JP2006073300A - 透明導電性微粒子分散液及び透明導電膜形成用塗布液 - Google Patents

透明導電性微粒子分散液及び透明導電膜形成用塗布液 Download PDF

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Abstract

【課題】 有機溶剤系で分散剤量が少なくても、優れた分散性を示す透明導電膜形成用塗布液を提供し、この塗布液を用いることで、得られる塗膜が基材との密着性に優れ、且つ良好な透明性と導電性を兼ね備えた透明導電性膜形成用塗布液を提供する。
【解決手段】 有機溶媒中に、平均粒径10〜200nmの導電性酸化物微粒子と分散剤を含有する透明導電性微粒子分散液で、分散剤が分子構造内に親水基としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤、好ましくはリン酸エステル型アニオン系界面活性剤を用いる。導電性酸化物微粒子は、酸化インジウム及び/又は酸化錫を主成分とし、その表面がハロゲンイオン又はハロゲン化合物で修飾されていることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い透明性と導電性を有すると共に密着性に優れた透明導電膜の形成に好適であって、優れた分散性を示す導電性酸化物微粒子の分散液、及びこれを用いた透明導電膜形成用塗布液に関する。
液晶や有機ELのような各種表示機器や、コピー機をはじめとする画像入力端末機器等においては、コンパクトで且つ低コストの要求が高まっている。このような観点から、半導体素子の基板材料としても、透明プラスチック基材が多く用いられるようになってきている。
しかしながら、このような透明プラスチック基材は、一般的に、絶縁体であるため静電気を帯びやすく、表面にゴミ、埃などが付着しやすい。また、電子機器の場合、静電気によって誤動作を起こすなどの問題が生じる。このような問題を解決するために、従来から、基材上に透明導電膜を形成し、帯電防止性を付与することが広く知られている。
かかる透明導電膜の形成方法としては、一般に、スパッタリング法又は塗布法が用いられている。スパッタリング法は、ある程度大きな面積のものでも、表面電気抵抗の低い透明導電膜を形成することができる点で優れている。しかし、スパッタリング法では、用いる基材に耐熱性が必要であるため、適用可能なプラスチック基材が制限され、また装置が大掛かりで成膜速度が遅い等の問題点がある。しかも、今後の透明導電膜の更なる大面積化に伴って、均一な成膜を行うための制御精度を確保することが難しいという技術面での問題や、装置の大規模化による製造コスト増大などの製造効率面での問題の発生が予測されている。
これに対して、塗布法では、透明導電性微粒子及びバインダー樹脂を溶媒中に分散させた透明導電膜形成用塗布液を用い、この塗布液を基材上に塗布して乾燥させることにより、透明導電膜を形成する。このような塗布法は、スパッタリング法に比べ、プラスチック基材にもほぼ制限なく適用できるうえ、大面積の透明導電膜を容易に形成しやすく、装置が簡便で生産性が高いため、製造コストが低いという特長を有している。
塗布法に用いる透明導電性微粒子としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウムなどを主成分とする導電性酸化物微粒子が従来から利用されてきた。その中でも、酸化インジウムに少量の錫をドープしたインジウム−錫酸化物(以下、ITOとも称する)微粒子は、導電性及び透明性のいずれにも優れているため、従来から広範に使用されている。
しかしながら、ITOをはじめとする導電性酸化物微粒子の表面は極めて高い親水性を示し、特に極性の低い疎水性有機溶剤系で使用する場合には、溶媒中に均一に分散し難いという欠点があった。そのため、これらの導電性酸化物微粒子は、有機溶媒に分散させて透明導電膜形成用塗布液とすることが難しく、従って十分な透明性と導電性を備えた透明導電膜を得ることは困難であった。
例えば、特開平1−261469号公報、特開平5−331386号公報、特開平6−049394号公報には、ITO微粒子の分散のために、各種カップリング剤等を分散剤として用いた透明導電膜形成用塗布液が提案されている。しかし、十分な透明性を得るには多量の分散剤を塗布液に配合することが必要となるため、塗膜の形成に際して多量の分散剤がバインダー成分の硬化を阻害したり、基材との密着性や塗膜自体の強度を低下させる傾向があった。また、ITO微粒子の表面を絶縁性である多量の分散剤が覆うことになるため、導電性が低下し、塗膜の導電性と透明性を両立させることができなかった。
特開平1−261469号公報 特開平5−331386号公報 特開平6−049394号公報
