JP2006055140A - マイクロキャリア - Google Patents
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Abstract
【課題】 マイクロキャリア培養に適し、細胞の高密度培養効果を発揮させることができる担体としてのマイクロキャリアの提供を課題とする。併せて、有用物質を担持して生体内に運ぶために用いる担体としてのマイクロキャリアの提供を課題とする。
【解決手段】 マイクロキャリア培養において被培養体を担持するのに用いるマイクロキャリアであって、セリシン粒子を本体として、その外表面をリン酸カルシウム系化合物によって部分的に被覆させた複合粒子からなる。
【選択図】 なし
【解決手段】 マイクロキャリア培養において被培養体を担持するのに用いるマイクロキャリアであって、セリシン粒子を本体として、その外表面をリン酸カルシウム系化合物によって部分的に被覆させた複合粒子からなる。
【選択図】 なし
Description
本発明はマイクロキャリアに関する。より詳しくは、主としてマイクロキャリア培養において被培養体を担持する担体としてのマイクロキャリアに関する。
マイクロキャリア培養は、被培養体をマイクロキャリアと呼ばれる担体の表面に付着させた状態において培養する培養方法である。
微生物や細胞の培養方法としては、浮遊培養法、単層培養法があり、近年においてマイクロキャリア培養法が発達してきた。浮遊培養法は接着非依存性細胞に対する培養法として用いることができ、大量培養が可能である。一方、血球細胞や癌細胞等のある種の細胞を除く大部分の動物細胞は、接着依存性をその性質として保有しているため、浮遊培養法によっては培養することができない。このため動物細胞の培養は前記単層培養法により行われてきた。そして単層培養法では細胞と接着する面積が少ないことから、接着面積を大きくすることができるマイクロキャリア培養が着目されるようになった。
微生物や細胞の培養方法としては、浮遊培養法、単層培養法があり、近年においてマイクロキャリア培養法が発達してきた。浮遊培養法は接着非依存性細胞に対する培養法として用いることができ、大量培養が可能である。一方、血球細胞や癌細胞等のある種の細胞を除く大部分の動物細胞は、接着依存性をその性質として保有しているため、浮遊培養法によっては培養することができない。このため動物細胞の培養は前記単層培養法により行われてきた。そして単層培養法では細胞と接着する面積が少ないことから、接着面積を大きくすることができるマイクロキャリア培養が着目されるようになった。
マイクロキャリア培養に用いられる担体であるマイクロキャリアとしては、ガラスビーズ、プラスチックビーズ、或いはこれらに陰イオン交換基を結合させたもの、基材ビーズの表面をセルロース、コラーゲン、ヒドロキシアパタイトで被覆したものが提供されている。
特開2001−128659号公報
特開2000−336174号公報
特開平7−177874号公報
ところが上記ガラスビーズは担体として重量が重い他、細胞付着性能、細胞との親和性等の点で問題があった。またプラスチックビーズも同様に細胞付着性能、細胞との親和性の点で問題があった。またナイロンビーズ等の担体基材に陰イオン交換基を結合させたものは、細胞の付着性を向上させることはできるが、付与した電荷が細胞に対して苛酷であったり或いは毒性の点等で、細胞が死滅しやすい等の問題があった。また基材ビーズにセルロースやコラーゲンを被覆したものは、特にコラーゲンにおいては培養細胞との親和性があり、その分だけ細胞の増殖を助けるメリットが期待されるが、やはりマイクロキャリア培養においては細胞付着性能に欠けることから、細胞培養効果がそれほど上がらないという問題がある。
また担体基材の表面をヒドロキシアパタイトで被覆したものは、ヒドロキシアパタイトに生体親和性、吸着性があることから、ある程度の細胞増殖効果を上げることが期待されるが、細胞を積極的に増加させる分化・増殖機能の点で不十分であり、高密度培養の利点を十分に発揮させることができないという問題があった。
また担体基材の表面をヒドロキシアパタイトで被覆したものは、ヒドロキシアパタイトに生体親和性、吸着性があることから、ある程度の細胞増殖効果を上げることが期待されるが、細胞を積極的に増加させる分化・増殖機能の点で不十分であり、高密度培養の利点を十分に発揮させることができないという問題があった。
