しかしながら、特許文献1に開示されたマイクロレンズのレンズ形状は、上述したように対称レンズのみであり、他のレンズ形状については言及されていない。したがって、例えば、光を透過させるべき領域である画素の開口領域が長方形等の異方的な形状である場合には、対称レンズとされるマイクロレンズでは十分に集光できない場合が考えられる。実際、液晶装置等の画素は、例えば電極線の如き光を透過させない部分によって形成される非開口領域を含むことが多く、光が透過することができる実質的な開口領域は、画素の形状と異なる場合が多い。更に、画像表示領域内にマトリクス状に配列される各画素の平面形状自体も、正方形ではなく、長方形である場合も多い。特許文献2に開示されたマイクロレンズは、概ね同一形状のマイクロレンズが複数集合したものであり、上述した集光性を高めるためのマイクロレンズの個別のレンズ形状については詳細な検討がなされていない。
また、通常の対称レンズを形成する方法でマイクロレンズアレイを形成した場合、隣接して形成されるマイクロレンズのレンズ曲面同士がぶつかることによってレンズ曲面が途切れた形状となり、レンズ特性を十分に引き出すことができない問題が生じる。より具体的には、例えば、平面形状が正方形であるレンズ形成領域にマイクロレンズを形成する場合、レンズ形成領域の対角方向に合わせて最適な曲率半径を有するレンズ曲面を形成すると、レンズ曲面は、レンズ形成領域の各辺に沿った方向で隣り合うマイクロレンズとぶつかり、レンズ形成領域の各辺に沿った方向ではレンズ曲面が途中で途切れてしまう。このような場合、レンズ形成領域の各辺に沿った方向ではレンズ曲面は最適な曲率半径を有しないことになり、マイクロレンズ全体のレンズ特性を十分に引き出すことができない。
他方、従来の対称レンズを形成する方法を用いて上述したレンズ形成領域の各辺に合わせてマイクロレンズを形成した場合、画素のサイズに合わせて設定されたレンズ形成領域のサイズよりマイクロレンズのサイズが小さくなり、レンズ特性が低下する。より具体的には、例えば、正方形のレンズ形成領域の対角方向に沿って、レンズ形成領域の端までマイクロレンズを形成することができない。
このように、従来の対称レンズではレンズ特性を十分に引き出すことができないばかりか、画素の開口領域に対する集光性を高めることができるように最適な形状に設計されたレンズ曲面をレンズ形成領域全体に形成することが困難である技術的問題がある。
そこで、本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、マイクロレンズのレンズ曲面全体を有効に利用することによって画素に対する集光性を更に高めることが可能なマイクロレンズアレイ板、及びその製造方法、並びにこのマイクロレンズアレイ板を備えた電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板は上記課題を解決するために、非開口領域を隔てて相隣接する開口領域を夫々含む複数の画素が配列されてなる画像表示領域を有する電気光学パネルに対向配置されるマイクロレンズアレイ板であって、前記画像表示領域に対向配置される透明基板と、前記複数の画素に夫々に対応して前記透明基板上に形成された複数のマイクロレンズとを備え、前記複数のマイクロレンズの夫々は、その中心を基準とする前記透明基板上における方位に応じて異なる曲率半径を持つと共に前記非開口領域へ向かう光を前記開口領域へ導くレンズ曲面を有する。
本発明に係るマイクロレンズ板は、非開口領域を隔てて相隣接する開口領域を夫々含む複数の画素が配列されてなる画像表示領域を有する電気光学パネルに対向配置されるマイクロレンズアレイ板である。ここで、本発明に係る「開口領域」とは、実質的に光が透過する画素内の領域であり、例えば、画素に集光される光が配線、遮光膜、半導体素子等で遮られることがない領域を意味する。画素内に配線等が配設されており、表示に寄与する光が透過しない領域は、本発明に係る「非開口領域」の一例に該当する。また、本発明に係る「電気光学パネル」とは、例えば、電気光学装置の一例である液晶装置が備える液晶パネルであり、より一般的には、電気光学装置を構成する構成要素のうちバックライトの如き光源を有していない構成要素を含む。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板は、前記画像表示領域に対向配置される透明基板と、前記複数の画素に夫々に対応して前記透明基板上に形成された複数のマイクロレンズとを備え、前記複数のマイクロレンズは夫々、その中心を基準とする前記透明基板上における方位に応じて異なる曲率半径を持つと共に前記非開口領域へ向かう光を前記開口領域へ導くレンズ曲面を有している。本発明に係る「その中心」とは、画素側からマイクロレンズを見た平面内における該マイクロレンズの中心を意味する。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板によれば、マイクロレンズの中心を基準として透明基板上における方位に応じて異なる曲率半径を有するレンズ曲面は非開口領域へ向かう光を開口領域に導くように設計されており、マイクロレンズは開口領域に対する集光性が高められている。より具体的には、例えば、開口領域が長方形の如き異方的な形状である場合には、集光性に優れた最適なレンズ曲面の曲率半径は、開口領域の例えば、長手方向、短手方向、及び対角方向に応じて異なっている。したがって、開口領域の形状に合わせてレンズ曲面を設計しておけば、開口領域に対する集光性を高めることができる。
また、本発明に係るマイクロレンズアレイ板によれば、レンズ曲面を、マイクロレンズの中心を基準とする透明基板における方位に応じて異なる曲率半径を持つように設計することによって、レンズ曲面の設計の自由度を高めることも可能である。
更に、本発明に係るマイクロレンズアレイ板によれば、透明基板上の複数のマイクロレンズのうち隣り合うように設けられたマイクロレンズの境界においてもレンズ曲面を有効に機能させることができ、マイクロレンズのレンズ曲面全体を介して開口領域に集光することが可能である。
尚、本発明に係るマイクロレンズアレイ板は、液晶装置の如き電気光学装置に適用されるマイクロレンズアレイ板に限定されることなく、マイクロレンズアレイ板を備える各種電気光学装置であれば、如何なる装置にも適用可能であることは言うまでもない。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の一の態様においては、前記透明基板に平行な平面に前記レンズ曲面を射影した射影領域のサイズは、前記画素のサイズと一致する。