本発明は、このような従来の問題点を克服し、有機溶剤系で分散剤量が少なくても、優れた分散性を示す透明導電膜形成用塗布液を提供すること、及びこの塗布液を用いることで、得られる塗膜が基材との密着性に優れ、且つ良好な透明性と導電性を兼ね備えた透明導電性膜形成用塗布液を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、分子構造内に親水基としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤を分散剤として使用すれば、有機溶剤中に導電性酸化物微粒子を分散させる際に分散剤の添加量を大幅に低減しても良好な分散性が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明が提供する請求項1に係わる透明導電性微粒子分散液は、有機溶媒中に、平均粒径10〜200nmの導電性酸化物微粒子と分散剤を含有する透明導電性微粒子分散液において、上記分散剤が分子構造内に親水基としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤であることを特徴とする。
本発明が提供する請求項2に係わる透明導電性微粒子分散液は、上記請求項1の透明導電性微粒子分散液において、前記導電性酸化物微粒子が、酸化インジウム及び/又は酸化錫を主成分とし、その表面がハロゲンイオン又はハロゲン化合物で修飾されていることを特徴とする。
本発明が提供する請求項3に係わる透明導電性微粒子分散液は、上記請求項1又は2の透明導電性微粒子分散液において、前記分散剤が、下記化学式2で表されるリン酸エステル型アニオン系界面活性剤であることを特徴とする。
Figure 2006073300
(上記化学式2において、Rは水素原子又はメチル基を表わし、Xはメチレン基又はカルボニル基を表わし、(AO)はエチレンオキサイド0〜30モル%及び炭素数3以上のアルキレンオキサイド100〜70モル%で構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、Mは水素原子、Na原子又はアンモニウムを表わす。また、mは1〜2の整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)
本発明が提供する請求項4に係わる透明導電性微粒子分散液は、上記請求項1〜3のいずれかの透明導電性微粒子分散液において、前記分散剤の含有量が、前記導電性酸化物微粒子100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする。
また、本発明が提供する請求項5に係わる透明導電膜形成用塗布液は、上記請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性微粒子分散液100重量部に、バインダー樹脂25〜900重量部を配合させてなることを特徴とする。
本発明によれば、分散材として分子構造内に親水基としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤を用いることによって、少ない添加量の分散剤でも導電性酸化物微粒子を有機溶剤に均一に分散させることができ、優れた分散性の透明導電膜形成用塗布液を提供することができる。
従って、この分散剤の添加量が少ない透明導電膜形成用塗布液を用いることによって、簡便且つ低コストで優れた塗膜物性を実現することができ、得られる塗膜が基材との密着性に優れ、且つ良好な透明性と導電性を兼ね備えた透明導電膜形成用塗布液を提供することができる。
本発明においては、導電性酸化物微粒子の分散剤として、分子構造内に親水基としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤を使用する。リン酸エステル型アニオン系界面活性剤は、1種類を単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。好ましい分散剤としては、下記化学式3で表されるリン酸エステル型アニオン系界面活性剤がある。
Figure 2006073300
(上記化学式3において、Rは水素原子又はメチル基を表わし、Xはメチレン基又はカルボニル基を表わし、(AO)はエチレンオキサイド0〜30モル%及び炭素数3以上のアルキレンオキサイド100〜70モル%で構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、Mは水素原子、Na原子又はアンモニウムを表わす。また、mは1〜2の整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)
