JP2006067807A - 生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤 - Google Patents

生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤 Download PDF

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Abstract

生鮮野菜または加工野菜に付着する菌に対する殺菌剤を提供すること、使用する乳化剤、特にグリセリン中鎖脂肪酸エステル(C8モノグリセライド)の収斂性のある苦いエグ味を抑制し、透明な乳化剤溶液を調製し、殺菌効率のよい殺菌剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
(a)グリセリン中鎖脂肪酸エステル、(b)高親水性界面活性剤、(c)リゾチーム、および(d)酢酸または酢酸カルシウムを含有する生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、生鮮野菜または加工野菜用の殺菌剤に関し、詳細には、生鮮野菜または加工野菜を含む弁当等の食材を輸送・販売する際の微生物に起因する変敗や食品の品質劣化等を防ぐための殺菌剤に関する。
今日、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、弁当、寿司、おにぎり、惣菜などの中食といわれる食品が提供されている。この食品分野では、製造直後から流通を通して販売するまでの時間と消費者が実際に食するまでの時間があるために、流通を含めた過程で温度管理や鮮度管理をしなければ、微生物の増殖に起因する変敗や食品の品質劣化が生じることが問題となっている。
上記の問題点を解決するため、中食を製造する食品工場の衛生管理において、除菌処理や殺菌処理(洗浄を含む)は欠かすことができない。とくに、食品を構成する野菜や果実は水分が多く組織が柔らかいため、高温、高圧、酸、アルカリ等の洗浄や機械や器具の洗浄に用いられるようなブラシなどによる機械的な洗浄は行うことができない。食器や食品用の中性洗剤は食品衛生の向上に著しい効果を示すが、果実や野菜等の食品自体の洗浄には吸着浸透性が高いために、洗剤を除くためのすすぎの必要性と洗剤の残留が問題となる。
そのため、殺菌剤としては、十分な安全性と殺菌効果を有する製剤が望まれている。殺菌剤に要望される具体的な要件としては、(1)食品および/または食品添加物から構成され、食品としての安全性が高いこと、(2)土などの汚れや農薬の除去に有効であること、(3)微生物の殺菌効果が高いこと、(4)果実や野菜等の食品への吸着性(食品への残留性)が低いことが挙げられる(非特許文献1:毛利善一、食品用乳化剤と乳化技術、衛生技術会、p347(1979))。
上記の要件を満たす素材としては、食品用の乳化剤が挙げられる。殺菌剤に利用される乳化剤には、中鎖脂肪酸モノグリセライド、高HLBショ糖脂肪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステルはショ糖を原料としているため、親水性が高く、これに脂肪酸を結合させて、HLBを調整していることから、この場合は高HLBという表現が正解。以下、親水性をHLBへ変更する。親水性は特性を表わし、HLBは機能を表わすとして記載。)、高HLBのポリグリセリンエステルなどが挙げられる。1966年、上田および徳永ら(非特許文献2:上田誠之助、徳永弘畿:調理科学、13(6)、1(1966))によって中鎖脂肪酸のモノグリセリドの抗菌作用が報告されて以来、芝崎の報告(非特許文献3:芝崎勲、発酵工誌、57(3)、164(1979))、古賀および渡辺の報告(非特許文献4:古賀友英、渡辺忠雄:日食工誌、15,297(1968)、古賀らの報告(非特許文献5:古賀ら、日食工誌、15,310(1968))、ならびにKabaraらの報告(非特許文献6:A.J.Conley、J.J.Kabara;Antimicrob.Ag.Chemother、4、501(1973))により、中鎖脂肪酸モノグリセライドや高HLBショ糖脂肪酸エステル、などの乳化剤に抗菌力があることが報告されている。また、非特許文献7は、高HLBのポリグリセリンエステルやショ糖脂肪酸エステルの使用についても開示している(非特許文献7:辻薦、工業用洗剤と洗浄技術、地人書館、p163(1975))。高HLBショ糖脂肪酸エステルは、レンコンなどで見出されるボツリヌス菌や、ウエルシュ菌の発芽を抑制する効果が報告されている(非特許文献8:安藤芳明、砂川紘之、都築俊文、亀山邦夫:道衛研所報、33、1(1983))。
これらの報告においては、中鎖脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリンエステル、高HLBのショ糖エステル、有機酸塩、縮合リン酸塩などを単独または組み合わせて使用する殺菌・洗浄剤が工夫されているが、乳化された殺菌・洗浄剤の粒子は、その粒子が大きければ大きいほど、水で希釈した場合の溶解熱や、攪拌などの機械的なエネルギーによって乳化が壊れやすい性質を持ち、また、その粒子の大きさが大きいほど、野菜などの素材表面に吸着しにくく、菌数の抑制が10の4乗程度で留まることがあり、製剤の安定性と抗菌活性の維持向上には十分ではないのが現状である(非特許文献9:戸田義郎、門田則昭、加藤友治、食品用乳化剤、p306、光琳、1997、非特許文献10:加藤信行、芝崎 勲;防菌防黴、3(8),T355、1975)。
