JP2006063033A - 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物 - Google Patents

細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2006063033A
JP2006063033A JP2004248634A JP2004248634A JP2006063033A JP 2006063033 A JP2006063033 A JP 2006063033A JP 2004248634 A JP2004248634 A JP 2004248634A JP 2004248634 A JP2004248634 A JP 2004248634A JP 2006063033 A JP2006063033 A JP 2006063033A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polypeptide
cell migration
laminin
composition
sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004248634A
Other languages
English (en)
Inventor
Atsushi Utani
厚志 宇谷
Kiyoshi Nomizu
基義 野水
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2004248634A priority Critical patent/JP2006063033A/ja
Publication of JP2006063033A publication Critical patent/JP2006063033A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)

Abstract

【課題】 ラミニン5分子内に存在する生理学的活性を有する配列を含む細胞移動促進組成物、ひいては損傷部位機能向上および改善用医薬組成物を提供することが、本発明の課題である。
【解決手段】 発明者等は、ラミニン5のα3鎖のG4ドメイン(LG4)内の配列:KNSFMALYLSKGRまたはKNSFMALYLSKGRLVFALGによる、細胞移動を促進することによる、皮膚疾患の治療可能性その他の、損傷部位の機能向上および改善の可能性を見出し、前記配列を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物および組成物製品を開発した。(図6(下)は、ペプチドを添加した溶液(+)と添加していない溶液(−)をマウスの皮膚に適用した後8日目の創傷面積の比較を、創傷作製時の面積を100%として示す。)
【選択図】 図6

