JP2007027438A - 投影光学系、露光装置、およびデバイスの製造方法 - Google Patents

投影光学系、露光装置、およびデバイスの製造方法 Download PDF

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弘範 池沢
Yasuhiro Omura
泰弘 大村
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Abstract

【課題】 光の照射を受けて液体の温度が変化しても良好な結像性能を維持することのできる液浸型の投影光学系。
【解決手段】 第1面(R)の像を第2面(W)に投影する本発明の投影光学系は、最も第2面側に配置された第1光透過部材(Lp)と、この第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材(Lb)とを備え、第1光透過部材と第2面との間の光路は第1媒質で満たされ、第1光透過部材と第2光透過部材との間の光路は第2媒質で満たされている。軸上光線に関する第2媒質の吸収率をT1とし、最外縁光線に関する第2媒質の吸収率をT2とし、軸上光線に関する投影光学系の透過率をTLとするとき、80<TL/(T2−T1)<600の条件を満足する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、投影光学系、露光装置、およびデバイスの製造方法に関し、特に半導体素子や液晶表示素子などのデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な投影光学系に関するものである。
半導体素子等を製造するためのフォトリソグラフィ工程において、マスク(またはレチクル)のパターン像を、投影光学系を介して、感光性基板(フォトレジストが塗布されたウェハ、ガラスプレート等)上に投影露光する露光装置が使用されている。露光装置では、半導体素子等の集積度が向上するにつれて、投影光学系に要求される解像力(解像度)が益々高まっている。
そこで、投影光学系の解像力に対する要求を満足するために、照明光(露光光)の波長λを短くするとともに、投影光学系の像側開口数NAを大きくする必要がある。具体的には、投影光学系の解像度は、k・λ/NA(kはプロセス係数)で表される。また、像側開口数NAは、投影光学系と感光性基板との間の媒質(通常は空気などの気体)の屈折率をnとし、感光性基板への最大入射角をθとすると、n・sinθで表される。
この場合、最大入射角θを大きくすることにより像側開口数の増大を図ろうとすると、感光性基板への入射角および投影光学系からの射出角が大きくなり、光学面での反射損失が増大して、大きな実効的な像側開口数を確保することはできない。そこで、投影光学系と感光性基板との間の光路中に屈折率の高い液体のような媒質を満たすことにより像側開口数の増大を図る液浸技術が知られている(たとえば特許文献1)。
国際公開第WO2004/019128号パンフレット
液浸型の投影光学系では、後述するように、光の照射を受けて浸液としての液体の温度が変化し易く、ひいては液体の屈折率が変化し易い。また一般に、温度の変化dTに対する屈折率の変化dnの割合dn/dTは、たとえば空気のような気体よりも水のような液体の方がはるかに大きい。その結果、従来の液浸型の投影光学系では、光の照射を受けた液体の温度変化(ひいては屈折率変化)に起因して、投影光学系の結像性能が低下する可能性がある。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、光の照射を受けて液体の温度が変化しても良好な結像性能を維持することのできる液浸型の投影光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、光の照射を受けて液体の温度が変化しても良好な結像性能を維持することのできる高解像な液浸投影光学系を用いて、微細なパターンを高精度に且つ安定的に投影露光することのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、第1面の像を第2面に投影する投影光学系において、
最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、
軸上光線に関する前記第2媒質の吸収率をT1とし、最も大きな入射角度で前記第2面に達する最外縁光線に関する前記第2媒質の吸収率をT2とし、軸上光線に関する前記投影光学系の透過率をTLとするとき、
80<TL/(T2−T1)<600
の条件を満足することを特徴とする投影光学系を提供する。
本発明の第2形態では、第1面の像を第2面に投影する投影光学系において、
最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、該第2媒質の透過率および前記第2媒質の温度のうちの少なくとも一方が可変であることを特徴とする投影光学系を提供する。
本発明の第3形態では、前記第1面に設定された所定のパターンからの光に基づいて、前記パターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に投影するための第1形態または第2形態の投影光学系を備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第4形態では、第1面に設定されたパターンの像を第2面に設定された感光性基板に投影する投影光学系を備えた露光装置において、
前記投影光学系は、最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、
前記第2媒質の光学特性に関係する情報と前記投影光学系の光学特性との少なくとも1つを計測する計測手段と、
前記計測手段から得られた計測結果に基づいて、前記第2媒質の光学特性を調整する調整手段とを配置することを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第5形態では、第1面に設定されたパターンを照明する照明系と、前記パターンの像を第2面に設定された感光性基板に投影する投影光学系とを備えた露光装置において、
前記投影光学系は、最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、
所望の照明条件を設定する設定手段と、
前記照明条件の設定に応じて前記第2媒質の光学特性を調整する調整手段とを配置することを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第6形態では、第3形態〜第5形態の露光装置を用いて前記第1面に設定されたパターンを前記第2面に設定された感光性基板に露光する露光工程と、
前記露光工程により露光された前記感光性基板を現像する現像工程とを含むことを特徴とするデバイスの製造方法を提供する。
本発明の典型的な形態にしたがう液浸型の投影光学系では、軸上光線に関する第2液体の吸収率T1、最外縁光線に関する第2液体の吸収率T2、および軸上光線に関する投影光学系の透過率TLによって規定される条件式(1)を満足することにより、第2液体の温度変化(温度上昇)に起因して発生する像面収差(総合焦点差)を小さく抑えることができ、ひいては投影光学系の結像性能を良好に維持することができる。
