JP2006071020A - リニアガイド装置 - Google Patents

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康之 清水
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Abstract

【課題】異物混入潤滑下で使用されても長寿命なリニアガイド装置を提供する。
【解決手段】リニアガイド装置は、転動体転動溝10を有する案内レール1と、転動体転動溝10に対向する転動体転動溝11を有するスライダ2と、両転動体転動溝10,11の間に転動自在に配された複数の転動体3と、を備えている。転動体3は、合金成分として、炭素を0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素を0.5質量%以上2質量%以下、マンガンを0.2質量%以上2質量%以下、クロムを0.5質量%以上2質量%以下含有する鋼材で構成されている。この鋼材は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも摩擦係数が低い。そして、この転動体3は、浸炭窒化処理が施されていて、その表面に、窒素濃度が0.3質量%以上2質量%以下であり且つ残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である浸炭窒化層が形成されている。
【選択図】 図2

Description

本発明はリニアガイド装置に関する。
リニアガイド装置は、高い面圧下で剪断力を繰り返し受けるという厳しい条件で使用されるため、その構成部材は一般的には特殊材料で製作される。すなわち、リニアガイド装置の構成部材は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2で形成され、焼入れ・焼戻しにより表面硬さがHRC58〜64に調整されて、必要な転動疲労寿命が確保されている。また、SCR420,SCM420,SAE4320H等の肌焼鋼で形成される場合には、浸炭処理又は浸炭窒化処理と焼入れ・焼戻しとにより表面硬さがHRC58〜64、芯部の硬さが30〜48に調整されて、必要な転動疲労寿命が確保されている。
近年、製鋼技術の飛躍的な進歩によって鋼の清浄度が格段に進歩したため、清浄な潤滑剤による潤滑下において、計算寿命を満足することなく早期に転動疲労によるフレーキングが生じて不具合が発生することはほとんどなくなっている。ただし、転がり軸受の場合には、実際には潤滑剤中に異物(例えば、金属の切粉,削り肩,バリ,及び摩耗粉)が混入したり、劣悪な潤滑環境下で使用されることがあるので、定格疲れ寿命を満足できずに早期にフレーキングが生じて不具合が発生する場合がある。なお、以降の説明においては、清浄な潤滑剤による潤滑下において介在物等を起点として生じるフレーキングを内部起点型フレーキングと記し、潤滑剤中に異物が混入しているような劣悪な潤滑環境下で表面を起点として生じるフレーキングを表面起点型フレーキングと記す。
このような問題を解決するため、例えば特許文献1,2には、浸炭処理等の熱処理を施して低中炭素低合金鋼表面に球状炭化物を析出させることにより、軸受部品の表面硬さを向上させ、内部起点型フレーキングによる寿命低下を抑制する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1,2のように軌道輪及び転動体の表面硬さを向上させると、異物による圧痕の生じ方は小さくなるが、その反面靱性が乏しくなるため、潤滑剤中の異物により引き起こされる損傷箇所からクラックが発生し、それが起点となって早期にフレーキングが発生する場合があった。このように、表面硬さの向上では、寿命の改善は不十分であった。
そこで、特許文献3〜5には、表面層の残留オーステナイト量と硬さ、又は、炭窒化物の含有量等を適正値とすることによって、異物の噛み込みにより生じる圧痕縁における応力集中を緩和し、表面起点型フレーキングに対して寿命向上を図る技術が開示されている。
また、潤滑剤中の異物による表面損傷とフレーキングの発生メカニズム、及び、残留オーステナイトによる圧痕縁の応力集中低減効果と寿命延長効果については、非特許文献1に詳細に報告されており、現在の表面起点型フレーキングに対する寿命向上技術の基礎となっている。
特公昭62−24499号公報 特開平2−34766号公報 特開昭64−55423号公報 特開平4−26752号公報 特開平5−78814号公報 古村恭三郎,村上保夫,阿部力,"The Development of Bearing Steels for Long Life Rolling Bearings Under Clean Lubrication and Contaminated Lubrication ",ASTM STP 1195 ,199-210 (1993)