そこで本発明は上記従来のマイクロキャリアにおける問題を解消し、マイクロキャリア培養に適し、細胞の高密度培養効果を発揮させることができる担体としてのマイクロキャリアの提供を課題とする。併せて、有用物質を担持して生体内に運ぶために用いる担体としてのマイクロキャリアの提供を課題とする。
上記課題を達成するため本発明のマイクロキャリアは、マイクロキャリア培養において被培養体を担持するのに用いるマイクロキャリアであって、セリシン粒子を本体として、その外表面をリン酸カルシウム系化合物によって部分的に被覆させた複合粒子からなることを第1の特徴としている。
ここでセリシン粒子とは、構成成分としてセリシンを主たる構成成分とする意味で、セリシン100%粒子の他、他の成分を従たる構成成分として含むことを妨げるものではない。
またリン酸カルシウム系化合物とは、典型的にはヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)(Ca10(PO4)6(OH)2)である。その他、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)を含むものとする。
部分的とは、広い意味では0%と100%を除く割合を含む概念である。好ましくは該表面の10%以上がヒドロキシアパタイトで占められているのがよい。一方、90%を超えるような占有率では、セリシン粒子そのものが持つ生体親和性や細胞増殖機能の利点を生かせない。
ここでセリシン粒子とは、構成成分としてセリシンを主たる構成成分とする意味で、セリシン100%粒子の他、他の成分を従たる構成成分として含むことを妨げるものではない。
またリン酸カルシウム系化合物とは、典型的にはヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)(Ca10(PO4)6(OH)2)である。その他、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)を含むものとする。
部分的とは、広い意味では0%と100%を除く割合を含む概念である。好ましくは該表面の10%以上がヒドロキシアパタイトで占められているのがよい。一方、90%を超えるような占有率では、セリシン粒子そのものが持つ生体親和性や細胞増殖機能の利点を生かせない。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1の特徴に加えて、複合粒子はセリシン粒子の外表面にリン酸カルシウム系化合物を部分的に析出させた複合粒子であることを第2の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1又は第2の特徴に加えて、複合粒子はセリシン粒子の外表面にリン酸カルシウム系化合物を分散させた複合粒子であることを第3の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、セリシン粒子が多孔質であることを第4の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1〜第4の何れかの特徴に加えて、セリシン粒子が、代わりにガラス、プラスチック、その他の有機、無機材料の基材からなる基材ビーズの表面をセリシン層で被覆したセリシン被覆ビーズであることを第5の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1〜第5の何れかの特徴に加えて、マイクロキャリアが、マイクロキャリア培養に用いるものではなく、代わりに有用物質を担持して生体内に運ぶのに用いるマイクロキャリアであることを第6の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1又は第2の特徴に加えて、複合粒子はセリシン粒子の外表面にリン酸カルシウム系化合物を分散させた複合粒子であることを第3の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、セリシン粒子が多孔質であることを第4の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1〜第4の何れかの特徴に加えて、セリシン粒子が、代わりにガラス、プラスチック、その他の有機、無機材料の基材からなる基材ビーズの表面をセリシン層で被覆したセリシン被覆ビーズであることを第5の特徴としている。
