JP2006052771A - 車両用油圧制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温始動後の走り出し直後の変速制御における変速ショックを緩和させる。
【解決手段】セレクトレバーをPレンジ或いはNレンジにセットした状態において、作動油温が低温の場合、それを係合させても出力に影響しない摩擦係合要素(△印で示す)の油圧ピストン26に対し、変速機用オイルポンプ8から吐出された比較的高温の作動油を供給し、油圧ピストン26の周辺を作動油温にて暖機する。油圧ピストン26の周辺を暖機することで、作動油の粘度が高くならず走り出し直後の変速制御における変速ショックを緩和することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、出力に影響しない摩擦係合要素に対応する作動手段に対して作動油を供給することで、当該作動手段の周辺を昇温させ、自動変速機等の暖機促進を図る車両用油圧制御装置に関する。
自動車等の車両に搭載されている自動変速機は、変速機用オイルポンプから吐出された作動油圧を調圧してライン圧を生成し、このライン圧によって各変速用摩擦係合要素(変速クラッチ及びブレーキ等)を選択的に作動させて所定の変速段(ギヤ位置)を得るようにしている。
作動油の温度(以下「作動油温」と称する)が低い状態、すなわち、暖機完了前の状態では、作動油の粘度が高く、スムーズに変速を行うことが困難となり、変速ショックが発生し易い。暖機完了前の変速制御において、変速ショックを緩和しようとした場合、緩やかに変速させる必要があるが、例えば加速運転等のようにアクセルペダルを踏み込んで、ダウンシフトさせようとした場合、ダウンシフト完了までの時間が必要以上に長くなり、変速のもたつきが生じ、運転者に違和感を与えてしまう問題がある。
又、4輪駆動車には、前後輪への駆動力配分をトランスファークラッチに供給する作動油圧で制御しているものがある。この場合も、作動油温が低いと充分な駆動力配分能力を発揮させることができず、例えば冷態始動後、ハンドルを大きく転舵させて駐車場から走り出そうとする場合において、タイトコーナブレーキング現象が発生し易くなり、運転性能が低下する不都合が生じる。
そのため、自動変速機の暖機促進を図り、早期に暖機を完了させる技術が種々提案されている。その1つに、自動変速機の暖機運転中はロックアップを禁止し、自動変速機の回転上昇により作動油温の昇温を促進させるものがある。しかし、ロックアップ可能な運転領域であっても暖機完了までは、ロックアップが禁止されるため、自動変速機の伝達効率が低下し、燃費が悪化する問題があるばかりでなく、停車中は暖機促進を図ることができない不都合がある。
一方、例えば特許文献1(特開平11−351362号公報)には、自動変速機の作動油圧を調圧してライン圧を生成するライン圧ソレノイドとして過励磁ソレノイドを採用し、作動油温が低いときは、ライン圧ソレノイドに対する過励磁制御を禁止し、通常制御を行うことで、ソレノイドを電気的に発熱させ、その発熱を利用して暖機促進を図る技術が開示されている。
又、特許文献2(特開2002−323124号公報)には、作動油温が低い場合、コースティング走行時におけるダウンシフトタイミングを通常のタイミングよりも早く設定する等して、トルクコンバータのポンプインペラとタービンランナの差回転を大きくし、作動油とタービンランナとの間の剪断抵抗増大により発生する摩擦熱で暖機促進を図る技術が開示されている。更に、同公報には、作動油温が低い場合、コースティング走行時における目標ライン圧を高めに設定し、油路を流れる作動油量を増加させることで、管路内の流路抵抗を増加させ、そのときの摩擦熱により暖機促進を図る技術が開示されている。
特開平11−351362号公報 特開2002−323124号公報
しかし、特許文献1に開示されている技術では、ライン圧ソレノイドとして必ず過励磁ソレノイドを用いる必要があるため、既存の自動変速機に適用することができず、汎用性に欠ける不都合がある。又、オイルパン内に配設されている複数のソレノイドに通電したとしても、オイルパンには多量の作動油が貯留されているので、熱容量が大きく、これらの作動油を短時間で昇温させることは困難である。