また、食品の味の問題に関しては、例えば、中鎖脂肪酸モノグリセリドを、実際の食品系に単独で使用して微生物の殺菌処理を行う場合、中鎖脂肪酸モノグリセリドの量を多く用いると味が悪くなり、また、味の問題解決のために、中鎖脂肪酸モノグリセリドの添加量を下げて、有機酸と併用する場合が多く、加熱時に加水分解を受けると低級脂肪酸特有の悪臭を発するという問題がある(非特許文献11:渡辺隆夫、食品開発と界面活性剤、p214、光琳、1990)。
高HLBショ糖脂肪酸エステルの場合には、缶コーヒーなどの高温加熱殺菌飲料に使用されるが、変敗の原因となるクロストリジウム・サーモアセチカム、バチラス・ステアロサーモフィラスなどの菌は通常の殺菌条件では完全には死滅せず、加温された場合に発芽生育する(非特許文献12:諏訪信行、久保田春美、高橋和子、町田肇:日食工誌、33(1)、45(1986))。このように、通常の殺菌条件下では、高HLBショ糖脂肪酸エステルが存在すると菌の生育がある程度阻止されるものと考えられるが、菌は死滅しないので、殺菌剤として使用するには効果が十分ではないのが現状である。
また、高HLBショ糖脂肪酸エステル(HLB16)と比較して、ポリグリセリンエステルのデカグリセリンジステアレートやデカグリセリンモノステアレートは少ない添加量でバチラス・ステアロサーモフィラスを抑制することができ、コーヒー飲料やポタージュスープなどのレトルト食品に有効であることが報告されているが、殺菌剤としての知見が見出されていない(非特許文献13:太陽化学社: Techncal Bulletin, OIA-016-02 (1995)、
非特許文献14:戸田義郎:最近の乳化剤・安定剤をめぐる現状と新用途開発、講習会要旨集、p7-16、工業技術会(1986))。
上記の乳化剤の欠点を補うためにリゾチームを用いることがある。保存効果のよい、味のバランスの取れた食品用保存剤を提供するために、カプリル酸モノグリセライドにグリシン、酢酸ナトリウム、リゾチーム及び有機酸を併用した製剤が検討されているが、野菜や果実に付着した耐熱性菌についての試験は見出されていない上に、苦い味の問題も解決していない(特許文献1:特開平6−217749号公報、特許文献2:特開平4−16173号公報)。
また、大腸菌、サルモネラ菌などのグラム陰性菌に対して、リゾチームを利用することが提案されているが、リゾチームを単独で使用してグラム陰性菌を完全に抑制することはできない(特許文献3:特表平6−508754号公報)。エタノール製剤として、リゾチームと低級脂肪酸モノグリセライドを含む組成物が提案されているが、処理した野菜や生野菜の表面にエタノールの付着量が多くエタノールの苦味が消えないため、味の問題は解決できていない。この製剤に関しては、文献においても均質な付着性や溶液の調製に問題があることが指摘されており、適用する食品としては添加混合する惣菜類に限定せざるを得ないのが現状である(特許文献4:特開昭61−34793号公報、特許文献5:特公平6−6049号公報)。
また、リゾチームを変性させるために、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、大豆レシチンなどの乳化剤のうち、C8モノグリセライドを併用し、80℃までの予備加熱後130℃5秒間の加熱で変性したリゾチームを用いて、カスダードクリーム、一夜漬け、カット野菜などの食品あるいは野菜スープなどに利用されているが、リゾチームとの併用によって、C8モノグリセライドの本来の味を改善しているとはいいがたい(特許文献6:特開平8−27027号公報)。日高は、「C8MGは苦いので驚いて菌が死ぬのではないかといいたくなるような刺激のある味をもっており、使い方がむずかしい。しかし、将来とも強力な保存料が認可される可能性はないので、相乗効果を狙った使い方の開発は今後も続くであろう」(非特許文献15:日高 徹著、食品用乳化剤、p240、幸書房、1987)と述べており、この言に代表されるように、C8モノグリセライドは味がひどく、この苦みや味を消すのは容易ではないのが現状であった。
グリセリン中鎖脂肪酸エステルと高HLBショ糖脂肪酸エステルを組み合わせた抗菌剤も検討されている。これらの抗菌剤は、グリセリンまたはエタノールを用いてこれら乳化剤を可溶化するか、あるいは乳化剤を加熱溶解することを特徴としている。しかし、グリセリン、エタノールを含んだこの状態では、グリセリンの収斂味やエタノールの苦みが消えないという問題がある。また、中鎖脂肪酸エステルとしてC8モノグリセライドを利用する際には、グリセリンの併用で抗菌効果の増強を期待しているが、味の改善はできなかった。さらに乳化剤を加熱溶解する場合では、乳化剤自身の味の問題が解決されないままとなり、生野菜や生果実の特徴を生かしきれないのが現状である(特許文献7:特開平4−21608号公報、特許文献8:特開平5−73号公報)。
中鎖脂肪酸モノグリセリドおよびポリグリセリンエステルを主成分とする食品用殺菌・洗浄剤は、洗浄液に0.2%配合することで野菜の殺菌が行えるとされている。さらに、これに有機酸(酢酸、乳酸等)を組み合わせることによって、菌数を野菜グラム当たり10の2乗から10の4乗まで減少させることができる。しかしながら、製造直後の菌数がこの菌数では、流通の段階で高い温度にさらされることがあり、また、コンビニエンスストア等で販売される弁当類は25℃で陳列販売されることがあるため、消費者が食する時点では菌数が野菜グラム当たり10の6乗を超え、腐敗・変敗の要因になる可能性が高い。とくに夏場に32℃付近の温度で保存された場合には、腐敗変敗は避けられないのが現状である。