Description

本発明は、細胞移動促進活性を有するポリペプチドを含有する組成物に関する。
皮膚表皮の機能の調節には、基底膜を介しての表皮−真皮間のコミュニケーションが重要であり、皮膚における表皮の増殖と分化は、基底膜と真皮によって調節されている。基底膜成分は、構造的機構のみならず、細胞の分化、増殖、アポトーシス、器官形成に、重要な役割を果たしている。ラミニンは、皮膚表皮、肺胞上皮、内外分泌腺、消化管上皮、血管内皮、神経、または筋肉細胞と、間質成分を境する網様構造物である基底膜の構成成分である。例えば、ラミニンは、上皮と、間質を境して上皮の発達をコントロールし、上皮の機能の発現に必須である。ラミニン5は、表皮と真皮の安定した結合を提供することにより、表皮の機能調節に寄与していることが知られている。ここで、細胞外マトリックスとして他にファイブロネクチン、コラーゲンなどが知られているが、これらは、ラミニンが関与する上皮-間質の関係とは無関係に存在する分子である。
ラミニンは、α鎖、β鎖、γ鎖の種々の組み合わせより成り、現在のところ15種類が知られている。α鎖(約400kDa)とβ鎖、γ鎖(約200kDa)が長鎖(Long arm)と呼ばれる部位でコイル状3本鎖構造を形成し、巨大なラミニン分子(約800kDa)を構成している。ラミニン5(α3β3γ2)は、皮膚、消化器、腎臓、肺などの上皮組織の基底膜に多量に存在する。ラミニンを欠損する遺伝子疾患(Herlitz junctional epidermolysis bullosa)では、全身の表皮が剥離する致死性の症状を示すことが知られている。ラミニン5は他の細胞外マトリックス分子と比べ、強度に細胞を接着させ(細胞接着活性が高い)、細胞運動を強く促進する(細胞運動活性が高い)ことが明らかになっている。(非特許文献1)
ラミニンは、創傷端において表皮細胞により発現誘導される。未だプロセシングを受けていないラミニン5分子の蓄積が創傷領域にのみ観察されるが、これは、成熟した無傷の皮膚では認められない。表皮細胞の移動が始まると、表皮細胞の先導による創傷の暫定的な基底膜に、プロセシングを受けていないラミニン5分子が現れる。そして、ラミニンα3鎖のC末端が切断されることにより、細胞の移動が止むというシステムが考えられる。プロセシングを受けていないラミニン5のLG4−5モジュールが、創傷治癒中の細胞移動に重要な役割を果たし得る可能性が高い。(非特許文献2)
発明者により、ラミニンα3LG4モジュール内の特定の配列が細胞接着の原因であること、シンデガン−2および−4がこの活性を媒介すること、ラミニンα3LG4モジュールが、表皮細胞にマトリックスメタロプロテイナーゼ−1(MMP-1)の発現を誘導することにより、組織の再構築に重要な役割を果たし得ることが予想され、また、当該特定配列が同定されている(非特許文献2および3)。
「細胞接着分子ラミニン5の機能解析と応用」、http://www.yokohama-cu.ac.jp/sangaku/seminar3/summary_miyazaki.pdf The Journal of Biological Chemistry, Vol. 276, No. 31, Issue of August 3, pp. 28779-28788, 2001 The Journal of Biological Chemistry, Vol. 278, No. 36, Issue of September 5, pp. 34483-34490, 2003
前記のごとく、未だプロセシングを受けていないラミニン5分子が細胞移動において重要な役割を果たし得、例えば皮膚疾患(特に創傷治癒)等における等、損傷部位の機能の向上および改善に有用たり得ることは予想し得るが、未だプロセシングを受けていないラミニン5分子は巨大分子であるため、生理学的に許容される担体等との混合が容易でなく、ラミニン5分子を含有する組成物製品はこれまで作製されていない。また、ラミニン5分子のプロセシングにより生ずるラミニン5の一部のドメインが細胞移動促進活性を有することは、これまで全く予想されておらず、ラミニン5の部分を含有する組成物製品も、これまで作製されていない。プロセシングを受けていないラミニン5分子と同等の生理学的活性を有するラミニン5の部分を含む細胞移動促進組成物および組成物製品を提供することが、本発明の課題である。
ラミニン5分子のα3鎖のLG4-5ドメインが、創傷治癒の場で表皮細胞が移動する先端部にのみ発現しているのは、既知である。発明者らは、ラミニン5のα3鎖のG4ドメイン(LG4)内の配列:KNSFMALYLSKGRLVFALGを有するポリペプチドが細胞移動促進活性を有することを、今回初めて見出した。加えて、当該ペプチドの内の左端のKNSFMALYLSKGRは、シンデカン受容体に認識されることによりその活性を現すことにより、さらにシンデカン結合には、右端から3番目のKと右端のRが必須であることを確認した。当該配列右端のLVFALGは、水溶性を高めるのに必要であることを確認した。さらに、当該発明者は、ラミニン5分子の部分たる上記配列による、細胞移動を促進することによる、皮膚疾患の治療可能性その他の、損傷部位の機能向上および改善の可能性を見出した。発明者は、前記配列を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物および組成物製品を開発した。
即ち、本発明は、ラミニンのLG4モジュール中のアミノ酸配列:KNSFMALYLSKGRまたはその配列を含むより長いKNSFMALYLSKGRLVFALGペプチドに関し、当該ポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を含む細胞移動促進組成物または組成物製品、皮膚疾患の治療を含む損傷部位の機能向上および改善のための当該組成物および組成物製品に関する。
本発明に係る配列は、ラミニン5のLG4モジュール中の細胞接着に必須の箇所であり、シンデガン依存性細胞接着活性を保持している。驚くべきことに、以下の実施例に示すように、当該配列を有するポリペプチドは細胞移動促進活性を有する。当該ポリペプチドは、従来細胞移動促進効果を有することが公知であったプロセシングを受けたラミニン5分子そのもの(約8000アミノ酸)よりも鎖が圧倒的に短く(分子量が小さく)、操作(使用、製造等)が容易で、優れた安定性および保存性を有し得る。また、前記の両端のアミノ酸(右端LVFALG配列)により、優れた水溶性を有し得る。かかる本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を用いて、細胞移動を促進することによる、皮膚疾患の治療を含む損傷部位の機能向上および改善に有効な、産業上極めて有用な組成物および組成物製品が提供される。
本発明のポリペプチドは、ペプチド合成の常套手段により作製することができる。そのようなペプチド合成の手段は、任意の公知の方法に従えばよい。本発明のポリペプチドの作製は、液相合成法、固相合成法のいずれによってもよいが、本発明においては、固相合成法、特にFmoc合成固相合成法を用いる。