一方、特許文献2に開示されている技術では、コースティング走行が前提となっているため、冷態始動及び始動後の発進時においては暖機促進を図れず、発進直後の変速制御において変速ショックを緩和することが困難で、運転者に違和感を与えてしまう不都合がある。又、この場合も自動変速機の作動油全体を昇温させようとしているため、作動油、及び変速用摩擦係合要素を動作させる油圧ピストン等の油圧駆動手段を短時間で昇温させることは困難である。
本発明は、上記事情に鑑み、停車中、走行中の何れにおいても摩擦係合要素を動作させる駆動手段の周辺を直ちに昇温させて、変速制御時の変速ショック、及び4輪駆動車ではタイトコーナブレーキング現象の発生等を緩和させることができ、走行性能の安定化を早期に実現させることのできる車両用油圧制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明による車両用油圧制御装置は、複数の摩擦係合要素に対応して配設され、該各摩擦係合要素を個別に動作させる複数の動作手段と、油圧発生源から吐出された作動油圧を複数の上記動作手段に対して選択的に供給すると共に該動作手段に供給した該作動油を排出させる作動油給排手段とを備え、セレクトレバーがPレンジ、Nレンジ或いは走行レンジにセットされている状態で、それを係合させても出力に影響しない摩擦係合要素に対応する動作手段に対して上記作動油を供給することを特徴とする。
本発明によれば、停車中、走行中の何れにおいても摩擦係合要素を動作させる駆動手段の周辺を直ちに昇温させて、変速制御時の変速ショック、及び4輪駆動車ではタイトコーナブレーキング現象の発生等を緩和させることができ、走行性能の安定化を早期に実現させることができる。
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1〜図7に本発明の第1形態を示す。図1に車両用油圧制御装置の概略構成図を示す。
同図の符号1はエンジンで、このエンジン1の出力側に、トルクコンバータ2、自動変速機(A/T)3が連設され、この自動変速機3の出力側に、自動変速機3からの駆動力をフロントドライブ軸24とリヤドライブ軸21とに配分するトランスファークラッチ20(図2参照)等を内装するエクステンション部3aが連設されている。尚、トルクコンバータ2からエクステンション部3aまでを動力伝達部と総称する。
図2に示すように、エンジン1の出力軸1aが、ロックアップクラッチ2aを備えるトルクコンバータ2を介して自動変速機3の入力軸3cに連結されている。自動変速機3はトルクコンバータ2を経てエンジン1の駆動力が入力され、内装する変速機構7で選択された変速段(ギヤ位置)に応じたギヤ比で、この駆動力を変速機出力軸7a側へ伝達する。
又、トルクコンバータ2には、油圧発生源としての変速機用オイルポンプ8が内装されている。この変速機用オイルポンプ8はトルクコンバータ2のインぺラ軸に連結されて、エンジン出力軸1aと一体に回転される。
図2に示すように、変速機構7は、入力軸3cの軸上に配設されたフロントプラネタリギヤユニット11とリヤプラネタリギヤユニット12とを備えている。各プラネタリギヤユニット11(12)は、プラネタリキャリヤ11a(12a)と、リングギヤ11b(12b)と、サンギヤ11c(12c)と、プラネタリギヤ11d(12d)とを有して構成され、リヤプラネタリギヤユニット12のプラネタリキャリヤ12aは、フロントプラネタリギヤユニット11のリングギヤ11bに連結されているとともに、変速機出力軸7aに連結されている。
又、変速機構7は、変速用摩擦係合要素としての、ハイクラッチ13と、リバースクラッチ14と、2−4ブレーキ15と、ロークラッチ16と、ローアンドリバース(L−R)ブレーキ17とを有し、更に、ワンウェイクラッチ18を有する。
