JP2006045943A - 扉の開閉機構および開閉方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 日常的な開閉操作の容易さと、衝撃や振動に対するロックの信頼性とを両立できる、扉の開閉機構および開閉方法を提供する。
【解決手段】 扉3に固定されている一片4bと、筐体1に固定されている他片4cと、両片を連結する板ばね状の連結部4dとからなる蝶番4を介して、扉3が筐体1に取り付けられている。初期状態では爪部3aが係止部1cに係止されて扉3が閉じた位置に保持される。この状態から閾値(20g重〜2kg重の範囲内の値)以上の力を加えて、連結部4dを弾性変形させながら扉3全体を矢印A方向にスライドさせると、爪部3aが係止部1cから外れてロックが解除される。そこで、扉3を軸4aを中心として揺動させて開く。開いた扉3を閉じる際には、扉3を軸4aを中心として反対に揺動させるだけでよく、爪部3aが係止部1cに係止されて扉3は閉じた位置に保持される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、什器棚等の家具や自動車内の小物入れ等の収納機器の扉、またはノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル家電製品の蓋となる扉の開閉機構および開閉方法に関する。
一般に、蝶番を介して被取付体に揺動可能に取り付けられており揺動することによって開閉する扉は、閉じた状態を保つために何らかのロック装置が付設されている。特別なロック装置を取り付ければロックを確実にすることができるが、その代償として、扉を開ける前にロックを解除する操作、例えば、レバーやつまみやかんぬきなどの部材を動かす操作が必要である。これに対し、ばね仕掛けの金具や磁石などからなる簡単なロック機構を採用すれば、扉の開閉のための操作を比較的簡単にすることができるが、扉を閉じた状態に保持する信頼性が低くなり、予期しない衝撃や振動で容易に扉が開いてしまう危険性がある。このように、扉の開閉機構において、閉じた状態を保持するロックの信頼性と、開閉のための操作の容易さとを両立させるのは困難である。結局、開閉頻度が高い扉、例えば什器棚の扉等に関しては、ロックの信頼性を多少犠牲にして開閉操作の容易さが重んじられているのが現状である。
このような、ロックの信頼性に乏しく開閉操作が容易な什器棚等の扉の場合、日常的な使用に関してはあまり問題がないが、地震等により予期しない大きな振動や衝撃が加わった際に、扉が開いて中の什器が飛び出して破損することが考えられる。特に地震等の災害の場合には、破損した什器の破片(例えば陶磁器やガラス器の破片)が人を傷つけたり、揺れて開閉する扉が人に当たって負傷させることや、破損した什器の破片が避難路に散らばったり、開閉する扉が避難路を塞いだりして、避難時の危険を増大させることが考えられる。
そこで、地震等による予期しない大きな振動や衝撃によっても内部に収納している什器が飛び出さないように、扉をロックする構成が提案されている。例えば特許文献1には、スプリング等を用いて地震などによる揺れを感知して扉をロックさせる機構が提案されている。また、特許文献2には、磁石(マグネットキャッチ)によって扉をロックさせる機構において、地震などの際に開いてしまわないように開放防止力を大きく(約3.5kg以上、最も好ましくは6kg以上に)設定した構成が提案されている。
特開平11−62354号公報 特開平8−319752号公報
