JP2006073687A - 投影光学系、投影光学系の製造方法、露光装置、および露光方法 - Google Patents

投影光学系、投影光学系の製造方法、露光装置、および露光方法 Download PDF

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雅彦 新海
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Abstract

【課題】 たとえば石英により形成されたレンズが比較的大きな光エネルギーの照射を受けても、コンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持することのできる投影光学系。
【解決手段】 第1面(R)の像を第2面(W)上に形成する投影光学系(PL)。投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギの照射を受けた後に形状加工されている。また、その光透過部材は、光エネルギの照射を受けた後に、アニール処理を経て形状加工されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、投影光学系、投影光学系の製造方法、露光装置、および露光方法に関し、特に半導体素子や液晶表示素子などをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な投影光学系に関するものである。
半導体素子等を製造するためのフォトリソグラフィ工程において、マスク(またはレチクル)のパターン像を、投影光学系を介して、フォトレジスト等が塗布されたウェハ(またはガラスプレート等)上に露光する露光装置が使用されている。露光装置では、半導体素子等の集積度が向上するにつれて、投影光学系に要求される解像力(解像度)が益々高まっている。
そこで、投影光学系の解像力に対する要求を満足するために、照明光(露光光)の波長λを短くするとともに、投影光学系の像側開口数NAを大きくする必要がある。具体的には、投影光学系の解像度は、k・λ/NA(kはプロセス係数)で表される。また、像側開口数NAは、投影光学系と感光性基板(ウェハなど)との間の媒質(通常は空気などの気体)の屈折率をnとし、感光性基板への最大入射角をθとすると、n・sinθで表される。
この場合、最大入射角θを大きくすることにより像側開口数の増大を図ろうとすると、感光性基板への入射角および投影光学系からの射出角が大きくなり、光学面での反射損失が増大して、実効的な像側開口数を大きく確保することはできない。そこで、投影光学系と感光性基板との間の光路中に屈折率の高い液体のような媒質を満たすことにより像側開口数の増大を図る技術が知られている。
この種の投影光学系において、照射される単位面積当りの光エネルギーは、最も像側に配置されて液体に接する境界レンズで比較的大きくなる。その結果、光エネルギーの比較的大きい位置に配置された境界レンズを石英により形成すると、体積収縮による局所的屈折率変化すなわちコンパクションが起こり易く、コンパクションの影響により投影光学系の結像性能が低下する可能性がある。
そこで、コンパクションによる投影光学系の結像性能の低下を回避するために、極紫外域の光に対しても十分に大きな透過率を有するフッ化物材料、とりわけ均質性に優れた材料が開発されている蛍石を用いて境界レンズを形成することが考えられる。しかしながら、フッ化物は水に溶ける性質があることがわかっており、たとえば蛍石を用いて境界レンズを形成し且つ浸液として純水を用いると、境界レンズの光学面が純水(浸液)の影響を受けて損傷し易く、ひいては投影光学系の結像性能を長期間に亘って良好に維持することができない。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、たとえば石英により形成されたレンズが比較的大きな光エネルギーの照射を受けても、コンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持することのできる投影光学系およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、コンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持可能な投影光学系を用いて、高解像な投影露光を長期間に亘って安定的に行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギの照射を受けた後に形状加工されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
本発明の第2形態では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの石英により形成された少なくとも1つの光透過部材は、当該光透過部材の像側の光学面の有効径をDeとし、当該光透過部材の外径をDoとするとき、
1.4<Do/De<6
の条件を満足することを特徴とする記載の投影光学系を提供する。