リニアガイド装置が清浄な環境下で使用される場合には、転動体とスライダ及び案内レールとの接触部分において問題は生じないが、一般の工場等の開放された環境下で使用される場合には、周囲から異物等が前記接触部分に侵入する。清浄な環境下においては十分な転動疲労寿命を有していても、潤滑剤中に異物が混入した劣悪な環境下(以降は「異物混入潤滑下」と記すこともある)では、転動疲労寿命が大きく低下するおそれがある。これは、異物の噛み込みによる圧痕縁の盛り上がり部における応力集中が原因であると考えられている。
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、異物が混入した状態で駆動されても剥離等の損傷が生じにくく長寿命なリニアガイド装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに前記軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体転動溝の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるリニアガイド装置において、前記転動体は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも摩擦係数が低い鋼材で構成され、残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である表面層を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2のリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに前記軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体転動溝の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるリニアガイド装置において、前記転動体は、合金成分として、炭素を0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素を0.5質量%以上2質量%以下、マンガンを0.2質量%以上2質量%以下、クロムを0.5質量%以上2質量%以下含有する鋼材で構成され、窒素濃度が0.3質量%以上2質量%以下であり且つ残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である浸炭窒化層を表面に備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のリニアガイド装置は、請求項1又は請求項2に記載のリニアガイド装置において、前記転動体の転動面の表面粗さが前記両転動体転動溝の表面粗さよりも小さいことを特徴とする。
異物混入潤滑下におけるリニアガイド装置の寿命の低下は、これまでは、異物の噛み込みによって軌道面(転動体転動溝の表面)又は転動体の転動面に形成された圧痕縁の盛り上がり部における応力集中が原因とされていた。よって、これまでは、軌道面又は転動体の転動面を硬くして圧痕そのものを形成させ難くするとともに、圧痕が形成された場合であっても、圧痕縁の盛り上がり部における残留オーステナイトの応力集中を軽減することにより、長寿命化を図っていた。
本発明者らは、前記盛り上がり部における応力集中によって疲労は進行するが、圧痕縁からクラックを発生,伝播させる力は、転動体と盛り上がり部との間に生じる接線力であると考えた。そして、圧痕縁における接線力を低減できれば、クラックの発生,伝播を結果的に遅延させることができ、長寿命化が図れるとの仮説を立てて、鋭意検討を行なった。その結果、転動体を前述のような鋼材で構成し、さらに転動体に前述のような表面層を設けて、軌道面(転動体転動溝の表面)と転動体との間の摩擦を低減させることにより、クラックの発生,伝播が遅延し、リニアガイド装置の長寿命化が図れることを見出して、本発明を完成するに至った。
以下に、本発明のリニアガイド装置について、前述の各数値(鋼材中の合金元素の含有量,残留オーステナイト量等)の臨界的意義を中心に詳細に説明する。
〔高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも摩擦係数が低い鋼材、及び、残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である表面層について〕