また本発明のマイクロキャリアは、上記第1〜第5の何れかの特徴に加えて、マイクロキャリアが、マイクロキャリア培養に用いるものではなく、代わりに有用物質を担持して生体内に運ぶのに用いるマイクロキャリアであることを第6の特徴としている。
請求項1に記載のマイクロキャリアにおいては、セリシン粒子を本体として、その外表面をリン酸カルシウム系化合物によって部分的に被覆した複合粒子からなるので、セリシンの持つ有効な性質とリン酸カルシウム系化合物の持つ有効な性質の両方を生かすことができる。即ち、複合粒子の本体であるセリシンは、蛋白質として被培養体である接着依存性細胞等に対して親和性がよく、また細胞付着性も備え、加えて細胞の分化・増殖機能を持っている。このため被培養体である接着依存性細胞等は担体である複合粒子に親和性よく付着しながら活発に増殖することができる。しかも複合粒子の外表面を部分的に被覆したリン酸カルシウム系化合物は生体親和性を有すると共に吸着性を有することから、被培養体に対する生体親和性を何ら損なうことなく、その吸着性により被培養体を一層良好に付着させることができる。従って被培養体は、培地内で撹拌されながら浮遊する本発明のマイクロキャリア担体の表面において、良好な付着環境を与えられて途中で剥離脱落したりすることなく増殖し、また良好な親和性環境をもって途中で死滅したりすることなく増殖し、また良好な細胞の増殖環境を与えられて活発に増殖することができる。
よって請求項1のマイクロキャリアによれば、接着依存性細胞等の被培養体の高密度培養を効率よく行うことができる。また長期培養、継代培養が可能となる。
よって請求項1のマイクロキャリアによれば、接着依存性細胞等の被培養体の高密度培養を効率よく行うことができる。また長期培養、継代培養が可能となる。
また請求項2に記載のマイクロキャリアによれば、上記請求項1に記載の構成による効果に加えて、複合粒子はセリシン粒子外表面にリン酸カルシウム系化合物を部分的に析出させた複合粒子としているので、析出させることでリン酸カルシウム系化合物とセリシンとの良好な結合性を確保することができ、セリシン粒子からリン酸カルシウム系化合物が容易に剥がれ落ちたりすることがない。加えて、析出させることで微細な結晶による良好な吸着性が期待できる。
また請求項3に記載のマイクロキャリアによれば、上記請求項1又は2に記載の構成による効果に加えて、複合粒子はセリシン粒子の外表面にリン酸カルシウム系化合物を分散させた複合粒子であるので、前記リン酸カルシウム系化合物が外表面に分散して存在することにより、被培養体を、粒子の外表面に偏りなく均一的に且つ空所なく全面に確実に付着させて、効率のよい高密度培養を行うことができる。
また請求項4に記載のマイクロキャリアによれば、上記請求項1〜3の何れかに記載の構成による効果に加えて、セリシン粒子が多孔質であるので、被培養体をセリシン粒子の多孔質の孔内でも培養することができ、より高密度の培養が可能であると共に、被培養体の剥離や脱落がよりし難い状態での培養が可能となる。
また請求項5に記載のマイクロキャリアによれば、セリシン粒子が、代わりにセリシン被覆ビーズであるので、該セリシン被覆ビーズによって被培養体に対する付着性能、生体親和性、細胞分化・増殖機能をセリシン粒子の場合と同様に発揮することができる。そして基材を種々の材料から培養条件に応じて適当なものを選ぶことで、球形等の粒子形状の調整、比重調整、粒径調整、硬度(弾力性)調整等の調整を容易に行うことができ、被培養体の培養条件に適した複合粒子を提供できる。
また請求項6に記載のマイクロキャリアによれば、複合粒子を構成するセリシン、リン酸カルシウム系化合物が共に生体親和性に優れ、またリン酸カルシウム系化合物が吸着性に優れ、更にセリシンには生体吸収性があることから、有用物質を複合粒子に担持させて生体内に運ぶマイクロキャリアとしての良好な効果を奏することができる。