弁当などに付合せるめんの事例では、これまでめん類は保存料として過酸化水素、プロピレングリコールが利用されていたが、現在その利用が制限されており、また、保存料のポリリジン、プロタミンなどは、保存料表示を回避する消費者から敬遠され、食材の風味を生かす面でも好ましい利用とはいえない。そのため、改良方法として、中鎖脂肪酸モノグリセライドであるC8モノグリセライド(カプリル酸モノグリセライド)、グリシン、有機酸、エタノールなどの各種組み合わせ製剤の利用が提案されている。たとえば、C8モノグリセライド25%を含む製剤を0.5〜1.0%練りこみ、めんに加工後、C8モノグリセライドおよびエタノール25%を含む製剤1%液に浸漬すると、保存日数を4〜7日、さらに蒸気殺菌すれば9〜10日とすることができると報告されている。しかしながら、アルコールのしみ込んだめんの味は苦い。また、生めんのように再度ボイルして脱アルコール化させるものでは適用できても、調理野菜では2度の加温はできない。従って、エタノールを含む製剤にボイル野菜を浸漬した場合、エタノールは野菜の表面に長くとどまり、不快な苦い味、エタノール臭を与えるので、味の問題が解決されていないのが現状である。
さらに、緑黄色生野菜には、クロロフィルの色調が重要であるが、微生物が増殖すると、菌の酵素や野菜中の酵素の影響で、クロロフィル中にあるマグネシウムが遊離し、退色が進み、また、野菜の組織が崩壊し、野菜本来の風味を損なう傾向がある。これを抑えるためにカルシウムを併用し、色調の保持を行うことが報告されており(特許文献9:特開平10−327794号公報、非特許文献16:Malecki,G.J.:Food Engineering,6.93(1964))、また、カルシウム塩はサルモネラ、黄色ぶどう球菌、大腸菌、枯草菌を抑える役割があることが報告されており(非特許文献17:一色賢司、栖原 浩、水内健二、徳岡敬子、日本食品工業学会誌、41、135−140(1994)、カルシウム塩の併用は微生物の抑制に有用である。しかしながら、C10モノグリセライドやC12モノグリセライドのグリセリン脂肪酸エステルとクエン酸などの有機酸の併用により、グラム陰性菌に対する抗菌効果を高めても、カルシウムやマグネシウムなどの共存によって、抗菌効果が失われることが報告されており(非特許文献18:松田敏生、食品微生物制御の化学、p137、幸書房、1998)、抗菌活性のあるC8モノグリセライドやカルシウム塩などの併用して、緑黄色野菜を安定化する方法については技術課題も多い。
このように、殺菌剤に関して多くの知見や報告があるにもかかわらず、コンビニエンスストア等で販売される弁当類に使用する、生野菜、生果実、ボイル野菜などの食材の菌数を下げる有効な殺菌剤やその利用方法が見出されていないのが現状である。
特に、殺菌剤を確保するために、食経験のある素材や天然に由来する素材からの殺菌剤を求めて検討が進められているが、抗菌力があり、かつ呈味のよい製剤の確保ができていない。
また、食品に使用する場合には、食品本来の味、風味及び色調に影響を与えないように、それ自体が味や匂いを有さず、また使用するものの安全性が確保できることが望まれている。
特開平6−217749号公報 特開平4−16173号公報 特表平6−508754号公報 特開昭61−34793号公報 特公平6−6049号公報 特開平8−27027号公報 特開平4−21608号公報 特開平5−73号公報 特開平10−327794号公報 毛利善一、食品用乳化剤と乳化技術、衛生技術会、p347(1979) 上田誠之助、徳永弘畿:調理科学、13(6)、1(1966) 芝崎勲、発酵工誌、57(3)、164(1979) 古賀友英、渡辺忠雄:日食工誌、15,297(1968) 古賀ら、日食工誌、15,310(1968) A.J.Conley、J.J.Kabara;Antimicrob.Ag.Chemother、4、501(1973) 辻薦、工業用洗剤と洗浄技術、地人書館、p163(1975) 安藤芳明、砂川紘之、都築俊文、亀山邦夫:道衛研所報、33、1(1983) 戸田義郎、門田則昭、加藤友治、食品用乳化剤、p306、光琳、1997 加藤信行、芝崎 勲;防菌防黴、3(8),T355、1975 渡辺隆夫、食品開発と界面活性剤、p214、光琳、1990 諏訪信行、久保田春美、高橋和子、町田肇:日食工誌、33(1)、45(1986) Techncal Bulletin, OIA-016-02 (1995) 戸田義郎:最近の乳化剤・安定剤をめぐる現状と新用途開発、講習会要旨集、p7-16、工業技術会(1986) 日高 徹著、食品用乳化剤、p240、幸書房、1987 Malecki,G.J.:Food Engineering,6.93(1964) 一色賢司、栖原浩、水内健二、徳岡敬子、日本食品工業学会誌、41、135−140(1994) 松田敏生、食品微生物制御の化学、p137、幸書房、1998
本発明の目的は、生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤を提供することである。より詳細には、本発明は安全でしかも色や匂いの点で、処理する食品、特に野菜に悪影響を与えない生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤を提供することを目的とする。さらに本発明の目的は、当該生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤の製造方法,並びに当該生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤を用いた食品の殺菌方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題の解決を求めて鋭意研究を重ねていたところ、(a)グリセリン中鎖脂肪酸エステル、(b)高親水性界面活性剤、(c)リゾチーム、および(d)酢酸カルシウムを含有する組成物が、食品、特に野菜に対して優れた殺菌効果があることを見出した。