本発明の第3形態では、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材に対して、当該光透過部材の実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギを照射する光照射工程と、
前記光照射工程の後に当該光透過部材を所要の形状に加工する加工工程と、
前記所要の形状に加工された当該光透過部材を前記投影光学系に組み込む組込み工程とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
本発明の第4形態では、前記第1面に設定されたマスクを照明するための照明系と、前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に形成するための第1形態または第2形態の投影光学系または第3形態の製造方法により製造された投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第5形態では、前記第1面に設定されたマスクを照明する照明工程と、第1形態または第2形態の投影光学系または第3形態の製造方法により製造された投影光学系を介して前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に投影露光する露光工程とを含むことを特徴とする露光方法を提供する。
本発明の投影光学系では、たとえば石英により形成されて実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きい光透過部材の形状加工に先立って、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギを予め照射している。その結果、当該光透過部材の実使用の当初からコンパクションによる屈折率の変化が小さく抑えられるので、実使用時に比較的大きな光エネルギーの照射を受けても、コンパクションの影響が小さく抑えられ、ひいては投影光学系の結像性能が長期間に亘って良好に維持される。
こうして、本発明では、コンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持することのできる投影光学系を実現することができる。また、本発明の露光装置および露光方法では、コンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持可能な投影光学系を用いているので、高解像な投影露光を長期間に亘って安定的に行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1では、X軸およびY軸がウェハWに対して平行な方向に設定され、Z軸がウェハWに対して直交する方向に設定されている。さらに具体的には、XY平面が水平面に平行に設定され、+Z軸が鉛直方向に沿って上向きに設定されている。
本実施形態の露光装置は、図1に示すように、たとえば露光光源であるArFエキシマレーザ光源を含み、オプティカル・インテグレータ(ホモジナイザー)、視野絞り、コンデンサレンズ等から構成される照明光学系1を備えている。光源から射出された波長193nmの紫外パルス光からなる露光光(露光ビーム)ILは、照明光学系1を通過し、レチクル(マスク)Rに設けられたパターンを照明する。
レチクルRを通過した光は、投影光学系PLを介して、フォトレジストが塗布されたウェハ(感光性基板)W上の露光領域に所定の縮小投影倍率でレチクルパターンを形成する。レチクルRはレチクルステージRST上においてXY平面に平行に保持され、レチクルステージRSTにはレチクルRをX方向、Y方向および回転方向に微動させる機構が組み込まれている。レチクルステージRSTは、レチクルレーザ干渉計(不図示)によってX方向、Y方向および回転方向の位置がリアルタイムに計測され、且つ制御される。
ウェハWは、ウェハホルダ(不図示)を介してZステージ9上においてXY平面に平行に固定されている。また、Zステージ9は、投影光学系PLの像面と実質的に平行なXY平面に沿って移動するXYステージ10上に固定されており、ウェハWのフォーカス位置(Z方向の位置)および傾斜角を制御する。Zステージ9は、Zステージ9上に設けられた移動鏡12を用いるウェハレーザ干渉計13によってX方向、Y方向および回転方向の位置がリアルタイムに計測され、且つ制御される。
また、XYステージ10は、ベース11上に載置されており、ウェハWのX方向、Y方向および回転方向を制御する。一方、本実施形態の露光装置に設けられた主制御系14は、レチクルレーザ干渉計により計測された計測値に基づいてレチクルRのX方向、Y方向および回転方向の位置の調整を行う。即ち、主制御系14は、レチクルステージRSTに組み込まれている機構に制御信号を送信し、レチクルステージRSTを微動させることによりレチクルRの位置調整を行う。