特許文献1に記載の構成は、スプリング等を用いて地震などによる揺れを感知した時にのみロック機構が作動する構成であるが、必ずしも信頼性の高いものではない。すなわち、地震発生と同時に大きな揺れが生じて扉が開いてしまうと、前記した種々の危険を回避することができないため、扉が開く前に地震を即座に感知して直ちにロック機構が作動しなければならない。現実的には、特許文献1に記載の構成によって、スプリング等が揺れを検知して扉のロックを完了するまでの間に扉が開いてしまうことが全くないとはいえないと思われる。できるだけ迅速に地震を感知してロック機構を作動させるためには、僅かな揺れにも即座に反応するように感度を高める必要があるが、そうすると、地震以外の日常生活内での僅かな衝撃や振動によってもロック機構が作動するおそれがあり、不必要に頻繁に扉が開かなくなってしまうことが考えられる。その結果、日常的な通常の使用が不便になる。このように、地震を即座に感知してロック機構を作動させることが可能であり、しかも地震等以外の日常的な衝撃や振動には反応しないというような適切な感度に設定することは困難であると思われる。特に、特許文献1のようなスプリングの組み合わせにおいて前記した適切な感度を得ることは非常に困難である。また、特許文献1には、構成が非常に複雑で大きなスペースを必要とするとともにコスト高になるという欠点がある。
特許文献2に記載の構成は、特許文献1に記載の構成と異なり、通常時には比較的強い力で扉を閉じた状態に保ち、地震などが起きても扉が開かないようにしている。しかし、日常的な使用において扉を開く操作が非常に面倒になる。すなわち、日常的な使用時にも、約3.5kg以上(最も好ましくは6kg以上)もの大きな力を加えない限り開けられないため、日常的な通常の使用が不便である。このマグネットキャッチが、いわゆるプッシュキャッチ式のマグネットキャッチであると、扉は一旦押し込まれると容易に開くため、操作が多少簡単になる。しかし、プッシュキャッチ式のマグネットキャッチを用いると、地震などの際に扉の主面に人体や物品がぶつかると開いてしまう可能性があるため、せっかく開放防止力が大きく設定されているにもかかわらず、意図しない時に簡単に開いてしまう可能性がある。
そこで本発明の目的は、日常的な通常の使用における扉の開閉操作が容易であり、しかも予期しない衝撃や振動を受けても扉が閉じた状態に保持するロックの信頼性および確実性が高い、扉の開閉機構および開閉方法を提供することにある。
本発明の扉の開閉機構は、蝶番を介して被取付体に取り付けられ、蝶番の軸を中心として揺動することによって開閉可能である扉と、扉を閉じた位置に保持可能なロック機構とを有し、扉がロック機構によって閉じた位置に保持されている状態で、外力が加えられて扉全体が主面に平行な面内でスライドさせられると、ロック機構による保持が解除されて、扉が前記軸を中心として揺動可能になることを特徴とする。
この構成によると、通常状態ではロック機構により扉は閉じた位置に保持されるため、地震等による予期しない揺れや衝撃が加わっても扉が開くおそれがなくロックの信頼性が高く安全である。さらに、ロック解除のための扉全体のスライドと扉を開くための揺動とを連続する一連の動作として容易に行えるため、開閉操作が非常に簡単である。
本発明の開閉機構はまた、扉を、主面に平行な面内でスライドさせられた位置からスライド前の初期位置に復帰させる付勢手段を有し、付勢手段は、所定の閾値未満の外力による扉のスライドを防ぎ、かつ閾値以上の外力による扉のスライドを許容するものであり、閾値は20グラム重〜2キログラム重の範囲内の値であることが好ましい。
この構成では、日常生活中の僅かな衝撃や振動によって20グラム重未満の小さな力が加わった際に扉がスライドしてロックが解除されて扉が開いてしまうことがなく、また、2キログラム重以下の力で扉をスライドしてロックを解除し扉を開くことができるため、開閉操作が容易である。
蝶番は、扉に取り付けられている一片と被取付体に取り付けられている他片とが軸を中心として相対的に揺動可能であるとともに、扉の主面に平行な面内におけるスライドを可能にするために、一片と他片とが軸に垂直な方向または軸に平行な方向に相対的に平行移動可能な構成であり、ロック機構は、扉と被取付体のうちの一方に設けられている爪部と、他方に設けられている係止部とからなり、爪部と係止部の係合が、扉の主面に平行な面内におけるスライドによって解除される構成である。この蝶番とロック機構を採用すると、ロックの信頼性向上と開閉操作の容易さとを両立できる構成が容易に実現できる。