詳細には、Fmocで末端のアミノ基が保護されているリンクアミド樹脂上で、末端のアミノ基が保護されているFmoc-アミノ酸を以下のように、1つずつ縮合していく。具体的には、まず、リンクアミド樹脂を20%ピペリジンDMF溶液で処理し、Fmocを外した後、Fmocアミノ酸をHOBt入りDMFに溶かし、DICと反応させて、活性化させる。アミノ末端を遊離形態とした樹脂と混ぜ、縮合させる。Fmocアミノ酸を20%ピペリジンDMF溶液で処理し、Fmocを外す。以上の操作を2〜4回繰り返した後、TFAで脱保護し、ポリペプチドを樹脂から分離し、スカベンジャーを用いて副生成物のトラップや酸化を防ぎつつ、各アミノ酸の側鎖保護基を外す。ジエチルエーテルで沈殿および洗浄する。適当な溶媒(酢酸等)に溶解し、HPLCにて精製後、凍結乾燥する。
保護アミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができる。Fmocアミノ酸は、反応の促進、アミノ酸の安定化、ラセミ体の抑制のために、N-ヒドロキシルベンゾトリアゾール(HOBt)入りのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して用いる。保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、酸処理などが挙げられる。
本発明のポリペプチドの誘導体は、ペプチド誘導体の作製のための常套法により作製することができる。即ち、本発明のポリペプチドは、キトサンの誘導体として得てもよい。
本発明のポリペプチドの生理学上許容される塩類は、公知の方法により、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩など)、塩基または塩基性化合物との塩(例えば、アンモニウム塩、アルギニン塩など)、酸付加塩、特に生理学上許容される酸付加塩として得ることができる。当該塩類には、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸)あるいは有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、蓚酸、メタンスルホン酸)などの塩が挙げられる。
本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類は、哺乳動物(例えば、ラット、ヒト、イヌ、ネコなど)において、細胞移動促進剤として、または皮膚疾患治療用を含む損傷部位の機能向上および改善用組成物として、例えば医薬的もしくは化粧用に使用することができる。
本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を医薬的に用いる場合には、ポリペプチドを有効成分として配合する以外には、通常の医薬品と同様にして、投与形態は特に限定されず、必要に応じて一般的な医薬製剤の形態を適宜選択して使用される。経口剤の投与形態の具体例としては、錠剤、丸剤、散財、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤があげられる。非経口剤の投与形態の具体例としては、注射剤、坐剤、膣坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、含嗽剤、トローチ(舌下錠)剤、経口スプレー、懸濁液、歯科用ゲルなどがあげられる。外用剤の投与形態の具体例としては、軟膏、クリーム、ローション(液剤)、ゲル剤、パック剤、パップ剤、パスタ剤、などの貼布剤、湿布剤、エアゾール(噴霧)剤、泡状エアゾール(噴霧)剤、粉末剤、リンス液、フィルム形態などがあげられる。
本発明の細胞移動促進剤は、将来の使用のために貯蔵するか、または有効な量において医薬的に許容し得る担体中で処方して広範囲な種々の医薬組成物を製造することができる。本明細書で使用するときの「担体」なる用語は、含有させた活性成分と反応しないあるいは活性成分の有効性を低下させない1種以上の無毒の賦形剤の許容し得るベヒクルを意味する。
医薬的に許容し得る担体の例は、経口的(経口剤)、非経口的(非経口剤)または外用的(外用剤)に用いられる医薬的に許容し得る担体であり、医薬器具および摂取可能なベヒクルもこれに含まれる。非経口的とは、体腔に用いるものであり、外用的とは皮膚または粘膜に用いるものである。医薬器具の例は、縫合せ糸、ステープル、ガーゼ、包帯、火傷包帯、人工皮膚、リポソームまたはミセル処方、マイクロカプセル、ガーゼ包帯を浸漬するための親水性基剤などおよびこれらの組み合わせなどである。摂取可能な組成物は、摂取可能なまたは部分的に摂取可能な担体、例えば菓子増量剤、例えばロゼンジ、錠剤、タフィー、ヌガー、懸濁液、かみケーキおよびチューインガムを使用できる。本発明の一形態においては、本発明の細胞移動促進組成物を、例えば縫合せ糸、ステープル、ガーゼ、包帯、火傷包帯、人工皮膚、リポソームまたはミセル処方、マイクロカプセル、ガーゼ包帯を浸漬するための親水性基剤などおよびこれらの組み合わせの形態の医薬器具中に塗布、貼布あるいは混入することができる。
経口剤として用いる場合には、この分野で従来公知の各種賦形剤、希釈剤、カプセル剤、シロップ剤などを適宜使用して、常法に従って製造される。賦形剤の具体例としては、ゼラチン、澱粉、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、アラビアゴムなどの製剤学的賦形剤と混合して製造される。カプセル剤は、ポリペプチドの活性に影響を与えない製剤充填剤もしくは希釈剤と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質ゼラチンカプセルなどに充填して製造される。経口用液剤のシロップ剤は、ポリペプチドを蔗糖などの甘味料、パラオキシ安息香酸メチルなどの防腐剤、着色剤、調味料などと混合して製造される。前記経口剤は、ポリペプチドの活性に影響を与えない条件であれば、必要に応じて各種ビタミン剤、スクロースなどのエネルギー源としての炭水化物、カゼインなどのタンパク源、メチオニンなどのアミノ酸、食塩などの電解質、各種薬効剤などを配合することができる。また、その安定性の観点から、使用直前にポリペプチドの凍結乾燥粉末に適当な担体を加えて前記段落(0015)に記載の形態として調製することもできる。
非経口剤として用いる場合には、ポリペプチドを液状担体、例えば、水または食塩水に溶解して製造される。透明度、安定性、非経口剤使用の適応性を有する目的で、ポリエチレングリコールなどの溶剤、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの潤滑剤、ビタミン剤、局所麻酔剤、各種薬効剤、食塩などの電解質などを配合することができる。さらに必要に応じて、ベンジルアルコール、フェノールなどの殺菌・防かび剤、安定剤、緩衝剤などの添加剤を配合することができる。また、その安定性の観点から、使用直前にポリペプチドの凍結乾燥粉末に適当な担体を加えて前記段落(0015)に記載の形態として調製することもできる。