転動体表面の摩擦係数を低減すると、圧痕縁における接線力が低減され、クラックの発生,伝播が遅延される。よって、転動体の種類の変更によって、転動体転動溝に発生するフレーキングを抑制することができる。高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも摩擦係数が低いものの代表例としてセラミックスがあるが、セラミックス球の場合はコストが大幅に高くなるだけでなく、そのヤング率が鋼球の場合に比較して著しく大きいため、圧痕縁での応力集中がかえって大きくなり、リニアガイド装置の寿命を低下させる場合がある。
また、摩擦係数だけ小さくても、表面層の残留オーステナイト量が十分に確保されていないと、転動体にフレーキングが発生しやすくなる。よって、摩擦係数に加えて、転動体の表面層には、少なくとも5体積%以上、好ましくは8体積%以上の残留オーステナイトの確保が必要である。残留オーステナイト量が多いほど、転動体に発生する圧痕縁を起点としたフレーキングは生じにくくなるが、多すぎるとかえって耐疲労性が低下したり摩擦特性が低下して、転動体の低摩擦係数化による寿命延長効果が得られなくなる場合がある。よって、転動体の表面層の残留オーステナイト量は、5体積%以上20体積%以下である必要があり、8体積%以上20体積%以下であることがより好ましい。
次に、転動体に用いられる鋼材中の合金成分の組成、浸炭窒化層、及び表面粗さについて説明する。
一般に、転動体には、軸受鋼で構成され焼入れ,焼戻しが施された鋼球が使用されるが、異物混入潤滑下でリニアガイド装置が使用される場合には、スライダ及び案内レールを浸炭窒化処理により強化しても、転動体にフレーキングが発生し、結果としてリニアガイド装置の寿命が不十分となる場合もある。そこで、異物混入潤滑下での寿命対策として、スライダ及び案内レールだけでなく、軸受鋼製の転動体を浸炭窒化処理によって強化し、表面層の残留オーステナイト量を20〜40体積%程度としたリニアガイド装置がある。
しかしながら、このような転動体は、通常の軸受鋼製の転動体と比較して摩擦係数はほぼ同等であるので、軌道面(転動体転動溝の表面)を浸炭処理,浸炭窒化処理等によって強化しなければ、転動体転動溝のフレーキングを抑制する効果(フレーキング寿命を向上させる効果)は乏しい。
そこで、転動体自身の寿命を改善しつつ転動体により転動体転動溝の寿命を向上させて、結果としてリニアガイド装置の寿命を向上させるためには、以下のような構成のリニアガイド装置とするとよい。すなわち、転動体に十分な疲労寿命と高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも低い摩擦係数(低μ)とを付与するためには、後述する鋼材で転動体を構成し、浸炭窒化処理を施して、窒素濃度が0.3質量%以上2質量%以下であり且つ残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である浸炭窒化層を表面に設けるとよい。さらに、転動体の転動面の表面粗さをリニアガイド装置の両転動体転動溝の表面粗さよりも小さくすることがより好ましい。
〔炭素の含有量について〕
炭素(C)は、鋼に必要な強度と寿命とを得るために必要な元素である。炭素が少なすぎると十分な強度が得られないだけでなく、後述する浸炭窒化処理の際に必要な硬化層深さを得るための熱処理時間が長くなり、熱処理コストの増大につながる。そのため、炭素の含有量は0.3質量%以上とする必要があり、0.6質量%以上とすることがより好ましい。逆に炭素の含有量が多すぎると、製鋼時に巨大炭化物が生成され、その後の焼入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を与え、ヘッダー性が低下してコストの上昇を招くおそれがある。よって、上限は1.2質量%とする必要がある。
〔ケイ素の含有量について〕
ケイ素(Si)は、製鋼時に脱酸剤として必要であるだけでなく、基地のマルテンサイトを強化するとともに、焼戻し軟化抵抗性を高め、疲労寿命を延長するために極めて有効な元素である。また、浸炭窒化層の諸特性を満足するための表面窒素濃度や残留オーステナイト量等をバランス良く確保するためには、なくてはならない必須元素である。その効果を十分に発揮させるためには、ケイ素の含有量は0.5質量%以上とする必要があり、0.8質量%以上とすることがより好ましい。
ただし、ケイ素の含有量が多すぎると、ヘッダー性,被削性等が低下するだけでなく、有効な浸炭窒化処理が施されず十分な硬化層深さや窒素拡散深さを確保できなくなる場合がある。そのため、転動体の表面の品質が、後述するような所定の品質とならないおそれがある。よって、ケイ素の含有量の上限は2質量%とする必要があり、1.5質量%とすることがより好ましい。
〔マンガンの含有量について〕
マンガン(Mn)は、Siと同様に脱酸剤としての働きがある他、焼入性を向上させたり、転動寿命に有効な残留オーステナイトの生成を促進させる作用があるため、0.2質量%以上必要である。ただし、マンガンの含有量が多すぎると、被削性,ヘッダー性が低下するだけでなく、熱処理後においては、多量の残留オーステナイトが生成し、かえって耐疲労性が低下して、良好な寿命が得られなくなる場合もある。よって、マンガンの含有量の上限は2質量%とする必要があり、0.7質量%とすることがより好ましい。