換言すれば、本発明の液浸型の投影光学系では、光の照射を受けて液体(媒質)の温度が変化しても、良好な結像性能を維持することができる。本発明の露光装置および露光方法では、光の照射を受けて液体の温度が変化しても良好な結像性能を維持することのできる高解像な液浸投影光学系を用いているので、微細なパターンを高精度に且つ安定的に投影露光することができ、ひいては良好なデバイスを高精度に且つ安定的に製造することができる。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1では、X軸およびY軸がウェハWに対して平行な方向に設定され、Z軸がウェハWに対して直交する方向に設定されている。さらに具体的には、XY平面が水平面に平行に設定され、+Z軸が鉛直方向に沿って上向きに設定されている。
本実施形態の露光装置は、図1に示すように、たとえば露光光源であるArFエキシマレーザ光源を含み、オプティカル・インテグレータ(ホモジナイザー)、視野絞り、コンデンサレンズ等から構成される照明光学系1を備えている。光源から射出された波長193nmの紫外パルス光からなる露光光(露光ビーム)ILは、照明光学系1を通過し、レチクル(マスク)Rを照明する。レチクルRには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。
レチクルRを通過した光は、液浸型の投影光学系PLを介して、フォトレジストが塗布されたウェハ(感光性基板)W上の露光領域に所定の縮小投影倍率でレチクルパターンを形成する。すなわち、レチクルR上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上ではX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域(実効露光領域)にパターン像が形成される。
図2は、本実施形態においてウェハ上に形成される矩形状の静止露光領域と投影光学系の光軸との位置関係を示す図である。本実施形態では、図2に示すように、投影光学系PLの光軸AXを中心とした半径Bを有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において、光軸AXを中心としてX方向に沿って細長く延びた矩形状の静止露光領域ERが設定されている。ここで、静止露光領域ERのX方向の長さはLXであり、そのY方向の長さはLYである。
したがって、図示を省略したが、これに対応して、レチクルR上では、光軸AXを中心として静止露光領域ERに対応した大きさおよび形状を有する矩形状の照明領域(すなわち静止照明領域)が形成されていることになる。レチクルRはレチクルステージRST上においてXY平面に平行に保持され、レチクルステージRSTにはレチクルRをX方向、Y方向および回転方向に微動させる機構が組み込まれている。レチクルステージRSTは、レチクルレーザ干渉計(不図示)によってX方向、Y方向および回転方向の位置がリアルタイムに計測され、且つ制御される。
ウェハWは、ウェハホルダ(不図示)を介してZステージ9上においてXY平面に平行に固定されている。Zステージ9は、投影光学系PLの像面と実質的に平行なXY平面に沿って移動するXYステージ10上に固定されており、ウェハWのフォーカス位置(Z方向の位置)および傾斜角を制御する。Zステージ9は、Zステージ9上に設けられた移動鏡12を用いるウェハレーザ干渉計13によってX方向、Y方向および回転方向の位置がリアルタイムに計測され、且つ制御される。
また、XYステージ10は、ベース11上に載置されており、ウェハWのX方向、Y方向および回転方向を制御する。一方、本実施形態の露光装置に設けられた主制御系14は、レチクルレーザ干渉計により計測された計測値に基づいてレチクルRのX方向、Y方向および回転方向の位置の調整を行う。即ち、主制御系14は、レチクルステージRSTに組み込まれている機構に制御信号を送信し、レチクルステージRSTを微動させることによりレチクルRの位置調整を行う。
また、主制御系14は、オートフォーカス方式及びオートレベリング方式によりウェハW上の表面を投影光学系PLの像面に合わせ込むため、ウェハWのフォーカス位置(Z方向の位置)および傾斜角の調整を行う。即ち、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15によりZステージ9を駆動させることによりウェハWのフォーカス位置および傾斜角の調整を行う。
更に、主制御系14は、ウェハレーザ干渉計13により計測された計測値に基づいてウェハWのX方向、Y方向および回転方向の位置の調整を行う。即ち、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15によりXYステージ10を駆動させることによりウェハWのX方向、Y方向および回転方向の位置調整を行う。
露光時には、主制御系14は、レチクルステージRSTに組み込まれている機構に制御信号を送信すると共に、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、投影光学系PLの投影倍率に応じた速度比でレチクルステージRSTおよびXYステージ10を駆動させつつ、レチクルRのパターン像をウェハW上の所定のショット領域内に投影露光する。その後、主制御系14は、ウェハステージ駆動系15に制御信号を送信し、ウェハステージ駆動系15によりXYステージ10を駆動させることによりウェハW上の別のショット領域を露光位置にステップ移動させる。
このように、ステップ・アンド・スキャン方式によりレチクルRのパターン像をウェハW上に走査露光する動作を繰り返す。すなわち、本実施形態では、ウェハステージ駆動系15およびウェハレーザ干渉計13などを用いてレチクルRおよびウェハWの位置制御を行いながら、矩形状の静止露光領域および静止照明領域の短辺方向すなわちY方向に沿ってレチクルステージRSTとXYステージ10とを、ひいてはレチクルRとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には静止露光領域の長辺LXに等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有する領域に対してレチクルパターンが走査露光される。
図3は、本実施形態における境界レンズとウェハとの間の構成を模式的に示す図である。図3を参照すると、本実施形態にかかる投影光学系PLでは、レチクルR側(物体側)の面が第2液体(第2媒質)Lm2に接し且つウェハW側(像側)の面が第1液体(第1媒質)Lm1に接する平行平面板Lpが最もウェハ側に配置されている。そして、この平行平面板Lpに隣接して、レチクルR側の面が気体に接し且つウェハW側の面が第2液体Lm2に接する境界レンズLbが配置されている。