本発明の扉の開閉方法は、前記したいずれかの構成の扉の開閉機構を用い、初期状態では、扉はロック機構によって閉じた位置に保持され、閉じた位置に保持された状態の扉を開く際には、扉に力を加えて扉全体を主面に平行な面内でスライドさせることによってロック機構による保持を解除してから、扉を蝶番の軸を中心として揺動させることによって開き、開いた状態の扉を閉じる際には、軸を中心として扉を揺動させて閉じるとともに、ロック機構によって扉を閉じた位置に保持させることを特徴とする。
本発明によると、扉のロックの信頼性と、日常的な扉の開閉操作の容易さとが両立でき、しかも構成が非常に簡単でコストを低く抑えることができる。特に、本発明の扉の開閉機構および開閉方法は、日常的に頻繁に開閉する必要があり、かつ地震等の不測の事態において扉が開かないようにロックすることが好ましい什器棚等の収納設備の扉や、衝撃や震動が絶えず加えられても無闇に開かないことが好ましい自動車等の乗物内の収納設備(例えば小物入れ)や、持ち運ばれて振動や衝撃を受けることが多いノート型パーソナルコンピュータ等のポータブル家電の蓋として用いられる扉に適している。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1には本発明の扉の開閉機構を備えた収納設備の一例である什器棚が示されている。この什器棚の構成について簡単に説明すると、被取付体である筐体1の内部が食器等の物品2を収納可能な収納部1aであり、筐体1の前面は、物品2を収納部1aに対して出し入れ可能にする開口部1bになっている。そして、この開口部1bを塞ぐ扉3が、後述する開閉機構によって開閉可能に取り付けられている。本実施形態の扉3は1枚の板状であり、主面3bと、上下および左右の各端面とを有している。なお、本発明における扉3の主面3bとは、上下および左右の端面を除いた扉の主要部(主体)をなす大面積の面(表面および裏面)のことである。
扉3の開閉機構について説明すると、扉3は、蝶番4によって筐体1の開口部1b近傍に取り付けられており、蝶番4の軸4aを中心として揺動することによって開閉可能である。扉3の内面(裏面)には爪部3aが設けられており、この爪部3aを係止可能な係止部1cが、筐体1の開口部1bの近傍で、蝶番4の反対側に設けられている。この爪部3aと係止部1cがロック機構を構成している。また、扉3の外面(表面)には、図示しない取っ手等が設けられている。
蝶番4は、図1,2に示すように、扉3の内面(裏面)にねじ5により固定されている一片(一方の羽根)4bと、筐体1にねじ5により固定されている他片(他方の羽根)4cと、一片4bと他片4cとを連結する連結部4dとを有し、一片4bが軸4aを中心として他片4cに対して相対的に揺動可能である。さらに、この蝶番4の連結部4dは、強靭で薄い金属板からなり、屈曲した形状に形成されてばね性を有する板ばね状のものである。すなわち、連結板4dは、弾性変形することによって、扉3の、主面3bに平行で蝶番4の軸4aに垂直な方向(図2(a)の矢印A方向)への移動(スライド)を許容する機構になっているとともに、初期位置へ復帰させる(図2(a)の矢印B方向への)付勢手段として作用する。ただし、連結部4dは所定の閾値以上の外力が加わったときに初めて弾性変形して扉3のスライドを許容するものであり、その閾値未満の外力が加わっても変形せず扉3のスライドを防ぐものである。この閾値は、20グラム重〜2キログラム重の範囲内で任意に設定される。
次に、この什器棚における扉3の開閉方法について説明する。扉3は、前記した蝶番4を介して筐体1に取り付けられており、開口部1bを塞ぐように閉じた位置で、爪部3aが係止部1cに係止されることによってロックされて保持される。このとき、蝶番4の連結部4dのばね力によって扉3は図2(a)の矢印B方向に付勢されているので、爪部3aは係止部1cから外れないようになっている。これが通常の状態(図2(a)に示す初期状態)である。