〔クロムの含有量について〕
クロム(Cr)は、基地に固溶して焼入性,焼戻し軟化抵抗性等を高めるとともに、高硬度の微細な炭化物又は炭窒化物を形成して、軸受材料の硬さや熱処理時の結晶粒粗大化を防止しリニアガイド装置の寿命を高める効果を有する。このような効果を得るためには、クロムの含有量は、0.5質量%以上とする必要があり、1.3質量%以上とすることがより好ましい。一方、2質量%を超えると、製鋼過程で巨大炭化物が生成して、その後の焼入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を与えたり、ヘッダー性,被削性が低下するため、その上限は2質量%とする必要があり、1.6質量%とすることがより好ましい。
〔その他の炭化物形成元素について〕
モリブデン(Mo),バナジウム(V),タングステン(W)等の炭化物形成促進元素もクロムと同様の作用効果が得られるので、素材費や加工性低下によるコストアップが生じない範囲で(通常は、それぞれ2質量%以内である)、前記3種の元素のうち1種以上を添加してもよい。
〔残部及び不可避的な不純物について〕
前述の合金元素以外の残部は実質的に鉄(Fe)であるが、イオウ(S),リン(P),アルミニウム(Al),チタン(Ti),酸素(O)等の不可避的な不純物を含有していてもよい。これらの元素は、表面起点型フレーキングには特に際立った影響はないとされているが、鋼材の品質が著しく悪い場合には内部起点型フレーキングが生じるおそれがある。よって、コストアップを招くような厳しい不純物規制は行なわなくてもよいが、通常はリニアガイド装置の材料として使用できる程度の清浄度(清浄度規制:JIS G 4805)を満足する品質レベル(ベアリングクオリティー)とすることが好ましい。
〔浸炭窒化層,窒素含有量,及び表面粗さについて〕
以下に転動体の製造方法を、転動体がボールである場合を例に説明する。まず、前述のような合金成分を含有する鋼材の線材から、へッダー加工及びフラッシング加工等によって素球を製作し、浸炭窒化処理を施して、窒素濃度が富化された浸炭窒化層を表面に設ける。
窒素は、炭素と同様に、マルテンサイトの固溶強化及び残留オーステナイトの安定確保に作用するだけでなく、窒化物又は炭窒化物を形成して、摩擦摩耗特性を著しく高める効果を有する。その効果を十分に発揮させるためには、浸炭窒化層の窒素濃度は0.3質量%以上とする必要があり、0.5質量%以上とすることがより好ましい。
ただし、窒素濃度が高すぎると、窒化物又は炭窒化物の析出量が増大して、十分な残留オーステナイト量が確保できなくなったり、焼入れ性が低下して十分な耐疲労性が得られない場合がある。よって、浸炭窒化層の窒素濃度の上限は、2.0質量%とする必要がある。浸炭窒化層の残留オーステナイトの作用効果については、前述と同様である。
また、浸炭窒化処理は、鋼を一旦オーステナイト化させ、焼入れ後において表面層に十分な残留オーステナイト量を確保できるように、炭素及び窒素を基地組織に固溶させるとともに、表面層に摩擦,摩耗低減効果の高い窒化物又は炭窒化物を析出分散させることを目的として行なわれる。具体的には、RXガス,エンリッチガス,及びアンモニアガスの混合ガス雰囲気中で行なわれるが、アンモニアガスは浸炭窒化処理温度が高くなるほど分解しやすく、その結果、前記混合ガス中の残留アンモニアガスの濃度が低くなり、転動体表面の窒素量を十分に富化できない場合がある。また、温度が低いと、十分な炭素及び窒素を基地組織に固溶させることができず、所定量の残留オーステナイトの確保と耐疲労性の確保が困難となる。よって、浸炭窒化処理は、820〜850℃程度で実施することが好ましい。
また、浸炭窒化処理した後は、油焼入れし、組織の安定化のため200〜260℃程度の焼戻しを施すとよい。その後、タンブリング加工又はボールピーニング加工等を行ない、残留する加工歪による経時的な表面のウェービネス変化を抑制するため、最終的に140〜180℃程度で焼戻しを行ない、ラップ加工に供する。なお、完成した鋼球の表面硬さは、異物の噛み込み時の圧痕形成を抑制し、より長寿命を得るために、Hv800〜1000程度とすることが好ましい。
さらに、転動体の表面粗さが大きく(粗く)なると、潤滑条件が厳しい場合は勿論であるが、圧痕の盛り上がり部において金属接触が生じ、接線力が大きくなることによって、十分な寿命延長効果が得られない場合がある。そのため、転動体の転動面の表面粗さを両転動体転動溝の表面粗さよりも小さくすることが好ましい。