本発明の第1の実施形態のマイクロキャリアとして、セリシン粒子の該表面にヒドロキシアパタイトを分散して析出させた複合粒子を説明する。
セリシンは蚕の繭に含まれ、生糸を構成する蛋白質である。絹糸の生産工程においては、セリシンを含んだ廃液として排出される。
セリシンは蚕の繭に含まれ、生糸を構成する蛋白質である。絹糸の生産工程においては、セリシンを含んだ廃液として排出される。
[セリシンの製造]
セリシンは、前記セリシンを含んだ廃液から不純物を除去したセリシン水溶液を用い、或いは生糸に高温水を作用させてセリシンを純度よく抽出した水溶液を用いて、この水溶液から凍結乾燥法、凍結解凍法、噴霧乾燥法、その他の方法により水分を除去することで、粉末状のセリシンを得ることができる。
得られたセリシン粉末は、篩い等による粒子径の均一化工程を経て、粒径を揃え、そのままマイクロキャリアの複合粒子を構成する本体として用いることも可能である。しかし複合粒子の本体としてのセリシン粒子は、その形状として、球形度合いが高いものが好ましいことから、球状化度合いの高いセリシン粒子を更に作製するのが好ましい
セリシンは、前記セリシンを含んだ廃液から不純物を除去したセリシン水溶液を用い、或いは生糸に高温水を作用させてセリシンを純度よく抽出した水溶液を用いて、この水溶液から凍結乾燥法、凍結解凍法、噴霧乾燥法、その他の方法により水分を除去することで、粉末状のセリシンを得ることができる。
得られたセリシン粉末は、篩い等による粒子径の均一化工程を経て、粒径を揃え、そのままマイクロキャリアの複合粒子を構成する本体として用いることも可能である。しかし複合粒子の本体としてのセリシン粒子は、その形状として、球形度合いが高いものが好ましいことから、球状化度合いの高いセリシン粒子を更に作製するのが好ましい
[セリシン粒子の球形化と分子量調整]
セリシン粒子の球状化は、前記セリシン粉末を一旦、溶媒に溶解、分散させて行う。溶媒としては塩酸、酢酸等の無機酸、クロロ酢酸等の有機酸、混合有機酸等を用いることができるが、一般的にタンパク質を溶解する既存の溶媒を用いることができる。この溶解の際に溶媒の濃度や温度、反応時間等の溶解条件を変えることで、セリシンの分子量を調整することができる。分子量の調整は、得られるセリシン粒子の硬度、弾力性と関係するので、分子量を30万〜数万、更には数千、数百まで調整することで、被培養体の種類やその培養条件に最適の粒子の強度や弾力性を付与することが可能である。
セリシン粒子の球状化は、前記セリシン粉末を一旦、溶媒に溶解、分散させて行う。溶媒としては塩酸、酢酸等の無機酸、クロロ酢酸等の有機酸、混合有機酸等を用いることができるが、一般的にタンパク質を溶解する既存の溶媒を用いることができる。この溶解の際に溶媒の濃度や温度、反応時間等の溶解条件を変えることで、セリシンの分子量を調整することができる。分子量の調整は、得られるセリシン粒子の硬度、弾力性と関係するので、分子量を30万〜数万、更には数千、数百まで調整することで、被培養体の種類やその培養条件に最適の粒子の強度や弾力性を付与することが可能である。
前記セリシンが溶解、分散された溶液からの球状セリシン粒子の生成は、溶液を大気中に或いは減圧下において噴霧して溶媒を揮発させ、また溶液を細孔ノズルから凝固浴中に滴下することで行うことができる。噴霧する場合は揮発性溶媒が好ましい。また前記凝固浴はメタノール、エタノール等のセリシンの凝固を促進する液で構成することができる。
得られるセリシン粒子の径は、噴霧条件、細孔ノズルからの滴下条件により調整することができる。マイクロキャリア培養には、被培養体の種類、その他の培養条件に応じて、通常は数十〜数百μmの粒径のものが使用されるが、数mm〜数μmの粒径のものを用いることも可能である。
前記噴霧等の手段により得られたセリシン粒子は、多孔質となりやすい。
セリシンの球状化粒子の製造は、一般的にはタンパク質の球状化粒子の製造方法を利用することが可能である。
なお前記凍結乾燥や噴霧による造粒においては、表面が多孔質の粒子となる場合が多いが、マイクロキャリアの本体を構成するセリシン粒子が多孔質であると、それに付着する被培養体の付着面積をその分だけ増加させることができる。