使用者が扉3を開く際には、まず、図示しない取っ手等を持って、図2(b)に示すように矢印A方向に扉3全体をスライドさせる。この時、蝶番4の連結部4dが弾性変形することによって扉3が平行移動できる。その結果、爪部3aが係止部1cから外れてロックが解除される。そこで、使用者が扉3を手前に引くと、図2(c)に示すように、ロックが解除された扉3が蝶番4の軸4aを中心として揺動して開く。それによって、図1に示すように収納部1aが開口部1bを介して外部に露出し、収納部1aの内部の物品2の出し入れが可能になる。ロックを解除させて扉3を揺動させた時点で、扉3は蝶番4の連結部4dのばね力によって、スライドさせられた位置からスライド前の初期位置に復帰する。
開いた扉3を閉じる際には、扉3を蝶番4の軸4aを中心として揺動させるだけでよい。図2(d)に示すように、揺動の途中で爪部3aが係止部1cに当接すると、係止部1aが爪部3aの傾斜面を摺動することによって、扉3が、蝶番4の連結部4dを弾性変形させながら僅かに矢印A方向に平行移動する。そして、係止部1aが爪部3aの傾斜面を乗り越えたら、連結部4dのばね力により一片4aおよび扉3が矢印B方向に復帰して、爪部3aが係止部1aに係止されて、扉3は閉じた位置(図2(a)に示す初期状態)に保持される。
本実施形態によると、通常状態において、爪部3aが係止部1aに係止されて扉3は閉じた位置に保持されるため、地震等による予期しない揺れや衝撃が加わっても扉3が開くおそれがなく、従って、収納部1a内に収納されている物品2が飛び出したり、扉3が開閉したりする危険がない。これは、特許文献1の構成のように揺れを感知したときに初めてロック動作を行う構成に比べて、はるかに信頼性が高く安全である。
さらに、本実施形態によると、使用者が取っ手等を掴んで扉3全体をスライド(平行移動)させてロックを解除してから、そのまま扉3を揺動させて開くことができる。ロック解除のためのスライドと扉3の揺動とを一連の動作として連続的に容易に行うことができるため、非常に操作性が良い。例えば、ロック機構を解除するための専用のレバーやつまみやかんぬき等が設けられている場合には、それらのレバーやつまみやかんぬき等を操作してロックを解除する動作と、扉3を揺動させるための動作が不連続な別個の動作として行われるため手間がかかるが、本実施形態では、扉3を開くための揺動動作の前に、扉3の主面3bに平行な方向に僅かに力を加えてスライドさせるだけなので容易である。しかも、扉3全体をスライドさせる構成であるため、小さなレバーやつまみやかんぬきを操作するような細かい作業は不要で、扉3を掴んで力を加える位置などは特に限定されずあまり精緻さを要求されない容易な操作でロック解除できるため、操作性がよい。
特に、付勢手段(連結部4d)が、20グラム重〜2キログラム重の範囲内の値である閾値以上の外力を加えられることによって初めて扉3のスライドを許容する構成であることが好ましい。仮に、20グラム重未満の外力で扉3がスライドしてロックが解除されるような構成であると、地震等でなくても日常生活中の僅かな衝撃や振動によってロックが解除されてしまう可能性がある。また、2キログラム重を越える外力が加わらないと扉3がスライドできずロックが解除されない構成であると、扉3の開閉操作にかなり大きな力が必要であり操作が面倒なため、開閉頻度が高い扉には適さない。
なお、特許文献2に記載の構成では、ロック解除のための動作と扉を開くための動作が全く同じ動きであるため、操作が一連の動作として行えるという利点はあるものの、機械式のロック機構と異なり、マグネットによるロックであるため、地震等の揺れや振動によって扉が開かないようにするには、扉を開くためにかなり大きな力を要する構成にせざるを得ない。その結果、扉の開閉が面倒になり、開閉頻度が高い扉には適さない。また、プッシュキャッチタイプのマグネットキャッチを利用する場合には、扉の主面に物品や人体が触れたときにロックが解除されて扉が開く可能性がある。特に、扉のロックが最も必要とされる地震などの災害時には、予期しない事態で物品や人体がぶつかって扉の主面が押圧されることが起こり得るので、扉のロックの信頼性がむしろ低いといえる。