透明導電性微粒子分散液中における分散剤の含有量は、導電性酸化物微粒子100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部が更に好ましく、1〜2重量部が最も好ましい。上記分散剤の含有量が0.1重量部より少ないと、導電性酸化物微粒子が凝集しやすくなる。また、上記分散剤の含有量が10重量部より多いと、塗膜化した際に十分な塗膜強度が得られず、また基材との密着性が低下すると共に、導電性酸化物微粒子の表面を絶縁体である分散剤が過度に覆うことになるため導電性が低下する。
本発明で用いる導電性酸化物微粒子は、平均粒径が好ましくは10〜200nmであり、より好ましくは20〜100nmである。導電性酸化物微粒子の平均粒径が200nmより大きいと、塗膜を形成したときの透明性や平滑性が低下してしまう。また、平均粒径が10nmよりも小さいと、必要な分散剤の量が増加するため、膜強度、密着性、導電性が低下する。尚、導電性酸化物微粒子の形状は、特に制限はなく、球状、針状等であってよい。
導電性酸化物微粒子としては、従来から使用されている酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等を主成分とするものでよく、塗膜の導電性等を考慮すると、酸化インジウム及び/又は酸化錫を主成分とするものが好ましい。その中でも酸化インジウムを主成分とし、錫、リン、亜鉛、タングステン等の異種元素の酸化物を含有するもの、特に錫を含有するインジウム−錫酸化物(ITO)が好ましい。ITO中の錫の含有量は、酸化インジウムに対して0.5〜20重量%が好ましく、この範囲より多すぎても少なすぎても所望の導電性が得られない。尚、ITO中の錫の含有量は、5〜10重量%が更に好ましい。
また、導電性酸化物微粒子の表面は、塩素等のハロゲンイオンか、塩化物等のハロゲン化合物で修飾されていることが好ましい。導電性酸化物微粒子の表面がハロゲンイオン又はハロゲン化合物で修飾されていない場合、上記分散剤としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤を使用しても、所望の分散性を得ることが難しく、結果として形成した塗膜の導電性と透明性が低下しやすい。修飾方法については、導電性酸化物微粒子の表面にハロゲンイオン又はハロゲン化合物を吸着できれば、特に限定されるものではない。また、ハロゲンイオンやハロゲン化合物による表面修飾は、微粒子の製造工程において同時に行ってもよく、本発明の目的を害さない範囲で微粒子の製造後に行ってもよい。
導電性酸化物微粒子を分散させる有機溶媒としては、公知の有機溶剤を使用できる。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、3−メチル−メトキシ−プロピオネート(MMP)等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
これらの有機溶剤の中でも、上記リン酸エステル型界面活性剤を分散剤として使用する場合、特に極性の低い有機溶剤が好ましく、例えば、MIBK、MEK等のケトン類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、PGMEA、PE−AC等のグリコールエーテルアセテート類等、疎水性の高いものがより好ましい。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の透明導電性微粒子分散液の製造方法としては、例えば、導電性酸化物微粒子、分散剤、及び有機溶剤を予備混合した後、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル等の通常用いられる粉砕機を用い、湿式粉砕して分散させる。また、ホモジナイザー(ホモミキサー)、超音波分散等を利用して分散させることもできる。
湿式粉砕時の固形分濃度は、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%である。固形分濃度が70重量%よりも高いと流動性が低下して湿式粉砕が困難になり、10重量%よりも低いと生産性が悪化するうえ、後にバインダー樹脂成分等の入れ代が少なくなるため汎用性が低くなる。分散液中の最終的な固形分濃度は、使用する用途に応じて、有機溶剤による希釈率を加減することにより適宜調整することができる。
次に、本発明の透明導電性微粒子分散液を用いた透明導電膜形成用塗布液について説明する。塗布液に用いるバインダー樹脂としては、前記有機溶剤に溶解するものであれば特に制限はなく、乾燥硬化性、電子線硬化性、熱硬化性、光硬化性樹脂等の各種樹脂の中から、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル−スチレン共重合体、シリコーン樹脂等が挙げられる。