本実施形態において、例えば1.1よりも大きい屈折率を有する第1液体Lm1および第2液体Lm2として、半導体製造工場等で容易に大量に入手できる純水(脱イオン水)を用いている。また、境界レンズLbは、レチクルR側に凸面を向け且つウェハW側に平面を向けた正レンズである。さらに、境界レンズLbおよび平行平面板Lpはともに、石英により形成されている。これは、境界レンズLbや平行平面板Lpを蛍石により形成すると、蛍石は水に溶ける性質(可溶性)があるため、投影光学系の結像性能を安定的に維持することが困難になるからである。
また、蛍石では内部の屈折率分布が高周波成分を有することが知られており、この高周波成分を含む屈折率のばらつきがフレアの発生を招く恐れがあり、投影光学系の結像性能を低下させ易い。さらに、蛍石は固有複屈折性を有することが知られており、投影光学系の結像性能を良好に維持するためには、この固有複屈折性の影響を補正する必要がある。したがって、蛍石の可溶性、屈折率分布の高周波成分および固有複屈折性の観点から、境界レンズLbや平行平面板Lpを石英により形成することが好ましい。
なお、投影光学系PLに対してウェハWを相対移動させつつ走査露光を行うステップ・アンド・スキャン方式の露光装置において、走査露光の開始から終了まで投影光学系PLの境界レンズLbとウェハWとの間の光路中に液体(Lm1,Lm2)を満たし続けるには、たとえば国際公開番号WO99/49504号公報に開示された技術や、特開平10−303114号公報に開示された技術などを用いることができる。
国際公開番号WO99/49504号公報に開示された技術では、液体供給装置から供給管および排出ノズルを介して所定の温度に調整された液体を境界レンズLbとウェハWとの間の光路を満たすように供給し、液体供給装置により回収管および流入ノズルを介してウェハW上から液体を回収する。一方、特開平10−303114号公報に開示された技術では、液体を収容することができるようにウェハホルダテーブルを容器状に構成し、その内底部の中央において(液体中において)ウェハWを真空吸着により位置決め保持する。また、投影光学系PLの鏡筒先端部が液体中に達し、ひいては境界レンズLbのウェハ側の光学面が液体中に達するように構成する。
本実施形態では、図1に示すように、第1給排水機構21を用いて、平行平面板LpとウェハWとの間の光路中において第1液体Lm1としての純水を循環させている。また、第2給排水機構22を用いて、境界レンズLbと平行平面板Lpとの間の光路中において第2液体Lm2としての純水を循環させている。このように、浸液としての純水を微小流量で循環させることにより、防腐、防カビ等の効果により液体の変質を防ぐことができる。
本実施形態において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径をrとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をCnとしたとき、以下の数式(a)で表される。後述の表(1)において、非球面形状に形成されたレンズ面には面番号の右側に*印を付している。
z=(y2/r)/[1+{1−(1+κ)・y2/r21/2
+C4・y4+C6・y6+C8・y8+C10・y10
+C12・y12+C14・y14+・・・ (a)
図4は、本実施形態にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。図4を参照すると、本実施形態の投影光学系PLは、レチクル側から順に、平行平面板P1と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた両凹レンズL1と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL2と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL3と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL7と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL8と、両凹レンズL9と、レチクル側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた両凹レンズL11と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた平凹レンズL12と、レチクル側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、両凸レンズL14と、両凸レンズL15と、レチクル側に凸面を向けた負メニスカスレンズL16と、両凸レンズL17と、両凸レンズL18と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL19と、ウェハ側に非球面形状の凹面を向けた正メニスカスレンズL20と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、ウェハ側に平面を向けた平凸レンズL22(境界レンズLb)と、平行平面板Lpとにより構成されている。
本実施形態では、境界レンズ(第2光透過部材)Lbと平行平面板(第1光透過部材)Lpとの間の光路および平行平面板LpとウェハWとの間の光路に、使用光(露光光)であるArFエキシマレーザ光(波長λ=193.306nm)に対して1.435876の屈折率を有する純水(Lm1,Lm2)が満たされている。また、すべての光透過部材(P1,L1〜L22(Lb),Lp)が、使用光に対して1.5603261の屈折率を有する石英(SiO2)により形成されている。
次の表(1)に、本実施形態にかかる投影光学系PLの諸元の値を掲げる。表(1)において、λは露光光の中心波長を、βは投影倍率の大きさを、NAは像側(ウェハ側)開口数を、BはウェハW上でのイメージサークルIFの半径(最大像高Ym)を、LXは静止露光領域ERのX方向に沿った寸法(長辺の寸法)を、LYは静止露光領域ERのY方向に沿った寸法(短辺の寸法)をそれぞれ表している。また、面番号はレチクル側からの面の順序を、rは各面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径:mm)を、dは各面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)を、nは中心波長に対する屈折率をそれぞれ示している。
表(1)
(主要諸元)
λ=193.306nm
β=1/4
NA=1.00
B=Ym=13.4mm
LX=26mm
LY=5.5mm

(光学部材諸元)
面番号 r d n 光学部材
(レチクル面) 50.000
1 ∞ 8.000 1.5603261 (P1)
2 ∞ 5.225
3 -1943.233 12.000 1.5603261 (L1)
4* 191.125 47.012
5 -104.228 42.945 1.5603261 (L2)
6 -470.767 1.000
7* -542.622 39.860 1.5603261 (L3)
8 -202.724 1.000
9 -1066.606 49.498 1.5603261 (L4)