以上のように、本発明のリニアガイド装置は、低い摩擦係数を有する転動体を備えているため、圧痕縁の応力集中部におけるクラックの発生,伝播が抑制され、長寿命である。
本発明のリニアガイド装置は長寿命である。
本発明に係るリニアガイド装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係るリニアガイド装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図(ただし、エンドキャップを省略して図示している)である。
まず、本実施形態のリニアガイド装置の構成を説明する。軸方向に延びる横断面略角形の案内レール1上に、横断面形状が略コ字状のスライダ2が軸方向に相対移動可能に組み付けられている。
この案内レール1の上面と両側面1a,1aとが交差する稜線部には、軸方向に延びる断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成され、また、案内レール1の両側面1a,1aの中間位置には、軸方向に延びる断面ほぼ半円形の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成されている。
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、で構成されており、さらに、スライダ2の両端部(各エンドキャップ2Bの端面)には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口をシールするサイドシール5,5が装着されている。
さらに、スライダ本体2Aの両袖部6,6の内側面の角部には、案内レール1の転動体転動溝10,10に対向する断面ほぼ半円形の転動体転動溝11,11が形成され、両袖部6,6の内側面の中央部には、案内レール1の転動体転動溝10,10に対向する断面ほぼ半円形の転動体転動溝11,11が形成されている。
そして、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10と両袖部6,6の転動体転動溝11,11,11,11とで、断面ほぼ円形の転動体転動路14,14,14,14が形成されていて、これらの転動体転動路14は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体転動溝10,11の数は片側二列に限らず、例えば片側一列又は三列以上などであってもよい。
さらにまた、スライダ2は、スライダ本体2Aの袖部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路14と平行をなして軸方向に貫通する断面円形の貫通孔からなる転動体戻し路13,13,13,13を備えている。
一方、図示はされていないが、断面略コ字状のエンドキャップ2B,2Bは、スライダ本体2Aとの当接面(裏面)に、転動体転動路14とこれに平行な転動体戻し路13とを連通させる半ドーナッツ状の湾曲路を有しており、これら転動体転動路14と転動体戻し路13と両端の湾曲路とで、略環状の転動体循環路が形成されている。この転動体循環路内には、例えば鋼球からなる多数の転動体(ボール)3が転動自在に装填されている。
案内レール1に組みつけられたスライダ2を案内レール1に沿って軸方向に移動させると、転動体転動路14内に装填されている転動体3は、転動体転動路14内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、転動体3が転動体転動路14の一端に達すると、エンドキャップ2B内に備えられたタング部によって転動体転動路14からすくい上げられ、湾曲路へ送られる。
湾曲路に入った転動体3はUターンして転動体戻し路13に導入され、転動体戻し路13を通って反対側の湾曲路に至る。ここで再びUターンして転動体転動路14に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
このようなリニアガイド装置の転動体3は、合金成分として、炭素を0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素を0.5質量%以上2質量%以下、マンガンを0.2質量%以上2質量%以下、クロムを0.5質量%以上2質量%以下含有する鋼材で構成されている。この鋼材は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも摩擦係数が低い。そして、この転動体3は、浸炭窒化処理が施されていて、その表面に、窒素濃度が0.3質量%以上2質量%以下であり且つ残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である浸炭窒化層(表面層)が形成されている。
なお、転動体3の表面(転動面)の表面粗さは、両転動体転動溝10,11の表面粗さよりも小さいことが好ましい。