また、本発明者は、上記組成物を含有する殺菌剤の製剤が、水溶液中で可溶化することを見出し、野菜の表面に付着する菌を除去する効果が高くなることを見出した。さらに、この殺菌剤が、食品、特に野菜の外観、味、匂い等に悪影響を与えず、食品の殺菌処理への使用が良好に行えることを見出した。そして本発明者は、この殺菌剤は処理対象とする食品、野菜に色や匂い等の悪影響をほとんど与えることなく、殺菌処理に有効に利用できること、並びに可溶化した製剤を浸漬方法によって処理したとき、野菜の劣化を防止でき、殺菌処理及び品質保持にきわめて有効であることを確認した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は下記項1〜項5に掲げる生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤である:
項1.(a)グリセリン中鎖脂肪酸エステル、(b)高親水性界面活性剤、(c)リゾチーム、および(d)酢酸または酢酸カルシウム、を含有する生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤。
項2.上記グリセリン中鎖脂肪酸エステルがモノカプリル酸エステルである、請求項1に記載の生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤。
項3.上記高親水性界面活性剤がショ糖脂肪酸エステル、またはポリオキシエチレン脂肪酸エステルである、項1に記載の生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤。
項4.項1乃至3のいずれか一項に記載の殺菌剤を食品の表面に付着させる工程を包含する、生鮮野菜または加工野菜の殺菌方法。
項5.項1乃至3のいずれか一項に記載の生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤を用いて処理された生鮮野菜または加工野菜。
なお、本発明でいう「殺菌」とは、食品の表面に存在する菌を死滅させることに加えて、食品の表面を安全性の高い添加物や天然由来の物質で被覆あるいは処理しておくことで、野菜、果実への有害微生物の付着防止や、これらの菌が一旦付着しても、水で洗うことで容易く遊離し、食品の品質劣化を防止するような除菌の効果も含む。殺菌の効果は、食品の表面での微生物の増殖の度合によって評価される。
本発明の製剤を用いて、従来食品分野では達成できなかったボイル野菜等の殺菌を簡便かつ効果的に行うことができる。本発明の製剤で処理された食品は、コンビニエンスストアで販売される弁当などに使用することができ、通常の流通経路にのせることができる。
本発明の殺菌剤は、(a)グリセリン中鎖脂肪酸エステル、(b)高親水性界面活性剤、(c)リゾチーム、および(d)酢酸または酢酸カルシウムを有効成分として含有することを特徴とする。
グリセリン中鎖脂肪酸エステルとは、グリセリン脂肪酸エステルのうち、脂肪酸の炭素数が8〜12個のものを指す。具体的には、グリセリン脂肪酸エステルはグリセリンと脂肪酸を加熱し、エステル化反応を起こさせて作る。これを分子蒸留して、不純物となるジエステル、トリエステルを除き、モノエステル90%のものが得られる。C8モノグリセライドといわれるモノジカプリル酸エステルは脂肪酸の純度はおよそ99.8%で、特有の刺激味のある液体(融点を持たず)で、食品への利用の上で味が欠点となる素材である。また、モノカプリル酸エステルはわずかに水に溶解する、ロウ状の素材(融点34.4℃)である。本発明で使用するC8モノグリセライドとしては、静菌作用を有するものであって、例えば、ポエムM-100(HLB 7.0)(理研ビタミン)、サンソフト700−P2(HLB7.2)(太陽化学)が例示できる。C10モノグリセライドであるモノジカプリン酸エステルは融点37.7℃のロウ状の素材、モノカプリン酸エステルは融点46.4℃のロウ状の素材であることが報告されている。本発明で使用するC10モノグリセライドとしては、静菌作用を有するものであって、例えば、サンソフト760(HLB6.5)(太陽化学)が例示できる。C12モノグリセライドはモノラウリン酸エステルであり、水にほとんど溶解しない。しかしながら、油やアルコールにはよく溶解する。そのため、エタノール製剤として提供されることが多い。本発明で使用するC12モノグリセライドとしては、静菌作用を有するものであって、例えば、サンソフト750(HLB 5.3)(太陽化学)が例示できる。(好井久雄、山下勝編著:天然物利用による食品の保存技術、p240、衛生技術会、1981)
C8モノグリセライドとC10モノグリセライドは20℃以上の温度では溶液化する傾向があるが、20℃では水に溶けない。これは曇点(cloud point;乳化剤の水溶液を昇温していくと白濁してくる温度のこと)が7℃以下であるからであり、この温度以上の状態では白濁している。
また、本発明で示す高親水性界面活性剤はHLBが11以上のものを示し、親水基がポリグリセリン、ショ糖、ポリオキシエチレンなどからなるものを指す。具体的には、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)またはポリオキシエチレン脂肪酸エステルを用いることが望ましい。