10 -257.416 1.000
11 2900.000 53.600 1.5603261 (L5)
12 -376.177 1.000
13 254.290 54.884 1.5603261 (L6)
14 927.490 1.000
15 192.047 50.000 1.5603261 (L7)
16 405.266 1.000
17 230.501 39.859 1.5603261 (L8)
18* 322.792 19.156
19 -2992.366 14.004 1.5603261 (L9)
20 96.198 42.051
21 1075.262 14.000 1.5603261 (L10)
22 238.222 39.560
23 -133.879 12.000 1.5603261 (L11)
24* 248.570 31.009
25* -309.992 15.000 1.5603261 (L12)
26 ∞ 9.148
27* -737.276 51.000 1.5603261 (L13)
28 -176.320 1.000
29 1040.000 48.704 1.5603261 (L14)
30 -451.186 1.000
31 725.000 48.768 1.5603261 (L15)
32 -697.471 3.000
33 503.559 30.048 1.5603261 (L16)
34 281.163 111.150
35 724.563 54.923 1.5603261 (L17)
36 -564.358 1.000
37 372.647 56.556 1.5603261 (L18)
38 -1424.995 1.000
39 196.339 41.207 1.5603261 (L19)
40* 498.912 1.000
41 147.694 36.513 1.5603261 (L20)
42* 185.195 1.000
43 147.798 52.775 1.5603261 (L21)
44 216.307 2.256
45 238.988 26.298 1.5603261 (L22:Lb)
46 ∞ 1.000 1.435876 (Lm2)
47 ∞ 20.000 1.5603261 (Lp)
48 ∞ 5.000 1.435876 (Lm1)
(ウェハ面)

(非球面データ)
4面
κ=0
4=−1.48452×10-7 6=5.65923×10-12
8=−2.78621×10-1610=2.37952×10-20
12=−1.19751×10-2414=1.82016×10-28
16=−5.16714×10-33

7面
κ=0
4=−1.27342×10-8 6=2.18802×10-13
8=−4.26931×10-1810=4.55926×10-22
12=−2.06887×10-2614=1.46041×10-30
16=−1.78415×10-35

18面
κ=0
4=−1.79752×10-8 6=1.95237×10-14
8=−3.82843×10-1810=−3.85072×10-22
12=1.96652×10-2614=−3.59987×10-31
16=7.72530×10-37

24面
κ=0
4=1.86641×10-8 6=−2.48589×10-12
8=−3.40085×10-1710=1.20901×10-20
12=−4.99726×10-2514=−4.18254×10-29
16=2.90453×10-33

25面
κ=0
4=−4.42908×10-8 6=3.24465×10-12
8=−2.17933×10-1810=3.09914×10-21
12=−5.89781×10-2514=1.44812×10-28
16=−9.31891×10-33

27面
κ=0
4=1.28473×10-8 6=−1.52185×10-12
8=3.27024×10-1710=2.96321×10-21
12=−3.12141×10-2514=1.24069×10-29
16=−3.63752×10-35

40面
κ=0
4=1.37642×10-8 6=7.52294×10-14
8=8.14751×10-1810=−2.38664×10-22
12=1.89052×10-2614=−5.72857×10-31
16=1.24235×10-35

42面
κ=0
4=−4.67034×10-8 6=−9.90580×10-13
8=−5.14638×10-1810=1.69872×10-21
12=−1.07534×10-2514=5.68180×10-30
16=−1.53908×10-34
図5は、本実施形態の投影光学系における横収差を示す図である。収差図において、Yは像高を示している。図5の収差図から明らかなように、本実施形態では、大きな像側開口数(NA=1.00)および比較的大きな静止露光領域ER(26mm×5.5mm)を確保しているにもかかわらず、波長が193.306nmのエキシマレーザ光に対して収差が良好に補正されていることがわかる。
このように、本実施形態の投影光学系PLでは、境界レンズLbとウェハWとの間の光路中に大きな屈折率を有する純水(Lm1,Lm2)を介在させることにより、大きな実効的な像側開口数を確保しつつ、比較的大きな有効結像領域を確保することができる。すなわち、中心波長が193.306nmのArFエキシマレーザ光に対して、1.00の高い像側開口数を確保するとともに、26mm×5.5mmの矩形形状の実効露光領域(静止露光領域)ERを確保することができ、たとえば26mm×33mmの矩形状の露光領域内に回路パターンを高解像度で走査露光することができる。
また、上述の実施形態では、境界レンズLbとウェハWとの間の光路中に平行平面板(一般にはほぼ無屈折力の光学部材)Lpが配置されているので、浸液としての純水がウェハWに塗布されたフォトレジストからのアウトガス等による汚染を受けても、境界レンズLbとウェハWとの間に介在する平行平面板Lpの作用により、汚染された純水による境界レンズLbの像側光学面の汚染を有効に防ぐことができる。さらに、液体(純水:Lm1,Lm2)と平行平面板Lpとの屈折率差が小さいため、平行平面板Lpに要求される姿勢や位置精度が大幅に緩和されるので、平行平面板Lpが汚染されても部材交換を随時行うことにより光学性能を容易に復元することができる。また、平行平面板Lpの作用により、境界レンズLbに接する液体Lm2のスキャン露光時の圧力変動やステップ移動時の圧力変動が小さく抑えられるので、比較的小さなスペースで液体を保持することが可能になる。
ただし、本実施形態において、平行平面板Lpとウェハ(感光性基板)Wとの間に介在する第1液体Lm1は比較的大きな速度で流れているため、光の照射を受けても第1液体Lm1の温度は変化しにくいが、境界レンズLbと平行平面板Lpとの間に介在する第2液体Lm2は比較的小さな速度で流れているため、光の照射を受けると第2液体Lm2の温度は変化(一般には上昇)し易い。これは、第1液体Lm1の比較的大きな流速に起因して無屈折力の平行平面板Lpが微動しても投影光学系PLの結像性能に与える影響は小さいが、第2液体Lm2の流速を大きくすると比較的パワーの大きい境界レンズLbが微動して投影光学系PLの結像性能が低下する可能性があるからである。