また、主制御系14は、オートフォーカス方式及びオートレベリング方式によりウェハW上の表面を投影光学系PLの像面に合わせ込むため、ウェハWのフォーカス位置(Z方向の位置)および傾斜角の調整を行う。即ち、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15によりZステージ9を駆動させることによりウェハWのフォーカス位置および傾斜角の調整を行う。更に、主制御系14は、ウェハレーザ干渉計13により計測された計測値に基づいてウェハWのX方向、Y方向および回転方向の位置の調整を行う。即ち、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15によりXYステージ10を駆動させることによりウェハWのX方向、Y方向および回転方向の位置調整を行う。
露光時には、主制御系14は、レチクルステージRSTに組み込まれている機構に制御信号を送信すると共に、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、投影光学系PLの投影倍率に応じた速度比でレチクルステージRSTおよびXYステージ10を駆動させつつ、レチクルRのパターン像をウェハW上の所定のショット領域内に投影露光する。その後、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15によりXYステージ10を駆動させることによりウェハW上の別のショット領域を露光位置にステップ移動させる。このように、ステップ・アンド・スキャン方式によりレチクルRのパターン像をウェハW上に走査露光する動作を繰り返す。
本実施形態の露光装置は、露光波長を実質的に短くし、且つ解像度を向上させるために液浸型の露光装置に交換可能に構成されている。ここで、液浸型の露光装置に交換した場合には、図1に示すように、ウェハWの表面と投影光学系PLとの間に所定の媒質(液体)7が満たされる。また、合成石英または蛍石により形成された複数の光学素子を収納する鏡筒3を備える投影光学系PL中の光学素子の調整が行われる。
即ち、乾燥型の投影光学系PLから液浸型の投影光学系PLに調整される。ここで、投影光学系PLを構成する光学素子の調整では、投影光学系PLを構成する光学素子の厚さ等の調整が行われる。投影光学系PLにおいて、最もウェハW側に位置する光学素子(境界レンズ)4のレチクルR側の面は、正の屈折力を有するように構成されている。なお、液体7としては、半導体製造工場等で容易に大量に入手できる純水(脱イオン水)が使用されている。
本実施形態の露光装置では、必要に応じて投影光学系PLとウェハWとの間に気体を介在させる乾燥型の露光装置と、投影光学系PLとウェハWとの間に液体を介在させる液浸型の露光装置とを切り換えて使い分けることができる。従って、液浸型の投影光学系PLに切り換えた場合には、レチクルRのパターンが微細であってもレチクルRのパターンを高い解像度でウェハW上に良好に露光することができる。また、乾燥型の投影光学系PLに切り換えた場合には、レチクルRのパターンをウェハW上に高いスループットで良好に露光することができる。
また、投影光学系PLの最もウェハW側に配置されている光学素子4とウェハWとの間に屈折率が1.1以上の液体7を介在させた状態で露光を行う場合においても、光学素子4とウェハWとの間に気体を介在させた状態で露光を行う場合とほぼ同一の光学特性を維持することができ、レチクルRのパターンをウェハW上に良好に露光することができる。なお、本実施形態においては、媒質7として純水を用いているが、露光光に対して屈折率が1.1よりも大きい他の媒質を使用することも可能である。この場合、液体としては、露光光に対する透過性が高く且つ屈折率ができるだけ高く、投影光学系PLやウェハWの表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なものを用いるとよい。
なお、投影光学系PLの境界レンズ4とウェハWとの間の光路中に液体(媒質)7を満たし続けるには、たとえば国際公開番号WO99/49504号公報に開示された技術や、特開平10−303114号公報に開示された技術などを用いることができる。国際公開番号WO99/49504号公報に開示された技術では、液体供給装置から供給管および排出ノズルを介して所定の温度に調整された液体を境界レンズ4とウェハWとの間の光路を満たすように供給し、液体供給装置により回収管および流入ノズルを介してウェハW上から液体を回収する。
一方、特開平10−303114号公報に開示された技術では、液体を収容することができるようにウェハホルダテーブルを容器状に構成し、その内底部の中央において(液体中において)ウェハWを真空吸着により位置決め保持する。また、投影光学系PLの鏡筒先端部が液体中に達し、ひいては境界レンズ4のウェハW側の光学面が液体中に達するように構成する。
前述したように、液浸型の投影光学系PLにおいて浸液としての純水に接する境界レンズ4を蛍石により形成すると、境界レンズ4の光学面が純水の影響を受けて損傷し易く、ひいては投影光学系PLの結像性能を長期間に亘って良好に維持することができない。一方、乾燥型または液浸型の投影光学系PLにおいて、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きくなる可能性の高い境界レンズ4を石英により形成すると、体積収縮による局所的屈折率変化すなわちコンパクションが起こり易く、コンパクションの影響により投影光学系PLの結像性能が低下する可能性がある。
