以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明にかかる面実装用電子部品は、リード線をなくして実装基板(回路基板)上に電子部品本体を直接実装できる構造にした面実装用電子部品であり、この種の面実装用電子部品は、絶縁部材の表面又はその内部に抵抗やコンデンサやサーミスタやバリスタ等の機能部を設け、さらにこれら機能部に接続し且つ絶縁部材の表面に露出するように端子パターンを設けて構成されているものを言う。具体的には、例えば面実装用可変抵抗器(面実装用半固定可変抵抗器を含む)に用いる面実装型摺接用電子部品用基板や、面実装用固定抵抗器や、面実装用コンデンサや、面実装型コイルや、面実装用サーミスタや、面実装用バリスタ等に本発明を適用できる。以下、本発明の面実装用電子部品を面実装型摺接用電子部品用基板に適用した実施の形態(第一〜第三の実施の形態)と、面実装用固定抵抗器に適用した実施の形態(第四の実施の形態)とについて説明する。
〔第一の実施の形態〕
図1,図2は本発明の第一の実施の形態にかかる面実装型摺接用電子部品用基板である面実装型回転式電子部品用基板(以下「電子部品用基板」という)1−1を示す図であり、図1は斜視図、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は図2(a)のA−A断面図、図2(d)は裏面図である。両図に示すように電子部品用基板1−1は、絶縁基台10の上面に合成樹脂フイルム20を、インサート成形によって、一体に取り付けて構成されている。なお絶縁基台10と絶縁基台10上に取り付けられる合成樹脂フイルム20(但し下記する抵抗体パターン25と端子パターン29,29とを除く)とによって「絶縁部材」が構成される。以下各構成部分について説明する。
絶縁部材となる絶縁基台10は略矩形状で板状の合成樹脂成形品であり、中央には円形の貫通孔11が設けられ、また下面中央には凹状の集電板収納凹部15が設けられている。この絶縁基台10は熱可塑性の合成樹脂、例えばナイロンやポリフェニレンスルフイド(PPS)等によって構成されている。
一方合成樹脂フイルム20は可撓性を有し、絶縁部材の一部を構成する。合成樹脂フイルム20は、例えばPPSフイルム、ポリイミド(PI)フイルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フイルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリエーテルイミドフイルム等によって構成され、その上に端子パターン29,29とその表面に摺動子が摺接する機能部(導体パターンであり、更に具体的には抵抗体パターンである。以下「抵抗体パターン」という)25とを設けている。即ちこの合成樹脂フイルム20はその中央の前記貫通孔11に対応する位置にこれと同一内径の貫通孔21を設け、またその表面の貫通孔21の周囲にはこれを馬蹄形状に囲む抵抗体パターン25を設け、さらに抵抗体パターン25の両端にはそれぞれ端子パターン29,29を抵抗体パターン25と接続して設けている。合成樹脂フイルム20の端子パターン29,29を設けた側の辺は絶縁基台10の上面から外周側辺を介してその下面側に折り返されており、これによって端子パターン29,29も絶縁基台10の外周側辺から下面側まで至っている。
ここで前記抵抗体パターン25は物理的蒸着(PVD、physical vapor deposition)又は化学的蒸着(CVD、chemical vapor deposition)による金属薄膜によって構成されている。物理的蒸着の方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着等を用いる。化学的蒸着の方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を用いる。蒸着する抵抗体パターン25の材質としては、ニッケルクロム合金等のニッケル系材料、又はクロム珪酸塩系化合物(Cr−SiO2)等からなるサーメット系材料、又は窒化タンタル等のタンタル系材料等を用いる。クロム珪酸塩系化合物は2000μΩ・cm以上の大きな比抵抗を容易に実現できるので、この電子部品用基板1−1の小型化に好適である。