JP2006070411A - 抄紙用フェルト - Google Patents
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Abstract
【課題】 ニードルパンチ処理により基布とバット繊維とが良く絡み合い、バット繊維が基体に強く固着し、かつ表面平滑性の優れた抄紙用フェルトの提供。
【解決手段】 ニードルパンチにより容易に裂ける単糸、特に切断伸度が5〜25%であるポリプロピレンの単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布とし、これにニードルパンチを行ない、裂け目を利用して短繊維のバット繊維を絡み合わせて植毛させてなる抄紙用フェルト。
【選択図】 なし。
【解決手段】 ニードルパンチにより容易に裂ける単糸、特に切断伸度が5〜25%であるポリプロピレンの単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布とし、これにニードルパンチを行ない、裂け目を利用して短繊維のバット繊維を絡み合わせて植毛させてなる抄紙用フェルト。
【選択図】 なし。
Description
本発明は抄紙機のプレス部で使用される抄紙用フェルトの構成に関するもので、特にバット固着性、表面平滑性に優れた抄紙用フェルトに関する。
抄紙機においては、上下一対のロール間を通過する湿紙シートが、プレス部で加圧されて抄紙用フェルトにより水分を搾り取られて紙が形成される。ここで湿紙の脱水に用いられる抄紙用フェルトの構成は、通常、継目のない織布からなる基体と、その上に短繊維のバット繊維をニードルパンチの技法で植毛されたバット層とからなるものが用いられている。
プレス部で加圧、搾水された紙の表面には、このフェルトの表面形状が反映されるので、フェルトには平滑性が要求される。またバット繊維が脱毛して製紙工程や製紙製品に影響を与えないように、バット繊維は基体に強く固着して、フェルト全体として一体化されていなければならないので、ニードルパンチによってバット繊維と基体とが相互によく絡み合っていることが重要であり、絡み合いの良いフェルトが望まれている。
表面平滑性を良くするための手段としては、例えば基布を構成する少なくとも一方の糸材として、圧力により変形する変形材料、例えば中空構造の糸材を用いたフェルト(特許文献1)等が提案されている。
特開2000−170087号公報
特開平6−280183号公報
抄紙用フェルトの基布としてはポリアミド、ポリエステル等が多く用いられているが、これらの基布は抄紙用フェルトとして機械的強度の維持や走行・寸法安定性を保つために、バット繊維植毛のためのニードリングを行なうことによる強度低下を起こさないように、ニードリングによって裂けにくい材料が好ましいと考えられていた。
また基布を構成する糸は、バット繊維と絡みやすい撚糸が通常用いられている。しかし単糸を使用した方がコストが安く、織り易く、寸法安定性が良く、抄紙機のプレス部で加圧された際の搾水性が良い(通水性が良くなるために)等の利点があるので、各種の単糸の使用も提案されているが(特許文献2)、その多くはポリアミドやポリエステル等であり、単糸ではニードリングの際のバット繊維との絡みが悪いという問題がある。
しかし本発明の発明者らは基体とバット繊維との相互の絡み合いという観点から基布として新しい素材を探索したところ、驚くべきことに、ニードルパンチにより容易に裂ける単糸を、経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布として用いた場合、ニードリングにより生じた裂け目によって、単糸であるにも拘らず、バット繊維とよく絡み合い、バット固着性に優れた抄紙用フェルトが得られることを見出した。
即ち本発明は、ニードルパンチにより容易に裂ける単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布とし、これにニードルパンチにより短繊維のバット繊維を植毛させてなる抄紙用フェルトである。
本発明は抄紙用フェルトの基布としてニードリングによって裂けやすい単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用したことにより、基布の一部に裂け目が生じるが、この裂け目によってバット繊維との絡み合いが良くなり、バット固着性の優れた抄紙用フェルトが得られた。特に単糸を緯糸のみ一方に使用した場合は、ニードルパンチにより緯糸のみに裂け目が生じバット繊維とよく絡み合うが、経糸には裂け目が生じないので、抄紙用フェルトとして機械的強度の維持や走行・寸法安定性を保つ事が出来る。また本発明によれば単糸で製織した基布を用いることができるので、工程も簡単で、経済的にも有利である。