外用剤として用いる場合には、この分野で従来公知の親油性基剤、親水性基剤または親油性および親水性両方の性質を持っている基剤を広く使用して、常法に従って行えばよい。親油性基剤の具体例としては、白色ワセリン、流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素油、オリーブ油、ゴマ油、牛脂、豚脂などの油脂類、イソプロピルミリステート、イソオクタン酸セチル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、サラシミツロウ、鯨ロウなどの高級脂肪酸エステル、高級脂肪族長鎖アルコールおよびワックス類、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、親油型モノグリセリン、トリオクタン酸グリセリンなどの炭素数12〜20の飽和または不飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリグリセリドおよびこれらの混合物などがあげられる。親水性基剤としては、グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、アルチトール、キシリトール、蔗糖、オリゴ糖、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの増粘剤(ガム質および高分子)、ヒアルロン酸およびその塩、水などがあげられる。親油性および親水性両方の性質を持っている基剤としては、炭素数12〜20の飽和または不飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなどのエステル、蔗糖脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびこれらの混合物が挙げられる。前記外用剤には、必要に応じて創傷治癒剤、抗炎症剤、局所麻酔剤、ビタミン剤、ホルモン剤、アミノ酸などの薬効剤、動・植物抽出剤、通常添加される添加剤、例えば、安定剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、香料、着色料、酸化防止剤、金属封鎖剤、界面活性剤などを配合することができる。
本発明のポリペプチドを化粧品的に用いる場合には、ポリペプチドを有効成分として配合する以外は、通常の化粧品と同様にして、各種の形態で調製される。投与形態は特に限定されず、必要に応じて一般的な化粧品の形態を適宜選択して使用される。例えば、クリーム、乳液、化粧水などの形態とすることができ、それぞれ常法に従って製造される。化粧品に用いる場合には、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品の分野で公知の親油性基剤、親水性基剤または親油性および親水性両方の性質を持っている基剤を広く使用できる。親油性基剤の具体例としては、白色ワセリン、流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素油、オリーブ油、ゴマ油、牛脂、豚脂などの油脂類、イソプロピルミリステート、イソオクタン酸セチル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、サラシミツロウ、鯨ロウなどの高級脂肪酸エステル、高級脂肪族長鎖アルコールおよびワックス類、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、親油型モノグリセリン、トリオクタン酸グリセリンなどの炭素数12〜20の飽和または不飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリグリセライドおよびこれらの混合物などがあげられる。親水性基剤としては、グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、アルチトール、キシリトール、蔗糖、オリゴ糖、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの増粘剤、ヒアルロン酸およびその塩、水などがあげられる。親油性および親水性両方の性質を持っている基剤としては、炭素数12〜20の飽和または不飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなどのエステル、蔗糖脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびこれらの混合物が挙げられる。上記の化粧品には、必要に応じて抗炎症剤、創傷治癒剤、ビタミン剤、アミノ酸などの薬効剤、動・植物抽出剤、通常添加される添加剤、例えば、安定剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、香料、着色料、酸化防止剤、金属封鎖剤、増粘剤(ガム質および高分子)、界面活性剤などを配合することができる。
なお、担体基剤等は、上記例に特に限定されず、例えば、外用剤に適するものを他の形態の剤において適宜用いることは、もちろん可能である。
本発明のポリペプチド含有細胞移動促進組成物の適用量および適用方法は、該製剤の形態、製剤中のポリペプチド含有量、これを適用される患者の年齢、性別、その他の条件、皮膚病変の程度などに応じて決定することができ、例えば本外用剤を患部全体に行きわたる量で、1日に1回または複数回、患部に散布、塗布、貼布などの方法により適用することができる。
本発明の細胞移動促進組成物および組成物製品中の有効成分の含有量は、用いるポリペプチドまたはポリペプチド誘導体によって異なるが、1×10−9以上100重量%以下、好ましくは1×10−7以上99.5重量%以下、より好ましくは1×10−4以上99重量%以下配合するのがよい。本発明の細胞移動促進組成物は、使用時に希釈して用いることができ、凍結乾燥粉末などの100%純度のものを、生理食塩水などで希釈して、前記の濃度で使用することもできる。
本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を含む細胞移動促進組成物および組成物製品を使用することができるpHは、当該組成物の生理機能を発揮し得る範囲であれば特に限定されず、例えば、3以上、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上であり、9.0以下であり、好ましくは8.5以下であり、より好ましくは8.0以下であること望ましい。
本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類は、損傷部位の機能向上および改善に用いることができ、例えば、糖尿病を始めとする血行障害による皮膚潰瘍、熱傷、外傷、褥瘡などによる難治性皮膚潰瘍、外力により皮膚、粘膜または消化器にできた開口や亀裂などの損傷(切り傷、擦り傷、刺し傷など)、十二指腸潰瘍、肝硬変、脊髄損傷の治癒(この場合は、カテーテル等の医療器具を用いて挿入して適用する)および角膜剥離などの眼科領域での創傷治癒(この場合は、点眼薬に配合して適用する)等に有効であるが、特に、糖尿病を始めとする血行障害による皮膚潰瘍、熱傷、外傷、褥瘡などによる難治性皮膚潰瘍に有効である。さらに、化粧品として適用し、ピーリングによって生じた皮膚の損傷回復促進、剃毛後の皮膚の損傷回復促進等を改善することができる。