これに対し、本実施形態の構成では、扉3のロック解除は、扉3の主面3bに平行な方向へ扉3全体を僅かにスライドさせることによって行い、扉3を開く動作は、扉を蝶番を中心として揺動させることによって行う。従って、使用者が意図的に扉3をスライドさせない限り、ロックは解除されない。そのため、特許文献2に比べて小さな力でロックを解除できるようにしても、地震等の揺れや振動によって扉が開いてしまうおそれはない。そして、使用者にとっては、扉3全体を揺動させる前に僅かにスライドさせるだけで扉3を開くことができるので、レバーやつまみやかんぬきなどの部材を操作する必要がなく容易に操作できる。また、特許文献2においてプッシュキャッチタイプのマグネットキャッチを利用する場合には、扉の主面に物品や人体が触れてロックが解除される可能性があるが、本実施形態の場合には、扉3に対してその主面3bに平行な方向に、扉3が取り付けられている筐体1(被取付物)に対して相対的な予期しない力が加わること、例えば扉の上下の端面や左右の端面に局部的に押圧力が加わることは、地震等の揺れや振動によっても殆ど生じないと考えられる。従って、操作者が意図的な操作を行わないときに扉3が開いてしまうおそれは殆どない。
以上説明した通り、本実施形態では、使用者が意図して操作する場合にはロックを解除して扉3を開く操作が非常に簡単であるが、予期しない衝撃や振動等によってロックが解除されることはない。したがって、地震等の対策として非常に優れている。
図3には、本実施形態の変形例が示されている。図3(a)〜(c)は第1の変形例の蝶番6の動作を示し、図3(a’)〜(c’)はそれに対応する扉3の開閉動作を示している。
この蝶番6は、扉3にねじ5により固定されている一片(一方の羽根)6bと、筐体1にねじ5により固定されている他片(他方の羽根)6cと、一片6bと他片6cとを連結する長円筒部6dとを有し、長円筒部6d内に、揺動中心となる軸6aと、この軸6aを付勢する付勢手段であるばね7が配置されている。このばね7は、20グラム重〜2キログラム重の範囲内で任意に設定された閾値以上の外力が加わったときに初めて縮んで一片6bおよび扉3のスライドを許容するものであり、その閾値未満の外力が加わっても変形せず扉3のスライドを防ぐものである。なお、扉3の内面(裏面)には、後述する開閉動作において長円筒部6dが障害物とならないように逃がすための切り欠き部3cが形成されている。
図3(a),(a’)に示す初期状態では、図1,2に示すのと同様なロック機構によって扉3は閉じた位置に保持されている。そして、閾値以上の外力が扉3に加わると、図3(b),(b’)に示すように、扉3はばね7を縮めながら主面3bに平行な面内でスライドする。この時、図2(b)に示すのと同様にロック機構が解除される。そこで扉3を蝶番6の軸6aを中心として揺動させて開くことができる。扉3を閉じる際には、扉3を蝶番6の軸6aを中心として揺動させて閉じると同時に、図示しないロック機構によって扉3を閉じた位置に保持させる。
図3(d)〜(f)は第2の変形例の蝶番8の動作を示し、図3(d’)〜(f’)はそれに対応する扉3の開閉動作を示している。
この蝶番8は、扉3にねじ5により固定されている一片(一方の羽根)8bと、筐体1にねじ5により固定されている他片(他方の羽根)8cと、一片8bと他片8cとを連結する、屈曲した連結部8dとを有し、連結部8dが弾性変形可能な付勢手段になっている。この連結部8dは、20グラム重〜2キログラム重の範囲内で任意に設定された閾値以上の外力が加わったときに初めて弾性変形して一片8bおよび扉3のスライドを許容するものであり、その閾値未満の外力が加わっても変形せず扉3のスライドを防ぐものである。なお、扉3の内面(裏面)には、一片8bを取り付けるための切り欠き部3cが形成されている。
