンペーパー1cmあたりの形成された層の質量は3.0mgであった。この後、カーボン粒子層を積層したガス拡散層を一辺5.5cm×6cmの長方形に切り出した。
(3)評価用単セル組み立て
カーボン粒子層を積層したガス拡散層を2枚用いて、カーボン粒子層が内側となるように対向させ、カーボン粒子層を積層したガス拡散層同士の間にMEAを配置した。次に、これをグラファイト製セパレーターで挟持し、さらに金メッキしたステンレス製集電板で挟持し、評価用単セルとした。
(4)単セルの評価
単セル温度70℃、アノード加湿温度59℃、カソード加湿温度59℃に設定し、常圧でアノード側から水素、カソード側から空気を供給することで発電を行った。この条件で、電流密度1.1A/cmで連続発電し、耐久性を評価した。なお、発電前にマイクロショートの程度を判断するために、開放電圧を測定した。
(5)評価
開放電圧0.971V、発電開始時電圧0.559V、240時間連続運転後電圧0.460Vであり、電圧維持率は82.3%であった。
<実施例2>
実施例1の電極触媒インクの調製において、コイル形状をしたカーボン繊維を1.35g(触媒担持カーボンにおけるカーボン粒子質量1に対して0.5)、固体高分子電解質分散液(デュポン株式会社製NAFIONTM DE−520;電解質含量5質量%)67.5g、とした以外は、実施例1と同様にした。
評価結果は、開放電圧0.980V、発電開始時電圧0.548V、240時間連続運転後電圧0.452Vであり、電圧維持率は82.5%であった。
<実施例3>
実施例1の電極触媒インクの調製において、コイル形状をしたカーボン繊維を2.16g(触媒担持カーボンにおけるカーボン粒子質量1に対して0.8)、固体高分子電解質分散液(デュポン株式会社製NAFIONTM DE−520;電解質含量5質量%)81.0g、とした以外は、実施例1と同様にした。
評価結果は、開放電圧0.972V、発電開始時電圧0.555V、240時間連続運転後電圧0.455Vであり、電圧維持率は82.0%であった。
<実施例4>
実施例1の電極触媒インク調製において、コイル形状をしたカーボン繊維を2.70g(触媒担持カーボンにおけるカーボン粒子質量1に対して1.0)、固体高分子電解質分散液(デュポン株式会社製NAFIONTM DE−520;電解質含量5質量%)90g、とした以外は、実施例1と同様にした。
評価結果は、開放電圧0.973V、発電開始時電圧0.542V、240時間連続運転後電圧0.437Vであり、電圧維持率は80.6%であった。
実施例1の電極触媒インク調製において、コイル形状をしたカーボン繊維の代わりに直線状カーボン繊維(繊維平均径200nm、繊維平均長15μm)を0.27g(触媒担持カーボンにおけるカーボン粒子質量1に対して0.1)、固体高分子電解質分散液(デュポン株式会社製NAFIONTM DE−520;電解質含量5質量%)49.5g、とした以外は、実施例1と同様にした。
評価結果は、開放電圧0.932V、発電開始時電圧0.529V、240時間連続運転後電圧0.412Vであり、電圧維持率は77.9%であった。
<比較例2>
実施例1の電極触媒インク調製において、コイル形状をしたカーボン繊維を添加せず、固体高分子電解質分散液(デュポン株式会社製NAFIONTM DE−520;電解質含量5質量%)45gとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
評価結果は、開放電圧0.970V、発電開始時電圧0.555V、240時間連続運転後電圧0.442Vであり、電圧維持率は79.6%であった。
実施例1〜3および比較例1〜2の結果をまとめたものを表2に示す。
Figure 2006085929
固体高分子電解質型燃料電池の断面概略図である。 二本のナノチューブからなるカーボンナノコイルの概略図である。
符号の説明
固体高分子型燃料電池 100、
固体高分子電解質膜 110、
アノード側触媒層 120a、
カソード側触媒層 120b、
アノード側カーボン粒子層 121a、
カソード側カーボン粒子層 121b、
アノード側ガス拡散層基材 130a、
カソード側ガス拡散層基材 130b、
MEA 140、
アノード側セパレーター 150a、
カソード側セパレーター 150b、
燃料ガス供給溝 151a、
酸化剤ガス供給溝 151b、
カーボンナノツイスト 200、
ナノチューブ 201。

Claims (7)

  1. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟持する一対の触媒層とを含み、
    前記触媒層は、カーボン粒子に触媒が担持されてなる電極触媒と、固体高分子電解質と、コイル形状をしたカーボン繊維とを含み、
    前記コイル形状をしたカーボン繊維は、繊維平均径が1nm〜1μm、コイル平均ピッチまたはツイスト平均ピッチが1nm〜1μm、コイル平均長またはツイスト平均長が5nm〜10μmであることを特徴とする燃料電池用MEA。
  2. 前記コイル形状をしたカーボン繊維のコイル平均径が1nm〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用MEA。
  3. 前記コイル平均ピッチまたは前記ツイスト平均ピッチは、前記カーボン粒子の平均一次粒子径の0.1倍以上50倍以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用MEA。
  4. 前記カーボン粒子の平均一次粒子径が2nm〜1μmである、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用MEA。
  5. 前記コイル形状をしたカーボン繊維と前記カーボン粒子との質量比は、順番に0.01:1〜2:1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用MEA。
  6. 前記コイル形状をしたカーボン繊維は、ラマンスペクトルから得られたGバンド半値幅が70cm−1以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用MEA。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のMEAを用いたことを特徴とする燃料電池。
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