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖を基材とし、1分子中にある8つのヒドロキシル基を脂肪酸でエステル化したものであり、本発明ではリョートーシュガーエステルP-1670(HLB16)(三菱化学フーズ)あるいはDKエステルSS(HLB20)(第一工業製薬)、シュクロースアセチルイソブチレート(SAIB、HLB20)などの高HLBのショ糖脂肪酸エステルを指す。
あるいは、ショ糖脂肪酸エステル以外に、高親水性界面活性剤にポリソルベート20(ツイーン20、HLB16.7、例えば、花王社製、レオドールTW-L120)、ポリソルベート40(ツイーン40、HLB15.6)、ポリソルベート80(ツイーン80、HLB15.0、例えば、花王社製、レオドールTW-S120)、ポリオキシエチレンモノステアレート(Myrj49、HLB15.0)、ポリソルベート60(ツイーン60、HLB14.9、例えば、花王社製、レオドールTW-O120)、ポリエチレングリコール400モノステアレート(HLB11.6)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート(ツイーン85、HLB11.0)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ツイーン65、HLB10.5)、トリトンX100(HLB13.4)、モノミリスチン酸トリグリセリン(HLB12.0、例えば、太陽化学社製、サンソフトA141C)、モノステアリン酸デカグリセリン(HLB12.0、例えば、太陽化学社製、サンソフトQ18S)、モノラウリン酸ヘキサグリセリン(HLB14.0、例えば、太陽化学社製、サンソフトQ12F)、モノオレイン酸デカグリセリン(HLB14.5、例えば、太陽化学社製、サンソフトQ17S)などのポリグリセリン脂肪酸エステルなどを用いてもよい。本発明では、ポリソルベート60(ツイーン60、HLB14.9、例えば、花王社製、レオドールTW-O120)が透明感がよいものをポリオキシエチレン脂肪酸エステルを指す。なお、これらの効果を阻害しない範囲で、ソルビタンモノラウレート(スパン20、HLB8.6)などを併用しても可能である。
グリセリン中鎖脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルなどの高親水性界面活性剤との併用割合は5〜95対5〜95の範囲で混合することが望ましく、さらに望ましくは5対1〜1対5の割合で配合されることが望ましい。これに併用するリゾチームおよび酢酸カルシウムの割合は、乳化剤の組み合わせ100部に対して、それぞれ20〜1000部の範囲で用いることができる。好ましくは、リゾチーム50〜100部、酢酸カルシウム100〜600部の範囲でよい。
そのため、これらの素材が水を主体とした製剤の形で提供されることは少なく、食品に使用した場合でも乳化剤としての通常添加量は0.02〜0.1%である。本発明の殺菌剤の処理対象物への適用量は、処理する対象物の種類や処理方法等によって種々異なり一概に規定することができないが、たとえば、野菜の表面に付着させる浸漬方法では、殺菌剤の量として、0.5〜50%、好ましくは1〜10%の割合を例示することができる。
本発明の殺菌剤は、さらに(c)リゾチームを含有する。リゾチームは、抗菌作用を利用するために使用する。また、リゾチームは砂糖に対して甘味50倍の甘味タンパク質であり、この甘味を用いて、製剤並びに食品の味を保持するために利用する。さらに製剤中の配合量を0.3%以上にした場合には、製剤の性状(透明性)を安定化するために利用することができ、高温条件下(例、32℃、48時間)での抗菌活性を高める目的で利用する。本発明で好ましく使用されるリゾチームは、例えば、太陽化学製、卵白リゾチームである。
また、本発明の殺菌剤は、さらに(d)酢酸または酢酸カルシウムを含有する。本発明の酢酸カルシウムは、酢酸を水酸化カルシウム等のカルシウム塩で中和精製したものを用いる。あるいは、食酢(酢酸含量15%以上の高酸度酢)や焼成貝殻カルシウム(海産物として収獲される牡蠣(カキ)、ホタテ貝、ウニ、サンゴなどを洗浄、乾燥、粉砕後、1000℃以上の熱で焼成して、冷却後粉砕して製造する)を配合し、pHを4.2〜6.2に調整した製剤を調製して使用してもよい。酢酸カルシウムの使用の目的は、食品の味を保持するために利用する。また高温での保存条件(例、32℃、48時間)での抗菌作用を高める目的で利用する。なお、本製剤は酢酸を含んでもよい。しかし、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、またはその混合物が含まれてもよい。
本発明の殺菌剤は、上記(a)〜(d)の構成成分を含有することによって、コンビニエンスストア等で販売される弁当等に使用される野菜などの食品の殺菌剤として、不快な味を付与することなく、十分な性能を持つことができる。
本発明の殺菌剤は、上記(a)〜(d)の構成成分の組み合わせからなるものであるが、また本発明の効果を妨げない範囲で、食品衛生上許容される担体や添加剤を含んでいても良い。担体としては、水、砂糖、グルコース、果糖、サイクロデキストリン、クラスターデキストリンなどの糖質、ソルビトール、還元麦芽糖水あめ、還元麦芽糖、キシリトールなどの糖アルコール、アラビアガム、プルランなどの多糖類、カゼイン、ラクトアルブミン、オボアルブミン、ラクトフェリン、ホエイタンパク質などのタンパク質、酵素、油脂、グリシン、酢酸ナトリウム、タンニン(カテキン、エピガロカテキンガレート、茶抽出物、ポリフェノール、ベリー果汁抽出物、グレープ種子抽出物)、赤キャベツ色素などの製造用剤を例示することができる。また、添加剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤を例示することができる。