得られるセリシン粒子の径は、噴霧条件、細孔ノズルからの滴下条件により調整することができる。マイクロキャリア培養には、被培養体の種類、その他の培養条件に応じて、通常は数十〜数百μmの粒径のものが使用されるが、数mm〜数μmの粒径のものを用いることも可能である。
前記噴霧等の手段により得られたセリシン粒子は、多孔質となりやすい。
セリシンの球状化粒子の製造は、一般的にはタンパク質の球状化粒子の製造方法を利用することが可能である。
なお前記凍結乾燥や噴霧による造粒においては、表面が多孔質の粒子となる場合が多いが、マイクロキャリアの本体を構成するセリシン粒子が多孔質であると、それに付着する被培養体の付着面積をその分だけ増加させることができる。
[セリシン粒子の外表面へのヒドロキシアパタイトの析出]
セリシン粒子の外表面へのヒドロキシアパタイトの析出による複合粒子の製造は、セリシン粒子をカルシウムイオンとリン酸水素イオンを含む水溶液、例えば擬似体液や1.5倍擬似体液内に浮遊状態に保持することで行う。セリシンはそのタンパク質の構造上、カルシウム、リン酸を吸着しやすく、吸着したカルシウムイオン、リン酸水素イオンからヒドロキシアパタイトの核の発生と成長がなされることにより、セリシン粒子の外表面にヒドロキシアパタイトが析出する。勿論、セリシンに対して予め化学的修飾を施す等、ヒドロキシアパタイトの析出を促す化学的処理を予め施すこともできる。が、これらの予備処理はセリシンの生体親和性を損なわない程度に行う必要がある。
ヒドロキシアパタイトの析出の程度は、前記水溶液中のカルシウムイオンとリン酸水素イオン濃度の調整、温度調整、時間調整等の浸漬条件を調整することで、セリシン粒子外表面に対する被覆程度を、0に近いパーセントから100パーセントまで調整することができる。しかしながら本発明では、100パーセント被覆は行わない。100パーセントの被覆となる場合は、セリシンが表面に露出しないことになり、セリシンの利点が利用できなくなるからである。
セリシン粒子外表面に占めるヒドロキシアパタイトの析出の程度は、少なくとも10%を以上が好ましく、また90%以下が好ましい。その間の比率は、被培養体の種類やその他の条件に応じて、被培養体の培養が最適に行われる範囲を実験等により予め得ておくことになる。
セリシン粒子へのヒドロキシアパタイトの析出は、実際にはセリシン粒子の外表面に多数のヒドロキシアパタイトが分散した状態で行われる。そしてヒドロキシアパタイトの析出が成長することで、分散数が減少すると共に、1つの析出領域の面積が広くなっていく。
セリシン粒子の外表面へのヒドロキシアパタイトの析出による複合粒子の製造は、セリシン粒子をカルシウムイオンとリン酸水素イオンを含む水溶液、例えば擬似体液や1.5倍擬似体液内に浮遊状態に保持することで行う。セリシンはそのタンパク質の構造上、カルシウム、リン酸を吸着しやすく、吸着したカルシウムイオン、リン酸水素イオンからヒドロキシアパタイトの核の発生と成長がなされることにより、セリシン粒子の外表面にヒドロキシアパタイトが析出する。勿論、セリシンに対して予め化学的修飾を施す等、ヒドロキシアパタイトの析出を促す化学的処理を予め施すこともできる。が、これらの予備処理はセリシンの生体親和性を損なわない程度に行う必要がある。
ヒドロキシアパタイトの析出の程度は、前記水溶液中のカルシウムイオンとリン酸水素イオン濃度の調整、温度調整、時間調整等の浸漬条件を調整することで、セリシン粒子外表面に対する被覆程度を、0に近いパーセントから100パーセントまで調整することができる。しかしながら本発明では、100パーセント被覆は行わない。100パーセントの被覆となる場合は、セリシンが表面に露出しないことになり、セリシンの利点が利用できなくなるからである。
セリシン粒子外表面に占めるヒドロキシアパタイトの析出の程度は、少なくとも10%を以上が好ましく、また90%以下が好ましい。その間の比率は、被培養体の種類やその他の条件に応じて、被培養体の培養が最適に行われる範囲を実験等により予め得ておくことになる。
セリシン粒子へのヒドロキシアパタイトの析出は、実際にはセリシン粒子の外表面に多数のヒドロキシアパタイトが分散した状態で行われる。そしてヒドロキシアパタイトの析出が成長することで、分散数が減少すると共に、1つの析出領域の面積が広くなっていく。