図3(d),(d’)に示す初期状態では、図1,2に示すのと同様なロック機構によって、扉3は閉じた位置に保持されている。そして、閾値以上の外力が扉に加わると、図3(e),(e’)に示すように、扉3は連結部8dを弾性変形させながら主面3bに平行な面内でスライドする。この時、図2(b)に示すのと同様にロック機構が解除される。そこで扉3を蝶番8の軸8aを中心として揺動させて開くことができる。扉3を閉じる際には、扉3を蝶番8の軸8aを中心として揺動させて閉じると同時に、図示しないロック機構によって扉3を閉じた位置に保持させる。
次に、本発明の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付与し説明を省略する。
本実施形態の蝶番9は、扉3にねじ5により固定されている一片(一方の羽根)9bと、筐体1にねじ5により固定されている他片(他方の羽根)9cを有し、軸9aの周囲において、一片9bと他片9cのくし歯状の部分が軸9aに沿う方向に互いに間隔をおいて交互に配置されている。そして、軸9aに沿う一片9bと他片9cのくし歯状部分の間の隙間に、付勢手段であるばね10がそれぞれ配置されている。そして、本実施形態では、ばね10が縮むことによって、一片9bおよび扉3が、他片9cおよび筐体1に対して下方向、すなわち扉3の主面3bに平行な面内で軸9aに平行な矢印C方向にスライド可能である。このばね10は、20グラム重〜2キログラム重の範囲内で任意に設定された閾値以上の外力が加わったときに初めて弾性変形して一片9bおよび扉3の下方へのスライドを許容するものであり、その閾値未満の外力が加わっても変形せず扉3のスライドを防ぐものである。
そして本実施形態のロック機構は、扉3の内面(裏面)の上端近傍に設けられている爪部3aと、筐体1の開口部1bの上端内面から突出している係止部1cとからなる。爪部3aが上向きの凸形状であるので、この爪部3aと係止部1cの係合が扉3全体が下方へ押し下げられることによって解除される構成である。
図示しないが、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、初期状態ではロック機構によって扉3は閉じた位置に保持されている。そして、閾値以上の外力が扉3に加わると、扉3はばねを縮めながら下方に、すなわち主面3bに平行な面内で軸9aに平行な方向(矢印C方向)にスライドする。この時、ロック機構が解除される。そこで扉3を蝶番9の軸9aを中心として揺動させて、扉3を開くことができる。扉3を閉じる際には、扉3を蝶番9の軸9aを中心として揺動させて閉じると同時に、爪部3aを係止部1cに係合させて扉3を閉じた位置に保持させる。
なお、蝶番9およびばね10とロック機構以外の構成は第1の実施形態と同じであるので説明は省略する。
本発明は前記した2つの実施形態に限定されず、様々な変更が可能である。例えば、前記した各実施例では、扉3をスライドした位置からスライド前の初期位置に復帰させるように付勢させる付勢手段として、蝶番4,8の一部をなす板ばね状の連結部4d,8dや、蝶番6,9に装填されたばね7,10を用いているが、マグネットを設けてその磁力を付勢力として利用してもよい。その場合、蝶番自体に磁力を持たせてマグネットとして構成したり、蝶番にマグネットを貼り付けたりしてもよいが、蝶番以外の部分で扉3と筐体1にマグネットを取り付けてもよい。このように、付勢力は弾性力であっても磁力であってもよく、また付勢手段は蝶番自体に組み込まれていてもよいし、蝶番とは別に設けられていてもよい。蝶番の具体的な形態についても様々な変更が可能である。本発明の開閉機構には、筐体1と扉3との密着性を高めるためなどの目的で、いわゆるマグネットキャッチ方式を併用してもよい。
なお、前記したように、付勢手段は、所定の閾値(好ましくは20グラム重〜2キログラム重の範囲内の値)以上の外力が加わったときに扉のスライドを許容し、閾値未満の外力による扉のスライドを防ぐものであるが、付勢手段の付勢力は、この閾値と、扉に加わる重力とを考慮に入れて設定する必要がある。