また、本発明の殺菌剤は、本発明の効果を損なわないことを限度として、他の成分を含むこともできる。他の成分としては、および食塩等のミネラルを挙げることができる。
本発明の殺菌剤の形態は特に制限されない。例えば本発明の殺菌剤は、錠剤、顆粒状または粉末状等の固形物、液体や乳液状などの液体、また、ペースト状等の半固形物の形態であってもよい。
本発明の殺菌剤は、加工食品の殺菌処理、加工食品の製造工程時での殺菌処理並びに品質保持のための処理工程に好適に使用することができる。
本発明の殺菌剤を利用できる食材の種類とこれを含む加工食品の種類として、対象とする食材は、野菜(キユウリ、ニンジン、レタス、キャベツ、タマネギ、ダイコン、レンコン、里芋、白菜など)、緑黄色野菜(インゲン、グリーンピース、キヌサヤ、小松菜、ホウレンソウ、ピーマン、大葉、パセリ、枝豆、コンブ、ブロッコリー、アスパラガスなど)、果実(トマト、いちごなど)等の食材に適用することが可能である。
上記の食品の殺菌を実施する方法としては、前述する本発明の殺菌剤を上記の食材と接触させる方法を挙げることができる。
接触方法としては、特に制限されないが、食材の表面または切断面に本発明の殺菌剤を塗付もしくは噴霧する方法、本発明の殺菌剤を含む水溶液中に食材を温時あるいは冷時に浸漬する方法、本発明の殺菌剤を食品の配合に添加混合する方法などを挙げることができる。
なお、食材(原型を留めない状態まで処理されたものを含む)への殺菌剤の適用は、食品の加工処理過程で行われてもよいし、また最終的に得られた処理物に対して行われても良い。具体的には、煮沸後の野菜に浸漬する方法を指摘することができる。
また、本発明は上記殺菌剤で処理した食品をも提供するものである。当該食品は、上記殺菌剤で処理したものであれば、特に制限されない。
本発明の殺菌剤は、前述するように食品の処理に使用しても当該処理対象物に色、味及び匂い等の悪影響をほとんど与えないことを特徴とする。ゆえに、本発明はレンジや熱湯で再加熱処理するレトルト食品(密封包装食品)や弁当あるいは、あるいは加熱調理して食する冷凍食品などを広く対象とすることができる。
本発明が対象とする食品の一例を挙げると、レタス、キャベツ、タマネギ、刺身用大根のツマ等のカット野菜や付け合わせ野菜等の野菜及びボイル野菜等の野菜加工品、煮豆等、各種の総菜や弁当等を例示することができる。なお、上記は単に例示であって、これらの食品のみに適用できるわけでなく、他の食品に対しても適用することができる。
以下、本発明の内容を以下の参考例、実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらになんら限定されるものではない。
(実験例1)
基本配合(C8モノグリセライド(サンソフト700−P2(太陽化学))(2.5%水溶液)85部とシュガーエステル(リョートーシュガーエステルP-1670(三菱化学フーズ))(2.5%水溶液)15部との組み合わせ)に、カルシウムやタンパク質を添加し、得られた水溶液の可溶化能を検討するために、平均粒度分布を調べた。また、C8モノグリセライドの代わりに、C10モノグリセライド(サンソフト760(太陽化学))またはC12モノグリセライド(サンソフト750(太陽化学))(各2.5%水溶液を適宜、表1に記載する割合で使用した使用した。
(実験条件)
高酸度酢(酢酸含量15.3%)(私市醸造)96部と焼成貝殻カルシウム(エヌ・シー・コーポレーション)4部を混合溶解し、75℃加熱後、冷却時50μのフィルターを通して得た酢酸カルシウム溶液100部を予め調製する。これに、卵白リゾチーム(太陽化学)0.05部を添加したものを、混合のための溶液とする。さらに下記表の乳化剤(その組み合わせ)を表に示す量(部)ビーカーに取り、予調製した混合液を入れて最終100部として室温で添加混合し、攪拌速度300rpmにて約30分間攪拌し、得られた水溶液の外観を肉眼観察し、得られた乳化剤水溶液の粒子をレーザー式粒度分布測定機器で測定した。得られた粒子の粒度分布から平均粒子径を求めた。
(結果)
Figure 2006067807
(乳化剤の欄に記載の数字は、製剤100部あたりの添加量(部)を示す)
備考
外観:目視にて乳白色、青白色、半透明、透明の4種類に分類した。
平均粒度径:レーザー式粒度分布測定機(島津製作所社製、SALD-1100)を用いて測定し、得られた50%径を使用した。
結果
上記結果から、C8モノグリセライドおよびC10モノグリセライドの2つの素材をそれぞれ単独で添加した場合、水への親和性はよいが、透明に溶けなかったため、本発明にいう可溶化した製剤は見出しえなかった(比較例1、比較例2)。これは曇点以上の温度での溶液になっていることが原因であると思われる。また、水に溶けないC12モノグリセライドを添加した場合には、C8モノグリセライドおよびC10モノグリセライドと同様に透明に溶けず、直径1mm程度の粒子が溶解に用いた容器の器壁に付着した(比較例3)。なお、加熱した場合、ゲル状となった。
また、シュガーエステルP1670を0.5%以上分散させた場合には、馬場ら(馬場、武士田、工化、67、2077(1964)、馬場、並木、前田;工化、67、2081(1964))の見出した臨界ミセル濃度55ppm(0.0055%)以上であるため、溶液の外観は乳白色となる濃度範囲にあることが見出された(比較例4)。