また、温度の変化dTに対する屈折率の変化dnの割合dn/dTは、空気に比して水の方が100倍程度に大きい。その結果、本実施形態のタイプの液浸投影光学系では、光の照射を受けた第2液体Lm2の温度変化(ひいては第2液体Lm2の屈折率変化)に起因して、投影光学系PLの像面収差が発生し易く、ひいては投影光学系PLの結像性能が低下し易い。具体的には、第2液体Lm2の温度変化に起因して、メリディオナル像面とサジタル像面とのフィールド内での最大値と最小値との差の絶対値(以下、「総合焦点差」という)が発生する。
ここで、メリディオナル像面のフィールド内での最大値(または最小値)とは、基準像面(設計上の像面)から光軸方向に沿って最も離れた距離(後述するように正負の符号を有する)である。同様に、サジタル像面のフィールド内での最大値(または最小値)とは、基準像面から光軸方向に沿って最も離れた距離(後述するように正負の符号を有する)である。なお、メリディオナル像面が最大値(または最小値)になるフィールド内での位置座標と、サジタル像面が最大値(または最小値)になるフィールド内での位置座標とが一般に異なることはいうまでもない。
本実施形態では、光の照射を受けた第2液体Lm2の温度変化に起因する総合焦点差の発生を小さく抑え、ひいては投影光学系PLの結像性能の低下を小さく抑えるために、次の条件式(1)を満足する。条件式(1)において、T1は軸上光線に関する第2液体(第2媒質)Lm2の吸収率であり、T2は最も大きな入射角度でウェハWに達する最外縁光線に関する第2液体Lm2の吸収率であり、TLは軸上光線に関する投影光学系PLの透過率である。
80<TL/(T2−T1)<600 (1)
条件式(1)の下限値を下回ると、第2液体Lm2を通過する軸上光線と最外縁光線との間で吸収率の差が大きくなり過ぎて、光の照射を受けた第2液体Lm2の温度変化に起因して大きな総合焦点差が発生し、ひいては投影光学系PLの結像性能が大きく低下してしまう。一方、条件式(1)の上限値を上回ると、第2液体Lm2の層の厚さが小さくなり過ぎて、境界レンズLbと平行平面板Lpとの間に第2液体Lm2を満たすことが困難になってしまう。なお、本発明の効果をさらに良好に発揮するには、条件式(1)の下限値を100に設定し、上限値を500に設定することが好ましい。以下、条件式(1)の下限値の妥当性について、ケーススタディにより検証する。
[ケース1]
ケース1では、本実施形態にしたがって、第2液体Lm2の層の厚さは1mmであり、第1液体Lm1の層の厚さは5mmである。ここで、ケース1における第2液体Lm2の吸収率を0.8%/1mmとすると、軸上光線に関する第2液体Lm2の吸収率T1および最外縁光線に関する第2液体Lm2の吸収率T2は、それぞれ次のように求まる。
T1=(0.8%/1mm)×1mm=0.8%
T2=(0.8%/1mm)×1.394mm=1.1152%
一方、各光学面のコートの反射率を一律に0.5%とし、各光透過部材の吸収率を一律に0.1%/1cmとすると、軸上光線に関する投影光学系PLの透過率TLは68.3%になる。その結果、ケース1では、TL/(T2−T1)=216.688になり、条件式(1)が満たされる。図6は、ケース1において光の照射を受けた第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する像面変化を示す図である。図6およびこれに関連する図7〜図10において、横軸は像高Y(mm)であり、縦軸は基準像面からの光軸方向に沿ったずれ量D(nm)である。ここで、ずれ量Dの負の符号は投影光学系PLから離れる向きに対応し、正の符号は投影光学系PLに近づく向きに対応している。
また、図6〜図10において、実線はメリディオナル像面を示し、破線はサジタル像面を示している。ケース1では、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する回転対称の低次収差成分を、たとえばレンズL3,レンズL6,レンズL11,レンズL14,およびレンズL18の光軸方向の移動により補正している。ケース1では、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する総合焦点差が約5.0nmであり、露光装置における結像性能の観点から特に問題の無いレベルである。
[ケース2]
ケース2においても、本実施形態にしたがって、第2液体Lm2の層の厚さは1mmであり、第1液体Lm1の層の厚さは5mmである。ここで、ケース2における第2液体Lm2の吸収率を3%/1mmとすると、軸上光線に関する第2液体Lm2の吸収率T1および最外縁光線に関する第2液体Lm2の吸収率T2は、それぞれ次のように求まる。
T1=(3%/1mm)×1mm=3%
T2=(3%/1mm)×1.394mm=4.182%
一方、各光学面のコートの反射率を一律に0.5%とし、各光透過部材の吸収率を一律に0.1%/1cmとすると、軸上光線に関する投影光学系PLの透過率TLは58.8%になる。その結果、ケース2では、TL/(T2−T1)=49.75になり、条件式(1)が満たされない。図7は、ケース2において光の照射を受けた第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する像面変化を示す図である。
ケース2ではケース1と同様に、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する回転対称の低次収差成分を、たとえばレンズL3,レンズL6,レンズL11,レンズL14,およびレンズL18の光軸方向の移動により補正している。図7を参照すると、ケース2では、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する総合焦点差が約19.1nmであり、露光装置における結像性能の観点から問題となるレベルである。
[ケース3]
ケース3では、本実施形態とは異なり、第2液体Lm2の層の厚さが3mmであり、第1液体Lm1の層の厚さが3mmである。ここで、ケース3における第2液体Lm2の吸収率を0.8%/1mmとすると、軸上光線に関する第2液体Lm2の吸収率T1および最外縁光線に関する第2液体Lm2の吸収率T2は、それぞれ次のように求まる。
T1=(0.8%/1mm)×3mm=2.4%
T2=(0.8%/1mm)×4.181mm=3.344%
一方、各光学面のコートの反射率を一律に0.5%とし、各光透過部材の吸収率を一律に0.1%/1cmとすると、軸上光線に関する投影光学系PLの透過率TLは58.8%になる。その結果、ケース2では、TL/(T2−T1)=62.29になり、条件式(1)が満たされない。図8は、ケース3において光の照射を受けた第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する像面変化を示す図である。