すなわち、石英により形成された光透過部材(レンズ、平行平面板など)に照射される光のエネルギ密度が高い場合、コンパクションにより体積収縮および屈折率上昇が発生して結像性能の低下の原因になる。一例として、石英により形成された光透過部材にArFエキシマレーザ光が照射されるときの積算光エネルギとコンパクション量との関係を図2に示す。図2において、縦軸はコンパクションによる屈折率変化率(微分量)であり、横軸は照射積算光エネルギEの生涯積算光エネルギEoに対する比率E/Eoである。
ここで、照射積算光エネルギEは光透過部材が実際に照射を受けた光エネルギの積算量であり、生涯積算光エネルギEoは当該光透過部材がその生涯期間(ひいては露光装置の生涯期間)に亘って照射を受ける光エネルギの積算量である。図2を参照すると、エネルギ比率E/Eoが例えば0.1に達するとコンパクションによる屈折率の変化率が初期値から急激に小さくなり、エネルギ比率E/Eoが例えば0.2に達するとコンパクションによる屈折率の変化率がほとんど一定になることがわかる。
そこで、本実施形態では、液浸型の投影光学系PLを構成する複数の光透過部材のうち、石英により形成されて実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きい境界レンズ4の形状加工に先立って、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギを予め照射している。具体的には、投影光学系PLの製造に際して、境界レンズ4の製造のためのディスク材に、境界レンズ4の実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギを所定時間だけ照射する(光照射工程)。
図2を参照すると、光照射工程では、境界レンズ4の実使用の当初からコンパクションによる屈折率の変化を小さく抑えるために、たとえばArFエキシマレーザ光を用いて、次の条件式(1)を満足する加工前積算光エネルギEiを境界レンズ4の製造のためのディスク材に照射することが好ましい。ここで、加工前積算光エネルギEiとは、境界レンズ4が形状加工前に照射を受ける光エネルギの積算量である。
0.1≦Ei/Eo (1)
たとえば、境界レンズ4の生産性(ひいては投影光学系PLの生産性)を重視する場合、生涯積算光エネルギと関係なく、加工前積算光エネルギEi≧1.1×108mJ/cm2とすると、コンパクションによる屈折率変化率を2.2ppb(2.2×10-9)以下に抑えることができる。なお、境界レンズ4の実使用の当初からコンパクションによる屈折率の変化をさらに小さく抑えるには、条件式(1)の下限値を0.2に設定することがさらに好ましい。
たとえば、境界レンズ4の耐久性(ひいては投影光学系PLの耐久性)を重視する場合、生涯積算光エネルギと関係なく、加工前積算光エネルギEi≧5.3×108mJ/cm2とすると、コンパクションによる屈折率変化率を1.0ppb(1.0×10-9)以下に抑えることができる。次いで、投影光学系PLの製造方法では、光照射工程の後に、境界レンズ4の製造のためのディスク材を所要の形状に加工して境界レンズ4を製造する(加工工程)。さらに、所要の形状に加工された境界レンズ4を他の光学素子とともに投影光学系PLに組み込む(組込み工程)。
以上のように、本実施形態では、たとえばArFエキシマレーザ光を用いて、条件式(1)を満足する加工前積算光エネルギEiを境界レンズ4の製造のためのディスク材に照射している。その結果、境界レンズ4の実使用の当初からコンパクションによる屈折率の変化が小さく抑えられるので、実使用時に比較的大きな光エネルギーの照射を受けても、コンパクションの影響が小さく抑えられ、ひいては液浸型の投影光学系PLの結像性能が長期間に亘って良好に維持される。
こうして、本実施形態では、像面との間の光路中に液体7を介在させて大きな実効的な像側開口数を確保しつつ、コンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持することのできる液浸型の投影光学系PLを実現することができる。また、本実施形態の露光装置では、大きな実効的な像側開口数を確保しつつコンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持可能な液浸型の投影光学系PLを用いているので、高解像な投影露光を長期間に亘って安定的に行うことができる。
なお、上述の例では、液浸型の投影光学系PLに本発明を適用した場合について説明しているが、乾燥型の投影光学系PLに対しても同様に本発明を適用することができる。すなわち、一般的には、投影光学系を構成する複数の光透過部材のうち、たとえば石英により形成された少なくとも1つの光透過部材の形状加工に先立って、その実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギを照射することにより、当該光透過部材の実使用の当初からコンパクションによる屈折率の変化を小さく抑えることができる。