この種の金属蒸着による抵抗体パターン25によれば、抵抗体パターン25全体を均質で均一な厚みに形成できることは言うまでもなく、さらに樹脂中に導電紛を混合したペーストを印刷焼成した抵抗体パターンのように内部に樹脂を有していないので、熱や温度によって抵抗値が変化しにくい。例えばカーボンペーストを印刷焼成した抵抗体パターンの場合、抵抗温度係数が500ppm/℃なのに対して、上記真空蒸着を用いた金属薄膜の場合の抵抗温度係数は、100ppm/℃であった。これはセラミック基板に高温で抵抗体パターンを焼き付けた場合と同等の良好な温度特性である。但し本発明に用いる抵抗体パターン25は、樹脂中に導電紛を混合した導電ペーストを印刷焼成してなる抵抗体パターンであってもよいし、それ以外の各種方法によって形成される抵抗体パターンであってもよい。以下の各実施の形態においても同様である。
次に端子パターン29,29は、平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって構成している。この導電性被膜の比抵抗(体積抵抗率)は、3×10-5〜3×10-6〔Ω・cm〕程度であり、銀自体の比抵抗1.6×10-6〔Ω・cm〕に近い小さい値となっている。そこでこの実施の形態ではこの導電性被膜の膜厚を、1〜10μm程度と薄く形成することができる(なお安定した導通のためには金属粒子径の4倍以上の膜厚が好ましい)。本実施の形態の導電性被膜としては、特開2003−308730号公報,特開2003−308731号公報,特開2003−308732号公報で記載の導電性被膜(藤倉化成(株)製)を使用している。以下この導電性被膜について説明する。
前記端子パターン29,29を構成する導電性被膜を形成するには、まず平均粒径が1〜1000nm(好ましくは1〜500nm)の銀(又は銀化合物)の金属微粒子(以下この実施の形態では「銀微粒子」という)を含有した導電ペーストを用意する。導電ペーストは、銀微粒子を、バインダ樹脂,溶媒,還元剤の少なくとも一種類以上のものに分散した液状のペーストとして構成されている。ここでバインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等や、これらのモノマーを用いる。また溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、セカンダリーブチルアルコール等のアルコール類、又はイソホロン、テルピネオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等の有機溶媒を用いる。また還元剤としては、エチレングリコール、ホルマリン、ヒドラジン、アスコルビン酸、各種アルコール等を用いる。また前記銀化合物としては、酸化銀(酸化第1銀、酸化第2銀)、炭酸銀、酢酸銀、アセチルアセトン銀錯体等を用いる(これらは二種以上を混合しても良い)。また前記導電ペーストには銀微粒子の二次凝集を防止するため、分散剤を添加して銀微粒子を良好に分散させておくことが望ましい。分散剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を用いる。
次に以上のように構成された導電ペーストを、前記端子パターン29,29の形状となるように合成樹脂フイルム20上に印刷する。印刷には例えばスクリーン印刷を用いる。そして前記導電ペーストを印刷した合成樹脂フイルム20を加熱すれば、前記端子パターン29,29を構成する導電性被膜が完成する。加熱温度は導電ペーストの材質に応じて150℃〜230℃とし、加熱時間は10秒〜120分程度とする。