ケース3ではケース1および2と同様に、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する回転対称の低次収差成分を、たとえばレンズL3,レンズL6,レンズL11,レンズL14,およびレンズL18の光軸方向の移動により補正している。図8を参照すると、ケース3では、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する総合焦点差が約15.6nmであり、露光装置における結像性能の観点から問題となるレベルである。
以上のように、本実施形態では、軸上光線に関する第2液体Lm2の吸収率T1、最外縁光線に関する第2液体Lm2の吸収率T2、および軸上光線に関する投影光学系PLの透過率TLによって規定される条件式(1)を満足することにより、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する総合焦点差を小さく抑えることができ、ひいては投影光学系PLの結像性能を良好に維持することができる。すなわち、本実施形態の液浸型の投影光学系では、光の照射を受けて液体の温度が変化しても、良好な結像性能を維持することができる。また、本実施形態の露光装置では、光の照射を受けて液体の温度が変化しても良好な結像性能を維持することのできる高解像な液浸投影光学系を用いているので、微細なパターンを高精度に且つ安定的に投影露光することができる。
上述のケース1〜3では、光の照射を受けた第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する像面変化に着目している。これに対し、次のケース4では、投影光学系PLのうち第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する像面変化に着目する。ただし、ケース1〜4では、σ値=0.2の円形照明を想定しており、投影光学系PLの照明条件は互いに同じである。ここで、照明条件を決定するσ値とは、投影光学系の瞳面の開口径に対するその瞳面上での二次光源像の口径の比である。照明条件の設定は、主制御系14からの指令を受けた照明光学系1により行われる。
[ケース4]
図9は、ケース4において投影光学系PLのうち第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する像面変化を示す図である。ケース4では、第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する回転対称の低次収差成分を、たとえばレンズL3,レンズL6,レンズL11,レンズL14,およびレンズL18の光軸方向の移動により補正している。図9を参照すると、ケース4では、第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する総合焦点差が約7.3nmである。
また、図9を参照すると、第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する像面収差に着目したケース4では、メリディオナル像面が基準像面から正の符号の向きに位置ずれし、サジタル像面が基準像面から負の符号の向きに位置ずれしている。これに対し、図6〜図8を参照すると、光の照射を受けて第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する像面収差に着目したケース1〜3では、メリディオナル像面が基準像面から負の符号の向きに位置ずれし、サジタル像面が基準像面から正の符号の向きに位置ずれしている。
すなわち、第2液体Lm2の温度上昇に起因して発生する像面収差と第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する像面収差とでは、メリディオナル像面およびサジタル像面の基準像面からの位置ずれの向きが逆である。これは、たとえば使用光の波長が193nmの場合、第2液体Lm2を形成する水の屈折率変化率dn/dTと投影光学系PL中の光透過部材を形成する石英の屈折率変化率dn/dTの符号が逆であるからである。その結果、水からなる第2液体Lm2を除く投影光学系部分が光の照射を受けた影響で発生する像面のずれ量Dの符号と、水からなる第2液体Lm2の温度変化の影響のみで発生する像面のずれ量Dの符号とが逆になる。
本実施形態では、上述のような屈折率変化率の特性を利用して、第2液体Lm2の透過率(または吸収率)を適切な値に設定して第2液体Lm2の温度変化のみに起因する所要量の像面収差を意図的に発生させることにより、第2液体Lm2を除く部分が光の照射を受けたときに発生する図9に示すような像面収差を相殺により補正することができる。具体的には、本実施形態にしたがって第2液体Lm2の層の厚さを1mmとし、第1液体Lm1の層の厚さを5mmとし、第2液体Lm2の吸収率を1.2%/1mmに設定することにより、図10に示すように良好に補正された像面収差を得ることができる。図10に示す像面収差において、総合焦点差は約2.7nmであり、良好な結像性能が得られる。
このように、本実施形態の投影光学系では、光の照射を受けて第2液体(第2媒質)Lm2の温度が変化しても、第2液体Lm2の透過率(または吸収率)を変化させて適切な値に設定することにより、光の照射を受けたときに発生する投影光学系PLの像面収差、特に軸上非点収差(センターアス)を含む非点収差成分などを良好に補正することができる。具体的に、たとえば水に酸素等の不純物を混入させて不純物濃度を制御することによって、水からなる第2液体Lm2の透過率を変化させることができる。
同様の原理により、第2液体Lm2の温度を変化させて適切な温度分布に設定することにより、光の照射を受けたときに発生する投影光学系PLの像面収差を良好に補正することができる。すなわち、第2液体Lm2の透過率および第2液体Lm2の温度のうちの少なくとも一方を調整することにより、さらに一般的には第2液体Lm2の光学特性を調整することにより、光の照射を受けたときに発生する投影光学系PLの像面収差を良好に補正することができる。
本実施形態の露光装置は、図11に示すように、第2液体Lm2の光学特性に関係する情報として例えば第2液体Lm2の透過率や第2液体Lm2の温度(または温度分布)を計測するための第1計測部31と、投影光学系PLの光学特性として例えば投影光学系PLの波面収差を測定するための第2計測部32と、第1計測部31から得られた計測結果または第2計測部32から得られた計測結果に基づいて、第2液体Lm2の光学特性すなわち第2液体Lm2の透過率や第2液体Lm2の温度(または温度分布)を調整するための調整部33とを備えている。
第1計測部31は、従来技術にしたがって、境界レンズLbと平行平面板Lpとの間の光路中に供給された第2液体Lm2の透過率や温度(または温度分布)を計測する。ただし、本実施形態において、光路中に供給される直前の第2液体Lm2の透過率や温度(または温度分布)と光路中に供給されて光の照射を受けた第2液体Lm2の透過率や温度(または温度分布)との差が予めわかっている場合には、光路中に供給される直前の第2液体Lm2の透過率や温度(または温度分布)を計測し、予めわかっている透過率差や温度(または温度分布)差をオフセットとして計測結果を補正することもできる。