この態様によれば、前記透明基板と平行な平面に前記レンズ曲面を射影した射影領域のサイズは、配列された複数のマイクロレンズのピッチと一致する。したがって、射影領域のサイズが画素のサイズと一致していることにより画素のピッチに合わせて各マイクロレンズが配置されていることになり、各マイクロレンズから、該マイクロレンズに対向する画素の開口領域に個別に集光することができる。これにより、マイクロレンズアレイ板が備える複数のマイクロレンズから個別に各画素の開口領域に向かって集光することができ、電気光学パネルの画像表示領域の明るさを向上させて表示性能を高めることが可能である。尚、前記平面は、マイクロレンズの底面と一致している場合に限定されるものではなく、画素のサイズとレンズ曲面のサイズとを比較するために想定した平面である。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の他の態様においては、前記レンズ曲面の下端は、前記平面上で前記レンズ曲面の周方向に沿って位置する。
この態様によれば、マイクロレンズのレンズ曲面のうち、例えば、縦又は横に相隣接する2つのレンズ曲面間の線分部分や、縦横に相隣接する4つのレンズ曲面間のコーナーに位置する点部分など、従来十分に機能していなかった、任意の方位についてのマイクロレンズの境界付近のレンズ曲面をも所望の曲率半径を有するように設計することができ、レンズ曲面全体を有効に利用して、集光性を高めることが可能である。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の他の態様においては、前記レンズ曲面と該レンズ曲面が隣接する他のレンズ曲面との境界線は、前記透明基板からみて凸形状を有する。
この態様によれば、上述したマイクロレンズアレイ板のように、レンズ曲面の下端が透明基板に平行な平面上に位置していない場合でも、任意の方位についてのマイクロレンズの境界付近のレンズ曲面をも所望の曲率半径を有するように設計することができ、レンズ曲面全体を有効に利用して、集光性を高めることが可能である。より具体的には、前記レンズ曲面と該レンズ曲面が隣接する他のレンズ曲面との境界線が、前記透明基板からみて凸形状を有する場合、即ち、マイクロレンズの中心から見た全方位でレンズ曲面の下端が同一の高さに位置していない場合でもレンズ曲面全体を相応に有効に利用して、集光性を高めることが可能である。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の他の態様においては、前記透明基板上で一の方位を向き且つ前記透明基板に垂直な断面上で前記レンズ曲面がなす曲線は、前記中心からの距離に応じて異なる曲率半径を持つ。
この態様によれば、前記透明基板上で一の方位を向き且つ前記透明基板に垂直な断面上で前記レンズ曲面がなす曲線が、前記中心からの距離に応じて異なる曲率半径を持っていることにより、集光性を高めるように、中心からの距離に応じてレンズ曲面の曲率半径を異ならせておくことができる。例えば、レンズ曲面のうち中心に近い領域の曲率半径に比べて中心から遠い領域の曲率半径を小さくすることによって、本来非開口領域に向かって導かれるはずであった光を開口領域に向かって大きく屈折させて集光することが可能である。これにより、例えば、予め中心からの距離に応じて曲率半径が最適になるようにレンズ曲面を設計しておけば、レンズ曲面全体の集光性を高めることができる。
本発明の第1のマイクロレンズアレイ板の製造方法は上記課題を解決するために、非開口領域を隔てて相隣接する開口領域を夫々含む複数の画素が配列されてなる画像表示領域を有する電気光学パネルに対向配置されるマイクロレンズアレイ板を製造するためのマイクロレンズアレイ板の製造方法であって、前記画像表示領域に対向配置される透明基板上に形成すべき複数のマイクロレンズのレンズ形成領域の夫々に、その中心を基準とする前記透明基板上における方位に応じて異なる曲率半径を持つと共に前記非開口領域へ向かう光を前記開口領域へ導くレンズ曲面に合わせた曲面を有する保護膜を形成する膜形成工程と、前記保護膜を介して前記透明基板をエッチングすることによって、前記透明基板に平行な平面上で前記レンズ曲面の周方向に沿って前記レンズ曲面の下端が位置するように、前記透明基板に前記レンズ曲面を有する複数の凹部又は凸部を形成するエッチング工程とを備える。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法によれば、上述した本発明のマイクロレンズアレイ板を製造することができる。先ず、前記画像表示領域に対向配置される透明基板上に形成すべき複数のマイクロレンズのレンズ形成領域の夫々に、その中心を基準とする前記透明基板上における方位に応じて異なる曲率半径を持つと共に前記非開口領域へ向かう光を前記開口領域へ導くレンズ曲面に合わせた曲面を有する保護膜、或いはエッチング用のレジスト又はマスクを形成する。ここで、本発明に係る「前記画像表示領域に対向配置される透明基板上に形成すべき複数のマイクロレンズのレンズ形成領域」とは、最終的にマイクロレンズアレイ板を電気光学パネルに対向配置した際に、透明基板上のうち電気光学パネルの画像表示領域に含まれる各画素に夫々対向する領域を意味する。このような領域をレンズ形成領域として、後述するエッチング工程を経て透明基板上に複数のマイクロレンズを形成する。
続いて、前記保護膜を介して前記透明基板をエッチングすることによって、前記透明基板に前記レンズ曲面を有する複数の凹部又は凸部を形成する。このような凹部又は凸部は、最終的に形成されるマイクロレンズのレンズ曲面の下端が、前記透明基板と平行な平面上で前記レンズ曲面の周方向に沿って位置するように形成される。そして、レンズ曲面を有する複数の凹部又は凸部をそのまま、或いは例えば透明樹脂の如きレンズ形成材料を凹部に充填することによって、複数のマイクロレンズが形成されたマイクロレンズアレイ板を形成することができる。
本発明の第2のマイクロレンズアレイ板の製造方法は上記課題を解決するために、非開口領域を隔てて相隣接する開口領域を夫々含む複数の画素が配列されてなる画像表示領域を有する電気光学パネルに対向配置されるマイクロレンズアレイ板を製造するためのマイクロレンズアレイ板の製造方法であって、前記複数の画素の配列に合わせて基板上に設けられる複数のレンズ形成領域の夫々に、その中心を基準とする前記基板上における方位に応じて異なる曲率半径を持つと共に前記非開口領域へ向かう光を前記開口領域へ導くレンズ曲面に合わせた曲面を有する保護膜を形成する膜形成工程と、前記保護膜を介して前記基板をエッチングすることによって、前記透明基板に平行な平面上で前記レンズ曲面の周方向に沿って前記レンズ曲面の下端が位置するように、前記基板に前記レンズ曲面を有する複数の凹部又は凸部を形成するエッチング工程と、前記複数の凹部の形状をレンズ形成部材に転写することによって複数のマイクロレンズを形成するレンズ形成工程とを備える。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法によれば、本発明の第1のマイクロレンズアレイ板の製造方法と同様に、上述した本発明のマイクロレンズアレイ板を製造することができる。