本発明の第2の実施形態のマイクロキャリアは、基材の表面をセリシン層で被覆したセリシン被覆ビーズを本体として、これにヒドロキシアパタイトを分散して析出させた複合粒子である。
前記基材としては、ガラス、プラスチック、その他、無機高分子等の無機材料、有機高分子等の有機材料を用いることが可能である。これらの基材の条件としては、培養温度において溶解しないこと、複合粒子全体としての比重がマイクロキャリア培養に適した値、例えば1.03〜1.05程度或いはそれに近い比重に調整するのが容易であること、相互に衝突しても壊れない強度と弾力性があること、球形にしやすいこと等である。
例えば基材としてポリスチレン等の疎水性のプラスチックを用い、これを揮発性の有機溶媒に溶かすと共に界面活性剤を加えることで、プラスチック基材が球状のコロイドとなって分散された溶液を得ることができる。この溶液を大気中に或いは減圧雰囲気中に噴霧することで、又は前記溶液を水等の凝固浴に微細ノズルから滴下することで、微細な球形の基材ビーズを得ることができる。
他の基材においても、一般的方法として、先ず基材を溶媒に溶かし、界面活性剤等を加えてコロイド分散状態にし、このコロイド溶液から噴霧等により素早く溶媒を揮発させることで、基材ビーズの製造ができる。
前記基材としては、ガラス、プラスチック、その他、無機高分子等の無機材料、有機高分子等の有機材料を用いることが可能である。これらの基材の条件としては、培養温度において溶解しないこと、複合粒子全体としての比重がマイクロキャリア培養に適した値、例えば1.03〜1.05程度或いはそれに近い比重に調整するのが容易であること、相互に衝突しても壊れない強度と弾力性があること、球形にしやすいこと等である。
例えば基材としてポリスチレン等の疎水性のプラスチックを用い、これを揮発性の有機溶媒に溶かすと共に界面活性剤を加えることで、プラスチック基材が球状のコロイドとなって分散された溶液を得ることができる。この溶液を大気中に或いは減圧雰囲気中に噴霧することで、又は前記溶液を水等の凝固浴に微細ノズルから滴下することで、微細な球形の基材ビーズを得ることができる。
他の基材においても、一般的方法として、先ず基材を溶媒に溶かし、界面活性剤等を加えてコロイド分散状態にし、このコロイド溶液から噴霧等により素早く溶媒を揮発させることで、基材ビーズの製造ができる。
次に基材ビーズの外表面に対するセリシン層による被覆は、予め用意されたガラスビーズ、プラスチックビーズ、その他の無機材料ビーズ、有機材料ビーズを用いて、この基材ビーズ上へセリシンを析出により行うことができる。セリシンを溶解したセリシン溶液中に基材ビーズを入れ、撹拌等により基材ビーズを溶液内に浮遊状態に保持し、この状態でセリシン溶液の溶解条件を変えることで、セリシンを基材ビーズの外表面全面に析出させ、これによってセリシン被覆ビーズを得る。この場合において、析出セリシンと基材ビーズとの結合性を上げるために、基材ビーズの外表面に適当な表面粗さを付与するような物理的処理やその他の化学的処理を施してもよい。セリシンによる基材ビーズ外表面への析出は、全面がセリシンで被覆されるように、セリシンによる外層を形成するようにする。
次にセリシン被覆ビーズの外表面に対するヒドロキシアパタイトによる部分被覆は、セリシン被覆ビーズをカルシウムイオンとリン酸水素イオンを含む水溶液、例えば擬似体液や1.5倍擬似体液内に浮遊状態に保持することで行う。これについては上記段落0022で既に述べた通りである。
以上のようにして得られたヒドロキシアパタイト部分被覆のセリシン粒子を担体とし、或いはヒドロキシアパタイト部分被覆のセリシン被覆ビーズを担体として、マイクロキャリア培養が行われる。培養は培養槽に液状の培地(培養液)を入れ、これに前記担体粒子を懸濁させた状態で、接着依存性細胞等の被培養体を播種して行う。
上記第1、第2の実施形態におけるマイクロキャリア粒子(セリシン粒子、セリシン被覆粒子)の大きさは、数十〜数百μmとすることができるが、粒径については培養条件により種々変更されるもので、前記範囲に限定されない。またマイクロキャリア粒子の外表面に析出するヒドロキシアパタイトの結晶粒径は更に小さく、ナノ単位に達するものもあることから、良好な吸着性を期待できる。