さらに本発明の細胞移動促進組成物は、損傷部位の機能向上および改善が必要な動物にも適用できる。例えば、イヌ、ネコなどのペットや、ウシ、ウマなどの家畜、その他の皮膚の創傷面での治療にも、前記のヒトにおける医薬的、化粧品的適用形態に準じて使用できる。
実際の治療に用いる場合、本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を含む細胞移動促進組成物および組成物製品の投与量は、対象疾患、症状、投与対象、投与方法によって異なるが、例えば、成人の患者に対して、ポリペプチドの遊離体、誘導体またはその生理学上許容される塩類ともに、遊離体の量として、一般に、1日当たり0.1ng/cm2以上1mg/cm2以下の投与量範囲が適量である。例えば、軟膏にて投与する場合、通常薬効成分(ポリペプチド)1回量として0.01ng/cm2以上100μg/cm2以下程度、より好ましくは0.01ng/cm2以上1μg/cm2以下程度を1日1回〜回程度投与するのが好都合である。本ポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類は、特に、細菌や発熱物質が存在することのないよう、活性を失わない適切な方法、例えばエタノール、メタノールなどによる滅菌処理などの処理を追加して精製してもよい。なお、精製された本発明のポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類に副作用はない。
本発明のポリペプチドは、細胞移動を促進することにより損傷部位の機能を向上および改善する効果を有する。当該ポリペプチドは、ラミニン5分子に比べて圧倒的に短い(従って、低分子量)が、明確な生理学的活性を保持し、そして生理学上許容される担体などの所望の他の基質および添加剤等との混合が容易である。総じて、本発明により、他の賦形剤との混合が容易である、安定性、保存性を高めることができるといった有利性の他、低分子量であることに依拠する作製される組成物の滑らかな皮膚塗布性および接着安定性が得られる。また、本発明のポリペプチドはラミニン5分子の活性のエッセンスと言える部分のみを含み、かつラミニン5分子に比べて、水への溶解性が圧倒的に高いことから(特に配列:KNSFMALYLSKGRLVFALGを有するもの)、賦形剤、増粘剤などの添加剤を配合した様々な形態の製剤中に高濃度の配合が可能であるといったさらなる有利性も得られ、産業上有用な組成物が提供される。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に記載するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
本発明のポリペプチドを、以下の実施例に記載するように調製した。
1.本発明のポリペプチドの合成
全ペプチドは、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)を用いて固相法に基づきマニュアル通りに合成し、C−末端アミド形態にて調製した。アミノ酸誘導体および樹脂は、Novabiochem, La Jolla, CAより購入した。各アミノ酸は、4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシまたはNovaSyn(登録商標)TGR樹脂(Novabiochem)を用いて、マニュアル通りに段階を追って縮合させた。ジメチルホルムアミド(DMF)を合成中溶媒として用いた。縮合のためには、ジイソプロピルカルボジイミド/N-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用い、Na-Fmoc基の脱保護のためには、20%ピペリジンDMF溶液を用いた。以下の側鎖保護基を用いた: Asn、Gln、およびHis、トリチル; Asp、Glu、Ser、Thr、およびTyr、t-ブチル; Arg、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル; およびLys、t-ブトキシカルボニル。生じた保護されたペプチド樹脂を脱保護し、トリフルオロ酢酸(TFA)-チオアニソール-m-クレゾール-エタンジチオール-H2(80:5:5:5:5、v/v)を20℃にて3時間用いて樹脂から分離した。粗ペプチドをエチルエーテルにて沈殿および洗浄し、mightysil RP-18カラム(Kanto Chemical Co., Inc, Tokyo, Japan)および0.1% TFAを含んでいる水/アセトニトリルの勾配を用いる逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。ペプチドの精製および同定は、分析HPLCおよび高速原子衝撃マススペクトロメーター(GC-MS & NMR Laboratory, Gfaduate School of Agriculture, Hokkaido Univeersity)により確認した。本発明の、アミノ酸配列KNSFMALYLSKGRを有するポリペプチド(非特許文献2のP28780のTable Iの「A3G75aR」と同じもの)およびアミノ酸配列KNSFMALYLSKGRLVFALGを有するポリペプチドを得た。(図1)。
[実施例2]
1.合成ポリペプチドの創傷治癒促進活性
作製した合成ラミニンポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進活性を、以下のごとく、当該ポリペプチドの細胞遊走刺激効果を食動力学的追跡アッセイを用い、および、実際適用の例を示すことにより確認した。
(1)細胞遊走刺激効果の確認
a)材料
1.培養角化細胞
2.金コロイド
3.顕微鏡(CCDカメラ(Model VB-6010, KEYENCE CORPORATION, Osaka, Japan)付、遊走の判定のため)
b)方法:細胞移動金コロイド食動力学的アッセイ
(i)培養角化細胞の調製
ヒト角化細胞をClonetics, San Diego, CAから購入し、上皮細胞成長因子(EGF)およびウシ下垂体抽出物を添加した角化細胞−血清不含培地(SFM)(Invitrogen life technologies)中に維持した。角化細胞は、実施例において、第2〜第3継代にて用いた。
(ii)金コロイド被覆カバーグラスの調製