本発明に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法は、本発明の第1のマイクロレンズアレイ板の製造方法と比べて、基板を透明基板に限定しない点、及びエッチング工程の後に行われるレンズ形成工程を備えた点で異なる。即ち、膜形成工程及びエッチング工程に続いて、前記複数の凹部の形状をレンズ形成部材に転写することによって複数のマイクロレンズを形成する。より具体的には、例えば、凹部に充填された透明樹脂を硬化させた後、レンズ曲面が転写された硬化後の透明樹脂を基板から分離することによって、複数のマイクロレンズ及び該マイクロレンズと同じ材質で形成された透明基板を備えたマイクロレンズアレイ板を形成することができる。尚、本発明に係る「レンズ形成工程」においては、凹部に透明樹脂を充填する方法に限定されず、例えば、光透過性を有する材料を主たる材料として形成された塑性を有するレンズ形成部材を凹部を覆うように基板に押し付けてレンズ曲面を転写し、その後、レンズ曲面が転写されたレンズ形成部材を硬化させてマイクロレンズアレイ板を形成することも可能である。したがって、本発明に係る「基板」としては、透明基板及び非透明基板のどちらを用いてもよい。また、前記基板上に凸部を形成し、この凸部の表面をレンズ曲面としてマイクロレンズアレイ板を形成することも可能である。
本発明に係る電気光学装置は、上記課題を解決するために上述した本発明のマイクロレンズアレイ板を備えている。
本発明に係る電気光学装置によれば、本発明のマイクロレンズアレイ板と同様に画素への集光性を高めることができ、表示性能に優れた電気光学装置を提供することができる。また、本発明に係る電気光学装置は、上述したようにマイクロレンズアレイ板を具備してなるので、光の利用効率を高めることができ、且つ各画素に対する集光性及びコントラストを向上させることも可能である。したがって、本発明に係る電気光学装置は、高品質の表示を行うことができる。
本発明に係る電子機器は、上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を備えている。
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、投射型表示装置、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置の他に、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)、DLP(Digital Light Processing)等も実現することが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下、本実施形態では、説明の便宜上、先ず、マイクロレンズアレイ板及びこれに適用されるマイクロレンズの構成の各態様について説明した後、これらマイクロレンズアレイ板の製造方法を説明し、最後に、本発明に係るマイクロレンズアレイ板が適用される電気光学装置及び、これを備えた電子機器について説明する。
<第1実施形態>
(マイクロレンズアレイ板の構成)
先ず、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板20の概要について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板20の概略構成を示した斜視図である。図2は、マイクロレンズアレイ板20が備えるマイクロレンズのうち隣接する4つのマイクロレンズ500に係る部分を拡大して示した平面図である。図3は、図2のIII線−III´線断面図である。
図1において、本実施形態のマイクロレンズアレイ板20は、本発明に係る「透明基板」の一例である透明板部材210と、透明板部材210上にマトリクス状に平面配列された複数のマイクロレンズ500とを備えて構成される。透明板部材210は、例えば石英板等であり、マトリクス状に多数の凹部が形成されている。透明板部材210に掘られた凹部には例えば感光性樹脂材料からなる接着剤が充填されている。この接着剤を硬化させることによって接着層230が形成され、透明板部材210を覆うように配置されたカバーガラス200と透明板部材210とが相互に接着されている。カバーガラス200及び透明板部材210を接着する接着剤は、例えば、透明板部材210よりも高屈折率の透明な接着層である。
図2及び図3において、マイクロレンズ500のレンズ曲面は、相互に屈折率が異なる透明板部材210と接着層230とにより概ね規定されている。マイクロレンズ500は、図3において概ね下側に凸状に突出した、集光機能を有する所謂平凸レンズとして構築されている。
本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板20に適用されるマイクロレンズ500は、マイクロレンズ500の夫々は、その中心を基準とする透明板部材210上における方位に応じて異なる曲率半径を持つレンズ曲面を有する。更に、マイクロレンズ500は、例えば、後述する液晶装置等の電気光学装置が備える液晶パネルの画像表示領域に対向配置される。マイクロレンズ500の夫々は、遮光膜或いは配線等が配置された格子状の非開口領域と、この非開口領域を隔てて相隣接する開口領域とを夫々含む各画素に臨み、遮光膜或いは配線等に向かう光を開口領域に導く。従って、各マイクロレンズ500に入射する入射光は、マイクロレンズ500の屈折作用により、液晶パネルの如き電気光学パネルの各画素の開口領域に向けて集光される。これにより、画素における明るい表示が可能となり、画像表示領域における優れた表示性能を実現することが可能になる。
(マイクロレンズの構成)
続いて、図4乃至図7を参照しながら、マイクロレンズアレイ板20に適用されるマイクロレンズ500の構成について詳細に説明する。図4は、本実施形態のマイクロレンズ500の外形形状を示す斜視図であり、図5は、マイクロレンズ500を上側から見た平面図である。図6は、本実施形態のマイクロレンズ500の断面図であって、マイクロレンズ500の中心からの異なる方位に沿った面でマイクロレンズ500を切った夫々の断面を示す断面図である。図6(a)は、中心C1からX方向に沿った方位で切った断面、図6(b)は、中心C1Y方向に沿った方位で切った断面、図6(c)は、中心C1から対角方向に沿った方位で切った断面を示す。