一方、本発明で使用したC8モノグリセライドは約2.5%であり、ショ糖脂肪酸エステル0.5%との2種類の乳化剤の相乗的な効果により可溶化されたものであり、従来の知見では容易に予見できなかった。
仁科ら(特開平4-21608号公報)はC8モノグリセライドではエタノールの存在下でショ糖脂肪酸エステルを加えて加温溶解し、C12モノグリセライドもエタノールの存在下で,ポリグリセライドを併用しており、C12以上の場合には過量のショ糖脂肪酸エステルとポリグリセライドを併用し製剤を調製しているが、使用する溶剤にエタノール、グリセリンあるいは加熱溶解などの工程を加えており、溶液の外観、味などの性状と抗菌効果との関係を見出しているとはいいがたい。
(実験例2)
製剤の抗菌活性試験
(実験条件)
水3000mlを予め沸騰させ、次に野菜(グリーンピース、冷凍のまま)1000g添加し、沸騰するまで置く。沸騰後、3分間保持し、次にボイルした野菜を金属製のザルで水切りを行う。次に別途予め調製した本発明の殺菌剤製剤30gと水270mlで10倍に希釈混合した溶液にボイルした野菜300gを浸漬させ、1分間保持する。次に再度水切りを行う。
水切りした野菜をラップに包み、25℃と32℃の恒温室に入れ、48時間保持して、野菜表面で増殖する一般生菌数をカウントすることにより、野菜に付着し、残留する菌の抑制効果を確認した。
なお、一般生菌数のカウントには、標準寒天培地を用い、37℃48時間後の菌数をカウントした。
(結果)
Figure 2006067807
備考
配合は実験例1と同じとした。
抗菌性は、>菌数が106:10の6乗以上/gであり、カウントできない状態まで菌が増殖していることを示す。
<10:菌数が10以下/gであり、菌の発育が抑えられていることを示す。
まとめ
本発明によれば、10倍に希釈した本発明の殺菌剤製剤の溶液を用いて液浸した野菜の表面に付着した一般微生物数は、25℃48時間保管した場合、10以下/gに抑制していることを確認することができた。また、可溶化した溶液を用いた場合32℃の高い温度条件で、かつ48時間長く保管した場合に増殖する耐熱性菌の群を抑制することがわかった。
比較例区のように、分散した溶液に野菜を浸漬した場合には、野菜の表面に乳化剤の不溶性の粒子が付着し、外観上で優れたものとはいえず、また、可溶化(あるいはミセル形成)していない、または水に溶けない素材は殺菌の目的を果たしうるとは言いがたいのが現状であった。
土戸らはシュガーエステルの耐熱性芽胞細菌に対する作用の解明を試み、B.subtilus、B.coagulans、B.stearothermophilus及びCl.sporogenesの芽胞を用い、シュガーエステルP-1670でテストしたところ、シュガーエステルは加熱時に芽胞と共存しても効果がなく、加熱後に芽胞の発芽と生育の起こる培地に存在すると、有効に働くことを示した。とくに加熱を受けた芽胞には効果的であることを示した(出所:Tsuchido, T.,Tanano,M,&Shibazaki,I.: J.Antibact.Antifugal Agants,11,567(1983))。
しかし、加熱処理した野菜を25℃および32℃で保存した場合、シュガーエステルの効果は上記の結果を見ると文献通りの結果となっていない。これはシュガーエステルの可溶化の有無と濃度の要因に起因するものと推測され、本発明のようにC8モノグリセライドとシュガーエステルを併用した場合には、耐熱性芽胞菌を抑制する効果が高まることを確認することができた。
このように、C8モノグリセライドを添加した水溶液に、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステルP1670)を添加し、攪拌混合したとき、添加した水溶液が可溶化し、希釈した場合でも乳化剤の分離が起こらず、可溶化状態を維持するとともに、かつ食材に対する抗菌活性が向上し、従来の方法では殺菌効果が見られなかった耐熱性菌に対して殺菌効果を有することがわかった。このことは、本実験で用いた加工用食材、すなわちボイルグリーンピースに付着した菌を抑制する上で、浸漬する乳化剤及びこの溶液の系で生成する乳化剤の粒子の大きさが殺菌活性に関与し、殺菌活性の効果が向上することを示唆する。
(実験例3)
調製した乳化剤水溶液の味について官能による評価を行った。
実験例3で調製した水溶液5gをイオン交換水100mlに添加混合し、室温で各試験液の味と後味に残る呈味をパネラー5名によって評価し、その特徴を記載した。なお、比較例であるエタノール25%水溶液と比較し、味の違いを確認した。
(結果)
Figure 2006067807
備考
比較例1、実施例1および2:実験例1と同じ配合量を用いた。
比較例9:比較例として、未変性エタノール25%の濃度の溶液を用いた。
実施例4:実施例1にクラスターデキストリン(江崎グリコ社製)を0.2部併用した。
結果
本発明品(製剤1〜4)は、高親水性界面活性剤であるシュガーエステルP1670で混合ミセルを形成したC8モノグリセライド等の溶液は後味の苦みがあってもほとんど気にかからない程度のごくわずかなものであり、口の中で感じる味もエグみや収斂味などなく、無味無臭のような平明な味となっていた。とくに実施例1にデキストリン(クラスターデキストリン、江崎グリコ社製)0.2部を併用した場合、味、後味ともに気にかかるものがなく、C8モノグリセライド特有の味(苦く、渋い特異な味)の発現は見出されなかった。
苦みの発現は一般的な乳化剤やエタノールなどの分子の疎水性部分が舌の味覚細胞に付着し、苦みを感じさせる原因となっているが、高親水性界面活性剤の併用によって、C8モノグリセライドの水中での粒子の大きさが微粒子化し、さらにC8モノグリセライドの表面を被覆することによって、ヒトの舌にある苦み発現部位との接触を阻害しているために防止されていると思われる。