ここで図12は以上のようにして形成される導電性被膜の性能試験の結果を示す図である。この導電性被膜は、具体的には銀化合物として酸化銀微粒子でその粒径が数10nm〜500nmの範囲のものを用い、これを溶媒(テルピネオール)に分散させてなる導電ペーストを、ポリフェニレンスルフイド製のフイルム上にスクリーン印刷によって印刷形成したものを、加熱温度150℃〜220℃の範囲、及び加熱時間3分〜30分の範囲の各種条件で焼成して形成されたものである。そしてこれら各種条件で形成された各種導電性被膜の諸特性(比抵抗、膜厚、基板への密着性、鉛筆硬度)を測定した。ここで基板への密着性の測定方法は、導電性被膜上を覆うようにフイルム上に粘着テープ(ニットー31Bテープ)を気泡が入らないように爪で押し付けながら貼り付け、直ちにこの粘着テープの一端を持ち、導電性被膜面に垂直方向に一気に引き剥がし、このとき導電性被膜が剥がれるか否かを測定する測定方法である。また鉛筆硬度の測定方法は、導電性被膜面を上にしたフイルムを水平な台の上に固定し、導電性被膜面に対して45°の角度をなすように鉛筆を手で持ち、導電性被膜面に対して垂直方向に1〔kgf〕の強さで導電性被膜面にこれを押し付けながら、水平方向に均一な速さ(1cm/sec)で0.5cmの距離を10往復させる。上記動作を導電性被膜の3ヶ所について行い、一ヶ所でもフイルムにとどく被膜の破れがある場合は硬度記号が1級階下の鉛筆に取り換えて同様な試験を繰り返し、フイルムにとどく破れが認められない最高位の鉛筆硬度記号を鉛筆硬度値とする試験方法である。
同図に示すように上記導電性被膜は、加熱温度が150℃と低い温度であり、且つ加熱時間が3分と短い時間であっても、比抵抗は3.1×10-5〔Ω・cm〕と小さく、また密着性も鉛筆硬度も下記する摺動子30の摺動に耐えられるものであった。
なお図12に示すように、加熱時間を長くすればするほど、また加熱温度を高くすればするほど比抵抗は小さくなり、また密着性も鉛筆硬度も良好になる。即ちこの導電性被膜の比抵抗(体積抵抗率)は、3×10-5〜3×10-6〔Ω・cm〕程度で、銀自体の比抵抗1.6×10-6〔Ω・cm〕に近い、非常に小さい値となっている。従来の鱗片状の銀粒子(平均粒径1〜50μm程度)からなる導電ペーストの場合は、前述のようにその比抵抗が、1×10-4〜4×10-5〔Ω・cm〕程度なのに対して、非常に小さい比抵抗となるのは以下の理由による。
即ち平均粒径1〜1000nmという微細な粒子状の銀化合物の場合について説明すると、この銀化合物は、単に加熱により、或いは還元剤との共存下で加熱することにより、容易に金属銀粒子に還元される微粒子である。特に平均粒径が500nm以下の粒子状銀化合物は還元反応の速度が速くなるので好ましい。そしてこの還元反応時に生じる反応熱によって、還元反応によって形成された金属銀微粒子が溶融し、互いに融着して連続した金属銀の薄い高導電性の導電性被膜を形成するのである。このため得られる導電性被膜は、銀自体と同等の比抵抗を有するものとなる。なお導電ペーストに還元剤を添加すれば、より低温での還元反応が進み、導電性皮膜を形成できるので好適である。即ち従来の導電性ペーストは平均粒径1〜50μm程度の鱗片状の銀粒子を用いていたので、160℃程度加熱しても溶融せず、これら銀粒子間の物理的接触のみによって導通していたので、その比抵抗が大きなものになっていたが、平均粒径が1〜1000nm程度(即ちナノサイズ)の微粒子状の銀粒子を用いた場合は表面エネルギーが指数関数的に大きくなり、このため金属銀微粒子間が150℃〜220℃程度の低い温度でも溶着して一体の金属となるので、その比抵抗が小さくなるのである。
そして以上のようにこの導電性被膜は銀自体と同等の低い比抵抗を有する。また低い比抵抗を有するので、その厚みを薄くすることができる。なお微細な銀微粒子の導電ペーストを塗布・焼成して形成された端子パターン29,29は、その外周辺の境界線に生じる銀微粒子による凹凸も微細になるので(言い換えればスクリーン印刷時のスクリーンのメッシュを銀微粒子の粒径に合わせて微細にできるので)、極めてファインな境界線が形成される。また150℃〜220℃程度の低い温度による加熱で済むので、熱に弱い材質(例えばPETフイルム)からなる合成樹脂フイルム20を使用することができる。
次にこの電子部品用基板1−1の製造方法を説明する。まず図3に示すように貫通孔21を有し、その表面に物理的蒸着又は化学的蒸着による金属薄膜からなる抵抗体パターン25と、平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜からなる端子パターン29,29とを形成した合成樹脂フイルム20を用意する。この合成樹脂フイルム20は、その両側辺から連結部31,31が突出しており、これら連結部31,31によって同一の多数の合成樹脂フイルム20が並列に連結されている。