図4、図5、及び図6においては、マイクロレンズ500の平面形状は透明板部材210のレンズ形成領域に合わせて矩形状であり、本実施形態では長方形とされる。尚、説明の便宜上、透明板部材210の平面上でマイクロレンズ500の長手方向をY方向、短手方向をX方向とし、マイクロレンズ500のレンズ曲面S1に沿って頂点P1から底面B1まで伸びる3つの曲線を夫々曲線CLX1、CLY1、及びCLD1とする。曲線CLX1は、頂点P1からレンズ曲面S1に沿ってX方向に沿って延びる曲線であり、曲線CLY1は同様にY方向に沿って延びる曲線であり、曲線CLDは対角方向に沿って延びる曲線である。中心C1を含みX方向、Y方向、及び対角方向の夫々に沿った面でマイクロレンズ500を切った断面を夫々500X、500Y、及び500Dとする。曲線CLX1、CLY1、及びCLD1を夫々底面B1に射影した射影線を線分LX1、LY1、及びLD1として設定する。線分LX1、LY1、及びLD1の長さの大小関係は、LX1<LY1<LD1である。断面500X、500Y、及び500Dとして、マイクロレンズ500の中心C1を含む中心軸CA1に対して片側のみの断面を夫々示している。
マイクロレンズ500のレンズ曲面S1は、頂点P1からマイクロレンズ500の底面B1の各辺の夫々に向かって延びており、本発明に係る「方位」の夫々一例であるX方向、Y方向及び対角方向に沿って異なる曲率半径を有する。より具体的には、図6(a)、(b)、及び(c)を比較すればわかるように、曲線CLX1、CLY1、及びCLD1の曲率半径は夫々異なっており、レンズ曲面S1は、これら曲線CLX1、CLY1、及びCLD1の夫々をつなぐ滑らかな曲面である。
曲線CLX1、CLY1、及びCLD1を夫々底面B1の対辺まで延在してなる曲線である。また、底面B1は、本発明に係る「透明基板に平行な平面」の一例であり、曲線CLX1、CLY1、及びCLD1の下端、即ちレンズ曲面S1の下端が底面B1上に位置し、レンズ曲面S1の周方向に沿って位置している。曲線CLX1、CLY1、及びCLD1をレンズ曲面S1に沿って底面B1の対辺まで延在してなる曲線は、夫々中心C1からX方向、Y方向、及び対角方向に向いている。尚、本実施形態のマイクロレンズ500のレンズ曲面S1を中心C1を含む面で切った断面に含まれる曲線、即ち、レンズ曲面S1に沿った曲線は、曲線CLX1、CLY1、及びCLD1と同様に頂点P1を通り、中心C1から見た任意の方向について底面B1上で互いに向かい合う対辺と交わっている。
レンズ曲面S1は、集光先である画素の開口領域の形状に合わせて形成されている。より具体的には、レンズ曲面S1は、開口領域の周りに存在する画素の配線或いは遮光膜の如き非開口領域に向かう光を屈折させて開口領域に導くように中心C1からの方位に応じて曲率半径が設計されている。レンズ曲面S1は開口領域の形状を反映させたうえで設計されることが該開口領域に効率良く集光するためには重要であり、例えば、開口領域の形状が長方形である場合には、レンズ曲面S1のうち開口領域の短辺方向に沿った方位の曲率半径を小さく設計し、開口領域の長手方向に沿った方位の曲率半径を短辺方向に比べて大きく設計することになる。開口領域が長方形である場合に限定されず、レンズ曲面S1の曲率半径は、開口領域の形状に応じて中心C1からの各方位について個別に設計される。これにより、従来の対称レンズでは困難であった集光性の更なる向上を可能にすることができる。
レンズ曲面S1は、開口領域の周りに存在する非開口領域に向かう光を屈折させて開口領域に導くように曲率半径が設計された上で、底面B1の各辺と交わるように形成されている。マイクロレンズ500の底面B1は、透明板部材210の個々のレンズ形成領域のサイズに合わせて規定されたサイズであり、本実施形態では、レンズ形成領域のサイズと底面B1のサイズとは一致している。即ち、底面B1は、本発明に係る「射影領域」の一例であり、レンズ曲面S1は、透明板部材210の平面上でレンズ形成領域全体に臨むように形成されている。ここで、レンズ形成領域は、マイクロレンズアレイ板20が対向配置される画像表示領域が備える各画素のピッチと一致している。したがって、レンズ曲面S1は一つの画素に臨み、この画素に効率良く集光することができる。更に、レンズ形成領域全体に臨むようにレンズ曲面S1が形成されていることから、レンズ形成領域全体がマイクロレンズ500を形成するために有効に利用されている。
図6において、断面500X、500Y、及び500Dに含まれる曲線CLX1、CLY1、及びCLD1は、中心軸CA1からの距離に応じて異なる曲率半径を有している。より具体的には、図6(a)において、曲線CLX1の夫々一部であって、線分LX1に沿って中心軸CA1からの距離が異なる線分CLXa1及びCLXb1の曲率半径は異なる。例えば、線分CLXa1の曲率半径は、中心軸CA1からの距離が線分CLXa1のそれより大きい線分CLXb1の曲率半径より大きい。同様に、曲線CLY1及びCLD1においても、中心軸CA1からの距離が異なる部分を構成する線分の曲率半径は異なる。したがって、集光性を高めるように中心軸CA1からの距離に応じてレンズ曲面S1の曲率半径が異なっている。
このように中心軸CA1からの距離に応じて異なる曲率半径を与えることで、各画素の非開口領域へ向かう光を開口領域に導きつつ、開口領域の中央付近に光が集光され過ぎる事態を避けることができ、該中央付近における液晶や配向膜の劣化を効果的に防止することも可能となる。尚、本実施形態では、X方向、Y方向、対角方向の3つの方向に沿った曲線CLX、CLY、及びCLDを例に挙げてレンズ曲面S1内における曲率半径の相違について説明したが、X方向、Y方向、及び対角方向以外の方位についても、集光性を高めるように曲率半径が個別に設計されている。
<第2実施形態>
次に、図7乃至図11を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズアレイ板の他の態様、及びこの態様に適用されるマイクロレンズの構造について説明する。ここで、第2実施形態で説明するマイクロレンズ600の底面B2は、マイクロレンズ600を説明するうえで便宜上設定したものであり、必ずしも底面B2によってマイクロレンズ600の底面が規定されるわけではないことを留意されたい。同様に第3実施形態の界面B3も、必ずしもマイクロレンズ700の底面を規定するものではない。