このようなリニアガイド装置は、異物混入潤滑下で使用されても、転動体3の表面や両転動体転動溝10,11に剥離等の損傷が生じにくく、長寿命である。また、製造コストが安価である。
〔実施例〕
以下に、さらに具体的な実施例を示して、本発明を説明する。前述したリニアガイド装置とほぼ同様の構成を有するリニアガイド装置について、耐久試験を行った。また、転動体(ボール)のみを用いたボールオンディスク試験により、摩擦抵抗を測定した。
耐久試験に供した実施例1〜11及び比較例1〜6のリニアガイド装置は、スライダ及び案内レールがSCR420で構成されており、浸炭処理の後に焼入れ・焼戻しが施されている。また、転動体は、表1,2に示すような組成の鋼材で構成されており、以下のようにして製造されたものである。表1,2に示すような組成の鋼材の線材からへッダー加工,フラッシング加工,及び粗旋削加工により素球を製作し、その素球に下記の条件A〜Cのうちいずれかの熱処理を施した。そして、さらにタンブラー加工(バレル加工)を施し、再度150〜170℃で焼戻しを行なった後、転動体の表面(転動面)の表面粗さRaが0.01μm以下となるようにラップ仕上げ加工を施した。
・条件A:RXガスとエンリッチガスとアンモニアガスとを含む雰囲気下、830℃で3時間浸炭窒化焼入れを施した後、200〜270℃で焼戻しを行う。
・条件B:RXガスとエンリッチガスとを含む雰囲気下、840℃で3時間浸炭焼入れを施した後、200〜270℃で焼戻しを行う。
・条件C:RXガス雰囲気下、840℃で0.5時間焼入れを施した後、200〜270℃で焼戻しを行う。
Figure 2006071020
Figure 2006071020
なお、表1,2に示した表面窒素量は、完成した転動体の表面層の窒素量を電子線マイクロアナライザー(EPMA)により定量分析した値である。また、残留オーステナイト量は、その表面層の残留オーステナイト量をX線回折法により測定した値である。いずれも、転動体の表面を直接分析した。
まず、完成した転動体を用いて、ボールオンディスク試験を行った。相手部材である平板試験片には、焼入れ,焼戻しを施した硬さHRC62のSUJ2製平板を用いた。そして、回転速度200min-1,荷重9.8Nの条件でボールオンディスク試験を行い、転動体と平板試験片との間の摩擦抵抗を測定した。測定結果を表1,2に示す。また、転動体の表面窒素濃度と摩擦抵抗との相関を示すグラフを、図3に示す。なお、表1,2及び図3のグラフにおける摩擦抵抗の値は、従来の軸受鋼で構成された転動体である比較例1の摩擦抵抗を1とした場合の相対値で示してある。
各実施例の転動体において用いられた鋼材はSiの含有量が高いため、浸炭窒化処理によって窒素が高濃度に富化される。図3のグラフから、転動体の表面窒素濃度が高いほど摩擦抵抗が小さく、特に表面窒素濃度が0.5質量%以上であると、大きな摩擦低減効果があることが分かる。また、表1,2から、残留オーステナイトは転動寿命には有益な作用効果を発揮するが、摩擦抵抗に対してはマイナスに作用し、特に20体積%を超えると摩擦抵抗が大きくなることが分かる。
次に、リニアガイド装置の耐久試験について説明する。リニアガイド装置を下記のような条件で駆動させ(スライダを走行させ)、一定時間毎に試験を中断し、案内レールの転動体転動溝の剥離の有無を確認した。そして、剥離が発生するまでの累積応力繰り返し回数を、リニアガイド装置の寿命とした。なお、1種のリニアガイド装置につき10個ずつ試験を行ってワイブルプロットを作成し、ワイブル分布曲線からL10寿命を求めた。試験条件は以下の通りである。
荷重 :9800N
スライダの平均移動速度:23m/min
潤滑剤 :リチウム石けん系グリース
潤滑剤中の混入異物:Fe3 C系粉(硬さ:HRC52,粒径:74〜147μm,混入量:300ppm)
試験結果を表1,2に示す。なお、表1,2における寿命の値は、比較例1のリニアガイド装置の寿命を1とした場合の相対値で示してある。表1,2から分かるように、実施例のリニアガイド装置は、いずれも比較例1のリニアガイド装置の2倍以上の寿命を有していた。
図4は、転動体の表面窒素濃度とリニアガイド装置の寿命との相関を示すグラフである。図4のグラフから分かるように、転動体の表面窒素濃度が0.3質量%以上、特に0.5質量%以上であるリニアガイド装置は、優れた寿命を有していた。この結果は、図3の転動体の表面窒素濃度と摩擦抵抗との関係と非常に一致していることから、転動体による摩擦低減がリニアガイド装置の寿命向上につながったと考えられる。