透明導電膜形成用塗布液中に含まれるバインダー樹脂の量は、導電性酸化物微粒子100重量部に対して、25〜900重量部の範囲が好ましく、100〜250重量部の範囲が更に好ましい。上記のバインダー樹脂量が900重量部より多い場合は、導電性酸化物微粒子同士の接触が妨げられるため、微粒子相互間の電子移動がスムースに行なわれず、所望の導電性を有する塗膜が得られない。また、バインダー樹脂量が25重量部よりも少ないと、塗膜化した際に十分な塗膜強度が得られず、また基材への密着性が低下する。従って、導電性及び透明性等の膜特性の向上と、膜自体の強度や基材との密着力とを考慮して、バインダー樹脂の含有量を定めることが好ましい。
尚、本発明の透明導電膜形成用塗布液には、上記透明導電性微粒子分散液とバインダー樹脂以外に、安定剤、硬化剤、重合開始剤など、従来から使用されている一般的な塗料添加剤が配合されていてもよく、用途に応じてこれらの添加剤を適宜選択して使用することができる。
上記した透明導電膜形成用塗布液は、透明導電性微粒子分散液に、バインダー樹脂又はバインダー樹脂を予め溶剤に溶解した樹脂溶液、必要に応じて、更に有機溶剤や各種塗料添加剤等を混合することにより得られる。これらの混合には羽根型撹拌機、ホモジナイザー、ディゾルバー、インペラーミル等を用いことが望ましいが、混合方法については特に限定されない。
このようにして得られた本発明の透明導電膜形成用塗布液を用いることによって、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明プラスチックフィルム、アクリル、塩ビ等のプラスチック板、ガラス板等の基材上に、塗布液を塗布、乾燥、硬化することにより、導電性及び透明性に優れた透明導電膜を形成することができる。
上記基材上への透明導電膜形成用塗布液の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、ブレード法、バーコート法、ディップ法、スピンコート法、テーブルコート法、スプレー法、グラビアロール法、リバースロール法、ダイレクトロール法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の塗布法を用いることができる。
また、塗布後の乾燥温度は分散に用いた有機溶剤の種類にもよるが、40〜150℃程度が好ましい。40℃未満では乾燥硬化が遅いうえ、空気中の水分の結露が起こりやすくなる。一方、150℃を超えると、例えば樹脂フィルム等を基材に用いた場合には、基材自体に変形が生じる可能性がある。更に、塗布、乾燥後の透明導電膜の厚みについては、用途にもよるが、導電性と透明性を考慮した場合、0.1〜10μm程度が適当である。
尚、透明導電膜上には、保護膜としてハードコート膜を設けてもよい。ハードコート膜は、ハードコート剤又はこれを必要に応じて溶剤を溶解した液を、透明導電膜上に塗布、乾燥、硬化させることにより形成することができる。その際の塗布、乾燥、硬化は、前記した透明導電膜形成用塗布液の場合と同様の方法及び条件で行うことができる。
ハードコート剤としては、特に制限されず、公知の各種ハードコート剤を用いることができる。例えば、シリコーン系、アクリル系、メラミン系等の熱硬化型ハードコート剤を用いることができ、その中でもシリコーン系ハードコート剤は高い硬度が得られる点で優れている。また、不飽和ポリエステル樹脂系、アクリル系等のラジカル重合性ハードコート剤、エポキシ系、ビニルエーテル系等のカチオン重合性ハードコート剤等の紫外線硬化型ハードコート剤を用いてもよい。紫外線硬化型ハードコート剤は、硬化反応性等の製造性の点から好ましい。これらの中でも、硬化反応性、表面硬度を考慮すると、アクリル系のラジカル重合性ハードコート剤が望ましい。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値の(%)を除いて「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
[実施例1]
表面が塩素イオンで修飾されている平均粒径60nmのITO微粒子(住友金属鉱山(株)製、商品名SUFP−HX)50g、分散剤としての脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(旭電化工業(株)製、商品名PS−440E)0.5g、有機溶剤のメチルイソブチルケトン(MIBK)49.5gを混合した後、ジルコニアビーズを用いたペイントシェーカーにより湿式粉砕して、ITO微粒子が分散した実施例1に係る透明導電性微粒子分散液を得た。この分散液中におけるITO微粒子の含有量は50重量%であり、分散剤の含有量はITO微粒子100重量部に対して1重量部であった。