ハイクラッチ13は、入力軸3cとプラネタリキャリヤ11aとの間の動力伝達を係脱する。又、リバースクラッチ14は、入力軸3cとサンギヤ11cとの間の動力伝達を係脱する。又、2−4ブレーキ15は、サンギヤ11cと自動変速機ケース19との間を係脱する。又、ロークラッチ16は、プラネタリキャリヤ11aとリングギヤ12bとの間を係脱する。更に、ワンウェイクラッチ18は、プラネタリキャリヤ11aと一体回転するロークラッチドラム16aと、自動変速機ケース19との間を一方向に係脱し、L−Rブレーキ17はロークラッチドラム16aと自動変速機ケース19との間を係脱する。
図3に示すように、このような構成による変速機構7は、各変速用摩擦係合要素(ハイクラッチ13、リバースクラッチ14、2−4ブレーキ15、ロークラッチ16、及び、L−Rブレーキ17)が選択的に係脱されることにより、前進4段、後進1段の変速段を実現する。
更に、本形態による動力伝達部は、4輪駆トランスファーシステムを採用しており、変速機出力軸7aに、駆動力配分用摩擦係合要素としてのトランスファークラッチ20を介してリヤドライブ軸21が連設されていると共に、リダクションドライブギヤ22、リダクションドリブンギヤ23を介してフロントドライブ軸24が連設されている。
変速機構7の各変速用摩擦係合要素13〜17には、図4に概略的に示す動作手段の一例である油圧ピストン26が連設されている。尚、図4においては、1つの油圧ピストン26のみが代表として記載されているが、この油圧ピストン26は、各変速用摩擦係合要素13〜17に対応して配設されている。そして、各変速用摩擦係合要素13〜17に連設する油圧ピストン26に対して油圧を選択的に供給或いは排出させることで、各変速用摩擦係合要素13〜17が選択的に係脱される。この各油圧ピストン26に対する油圧の供給及び排出は、作動油給排手段としてのトランスミッションコントロールバルブ25によって行われる。尚、符号3bはオイルパンである。
トランスミッションコントロールバルブ25の入力側に変速機用オイルポンプ8が連通されている。トランスミッションコントロールバルブ25は、変速機用オイルポンプ8から供給される油圧を、ソレノイド式調圧弁(以下、「ライン圧用調圧弁」と称する)31にて調圧して、所定のライン圧を生成する。
各変速用摩擦係合要素13〜17、及びトランスファークラッチ20の各油圧ピストン26に供給する作動油圧は、トランスミッションコントロールバルブ25に併設する5個のソレノイド式切換弁(ハイクラッチ用切換弁32、2−4ブレーキ用切換弁33、ロークラッチ用切換弁34、L−Rブレーキ用切換弁35、トランスファークラッチ用切換弁36)が各々配設されている。尚、リバースクラッチ14はL−Rブレーキ17に同期して動作するため、L−Rブレーキ用切換弁35から作動油(ATF)が供給される。
トランスミッションコントロールバルブ25は、各切換弁32〜35の動作に応じて対応する変速用摩擦係合要素13〜17の各油圧ピストン26に対して作動油を供給すると共に、トランスファークラッチ用切換弁36によって調圧された作動油をトランスファークラッチ20の油圧ピストンに供給し、締結力を可変して前後輪への駆動力配分を調整する。
図3に各変速用摩擦係合要素13〜17の組み合わせと変速段との関係を示す。同図に示す○印は、それに対応する変速用摩擦係合要素13〜17を係合させることで得られる変速段を示す。尚、ワンウェイクラッチ18は油圧制御されるものではないが、◎印で示すように、1速において駆動時のみトルク伝達に関与し、それ以外の状態では空転する。
又、△印は、セレクトレバーをP(パーキング)レンジ、N(ニュートラル)レンジにセットし、或いは変速段が1速或いは3速にセットされている状態であっても、出力に影響することのない摩擦係合要素を示している。
ライン圧用調圧弁31は、例えばデューティ制御により変速機用オイルポンプ8から供給される油圧を調圧してライン圧を生成する。一方、他の切換弁32〜36は、このライン圧を、例えばデューティ制御により調圧して作動油圧を生成し、この作動油圧を対応する変速用摩擦係合要素13〜17、及びトランスファークラッチ20の油圧ピストン26に供給する。更に、各切換弁32〜36は油路を切換えて、各油圧ピストン26に供給した作動油をオイルパン3b側へ排出させる機能も備えられている。