また上記の実施形態では、セリシン外表面にヒドロキシアパタイトを析出させたが、溶液中のカルシウムイオン濃度とリン酸イオン濃度、溶液のpHを調整することで、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物を析出させるようにしてもよい。
また上記の実施形態では、セリシンの外表面にリン酸カルシウム系化合物を析出させることで、セリシンの外表面を部分的に被覆したが、析出による被覆には限定されない。要するに、吸着性のあるリン酸カルシウム系化合物によってセリシンの外表面が部分的に被覆された状態にあればよく、被覆手段は析出以外の手段であってもよい。
また上記の実施形態では、セリシン外表面にヒドロキシアパタイトを析出させたが、溶液中のカルシウムイオン濃度とリン酸イオン濃度、溶液のpHを調整することで、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物を析出させるようにしてもよい。
また上記の実施形態では、セリシンの外表面にリン酸カルシウム系化合物を析出させることで、セリシンの外表面を部分的に被覆したが、析出による被覆には限定されない。要するに、吸着性のあるリン酸カルシウム系化合物によってセリシンの外表面が部分的に被覆された状態にあればよく、被覆手段は析出以外の手段であってもよい。
以上の実施形態では、マイクロキャリア培養に用いる担体としてのマイクロキャリアについて述べたが、セリシンの有する生体親和性とヒドロキシアパタイトを代表とするリン酸カルシウム系化合物が有する吸着性と生体親和性を利用して、表面に有用物質を吸着担持した状態で、生体内に有用物質を運ぶマイクロキャリアとしても利用することが可能である。またセリシン粒子或いはセリシン層を多孔質とすることで、有用物質を徐放することができるマイクロキャリアとして用いることが可能である。
Claims (6)
- マイクロキャリア培養において被培養体を担持するのに用いるマイクロキャリアであって、セリシン粒子を本体として、その外表面をリン酸カルシウム系化合物によって部分的に被覆した複合粒子からなることを特徴とするマイクロキャリア。
- 請求項1において、複合粒子はセリシン粒子の外表面にリン酸カルシウム系化合物を部分的に析出させた複合粒子であることを特徴とするマイクロキャリア。
- 請求項1又は2において、複合粒子はセリシン粒子の外表面にリン酸カルシウム系化合物を分散させた複合粒子であることを特徴とするマイクロキャリア。
- 請求項1〜3の何れかおいて、セリシン粒子が多孔質であることを特徴とするマイクロキャリア。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、セリシン粒子が、代わりにガラス、プラスチック、その他の有機、無機材料の基材からなる基材ビーズの表面をセリシン層で被覆したセリシン被覆ビーズであることを特徴とするマイクロキャリア。
- 請求項1〜5の何れかおいて、マイクロキャリアが、マイクロキャリア培養に用いるものではなく、代わりに有用物質を担持して生体内に運ぶのに用いるマイクロキャリアであることを特徴とするマイクロキャリア。
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JP2010524494A (ja) * | 2007-04-27 | 2010-07-22 | ヒュンジン ヤン | 比重の増加した細胞培養用支持体及びその製造方法 |
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2004
- 2004-08-24 JP JP2004243188A patent/JP2006055140A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010524494A (ja) * | 2007-04-27 | 2010-07-22 | ヒュンジン ヤン | 比重の増加した細胞培養用支持体及びその製造方法 |
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