次に連結部31,31によって連結された各合成樹脂フイルム20を図4に示すように、金型41,45内にインサートする。このとき金型41,45内には前記絶縁基台10と同一形状のキャビティーC1が形成されるが、合成樹脂フイルム20はその抵抗体パターン25形成面をキャビティーC1の金型41側の内平面C11に当接し、且つ端子パターン29,29を設けた一端部分を金型45側に折り返しておく。
そしてキャビティーC1の側面に設けたゲートP1から加熱・溶融した合成樹脂(ナイロン、ポリフェニレンスルフイド等)を圧入してキャビティーC1内を満たす。そしてこの圧入圧力により合成樹脂フイルム20の折り返した部分は図4に点線で示すようにキャビティーC1の内周面に押し付けられ、その状態のまま冷却・固化される。そして金型41,45を取り外し、成形された絶縁基台10の両側から突出する連結部31,31の部分を切断すれば、図1,図2に示す電子部品用基板1−1が完成する。
図5は上記電子部品用基板1−1を用いて構成した半固定可変抵抗器100−1を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は図5(a)のB−B断面図、図5(d)は裏面図である。同図に示すように半固定可変抵抗器100−1は、電子部品用基板1−1の上面に摺動子60を配置し、下面に集電板50を配置し、集電板50に設けた円筒状の筒状突起51を貫通孔11,21に貫通させ、さらに電子部品用基板1−1を貫通した筒状突起51の先端を摺動子60に設けた嵌挿孔61に貫通した上でその先端をかしめることで摺動子60を回動自在に取り付けて構成されている。ここで集電板50は電子部品用基板1−1の下面に設けた集電板収納凹部15に収納されている。そして摺動子60を回動すれば、摺動子60に設けられた摺動接点63が抵抗体パターン25(図2参照)の表面を摺接して端子パターン29,29と集電板50間の抵抗値を変化する。
なおこの半固定可変抵抗器100−1は、図13に示すように、実装基板150上に面実装され、その際半固定可変抵抗器100−1の下面に設けた端子パターン29,29と集電板50の下面とを半田等151によって実装基板150に設けた接続パターン153に電気的・機械的に接続して取り付けられる。そして端子パターン29,29の比抵抗が低いので、端子パターン29,29と接続パターン153との接触抵抗値を小さくできる。また端子パターン29,29の膜厚を薄くできるので、端子パターン29,29の可撓性を増すことができてその屈曲性が増し、従ってこの実施の形態のように合成樹脂フイルム20上に端子パターン29,29を設けてこれを屈曲させるような構造の半固定可変抵抗器100−1にも容易に対応できる。また前述のように低い加熱温度で金属微粒子が溶融するので、合成樹脂フイルム20として耐熱性の低い絶縁部材(例えばPETフイルム)を用いることができ、従来のセラミック基板に比べて絶縁部材として合成樹脂を使用できるので絶縁部材の薄型化と低価格化とが図れる。
〔第二の実施の形態〕
図6は本発明の第二の実施の形態にかかる電子部品用基板1−2を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図、図6(c)は図6(a)のD−D断面図、図6(d)は裏面図である。同図に示す電子部品用基板1−2において前記電子部品用基板1−1と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。この電子部品用基板1−2においても、絶縁基台10の上面に合成樹脂フイルム20をインサート成形によって一体に取り付けて構成しており、また合成樹脂フイルム20上に形成される抵抗体パターン25は物理的蒸着又は化学的蒸着による金属薄膜によって構成されており、また端子パターン29,29は、平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって構成されている。