ライン圧用調圧弁31、及び各切換弁32〜36は、トランスミッションコントロールユニット(TCU)41からの制御信号によって動作される。TCU41は、車両の運転状態に応じて、図3に○印で示す通常の変速制御、及びトランスファークラッチ20による駆動力配分制御を実行すると共に、始動後における変速機暖機制御を行う。尚、変速制御、及び駆動力配分制御については、既に知られている技術であるため、以下においては変速機暖機制御に係わる構成、及び作用について説明する。
TCU41は、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを主体に構成されており、入出力インターフェースの入力側に、変速機暖機制御を行うためのパラメータを検出するセンサ類として、車輪の単位時間当たりの回転数から車輪速を検出する車輪速センサ42、セレクトレバーがセットされているレンジを検出するレンジ検出手段としてのインヒビタスイッチ43、アクセルペダルの踏込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ45、オイルパン3bに貯留されている作動油の油温を検出する油温センサ44等が接続されている。
又、入出力インターフェースの出力側に、ライン圧用調圧弁31、及び各切換弁32〜36が接続されており、このライン圧調圧弁31、及び各切換弁32〜36に、デューティ信号等の駆動信号を出力して作動油圧を調圧する。
ところで、図5は低温始動後のアイドリング状態における作動油の温度上昇を、変速機用オイルポンプ8の吐出口、特定の摩擦係合要素を動作させる油圧ピストン26内、オイルパン3b内で調べたものである。同図に太線で示すように、変速機用オイルポンプ8の吐出口を流れる作動油の温度上昇が最も速いことが解る。尚、オイルパン3bに貯留されている作動油は、その油量が多く、熱容量が大きいため緩やかな温度上昇となる。一方、摩擦係合要素を動作させる油圧ピストンに供給される作動油は、摩擦係合要素の係合により周囲に熱が奪われるため、係合、解放が行われる都度、作動油温が大きく変動する。
本形態による変速機暖機制御は、セレクトレバーがセットされているレンジ、及び走行時の変速段に応じ、図3に△印で示す、係合しても出力に影響しない変速用摩擦係合要素13〜15,17の油圧ピストン26に、変速機用オイルポンプ8から吐出された作動油を供給することで、当該油圧ピストン26の周辺の温度を高くし暖機促進を図るものである。
TCU41で実行される変速機暖機制御は、具体的には、図6に示す変速機暖機制御ルーチン従って処理される。
このルーチンは、イグニッションスイッチをONした後、設定周期毎に実行され、先ず、ステップS1で、暖機条件を判定する。暖機条件は、以下の(1)と(2)、或いは(1)と(3)が満足されたとき成立と判定する。
(1)油温センサ44で検出した作動油温が低温判定値以下である。
(2)インヒビタスイッチ43で検出したセレクトレバーのセットされているレンジが、Nレンジ、或いはPレンジである。或いはセレクトレバーが前進走行レンジ(D(ドライブ)レンジ)にセットされていて非変速状態にある。
(3)車輪速センサ42で検出した車輪速から車両が停車中あると判定している。
そして、(1)と(2)或いは(1)と(3)の条件が満足されて、暖機条件成立と判定したときは、ステップS2へ進む。又、暖機条件不成立と判定したときは、ルーチンを抜ける。尚、前進走行レンジとしては、Dレンジ以外に、1〜3速の各レンジがあるが、1〜3速の各レンジについての変速機暖機制御は、シフトレバーがDレンジにセットされている場合に選択される変速段と殆ど同一であるため、説明を省略する。
ステップS2へ進むと、暖機対象となる摩擦係合要素を選択する。暖機対象となる摩擦係合要素は、セレクトレバーがPレンジ或いはNレンジにセットされている場合と、Dレンジにセットされている場合とで相違している。
図3に△印で示すように、セレクトレバーがPレンジ或いはNレンジにセットされている場合、暖機対象となる摩擦係合要素は、2−4ブレーキ15、ハイクラッチ13、L−Rブレーキ17である。又、セレクトレバーがPレンジ或いはNレンジにセットされている状態は、停車中(但し、Nレンジの場合は停車直前の状態も含まれる)と考えられるため、トランスファークラッチ20も対象となる。