本発明の第1の実施形態の扉の開閉機構を備えた什器棚の斜視図である。 本発明の第1の実施形態の扉の開閉方法を説明する要部拡大断面図である。 (a)〜(c)は第1の変形例の蝶番の動作を説明する要部斜視図、(a’)〜(c’)は第1の変形例の扉の開閉動作を説明する要部断面図、(d)〜(f)は第2の変形例の蝶番の動作を説明する要部斜視図、(d’)〜(f’)は第2の変形例の扉の開閉動作を説明する要部断面図である。 本発明の第2の実施形態の扉の開閉機構を備えた什器棚の斜視図である。
符号の説明
1 筐体(被取付体)
1c 係止部(ロック機構)
3 扉
3a 爪部(ロック機構)
3b 主面
4,6,8,9 蝶番
4a,6a,8a,9a 軸
4b,6b,8b,9b 一片(一方の羽根)
4c,6c,8c,9c 他片(他方の羽根)
4d,8d 連結部(付勢手段)
7,10 ばね(付勢手段)

Claims (4)

  1. 蝶番を介して被取付体に取り付けられ、前記蝶番の軸を中心として揺動することによって開閉可能である扉と、前記扉を閉じた位置に保持可能なロック機構とを有し、
    前記扉が前記ロック機構によって前記閉じた位置に保持されている状態で、外力が加えられて前記扉全体が主面に平行な面内でスライドさせられると、前記ロック機構による保持が解除されて、前記扉が前記軸を中心として揺動可能になる、扉の開閉機構。
  2. 前記扉を、主面に平行な面内でスライドさせられた位置からスライド前の初期位置に復帰させる付勢手段を有し、
    前記付勢手段は、所定の閾値未満の外力による前記扉のスライドを防ぎ、かつ前記閾値以上の外力による前記扉のスライドを許容するものであり、前記閾値は20グラム重〜2キログラム重の範囲内の値である、請求項1に記載の扉の開閉機構。
  3. 前記蝶番は、前記扉に取り付けられている一片と前記被取付体に取り付けられている他片とが前記軸を中心として相対的に揺動可能であるとともに、前記扉の主面に平行な面内におけるスライドを可能にするために、前記一片と前記他片とが前記軸に垂直な方向または前記軸に平行な方向に相対的に平行移動可能な構成であり、
    前記ロック機構は、前記扉と前記被取付体のうちの一方に設けられている爪部と、他方に設けられている係止部とからなり、前記爪部と前記係止部の係合が、前記扉の主面に平行な面内におけるスライドによって解除される構成である、請求項1または2に記載の扉の開閉機構。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の扉の開閉機構を用いた扉の開閉方法において、
    初期状態では、前記扉は前記ロック機構によって閉じた位置に保持され、
    閉じた位置に保持された状態の前記扉を開く際には、前記扉に力を加えて前記扉全体を主面に平行な面内でスライドさせることによって前記ロック機構による保持を解除してから、前記扉を前記蝶番の前記軸を中心として揺動させることによって開き、
    開いた状態の前記扉を閉じる際には、前記軸を中心として前記扉を揺動させて閉じるとともに、前記ロック機構によって前記扉を閉じた位置に保持させることを特徴とする、扉の開閉方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010267898A (ja) * 2009-05-18 2010-11-25 Nitto Electric Works Ltd 電気電子機器用キャビネットの蝶番
JP2011160873A (ja) * 2010-02-05 2011-08-25 Kita Denshi Corp 遊技機用電源装置及び遊技機
JP2022011299A (ja) * 2020-06-30 2022-01-17 株式会社デンソーウェーブ セキュリティ装置

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