(マイクロレンズアレイ板の構成)
図7乃至図9を参照しながら、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板120の概要について説明する。図7は、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板120の概略構成を示した斜視図である。図8は、マイクロレンズアレイ板120が備えるマイクロレンズ600のうち隣接する4つのマイクロレンズ600に係る部分を拡大して示した平面図である。図9は、図8のIX−IX´線断面図である。
図7において、本実施形態のマイクロレンズアレイ板120は、透明板部材310と、透明板部材310上にマトリクス状に平面配列された複数のマイクロレンズ600とを備えて構成される。透明板部材310、接着層330、カバーガラス300は、第1実施形態の透明板部材210、接着層230、カバーガラス200と同様の材料及び機能等を有する。また、マイクロレンズアレイ板120は、マイクロレンズアレイ板20と同様に、例えば、液晶装置等の電気光学装置が備える液晶パネルの画像表示領域に対向配置され、画素の開口領域に対する優れた集光性を有する。マイクロレンズアレイ板20及び120を比べた場合の相違点としては、隣接するマイクロレンズ600間の接続態様がマイクロレンズ500と異なる点が挙げられる。より具体的には、レンズ曲面S2がカバーガラス300と交わることなく、接着層330を介してカバーガラス300と離間されている。但し、後述するように、レンズ曲面S2は、底面B2の4つの頂点で底面B2と交わっている。
図8及び図9において、マイクロレンズ600は平面的に複数配列されており、マイクロレンズ600のレンズ曲面は、相互に屈折率が異なる透明板部材310と接着層330とにより概ね規定されている。マイクロレンズ600は、図3において概ね下側に凸状に突出した凸レンズとして構築されている。隣接するマイクロレンズ600のレンズ曲面は、大部分においてマイクロレンズ600の底面と交わることなく、カバーガラス300のマイクロレンズ600が形成された側で互いに交わっている。
(マイクロレンズの構成)
図10乃至図11を参照しながら、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板120に適用されるマイクロレンズ600について詳細に説明する。図10は、マイクロレンズ600の外形形状を示す斜視図である。図11は、マイクロレンズ600の断面図であって、マイクロレンズ600の中心からの異なる方位に沿った面でマイクロレンズ600を切った夫々の断面を示す断面図である。図11(a)は、中心C2からX方向に沿った方位で切った断面、図11(b)は、中心C2Y方向に沿った方位で切った断面、図11(c)は、中心C2から対角方向に沿った方位で切った断面を示す。尚、本実施形態では、マイクロレンズ600の平面形状が長方形である場合を例に挙げて説明するが、マイクロレンズ600の平面形状は、長方形に限定されるものではなく、例えば、正方形であってもよい。
図10及び図11において、第1実施形態と同様に、透明板部材310の平面上でマイクロレンズ600の長手方向をY方向、短手方向をX方向とし、マイクロレンズ600のレンズ曲面S2に沿って頂点P2からマイクロレンズ600の外側に向かって伸びる3つの曲線を夫々曲線CLX2、CLY2、及びCLD2とする。曲線CLX2は、頂点P2からレンズ曲面S2に沿ってX方向に沿って延びる曲線であり、曲線CLY2は同様にY方向に沿って延びる曲線であり、曲線CLD2は対角方向に沿って延びる曲線である。また、中心C2を含みX方向、Y方向、及び対角方向の夫々に沿った面でマイクロレンズ600を切った断面を夫々600X、600Y、及び600Dとする。マイクロレンズ600の底面B2の平面形状は、透明板部材310のレンズ形成領域に合わせて長方形である。説明の便宜上、曲線CLX2、CLY2、及びCLD2を夫々底面B2に射影した射影線を線分LX2、LY2、及びLD2とする。これら線分LX2、LY2、及びLD2の長さの大小関係は、LX2<LY2<LD2である。尚、断面600X、600Y、及び600Dとして、マイクロレンズ600の中心C2を含む中心軸CA2に対して片側のみの断面を夫々示している。
マイクロレンズ600のレンズ曲面S2は、第1実施形態と同様に、マイクロレンズ600の底面B2におけるマイクロレンズ600の中心C2からの方位に応じて曲率半径が異なっている。より具体的には、レンズ曲面S2は、頂点P2からマイクロレンズ600の底面B2の各辺に向かって夫々延びる曲面であり、例えば、図11(a)、(b)、及び(c)を比較すればわかるように、曲線CLX2、CLY2、及びCLD2の曲率半径は夫々異なっている。したがって、レンズ曲面S2は、X方向、Y方向及び対角方向に沿って異なる曲率半径を有する。レンズ曲面S2は、X方向、Y方向、及び対角方向に限定されず、集光先である画素の開口領域に対する集光性が高められるように中心軸CA2からの各方位に応じて曲率半径が異なっている。より具体的には、レンズ曲面S2は、開口領域の周りの非開口領域に向かう光を屈折させて開口領域に導くように中心C2からの方位に応じて曲率半径が設計されている。
マイクロレンズ600が形成される透明板状部材310のレンズ形成領域は、マイクロレンズアレイ板120が対向配置される画像表示領域が備える各画素のピッチと一致している。したがって、レンズ曲面S2は、第1実施形態と同様に、一つの画素に臨み、この画素に効率良く集光することができる。更に、レンズ形成領域全体に臨むようにレンズ曲面S2が形成されていることから、レンズ形成領域全体がマイクロレンズ600に有効に利用されている。
マイクロレンズ600は、マイクロレンズ600と隣接するマイクロレンズとの境界として、断面CSX2及びCSY2を有している。断面CSX2は図中Y方向に沿って延在し、断面CSY2は図中X方向に沿って延在する。断面CSX2及びCSY2の上側の曲線は、本発明に係る「境界線」の一例であり、カバーガラス300側からみて凸形状を有している。したがって、レンズ曲面S2は、底面B2の各頂点で底面B2と交わるのみである。このように、マイクロレンズ600は、第1実施形態に係るマイクロレンズ500間の境界が底面B1の各辺である場合と異なっている。このようなマイクロレンズ600でも、レンズ形成領域を有効に利用することができ、レンズ曲面S2に含まれる領域のうち隣接するマイクロレンズとの境界付近の領域は、最適な曲率半径を有している。