第2計測部32としての波面収差測定装置の具体的な構成および作用については、たとえば特開2002−71514号公報を参照することができる。調整部33では、たとえば水に酸素等の不純物を混入させて不純物濃度を制御することによって、光路中に供給された第2液体Lm2あるいは光路中に供給される直前の第2液体Lm2の透過率を変化させたり、適当な加熱・冷却手段などを用いて、光路中に供給された第2液体Lm2あるいは光路中に供給される直前の第2液体Lm2の温度(または温度分布)を変化させたりする。
こうして、本実施形態の露光装置では、第1計測部31により第2液体Lm2の透過率や温度(または温度分布)をモニター計測し、このモニター計測結果が主制御系14に供給される。主制御系14は、第1計測部31の計測結果に応じて調整部33を制御し、第2液体Lm2の透過率および第2液体Lm2の温度(または温度分布)のうちの少なくとも一方を調整することにより、光の照射を受けたときに発生する投影光学系PLの像面収差、すなわち第2液体Lm2の透過率変化や温度変化に起因して発生すると予測される像面収差成分を良好に補正する。
また、本実施形態の露光装置では、第2計測部32としての波面収差測定装置により投影光学系PLの波面収差を定期的に(たとえば平行平面板Lpの交換時に)測定し、この測定結果が主制御系14に供給される。主制御系14は、第2計測部32の測定結果(計測結果)に応じて調整部33を制御し、第2液体Lm2の透過率および第2液体Lm2の温度(または温度分布)のうちの少なくとも一方を調整することにより、光の照射を受けたときに発生する投影光学系PLの像面収差、すなわち第2計測部32で測定された像面収差成分を良好に補正する。
さらに、本実施形態の露光装置では、主制御系14と照明光学系1(図11では不図示)とからなる設定手段(1,14)を用いて、レチクルRのパターンに対する所望の照明条件を設定する。主制御系14は、この照明条件の設定に応じて調整部33を制御し、第2液体Lm2の透過率および第2液体Lm2の温度(または温度分布)のうちの少なくとも一方を調整することにより、光の照射を受けたときに発生する投影光学系PLの像面収差、すなわち照明条件の変更により発生すると予測される像面収差成分を良好に補正する。
以上においては、第2液体Lm2に対して所望の透過率と所望の温度分布を付与することにより像面収差として、非点収差成分を補正することを説明した。ここで、第2液体Lm2に対して一定の温度を付与することにより、回転対称な収差成分として、球面収差成分を調整することができる。このため、第1計測部31にて第2液体Lm2の透過率と温度を測定するとともに第2測定部32にて投影光学系PLの収差を測定し、計測結果に基づき、調整部33は、像面収差を補正するために第2液体Lm2の透過率を調整するとともに、回転対称収差を補正するために第2液体Lm2の温度を所望の一定の温度に調整するようにしても良い。このような調整は、定期的に行っても良いし、照明条件の設定(例えば、照明σ値の変更、輪帯照明や多極照明への変更等)の時に行っても良い。
また、上述の実施形態では、境界レンズLbとウェハWとの間の光路中に充填される液体として純水(Lm1,Lm2)を用いたが、その代わりに、それよりも屈折率が高い液体(たとえば屈折率が1.6以上の液体)を用いても良い。このような高屈折率液体としては、たとえばグリセノール(CH2[OH]CH[OH]CH2[OH])やヘプタン(C716)等を用いることができる。また、H+、Cs-、K+、Cl-、SO4 2-、PO4 2-を入れた水、アルミニウム酸化物の微粒子を混ぜた水、イソプロパノール、ヘキサン、デカンなどを用いることもできる。
このような高屈折率液体を用いる場合には、投影光学系PLの大きさ、特に直径方向の大きさを抑えるために、投影光学系PLの一部のレンズ、特に像面(ウェハW)に近いレンズを高屈折率の材料で形成することが好ましい。このような高屈折率材料としては、たとえば酸化カルシウムまたは酸化マグネシウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、あるいはこれらを主成分とする混晶を用いることが好ましい。これにより、実現可能なサイズのもとで、高い開口数を実現することができる。たとえばArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いた場合にも、1.5程度、あるいはそれ以上の高い開口数を実現することが可能となる。また、露光光ILとして波長157nmのF2レーザを用いる場合には、液体として、F2レーザ光を透過可能な液体、たとえば過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体を用いることが好ましい。
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図12のフローチャートを参照して説明する。
先ず、図12のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図13のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図13において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
なお、上述の実施形態では、ArFエキシマレーザ光源を用いているが、これに限定されることなく、たとえばF2 レーザ光源のような他の適当な光源を用いることもできる。ただし、露光光としてF2レーザ光を用いる場合は、液体としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いることになる。
また、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の適当な液浸型の投影光学系に対して本発明を適用することができる。
なお、上述の実施形態では、境界レンズLbおよび平行平面板Lpを石英で形成したが、境界レンズLbおよび平行平面板Lpを形成する材料としては石英には限定されず、たとえば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどの結晶材料を用いてもよい。
また、上述の実施形態では、第1液体および第2液体として純水を用いたが、第1および第2液体としては純水には限定されず、たとえばH+,Cs+,K+、Cl-,SO4 2-,PO4 2-を入れた水、イソプロパノール,グリセロール、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどを用いることができる。