又、セレクトレバーがDレンジにセットされている状態では、選択されている変速段が1速と3速とで相違し、1速が選択されているときはL−Rブレーキ17が暖機対象となり、3速が選択されているときはリバースクラッチ14が暖機対象となる。
ところで、上述したように、セレクトレバーがDレンジにセットされている場合は、暖機対象となる摩擦係合要素は、1速、3速毎に1つであるが、セレクトレバーがPレンジ、或いはNレンジにセットされている場合は、4つの変速用摩擦係合要素13,15,17,20が存在する。この各変速用摩擦係合要素13,15,17,20の油圧ピストン26に作動油を同時に供給することも考えられるが、変速機用オイルポンプ8の容量を大きくする必要があるため、本ルーチンでは、演算サイクル毎に、暖機対象となる摩擦係合要素を、ある基準に従った順位で設定する。
以下、暖機対象となる摩擦係合要素の暖機順位を決定する基準について説明する。暖機順位は、適用する車両の特性等に応じで設定するものであり、種々の態様が考えられる。尚、本形態において、シフトレバーがDレンジにセットされている状態では、各変速段において、1つの摩擦係合要素14又は17のみが暖機対象となるため、各変速段毎に設定されている1つの摩擦係合要素14,17とトランスファークラッチ20との各油圧ピストン26に対して作動油を交互に給排すれば良いことになる。
従って、以下においては、シフトレバーがDレンジにセットされている場合についての順位を決定する基準を示す。

基準1:図3に△印で示す摩擦係合要素の順位は、低速段で係合頻度の多い摩擦係合要素を、高速段の摩擦係合要素に優先して設定する。
この場合の順番は、ロークラッチ16が暖機対象となる摩擦係合要素に含まれてないため、その次に頻度の多い順に、「2−4ブレーキ15」→「ハイクラッチ13」→「L−Rブレーキ17」→「トランスファークラッチ20」となり、この順番を繰り返す。そして、各摩擦係合要素に設けた油圧ピストン26に対し、当該順番に従って作動油を給排する。
基準1’:基準1において、優先は順位のみ成らず作動油の供給頻度によっても設定することができる。例えば低速で比較的係合頻度の多い摩擦係合要素に対する作動油の供給回数を、高速段で係合する摩擦係合要素に対する供給回数よりも多く設定する。
この場合の順番は、例えば、「2−4ブレーキ15」→「2−4ブレーキ15」→「ハイクラッチ13」→「L−Rブレーキ17」→「トランスファークラッチ20」とし、これを繰り返す。2−4ブレーキ15の油圧ピストン26に対する作動油の供給頻度を、他の摩擦係合要素の供給頻度の2倍とすることで、2−4ブレーキ15の油圧ピストン26をより早期に昇温させることができる。
基準1'':基準1において、暖機対象となる摩擦係合要素から、発進する際に係合される摩擦係合要素を除いて設定する。
この場合の暖機対象となる摩擦係合要素は、「2−4ブレーキ15」→「ハイクラッチ13」→「トランスファークラッチ20」となり、1速で係合されるL−Rブレーキ17が除かれる。
図3に示すように、L−Rブレーキ17の油圧ピストン26に対する作動油の供給は、シフトレバーをDレンジにセットしたときに開始されて暖機されるため、シフトレバーがPレンジ或いはNレンジにセットされている際に暖機する必要は必ずしもなく、又、暖機対象となる摩擦係合要素の数を減少させることで、暖機対象となる油圧ピストン26に対する暖機頻度が多くなり、早期に暖機を完了させることができる。
基準2:その内径が大きく暖機時の昇温が困難な摩擦係合要素を、その内径が小さく暖機時の昇温が比較的容易な摩擦係合要素に優先して作動油を供給する。
この場合の順番は、「トランスファークラッチ20」→「2−4ブレーキ15」→「L−Rブレーキ17」→「ハイクラッチ13」となり、これを繰り返す。そして、各摩擦係合要素に設けた油圧ピストン26に対し、当該順番に従って作動油を給排する。
基準3:暖機の程度が変速時の品質に影響し易いすべり回転数の大きな摩擦係合要素を、すべり回転数の小さい摩擦係合要素に優先して作動油を供給する。
この場合の順番は、「トランスファークラッチ20」→「2−4ブレーキ15」→「ハイクラッチ13」→「L−Rブレーキ17」となり、各摩擦係合要素に設けた油圧ピストン26に対し、当該順番に従って作動油を繰り返し給排する。