この電子部品用基板1−2において前記電子部品用基板1−1と相違する点は、集電板50−2を絶縁基台10の内部に一体成形した点である。即ちこの電子部品用基板1−2においては、筒状突起51−2を設けた基部53−2の一辺から外方に向けて接続部55−2を突出して構成した集電板50−2を、その筒状突起51−2が絶縁基台10の貫通孔11(同時に合成樹脂フイルム20の貫通孔21)の中(中央)に位置するように絶縁基台10の内部にインサート成形によって埋め込んでいる。このとき接続部55−2の下面は絶縁基台10の下面に露出している。筒状突起51−2は合成樹脂フイルム20の上面側に突出している。このように構成すれば、絶縁基台10を成形する際に、絶縁基台10と合成樹脂フイルム20と集電板50−2とが同時に一体化できるので、製造工程の簡略化が図れる。
図7は上記電子部品用基板1−2を用いて構成した半固定可変抵抗器100−2を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図、図7(c)は図7(a)のE−E断面図、図7(d)は裏面図である。同図に示すように半固定可変抵抗器100−2は、電子部品用基板1−2の上面に摺動子60を配置する際に集電板50−2に設けた筒状突起51−2を摺動子60に設けた嵌挿孔61に貫通し、その先端をかしめることで摺動子60を回動自在に取り付けて構成されている。そして摺動子60を回動すれば、摺動子60に設けられている摺動接点63が抵抗体パターン25(図7参照)の表面を摺接して端子パターン29,29と集電板50−2間の抵抗値を変化する。
〔第三の実施の形態〕
図8,図9は本発明の第三の実施の形態にかかる電子部品用基板1−3を示す図であり、図8(a)は上側から見た斜視図、図8(b)は下側から見た斜視図、図9(a)は平面図、図9(b)は正面図、図9(c)は図9(a)のE−E断面図、図9(d)は裏面図である。同図に示す電子部品用基板1−3において前記電子部品用基板1−1,1−2と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。この電子部品用基板1−3においても、絶縁基台10の上面に合成樹脂フイルム20をインサート成形によって一体に取り付けて構成しており、また合成樹脂フイルム20上に形成される抵抗体パターン25は物理的蒸着又は化学的蒸着による金属薄膜によって構成されており、また端子パターン29,29は、平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって構成されている。なおこの電子部品用基板1−3を構成する各部材の材質及びその製造方法は、上記第一,第二の実施の形態の対応する各部材の材質及びその製造方法と同じである。
そしてこの実施の形態においても絶縁基台10は略矩形状で板状の合成樹脂成形品であり、前記電子部品用基板1−2と同様に、集電板50−3を絶縁基台10の内部に一体にインサート成形している。集電板50−3は筒状突起51−3を設けた基部53−3の一辺から外方に向けて接続部55−3を突出して構成されている。筒状突起51−3は絶縁基台10に設けた筒状突起51−3の外径よりも大きい内径の貫通孔11の中(中央)に位置するように絶縁基台10内に設置されており、このとき接続部55−3の下面は絶縁基台10の下面に露出している。また筒状突起51−3は合成樹脂フイルム20の上面側に突出している。このように構成すれば、第二の実施の形態と同様に、絶縁基台10と合成樹脂フイルム20と集電板50−3とが同時に一体化できるので、製造工程の簡略化が図れる。
次に合成樹脂フイルム20は図10で示すような略矩形状(幅は絶縁基台10と幅と略同一、長さは絶縁基台10の長さより所定寸法長い形状)の熱可塑性の合成樹脂フイルムの中央の前記貫通孔11に対応する位置にこれと同一内径の貫通孔21を設けて構成され、またその表面の貫通孔21の外周に馬蹄形状の導体パターン(以下この実施の形態では「抵抗体パターン」という)25を設け、さらに抵抗体パターン25の端部(25e,25e)に長さ方向(A)に沿う略矩形状の端子パターン29,29を接続して設けている。合成樹脂フイルム20はその端子パターン29,29を設けた側の辺を絶縁基台10の上面から外周側辺を介してその下面に折り返し、これによって合成樹脂フイルム20は絶縁基台10の上面と外周側面と下面にその表面が露出するように折り曲げられた状態で絶縁基台10に取り付けられる。従って抵抗体パターン25は絶縁基台10の上面に、端子パターン29,29は絶縁基台10の上面と外周側辺から下面にわたって露出している。