直径35mmのカバーグラスを、5分間室温にて、1%の仔牛血清アルブミン(BSA)リン酸緩衝塩水(PBS)溶液に浸した。ついでカバーグラスを100%エタノールに浸し、1分間ヘアードライアーですぐに乾燥した。それらを、ウェルごとに1枚、24ウェルの組織培養プレートに入れた。金塩溶液(HAuCl4・4H2O (1.4 mM)、Na2CO3 (11.7 mM))を50mlのビーカー中で沸騰まで加熱した後、新鮮な0.1%ホルムアルデヒド(1.2ml)を撹はんしながらゆっくりと添加した。この混合液を、BSAコートしたカバーグラスを入れた24ウェルのプレートに、ウェルあたり1mlにて迅速に添加した。プレートをカバーし、45分間静置して、金塩粒子を定着させた。金塩溶液を除去した後、カバーグラスを1mlのPBSにて1回穏やかにすすぎ、使用まで4℃にて冷蔵庫にて保存した。
(iii)細胞移動の軌跡の測定
前記のごとく維持した細胞をトリプシン処理し、KC-SFM培地に再懸濁し、次いで細胞数を数えた。約3000個の細胞をカバーグラスに載せ、カバーグラスに30〜60分間かけて接着させた。次いで、培地を本発明のポリペプチドを含んでいるKC-SFM培地および対照のS4ペプチドを含んでいるKC-SFM培地と取り替えた(ここで、本発明のポリペプチドを含んでいるKC-SFM培地濃度を、図4のごとく変化させた。)。細胞を、所定の期間移動させた。培地を除去し、細胞を10%のホルムアルデヒドPBS溶液にて、10分間固定した。
(iv)細胞遊走の判定
顕微鏡において5視野選択し、CCDカメラで写真撮影した。Adobe photo shopにて変換した後、NIH image1.6プログラムにて、細胞が移動した部分の面積をピクセルで表示した。
(v)結果
本発明のポリペプチドにより、遊走が刺激された。(図2を参照されたい。)ペプチド(+)において、黒く顆粒状に見えるところは金コロイド粒子で、細胞が動いた後はそこの金が細胞に貪食され、白く抜けて見えている。
図3は、弱拡大写真の白黒の反転させた図である。顕微鏡にて、5視野選んで、写真を撮影した。それをAdobe photo shopに変換した後、NIH imageにて、細胞が移動した部分の面積をピクセルで表示した(右)。
遊走は、ペプチドにより濃度依存性に刺激された。多すぎると、逆に遊走刺激効果は落ちていく(図4上)。
時間に関しては、遊走の程度は12時間と24時間では同じであり、12時間までで効果がなくなると考えられる(図4下)。
[実施例3]
1.p38 MAPキナーゼ阻害剤 SB202190による細胞遊走刺激効果の阻害の確認
(i)
前記[実施例2](1)b)(iii)において、細胞を、15−60分間、培地を置き換える前に、SB202190(30μg/ml)で前もって処理した以外は、前記[実施例2](1)b)(i)〜(iv)記載の細胞移動の軌跡の測定と同じ細胞移動軌跡測定を行った。ここで、SB202190は、P38MAPKの阻害剤である。
(ii)結果
遊走は、P38MARK阻害剤SB202190により完全に阻害された(図5)。
[実施例4]
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下ごとく、ポリペプチドをマウスに実際適用することにより、確認した。
(1)
a)材料
8週のC57BLマウス(オス)
b)方法
(i)
マウスの背中の皮膚に直径6mmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチド溶液(2μg/μl PBS溶液、10μl)を直接滴下し、次いでテガダームにて被覆した。2日目、ポリペプチド溶液を再度滴下し、8日目に屠殺した。潰瘍部位を、メジャーと共に、デジタルカメラで撮り、画像データとする。NIH imageにて、潰瘍部位の大きさを定量化した。
(ii)結果
ポリペプチドの存在下では、創傷治癒が明らかに促進していた(図6を参照されたい。)
[実施例5]
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチドクリーム(A)を実際に適用することにより、確認した。
a)材料
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチドクリーム(A)の製造方法
(1)ショ糖脂肪酸エステル2gを50mLのビーカーに秤取し、80〜85℃に加温しながら、85℃に加温した水を少量ずつ加え、均一相となるように混合した後、室温まで攪拌しながら冷却した。得られたペースト状の製剤に精製水を加え、全量10gとした後、更に、均一相となるように十分攪拌し、クリーム基剤を得た。(2)ポリペプチド1mgを1.5mLのチューブに秤取し、これに滅菌精製水を加え、全量1gとした後、均一に撹拌し、溶解した。(3)前記(1)で得られたクリーム基剤50mgと(2)で得られたポリペプチ水溶液50mgを均一相となるように十分混和し、ポリペプチドクリーム(A)を得た。
(ii)マウスの背中の皮膚に直径1cmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチドクリーム(A)50μg(ポリペプチドとして25μg、約32μg/cm2相当量)を塗布し、次いでデカダームにて被覆し、7日目に屠殺した。コントロールとして、スクランブルポリペプチド(アミノ酸の配列順序が異なる)を含有するクリームを塗布した群を設けた。塗布後に潰瘍部位をメジャーで測定し、コントロール群と比較した。
(iii)結果
ポリペプチドクリーム(A)塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、軟膏塗布7日後では、コントロール群では、30%であったのに対して、ポリペプチドクリーム(A)塗布群では、1%以下であった。すなわち、ポリペプチド軟膏(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
[実施例6]
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGR)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチド軟膏(A)を実際に適用することにより、確認した。
a)材料
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチド軟膏(A)の製造方法
ポリペプチド1mgを白色ワセリンの一部と混和し、十分研和したのち、残余の白色ワセリンを練り合わせて全量10gとし、全質均等としてポリペプチド軟膏(A)を得た。
(ii)マウス(2匹)の背中の皮膚に直径1cmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチド軟膏(A)30μg(ポリペプチドとして3μg、約4μg/cm2相当量)を塗布し、次いでデカダームにて被覆し、8日目に屠殺した。コントロールとして、 スクランブルポリペプチドを含有する軟膏を塗布した群(2匹)を設けた。塗布後に潰瘍部位をメジャーで測定し、コントロール群と比較した。
(iii)結果
軟膏塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、軟膏塗布8日後では、コントロール群では、30%と35%であったのに対して、ポリペプチド軟膏(A)塗布群では、10%と10%であった。すなわち、ポリペプチド軟膏(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