基準4:特定の摩擦係合要素を重点的に暖機する。例えば、トランスファークラッチ20の暖機が不十分な場合、タイトコーナブレーキング現象が発生し易い車両では、トランスファークラッチ20の油圧ピストンに対して作動油を重点的に供給し、他の変速用摩擦係合要素13,15,17に対しては供給頻度を少なくし、或いは供給しないようにする。

ステップS2では、述した各基準の中の何れかを採用して暖機対象となる摩擦係合要素の順位を設定する。

トランスファークラッチ20の油圧ピストン周辺を重点的に暖機することで、例えばエンジン始動後、駐車場からハンドルを大きく転舵させて走り出そうとする場合においても、駆動力分配が適正に行われるため、タイトコーナブレーキング現象を有効に回避することができる。
次いで、ステップS3へ進み、上述した順番に従い、或いは重点的に作動油を供給する1つの摩擦係合要素に対応する切換弁(33,32,35或いは36)に対して、駆動信号(デューティ信号)を出力する。
すると、対応する切換弁(33,32,35或いは36)が開弁し、変速機用オイルポンプ8から吐出され、ライン圧用調圧弁31で所定ライン圧に調圧された作動油が、対応する摩擦係合要素(15,13,17或いは20)の油圧ピストン26に供給される。
次いで、ステップS4へ進み、作動油供給後の経過時間TIMを計時し、予め設定した摩擦係合要素結合時間TIMiと比較する。そして、経過時間TIMが摩擦係合要素結合時間TIMiに達するまで(TIM<TIMi)、作動油の供給を継続し、経過時間TIMが摩擦係合要素結合時間TIMiに達したとき(TIM≧TIMi)、ステップS5へ進む。
油圧ピストン26に作動油が供給されると、摩擦係合要素(15,13,17或いは20)が係合動作する。又、油圧ピストン26の周辺温度が変速機用オイルポンプ8から吐出された比較的高温の作動油により昇温され、暖機が促進される。
ステップS5では、当該切換弁(33,32,35或いは36)を切換動作させて、当該油圧ピストン26に供給された作動油をオイルパン3bへ排出させる。すると、当該摩擦係合要素(15,13,17或いは20)が次第に解放される。
そして、ステップS6へ進み、作動油排出後の経過時間TIMを計時し、予め設定した作動油排出時間TIMoと比較する。そして、経過時間TIMが作動油排出時間TIMoに達するまで(TIM<TIMo)、作動油の排出状態を継続し、経過時間TIMが作動油排出時間TIMoに達したとき(TIM≧TIMo)、ステップS1へ戻る。
図7に示すように、摩擦係合要素結合時間TIMiは、各摩擦係合要素(15,13,17或いは20)の油圧ピストン26が完全にストロークするための時間であり、油圧ピストンの容量、作動油の粘性などよって異なるが、おおよそ0.1〜1[sec]程度である。又、作動油排出時間TIMoは油圧ピストン26が完全に戻りきるための時間であり、これも油圧ピストン26の容量、作動油の粘性などよって異なるが、おおよそ0.1〜1[sec]程度である。
この場合、摩擦係合要素結合時間TIMiと作動油排出時間TIMoとを、暖機対象となる摩擦係合要素の種類、作動油温、前回の作動油排出からの経過時間の少なくとも1つをパラメータとして可変するようにしても良い。
そして、ステップS1へ戻ると、再度、暖機条件を判定し、暖機条件が成立したときは、ステップS2へ進み、次の暖機対象となる摩擦係合要素を選択し、ステップS3以下で、当該摩擦係合要素の油圧ピストン26に対して作動油を供給した後、排出させる。そして、当該油圧ピストン26に供給した比較的高温の作動油圧により油圧ピストン26の周辺を昇温し、暖機を促進する。
このようにして、暖機条件が不成立と判定されるまで、上述した暖機対象となる摩擦係合要素の暖機順位に従い、当該摩擦係合要素の油圧ピストン26に対して作動油の給排を行い、その油圧ピストン26の周辺を暖機する。
又、1つの摩擦係合要素(例えばトランスファークラッチ20)の油圧ピストン26を重点的に暖機する場合は、暖機条件が不成立と判定されるまで当該摩擦係合要素の油圧ピストン26に対する作動油の給排を継続して行う。