そしてこの電子部品用基板1−3においては、合成樹脂フイルム20の抵抗体25の外側にある長さ方向(A)の一辺の端部(抵抗体パターン25側)となる端辺71を覆う円弧形状を有する押え部17a(但し抵抗体パターン25を覆ってはいない)と、合成樹脂フイルム20の抵抗体パターン25の端部(25e,25e)の外周近傍の部分に二つの端子パターン29,29を覆う円弧形状を有する押え部17bと、絶縁基台10の下面に配置された合成樹脂フイルム20の端子パターン29,29を設けた側の端辺73を覆う絶縁基台10の下面と同一面の平板状の押え部17cとを、それぞれ絶縁基台10と一体にインサート成形樹脂で設け、これによって合成樹脂フイルム20を絶縁基台10に強固に固定している。
合成樹脂フイルム20の端辺71は、抵抗体パターン25の円弧形状に合わせて円弧状に形成されており、押え部17aもこの円弧形状に合わせて円弧状に形成されている。
合成樹脂フイルム20の抵抗体パターン25の端子パターン29,29を接続した部分の両外周側辺(即ち合成樹脂フイルム20の幅方向(B)の両端部)には凹状に切り欠かれた一対の樹脂挿通部75a,75aが設けられ、また両端子パターン29,29の間には貫通孔からなる樹脂挿通部75bが設けられ、これら樹脂挿通部75a,75a,75bの上を通過し且つ抵抗体パターン25の円弧形状に合わせて円弧状に押え部17bが成形されている。押え部17bは樹脂挿通部75a,75a,75bの部分でその下側の絶縁基台10を構成する成形樹脂と連結されている。
合成樹脂フイルム20の絶縁基台10の下面側に折り返された長さ方向(A)のもう一つの辺の端部(端子パターン29,29側)となる端辺73は、略直線状でその中央に円弧状に凹む凹部77(図10参照)を設けている。そして一端辺73の上には、端辺73を複数箇所(五ヶ所)で押さえるように押え部17cが成形されている。合成樹脂フイルム20の端辺73近傍部分の面は、合成樹脂フイルム20を絶縁基台10の下面側に折り返した直後の面(絶縁基台10の側面側に位置する下面)から更に絶縁基台10の内部に向かって凹む凹部78の底面まで凹ませているが、これは押え部17cの表面を端子パターン29,29の露出面と同一面にするため、押え部17cの厚み分だけ合成樹脂フイルム20の面を低くしておく必要があるからである。
次にこの電子部品用基板1−3の製造方法を説明する。まず図10に示すように貫通孔21、樹脂挿通部75a,75a,75bを有し、その表面に物理的蒸着又は化学的蒸着による金属薄膜によって形成した抵抗体パターン25と、平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって形成した端子パターン29,29とを具備した合成樹脂フイルム20を用意する。この合成樹脂フイルム20は、抵抗体パターン25を設けた部分の両側辺から連結部31,31を突出しており、これら連結部31,31によって同一の多数の合成樹脂フイルム20(図示せず)が並列に連結されている。
次に前記合成樹脂フイルム20及び集電板50−3を図11に示すように、金型41,45内にインサートする。このとき金型41,45内には絶縁基台10と同一形状のキャビティーC1が形成されるが、合成樹脂フイルム20はその抵抗体パターン25形成面をキャビティーC1の金型41側の内平面C11に当接し、且つ端子パターン29,29を設けた一端辺73側部分を金型45側に折り返しておく。なお合成樹脂フイルム20の端辺73に凹部77(図10参照)を設けたのは、合成樹脂フイルム20の端辺73側部分を金型45側に折り返した際に、金型45に設けた貫通孔11を形成するための凸部47に合成樹脂フイルム20が当接しないように逃げるためである。