この場合、投影光学系全体としてコンパクションの影響を抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持することができるように、たとえば実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きい光透過部材を含む所要の複数の光透過部材に対して加工前の光照射を行うことが好ましい。ちなみに、投影光学系が縮小倍率を有する場合、最も像側に配置された光透過部材に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きくなる可能性が高い。逆に、投影光学系が拡大倍率を有する場合、最も物体側に配置された光透過部材に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きくなる可能性が高い。
なお、光透過部材の形状加工に先立って上述の光照射処理を行うと、当該光透過部材のコンパクションによる屈折率の変化を小さく抑えることが可能になるが、光照射処理により当該光透過部材の透過率が低下する恐れがある。この場合、光照射工程の後に、アニール処理を経て当該光透過部材の形状加工を行うことが好ましい。当該光透過部材の加工工程の前にアニール処理を行うことにより、コンパクションに関する本発明の効果を実質的に損なうことなく、光照射処理により低下した透過率を元の透過率までほぼ復元することができる。
なお、アニール処理の最高温度としては80度以上であることが好ましい。また、光透過部材の透過率を向上させるには、150度以上であることが好ましい。さらに光透過部材の透過率を向上させるには250度以上が好ましい。また、アニール処理によってコンパクションによる屈折率の変化が増大することを防ぐために、アニール処理の最高温度の上限を300度以下に設定することが好ましい。そして、コンパクションによる屈折率の変化をさらに抑えて光透過部材の耐久性を重視するために、アニール処理の最高温度の上限を250度以下に設定することが好ましい。たとえば、光透過部材の透過率向上を重視する場合、アニール処理の最高温度を250〜300度程度にし、光透過部材の耐久性を重視する場合、アニール処理の最高温度を150〜250度程度にすれば良い。
また、上述の例では、投影光学系PLの使用光(露光光)と同じArFエキシマレーザ光を用いて光照射処理を行っているが、光照射処理に用いる光は投影光学系PLの使用光に限定されることなく、たとえば170nm〜200nmの波長を有する光を用いて石英により形成された光透過部材の光照射処理を行うことができる。
また、光照射工程では、光透過部材の有効領域(結像のための有効光線が通過する領域)よりも小さい面積の断面を有する光束と当該光透過部材とを相対移動させつつ有効領域の全体に亘って光エネルギを照射することが好ましい。この走査照射により、投影光学系PLの使用光源1よりも出力の小さい光源を用いて、しかも有効領域の全体に亘って照射エネルギの均一性を良好に確保しつつ、所望の光照射工程を行うことができる。
また、上述の液浸型の投影光学系PLでは境界レンズ4とウェハWとの間の光路中に液体7のみが介在しているが、これに限定されることなく、図3に示すように境界レンズ4とウェハWとの間の光路中に平行平面板4aを挿脱自在に配置する構成も可能である。この場合、境界レンズ4と平行平面板4aとの間の光路および平行平面板4aとウェハWとの間の光路は液体7で満たされる。そして、たとえば石英により形成されて最も像側に配置された平行平面板4aに照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きくなる可能性が高い。
したがって、図3に示す構成では、物体側の光学面が気体に接し且つ像側の光学面が液体7に接する境界レンズ4だけでなく、液体7中に配置された平行平面板4aに対しても上述の光照射処理を行うことが好ましい。ちなみに、図3に示す構成では、液体7がウェハWに塗布されたフォトレジスト等による汚染を受けても、境界レンズ4とウェハWとの間に介在する平行平面板4aの作用により、汚染された液体7による境界レンズ4の像側光学面の汚染を有効に防ぐことができる。
ところで、図4に示すように、光透過部材の外形面積に対して光が実際に通過する領域の面積が小さいほど、コンパクションの影響は小さくなる。図4において、縦軸は、コンパクションによる収差変化指数、すなわち収差量Wに対する収差変化量ΔWの比率である。また、横軸は、光透過部材の外径(直径)Doの有効径(直径)Deに対する比率、すなわち外径有効径比Do/Deである。
したがって、本実施形態では、乾燥型または液浸型の投影光学系PLにおいて、たとえば石英により形成された少なくとも1つの光透過部材(たとえば境界レンズ4を含む)が次の条件式(2)を満足するように構成することにより、コンパクションによる収差変化を小さく抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持することができる。条件式(2)において、Doは光透過部材の外径(直径)であり、Deは光透過部材の像側の光学面の有効径(直径)である。
1.4<Do/De<6 (2)
ここで、条件式(2)の下限値を下回ると、コンパクションによる収差変化が大きくなり、結像性能の悪化が大きくなる。一方、条件式(2)の上限値を上回ると、光学部材の大型化により装置構成が困難になる。なお、コンパクションによる収差変化をさらに小さく抑えて良好な結像性能を長期間に亘って維持するには、条件式(2)の下限値を1.7に設定し、上限値を5に設定することが好ましい。