このように、本形態では、暖機対象となる摩擦係合要素の油圧ピストン26に対して、変速機用オイルポンプ8から吐出される比較的高温の作動油を供給することで、その周辺を昇温させ、効率よく暖機促進を図ることができる。
この場合、当該油圧ピストンに対しては作動油が設定時間毎に給排されているので、供給した作動油の熱が、摩擦係合要素の係合によって、その周囲に奪われても、変速機用オイルポンプ8から吐出された新たな作動油が順次供給されるため、当該油圧ピストンを高温状態に保持することができ、より一層の暖機促進を図ることができる。
又、始動後直ちに、摩擦係合要素の油圧ピストンが昇温されるため、セレクトレバーをDレンジ等の走行レンジにセットして走り出した場合であっても、摩擦係合要素の油圧ピストンが昇温されているため、作動油の粘度が高くなることがなく、スムーズな変速を行うことができ、変速ショックを有効に緩和することができる。
更に、トランスファークラッチの油圧ピストンも暖機されているので、走り出し直後においても充分な駆動力分配能力を発揮することができ、例えば駐車場からハンドルを大きく転舵させて走り出そうとした場合においても、タイトコーナブレーキング現象が発生せず、良好な走り出しを得ることができる。
又、図8に本発明の第2形態による変速機暖機制御ルーチンを示す。尚、自動変速機の概略構成は、図1と共通するため、図1と同一の構成部品については、同一の符号を付して図面による説明を省略する。
本形態は、変速機用オイルポンプ8として、この変速機用オイルポンプ8の吐出圧を電磁弁等の吐出圧変更手段を用いて可変制御できるタイプのものを採用し、暖機条件が成立した場合、吐出圧を増圧し、そのときの圧縮熱によって、変速機用オイルポンプ8から吐出される作動油を更に昇温させるようにしたものである。
すなわち、このルーチンでは、先ず、ステップS11において、暖機条件を判定する。尚、この暖機条件は、図6のステップS1と同一であるため、説明を省略する。
そして、暖機条件成立と判定したときは、ステップS12へ進み、変速機用オイルポンプ8に設けた電磁弁等の吐出圧変更手段に対して増圧信号を出力し、変速機用オイルポンプ8の吐出圧を増圧する。
次いで、ステップS13へ進み、暖機の対象となる摩擦係合要素を選択する。尚、暖機対象となる摩擦係合要素の選択、及び暖機順位等の基準は、図6のステップS2と同一であるため、説明を省略する。
その後、ステップS14へ進み、ステップS13で設定した順番に従い、或いは重点的に作動油を供給する1つの摩擦係合要素に対応する切換弁(33,32,35或いは36)に対して、駆動信号(デューティ信号)を出力する。
すると、対応する切換弁(33,32,35或いは36)が開弁し、変速機用オイルポンプ8から吐出され、ライン圧用ソレノイド31で所定ライン圧に調圧された作動油が、対応する摩擦係合要素(15,13,17或いは20)の油圧ピストン26に供給される。このとき供給される作動油温は、変速機用オイルポンプ8の吐出圧が吐出圧変更手段によって増圧されているため、より一層高温化されており、油圧ピストン26の周辺をより早期に昇温させることができると共に、昇温後はより高い温度状態を維持させることができる。
そして、ステップS14へ進む。ステップS14〜S17では、上述した図6のステップS3〜S6と同一の処理が行われ、ステップS11へ戻り、暖機条件が不成立と判定されるまで、暖機対象となる摩擦係合要素の油圧ピストンに対する暖機が繰り返し実行される。
その後、ステップS11で暖機条件が不成立と判定されたときは、ステップS18へ分岐し、変速機用オイルポンプ8に設けた電磁弁等の吐出圧変更手段に対する増圧信号の出力を停止し、変速機用オイルポンプ8の吐出圧を通常圧に戻した後、ルーチンを抜ける。
このように、本形態では、暖機条件成立時は、変速機用オイルポンプ8の吐出圧を増圧するようにしたので、圧縮熱にてより高い温度に昇温された作動油を、暖機対象となる摩擦係合要素の油圧ピストンに供給することができ、油圧ピストン26の周辺をより早期に昇温させることができる。
