JP2006063033A - 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 発明者等は、ラミニン5のα3鎖のG4ドメイン(LG4)内の配列:KNSFMALYLSKGRまたはKNSFMALYLSKGRLVFALGによる、細胞移動を促進することによる、皮膚疾患の治療可能性その他の、損傷部位の機能向上および改善の可能性を見出し、前記配列を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学上許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物および組成物製品を開発した。(図6(下)は、ペプチドを添加した溶液(+)と添加していない溶液(−)をマウスの皮膚に適用した後8日目の創傷面積の比較を、創傷作製時の面積を100%として示す。)
【選択図】 図6
Description
「細胞接着分子ラミニン5の機能解析と応用」、http://www.yokohama-cu.ac.jp/sangaku/seminar3/summary_miyazaki.pdf The Journal of Biological Chemistry, Vol. 276, No. 31, Issue of August 3, pp. 28779-28788, 2001 The Journal of Biological Chemistry, Vol. 278, No. 36, Issue of September 5, pp. 34483-34490, 2003
詳細には、Fmocで末端のアミノ基が保護されているリンクアミド樹脂上で、末端のアミノ基が保護されているFmoc-アミノ酸を以下のように、1つずつ縮合していく。具体的には、まず、リンクアミド樹脂を20%ピペリジンDMF溶液で処理し、Fmocを外した後、Fmocアミノ酸をHOBt入りDMFに溶かし、DICと反応させて、活性化させる。アミノ末端を遊離形態とした樹脂と混ぜ、縮合させる。Fmocアミノ酸を20%ピペリジンDMF溶液で処理し、Fmocを外す。以上の操作を2〜4回繰り返した後、TFAで脱保護し、ポリペプチドを樹脂から分離し、スカベンジャーを用いて副生成物のトラップや酸化を防ぎつつ、各アミノ酸の側鎖保護基を外す。ジエチルエーテルで沈殿および洗浄する。適当な溶媒(酢酸等)に溶解し、HPLCにて精製後、凍結乾燥する。
本発明のポリペプチドを、以下の実施例に記載するように調製した。
1.本発明のポリペプチドの合成
全ペプチドは、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)を用いて固相法に基づきマニュアル通りに合成し、C−末端アミド形態にて調製した。アミノ酸誘導体および樹脂は、Novabiochem, La Jolla, CAより購入した。各アミノ酸は、4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシまたはNovaSyn(登録商標)TGR樹脂(Novabiochem)を用いて、マニュアル通りに段階を追って縮合させた。ジメチルホルムアミド(DMF)を合成中溶媒として用いた。縮合のためには、ジイソプロピルカルボジイミド/N-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用い、Na-Fmoc基の脱保護のためには、20%ピペリジンDMF溶液を用いた。以下の側鎖保護基を用いた: Asn、Gln、およびHis、トリチル; Asp、Glu、Ser、Thr、およびTyr、t-ブチル; Arg、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル; およびLys、t-ブトキシカルボニル。生じた保護されたペプチド樹脂を脱保護し、トリフルオロ酢酸(TFA)-チオアニソール-m-クレゾール-エタンジチオール-H2(80:5:5:5:5、v/v)を20℃にて3時間用いて樹脂から分離した。粗ペプチドをエチルエーテルにて沈殿および洗浄し、mightysil RP-18カラム(Kanto Chemical Co., Inc, Tokyo, Japan)および0.1% TFAを含んでいる水/アセトニトリルの勾配を用いる逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。ペプチドの精製および同定は、分析HPLCおよび高速原子衝撃マススペクトロメーター(GC-MS & NMR Laboratory, Gfaduate School of Agriculture, Hokkaido Univeersity)により確認した。本発明の、アミノ酸配列KNSFMALYLSKGRを有するポリペプチド(非特許文献2のP28780のTable Iの「A3G75aR」と同じもの)およびアミノ酸配列KNSFMALYLSKGRLVFALGを有するポリペプチドを得た。(図1)。