図11において、第1実施形態と同様に、断面600X、600Y、及び600Dは、中心軸CA2からの距離に応じて異なる曲率半径を有している。より具体的には、図11(a)において、図6(a)に示した線分CLX1a及びCLX1bと同様に、線分CLXa2及びCLXb2の各部分の曲率半径は集光性を高めるように夫々最適な値に設計されている。また、図11(b)及び(c)においても同様である。したがって、隣り合うレンズ曲面S2が、底面B2の上側で交わる場合であっても、レンズ曲面S2に含まれる領域のうち隣接するマイクロレンズ600の境界付近の領域でも開口領域に集光することが可能である。また、図X方向、Y方向、及び対角方向以外の方位についても、集光性が高まるようにX方向、Y方向、及び対角方向と同様に曲率半径が個別に設計されていることから、集光先である画素の開口領域全体に効率良く集光することが可能である。
<第3実施形態>
(マイクロレンズの構成)
次に、図12乃至図13を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズアレイ板に適用なマイクロレンズの構造について説明する。尚、本実施形態に係るマイクロレンズ700は、第2実施形態のマイクロレンズと同様の配置でマイクロレンズアレイ板に形成される。また、本実施形態では、マイクロレンズ700と接着剤層との界面B3を介してマイクロレンズ700がカバーガラスに臨むように形成されている。界面B3は、マイクロレンズ700のうちカバーガラスに最も近い部分を結んだ面である。図12は、本実施形態のマイクロレンズ700の外形形状を示す斜視図であり、図13は、本実施形態のマイクロレンズ700の断面図であって、マイクロレンズ700の中心からの異なる方位に沿った面でマイクロレンズ700を切った夫々の断面を示す断面図である。図13(a)は、中心C3からX方向に沿った方位で切った断面、図13(b)は、中心C3からY方向に沿った方位で切った断面、図13(c)は、中心C3から対角方向に沿った方位で切った断面を示す。
図12及び図13において、透明板部材の平面上でマイクロレンズ700の長手方向をY方向、短手方向をX方向とし、マイクロレンズ700のレンズ曲面S3に沿って頂点P3から底面B3まで伸びる3つの曲線を夫々曲線CLX3、CLY3、及びCLD3とする。曲線CLX3は、頂点P3からレンズ曲面S3に沿ってX方向に沿って延びる曲線であり、曲線CLY3はY方向に沿って延びる曲線であり、曲線CLD3は対角方向に沿って延びる曲線である。また、中心C3を含みX方向、Y方向、及び対角方向の夫々に沿った面でマイクロレンズ700を切った断面を夫々700X、700Y、及び700Dとする。マイクロレンズ700の底面B3の平面形状は、マイクロレンズアレイ板に含まれる透明板部材のレンズ形成領域に合わせた形状であり、本実施形態では長方形である。説明の便宜上、曲線CLX3、CLY3、及びCLD3を夫々底面B3に射影した射影線を線分LX3、LY3、及びLD3とする。これら線分LX3、LY3、及びLD3の長さの大小関係は、LX3<LY3<LD3である。尚、断面700X、700Y、及び700Dとして、マイクロレンズ700の中心C3を含む中心軸CA3に対して片側のみの断面を夫々示している。
マイクロレンズ700のレンズ曲面S3は、マイクロレンズ700と接着剤層710との界面B3におけるマイクロレンズ700の中心C3からの方位に応じて曲率半径が異なっている。より具体的には、レンズ曲面S3は、頂点P3からマイクロレンズ700の外側に向かって傾斜した曲面であり、曲線CLX3、CLY3、及びCLD3の曲率半径は夫々異なっている。したがって、レンズ曲面S3は、X方向、Y方向及び対角方向に沿って異なる曲率半径を有する。レンズ曲面S3は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、集光先である開口領域の平面形状に合わせて各方位に沿った曲率半径が設計されている。したがって、従来の対称レンズでは困難であった集光性の更なる向上を可能にすることができる。
レンズ曲面S3は、非開口領域に向かう光を屈折させて開口領域に導くように中心C3からの方位に応じて曲率半径が設計された結果、隣接するマイクロレンズ700と接する接着層で互いに交わる。
マイクロレンズ700の界面B3は、第2実施形態と同様に透明板部材上のレンズ形成領域のサイズと底面B3のサイズは一致している。したがって、透明板部材上に複数は配置されるマイクロレンズ700のピッチは、マイクロレンズアレイ板が対向するように配置される画素のピッチと一致する。
マイクロレンズ700は、マイクロレンズ700と隣接するマイクロレンズとの境界として、断面CSX3及びCSY3を有している。断面CSX3は図中Y方向に沿って延在し、断面CSY3は図中X方向に沿って延在する。
図13において、第1実施形態及び第2実施形態第と同様に、断面700X、700Y、及び700Dは、中心軸CA3からの距離に応じて異なる曲率半径を有しており、マイクロレンズ700は開口領域に対する集光性が高められている。より具体的には、図6(a)に示した線分CLXa1及びCLXb1と同様に、線分CLXa3及びCLXb3の各部分の曲率半径は集光性を高めるように夫々最適な値に設計されている。同様に、X方向、Y方向、及び対角方向以外の方位についても、集光性が高まるようにX方向、Y方向、及び対角方向と同様に曲率半径が個別に設計されていることから、集光先である画素の開口領域全体に効率良く集光することが可能である。
また、マイクロレンズ700は、マイクロレンズ600と同様に隣接するマイクロレンズとの境界である断面CSX3及びCSY3を有し、断面CSX3及びCSY3の上側を規定する線分がカバーガラス30に対して凸形状を有している。このようなマイクロレンズ700によっても、レンズ曲面全体を有効に利用して集光性を高めることが可能である。
以上、説明したように本発明に係るマイクロレンズアレイ板によれば、画素の開口領域の形状に合わせてレンズ曲面の曲率半径を各マイクロレンズの中心からの方位に応じて異ならせて設計することによって、開口領域に対する集光性を高めることが可能であり、例えば、液晶装置等の電気光学装置の表示特性を高めることができる。
(マイクロレンズアレイ板の製造方法)
図14乃至図16を参照しながら、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法の各種態様について説明する。図14及び図15は、夫々本発明の第1のマイクロレンズアレイ板の製造方法の各態様を示す工程断面図である。図16は、本発明の第2のマイクロレンズアレイ板の製造方法を示す工程断面図である。尚、以下で説明するマイクロレンズアレイ板の製造方法の各工程で保護膜、透明板部材、或いは基板に形成される凹部或いは凸部は、最終的に形成されるマイクロレンズのレンズ曲面に合わせて形成されており、マイクロレンズの中心からの方位に応じて異なる曲率半径を有している。