本発明の抄紙用フェルトの基布にはニードルパンチにより容易に裂ける単糸が用いられる。ニードルパンチによる裂け易さは、ニードルパンチ時の針打ち密度によっても異なるが、本発明においては針打ち密度が300〜500本/cm2のニードルパンチによって裂けるものが好適に用いられる。これより針打ち密度を大きくしなければ裂けないものは、従来用いられていたニードリングによって裂けにくい材料であり、本発明の目的を達成することができない。また300本/cm2以下の針打ち密度で裂けるものは、裂けすぎてフェルトの強度が弱くなる。
このようなニードルパンチにより容易に裂ける単糸として、好ましくは切断伸度5〜25%、特に好ましくは10〜20%の、ニードリングによって裂けやすい単糸が用いられる。切断伸度が上記範囲より大きいと、ニードリングにより裂けにくくなり(ニードリングによって単糸に針の貫通穴が生じるだけで裂けることはない)、バット繊維との絡み合いを向上させるという本発明の目的が達成できなくなる。また切断伸度がこれより小さいとニードリングによる開裂が大きすぎ、フェルトの強度が極端に低下する。
ここで切断伸度とはJIS L-1013 8.5「引張強さ及び伸び率」の8.5.1標準試験による測定において定速緊張形試験機を用いて初荷重をかけたときの伸びを「緩み」として読み、更に試料を引張り、試料が切断したときの伸びから、次式により算出した値である。
S=(E2-E1)/(L+E1)×100
(式中、S:切断伸度(%)、E1:緩み(mm)、E2:切断時の伸び(mm)、L:つかみ間隔(mm)である。)
S=(E2-E1)/(L+E1)×100
(式中、S:切断伸度(%)、E1:緩み(mm)、E2:切断時の伸び(mm)、L:つかみ間隔(mm)である。)
上記切断伸度5〜25%の単糸は、製糸工程において単糸の延伸倍率を適宜選択することによって得られる。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の単糸は通常、延伸倍率を増すほど切断強度が大きくなり逆に切断伸度は下がってくる。然し通常の糸では、適当な延伸倍率の所まで延伸して製糸製品を作るので適度な切断強度と切断伸度を有し、普通の使用用途では裂けやすい糸となる事はない。然し過度に延伸することによって裂け易くなり、同時に切断伸度が大きく低下する。切断伸度が5〜25%の範囲になるように延伸された単糸は、ニードリングによるバット繊維の絡み合いが充分行なわれるような適度の裂け易さになっており、しかも裂け目の発生による基布の強度自体の低下はそれ程ないので、本発明の基布製織の原料糸として最も適したものである。
ニードルパンチにより容易に裂ける糸材であれば単糸の材料は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等が、ニードリングによって裂けやすい性質を有しているので、本発明の目的のためには好適であり、特にポリプロピレンが好適である。
ポリプロピレン単糸で織った基布はまた、プレスによって、基布の交叉部が平坦になりやすく、そのため、紙の平滑性を向上させるという効果がある。
本発明の基布は経糸または緯糸の少なくとも一方をニードルパンチにより容易に裂ける単糸を使用して製織すれば良く、経糸、緯糸のいずれか一方のみ、あるいは両方ともニードルパンチにより容易に裂ける糸を用いることもできるが、抄紙用フェルトとして機械的強度の維持や走行・寸法安定性の良い基布を得るためには強度の点からは、ニードルパンチにより容易に裂ける単糸を緯糸に用いるのが好ましい。
ニードルパンチにより容易に裂ける単糸としては太さ200〜2000dtex、特に300〜1000dtexのものを用いるのが好ましい。また織布のメッシュの大きさは、積層された基布全体として、経糸、緯糸とも5cmあたり100〜300本の間隔になっているものが好ましい。
製織された基布にはニードルパンチにより短繊維のバット繊維を植毛させ、抄紙用フェルトが得られる。植毛するバット繊維としてはナイロン等の合成繊維や、羊毛等の天然繊維が用いられる。ニードルパンチはフェルト製造のための公知の方法が使用できる。
本発明の抄紙用フェルトに用いる基布は1層で使用することもできるが、複数層を積層してもよい。積層基布は、製織した有端状の織布を一対のロール間に掛け渡して複数回に周回し、重ねた後で始端部と終端部とが一致した位置で終端部を切断し、始端部と終端部とを其々巾方向に縫合することによって得られる。また平織りで無端状に製織した織物を重ねて積層することもできる。バット繊維の植毛は積層した基布にニードルパンチすることにより得られる。
(基布製織用原料糸)
基布製織用原料糸として表1の単糸及び撚糸を用いた。
基布製織用原料糸として表1の単糸及び撚糸を用いた。
(製織)