1.合成ポリペプチドの創傷治癒促進活性
作製した合成ラミニンポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進活性を、以下のごとく、当該ポリペプチドの細胞遊走刺激効果を食動力学的追跡アッセイを用い、および、実際適用の例を示すことにより確認した。
a)材料
1.培養角化細胞
2.金コロイド
3.顕微鏡(CCDカメラ(Model VB-6010, KEYENCE CORPORATION, Osaka, Japan)付、遊走の判定のため)
(i)培養角化細胞の調製
ヒト角化細胞をClonetics, San Diego, CAから購入し、上皮細胞成長因子(EGF)およびウシ下垂体抽出物を添加した角化細胞−血清不含培地(SFM)(Invitrogen life technologies)中に維持した。角化細胞は、実施例において、第2〜第3継代にて用いた。
(ii)金コロイド被覆カバーグラスの調製
直径35mmのカバーグラスを、5分間室温にて、1%の仔牛血清アルブミン(BSA)リン酸緩衝塩水(PBS)溶液に浸した。ついでカバーグラスを100%エタノールに浸し、1分間ヘアードライアーですぐに乾燥した。それらを、ウェルごとに1枚、24ウェルの組織培養プレートに入れた。金塩溶液(HAuCl4・4H2O (1.4 mM)、Na2CO3 (11.7 mM))を50mlのビーカー中で沸騰まで加熱した後、新鮮な0.1%ホルムアルデヒド(1.2ml)を撹はんしながらゆっくりと添加した。この混合液を、BSAコートしたカバーグラスを入れた24ウェルのプレートに、ウェルあたり1mlにて迅速に添加した。プレートをカバーし、45分間静置して、金塩粒子を定着させた。金塩溶液を除去した後、カバーグラスを1mlのPBSにて1回穏やかにすすぎ、使用まで4℃にて冷蔵庫にて保存した。
前記のごとく維持した細胞をトリプシン処理し、KC-SFM培地に再懸濁し、次いで細胞数を数えた。約3000個の細胞をカバーグラスに載せ、カバーグラスに30〜60分間かけて接着させた。次いで、培地を本発明のポリペプチドを含んでいるKC-SFM培地および対照のS4ペプチドを含んでいるKC-SFM培地と取り替えた(ここで、本発明のポリペプチドを含んでいるKC-SFM培地濃度を、図4のごとく変化させた。)。細胞を、所定の期間移動させた。培地を除去し、細胞を10%のホルムアルデヒドPBS溶液にて、10分間固定した。
顕微鏡において5視野選択し、CCDカメラで写真撮影した。Adobe photo shopにて変換した後、NIH image1.6プログラムにて、細胞が移動した部分の面積をピクセルで表示した。
(v)結果
本発明のポリペプチドにより、遊走が刺激された。(図2を参照されたい。)ペプチド(+)において、黒く顆粒状に見えるところは金コロイド粒子で、細胞が動いた後はそこの金が細胞に貪食され、白く抜けて見えている。
図3は、弱拡大写真の白黒の反転させた図である。顕微鏡にて、5視野選んで、写真を撮影した。それをAdobe photo shopに変換した後、NIH imageにて、細胞が移動した部分の面積をピクセルで表示した(右)。
時間に関しては、遊走の程度は12時間と24時間では同じであり、12時間までで効果がなくなると考えられる(図4下)。
1.p38 MAPキナーゼ阻害剤 SB202190による細胞遊走刺激効果の阻害の確認
(i)
前記[実施例2](1)b)(iii)において、細胞を、15−60分間、培地を置き換える前に、SB202190(30μg/ml)で前もって処理した以外は、前記[実施例2](1)b)(i)〜(iv)記載の細胞移動の軌跡の測定と同じ細胞移動軌跡測定を行った。ここで、SB202190は、P38MAPKの阻害剤である。
(ii)結果
遊走は、P38MARK阻害剤SB202190により完全に阻害された(図5)。
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下ごとく、ポリペプチドをマウスに実際適用することにより、確認した。
a)材料
8週のC57BLマウス(オス)
b)方法
(i)
マウスの背中の皮膚に直径6mmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチド溶液(2μg/μl PBS溶液、10μl)を直接滴下し、次いでテガダームにて被覆した。2日目、ポリペプチド溶液を再度滴下し、8日目に屠殺した。潰瘍部位を、メジャーと共に、デジタルカメラで撮り、画像データとする。NIH imageにて、潰瘍部位の大きさを定量化した。
(ii)結果
ポリペプチドの存在下では、創傷治癒が明らかに促進していた(図6を参照されたい。)
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチドクリーム(A)を実際に適用することにより、確認した。