本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。 本実施形態においてウェハ上に形成される矩形状の静止露光領域と投影光学系の光軸との位置関係を示す図である。 本実施形態における境界レンズとウェハとの間の構成を模式的に示す図である。 本実施形態にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。 本実施形態の投影光学系における横収差を示す図である。 ケース1において光の照射を受けた第2液体の温度上昇に起因して発生する像面変化を示す図である。 ケース2において光の照射を受けた第2液体の温度上昇に起因して発生する像面変化を示す図である。 ケース3において光の照射を受けた第2液体の温度上昇に起因して発生する像面変化を示す図である。 ケース4において投影光学系のうち第2液体を除く部分が光の照射を受けたときに発生する像面変化を示す図である。 第2液体の透過率を適切な値に設定して第2液体の温度変化のみに起因する所要量の像面収差を発生させることにより図9に示す像面収差を補正した様子を示す図である。 本実施形態の露光装置の特徴的な要部構成を概略的に示す図である。 マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。 マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
符号の説明
R レチクル
RST レチクルステージ
PL 投影光学系
Lb 境界レンズ
Lp 平行平面板
Lm1,Lm2 純水(液体)
W ウェハ
1 照明光学系
9 Zステージ
10 XYステージ
12 移動鏡
13 ウェハレーザ干渉計
14 主制御系
15 ウェハステージ駆動系
21 第1給排水機構
22 第2給排水機構
31 第1計測部
32 第2計測部(波面収差測定装置)
33 調整部

Claims (14)

  1. 第1面の像を第2面に投影する投影光学系において、
    最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
    前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、
    軸上光線に関する前記第2媒質の吸収率をT1とし、最も大きな入射角度で前記第2面に達する最外縁光線に関する前記第2媒質の吸収率をT2とし、軸上光線に関する前記投影光学系の透過率をTLとするとき、
    80<TL/(T2−T1)<600
    の条件を満足することを特徴とする投影光学系。
  2. 前記第2媒質の光学特性が調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
  3. 前記第2媒質の光学特性を調整するために、前記第2媒質の透過率および前記第2媒質の温度のうちの少なくとも一方が可変であることを特徴とする請求項2に記載の投影光学系。
  4. 第1面の像を第2面に投影する投影光学系において、
    最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
    前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、該第2媒質の透過率および前記第2媒質の温度のうちの少なくとも一方が可変であることを特徴とする投影光学系。
  5. 前記投影光学系中の複数のレンズは、光軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の投影光学系。
  6. 前記第1光透過部材は、石英により形成された平行平面板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の投影光学系。
  7. 前記第2光透過部材は、石英により形成された正レンズまたは平行平面板であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の投影光学系。
  8. 前記第1面に設定された所定のパターンからの光に基づいて、前記パターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に投影するための請求項1乃至7のいずれか1項に記載の投影光学系を備えていることを特徴とする露光装置。
  9. 第1面に設定されたパターンの像を第2面に設定された感光性基板に投影する投影光学系を備えた露光装置において、
    前記投影光学系は、最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
    前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、
    前記第2媒質の光学特性に関係する情報と前記投影光学系の光学特性との少なくとも1つを計測する計測手段と、
    前記計測手段から得られた計測結果に基づいて、前記第2媒質の光学特性を調整する調整手段とを配置することを特徴とする露光装置。
  10. 前記第2媒質の光学特性に関係する情報は、前記第2媒質の透過率および前記第2媒質の温度のうちの少なくとも一方であり、
    前記調整手段は、前記第2媒質の光学特性を調整するために、前記第2媒質の透過率および前記第2媒質の温度のうちの少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項9に記載の露光装置。
  11. 第1面に設定されたパターンを照明する照明系と、前記パターンの像を第2面に設定された感光性基板に投影する投影光学系とを備えた露光装置において、
    前記投影光学系は、最も第2面側に配置された第1光透過部材と、該第1光透過部材に隣接して配置された第2光透過部材とを備え、
    前記投影光学系の光路中の気体の屈折率を1とするとき、前記第1光透過部材と前記第2面との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第1媒質で満たされ、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材との間の光路は1.1よりも大きい屈折率を有する第2媒質で満たされ、
    所望の照明条件を設定する設定手段と、
    前記照明条件の設定に応じて前記第2媒質の光学特性を調整する調整手段とを配置することを特徴とする露光装置。
  12. 前記調整手段は、前記第2媒質の光学特性を調整するために、前記第2媒質の透過率および前記第2媒質の温度のうちの少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項11に記載の露光装置。
  13. 前記調整手段は、前記第2媒質の光学特性を調整して、前記投影光学系の非点収差成分を補正することを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の露光装置。
  14. 請求項8乃至13のいずれか1項に記載の露光装置を用いて前記第1面に設定されたパターンを前記第2面に設定された感光性基板に露光する露光工程と、
    前記露光工程により露光された前記感光性基板を現像する現像工程とを含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
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