そして金型41側に設けた二ヶ所の樹脂注入口(図8(a)に示す矢印G1,G2及び図11に示すG1,G2)から加熱・溶融した合成樹脂を圧入してキャビティーC1内を満たす。このとき溶融樹脂の圧入圧力と熱とにより合成樹脂フイルム20はキャビティーC1の内周面に押し付けられてその内周面形状に変形し、その状態のまま冷却・固化される。そして金型41,45を取り外し、成形された絶縁基台10の両側から突出している連結部31,31の部分を切断すれば、図8,図9に示す電子部品用基板1−3が完成する。
なお前述のように押え部17cによって端辺73及びその近傍を断続的に複数箇所で押さえたのは、端辺73の一部を金型45の面に当接させておくことで、端辺73の部分が溶融成形樹脂の圧入圧力によって金型45の面まで押し上げられて変形しないようにこれを押えておくためである。つまり押え部17cを設けないで絶縁基台10の下面から露出している端辺73及びその近傍部分は、金型45によって端辺73及びその近傍を押えていた結果形成されたものである。
この電子部品用基板1−3によれば、絶縁基台10の上面に設けられた合成樹脂フイルム20と絶縁基台10の下面に設けられた合成樹脂フイルム20とに、それぞれ合成樹脂フイルム20を強固に絶縁基台10に固定する押え部17a〜17cを設けたので、たとえ合成樹脂フイルム20と絶縁基台10とがインサート成形時の熱と圧力だけによっては固着しにくい材質の組み合わせであったとしても、合成樹脂フイルム20が絶縁基台10の表面から剥がれるなどの問題は生じず、容易にこれを強固に固定しておくことができる。なおこの実施の形態においては、押え部17a〜17cを合成樹脂フイルム20の絶縁基台10の上面側に設けられた抵抗体パターン25側の端辺71と、抵抗体パターン25の端部25e,25eの外周近傍部分と、絶縁基台10の下面側に設けられた端子パターン29,29側の端辺73とに設けたが、合成樹脂フイルム20の絶縁基台10上への固着が比較的強固の場合、押え部はこれら三ヵ所の内の何れか一ヵ所のみに設けるだけでもかまわない。その場合、合成樹脂フイルム20の絶縁基台10の下面側に折り曲げた部分が最も元の形状に戻ろうとする応力が強く、はがれ易いので、端子パターン29,29側の端辺73の部分に押え部17cを設けることが好ましい。
以上のようにして製造された電子部品用基板1−3は、その筒状突起51−3を、前記図7に示すと同様の摺動子60の嵌挿孔61に貫通してその先端をかしめることで摺動子60を回動自在に取り付け、これによって半固定可変抵抗器が構成される。
〔第四の実施の形態〕
図14は本発明の第四の実施の形態にかかる面実装用固定抵抗器1−4を示す図であり、図14(a)は平面図、図14(b)は図14(a)のH−H断面図、図14(c)は裏面図である。同図に示すように面実装用固定抵抗器1−4は、絶縁部材210と、絶縁部材210の表面に設けられる機能部(以下この実施の形態では「抵抗体パターン」という)220と、この抵抗体パターン220の両端に接続されて絶縁部材210の表面(上面と下面)に露出する端子パターン230,230とを具備して構成されている。以下各構成部分について説明する。
絶縁部材210は、例えば厚み30μm程度の絶縁性の合成樹脂フイルム(例えばPPSフイルム、PIフイルム、PETフイルム、PENフイルム、ポリエーテルイミドフイルム等)を略矩形状に形成することで構成されている。絶縁部材210の端子パターン230,230を設けた側の両端辺中央には、半円弧状の凹部211が設けられている。
抵抗体パターン220は例えばNi−Cr系やTa系等の金属微粒子を真空中で吹き付けて堆積させてなる蒸着金属薄膜によって形成されており、その表面には絶縁材料からなるオーバーコート層221が印刷等によって被覆されている。