上記分散液15.0gに、バインダー樹脂として紫外線硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学(株)製、商品名UV−1700B)7.5g、紫外線硬化剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、商品名ダロキュア1173)0.3g、有機溶剤のMIBK77.2gを混合・撹拌して、実施例1に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。尚、この塗布液中におけるバインダー樹脂(ウレタンアクリレートオリゴマー)の含有量はITO微粒子100重量部に対して100重量部であった。
上記塗布液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(テイジンデュポンフィルム(株)製、商品名テトロンHLEW)上に、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が3μmとなるように塗布し、70℃で2分乾燥した後、紫外線を照射することにより硬化させて、実施例1に係わる透明導電膜を形成した。この実施例1に係わる透明導電膜について、その膜特性、即ち表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値と、その膜強度、即ち鉛筆硬度、碁盤目剥離評価値を測定し、その結果を下記表1に示した。
ここで、上記表面抵抗値は、三菱油化(株)製のLoresta AP(MCP−T350)を用いて測定した。また、可視光透過率及びヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。尚、可視光透過率及びヘイズ値は、特に言及しない限り、透明導電膜と基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム/100μm:テトロンHLEW)とを含む値を示す。上記基材単体の可視光透過率は90%、ヘイズ値は1.8%である。
ヘイズ値(曇値)とは、光源からの全光線透過率に対し、直進光線を除いた拡散光線の透過率の割合をいう。従って、ヘイズ値が低くなれば、それだけ透明性が高くなる。また、ヘイズ値は、JIS
K 7105に規定される式、H=Td/Tt(ただし、Hはヘイズ、Ttは全光線透過率、Tdは拡散透過率を示す)により求めることができる。
また、上記膜強度における硬度は、JIS K5400に準拠して、東洋精機製作所製の引っかき塗膜硬さ試験機により、鉛筆硬度を測定して評価した。尚、上記基材単体の鉛筆硬度は「B」であった。また、膜の密着性は、JIS
K 5400に準拠した碁盤目剥離試験により、即ち、透明導電膜に1mm間隔で切れ目を縦横に入れて100個の碁盤目を作成し、その碁盤目上に粘着テープ(積水化学(株)製、商品名セキスイセロハンテープNo.252)を貼付け、次にこれを剥離して、碁盤目100個中の剥がれずに残った個数を計数した。
[実施例2]
分散剤として、上記実施例1の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)に代えて、芳香族系リン酸エステル型界面活性剤(旭電化工業(株)製、商品名CS−141E)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。
[実施例3]
有機溶剤として、上記実施例1のMIBKに代えてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。
[実施例4]
実施例1で用いたITO微粒子50g、分散剤の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)0.05g、有機溶剤(MIBK)49.95gを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。尚、分散剤の含有量はITO微粒子100重量部に対して0.1重量部であった。
[実施例5]
実施例1で用いたITO微粒子50g、分散剤の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)5g、有機溶剤(MIBK)45gを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。尚、分散剤の含有量はITO微粒子100重量部に対して10重量部であった。
[実施例6]
実施例1の表面が塩素イオンで修飾されたITO微粒子に代えて、表面が修飾されていない平均粒径60nmのITO微粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。
[比較例1]
実施例1で用いたITO微粒子50g、分散剤の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)0.04g、有機溶剤(MIBK)49.96gを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。尚、分散剤の含有量はITO微粒子100重量部に対して0.08重量部であった。