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチドクリーム(A)の製造方法
(1)ショ糖脂肪酸エステル2gを50mLのビーカーに秤取し、80〜85℃に加温しながら、85℃に加温した水を少量ずつ加え、均一相となるように混合した後、室温まで攪拌しながら冷却した。得られたペースト状の製剤に精製水を加え、全量10gとした後、更に、均一相となるように十分攪拌し、クリーム基剤を得た。(2)ポリペプチド1mgを1.5mLのチューブに秤取し、これに滅菌精製水を加え、全量1gとした後、均一に撹拌し、溶解した。(3)前記(1)で得られたクリーム基剤50mgと(2)で得られたポリペプチ水溶液50mgを均一相となるように十分混和し、ポリペプチドクリーム(A)を得た。
ポリペプチドクリーム(A)塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、軟膏塗布7日後では、コントロール群では、30%であったのに対して、ポリペプチドクリーム(A)塗布群では、1%以下であった。すなわち、ポリペプチド軟膏(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGR)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチド軟膏(A)を実際に適用することにより、確認した。
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチド軟膏(A)の製造方法
ポリペプチド1mgを白色ワセリンの一部と混和し、十分研和したのち、残余の白色ワセリンを練り合わせて全量10gとし、全質均等としてポリペプチド軟膏(A)を得た。
軟膏塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、軟膏塗布8日後では、コントロール群では、30%と35%であったのに対して、ポリペプチド軟膏(A)塗布群では、10%と10%であった。すなわち、ポリペプチド軟膏(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチドゲル(A)を実際に適用することにより、確認した。
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチドゲル(A)の製造方法
ポリペプチド0.1mg、滅菌蒸留水15mLを加えて均一に溶解した液に、ヒアルロン酸ナトリウム1gを液面に散布し、24時間放置後、残りの滅菌蒸留水を加え、全量20gとし、全質均等としてポリペプチドゲル(A)を得た。
ゲル塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、ゲル塗布8日後の潰瘍部位の大きさは、コントロール群では、2匹共に25%であったのに対して、ポリペプチドゲル(A)塗布群では1%と0.5%であった。すなわち、ポリペプチドゲル(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
1.創傷治癒促進効果の確認
本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果を以下のごとく、ポリペプチドクリーム(B)を実際に適用することにより、確認した。
8週のICRマウス(オス)
b)方法
(i)ポリペプチドクリーム(B)の製造方法
(1)精製水9gを50mLのビーカーに秤取し、85℃に加温した後、パラオキシ安息香酸メチル0.02g、グリセリン2gを加え、80〜85℃に加温しながら均一に攪拌し、溶解した。(2)ショ糖脂肪酸エステル2gを100mLのビーカーに秤取し、前記(1)の水溶液を加え、80〜85℃に加温しながら、均一相となるように攪拌した後、室温まで攪拌しながら冷却した。(3)前記(2)に精製水を加え、全量10gとした後、均一相となるように十分攪拌し、クリーム基剤を得た。(4)ポリペプチド1mgを1.5mLのチューブに秤取し、これに滅菌精製水を加え、全量1gとした後、均一に撹拌し、溶解した。(5)前記(3)で得られたクリーム基剤450mgと(4)で得られたポリペプチ水溶液50mgを均一相となるように十分混和し、ポリペプチドクリーム(B)を得た。
ポリペプチドクリーム(A)塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、軟膏塗布8日後では、コントロール群では、20%と25%であったのに対して、ポリペプチドクリーム(B)塗布群では、2匹ともに1%以下であった。すなわち、ポリペプチド軟膏(B)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
1.創傷治癒促進効果の確認(比較例)