第1形態による車両用油圧制御装置の概略構成図 同、自動変速機のギヤトレーンを示す概略構成図 同、セレクトレバーのレンジと摩擦係合要素との関係を示す図表 同、作動油の流れを示す概略説明図 同、自動変速機内の昇温状体を示す図表 同、変速機暖機制御ルーチンを示すフローチャート 同、摩擦係合要素に対する作動油の給排タイミングを示すタイムチャート 第2形態による変速機暖機制御ルーチンを示すフローチャート
符号の説明
1…エンジン、3…自動変速機、7…変速機構、8…変速機用オイルポンプ、8,11…フロントプラネタリギヤユニット、11a,12a…プラネタリキャリヤ、11b,12b…リングギヤ、11c,12c…サンギヤ、11d,12d…プラネタリギヤ、12…リヤプラネタリギヤユニット、13…ハイクラッチ、14…リバースクラッチ、15…2−4ブレーキ、16…ロークラッチ、17…L−Rブレーキ、20…トランスファークラッチ、21…リヤドライブ軸、24…フロントドライブ軸、25…トランスミッションコントロールバルブ、26…油圧ピストン、31…ライン圧用調圧弁、32…ハイクラッチ用切換弁、33…ブレーキ用切換弁、34…ロークラッチ用切換弁、35…ブレーキ用切換弁、36…トランスファークラッチ用切換弁、TIM…経過時間、TIMi…摩擦係合要素結合時間、TIMo…作動油排出時間

代理人 弁理士 伊 藤 進

Claims (9)

  1. 複数の摩擦係合要素に対応して配設され、該各摩擦係合要素を個別に動作させる複数の動作手段と、
    油圧発生源から吐出された作動油圧を複数の上記動作手段に対して選択的に供給すると共に該動作手段に供給した該作動油を排出させる作動油給排手段と
    を備え、
    セレクトレバーがPレンジ、Nレンジ或いは走行レンジにセットされている状態で、それを係合させても出力に影響しない摩擦係合要素に対応する動作手段に対して上記作動油を供給する
    ことを特徴とする車両用油圧制御装置。
  2. 上記摩擦係合要素は、自動変速機の変速段を設定するクラッチ或いはブレーキである
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用油圧制御装置。
  3. 上記摩擦係合要素は、自動変速機の変速段を設定するクラッチ或いはブレーキ、及び駆動力を前後輪へ配分するトランスファークラッチである
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用油圧制御装置。
  4. 上記出力に影響しない摩擦係合要素が複数存在する場合は、該各摩擦係合要素の動作手段に対して上記作動油を順に給排する
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用油圧制御装置。
  5. 上記出力に影響しない摩擦係合要素が複数存在する場合、該各摩擦係合要素に対応する動作手段に対する上記作動油の供給順は、低速段で係合頻度の多い摩擦係合要素を高速段で係合する摩擦係合要素に優先して設定する
    ことを特徴とする請求項4記載の車両用油圧制御装置。
  6. 上記出力に影響しない摩擦係合要素が複数存在する場合、該各摩擦係合要素に対応する動作手段に対する上記作動油の供給順は、該各摩擦係合要素の中で内径が大きい摩擦係合要素を内径の小さい摩擦係合要素に優先して設定する
    ことを特徴とする請求項4記載の車両用油圧制御装置。
  7. 上記出力に影響しない摩擦係合要素が複数存在する場合、該各摩擦係合要素に対応する動作手段に対する上記作動油の供給順は、すべり回転数の大きい摩擦係合要素を、すべり回転数の小さい摩擦係合要素に優先して設定する
    ことを特徴とする請求項4記載の車両用油圧制御装置。
  8. 上記出力に影響しない摩擦係合要素が複数存在する場合であっても、特定の摩擦係合要素に対応する作動手段に対して上記作動油を重点的に供給する
    ことを特徴とする請求項4記載の車両用油圧制御装置。
  9. 上記出力に影響しない摩擦係合要素に対し、上記作動油を設定時間毎に給排させる
    ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の車両用油圧制御装置。
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