図14(a)において、平板状の透明板部材110上に、本発明に係る「保護膜」の一例であるレジスト膜111を形成する。レジスト膜111上には複数の凹部112が形成されている。凹部112の内面は、本発明に係る「レンズ曲面に合わせた曲面」の一例であり、一連の工程を経て最終的に形成されるマイクロレンズアレイ板が備えるマイクロレンズのレンズ曲面の形状に合わせて形成されている。凹部112は、レジスト膜111の成膜条件等が調整されることによって、図中上側から見た平面内で透明板部材110上のレンズ形成領域117に一致するようにレジスト膜111に形成されている。レンズ曲面に合わせた曲面を有するレジスト膜111を形成する場合、一旦透明板部材110上に一様な層厚を有するレジスト膜を形成した後、例えば、グレイスケールマスク或いは面積諧調マスクを用いてレンズ形成領域117のレジスト膜を除去し、所望の曲面を有する凹部112を形成する。尚、マイクロレンズアレイ板の製造方法の他の態様においても、同様の方法を用いてレジスト膜或いは基板に所望の曲面を形成することができる。
図14(b)において、レジスト膜111の上側から順次レジスト膜111及び透明板部材110をエッチングする。エッチング方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いればよく、レジスト膜111の上側からドライエッチングを施した場合、透明板部材110の表面のうち凹部112の下側の領域が他の領域より先にエッチングされる。
図14(c)において、透明板部材110に凹部112の内面の形状と同一の凹部113が複数形成される。
図14(d)において、透明樹脂を凹部113に充填し、その上にカバーガラス114を配置する。これに続いて、透明樹脂を硬化させることによって、複数のマイクロレンズ115を備えるマイクロレンズアレイ板116を形成することができる。このようなマイクロレンズアレイ板の製造方法によれば、上述した本実施形態のマイクロレンズアレイ板を容易に形成することが可能である。
次に、図15を参照しながら、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法の他の例について説明する。
図15(a)において、透明板部材150上に複数の凸部152が形成されたレジスト膜151を形成する。凸部152の外面は、本発明に係る「レンズ曲面に合わせた曲面」の一例であり、レジスト膜151の成膜条件等が調整されることによって、最終的に形成されるマイクロレンズのレンズ曲面と同形状の曲面とされており、且つ透明板部材150上のレンズ形成領域に合わせた位置に形成されている。
図15(b)において、レジスト膜151の上側からレジスト膜151及び透明板部材150を順次エッチングする。エッチング法としては、上述したエッチング法と同様にドライエッチング法を用いればよい。レジスト膜151の上側からドライエッチングを施した場合、透明板部材150はレジスト膜151の薄い領域から先にエッチングされる。
図15(c)において、透明板部材150に凸部152と同一形状の凸部153が複数形成される。凸部153の外面は、レジスト膜151に形成されていた凸部152の外面の形状と一致する。したがって、複数の凸部153を透明板部材150上に配列された複数のマイクロレンズとすれば、透明板部材150と透明板部材150上に配列された複数のマイクロレンズとを備えたマイクロレンズアレイ板154が形成されることになる。
次に、図16を参照しながら、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法の他の例について説明する。
図16(a)において、基板160上に複数の凹部161を形成する。凹部161の内面は、最終的に形成されるマイクロレンズのレンズ曲面と同一曲率半径を有する曲面である。複数の凹部161は、例えば、図14(a)から(c)に示した工程と同様の工程によって基板160上に形成される。ここで、基板160は、最終的に形成されるマイクロレンズアレイ板に含まれないことから、光透過性を有しない材料を主たる材料として形成されたものを用いることができる。
図16(b)において、本発明に係る「レンズ形成材料」の一例である透明樹脂を充填し、透明樹脂層162を硬化させる。
図16(c)において、硬化された透明樹脂層162を基板160から剥離することによって、凹部161の内面の形状が転写されることによって形成される複数のマイクロレンズ163と、その上に平坦な面を有して延在する透明樹脂層162とを備えるマイクロレンズ164が形成される。また、本例に係るマイクロレンズアレイ板の製造方法においては、凹部161に透明樹脂を充填する代わりに、光透過性を有し、且つ塑性を有する板状部材を凹部161を覆うように基板160に押し付けることによって、凹部161の形状が転写された板状部材を硬化させてマイクロレンズアレイ板とすることもできる。
以上説明したマイクロレンズアレイ板の製造方法の各態様によれば、本発明に係るマイクロレンズアレイ板を形成することが可能である。
(電気光学装置)
次に、図17乃至図20を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズアレイ板が適用された電気光学装置について説明する。図17は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板として用いられるマイクロレンズアレイ板側から見た平面図であり、図18は、図17のH−H'断面図である。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。尚、本実施形態の液晶装置80では、上述した第2実施形態のマイクロレンズアレイ板120を適用している。
図17及び図18において、液晶装置80では、TFTアレイ基板10と対向基板として用いられるマイクロレンズアレイ板120とが対向配置されている。TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板120との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板120とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板120との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、マイクロレンズアレイ板120側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