(i)本発明のポリペプチド(配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG)の創傷治癒促進効果の従来品との比較を以下のごとく、ポリペプチドクリーム(C)とコラーゲン配合クリームを実際に適用することにより、確認した。
a)材料
8週のICRマウス(オス)
マウスの背中の皮膚に直径1cmの全層性皮膚欠損創傷を作成し、そこへポリペプチドクリーム(C)(ポリペプチド0.1mgを用いて、ポリペプチドクリームAと同様の方法で製造した)50μg(ポリペプチドとして25μg、約32μg/cm2相当量)を塗布し、次いでデカダームにて被覆した。7日目に屠殺した。コントロールとして、和光純薬工業株式会社製、コラーゲン溶液タイプIをポリペプチドクリームAと同じ基剤で、10μg/mLに希釈した水溶液250μL(コラーゲンとして、2.5μg)を含有するクリームを塗布した群を設けた。塗布後に潰瘍部位をメジャーで測定し、コントロール群と比較した。
ゲル塗布前の潰瘍部位の大きさを100%とした場合、ゲル塗布7日後の潰瘍部位の大きさは、コントロール群では、2匹共に35%であったのに対して、ポリペプチドゲル(A)塗布群では1%と0.5%であった。すなわち、ポリペプチドゲル(A)塗布群では、コントロール群と比較して、創傷治癒が明らかに促進していた。
1.創傷治癒促進効果が、皮膚における本発明のポリペプチドによる細胞遊走刺激効果によるものであることの確認
(i)ポリペプチド溶液(2μg/μl PBS溶液、10μl)にSB202190(30μg/ml)を追加して、前記[実施例4](1)b)(i)と同じ確認試験を行った。
(ii)結果
SB202190(30μg/ml)の存在下では、創傷治癒促進効果が完全に阻害された(図7を参照されたい。)
Claims (7)
- アミノ酸配列:KNSFMALYLSKGR
を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学的に許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物。 - アミノ酸配列:KNSFMALYLSKGRLVFALG
を有するポリペプチドもしくはその誘導体またはその生理学的に許容される塩類を含む、細胞移動促進組成物。 - 請求項1または2記載の細胞移動促進組成物および担体を含む、損傷部位機能向上および改善用組成物。
- 含まれるポリペプチドもしくはその誘導体またはその薬理学上許容される塩類の量が、ポリペプチドに換算して1×10−9重量%以上100重量%以下である、前記請求項いずれか1項記載の組成物。
- 担体が、蔗糖、蔗糖脂肪酸エステルおよびヒアルロン酸である、請求項3または4いずれかに記載の組成物。
- 3.0以上9.0以下のpH条件下で使用可能であることをさらに特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の組成物。
- 1日当たり0.1ng/cm2以上1mg/cm2以下の投与量にて外用投与される、前記請求項いずれか1項記載の組成物。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004248634A JP2006063033A (ja) | 2004-08-27 | 2004-08-27 | 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物 |
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JP2004248634A Pending JP2006063033A (ja) | 2004-08-27 | 2004-08-27 | 細胞移動促進活性ポリペプチドを含有する組成物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9260507B2 (en) | 2009-03-13 | 2016-02-16 | Symatese | Peptide promoting cell adhesion and migration |
JP2016193857A (ja) * | 2015-03-31 | 2016-11-17 | 丸善製薬株式会社 | 皮膚化粧料および飲食品 |
-
2004
- 2004-08-27 JP JP2004248634A patent/JP2006063033A/ja active Pending
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US9260507B2 (en) | 2009-03-13 | 2016-02-16 | Symatese | Peptide promoting cell adhesion and migration |
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