[実施例7]
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチドゲル(A)を実際に適用することにより、確認した。
a)材料
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチドゲル(A)の製造方法
ポリペプチド0.1mg、滅菌蒸留水15mLを加えて均一に溶解した液に、ヒアルロン酸ナトリウム1gを液面に散布し、24時間放置後、残りの滅菌蒸留水を加え、全量20gとし、全質均等としてポリペプチドゲル(A)を得た。
(ii)マウス(2匹)の背中の皮膚に直径10mmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチドゲル(A)50μg(ポリペプチドとして0.25μg、約0.3μg/cm2相当量)を塗布し、次いでデカダームにて被覆した。3日および5日後に同量のポリペプチドゲル(A)を塗布し、8日目に屠殺した。コントロールとして、スクランブルポリペプチドを含有するゲルを塗布した群(2匹)を設けた。塗布後に潰瘍部位をメジャーで測定し、コントロール群と比較した。
(iii)結果
ゲル塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、ゲル塗布8日後の潰瘍部位の大きさは、コントロール群では、2匹共に25%であったのに対して、ポリペプチドゲル(A)塗布群では1%と0.5%であった。すなわち、ポリペプチドゲル(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
[実施例8]
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチドクリーム(B)を実際に適用することにより、確認した。
a)材料
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチドクリーム(B)の製造方法
(1)精製水9gを50mLのビーカーに秤取し、85℃に加温した後、パラオキシ安息香酸メチル0.02g、グリセリン2gを加え、80〜85℃に加温しながら均一に攪拌し、溶解した。(2)ショ糖脂肪酸エステル2gを100mLのビーカーに秤取し、前記(1)の水溶液を加え、80〜85℃に加温しながら、均一相となるように攪拌した後、室温まで攪拌しながら冷却した。(3)前記(2)に精製水を加え、全量10gとした後、均一相となるように十分攪拌し、クリーム基剤を得た。(4)ポリペプチド1mgを1.5mLのチューブに秤取し、これに滅菌精製水を加え、全量1gとした後、均一に撹拌し、溶解した。(5)前記(3)で得られたクリーム基剤450mgと(4)で得られたポリペプチ水溶液50mgを均一相となるように十分混和し、ポリペプチドクリーム(B)を得た。
(ii)マウスの背中の皮膚に直径10mmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチドクリーム(A)50μg(ポリペプチドとして5μg、6μg/cm2相当量)を塗布し、次いでデカダームにて被覆した。3日目にポリペプチドクリーム(B)を同量塗布し、6日目に屠殺した。コントロールとして、スクランブルポリペプチドを含有するクリームを塗布した群を設けた。塗布後に潰瘍部位をメジャーで測定し、コントロール群と比較した。
(iii)結果
ポリペプチドクリーム(A)塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、軟膏塗布8日後では、コントロール群では、20%と25%であったのに対して、ポリペプチドクリーム(B)塗布群では、2匹ともに1%以下であった。すなわち、ポリペプチド軟膏(B)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
[実施例9]
1.創傷治癒促進効果の確認(比較例)
(i)本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果の従来品との比較を以下のごとく、ポリペプチドクリーム(C)とコラーゲン配合クリームを実際に適用することにより、確認した。
a)材料
8週のICRマウス(オス)
b)方法
マウスの背中の皮膚に直径1cmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチドクリーム(C)(ポリペプチド0.1mgを用いて、ポリペプチドクリームAと同様の方法で製造した)50μg(ポリペプチドとして25μg、約32μg/cm2相当量)を塗布し、次いでデカダームにて被覆した。7日目に屠殺した。コントロールとして、和光純薬工業株式会社製、コラーゲン溶液タイプIをポリペプチドクリームAと同じ基剤で、10μg/mLに希釈した水溶液250μL(コラーゲンとして、2.5μg)を含有するクリームを塗布した群を設けた。塗布後に潰瘍部位をメジャーで測定し、コントロール群と比較した。
(ii)結果
ゲル塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、ゲル塗布7日後の潰瘍部位の大きさは、コントロール群では、2匹共に35%であったのに対して、ポリペプチドゲル(A)塗布群では1%と0.5%であった。すなわち、ポリペプチドゲル(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
[実施例10]
1.創傷治癒促進効果が、皮膚における本発明のポリペプチドによる細胞遊走刺激効果によるものであることの確認
(i)ポリペプチド溶液(2μg/μl PBS溶液、10μl)にSB202190(30μg/ml)を追加して、前記[実施例4](1)b)(i)と同じ確認試験を行った。
(ii)結果
SB202190(30μg/ml)の存在下では、創傷治癒促進効果が完全に阻害された(図7を参照されたい。)
本発明のポリペプチドの精製結果を示すHPCL図である。 本発明のポリペプチドの遊走刺激効果を示す顕微鏡画像である。 遊走刺激後、弱拡大にて写真を撮り、白黒反転したもの(左)およびNIH imageにより、細胞が移動した部分の面積を計算し、値を平均±S.D.表示してある。 本発明のポリペプチドの遊走刺激効果のポリペプチド濃度(上)および時間との関係を示す図(下)である。データは、平均±S.D.で表示してある。 遊走が、P38MARK阻害剤SB202190により完全に阻害されたことを示す図である。本発明のポリペプチドによる細胞の移動度を100%として表示してある。 ポリペプチドをマウスに実際に適用した場合の、本発明のポリペプチドの創傷治癒効果を示す、デジタルカメラの写真(上)および創傷治癒効果を創傷作製時の面積を100%として、8日目の大きさを平均±S.D.で表している比較図(下)である。 創傷治癒促進効果が、皮膚における本発明のポリペプチドによる細胞遊走刺激効果によるものであることを示す。SB202190(30μg/ml)の存在下では、創傷治癒促進効果が完全に阻害された。