(実験例4)
実験例1の実施例1と実施例1からリゾチームを除いた場合と、実施例1で使用したリゾチームの量を10倍量にしたもの(比較例10)を比較した。比較のために比較例9の25%アルコール溶液を用いた。抗菌活性試験の条件は、インゲンまめを1分間ボイルした以外は、実験例2と同様にして行った。
(結果)
Figure 2006067807

上記の結果、実施例1のリゾチームの添加量を0.5部にしたとき(比較例10製剤)には、原液および希釈液ともにミセル構造を安定化しており、平明な味にわずかな甘さがあって好ましい乳化剤水溶液を得られた。そして、抗菌活性の結果も良好であり、25℃および32℃で48時間保存した野菜は10以下/gの菌数であった。
なお、リゾチームの併用は保存条件が高い温度で保存した場合に、一般生菌を抑制する効果を高める傾向があることが見出された。これは、リゾチームがC8モノグリセライドなどの乳化剤を抱き込み、リゾチームタンパク質と乳化剤の混合物が菌の膜から取り込まれ、抗菌性の乳化剤が菌の膜を損傷した可能性が示唆された。
(実験例5)
酢酸カルシウムの添加による影響を調べた。すなわち、実施例1の組み合わせ(食酢96部、焼成貝殻カルシウム4部、C8モノグリセライド2.5部、シュガーエステルP1670 0.5部、リゾチーム0.05部)から食酢と焼成貝殻カルシウム(この組み合わせで酢酸カルシウム約25%相当量)を除き、余剰分の酢酸2部と水98部を添加した系(比較例11製剤)で抗菌活性試験を行った。抗菌活性試験の条件は実験例4と同様に行った。
(結果)
Figure 2006067807

この実験結果から、比較例1のC8モノグリセライド単独では、25℃32時間後の菌数が抑えられてはいるが、この温度条件下では、長い時間(32時間、48時間)、しかも温度が高くなった場合(32℃)には、菌数を十分に抑制できない。しかしながら、カルシウム塩、特に酢酸カルシウム塩の存在は抗菌効果を高める役割があることがわかった。
また、本発明の殺菌剤の特徴として、高度のカルシウム(約4%)を含んでも外観や抗菌活性などの効果を安定化していることから、カルシウムの安定化剤、カルシウムフォア(カルシウムと界面活性剤の組み合わせで、複合体形成し、カルシウムと界面活性剤の製剤が安定化する効果)としての抗菌活性の効果を高める役割を示唆することができた。
以上の結果からカルシウムの併用は、高い温度で保存した場合の抗菌活性を有意に高めるために必要な素材であることがわかった。
(実験例6)
実験例1の製剤の5%水溶液に、生鮮食材、生レタス(スーパーマーケット、市販品)100gを1分間浸漬し、実験例2と同様に抗菌活性試験を行ったとき、保存条件25℃で24時間保存した生レタスの一般生菌数は102以下/gとなり、大腸菌群も陰性に抑えることができた。また、処理した生レタスはそのまま食したとき、レタス特有の風味、味であり、浸漬に用いた殺菌剤製剤の味は見出されなかった。
この結果は、カプリル酸モノグリセライドとデカグリセリンモノラウリン酸エステルとを併用(特開平7−123916号公報)した製剤の結果で、一般生菌数が10の3乗/g
であったこと、また、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、リンゴ酸ナトリウム、デキストリン、エタノールの製剤の組み合わせ(特開平8−56631号公報)の結果でも、10の4乗/gの結果であったことを踏まえると、本発明の殺菌剤の抗菌効果は従来の知見から予測不可能な、著しい効果を与える可能性が示唆された。
(実験例7)
実験例1の製剤の10%水溶液に、果実(いちご、へた付きのまま)100gを1分間浸漬し、抗菌活性試験に用いた。浸漬後の果実を用いて大腸菌を測定したとき、浸漬処理を行った果実の大腸菌は陰性であった。牛乳100mlといっしょにしてミルクイチゴのデザートとしたとき、使用した殺菌剤の残留する味などはなく、好ましい食味を与えることができた。

Claims (5)

  1. (a)グリセリン中鎖脂肪酸エステル、
    (b)高親水性界面活性剤、
    (c)リゾチーム、および
    (d)酢酸または酢酸カルシウム、
    を含有する生鮮野菜または加工野菜用殺菌剤。
  2. 前記グリセリン中鎖脂肪酸エステルがモノカプリル酸エステルである、請求項1に記載の生鮮野菜および加工野菜用殺菌剤。
  3. 前記高親水性界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレン脂肪酸エステルである、請求項1に記載の殺菌剤。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の殺菌剤を食品の表面に付着させる工程を包含する、生鮮野菜および加工野菜の殺菌方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の殺菌剤を用いて処理された生鮮野菜または加工野菜。

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014212769A (ja) * 2013-04-30 2014-11-17 アサマ化成株式会社 緑色野菜用日持ち向上剤及び該緑色野菜用日持ち向上剤を含有する緑色野菜を原料とする加工食品
JP2015006170A (ja) * 2013-05-31 2015-01-15 奥野製薬工業株式会社 食品用日持向上剤

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