端子パターン230は、絶縁部材210の上下面に形成され、上面側(抵抗体パターン220を設けた面側)に設けた端子パターン230には抵抗体パターン220の端部が接続されている。この端子パターン230は、前記各実施の形態の端子パターン29と同様に、平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって形成されている。その形成方法も前記各実施形態で示した端子パターン29と同じである。上下面に形成されている端子パターン230,230間は、絶縁部材210の凹部211内に充填されている導電部材240によって導通されている。導電部材240は導電ペーストを硬化することによって構成されている。なおこの実施の形態の場合、実装基板上に設けた接続パターンに直接接続される端子パターン230は、絶縁部材210の下面側(即ち抵抗体パターン220を設けた面の反対側の面)の面に設けた端子パターン230なので、この面に設けた端子パターン230のみを、本発明にかかる平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって形成してもよい。また導電部材240を平均粒径が1〜1000nmの銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電部材によって形成しても良い。
そしてこの面実装用固定抵抗器1−4を製造するには、大型の絶縁部材210の凹部211となる部分に円形の開口を多数形成し、この大型の絶縁部材210の上下面に多数の端子パターン230,230を形成し、次にその一方の面に多数の抵抗体パターン220及びオーバーコート層221を形成した後、前記各開口に導電部材240となる導電ペーストを充填して硬化させ、その後大型の絶縁部材210を一つずつの面実装用固定抵抗器1−4の大きさにカットし、その際前記導電ペーストを充填した開口をその中央で切断すれば、図14に示す面実装用固定抵抗器1−4が完成する。
以上のようにして構成された面実装用固定抵抗器1−4は、図示しない実装基板上に面実装され、その際面実装用固定抵抗器1−4の下面両端に設けた端子パターン230,230は半田等によって実装基板に設けた接続パターンに電気的・機械的に接続して取り付けられる。そしてこの実施の形態においても、端子パターン230,230の比抵抗が低いので、端子パターン230,230と実装基板の接続パターンとの接触抵抗値を小さくできる。また前述のように低い加熱温度で金属微粒子が溶融するので、絶縁部材210として耐熱性の低い絶縁部材(例えばPETフイルム)を用いることができる。
なおこの実施の形態では絶縁部材210として合成樹脂フイルムを用いたが、その代わりに絶縁部材210を成形樹脂によって構成しても良いし、成形樹脂上に合成樹脂フイルムを取り付けたもので構成しても良い。その他にもその電子部品の構造により、種々の変形が可能であることはいうまでもない。要は、絶縁部材と、絶縁部材の表面又はその内部に設けられる機能部及びこの機能部に接続されて絶縁部材の表面に露出する端子パターンとを具備し、実装基板上に面実装することで、前記端子パターンを前記実装基板上に形成した接続パターンに接続して取り付ける構造の面実装用電子部品であれば、どのような機能・構造のものであっても、本発明を適用できる。
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記各実施の形態では導体パターンとして抵抗体パターンを用いたが、スイッチパターン等、他の各種パターンを用いても良い。スイッチパターンを設ける場合はスイッチパターンと端子パターンとを同一材質とし、同一の工程で形成しても良い。また上記各実施の形態では端子パターン29,29の上に抵抗体パターン25を設けたが、逆に抵抗体パターン25の上に端子パターン29,29を設けてもよい。
また上記各実施の形態では端子パターンを銀の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって形成したが、その代わりに、端子パターンを金の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって形成しても良い。また端子パターンを銅の金属微粒子を互いに融着してなる導電性被膜によって形成しても良い。さらにこれら金属(銀,金,銅)の内の二種類以上を混合した金属微粒子によって導電性被膜を形成しても良い。
また上記実施の形態では、面実装型摺接用電子部品用基板として面実装型回転式電子部品用基板を示したが、機能パターンを直線状に形成してその上を摺動子が直線状に摺接する面実装型スライド式電子部品用基板等に本願発明を適用しても良く、要は、機能パターン上を他の部材が摺接する構造の各種面実装型摺接用電子部品用基板であれば良い。