[比較例2]
実施例1で用いたITO微粒子50g、分散剤の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)6g、有機溶剤(MIBK)44gを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る透明導電膜を得た。この透明導電膜について、膜特性及び膜強度を実施例1と同様に測定し、その結果を下記表1に示した。尚、分散剤の含有量はITO微粒子100重量部に対して12重量部であった。
Figure 2006073300
上記表1の結果から分るように、実施例1〜6に係わる透明導電膜は、膜特性(表面抵抗、可視光透過率、ヘイズ値)及び膜強度(鉛筆硬度、碁盤目剥離評価値)が共に優れている。ただし、実施例6に係る透明導電膜は、表面が塩素イオン等で修飾されていないITO微粒子を用いているため、分散液及び塗布液中でのITO微粒子の分散性が若干低下し、実施例1〜5に係わる各透明導電膜に比べて膜特性及び膜強度が低下している。
一方、比較例1に係る透明導電膜は、ITO微粒子に対する分散剤の含有量が少な過ぎるため、ITO微粒子が分散液若しくは塗布液中で凝集しやすくなり、結果として透明導電膜のヘイズや膜強度が悪化した。また、比較例2に係る透明導電膜は、ITO微粒子に対する分散剤の含有量が多過ぎるため、バインダー樹脂の硬化が阻害されて十分な塗強度が得られないばかりか、ITO微粒子の表面を絶縁体である分散剤が過度に覆うことになり、導電性が極端に低下した。
[比較例3]
上記実施例1の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)を使用せず、その代わりに、メチルイソブチルケトン(MIBK)を同量(0.5g)用いたこと以外は実施例1と同様にして、ジルコニアビーズを用いたペイントシェーカーにより湿式粉砕したところ、得られた分散液は粘調なペースト状となり、最終的に流動性のある塗布液が得られなかった。
また、上記実施例1の脂肪族系リン酸エステル型界面活性剤(PS−440E)を使用せず、その代わりに、チタネート系カップリング剤(味の素(株)製、商品名KR−138S)又はアルミニウム系カップリング剤(味の素(株)製、商品名AL−M)を用いた場合も、得られた分散液は粘調なペースト状となり、最終的に流動性のある塗布液が得られなかった。
このように、有機溶剤系の透明導電膜形成用塗布液においては、分散剤としてリン酸エステル型界面活性剤を使用しない場合、分散液が粘調なペースト状になり、バインダー樹脂等を配合した際に透明導電性膜形成用塗布液として成立しないことが分る。


Claims (5)

  1. 有機溶媒中に、平均粒径10〜200nmの導電性酸化物微粒子と分散剤を含有する透明導電性微粒子分散液において、上記分散剤が分子構造内に親水基としてリン酸エステル基を有するアニオン系界面活性剤であることを特徴とする透明導電性微粒子分散液。
  2. 前記導電性酸化物微粒子が、酸化インジウム及び/又は酸化錫を主成分とし、その表面がハロゲンイオン又はハロゲン化合物で修飾されていることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性微粒子分散液。
  3. 前記分散剤が、下記化学式1で表されるリン酸エステル型アニオン系界面活性剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明導電性微粒子分散液。
    Figure 2006073300
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を表わし、Xはメチレン基又はカルボニル基を表わし、(AO)はエチレンオキサイド0〜30モル%及び炭素数3以上のアルキレンオキサイド100〜70モル%で構成されたポリオキシアルキレン基を表わし、Mは水素原子、Na原子又はアンモニウムを表わす。また、mは1〜2の整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)
  4. 前記分散剤の含有量が、前記導電性酸化物微粒子100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性微粒子分散液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性微粒子分散液100重量部に、バインダー樹脂25〜900重量部を配合させてなる透明導電膜形成用塗布液。


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