Claims (7)

  1. アミノ酸配列:KNSFMALYLSKGR
    を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学的に許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物。
  2. アミノ酸配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG
    を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学的に許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物。
  3. 請求項1または2記載の細胞移動促進組成物および担体を含む、損傷部位機能向上および改善用組成物。
  4. 含まれるポリペプチドもしくはその誘導体またはその薬理学上許容される塩類の量が、ポリペプチドに換算して1×10−9重量%以上100重量%以下である、前記請求項いずれか1項記載の組成物。
  5. 担体が、蔗糖、蔗糖脂肪酸エステルおよびヒアルロン酸である、請求項3または4いずれかに記載の組成物。
  6. 3.0以上9.0以下のpH条件下で使用可能であることをさらに特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の組成物。
  7. 1日当たり0.1ng/cm2以上1mg/cm2以下の投与量にて外用投与される、前記請求項いずれか1項記載の組成物。
JP2004248634A 2004-08-27 2004-08-27 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物 Pending JP2006063033A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004248634A JP2006063033A (ja) 2004-08-27 2004-08-27 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004248634A JP2006063033A (ja) 2004-08-27 2004-08-27 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006063033A true JP2006063033A (ja) 2006-03-09

Family

ID=36109815

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004248634A Pending JP2006063033A (ja) 2004-08-27 2004-08-27 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006063033A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9260507B2 (en) 2009-03-13 2016-02-16 Symatese Peptide promoting cell adhesion and migration
JP2016193857A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 丸善製薬株式会社 皮膚化粧料および飲食品

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9260507B2 (en) 2009-03-13 2016-02-16 Symatese Peptide promoting cell adhesion and migration
JP2016193857A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 丸善製薬株式会社 皮膚化粧料および飲食品

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8871716B2 (en) Use of antimicrobial peptides in regeneration of skin cells
KR101842521B1 (ko) 부화액 효소 및 그 용도
PT88626B (pt) Processo para a preparacao de um factor de crescimento polipeptidico proveniente de leite
CN101522708A (zh) 具有表皮生长因子活性的肽及其用途
JP2003534359A (ja) 瘢痕形成作用を有する医薬品を製造するためのビグアニド誘導体の使用
WO2017009488A1 (en) Topical compositions
JP5144690B2 (ja) Plgf−1を含む医薬品及び化粧品組成物
WO2017009487A1 (en) Topical compositions
RU2458069C2 (ru) Выделенный пептид для усиления ранозаживляющей активности кератиноцитов, композиция для заживления ран у млекопитающего и лекарственное средство для применения при заживлении ран у млекопитающего
JP2010116405A6 (ja) Plgf−1を含む医薬品及び化粧品組成物
WO2017009486A1 (en) Topical compositions
JP2007508297A (ja) 経皮の高分子量化合物及び低分子量化合物
JP2006063033A (ja) 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物
EP2624853B1 (en) Novel use of antimicrobial peptides in regeneration of skin cells
KR101688696B1 (ko) 엔케팔린 변이체를 함유하는 상처 치료용 조성물
JPH09500088A (ja) 創傷治癒用組成物
CN114805489A (zh) 一类用于修复皮肤损伤或黏膜损伤的多肽及其应用
CN116457365A (zh) 肽以及包含所述肽的化妆品组合物和药物组合物
WO2018014936A1 (en) Topical compositions
CN114106100B (zh) 用于修复皮肤创伤或黏膜损伤的多肽及其应用
JPH05271226A (ja) 創傷治癒促進剤
WO2023092926A1 (zh) 一类促进组织修复的新多肽及其应用
JPH0881387A (ja) 創傷治癒剤
CN114621323A (zh) 一类具有皮肤修复作用的多肽化合物及其制备方法和应用
KR20230067034A (ko) 항산화, 미백, 항염증, 피부보호 등의 기능을 갖는 락토페린 유도체 제조방법 및 이를 포함하는 피부 치료용 연고 및 화장품 조성물

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080903

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081031

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20081031

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20081104

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20091014

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091125