なお、実施例2のリニアガイド装置は、摩擦抵抗が最も低かったにもかかわらず、他の実施例と比較して寿命がやや劣る結果となっている。これは、他の実施例のほとんどすべてはスライダ又は案内レールに剥離が発生したのに対し、実施例2の場合は転動体の残留オーステナイト量が5体積%と低いため、転動体に形成される圧痕縁での残留オーステナイトによる応力集中軽減効果が十分に得られず、転動体の剥離が多発したためであると考えられる。また、比較例6は、転動体の表面窒素濃度が約1質量%と高いにもかかわらず、寿命向上効果が小さかった。これは、表2及び図4から分かるように、表面層の残留オーステナイト量が28体積%と非常に多いため、窒素富化による摩擦低減が十分に図れなかったためと考えられる。
以上のように、転動体表面の窒素濃度向上による転がり摩擦低減と残留オーステナイト量の適正化とによって、異物混入潤滑下におけるリニアガイド装置の長寿命化が達成可能であった。
次に、転動体の転動面の表面粗さがリニアガイド装置の寿命に及ぼす影響を評価する試験を行った。すなわち、実施例5のリニアガイド装置において転動体の表面粗さを種々変更したものを用意して、前述と同様の耐久試験を行い、転動体の転動面の表面粗さとリニアガイド装置の寿命との相関を調査した。なお、転動体の表面粗さは、転動体の表面粗さR1 と案内レールの転動体転動溝の表面粗さR2 との比R1 /R2 が0.1、0.2、0.5、0.8、1.0、及び1.2となるように調整した。
試験結果を図5のグラフに示す。なお、図5のグラフにおけるリニアガイド装置の寿命の値は、比較例1のリニアガイド装置の寿命を1とした場合の相対値で示してある。図5のグラフから、前述の表面粗さの比R1 /R2 が1未満であると、比較例1よりも寿命が優れていることが分かる。このことから、十分な寿命改善効果を得るためには、転動体の表面粗さR1 と案内レールの転動体転動溝の表面粗さR2 との比R1 /R2 を1未満とすることが好ましいことが分かる。
本発明のリニアガイド装置は、マシニングセンタ,旋盤,研削盤,ロボット,精密X−Yテーブル,計測装置等における直線的な送り機構に適用可能である。また、半導体や液晶パネルの製造設備,搬送設備における直線的な送り機構に適用可能である。
本発明に係るリニアガイド装置の一実施形態を示す斜視図である。 図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。 転動体の浸炭窒化層の窒素濃度と摩擦抵抗との相関を示すグラフである。 転動体の浸炭窒化層の窒素濃度とリニアガイド装置の寿命との相関を示すグラフである。 転動体の表面粗さR1 と転動体転動溝の表面粗さR2 との比R1 /R2 と、リニアガイド装置の寿命との相関を示すグラフである。
符号の説明
1 案内レール
1a 側面
2 スライダ
3 転動体
10 転動体転動溝
11 転動体転動溝

Claims (3)

  1. 軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに前記軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体転動溝の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるリニアガイド装置において、
    前記転動体は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2よりも摩擦係数が低い鋼材で構成され、残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である表面層を備えることを特徴とするリニアガイド装置。
  2. 軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに前記軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体転動溝の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるリニアガイド装置において、
    前記転動体は、合金成分として、炭素を0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素を0.5質量%以上2質量%以下、マンガンを0.2質量%以上2質量%以下、クロムを0.5質量%以上2質量%以下含有する鋼材で構成され、窒素濃度が0.3質量%以上2質量%以下であり且つ残留オーステナイト量が5体積%以上20体積%以下である浸炭窒化層を表面に備えることを特徴とするリニアガイド装置。
  3. 前記転動体の転動面の表面粗さが前記両転動体転動溝の表面粗さよりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリニアガイド装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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