また、本実施形態では、液浸型の投影光学系PLにおいて、境界レンズ4が次の条件式(3)を満足するように構成することにより、境界レンズ4の耐久性を向上させ、ひいては露光エネルギを増大させてスループットを向上させることができる。条件式(3)において、Deは境界レンズ4の像側の光学面の有効径(直径)であり、Ymは投影光学系PLの像面(ウェハW)における最大像高である。
3.0<De/Ym<10.0 (3)
ここで、条件式(3)の下限値を下回ると、境界レンズ4を通過する光のエネルギ密度が大きくなり、境界レンズ4の耐久性が低下してしまう。一方、条件式(3)の上限値を上回ると、浸液としての液体層7の厚さが大きくなりすぎて、透過率の低下を招いてしまう。なお、透過率の低下をさらに良好に回避しつつ境界レンズ4の耐久性をさらに向上させるには、条件式(3)の下限値を4.0に設定し、上限値を8.5に設定することが好ましい。
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図5のフローチャートを参照して説明する。
先ず、図5のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図6のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図6において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光を用いているが、これに限定されることなく、他の適当な露光光を用いることもできる。また、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な投影光学系や、たとえばレーザ加工装置用の照射光学系、光アニール装置用の照射光学系などの一般的な光学系に対しても本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態では、実使用時に照射される単位面積あたりの光エネルギが最も大きくなる光学部材としての境界レンズ4(平行平面板4a)に対して本発明による光照射処理を行ったが、他の光学部材に対しても本発明による光照射処理を行ってもよい。たとえば投影光学系PL中のレチクル(物体)側近傍の光学部材や瞳近傍(開口絞り近傍)の光学部材に対して本発明による光照射処理を行うこともできる。
本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。 石英により形成された光透過部材にArFエキシマレーザ光が照射されるときの積算光エネルギ量とコンパクション量との関係を示す図である。 本実施形態の液浸型の投影光学系において境界レンズとウェハとの間に平行平面板が配置された構成を概略的に示す図である。 光透過部材の外径有効径比とコンパクションによる収差変化量との関係を示す図である。 マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。 マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
符号の説明
R レチクル
RST レチクルステージ
PL 投影光学系
W ウェハ
1 照明光学系
3 鏡筒
4 境界レンズ
7 媒質(純水)
9 Zステージ
10 XYステージ
12 移動鏡
13 ウェハレーザ干渉計
14 主制御系
15 ウェハステージ駆動系

Claims (18)

  1. 第1面の像を第2面上に形成する投影光学系において、
    前記投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギの照射を受けた後に形状加工されていることを特徴とする投影光学系。
  2. 前記少なくとも1つの光透過部材は、実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギが最も大きい光透過部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
  3. 前記投影光学系は縮小倍率を有し、
    前記少なくとも1つの光透過部材は、最も像側に配置された光透過部材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の投影光学系。
  4. 前記少なくとも1つの光透過部材は、前記光エネルギの照射を受けた後に、アニール処理を経て形状加工されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投影光学系。
  5. 前記少なくとも1つの光透過部材は石英により形成され、
    前記少なくとも1つの光透過部材は、170nm〜200nmの波長を有する光を用いて前記光エネルギの照射を受けていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の投影光学系。
  6. 前記少なくとも1つの光透過部材がその生涯期間に亘って照射を受ける生涯積算光エネルギをEoとし、当該光透過部材が形状加工前に照射を受ける加工前積算光エネルギをEiとするとき、