マイクロレンズアレイ板120の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板120との間で電気的な導通をとることができる。
図18において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、詳細な構成については後述するが、マイクロレンズアレイ板120上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
尚、図17及び図18に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
次に、図19を参照しながら、上述した液晶装置80に設けられたマイクロレンズアレイ板120の詳細な構成と、その機能について説明する。図19は、複数の画素について液晶装置80の断面の構成をより詳細に示す断面図である。即ち、図19によってマイクロレンズ600の詳細な機能が説明される。
図19において、マイクロレンズアレイ板120は、例えば、透明基板210上に形成された遮光膜23を備えており、遮光膜23は図中奥行き方向及び横方向に沿って格子状の平面パターンを有する。マイクロレンズアレイ板120は、遮光膜23によって規定される非開口領域を備えており、遮光膜23によって区切られた領域が開口領域800となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられる容量電極やデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
各マイクロレンズ600は各画素に対応するように配置される。より具体的には、マイクロレンズアレイ板120には、各画素毎に開口領域800及び該開口領域800の周辺に位置する非開口領域を少なくとも部分的に含む領域に矩形状の平面形状を有するマイクロレンズ600が設けられている。
図19において、透明板部材310上には遮光膜23を覆うように、透明導電膜からなる対向電極21が形成されている。更に、対向電極21上には、図示しない配向膜が形成されている。加えて、透明基板310上の各開口領域800にカラーフィルタが形成されてもよい。
他方、TFTアレイ基板10上の各開口領域800に対応する領域には画素電極9aが形成されている。また、画素スイッチング用のTFT30や、画素電極9aを駆動するための走査線やデータ線等の各種配線並びに蓄積容量等の電子素子が、非開口領域に形成されている。このように構成すれば、当該電気光学装置における画素開口率を比較的大きく維持することが可能となる。
マイクロレンズアレイ板120に入射される投射光等の光は、マイクロレンズ600のレンズ曲面全体で集光される。尚、図19中、マイクロレンズ600によって集光された光の経路の概略を一点鎖線で示す。マイクロレンズ600によって集光された光は液晶層50を透過して画素電極9aに照射され、該画素電極9aを通過して表示光としてTFTアレイ基板10より出射される。ここで、光源が配置された図中上側からマイクロレンズアレイ板120に入射する光のうち非開口領域の一例である遮光膜23に向かう光もマイクロレンズ600の集光作用により開口領域800に入射させることができ、各画素における実行開口率を高めることが可能である。
また、図19においては、光の出射側である画素電極側に向かってマイクロレンズ600が凹になるようにマイクロレンズ600を配置してなる液晶装置80の構成を示してあるが、マイクロレンズ600を同図中上側に向けて凹となるようにマイクロレンズアレイ板120を配置してもよい。
図20は、マイクロレンズによって開口領域に集光される様子を模式的に示した模式図である。
図20において、マイクロレンズ902のレンズ曲面が所望の曲率半径を有するように設計しておくことにより、画素900の開口領域901に効率良く集光することができる。図20においては、開口領域901の形状の一例として五角形を示しているが、開口領域901の形状は本例に限定されるものではなく、如何なる形状であってもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置の一例である液晶装置80は、データ線駆動回路101や走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated bonding)基板上に実装された駆動用LSIを、外部回路接続端子102に異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続されていてもよい。また、マイクロレンズアレイ板120の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置されてもよい。
尚、上述した電気光学装置では、マイクロレンズアレイ板120をTFTアレイ基板10として利用することも可能である。或いは対向基板として(マイクロレンズアレイ板120ではなく)単純にガラス基板等に対向電極や配向膜が形成されたものを使用して、TFTアレイ基板10側にマイクロレンズアレイ基板120を取り付けることも可能である。即ち、本実施形態のマイクロレンズアレイ板120を、TFTアレイ基板10側に作り込むこと或いは取り付けることが可能である。
<電子機器>
上述した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例たる投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。ここに、図21は、投射型カラー表示装置の図式的断面図である。
図21において、投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーンにカラー画像として投射される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うマイクロレンズの製造方法、該製造方法により製造されるマイクロレンズ、該マイクロレンズを備えた電気光学装置及び該電気光学装置を具備してなる電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
マイクロレンズアレイ板 20,120、マイクロレンズ 500,600,700、透明板部材 110,150,210,310、基板 160、レジスト膜 111,151、