表2に示す経糸と緯糸の組み合わせで、単糸を経糸40本/5cm、緯糸40本/5cmで1/1平織りで無端状に製織した織物を、6枚重ねて基布とし、バット繊維としてナイロン6の17dtexの短繊維をニードルパンチにより該基布に植毛してフェルトを作成した。得られたフェルトの摩擦試験及び平滑性指数を測定し、バット繊維の固着性及びフェルトの平滑性を評価した。結果を表2に示す。なお、実施例1〜4、比較例1〜2の条件を統一するために、全ての基布及びフェルトの坪量(g/m2)を同一にし、ニードルパンチにより植毛の条件も統一してある。
表2に示す経糸と緯糸の組み合わせで、単糸を経糸40本/5cm、緯糸40本/5cmで1/1平織りで無端状に製織した織物を、6枚重ねて基布とし、バット繊維としてナイロン6の17dtexの短繊維をニードルパンチにより該基布に植毛してフェルトを作成した。得られたフェルトの摩擦試験及び平滑性指数を測定し、バット繊維の固着性及びフェルトの平滑性を評価した。結果を表2に示す。なお、実施例1〜4、比較例1〜2の条件を統一するために、全ての基布及びフェルトの坪量(g/m2)を同一にし、ニードルパンチにより植毛の条件も統一してある。
なお摩擦試験及び平滑性指数の測定は次の方法により行なった。
[摩擦試験]
JIS L0823に規格されている摩擦試験機II型を用いて、試験片台に実施例、比較例で作成したフェルト片を固定し、上部から白綿布を固定した摩擦子で摩擦回数500回の摩擦を掛けて脱毛させ、フェルトの減量分(単位;mg)を摩擦試験での繊維脱毛量とした。この量が少ないほど、バット繊維の固着性が良い。
JIS L0823に規格されている摩擦試験機II型を用いて、試験片台に実施例、比較例で作成したフェルト片を固定し、上部から白綿布を固定した摩擦子で摩擦回数500回の摩擦を掛けて脱毛させ、フェルトの減量分(単位;mg)を摩擦試験での繊維脱毛量とした。この量が少ないほど、バット繊維の固着性が良い。
[平滑性指数]
プレスフェルトの表面凹凸の隣接する山と谷の距離の分散から求めた数値の逆数。数値が大きいほど、凹凸の距離のバラツキが小さく、フェルト表面の平滑性が高い。
プレスフェルトの表面凹凸の隣接する山と谷の距離の分散から求めた数値の逆数。数値が大きいほど、凹凸の距離のバラツキが小さく、フェルト表面の平滑性が高い。
表2の結果から明らかなように、切断伸度15%の単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布とする実施例1〜4のフェルトは、単糸のみからなる織布であるにも拘わらず、摩擦試験による繊維脱毛量は少なく、撚糸の織布を用いたフェルトに比べて遜色がなく、また平滑性が優れるという結果が得られた。
本発明は、ポリプロピレンのようなニードルパンチにより容易に裂ける単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布としたことによって、ニードルパンチにより生ずる裂け目によって、単糸を用いたにも拘らず、バット固着性がよくなり、撚糸を用いた基布に劣らない強度の優れた抄紙用フェルトが得られる。このため基布の材料として単糸を用いることができ、単糸を用いることによって織り易く、寸法安定性も良く、コストが節減できるのみならず、抄紙の際、水が通り易い等の利点があり、抄紙用フェルトとして優れた利用価値がある。
Claims (5)
- ニードルパンチにより容易に裂ける単糸を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用した織布を基布とし、これにニードルパンチにより短繊維のバット繊維を植毛させてなる抄紙用フェルト。
- 針打ち密度300〜500本/cm2のニードルパンチによって裂ける単糸を用いることを特徴とする請求項1記載の抄紙用フェルト。
- 切断伸度が5〜25%である単糸を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の抄紙用フェルト。
- ニードルパンチにより容易に裂ける単糸がポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレートの単糸である請求項1〜3のいずれかに記載の抄紙用フェルト。
- 有端または無端状に製織した複数枚の基布を積層し、これにニードルパンチにより短繊維のバット繊維を植毛させてなる請求項1〜4のいずれかに記載の抄紙用フェルト。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013044059A (ja) * | 2011-08-23 | 2013-03-04 | Toray Monofilament Co Ltd | ニードルフェルト基布用繊維およびニードルフェルト |
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-
2004
- 2004-09-06 JP JP2004258413A patent/JP2006070411A/ja active Pending
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