    0.1≦Ei/Eo
    の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の投影光学系。
  7. 前記少なくとも1つの光透過部材は、当該光透過部材の有効領域よりも小さい面積の断面を有する光束と当該光透過部材とを相対移動させつつ前記有効領域の全体に亘って前記光エネルギの照射を受けていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の投影光学系。
  8. 前記投影光学系の光路中の雰囲気の屈折率を1とするとき、前記投影光学系と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する液体で満たされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の投影光学系。
  9. 前記少なくとも1つの光透過部材は、物体側の光学面が気体に接し且つ像側の光学面が前記液体に接する光透過部材または前記液体中に配置された光透過部材を含むことを特徴とする請求項8に記載の投影光学系。
  10. 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
    前記投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの石英により形成された少なくとも1つの光透過部材は、当該光透過部材の像側の光学面の有効径をDeとし、当該光透過部材の外径をDoとするとき、
    1.4<Do/De<6
    の条件を満足することを特徴とする記載の投影光学系。
  11. 前記投影光学系の光路中の雰囲気の屈折率を1とするとき、前記投影光学系と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する液体で満たされていることを特徴とする請求項10に記載の投影光学系。
  12. 前記少なくとも1つの光透過部材は、物体側の光学面が気体に接し且つ像側の光学面が前記液体に接する境界レンズを含み、
    前記境界レンズの像側の光学面の有効径をDeとし、前記第2面における最大像高をYmとするとき、
    3.0<De/Ym<10.0
    の条件を満足することを特徴とする請求項11に記載の投影光学系。
  13. 第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
    前記投影光学系を構成する複数の光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材に対して、当該光透過部材の実使用時に照射される単位面積当りの光エネルギよりも大きい光エネルギを照射する光照射工程と、
    前記光照射工程の後に当該光透過部材を所要の形状に加工する加工工程と、
    前記所要の形状に加工された当該光透過部材を前記投影光学系に組み込む組込み工程とを含むことを特徴とする製造方法。
  14. 前記光照射工程と前記加工工程との間に、当該光透過部材をアニール処理するアニール工程をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記少なくとも1つの光透過部材がその生涯期間に亘って照射を受ける生涯積算光エネルギをEoとし、当該光透過部材が前記光照射工程において照射を受ける加工前積算光エネルギをEiとするとき、
    0.1≦Ei/Eo
    の条件を満足することを特徴とする請求項13または14に記載の製造方法。
  16. 前記光照射工程では、前記少なくとも1つの光透過部材の有効領域よりも小さい面積の断面を有する光束と当該光透過部材とを相対移動させつつ前記有効領域の全体に亘って前記光エネルギを照射することを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記第1面に設定されたマスクを照明するための照明系と、前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に形成するための請求項1乃至12のいずれか1項に記載の投影光学系または請求項13乃至16のいずれか1項に記載の製造方法により製造された投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置。
  18. 前記第1面に設定されたマスクを照明する照明工程と、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の投影光学系または請求項13乃至16のいずれか1項に記載の製造方法により製造された投影光学系を介して前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に投影露光する露光工程とを含むことを特徴とする露光方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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